(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態について図1〜図3を参照して説明する。図1は、本実施形態が適用される内燃機関としての多気筒ディーゼルエンジン(以下、単にエンジンという)11及びその排気浄化装置12の構成を示している。
エンジン11は、大きくは吸気通路13、気筒10毎の燃焼室14、及び排気通路15を備えて構成されている。吸気通路13の最上流部には、同吸気通路13に吸入された空気を浄化するエアクリーナ16が設けられている。エンジン11においては、エアクリーナ16から吸気下流側に向けて順に、吸気通路13内の空気の流量を検出するエアフロメータ17、ターボチャージャ18のコンプレッサ18A、インタークーラ19、及び吸気絞り弁21が配設されている。そして、吸気通路13は、吸気絞り弁21の吸気下流側に設けられた吸気マニホールド22において分岐されており、この分岐部分を通じて各気筒10の燃焼室14に接続されている。
エンジン11のシリンダヘッド23には、燃焼室14内での燃焼に供される燃料を噴射する燃料噴射弁24が気筒10毎に設けられている。各燃料噴射弁24には、燃料供給路25を通じて燃料タンク26から燃料が供給される。燃料供給路25には、燃料タンク26から燃料を吸引して加圧吐出する燃料ポンプ27、及びその吐出された高圧燃料を蓄圧する高圧燃料配管であるコモンレール28が設けられている。そして、各気筒10の燃料噴射弁24はコモンレール28にそれぞれ接続されている。
一方、排気通路15の各燃焼室14との接続部分は排気ポート29となっている。排気通路15には、各燃焼室14から排気ポート29を通じて排出された排気を集合させるための排気マニホールド31、及びターボチャージャ18のタービン18Bが設けられている。
さらに、エンジン11には、排気の一部を吸気中に再循環させる排気再循環(以下、「EGR」という)装置32が採用されている。EGR装置32は、吸気通路13と排気通路15とを連通させるEGR通路33を備えて構成されている。EGR通路33の上流側は、排気通路15の排気マニホールド31とタービン18Bとの間に接続されている。EGR通路33の途中には、その上流側から順に、再循環される排気を浄化するEGRクーラ触媒34、再循環される排気を冷却するEGRクーラ35、再循環される排気の流量を調整するEGR弁36が配設されている。そしてEGR通路33の下流側は、吸気通路13の吸気絞り弁21と吸気マニホールド22との間に接続されている。
こうしたエンジン11では、吸気通路13に吸入された空気が、エアクリーナ16で浄化された後、ターボチャージャ18のコンプレッサ18Aに導入される。コンプレッサ18Aでは、導入された空気が圧縮され、インタークーラ19に吐出される。圧縮によって高温となった空気は、インタークーラ19にて冷却された後、吸気絞り弁21及び吸気マニホールド22を通って各気筒10の燃焼室14に分配供給される。こうした吸気通路13内の空気の流量は、吸気絞り弁21の開度制御を通じて調整される。また、その空気の流量(吸入空気量)はエアフロメータ17により検出される。
空気の導入された燃焼室14では、各気筒10の圧縮行程において燃料噴射弁24から燃料が噴射される。そして、吸気通路13を通じて導入された空気と燃料噴射弁24から噴射された燃料との混合気が燃焼室14内で燃焼される。このときに生じた高温高圧の燃焼ガスによりピストン37が往復動され、出力軸であるクランクシャフト38が回転されて、エンジン11の駆動力(出力トルク)が得られる。エンジン11には、クランクシャフト38の回転速度をエンジン回転速度として検出する回転速度センサ39が設けられている。
各気筒10の燃焼室14での燃焼により生じた排気は、排気マニホールド31を通じてターボチャージャ18のタービン18Bに導入される。この導入された排気の流勢によってタービン18Bが駆動されると、吸気通路13に設けられたコンプレッサ18Aが連動して駆動され、上記空気の圧縮が行われる。
一方、上記燃焼により生じた排気の一部はEGR通路33に導入される。EGR通路33に導入された排気は、EGRクーラ触媒34で浄化され、EGRクーラ35で冷却された後、吸気通路13の吸気絞り弁21の吸気下流側の空気中に再循環される。こうして再循環される排気の流量は、EGR弁36の開度制御を通じて調整される。
上記のようにしてエンジン11が構成されている。次に、このエンジン11から排出される排気を浄化するための排気浄化装置12について説明する。排気浄化装置12は、添加弁41を備えるほか、排気浄化触媒として複数(3つ)の触媒コンバータ(第1触媒コンバータ42、第2触媒コンバータ43、及び第3触媒コンバータ44)を備えて構成されている。
最上流の第1触媒コンバータ42はタービン18Bの排気下流側に配設されており、担体に吸蔵還元型のNOx触媒を担持させることにより構成されている。第1触媒コンバータ42では、排気中の窒素酸化物NOxを吸蔵するとともに、還元剤となる未燃燃料成分の供給によりその吸蔵した窒素酸化物NOxを還元して浄化する。第2触媒コンバータ43は第1触媒コンバータ42の排気下流側に配設されている。第2触媒コンバータ43は、排気中のガス成分の通過を許容し、かつ同排気中の微粒子物質PMの通過を阻止する多孔質材を担体とし、これに吸蔵還元型のNOx触媒を担持させることにより構成されている。第3触媒コンバータ44は第2触媒コンバータ43の排気下流側に配設されている。第3触媒コンバータ44は、担体とこれに担持された酸化触媒とを備え、同酸化触媒により、排気中の炭化水素HC及び一酸化炭素COの酸化を通じて排気の浄化を行う。
