JP4316697B2 - 共に押し出されたバルーンおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、概してバルーン付きカテーテル用のバルーン部材を製造するための方法に関し、さらに詳細には、ステント配送カテーテル上での使用を非常に好適にする、高いバースト強度、高い耐摩耗性、および約13%以下の範囲内でのコンプライアンスを特徴とするバルーンに関する。
【0002】
【従来の技術】
心臓血管の病気を抱えた患者の治療において、以前塞がれた血管に、より多くの開通を回復させるという目的のために、経皮的なトランスルミナル(transluminal)血管形成の処置を行うことは現在全くもって普通のことである。この処置の実行において、バルーン血管形成カテーテルが、大腿部動脈のような、血管組織のある位置へ導入され、それから、カテーテルの末梢端の膨張していないバルーンあるいは拡張部材が、治療すべき狭窄症を横切って位置づけられるまで血管組織を通って進入される。一度そのように位置づけられると、膨張させるカテーテル本体内の管腔を通して膨張流体が圧力状態で注入され、それにより、カテーテルの末梢端のバルーン部材を比較的高い圧力まで拡張させる。その結果生じるバルーン部材の拡張は、狭窄症の損傷を血管壁内に圧縮するという効果がある。
【0003】
他の場合では、アセレクトミー(atherectomy)カテーテルを血管組織を通して導入し、進入させることもあり、その後、そのカテーテルの末梢端で運ばれた好適な裁断道具が、結果として生ずる残骸をカテーテルを通って吸い戻しながら狭窄症の損傷を構成する脂肪質の堆積物を切除するために配置され、かつ用いられる。
【0004】
これらの処置のいずれの実行においても、損傷部位の血管壁が裂けたり脆くなったりして、その結果もはや自活できなくなるという可能性がある。この場合においては、血管に機械的なサポートを付加するためのステントを導入することが慣例であった。このようなステントは、概してバルーン付きカテーテルを用いて配置される。特に、膨張しておらず、それが搭載されているカテーテル本体の形に密接に一致しているバルーンあるいは拡張部材により、管状のステント部材が同心状にバルーン上に位置づけられる。ステントを持ったカテーテルは、以前治療を受けたことのある血管の弱った領域を橋絡するために、そのステントが所定位置に配されるまで、血管組織を通って進入される。一度そのように位置づけられると、拡張部材を膨張させるカテーテルを通して膨張流体が注入され、それにより、血管壁に係合するように、膨張した状態での予め設定した外径までステントを拡張させ、かつ塑性変形させる。それから、そのバルーンは膨張流体を吸い出すことにより収縮させられ、拡張したステントを適所に残してバルーンを持ったカテーテルを引き出すことが可能になる。
【0005】
さらに、米国特許4,655,771号明細書に開示されたステントのような、自己拡張性のステントを拡張部材と結び付けて配置することもできる。例えば、血管内で自己拡張した後、ステントを血管壁へしっかり押しつけるために、バルーンを自己拡張ステント内に挿入し、膨張させることが可能である。
【0006】
ステント配送カテーテルが、半伸展性(semi-compliant)であり、また、高い耐摩耗性、高いフープ強度およびバースト抵抗力、および一度拡張したステントを、最小限のウィンギング(winging)でカテーテル本体の外面に一致させるように潰させる記憶特性を有するバルーン部材を備えていることは重要である。
【0007】
コンプライアンス特性の制御は、(1)バルーンの形成に用いられるプラスチック材料、(2)バルーンの壁厚、および(3)バルーンを構成する材料が形成中に配向される程度、の適切な選択を通してなされる。例えば、高度な非伸展性のバルーンが望まれる場合、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンポリカーボネイト或いはナイロンのような高度に配向可能な重合体が良い候補である。ポリエチレンや種々の共重合体やポリエチレンの混合物、イオノマー、ポリエステル、ポリアミド、およびポリ塩化ビニールのような熱可塑性の材料が、伸張ブロー形成工程(stretch blow-molding operation)でバルーンが形成されるパリソンを創るのに用いられた場合、より高いコンプライアンスのバルーンが結果として生じる。
【0008】
