JP4314396B2 - 塩から得られたバインダーを使用して粉末から製造される金属及びセラミック含有パーツの製造方法 - Google Patents

塩から得られたバインダーを使用して粉末から製造される金属及びセラミック含有パーツの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
政府の権利 アメリカ合衆国政府は、契約/許認可国立科学財団協力協定DMI-9420964に基づき本願発明に対して一定の権利を有する。
【0002】
関連出願 本願発明者のうちの4名を出願人として1997年9月26日に出願された米国仮出願60/060,090「立体印刷により製造される金属パーツのための反応性バインダー」の優先権を主張する。この仮出願の全内容を本文に援用する。
【0003】
背景 本願発明は粉末から形成あるいは成型される金属及びセラミックを含有するパーツ(parts)に関する。さらに特定すれば、本願発明はそのようなパーツを製造し、その寸法を制御する方法に関する。
【0004】
【従来の技術】
粉末冶金製法は基本的には2つに分類される。粉末をプレスする場合、粉末は2体の硬質鋼型間に配置され、典型的には80%を越える圧密度にまでプレスされる。このプレスあるいは圧密化工程で粉末粒子は変形して力学的に相互絡合し、多孔質スケルトン(porous skeleton)を提供する。多くの場合に、このスケルトンはその後に低融点の金属材料で浸潤(infiltration)され、充分に圧密化されたパーツが成型される。例えば、鋼粉末のスケルトンは銅合金で浸潤処理されることが多い。
【0005】
あるいは、金属射出成型技術が使用され、金属粉末がバインダー材料と混合され、型内に射出される。バインダーが固化した後、その粉末パーツは取り出される。この圧粉体は典型的には約60%の圧密度である。次にバインダーは燃焼除去あるいは化学的に除去され、その後にスケルトンは燒結処理される。一般的に、このスケルトンは完全圧密度(full density)の近辺にまで燒結処理される。
【0006】
粉末冶金法によって金属部品を製造する際に、最終部品の寸法の制御は重要な問題である。このような寸法制御は、製造されている部品が成型法による他の部品の製造のための工具または型として使用されるときには特に重要な問題である。
【0007】
1985年11月19日に発行されたガードナー他の米国特許4,554,218の「浸潤粉末金属複合製品」において一般的に解説されているツール製造プロセスでは、スケルトンは型体周囲に粉末を圧密処理し、ポリマー性バインダーで固持させて成型される。型体から取り外した後、そのポリマー性バインダーは燃焼除去され、スケルトンは軽く燒結処理される。その後の低融点合金による浸潤処理は充分に圧密されたパーツを提供する。
【0008】
粉末スケルトンを圧密処理するための2つの普通の手法は、完全圧密化するまで燒結処理することと、粉末スケルトン内の孔部を別材料で充填することである。これら孔部は低融点金属の浸潤処理で充填するか、あるいはエポキシ等のポリマー材で浸潤させて充填する。
【0009】
このプロセスの最初のステップで成型されるスケルトンは55%から85%の圧密度を有している。もし完全圧密化への燒結処理が選択されるなら、大きな追加的収縮現象が伴う。この収縮現象は、物質が粒子内部から排出し、粒子間に大きなネック部分(neck)を形成するためである。例えば、もし60%の圧密度のスケルトンが完全圧密化にまで燒結処理されると、その圧縮率は約18%線形(linear)となるであろう。この大きな収縮度は、もし目的が良好な寸法精度を提供することであれば重大な問題を提起する。例えば、もし収縮率が1%であれば、15%の収縮率を予定する場合の寸法はオリジナル寸法に対しての0.15%の不確定要因を有することになる。よって、10cmの寸法では0.15mmの不確定要素となり、精密部品が要求されるときには非常に大きな誤差となる。この理由で、スケルトンを製造し、そのスケルトンを完全圧密度にまで燒結処理する方法は精密部品が必要な場合には実用的ではない。
【0010】
金属粉末を利用する処理技術は“立体印刷あるいは三次元印刷(three-dimensional printing)(3D印刷”)として知られ、多数の特許、例えば、サックス、ハガティ、シーマ及びウィリアムズの米国特許5,204,055「三次元印刷技術」、サックス、ハガティ、シーマ及びウィリアムズの米国特許5,340,656「三次元印刷技術」、シーマ、サックス、ファン、ブレット、ミカエルズ、カニュージャ、ラウダー、リー、ブランカジオ、クロジュアウ及びツアークの米国特許5,387,380「三次元印刷技術」、サックス、シーマ、ブレット及びカニュージャの米国特許5,490,882「物体の内部通路から粉末粒子を取り出す方法」、ジェームズ・ブレットの米国特許5,660,621「三次元印刷に使用されるバインダー組成物」、アレン、ミハエルズ及びサックスの米国特許5,771,402「無固形製造技術で製造されたツールの熱特性の向上」(1998年7月7日発行)、サックス、クロジュアウ、ファン、ブレット、シーマ及びブランカジオの米国特許5,807,437「高速・高品質三次元印刷」(1998年9月15日発行)に記述されている。これら3D印刷特許の内容を本明細書に援用する。
【0011】
3D印刷はまた係属中の出願、例えば、1996年2月12日に出願されたサックス、シーマ、ブレット、カニュージャ及びユーの米国特許願08/600,215「粉末除去のためのセラミック型仕上げ技術」、1997年5月15日に出願されたサックス及びサーディの米国特許願08/856,515「連続インク噴射液滴発生器」、1997年4月9日に出願されたサックス及びシーマの米国特許願08/831,636「マスクを使用した三次元製品の製造」、1997年9月26日に出願されたサックス、ユー、アレン及びシーマの米国特許願(仮出願)60/060,090「三次元印刷により製造される金属パーツのための反応バインダー」、1998年7月27日に出願されたギュー及びサックスの米国特許願(仮出願)60/094,288「物体孔部に形状合致した冷却通路を備えた射出成型用の型の製造方法」、1998年6月12日に出願されたサックス、カラドナ、サーディ、グラウ、シーマ及びサクストンのPCT出願PCT/US98/12280「粉末の噴射層及び微粉末ベッドの製造」にも記述されている。これら文献の内容を本願に援用する。