添加弁41は、排気通路15の第1触媒コンバータ42よりも上流側に配置されている。添加弁41は燃料通路46を通じて前記燃料ポンプ27に接続されており、同燃料ポンプ27から供された燃料を還元剤として排気中に噴射して添加する。この添加された燃料により排気を一時的に還元雰囲気として、第1及び第2触媒コンバータ42,43に吸蔵されている窒素酸化物NOxを還元浄化する。さらに、第2触媒コンバータ43では微粒子物質PMの浄化も同時に実行する。
なお、排気通路15において第1触媒コンバータ42と第2触媒コンバータ43との間の空間には、同空間を通過する排気の温度(排気温度)、すなわち第2触媒コンバータ43に流入する前の排気の温度を検出する排気温センサ48が配設されている。また、排気通路15において第2触媒コンバータ43よりも下流の空間には、同空間を通過する排気の温度、すなわち第2触媒コンバータ43を通過した直後の排気の温度を検出する排気温センサ49が配設されている。また排気通路15には、第2触媒コンバータ43の排気上流側における排気圧力と排気下流側における排気圧力との差圧を検出する差圧センサ51が配設されている。さらに、排気通路15について、第1触媒コンバータ42よりも排気上流側、及び第2触媒コンバータ43と第3触媒コンバータ44との間には、排気中の酸素濃度を検出する酸素センサ52,53がそれぞれ配設されている。
以上説明したエンジン11及び排気浄化装置12の制御は、電子制御装置61によって行われる。電子制御装置61は、エンジン11の制御に係る各種処理を実行するCPU、その制御に必要なプログラムやデータが記憶されたROM、CPUの処理結果等が記憶されるRAM、外部との情報のやり取りを行うための入・出力ポート等を備えて構成されている。
電子制御装置61の入力ポートには、上述した各センサに加え、運転者によるアクセル踏込量を検出するアクセルセンサ54、コモンレール28の内圧(レール圧)を検出するコモンレールセンサ55、吸気絞り弁21の開度を検出する絞り弁センサ56等が接続されている。
また、電子制御装置61の出力ポートには、上記吸気絞り弁21、燃料噴射弁24、燃料ポンプ27、添加弁41、EGR弁36等が接続されている。そして電子制御装置61は、上記各センサの検出結果に基づき、それら出力ポートに接続された機器類を制御することで、エンジン11の各種運転制御を実施する。各種運転制御には燃料噴射弁24による燃料噴射制御が含まれるほか、燃焼に係る制御、排気の浄化に係る制御等が含まれている。
例えば、燃料噴射制御では、電子制御装置61は、エンジン11の運転状態に最適な基本噴射量を、アクセルセンサ54によるアクセル踏込量、及び回転速度センサ39によるエンジン回転速度に基づき算出する。また、そのエンジン回転速度により決定される基本最大噴射量(理論上噴射可能な最大量)に、各種センサからの信号による補正を加え最大噴射量を決定する。上記基本噴射量及び最大噴射量を比較し、噴射量の少ない方を目標噴射量として設定する。また、上記アクセル踏込量及びエンジン回転速度に基づき基本噴射時期を算出し、これを各種センサからの信号によって補正し、そのときのエンジン11の運転状態に最適な目標噴射時期を算出する。そして、これらの目標噴射量及び目標噴射時期に基づき燃料噴射弁24に対する通電を制御して、同燃料噴射弁24を開閉させる。
燃焼に係る制御では、電子制御装置61は、予め設定された複数の燃焼モードからエンジン11の運転状態に応じたものを選択する。複数の燃焼モードには、通常燃焼モード及び低温燃焼モードが含まれている。ここで、EGR装置32が適用された本実施形態のエンジン11では、燃料噴射弁24から燃焼室14への燃料噴射時期が一定の状態で燃焼室14内の不活性ガスの量、すなわち再循環される排気の量が多くなると、燃焼室14内における煤の発生量が徐々に多くなる。再循環される排気の量が所定値になると煤の発生量がピークになる。そして、再循環される排気の量が所定値よりも多くなると、燃焼室14内における燃料及びその周辺の温度が低下して燃焼室14内における煤の発生量が少なくなる。低温燃焼モードでは、上記所定値よりも多い量の排気が再循環されつつ燃焼室14内で燃料が燃焼される。これに対し、通常燃焼モードでは、前記所定値よりも少ない量の排気が再循環されつつ燃焼室14内で燃料が燃焼される。そして、電子制御装置61は、そのときのエンジン11の運転状態に応じた燃焼モードを選択する。
また、電子制御装置61は、排気の浄化に係る制御の1つとして、排気浄化触媒に対する制御を実行する。この制御には、触媒再生制御モード、硫黄被毒回復制御モード、NOx還元制御モード、及び通常制御モードという4つの触媒制御モードが設定されており、電子制御装置61は触媒コンバータ42〜44の状態に応じた触媒制御モードを選択して実行する。
触媒再生制御モードとは、特に第2触媒コンバータ43内に堆積している微粒子物質PMを燃焼させて二酸化炭素CO2 と水H2 Oにして排出する制御を行うモードであり、添加弁41からの燃料添加を継続的に繰り返して担体の温度(触媒床温)を高温化(600〜700℃)するモードである。
硫黄被毒回復制御モードとは、第1及び第2触媒コンバータ42,43内のNOx触媒が硫黄酸化物SOxによって被毒されて窒素酸化物NOxの吸蔵能力が低下した場合に硫黄酸化物SOxを放出させる制御を行うモードである。
NOx還元制御モードとは、第1及び第2触媒コンバータ42,43内のNOx触媒に吸蔵された窒素酸化物NOxを、窒素N2 、二酸化炭素CO2 及び水H2 Oに還元して放出するモードである。このモードでは、添加弁41からの比較的時間をおいた間欠的な燃料添加により、触媒温度が比較的低温(例えば250〜500℃)となる。これ以外の状態が通常制御モードとなり、このモードでは添加弁41からの還元剤添加はなされない。