バルーンの形成において、単一材料および混合材料を用いて膨張性、耐摩耗性、接着性等の物理的特性の望ましい均衡が得られない場合には、ハムリン(Hamlin)に付与された米国特許5,270,086号明細書および公開されたPCT出願WO95/09667号公報に開示されているように2つ以上の異なる材料を共に押し出す技術も知られている。ワン(Wang)等の米国特許5,195,969号明細書は、ナイロン−12あるいはPETとポリエチレンとを共に押し出したもので構成する血管形成カテーテル用の医療バルーンについて開示しており、そこではナイロン−12またはPETは高いフープ強度を供給し、ポリエチレン層は、バルーンの、それが取り付けられるカテーテルとの接着性を高めている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来技術においては、ステント配送での使用のために必要な要求に対処すべく適応させたバルーン構造、すなわち、ステントの拡張が生じる際に、バルーンがステントと擦れることによる摩擦的現象に対抗するための高い耐摩耗性、血管に対してステントが過度に拡張するのを抑制するための制御された伸張性、バースト強度および再包装性(rewrappability)を備えたバルーンを製作する方法の教示が見当たらない。
【0010】
【課題を解決するための手段】
高圧のステント拡張用のバルーンを提供することが本発明の目的である。このようなバルーンは、PETおよびポリアミド(ナイロン−12)を共に押し出すことにより達成されており、そこではナイロン−12が外側層を、PETは最も内側の層を構成している。ナイロン−12の重量百分率濃度をPETの重量百分率濃度に対して調整することにより、8〜18気圧の圧力変化を経験する場合に、約5〜15%、好ましくは約7〜13%、の範囲にあるように、結果として生じるバルーンのコンプライアンス特性を適応させることが可能であるということが分かっている。バースト圧力が約25気圧である場合においては、十分な安全性の余裕が容易に実現される。
【0011】
バルーンそれ自体は、それらの両端において延長され、柔軟性のあるカテーテル末梢端部に取り付けられるように適合された拡張可能な二重壁の管状部材で構成されている。前記バルーンが管状カテーテルの外壁に接着された場合、内室が画定される。前記カテーテルはそれ自体の長さを伸張し、二重壁管状部材の内室と流体をやりとりするように連絡された膨張管腔を含んでいる。 二重壁管状部材の最も外側の壁はナイロン−12のようなポリアミドであり、内側の壁はPETである。ポリアミドの重量百分率を20〜80%の範囲でPETとの均衡の下に調整することにより、二重壁管状部材は、8〜18気圧の圧力範囲において約13%以下のコンプライアンス係数を示す。ポリアミドを最も外側の壁に用いた、共に押し出された二重壁構造は、バルーンのバースト圧力をそれほど低下させずに、PETバルーンの耐摩耗性を高める方法を提供する。
【0012】
結果として生じるバルーンの再包装特性(rewrap characteristics)を向上させるために、1996年4月1日に出願された、出願番号08/625,495のスランジャン・ロイチャウドハリ(Suranjan Roychowdhury)の同時係属中の出願中に述べられている方法で温度アニール化してもよい。PETの含有量に対するナイロンの含有量、および/あるいはアニール化する温度を変化させることにより、ステント配送カテーテルのために望ましい特性が得られることが実験で示されている。
【0013】
【発明の実施の形態】
前述した本発明の特徴、目的、および利点は、この技術に精通した者にとって、以下に詳細に述べた好ましい実施形態から、特に以下の添付図面と結びつけて考えた場合に明白になるだろう。
図1は、本発明の通りに構成したステント配送カテーテルの末梢端部を大きく拡大し、一部断面的に切断した側面立面図である。
図2は、図1と同様であるが、さらに配送カテーテル上に配置されたステントを示している。
図3および図4は、アニール化温度で共に押し出されたPET/ナイロンの拡張部材のコンプライアンス特性の変化を示すグラフである。
【0014】
図面を参照すると、数字10で概括的に指されたステント配送カテーテルの末梢端部が示されている。ステント11自体(図2)は通常、編み込まれた、または孔を開けた非自己拡張性の金属もしくはプラスチック製の管であり、その内径は拡張していない場合の拡張部材12(図示せず)の外面と密接に一致している。配送カテーテル13は従来の方法で血管組織15へ導入され、そしてこの血管組織を通って、まだ拡張していないステントを携えているカテーテル本体部14につけられた拡張部材12が、血管組織の治療部位に対して並置されるまで進入される。一度そのように位置づけられると、拡張部材12は膨張され、その時、ステントは、所望の圧力における拡張部材12の外径の関数である、予め設定した直径まで拡張する。
【0015】