【0012】
3D印刷処理のフレキビリティ性によって粉末形態で入手できるいかなる材料からでもパーツの製造が可能である。このようなパーツは実質的にどのような形状をも有することができ、張出部、切取部及び内部繰抜部の提供も可能である。3D印刷技術は本来はセラミック製立体部品の製造のために開発されたものであるが、金属パーツの製造にも有用である。このシステムの主たる利用法の1つは、プラスチック部品のための射出成型によるツールの製造である。射出成型用の型は、玩具からフロッピーディスクまでの多様な製品の製造に利用できる。このようなツールの製造に要するリードタイムは2、3週間から数ヶ月である。3D印刷技術を利用して提供される迅速製造はこのリードタイムを大きく短縮させ、生産性を向上させるとともに製品開発期間をも短縮させる。
【0013】
プラスチック部品の設計者はしばしば厳しい部品精度を要求する。従って、射出成型用の型の誤差の許容範囲は重要な要素となる。知られた3D印刷技術では、金属パーツはステンレス鋼粉末内にポリマー性バインダーを印刷することで製造される。結合されたパーツはその後に軽く燒結処理されてバイダー成分が除去される。このバイダー成分除去処理はポリマー性バインダーの完全燃焼を必要とする。これの処理には面倒なプロセスが要求され、コストや維持負担が上昇する。軽く燒結処理され、バインダー除去された後、パーツは溶解金属合金で浸潤処理される。ときには、重力による沈降現象や、その他のパーツ変形を防止するため、この圧粉体は耐熱物体内で軽く再圧密処理され、緩い部分が固化される。この再圧密処理は“セッタリング(settering)”或いは“セッター処理”と呼称される。場合によっては、この浸潤ステップ後に2回目のさらに厳格な燒結ステップが続く。
【0014】
このような厳格な燒結ステップは、さらに高い耐衝撃性、生産性及び張力のごとき力学特性を達成させるために提供される。これらの優れた力学特性は粒子間で増加したネッキング現象によって改善されていると考えられている。しかし、燒結処理中のまさにこのネッキング現象によって収縮現象が発生するのである。
【0015】
これら印刷後の処理によって約-1.5%±0.2%の線形寸法変化(linear dimensional change)である寸法変動が引き起こされる。換言すると、平均収縮率は1.5%程度である。しかし、収縮率で±0.2%程度の不確定要因が発生する。大きな部品に対しては、これらの不確定要素は(絶対値において)非常に大きくなる。この不確定要因はパーツの寸法制御を非常に困難にする。さらに、パーツの寸法成長が浸潤工程中に観察される。この寸法成長はある程度予測できるが、この成長度も不確定要因を伴い、最終的に得られる浸潤パーツの寸法の不確定さが増大する。
【0016】
知られた3D印刷技術は、大きな圧粉パーツから作業を開始することで所定量の予測された収縮を補償することができる。後処理中に発生する収縮は、圧粉パーツが印刷処理されたときに対処される。しかし、前述のごとく、この収縮現象は所定量(±0.2%)の誤差を有しており、均等には発生しない。そのため、最終寸法はいくらかの不確定さを有した変形パーツとなり得る。この理由で、金属パーツ製造のための別手法による粉末/バイダーシステムが望まれる。
【0017】
従って、3D印刷によって製造される金属パーツの寸法制御を改善する必要がある。1つの方法は低平均収縮率を有した材料系を使用することであろう。収縮の不確定要素(誤差)は収縮率に対応して減少すると想定される。例えば、平均収縮率0.1%の材料は±0.1%以下の収縮偏差(誤差)を有するであろう。さらに、平均収縮率に対する収縮度の同様な不確定度が、0.02%以下の収縮偏差をもたらすことが発見されるであろう。例えば、10インチ(25.4cm)の寸法のツールが通常の3D印刷技術で製造される場合には、許容差は±0.02インチ(0.05cm)となるであろう。しかし、±0.02%の不確定度を有した低収縮率材料系では、許容差はせいぜい±0.002インチ(0.005cm)程度となろう。
【0018】
低平均収縮を提供する方法は現在知られていない。収縮の主要な原因は燒結ステップであり、これは粉末顆粒体を互いの方向に引きつけさせるものである。
【0019】
よって、本願発明の目的は、粉末顆粒の燒結処理を最小限度に留めるか排除することであり、燒結処理が必要な場合には収縮程度を最低限度に留めることである。燒結の必要性はこのような方法で減少あるいは排除されるので、もし圧密化が望まれるなら、そのようなパーツを他の手段、例えば浸潤処理で完全圧密化させることが必要であろう。
【0020】
収縮及び変形を減少させるための選択された方法は、得られたパーツに優れた強度とエッジ特性とを提供するものでなければならず、圧密処理が望まれれば有効な浸潤処理を提供するものでなければならない。さらに、この選択された方法は、生産量を減らしたり、張力、衝撃耐久度等々のごとき最終製品の力学特性に悪影響を及ぼしてはならない。実際に、スケルトンを形成する方法は望む力学特性の提供に有効なものが望ましい。
【0021】
従来式燒結技術の別な欠点は、燒結処理中に沈降現象及び他の変形現象を排除するためには耐熱材料内で圧粉パーツをセッター処理すなわち固持させる必要があることである。このセッター処理ステップは必要である。なぜなら、当初の粉末ベッドの材料は最終パーツを形成するものと本質的に同一だからである。よって、もしベッド全体が、パーツを形成する粉末部分を燒結処理する温度にまで加熱されると仮定するなら、ベッド全体が巨大ブロックに燒結されることになる。この問題の現在の解決法であるセッター処理は不都合な特徴を有している。セッタリングはオリジナル粉末ベッドの未印刷領域を取り出し、その脆い圧粉パーツを別の粉末ベッド内で圧密し、そのパーツの全ての脆い領域を確実に固持させ、燒結ステップ後にそのパーツから粉末を取り出すステップが必要である。さらに、セット処理されたパーツの燒結に本質的な対立要素が存在する。燒結パーツは収縮する傾向がある。しかし、固持用セッタリング粉末は収縮に抵抗する傾向がある。さらに、セッター処理は燒結ステップの付随処理であり、前記したそれ自身の欠点を有している。