さらに、電子制御装置61は、排気の浄化に係る制御の1つとして、上記NOx触媒の劣化状態を判定する制御も行う。この制御を行うのは、NOx触媒は長期にわたる使用により劣化し、窒素酸化物NOxを十分に吸蔵できなくなったり、還元雰囲気にて窒素酸化物NOxを十分に還元できなくなったりするおそれがあり、この不具合に対処するために劣化状態の把握が必要となるためである。
上記劣化状態の判定は、NOx触媒が昇温して活性化している状況下で行われることが、誤判定を排して判定精度を確保するうえで有効である。ここでの「昇温」とは、添加弁41から添加された還元剤によりNOx触媒が活性化されて、触媒床温が上昇する現象をいう。そこで、本実施形態では、触媒床温が上昇し得る状況にあるかどうかを判定するための前提条件を設定し、この前提条件が成立している状況が所定時間以上継続すると、NOx触媒の劣化状態の判定を行うための実行条件を満たしているとして、同判定に移行するようにしている。
図2のフローチャートは、上記実行条件の成立状況(成立/不成立)を判定するための「実行条件判定ルーチン」を示している。このルーチンに示される一連の処理は、所定時間毎の処理として電子制御装置61によって実行される。この実行に際しては、前提条件成立カウンタが用いられる。前提条件成立カウンタは、前提条件が成立している状況の継続時間を計時するためのものである。そして、判定結果は実行フラグの設定状況(「ON」又は「OFF」)により表される。実行条件が成立している場合には実行フラグが「ON」に設定され、実行条件が成立していない場合には実行フラグが「OFF」に設定される。
この実行条件判定ルーチンでは、電子制御装置61は、まずステップ110において、予め設定された前提条件が成立しているか否かを判定する。ここでは、下記に示す条件A〜条件Hを前提条件とし、これらの条件A〜条件Hが全て満たされている場合にのみ、触媒床温が上昇し得る状況にある(前提条件:成立)としている。従って、条件A〜条件Hが1つでも成立していない場合には、前提条件は成立しない。
<条件A>
触媒制御モードとして触媒再生制御モード又は硫黄被毒回復制御モードが選択されて実行されていること。これは、これらの触媒制御モードでは、触媒床温を高温化して微粒子物質PMを燃焼、又は硫黄酸化物SOxを放出させるために、継続的に添加弁41から還元剤の添加が繰り返されるからである。
<条件B>
触媒床温が一定値以上であること。これは、同条件Bが満たされていない場合には、NOx触媒が十分活性化しておらず、添加弁41から還元剤を添加しても触媒床温が上昇しないおそれがあるからである。
なお、触媒床温としては、センサ等により直接検出した値を用いることが望ましいが、排気温センサ48,49により検出された排気温を触媒床温の相当値として用いてもよい。これ以外にも、エンジン11の運転状態(例えばエンジン回転速度、燃料噴射弁24からの燃料噴射量等)に基づき、さらには熱容量による応答遅れを考慮して、排気から与えられる熱量により触媒床温を推定計算してもよい。
<条件C>
排気温センサ49にて検出される排気温が一定値未満であること。ただし、この条件は、触媒床温が上がり過ぎた場合(上記一定値以上になった場合)に、添加弁41からの還元剤の添加を停止して、触媒床温を昇温させる制御を行わないようにした排気浄化装置12を前提としている。
<条件D>
NOx触媒の劣化状態を検出し得る燃焼モードであること。この燃焼モードとしては、低温燃焼モード以外の燃焼モードが挙げられる。これは、低温燃焼モードにおいて、EGR装置32により空燃比を理論空燃比近くまで低下させた場合に第1触媒コンバータ42内のNOx触媒の触媒床温が大きく変動することがあり、この変動による検出精度低下を防止するためである。
<条件E>
添加弁41が作動していること。これは、添加弁41から還元剤が添加されないと触媒床温が意図するように上昇しないからである。
<条件F>
排気温センサ48,49に異常が検出されていないこと。ただし、この条件は、各排気温センサ48,49の断線等の異常を検出する処理が行われる排気浄化装置12を前提としている。
<条件G>
排気マニホールド31に付着する燃料の量が一定値以下であること。これは、添加弁41から還元剤が添加されても排気マニホールド31に付着する量が多い場合には、その分触媒床温の昇温に関わる添加剤が少なくなるためである。
<条件H>
バッテリの出力電圧が一定値以上であること。これは、低電圧では各排気温センサ48,49の検出精度が低下するためである。
上記ステップ110の判定条件が満たされている(前提条件:成立)と、触媒床温が上昇し得る状況にあると考えられることから、ステップ120に移行し前提条件成立カウンタをカウントアップする。例えば、同カウンタを予め定められた値ずつインクリメントすることにより、本処理の制御周期を単位として時間をカウントする。このカウント動作により、前提条件の成立状況の継続時間が計時される。
次に、ステップ150において、前提条件成立カウンタの値が所定値α以上であるかどうかを判定する。この判定条件が満たされていないと、触媒床温が十分高くなっておらず、NOx触媒の劣化状態を精度よく判定し得る状況には未だ至っていないとして、ステップ170において実行フラグを「OFF」に設定する。この設定処理を経た後に、実行条件判定ルーチンを一旦終了する。