一度このステントが前述の方法で拡張すると、拡張部材12は膨張流体を吸い出すことによって再び収縮し、収縮すると血管組織から引き出される。
無論、吸い出しに際して、拡張部材12は、該拡張部材12を搭載しているカテーテル本体部14の外径と密接に一致するように収納されることが望ましい。いわゆる、拡張部材のウィンギング(winging)やパンケーキング(pancaking)は望ましくない。さらに、バルーン付きカテーテルの使用目的が非自己拡張性ステントを配置するためである場合、拡張部材12が拡張中に、拡張部材12の表面が摩擦係合する際の裂開を防ぐように、拡張部材12は高い耐摩耗性を有することが重要である。
【0016】
図1に示すように、カテーテル本体部14は、長さを伸張する膨張管腔16を備えた、延長された柔軟性のある管で構成される。カテーテル本体部14の末梢端部に付着されているのは、概略円筒形で管状の拡張部材であり、この拡張部材は符号18,20において円錐形の端部を有しており、これらの端部は拡張部材12が膨張される時に中空室26を画定するようにカテーテル本体部14の外壁に領域22,24において接着されている。膨張管腔16の末梢端は密封領域22を越えて伸張し、加圧された膨張流体が室26へ流入して拡張部材を拡張させるのを可能としている。
【0017】
本発明によれば、拡張部材12はブロー形成、およびハムリン(Hamlin)の特許5,270,086号明細書に述べられているような、共に押し出す処理で予め形成されたパリソンを伸張させることにより形成されている。このように、結果として生じる拡張部材12は、二重壁28,30をそれぞれ有する。共に押し出されたパリソンは、PETで構成される内壁およびポリアミドで構成される外壁を備えるように設計され、前記ポリアミドにはナイロン−12が望ましい。拡張部材12に適したナイロンには、グリラミド(Grilamid)L25、イー・エム・エス(EMS)、ヴェスタミド(Vestamide)2101F、エイチ・ユー・エル・エス(HULS)とヴェスタミド(Vestamide)1801F、エイチ・ユー・エル・エス(HULS)がある。PETの構成物は、アイ・シー・アイ(ICI)5822C、またはシェル・トレイタフ(Shell Traytuf)1006でもよい。
拡張/ブロー形成工程にかけられる場合、PET層とナイロン層の両方は熱した型内で、望ましい合成壁の厚さと外径が得られるまで二軸的に配向される。
拡張していない状態での代表的な壁の厚さは、約0.010−0.023mmであるが、できるなら約0.011−0.0152mmが望ましい。
【0018】
バルーン付きカテーテルの使用目的がステント配送である場合、ステントが単に望ましい外径まで拡張するように、拡張部材12が比較的低いコンプライアンス係数を有することが重要である。この技術に精通した者は、もし拡張部材が高度のコンプライアンスを有していれば、それにより配送されるステントの拡張程度を制御するのがより難しくなるということが分かるだろう。もしコンプライアンス係数が8気圧〜18気圧の範囲の気圧に対して約15%未満、望ましくは13%以下に保たれるなら、拡張したステントの直径の優れた制御が実現できるということが明らかにされてきた。
【0019】
拡張部材12の外壁30がナイロン−12のようなポリアミドで構成され、内壁28がPETであって、合成物内のポリアミドの重量百分率が20〜80%である場合、バルーンのコンプライアンスを示された望ましい範囲内に維持することが可能であるということが明らかにされてきた。PET層28は拡張部材に高いバースト強度を供給し、一方外側のナイロン−12層30は優れた耐摩耗性を提供する。
【0020】
膨張およびそれに続く縮小に際して、カテーテル本体部14の外形と密接に一致するように、合成物の二重壁の拡張部材の適応パラメータを改良するために、先に引用したロイチャウドハリ(Roychowdhury)の特許出願の教示通りの拡張部材の温度アニール化を用いてもよい。望ましくは、ブロー成形された拡張部材がシース中にタコラップ(taco-wrap)され、75℃と95℃の間の温度での、1時間から4時間までの範囲内での加熱サイクルにかけられる。最初に約8気圧の気圧まで拡張し、続いて室26から膨張流体を吸い出すことにより縮小した際、アニール化された二重壁バルーンがカテーテル本体部14の外径に密接に一致しているのが分かった。認識し得るウィンギング(winging)は全く生じなかった。 さらに合成物の二重壁バルーンの膨張曲線が、ナイロン−12の含有量および課されたアニール化の条件に基づいて適応させられるということも分かった。
【0021】
【実施例】
3.0mmの直径を有し、共に押し出されたPETとナイロン−12が約55−45から65−35の割合で構成している拡張部材が形成され、伸張/ブロー形成の間、半径方向に5:1から8:1まで伸張された。