【0022】
粉末粒子とバインダー溶液とを混合して均質混合物を準備し、成型処理を施して結合状態で乾燥させ、その後に熱処理する従来技術も存在する。凝集を防止し、均質な混合体を得るため、その粒子と液体とを混合中に激しく攪拌して完全に混合しなければならない。バインダーを混合して均質な混合物を達成させることの欠点は、望む形状を提供させる充分に十分流動性を備えたスラリーの獲得には大量の液体を必要とすることである。従って、粉末の圧密部分の割合は小さく、圧粉パーツの密度は低くなる。粉末の相対的に小さい圧密率は、スラリーが型を満たすように流動するときに材料の均質度を低下させる。バインダー溶液を提供するこの方法のさらなる欠点は、物体内の所定の領域内だけにバインダー液を提供することが不可能あるいは非常に困難なことである。一般的に、物体全体がバインドされるであろう。
【0023】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本願発明の1目的は、その成型に平均収縮をほとんど、あるいは全く必要とせず、収縮の変動に関して高い確定要因を提供するスケルトンの製造方法の提供である。本願発明の別目的は、その後の圧縮ステップ中に変形を起こしにくいスケルトンの提供である。
【0024】
本願発明の別な目的は、粉末体内の特定個所に液体バインダーを提供し、粉末粒子の大きな相対的移動を要せずに粒子を最終製品内と同じポジションに存在させ、粉末と液体との均質な組み合わせを高圧密率で提供することである。
【0025】
本願発明の別目的は、第1粉末ベッド内で最初に処理し、取り出して第2粉末ベッド内で再圧密し、その後に取り出すことをせずに、湿潤処理ができる状態でプレフォームを提供することである。
【0026】
本願発明の別な目的は、全処理工程を通じて印刷された要素を安全に固持させることで、印刷された微細な要素を維持させることである。
【0027】
本願発明の別な目的は、パーツ体を通じて主要な構成粉末顆粒の燒結を回避し、燒結パーツの収縮作用と、固持媒体の収縮抵抗性との本質的な矛盾現象に有効に対処させることである。
【0028】
本願発明の別な目的は、粒子体にネッキング現象を提供し、望む力学特性に関して対応する改善をもたらし、燒結時に発生するネッキング現象に伴う収縮作用を回避させることである。
【0029】
【課題を解決するための手段】
粉末顆粒自身は燒結されない処理法が採用されると、収縮と偏差、あるいは収縮誤差を大きく減少させることが確認されている。さらに、燒結とは異なる処理法が採用され、主要粉末体の燒結温度以下の温度で成型体に強度を付与するならば、そのパーツはオリジナルの粉末ベッド内にてこの低温度で形状化されて強度が付与される。よって、パーツの繊細な部分は程よく固持される。
【0030】
本願発明は2つの明確に異なるステップで粉末形状を提供する。第1ステップでは、粉末は互いに最大接触面積を有するように提供される。さらに、粉末体は望む形状に成型される。例えば、層状であったり、型内外で成型される。第2ステップでは、別な材料が液体キャリヤ(liquid carrier)内に加えられる。この別材料は粉末粒子間で接着材として作用する。フュジティブバインダー(fugitive binder)を取り除き、粉末粒子自身を燒結処理して結合させるように結合材料を提供する従来方法と比較し、本願発明では粉末粒子をバインドあるいは結合させる材料は独立材料として提供される。2つの異なる材料を要求するのは本願発明の特徴である。一方は主要体材料として、他方はバインド材料源として利用される。さらに、配置された後には粉末の移動は介在しない。すなわち、機械的な混合処理は介在しない。
【0031】
本願発明の好適な1実施態様は、前述の米国特許5,2004,055に記載されているように3次元印刷方法に従って、粉末層を提供し、その層内に別材料を提供するステップを反復することである。別の好適実施態様では、3D印刷の代わりに、型内あるいは型周囲に圧密処理された粉末に液体キャリヤが提供される。
【0032】
本願発明の1つの特徴によれば、金属塩の溶液(例えば、水溶液)が望む個所で粉末ベッドに印刷され、粉末顆粒を結合させる。表面張力の作用で塩溶液は顆粒のネック部に集積する。塩溶液から発生した成分はそれらネック部で凝結し、顆粒を力学的に結合させる。この成分は結晶塩自体であっても、塩の還元による金属であっても、塩から金属への変換過程のものであっても構わない。
【0033】
例えば、ステンレス鋼粉末に印刷された硝酸銀(AgNO3)溶液は、溶液が乾燥するときに顆粒間のネック部に集積凝結する。別の適当な塩はロシェル塩C4H4KNaO6・4H2O(酒石酸カリウムナトリウム)である。
【0034】
場合によっては(例えば、ロシェル塩とエプソム塩)、集積凝結した結晶塩のみで充分に強度があり、その後に浸潤処理されるときにパーツの形状を維持する。
【0035】
他の場合には(例えば、硝酸銀)、結晶塩はその後に適当な環境で加熱処理によって還元される。この還元処理は金属(例えば、銀)を粉末上に堆積させる。この還元条件は、粉末上への金属堆積が薄フィルム状となるように選択される。この還元雰囲気は、塩によっては水素の存在あるいは他の還元ガスの存在を必要とする。しかし、塩によっては加熱のみを必要とし、化合物自体が分解して金属と他の副産物とが提供される。例えば、硝酸銀は212℃で溶解し、黄色の液体を提供する。440℃で銀、窒素、酸素及び酸化窒素に分解する。
【0036】
あるいは、溶液を最初に乾燥させる代わりに、塩と金属粉末を、その金属粉末と接触すると溶液内の塩が溶液内で金属に還元されるように選択することができる。本願発明の方法のこの実施態様の主要な例は、塩と金属粉末の一部が電気化学“置換(displacement)”反応を起すことにある。この反応の結果、塩の金属(またはその一部)は金属粉末上に堆積される。
【0037】