前提条件の成立状況が継続すると、その成立期間中にはステップ120の処理が繰り返されて前提条件成立カウンタの値が増加してゆく。一方、このときには触媒床温は上昇してゆく。そして、上記条件成立カウンタの値が上記所定値α以上になって上記ステップ150の判定条件が満たされると、NOx触媒の劣化状態を精度よく判定し得る状況になっているとして、ステップ160において実行フラグを「ON」に設定する。この設定処理を経た後に、実行条件判定ルーチンを一旦終了する。
なお、上記のように設定された実行フラグは、NOx触媒の劣化状態の判定を行うかどうかを決定する際の指標の少なくとも1つとして用いられる。劣化判定に際しては、例えばNOx触媒の温度等に基づき劣化量を算出し、これを劣化カウンタにて積算する。そして、劣化カウンタと所定の劣化判定値とを比較し、劣化カウンタの値が劣化判定値以上となった場合に、劣化している旨判定する。
ところで、前提条件が成立している状態から成立していない状態に切り替わった場合には、触媒床温が低下し、劣化状態を判定するための実行条件が満たされなくなる。前提条件が成立していない状況としては、例えば減速時、アイドリング時等、エンジン11に加わる負荷が小さいときが挙げられる。一方、実行条件判定ルーチンでは、上記前提条件の不成立に応じ、上記ステップ110の判定条件が満たされなくなる。この場合には、前提条件が再び成立する際に備えて前提条件成立カウンタの初期値を設定する処理を行う。
ここで、前提条件が成立していない状況に切り替わった場合に、背景技術と同様にして触媒床温が図3において二点鎖線で示すように急激に低下し(タイミングt2参照)、前提条件が前回成立している状況に切り替わったとき(触媒床温の昇温開始時、タイミングt1参照)の温度に戻っているものと仮定する。この場合には、前提条件の成立期間中にカウントした値(計時した継続時間)を、図3において一点鎖線で示すようにクリア(=0)することが考えられる。
しかし、上記値(=0)を、前提条件が再び成立している状況に切り替わるとき(タイミングt3参照)の前提条件成立カウンタの初期値とすると、実際の触媒床温に対応していない値が初期値として設定されるおそれがある。これは、前提条件が成立していない状況に切り替わった場合、多くは、触媒床温は図3において実線で示すように時間の経過とともに徐々に低下するためである。そして、前提条件の不成立期間にもよるが、前提条件が再び成立している状況に切り替わるときには、触媒床温は、前提条件が前回成立している状態から成立していない状態に切り替わったときよりも僅かに低下しているにとどまり、前提条件が前回成立している状況に切り替わったとき(昇温開始時)の温度よりも高くなっていることが多い。
上記のようにクリアされた値(=0)を、前提条件が再び成立している状況に切り替わった時点の初期値とすると、前提条件が再び成立している状況に切り替わることに伴い、この初期値からカウントアップを再開した場合、所定値αに達する時期が遅くなる。劣化状態を判定し得る状況になったと判断するまでに不要に時間がかかり、劣化判定の機会が少なくなる。
そこで、こうした不具合を解消すべく上記ステップ110の判定条件が満たされない場合にはステップ130へ移行し、前提条件成立カウンタが採り得る最小値(この場合、「0」)よりも大きいかどうかを判定する。前提条件成立カウンタが「0」であって、ステップ130の判定条件が満たされていない場合には、そのまま上述したステップ150へ移行する。
これに対し、ステップ130の判定条件が満たされている場合には、ステップ140へ移行し、前提条件成立カウンタをクリアするのではなく所定の値だけ減算(デクリメント)する。この減算処理により、前提条件の不成立期間中計時した継続時間が減算される。
減算値としては、触媒床温の低下量(低下代)に対応したものを用いることが望ましい。ここで、触媒床温は、NOx触媒を通過する空気の影響を受ける。すなわち、排気中の空気がNOx触媒を通過すると、その通過の過程でNOx触媒の熱が空気によって持ち去られて、触媒床温が低下する。この際の低下度合いは、空気による熱の持ち去り量(空気の量)に応じて異なる。また、NOx触媒を通過する排気中の空気の量と、エンジン11の燃焼室14に吸入される空気の量(吸入空気量)との間には相関がある。この点を考慮し、減算値として、吸入空気量に基づき設定された一定の値を用いる。ここでは、前提条件の不成立期間中に吸入空気量が採り得る最大の値となった場合(触媒床温が最も大きく低下する場合)を基準とし、このときに過不足のない値を減算値とする。
上記ステップ140の減算処理により、前提条件成立カウンタの値は、そのときの触媒床温に対応した値、又はそれに近い値となる。ステップ140の処理は、前提条件が再び成立している状況に切り替わる直前まで行われる。そして、再び前提条件が成立している状況に切り替わった場合には、その切り替わる直前の前提条件成立カウンタの値が初期値とされてカウントアップ(ステップ120)が再開される。
ステップ140の処理を経た後、上述したステップ150へ移行し、所定値αとの比較を行って実行フラグを設定する。
上記実行条件判定ルーチンにおける電子制御装置61によるステップ110,120の処理は計時手段に相当し、ステップ110,140の処理は減算手段に相当する。
上述した実行条件判定ルーチンに従って処理が繰り返し行われると、前提条件の成立/不成立に応じ触媒床温及び前提条件成立カウンタが、例えば図3に示すように変化する。この例は、タイミングt1よりも前、及びタイミングt2〜t3の期間に前提条件が成立せず、タイミングt1〜t2の期間、及びタイミングt3以降の期間に前提条件が成立した場合を示している。