拡張部材は、拡張していない状態において、0.0127から0.0254mmの範囲の壁厚を示し、また示された壁厚に対し、以下の合成物のフープ応力、バースト圧力を示すことが分かった。
フープ応力は、σ=PD/2t のように計算され、tは拡張していない状態で測定されたバルーン壁の厚さであり、Pは37℃で測定されたバースト圧力であり、Dは10気圧および室温での直径である。
壁(mm) ナイロン(%) バースト(kg/cm2) フープ応力(kg/cm2)
.0127 38.2 31.06 3159.35
.018 38.5 30.68 2585.77
.023 41.7 33.95 2504.16
【0022】
図3および図4はカテーテル拡張部材のそれぞれ5つのサンプルを有する5つのグループに対する平均値のコンプライアンス特性における変化を示すグラフであり、この場合、5つのそれぞれのグループについては、それぞれ1時間にわたって第1グループの75℃から第5グループの95℃までアニール化温度を変化させた。拡張部材はそれぞれ直径3.0mm、長さ20mmである。これらはナイロン40%、PET60%で共に押し出し成形されたものから構成されている。これらの曲線は、アニール化温度の適切な制御により、8から18気圧の間で10%から18%の範囲内で望ましいコンプライアンス特性を示すために、拡張部材を適応させることが可能であることを示している。共に押し出す場合のナイロンとPETの相対的なパーセンテージもまた、コンプライアンス特性に影響を及ぼす。測定は、膨張媒体として水を用い、室温で行った。結果の要約を表1に示す。
【0023】
【表1】
【0024】
本発明はこの中でかなり詳細に述べられてきたが、その目的は特許法に適応し、この技術に精通した者に、この新しい原理を応用し、求められるような詳細された要素を構成し、用いるために必要な情報を提供することである。しかしながら、本発明は、明確に異なった設備や装置により実施され得るものであり、また設備の詳細や操作手順の双方に関し、本発明自体の範囲を逸脱せずに多くの変形例が達成され得るものであることを特筆しておく。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の通りに構成したステント配送カテーテルの末梢端部を大きく拡大し、一部断面的に切断した側面立面図である。
【図2】 図1と同様であるが、さらに配送カテーテル上に配置されたステントを示している。
【図3】 アニール化温度で共に押し出されたPET/ナイロンの拡張部材のコンプライアンス特性の変化を示すグラフである。
【図4】 図3と同様のグラフである。
【符号の説明】
10 ステント配送カテーテル
11 ステント
12 拡張部材
13 配送カテーテル
14 カテーテル本体部
15 血管組織
16 管腔
18 円錐形の端部
20 円錐形の端部
22 密封領域
24 密封領域
26 室
28 内側壁
30 外側壁
Claims (4)
- (a)基端部、末梢端部および膨張流体配送用の管腔16を具備する、延長され、柔軟性がある管状部材14と、
(b)延長され、柔軟性がある管状部材の末梢端に結合するように適応され、ポリアミドからなる最も外側の壁30とポリエチレンテレフタレートからなる、二重壁管状部材の内側壁28とを有する、拡張可能な二重壁管状部材12であって、
当該二重壁管状部材12の末梢端側の端部が、延長されかつ柔軟性がある前記管状部材14の外壁に接着されている二重壁管状部材12と、
(c)前記二重壁管状部材12により画定された室26に流体をやりとりするように連絡された前記管腔16により、前記延長され、柔軟性がある管状部材の前記末梢端に前記二重壁管状部材を取り付ける手段と、を具備し、前記ポリアミドの分量百分率は、前記ポリエチレンテレフタレートとの均衡において20〜80%の範囲内であり、前記二重壁管状部材12は8〜18気圧の圧力範囲にわたって13%以下のコンプライアンス係数を示すことを特徴とするバルーン付きカテーテル。 - 前記ポリアミドは、ナイロン−12であることを特徴とする請求項1記載のカテーテル。
- 前記二重壁管状部材12のバースト強度は、25気圧を超えることを特徴とする請求項1記載のカテーテル。
- 前記二重壁管状部材12は、延長され、柔軟性がある管状部材14に対する、該二重壁管状部材12の適応を高めるために、膨張流体による膨張およびそれに続く前記室からの前記膨張流体の吸出の後で熱処理されることを特徴とする請求項1記載のバルーン付きカテーテル。
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