イオン溶液からのこの金属の堆積ステップは、溶解した(塩の)金属イオンに電子を加えることである。これら電子は塩溶液内に金属粉末の一部が溶解する際に提供される。特定の例としては、銀が塩の金属である場合、例えば硝酸塩であり、銅が粉末金属の場合である。別の例では、モリブデン粉末に対して置換反応が生じているアンモニア水内で溶解した炭酸銀である。
【0038】
還元の実施態様と置換反応の実施態様において、場合によっては、金属の還元後の物体は意図した目的あるいはその後の処理のためには充分に頑丈なものではない。このような場合には、その物体をさらに加熱処理し、塩から発生した金属を燒結あるいは溶解させることが可能である。この方法は塩が印刷された粉末が充分に高い燒結温度“TMAX”を有しており、後処理の加熱処理中に燒結も溶解も開始しないときには可能である。
【0039】
塩溶液が印刷された粉末が充分に高い燒結温度を有しないときには、粉末を塩結晶または還元金属で充分に固く保持させ、オリジナルの粉末から取り出して別のさらに高温タイプの粉末内でセッター処理し、未還元であれば燃焼させて塩を金属に還元させるか、あるいは、塩からの金属を燒結処理または溶解させ、強度を追加する。この場合、少量の堆積金属のみが燒結あるいは溶解し、物体の主要粉末部は燒結も溶解もしないことは重要である。よって、従来の燒結処理に関連する多くの諸問題は存在しない。場合によっては、結晶化された塩形態は充分に強力ではなく、包囲する粉末から取り出すことはできないが、結晶段階でその物体を粉末から取り出すことが望ましい。その場合、ポリマー性バインダーを印刷塩溶液に加えることが可能である。このポリマー性バインダーは印刷部分を緩く結合させて取り出させ、前述のようにセッター処理させて、さらに加熱処理を施させることができる。
【0040】
よって、本願発明の好適実施態様は三次元印刷法を利用して粉末から物体を成型させる方法である。この方法は、第1材料の粉末層を、粉末顆粒を相互に接触状態とすることで提供し、その粉末層の上に粉末顆粒を結合させる塩を含んだ液体ビヒクルを印刷するステップを含んでいる。粉末層を提供し、その粉末層上に液体を印刷するステップは、望む量の印刷された粉末が提供されるまで反復される。この印刷された液体と粉末は、第1材料とは異なり、塩溶液から発生する別材料が、粉末顆粒間のインターフェースで凝固し、隣接顆粒を層内及び層間で結合させる条件下で維持あるいは固持される。この別材料とは結晶塩であっても、還元金属であってもよい。この固持(維持)ステップは典型的には乾燥処理と熱処理とを含んでいる。この乾燥処理は粉末を積層させる連続ステップ間か、成型される物体の全体または大半が成型された後に実施できる。
【0041】
1好適実施態様によれば、追加材料のネック部は顆粒間の接触部で発生する。その後の処理は、金属膜あるいは強力金属体の形成のためにこれらネック部を熱処理するステップを含んでもよい。
【0042】
三次元印刷技術を利用する本願発明の別実施態様によれば、使用される粉末は金属粉末であり、液体ビヒクルは、液体が存在していても接触時に金属が粉末に堆積するように粉末の金属に関係する塩を含んでいる。これは典型的には置換反応として知られている。
【0043】
本願発明のさらに別の好適実施態様は粉末から物体を成型する方法であり、第1材料の粉末である顆粒の粉末を互いに接触させることを含んでいる。この粉末顆粒を相対的固定状態に維持して、顆粒を結合させる塩を含んだ液体ビヒクルが粉末内に提供される。これら液体と粉末は、第1材料とは異なり、塩溶液から発生する追加材料が粉末顆粒間のインターフェースで凝固し、隣接顆粒を結合させる条件下で維持される。この実施態様は積層法には限定されず、成型法にも利用できる。
【0044】
三次元印刷を利用した実施態様に関する前述のバリエーションも、このさらに一般化した実施態様に重要である。追加材料は結晶塩または還元金属であり、その金属は置換反応によって還元処理が可能である。追加的な処理には、粒子間のネック部で発生する結晶塩、還元金属またはバインダーによって結合された後にオリジナルベッドから成型パーツを取り出す処理が含まれる。さらなる追加処理は、必要であればセッタリング処理と共に、堆積された塩あるいは金属を燒結処理または溶解させる高温熱処理を含むことができる。
【0045】
さらに別な好適実施態様によれば、本願発明は、その処理中には実質的に無収縮性である粉末からの物体成型方法であり、第1材料である顆粒粉末を互いに接触させ、その粉末内に顆粒を結合させる塩を含んだ液体を提供し、第1材料とは異なり、塩溶液から歯発生する追加材料を粉末顆粒間のインターフェースで凝固させて隣接する顆粒を結合させ、0.5%線形を越えない収縮率で物体を強化する条件でそれら液体と粉末とを固持させることを含んでいる。
【0046】
さらに別な好適実施態様によれば、本願発明は固体自由形状製造法(Solid Freeform Fabrication process)であり、粉末と塩とは共に提供され、その塩は粉末粒子を結合させる。
【0047】
本願発明のさらに別の好適実施態様によれば粉末から物体を成型する方法が提供される。この方法は、第1材料である粉末顆粒を互いに接触状態に提供することを含んでいる。顆粒を互いに結合させる塩が粉末内に提供される。これら塩と粉末は、塩から発生する追加材料が、粉末顆粒間のインターフェースで粉末顆粒に接着する条件下で維持される。
【0048】
本願発明のさらに別な好適実施態様は粉末から物体を成型するレーザー法であり、第1材料の粉末である粉末顆粒を互いに接触状態に提供するステップを含んでいる。この粉末内に顆粒を結合させる塩が提供される。塩から発生する追加材料が顆粒間のインターフェースで粉末顆粒に接着する条件下で塩と粉末とにレーザーエネルギーが適用される。
【0049】
本願発明の別な好適実施態様は粉末から物体を成型する溶融堆積法(fused deposition method)であり、第1材料の粉末である粉末顆粒を互いに接触状態に提供し、顆粒を結合させる溶解塩を含むバインダー材料を提供するステップを含んでいる。溶融堆積モデル技術(fused deposition modeling)を利用し、バインダー材料を含んだ塩が粉末と混合され、塩から発生した追加材料が粉末顆粒間のインターフェースで粉末顆粒に接着する条件下で押し出される。