タイミングt1よりも前の期間には前提条件が成立せず、前提条件成立カウンタは採り得る最小値(=0)を保持している。そのため、実行条件判定ルーチンでは、ステップ110→130→150→170→リターンの順に処理が行われる。また、この期間では、触媒床温が上昇していない。すなわち、排気通路15における第2触媒コンバータ43の排気上流側と排気下流側とで排気温に差がない。
タイミングt1〜t2の前提条件の成立期間にあっては、実行条件判定ルーチンでは、ステップ110→120→150→170(又は160)→リターンの順に処理が行われる。ステップ120の処理により、前提条件成立カウンタの値が増加してゆく。この値と所定値αとの大小関係に基づき、実行フラグが「OFF」又は「ON」に設定される。また、この期間では、前提条件が成立していることから触媒床温が時間の経過に従い上昇(昇温)してゆく。
タイミングt2で前提条件が成立しない状況に切り替わった場合、実行条件判定ルーチンでは、ステップ110→130→140→150→170→リターンの順に処理が行われる。ステップ140の処理により、前提条件成立カウンタの値が減少する。減算値が一定値であることから、前提条件の不成立期間中(タイミングt2〜t3)、前提条件成立カウンタは一定の変化勾配をもって減少する。また、この期間では触媒床温が徐々に低下してゆく。
前提条件が再び成立している状況に切り替わるタイミングt3では、触媒床温は、前提条件が前回成立していない状況に切り替わったタイミングt2での触媒床温よりも若干低下している。これに対し、前提条件成立カウンタの値は上記ステップ140の処理(減算処理)により、タイミングt2での値よりも若干小さくなっている。この値は、タイミングt2で前提条件成立カウンタをクリアした場合(一点鎖線参照)より大きい。このようにして、前提条件が再び成立している状況に切り替わるタイミングt3では、前提条件成立カウンタの値はそのときの触媒床温に対応した値となる。
タイミングt3以降、実行条件判定ルーチンでは、上述したタイミングt1〜t2の期間と同様の順に処理が行われる。前提条件成立カウンタについては、タイミングt3における値が初期値とされ、その値からカウントアップ(ステップ120)が再開される。前提条件成立カウンタは時間とともに増加してゆく。また、この期間には、上述したタイミングt1〜t2の期間と同様に触媒床温が上昇する。
以上詳述した第1実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)前提条件の成立に応じて前提条件成立カウンタをカウントアップすることで、前提条件の成立状況の継続時間を計時している。前提条件が成立しなくなると、前提条件成立カウンタをクリア(=0)するのではなく減算し、その減算結果を前提条件が再び成立している状況に切り替わったときの初期値としている。
従って、前提条件の不成立期間中に触媒床温がさほど低下せず、前提条件が前回成立している状況に切り替わったとき(昇温開始時)の値まで低下しなくても、前提条件が再び成立している状況に切り替わったときには、初期値を「0」とした場合よりも大きな値から前提条件成立カウンタのカウントアップを再開することができる。そのため、その後に前提条件の成立状況が続いた場合には、前提条件成立カウンタの値がより短い時間で所定値αに到達する。その結果、より短い時間でNOx触媒の劣化状態を判定し得る状況にして、判定の機会を増やすことが可能となる。
(2)空気の熱の持ち去りによる触媒床温の低下を考慮して減算値(一定値)を設定し、この減算値を用いて前提条件成立カウンタを減算するようにしている。そのため、この減算により、前提条件が再び成立している状況に切り替わるときの前提条件成立カウンタの初期値として、触媒床温に対応した値を設定することができる。従って、前提条件が再び成立している状況に切り替わった場合に、上記のように設定された初期値から前提条件成立カウンタのカウントアップを再開することで、NOx触媒の劣化状態を判定し得る状況になっていることを、より速く正確に把握することが可能となる。
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態について、図4を参照して説明する。
第2実施形態は、実行条件判定ルーチンにおいて、減算値としてそのときの吸入空気量の応じた値(可変値)を用いるようにしている。これは、排気中の空気がNOx触媒を通過する際に持ち去る熱の量は、空気の量が少ないときには少なく、空気の量が多くなるに従い多くなるからである。
具体的には、電子制御装置61は、実行条件判定ルーチン(図2)のステップ110の判定条件が満たされず、かつステップ130の判定条件が満たされていると、ステップ140において前提条件成立カウンタを減算する。このステップ140では、減算に先立ち、例えばメモリに格納されているマップを参照して減算値を求める。このマップには、図4に示すように、吸入空気量が多いときには少ないときよりも減算値が大きくなるように、吸入空気量と減算値との関係が規定されている。そして、エアフロメータ17によるそのときの吸入空気量に対応する減算値を上記マップから求め、これを用いて前提条件成立カウンタを減算する。この処理を経た後にステップ150へ移行する。
上記ステップ140の処理を行うことで、例えば、前提条件の不成立期間中、吸入空気量が一定である場合には、上記図3に示すように前提条件成立カウンタは、一定の変化勾配をもって、すなわち実行条件判定ルーチンが実行される毎に一定量ずつ減少してゆく。これに対し、前提条件の不成立期間中に吸入空気量が変化する場合には、その吸入空気量に応じた変化勾配をもって前提条件成立カウンタの値が減少してゆく。吸入空気量の少ないときには小さな減少度合いでもって、また吸入空気量の多いときには大きな減少度合いでもって前提条件成立カウンタの値が減少してゆく。そして、前提条件が成立している状況に切り替わると、その切り替わる直前における前提条件成立カウンタの値を初期値としてカウントアップ(ステップ120)が再開される。
なお、上述した事項以外の事項、例えばエンジン11及び排気浄化装置12の各構成、実行条件判定ルーチンにおけるステップ140以外の処理等、については第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
従って、第2実施形態によると、上述した(1),(2)に加え、次の効果が得られる。
(3)吸入空気量が多いときには少ないときよりも大きな減算値を設定し、この減算値を用いて前提条件成立カウンタを減算することで、前提条件の成立状況の継続時間を減算するようにしている。このため、吸入空気量の少ないときに前提条件成立カウンタが過剰に減算されたり、吸入空気量の多いときに前提条件成立カウンタの減算が不足したりするのを抑制できる。前提条件の不成立期間中における吸入空気量に拘わらず、前提条件が再び成立している状況に切り替わるまでに前提条件成立カウンタ(継続時間)を確実に触媒床温に対応したものにすることが可能となる。
(第3実施形態)
次に、本発明を具体化した第3実施形態について、図5を参照して説明する。
第3実施形態は、実行条件判定ルーチンにおいて、減算値として、単位時間当りの触媒床温の低下量(低下度合い)を考慮して設定された値を用いている。ここで、減算値としては一定値であってもよいし、また、触媒床温の低下度合いに応じて異なる可変値であってもよい。
具体的には、電子制御装置61は、実行条件判定ルーチン(図2)のステップ110の判定条件が満たされず、かつステップ130の判定条件が満たされていると、ステップ140において前提条件成立カウンタを減算する。ここで、減算値が一定値である場合には、例えば、前提条件の不成立期間中における触媒床温の低下度合いが採り得る最大の値となった場合を基準とし、このときに過不足のない値を減算値とする。減算値が可変値である場合には、減算に先立ち、例えばメモリに格納されているマップを参照して減算値を設定する。このマップには、図5に示すように、触媒床温の低下度合いが大きいときには小さいときよりも減算値が大きくなるように、触媒床温の低下度合いと減算値との関係が規定されている。そして、そのときの触媒床温の低下度合いを求める。例えば、実行条件判定ルーチンについて、前回制御周期での触媒床温と今回制御周期での触媒床温との差を求め、これを低下度合いとする。なお、触媒床温としては上述したように実測値(触媒床温相当値)や推定値を用いることができる。この低下度合いに対応する減算値を上記マップから求め、これを用いて前提条件成立カウンタを減算する。この処理を経た後にステップ150へ移行する。
上記ステップ140の処理を行うことで、例えば、減算値が一定値である場合には、前提条件成立カウンタは、一定の変化勾配をもって、すなわち実行条件判定ルーチンが実行される毎に一定量ずつ減少してゆく。これに対し、減算値が可変値である場合には、触媒床温の低下度合いに応じた変化勾配をもって前提条件成立カウンタの値が減少してゆく。触媒床温の低下度合いの小さいときには小さな変化勾配でもって、また低下度合いの大きいときには大きな変化勾配でもって前提条件成立カウンタの値が減少してゆく。
なお、上述した事項以外の事項、例えばエンジン11及び排気浄化装置12の各構成、実行条件判定ルーチンにおけるステップ140以外の処理等、については第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
従って、第3実施形態によると、上述した(1)に加え、次の効果が得られる。
(4)前提条件が成立していない状況に切り替わった場合には触媒床温が低下するところ、触媒床温の低下度合いに応じた減算値を用いて前提条件成立カウンタを減算するようにしている。そのため、この減算により、前提条件成立カウンタをそのときの触媒床温に対応したものにすることができる。従って、前提条件が再び成立している状況に切り替わった場合に、上記のように設定された値から前提条件成立カウンタのカウントアップを再開することで、NOx触媒の劣化状態を判定し得る状況になっていることを、より速く正確に把握することが可能となる。
(5)触媒床温の低下度合いが大きいときには小さいときよりも大きな減算値を設定し、この減算値を用いて前提条件成立カウンタを減算することで、前提条件の成立状況の継続時間を減算するようにしている。このため、触媒床温の低下度合いの小さいときに前提条件成立カウンタが過剰に減算されたり、触媒床温の低下度合いの大きいときに前提条件成立カウンタの減算不足が生じたりするのを抑制できる。前提条件の不成立期間中における触媒床温の低下度合いに拘わらず、前提条件が再び成立している状況に切り替わるまでに前提条件成立カウンタ(継続時間)を確実に触媒床温に対応したものにすることが可能となる。
(第4実施形態)
次に、本発明を具体化した第4実施形態について、図6〜図8を参照して説明する。
ここで、触媒床温は前提条件が成立しない場合に低下し、成立する場合に上昇する。触媒床温が低下する際のその低下量と、前提条件が成立していない状況に切り替わって再び成立している状況に切り替わるまでの期間(不成立時間)との間には相関がある。低下量は不成立時間が短いときには少なく、不成立時間が長くなるに従って多くなる。そこで、第4実施形態では、実行条件判定ルーチンにおいて、減算値として不成立時間を考慮して設定した値を用いるようにしている。