【0050】
【実施例】
一般的に、濃縮金属塩溶液はバインダーとして使用される。そのような溶液を粉末に加えた後、粉末体全体を還元雰囲気内で粉末の焼結温度TMAXより低い温度に維持する。適切な条件下で、塩に由来するバインダーは、粉末顆粒が相互に接触している粉末粒子隣接点に付着し、塩を含む領域を結合する。(粉末が焼結し始める温度は、粉末が観察される持続時間によっても左右されることを理解されるであろう。ここで使用するTMAXは、およそ1日未満という製造目的に妥当な期間にわたり粉末が焼結される温度である。)
結合を引き起こすメカニズムは、少なくとも次の3種類がある。すなわち、(1)還元塩結晶による結合、(2)塩を金属に還元し、その結果生じる結合金属薄膜、および(3)置換反応の結果堆積する金属による粒子の結合、である。還元および置換反応の実施例の各々において、堆積金属の形態のため、選択された適用分野に適した強度が結果的に得られない場合、還元金属支持体をその後の熱処理にさらして、堆積金属を焼結させるか、それとも溶融させることも望ましいかもしれない。
【0051】
金属塩に由来するバインダーは、特に焼結部分に比較して、低収縮をもたらす大きい潜在的可能性を持つ。ネックにおける金属または塩被覆は粒子間強度をもたらすので、粉末粒子(例えば鋼)自体は焼結する必要が無い。図1Aおよび1Bは、焼結法(図1A)と塩に基づく方法(図1B)の比較を概略的に示す。
【0052】
図1Aに概略的に示すように、先行技術の焼結法によると、遊離した粉末粒子202、204は、処理経路Sに沿ってそれらが焼結する温度まで加熱される。粒子からネックへの材料の移動のため、焼結は粉末体の総表面積を低減し、かつ一般的に個々の粉末粒子の公称中心Cの間の距離をも低減し、したがって中心が接近する軸に沿って部品全体が収縮する。3次元部品では、収縮は3つの次元で発生する。
【0053】
しかし、焼結ではなく、図1Bに概略的に示すように処理経路Rに従った場合には、添加した塩溶液に由来する追加成分206が、粉末粒子202´、204´を結合する。結合は、粒子自体の一部分の結合によって行われるものではない。したがって、収縮はほとんど、または全く無い。
【0054】
本発明の別の利点は、骨格を熱処理中に収縮しにくくすることである。焼結中の収縮の原動力は、粒子間のネックの形成に伴う表面積の減少である。材料を追加することによってネックを形成することにより、この原動力は実質的に低下する。本発明により、収縮を2%未満に、およびもっと低く、0.1%もの低さにさえも維持することが可能である。
【0055】
例えば、60ミクロンの球状銀粉末は、炉内サイクルで650℃の温度で成形ガス(5%水素、95%アルゴン)中で約3時間の合計時間(加熱、保持、および冷却)燃焼させたとき、1.1%収縮することが明らかになった。平行実験で、60ミクロンの球状銀粉末をアンモニア中でAgNO3の3.5M溶液で飽和し、乾燥し、次いで燃焼した。同一燃焼サイクルにさらしたとき、このサンプルは収縮が0.1%未満であることが明らかになった。硝酸銀の還元によって形成される銀ネックが、焼結の原動力すなわち表面積を低減する性質を低下し、結果的に収縮を劇的に低下したものと考えられる。
【0056】
上述の通り、幾つかの機械的性質が、骨格における粉末粒子間で達成されるネッキングの度合いに強く関係していると思われる。例えば、衝撃強さならびにおそらく耐力強度および引張り強度は、ネッキングの度合いが増加するにつれて、増加すると考えられる。焼結によって骨格を形成する場合、焼結の増加を通してネッキングの度合いを増加し、したがってそのような性質を改善することだけが可能であり、その結果いっそうの収縮およびいっそうの収縮の不確実性が生じる。しかし、これらのネックが、例えば塩溶液から形成される材料など、材料の追加によって形成または拡大される場合、これらの性質の改善と低収縮の維持との間に本質的な矛盾は無い。
【0057】
本発明はまた、粉材を投入し、次いで静止したままで、バインダーを投入または添加するという利点も持つ。粉材のさらなる混合、撹拌、移動、押出し、押込みなどが行なわれない。粒子間の相対運動が実質的に無い。乾燥粉末を投入し、移送し、かつ成形する方法はよく知られており、かつ制御可能であるので、これは好都合である。スラリなどの液体を混合した粉末を取り扱う方法はより難しく、またあまり確実ではない。さらに、上述の通り、スラリを使用すると結果的に、乾燥粉末を使用する場合よりパッキング・フラクション(packing fraction)が低く、密度が低く、かつ不均質性が高くなる。また、乾燥粉末は、バインダー溶液を投入する場所に対する完全な制御を可能にする。これにより、3D印刷技術に従って、事実上どんな形状の部品でも形成することが可能になる。
【0058】
本発明の様々な実施例を以下で記述する。このすぐ後の記述では、本発明を3D印刷の実現に関連して解説する。しかし、本発明は、例えば3D印刷の記述の後で記述する成形など、他の粉末技術を用いて実現することも可能である。
【0059】
再結晶化 本発明の第1実施例に従って、金属塩を含む液体キャリアの溶液を、上述のザックス(Sachs)らの米国特許第5,204,055号に記載された液体ポリマーバインダーを印刷する手段に類似した、1層の粉末ヘッドの選択された領域に印刷する。この印刷技術は、5,204,055特許の第4欄で、図2A、2B、2C、2D、および2Eに関連して詳細に説明されている。
【0060】
この第1実施例の1つの変形例では(ここでは「再結晶化実施例」という)、液体を完全に乾燥するか、またはほぼ完全に除去して、後に塩の再結晶化薄膜を残す。塩の薄膜自体が粉剤およびその他の塩粒子に結合し、図2Fに示すように、単層の粉末粒子間および隣接する層の粉末粒子間にブリッジを形成する。
【0061】
このプロセスの始めに戻って、第1粉末層を提供し、その上に結合液のパターンを印刷する。粉末粒子を同じ層の他の粒子に結合したい領域、および現在の層より前に形成された層の粒子に結合したい領域にも配置する。現在の層に溶液を印刷した後、次の粉末層を提供し、この次層も、再び次層を前に印刷された層に結合したい領域、および次の層内の結合したい領域に印刷する。
【0062】