図7のフローチャートは、上記図2に対応する「実行条件判定ルーチン」を示している。このルーチンに示される一連の処理は、所定時間毎の処理として電子制御装置61によって実行される。
この実行条件判定ルーチンでは、電子制御装置61は、まずステップ210において、前提条件が成立しているか否かを判定する。この前提条件の内容は第1実施形態で説明したものと同じである。
ステップ210の判定条件が満たされていると、ステップ220において、実行条件判定ルーチンが前回実行されたとき(前回制御周期)に前提条件が成立していたかどうかを判定する。この判定条件が満たされていると(成立状況が継続していると)、ステップ230へ移行して前提条件成立カウンタをカウントアップする。実行条件判定ルーチンが一定時間毎に実行されて、前提条件成立カウンタが一定時間毎にカウントアップされることから、上記ステップ230の処理により前提条件の成立状況の継続時間が計時される。そして、ステップ230の処理を経た後にステップ260へ移行する。
前提条件が成立しなくなって上記ステップ210の判定条件が満たされなくなると、ステップ240において、その状況(前提条件:不成立)に切り替わってからの経過時間(不成立時間)を計時する。この計時には、例えば上述した前提条件成立カウンタと同様にしてカウンタを用い、ステップ240の処理を行う毎にカウントアップする。そして、ステップ240の処理を経た後に上記ステップ260へ移行する。この場合には、前提条件成立カウンタに対しては何ら操作が行われず、従って、前提条件成立カウンタについては前提条件が「不成立」に切り替わる直前の値が保持される。
これに対し、上記ステップ210の判定条件が満たされ、かつステップ220の判定条件が満たされない場合、すなわち前回制御周期までは前提条件が成立していなかったが、今回の制御周期で前提条件が「不成立」から「成立」に切り替わった場合には、ステップ250へ移行し、前提条件成立カウンタの減算に用いる減算値を算出する。この算出には、例えばメモリに格納されているマップを参照する。このマップには、図6に示すように、前提条件の不成立時間が長いときには短いときよりも減算値が大きくなるように、不成立時間と減算値との関係が規定されている。そして、上記ステップ240の処理により計時された前提条件の不成立時間に対応する減算値を上記マップから求め、これを用いて前提条件成立カウンタを減算する。この処理を経た後にステップ260へ移行する。次回の制御周期でも引き続き前提条件が成立している場合には、上記減算結果を初期値として前提条件成立カウンタのカウントアップ(ステップ230)が再開される。
なお、ステップ260以降では、上述した図2のステップ150〜170と同様の処理を行う。すなわち、ステップ260において前提条件成立カウンタの値が所定値α以上であるかどうかを判定し、同判定条件が満たされているとステップ270において実行フラグを「ON」に設定する一方、満たされていないとステップ280において実行フラグを「OFF」に設定する。ステップ270又はステップ280の処理を経た後に実行条件判定ルーチンを一旦終了する。
上述した実行条件判定ルーチンに従って処理が繰り返し行われると、前提条件の成立状況(成立/不成立)に応じ触媒床温及び前提条件成立カウンタが、例えば図8に示すように変化する。この例は、タイミングt11よりも前の期間、及びタイミングt12よりも後の期間に前提条件が成立し、タイミングt11〜t12の期間に前提条件が成立しなくなった場合を示している。なお、図8中の一点鎖線及び二点鎖線が示す内容は、図2におけるものと同様である。
タイミングt11よりも前の期間(前提条件:成立)にあっては、実行条件判定ルーチンでは、ステップ210,220の判定条件がともに満たされることから、ステップ210→220→230→260→280(又は270)の順に処理が行われる。ステップ230の処理により、前提条件成立カウンタの値が増加してゆく。この値と所定値αとの大小関係に基づき、実行フラグが「OFF」又は「ON」に設定される。また、上記期間では、前提条件が成立していることから触媒床温が時間の経過に従い上昇(昇温)してゆく。
タイミングt11で前提条件が成立していない状況に切り替わった場合、実行条件判定ルーチンでは、ステップ210→240→260→280→リターンの順に処理が行われる。ステップ240の処理により不成立時間が計時される一方、前提条件成立カウンタは保持される。
タイミングt11から前提条件が再び成立している状況に切り替わるタイミングt12までの期間には、触媒床温が徐々に低下する。タイミングt12では、触媒床温は、前提条件が前回成立していない状況に切り替わったタイミングt11での触媒床温よりも若干低下している。これに対し、実行条件判定ルーチンでは、ステップ210の判定条件は満たされるもののステップ220の判定条件が満たされないことから、ステップ210→220→250→260→280→リターンの順に処理が行われる。この際、ステップ250の処理により、不成立時間(ステップ240)に対応した減算値にて前提条件成立カウンタが減算される。この減算により、前提条件成立カウンタの値は、前提条件が前回成立していない状況に切り替わったタイミングt11での値よりも小さくなる。この値は、タイミングt11で前提条件成立カウンタをクリアした場合(図8の一点鎖線参照)より大きい。このようにして、前提条件が再び成立している状況に切り替わるタイミングt12では、前提条件成立カウンタはそのときの触媒床温に対応した値となる。