上述の´055特許は、ポリマー樹脂およびコロイドシリカをはじめとする様々なバインダーを用いることを記載している。本発明は、金属塩を含む新規のバインダー溶液を使用する。この溶液は、以下で述べるように、新規の方法でバインダーとして作用する。
【0063】
本発明のこの実施例の全体的方法を、図2A、2B、2C、2D、2E、および2Fに関連して概略的に、かつ図3に関連して流れ図の形で示す。このプロセスは、上述の通り1層の粉末層を設けるステップ440で始まる400。(粉末粒子302は球形として示されており、これは好適な実施形態である。粒径分布は「モノモーダル」である。すなわち、それは平均粒径分布を持ち、多少その周囲に拡散するが、拡散は制御されることを意味する。別の好適な実施例では、粒径は均一とすることができる。しかし、ある範囲の粒径を使用すること、および球形でない粒子を使用することも可能である。)
粉末の流動性および層の拡散性の問題のため、各層308は一般的に少なくとも粒子3個分の厚さである。一般的な堆積層は、より厚くすることができる。しかし、ここで使用する「層」とは、追加のそのような層が第1層の上に堆積される前に、堆積し、次いでその上に印刷が行われる粉材の量を意味する。
【0064】
次のステップは、図2Bに示すように、結合される粉末粒子302の領域に塩溶液306を印刷することである442。図2Cに示すように、溶液が任意選択的に乾燥すると444、それ、およびしたがって、溶解塩が毛管作用によって、隣接する粉末粒子302が相互に接触している領域310に引きつけられる。(結晶化する塩の体積は、図2Cでは、解説のために誇張されている。図4および図6は、成分の大きさを示す実際のサンプルの電子顕微鏡写真である。図4は、鋼粉末に印刷され乾燥されたロッシェル塩を示す。図6は、硝酸銀を示す。)液体が乾燥すると、塩粒子312はネック310に残る。
【0065】
完全な形状が形成されたかどうかを決定するために446、問合せを行う。形成されていなければ、本発明の方法は、図2Dに示すように1層の粉末層を提供するステップ440に戻る。第1層308の上に新しい層308´を提供する。図2Eに示すように、層内および層間で粉末の粒子を相互に結合することを希望する層308´の場所に、再び塩溶液306´を提供する442。図2Eに示すように、塩溶液が加えられる層308´の場所は、塩溶液が層308に加えられた場所と基本的に同じであることに注意する必要がある。これは全ての隣接する層に対しては一般的に当てはまらず、簡潔を期すために再びこのように示しているだけである。一般的に、一部の隣接する層に異なる断面を持つ望ましい形状を画定するために、層間に変化が生じる。さらに、これらの図に示すように、隣接する層の粉末粒子は同じ場所にある。これもまた、実際の粉末体には当てはまらないが、図を簡潔にするためにそのように示しているにすぎない。
【0066】
塩溶液306´も乾燥して444、塩の結晶薄膜を形成する。
【0067】
乾燥した塩粒子312´で図2Fに示す状態に到達するために、プロセスのまさしくこの時点で乾燥ステップ444を実行することは任意選択であり、毎サイクルで実行する必要は無い。例えば、塩溶液は、メチルセルロースなどの増粘剤、または溶液を実質的に不動化するアルギン酸塩や動物性ゼラチンなどゲル化剤を含むことができる。そのような場合、乾燥は後で、例えば部品全体が成形された後などに、行うことができる。多くの場合、これは結果的に部品成形の時間節約になる。
【0068】
この再結晶化の実施例によると、印刷され、乾燥された塩溶液から部品全体の形状を形成した後で、振動または塩薄膜構造を粉砕するほど激しくはないその他の適切な技術などによって、非結合粉末を除去する448。
【0069】
充分に密な粉末体が望ましいことが決定された450場合、粉末除去段階の後で、いずれかの既知の湿潤技術に従って、一般的に湿潤材で湿潤させる454ことによって3次元形状は密度が高められ452、プロセスは終了する458。その結果、充分に密であり、かつ溶液が印刷された大きさおよび形状からほとんど収縮していない3次元体が生じる。
【0070】
一般的に、再結晶化の実施例では、適切な湿潤材はエポキシである。エポキシは、充分に低い温度では液体なので、塩薄膜は劣化しない。多くのエポキシは室温で液体である。さらに、塩は大抵の金属にとって非湿潤性である。したがって、金属湿潤材は、本体の塩領域を通過して湿潤するのが難しい。エポキシは骨格を湿潤し、下から毛管現象の作用により、あるいは上から重力により湿潤させることができる。
【0071】
再結晶化の実施例の塩候補は、湿潤などの処理ステップに耐えることができるように、乾燥した本体に充分な強度を与えなければならない。選択は、粉材の組成および粒径、湿潤材、および本体の大きさによって異なる。
【0072】
例:ロッシェル塩C44KNaO6・4H2O(酒石酸ナトリウムカリウム)を0.7Mの濃度で水に溶解した。このロッシェル塩溶液をステンレス鋼粉末に投与し、乾燥させ、強い本体を生成した。図4はそのような本体の断面の電子顕微鏡写真であり、大きい球形の粒子間の塩のブリッジの形成を明瞭に示している。塩は、水100gにつき無水塩67.8gまでの濃度で、水に溶解することができる(20℃時)。一般的に、ロッシェル塩は、約70〜80℃の融点を持ち、かつ、したがって、エポキシを湿潤材として使用する場合、それは70℃より低い温度で硬化しなければならない。
【0073】
その他のポリマー湿潤材が可能である。例えば、シアノアクリレート(スーパーグルー)は適切な性質を持つ。
【0074】
別の適切な塩は、硫酸マグネシウムMgSO4・7H2O(エプソム塩)である。硫酸マグネシウムは比較的安全であり、200℃より高い融点を持つ。それは非常に高い水溶性を持つ。硫酸マグネシウムと結合した部分は、慎重な取り扱いに充分に耐える高い強度を示した。それらは、上述のように、エポキシで湿潤させることができる。
【0075】
したがって、要約すると、再結晶化技術は、粉末が塩溶液に溶解しない限り、どんな粉材にも適用することができる。湿潤材は、塩および粉末の融点より低い温度で硬化しなければならない。
【0076】
還元実施例 本発明の別の実施例に従って(ここでは「還元」実施例という)、再結晶化実施例に関連して上述したように、粉末ヘッドに塩溶液を加える。本発明のこの還元実施例の第1変形例の方法ステップを、図5Aに関連して流れ図の形で示す。一般的に、本発明の還元実施例は、ステップ444までは、塩溶液を各層に印刷し、次いで任意選択的に乾燥した再結晶化実施例と同じにすることができる。この時点で、結合部品から非結合粉末を除去する448のではなく、雰囲気を提供し502、かつ塩から金属を還元させる条件を提供する504。大気は還元雰囲気とすることができ、あるいは適切な場合には、以下で述べるように不活性雰囲気とすることができる。この理由のため、還元雰囲気ステップ502は、「任意選択」と示されている。
【0077】
図5Aに示す本発明の還元実施例の第1変形例では、本体の全ての熱処理プロセスは、原粉末ヘッドで行われる。一般的に、塩の金属を金属に還元させ、好ましくは粒子302、302´上に薄膜314を形成し、この薄膜が粒子を一つに結合する(図2G)のに充分な時間、充分な温度で、適切な雰囲気に部品を保持する504。加熱の温度および時間は、粉末粒子302自体の焼結が生じない、TMAX未満に維持する。本体に構造上の強度を与える加熱ステップ504の後のこの方法のステップは、再結晶化実施例のそれと同一である。非結合粉末は除去される448´。希望に応じて450´、湿潤材を投与するか454´、または投与しないことができる。
【0078】
場合によっては、金属の還元だけでは充分な強度が得られない。還元金属の粒子が形成されるかもしれないが、もしあったとしてもこれらの粒子は粉末にゆるく接着しているだけである。(この状態の1例を図11に示す。これは硝酸銅溶液から鋼粉末に還元された銅粒子の電子顕微鏡写真である。)そのような金属は、その後の熱処理によりこれらの粒子をネック部で金属粉末に結合させると、粉末の結合に貢献することができる。熱処理により、塩の金属は、還元させた後で焼結させることができ、それによって本体に追加強度、靭性等が与えられる。それは、焼結するのは本体の主要な構成粉末粒子ではなく、塩に由来する堆積金属粒子だけであることに注意する必要がある。そのような焼結に伴う本体全体に目に見えるほどの収縮は無い。希望する場合、さらなる熱処理によりこの金属を溶融させることさえも可能である。(この状態の1例を図12に示す。これは、硝酸銅溶液からモリブデン粉末上に還元された銅ネックの電子顕微鏡写真であり、銅は溶融させるために還元後に1110℃で燃焼した。)これらの熱処理ステップ全部が、図5Aでは単一加熱ステップ504として示されている。状況によって、このステップは、塩から金属を還元させるだけか、還元および焼結させるか、あるいはさらに溶融させることさえもできることは理解されるであろう。
【0079】
塩を原粉末ヘッドで還元できることは本発明の利点の一部であるが、以下で図5Bおよび図5Dに関連して述べるように、粉末ヘッドから結晶塩結合部品を取り出し、次いでそれを還元するかその他の方法で熱処理することも可能である。これは、状況によっては好都合である。
【0080】
還元ステップ504が行われる雰囲気は不活性雰囲気とすることができ、あるいは特別に設計された還元雰囲気、例えば水素およびアルゴンの成形ガス雰囲気とすることができる。還元雰囲気のその他の例として、純粋アルゴン、および多少の一酸化炭素成分を含む不活性ガスがある。一部の金属塩は、水素などの還元剤を添加する必要無く還元する。例えば、硝酸銀は特定の状況下で、水素を添加することなく還元する。
【0081】
還元実施例のこの原粉末ヘッドの変形例の利点は、成形部を原粉末ヘッドに維持したままで昇温ステップが実行されることである。したがって、粉末ヘッドは、部品の繊細な特徴に対し自動的かつ完全に成形された支持体を提供する。セッタリング(settering)は不要である。
【0082】
これは、少なくとも3つの理由で、通常の焼結およびセッタリングの実践法より有利である。
1)部品の移動を行う必要が無く、したがって繊細な特徴を妨害する必要が無い。
2)粉末を適切かつ再現可能に充填することは常に、セッタリングにおける難しい課題である。粉末が充分に高い密度に充填しなければ、依然として重力スランピング(gravitational slumping)が発生し得る。粉末があまりに高い密度に充填されると、焼結に伴う収縮を許容するだけの充分なコンプライアンスが得られない(従来の方法の場合)。これは工具の形状に敏感であるので、これはプロセスにおいて特に微妙なポイントである。例えば、固体ブロックはあまり問題にはならない。しかし、薄壁管のセッタリングおよび焼結は問題である。タブはその周囲およびその内側にセンタリング粉末を充填させることになる。内部の粉末を密に充填しすぎると、管は大きさを減少することができない。実際、管の壁が薄い場合、セッタリング粉末が適切に充填されている場合でも、この効果が発生することがある。
3)収縮は低減または除去されるので(粉末体の焼結は行われないので)、セッタリング粉末によって生じる形状感受性は低減または除去される。したがって、他の何らかの理由からセッタリングが必要な場合、それはより有利に達成することができる。
【0083】
還元実施例(および以下でより詳細に述べる置換実施例)は、多孔質体が望ましく、かつ湿潤材が使用されない状況には特に有利である。還元実施例は、還元金属薄膜が一般的に堆積した非還元塩より強いので、状況によっては再結晶化実施例に比べて有利である。さらに、多くの結晶塩は、水溶性であり、湿気によって劣化する。還元金属はそのような劣化を受けない。そのような製品の1例として、多孔性フィルタ、触媒サポート、ヒート・スプレッダ(液体用)、およびフロー・ディフューザがある。
【0084】
本発明の原粉末ヘッド変形例に使用するのに適した金属塩は、次の性質を持つことが好ましい。
1)添加還元剤(水素など)の存在下における、またはそのような還元剤なしでの、金属元素および気体副生物への還元性
2)金属粉末が焼結し始める温度TMAXより低い温度における還元性
3)水またはアルコールなどの適正な液体ビヒクルでの高い可溶性