タイミングt12以降、実行条件判定ルーチンでは、上述したタイミングt11よりも前の期間と同様の順に処理が行われる。前提条件成立カウンタについては、タイミングt12におけるステップ250の処理により減算された後の値が初期値とされ、その値からカウントアップが再開される。前提条件成立カウンタは触媒床温の上昇に対応して時間とともに増加してゆく。また、タイミングt12以降は、前提条件が成立していることから触媒床温は上昇する。
なお、上述した事項以外の事項、例えばエンジン11、排気浄化装置12等の構成については第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
従って、第4実施形態によると、上述した(1)に加え、次の効果が得られる。
(6)前提条件が成立しなくなった場合には触媒床温が低下するところ、その前提条件の不成立時間の計時を開始する。そして、前提条件が再び成立している状況に切り替わったときには不成立時間に応じた減算値を設定し、この減算値を用いて前提条件成立カウンタを減算するようにしている。そのため、この減算により、前提条件が再び成立している状況に切り替わったときには前提条件成立カウンタを触媒床温に対応した値とすることができる。従って、その後に前提条件の成立状況が続く場合には、上記の値から前提条件成立カウンタのカウントアップを再開することで、NOx触媒の劣化状態を判定し得る状況になっていることを、より速く正確に把握することが可能となる。
(7)前提条件の不成立時間が長いときには短いときよりも大きな減算値を設定し、この減算値を用いて前提条件成立カウンタを減算することで、前提条件の成立時間を減算するようにしている。このため、不成立時間の短いときに前提条件成立カウンタが過剰に減算されたり、不成立時間の長いときに前提条件成立カウンタの減算不足が生じたりするのを抑制できる。従って、不成立時間に拘わらず、前提条件が再び成立している状況に切り替わって前提条件成立カウンタのカウントアップ(継続時間の計時)を再開するまでに、その前提条件成立カウンタの値(継続時間)を触媒床温に対応したものにすることができる。
なお、本発明は次に示す別の実施形態に具体化することができる。
・前提条件の不成立期間における触媒床温の低下度合いは、そのときの触媒床温によって異なり、同触媒床温が高いときには低いときよりも、低下度合いが大きいものと考えられる。
そこで、触媒床温に応じた減算値を設定する。触媒床温の高いときには低いときよりも減算値を大きな値に設定する。そして、この設定した減算値を用いて前提条件成立カウンタを減算することで、前提条件が再び成立している状況に切り替わったときの前提条件成立カウンタの初期値とする。こうすることで、触媒床温に対応した初期値を設定することができる。従って、前提条件が成立している状況に再び切り替わった場合に、上記初期値から前提条件成立カウンタのカウントアップ(継続時間の計時)を再開することで、NOx触媒の劣化状態を判定し得る状況になっていることを、より速く正確に把握することが可能となる。
・上記各実施形態における前提条件の内容は一例に過ぎない。NOx触媒の温度が上昇し得る状況にあることを把握できるものであることを条件に、この前提条件の内容を適宜変更してもよい。
・上記各実施形態における減算値を、マップに代えて所定の演算式に基づいて算出するようにしてもよい。
・上記第2実施形態において減算値を算出する際に用いるマップ(図4参照)は、吸入空気量が多いときに少ないときよりも減算値が大きくなるマップ構造を有するものであればよい。従って、この条件を満たす範囲内でマップ構造を適宜に変更してもよい。例えば、吸入空気量の採り得る範囲を2つ以上の領域に分け、領域毎に減算値を設定(同一領域内では減算値同一)してもよい。
第3及び第4実施形態において減算値を算出する際に用いるマップ(図5、図6参照)についても、上記と同様にマップ構造を変更してもよい。第3実施形態では、触媒床温の低下度合いが大きいときには小さいときよりも減算値が大きくなるマップ構造とし、第4実施形態では、前提条件の成立時間が長いときには短いときよりも減算値が大きくなるマップ構造とする。
・第2及び第3実施形態において、前提条件成立カウンタを第4実施形態と同様に操作するようにしてもよい。すなわち、実行条件判定ルーチンが実行される毎に前提条件成立カウンタを減算することに代え、前提条件の不成立期間中は前提条件成立カウンタを保持しておき、前提条件が再び成立している状況に切り替わったときに一度に前提条件成立カウンタを減算するようにしてもよい。
例えば、第2実施形態では、前提条件の不成立期間中、吸入空気量を積算する。前提条件が再び成立している状況に切り替わったときには、その時点における吸入空気量の積算値に対応する減算値を求め、これを前提条件が成立していない状況に切り替わったときにおける前提条件成立カウンタから減算する。
また、第3実施形態では、前提条件の不成立期間中、触媒床温の低下度合い(単位時間当りの低下量)を積算する。前提条件が再び成立している状況に切り替わったときには、その時点における低下度合いの積算値に対応する減算値を求め、これを前提条件が成立していない状況に切り替わったときにおける前提条件成立カウンタから減算する。
・本発明は、ディーゼルエンジンに限らず、希薄燃焼式ガソリンエンジン等について上記各実施形態と同様な触媒構成を採用した場合にも適用できる。
11…ディーゼルエンジン(内燃機関)、15…排気通路、42…第1触媒コンバータ(排気浄化触媒)、43…第2触媒コンバータ(排気浄化触媒)、61…電子制御装置(計時手段、減算手段)。