金属元素および気体副生物への還元は、望ましくない残留物が部品に残るのを防止する。気体副生物は、炉内ガスにより運び去られる。還元された金属は、部品の全体的な機械的性質に有害作用を持たないのが理想である。還元は、部品を簡単に回収できるように、TMAXより低い温度で行わなければならない。そうでなければ、未結合粉末が焼結し始める。(還元が原粉末ヘッドのTMAXより低い温度で行われる場合の本発明の他の変形例を、以下で詳述する。)還元された金属は薄膜状の形態を持ち、粉末への粘着性を持つことが理想である。さらに、より高い強度をもたらすために、できるだけ多くの還元金属をネックに持つことが望ましい。
【0085】
最後に、バインダーに充分な金属成分を提供するために、塩は適切な液体キャリヤに充分に溶解できなければならない。
【0086】
比較的低い焼結温度を持つ粉末では、図5Aに関連して示す本発明の実施例を使用することが望ましい場合がある。そのような場合、塩は、その粉末焼結温度より低い温度で、強度などの適切な性質を提供するコヒーレントな連続薄膜に還元することが望ましい。
【0087】
例えば、以下で述べるように、塩として硝酸銀を使用すると、約450℃の温度で銀の勤続薄膜が堆積して強いネックを形成する。この温度は、多くの有用な金属粉末の焼結温度より充分に低い。そのような塩は、塩から得た金属の焼結または溶融(これは一般的に、(ここで規定する例の場合)還元より高い温度で行われる)に頼ることなく、還元だけで適切な強度が得られるので、有利である。
【0088】
多くの場合、充分に密な物品を形成するために、骨格を湿潤させることが望ましい。理想的な湿潤材は細孔空間を完全に埋め、細孔構造の優れた流動および湿潤を示し、残留物を残さない。さらに、湿潤材の融点は、母材粉末の焼結温度より低いことが好ましい。さらに厳密には、湿潤プロセスに必要な温度は、母材粉末またはネックのいずれの融点をも超えないことが好ましい。金属を湿潤材として使用する場合には、金属の融点がこれらの温度のいずれよりも低いことが好ましい。エポキシを湿潤材として使用する場合には、硬化温度がこれらの温度のいずれよりも低いことが好ましい。
【0089】
しかし、湿潤を母材粉末またはネックの融点より低い温度で行う必要の無い状況が存在する。場合によっては、ネックの金属より高い融点を持つ湿潤材を使用できることを、経験は示している。液体湿潤材によって生じる毛管応力(capillary stress)のため、本体はその形状を維持するものと考えられる。冷却により本体が固化するまで、この応力が本体を一つに保持する。
【0090】
同様の現象は、場合によってはネックの金属を溶解すると予想される湿潤材を使用するときに生じる。湿潤材がネックの金属を溶解したかもしれないという事実にもかかわらず、再び、毛管応力が本体を一つに引き合わせるものと考えられる。例えば、使用する好適な塩が硝酸銀であり、その結果、粉末粒子を一つに結合する銀薄膜ができる。銅は一般的な湿潤材である。銅合金は銀を溶解できるという事実にもかかわらず、銅および銅合金を使用して、銀結合骨格を湿潤させることができる。その他の場合、金属ネックの溶解速度は充分に遅いので、ネックが溶解する前に湿潤および固化が発生することができる。
【0091】
湿潤材としてスズ合金を使用した場合も、有利な結果を得ることができる。その他の湿潤材の候補として、亜鉛および亜鉛合金、鉛/スズ合金、および銀ろうが含まれる。湿潤材で骨格を濡らすのを助けるために、フラックスを使用することも有利であるかもしれない。
【0092】
したがって、湿潤に関して設計者が考慮すべき問題として、次のようなことがある。すなわち、湿潤材の融点は一般的に、上述の通り、粉末の焼結温度より低くなければならない。湿潤材の金属は、塩から得られる金属を溶解しないことが好ましい。湿潤材は粉末および塩の金属の両方を濡らすことが好ましく、あるいはフラックスを使用して濡れを助けることが好ましい。湿潤材は、湿潤された製品の寸法変化を生じてはならない。設計者にとってのその他の懸念は、完成品に関係する。それは、成形またはろ過など、希望する用途の応力に耐えるように充分に強靭でなければならない。
【0093】
堆積した金属が粉末粒子に強力に結合することが重要である。金属が粉末粒子上に薄い膜を形成する多くの場合、そのような強力な結合が存在する。そのような強度は、金属の離散領域が特にネックで形成される場合など、膜が形成されない状況でも生じることがある。
【0094】
上述の通り、硝酸銀は212℃で溶融し、それが溶融状態から分解する440℃の温度まで液体の状態を維持する。さらに詳しくは、この温度で、酸素、窒素、および窒素酸化物が発生し、銀はステンレス鋼粉末に接着する。本発明者らは、固体銀の形成前に成分(溶融硝酸銀)が液状になるという事実が、結果的に生じる銀と鋼の間の接着に非常に重要であるという仮説を立てている。
【0095】
上述の仮説は、次の実験によって裏書きされる。すなわち、炭酸銀の溶液を316ステンレス鋼粉末に印刷して、450℃で成形ガス中で燃焼すると、印刷部分は強度が無くなる。この燃焼後、結果的に得られるネック部の元素は、炭酸銀の場合と同一であり、すなわち銀に他ならないことに注目すると興味深い。銀の形成の経路は、これらの2つの場合で全く異なる。
【0096】
硝酸銀とは対照的に、炭酸銀は溶融しない。約220℃で、それは分解して酸化銀(Ag2O)および二酸化炭素(CO2)になる。その結果得られる酸化銀もまた溶融しない。それは分解してその2つの元素になる。それは形成されるやいなや分解し始め、その分解速度は、温度が高くなると増加する。(文献から、酸化銀の分解は189℃で始まり、250℃〜300℃で速くなることが知られている。)銀の形成に先立つ2つの化学的化合物のどちらも、どの時点でも液状ではないことに注目する必要がある。
【0097】
金属の形成前に液状の化合物が存在することは、形成される金属と金属粉末の間の接着を生じるのに充分ではないことを強調する必要がある。例えば、硝酸銅の溶液を316ステンレス鋼粉末に印刷し、それを480℃の成形ガスで燃焼すると、強度が無くなる。硝酸銅は約114.5℃で溶融し、180℃付近で還元して固体の酸化銅(CuO)になる(その融点は約1326℃である)。CuOは還元して銅になる。銅はステンレス鋼粉末に接着しない。これは、上記の仮説に合致する。つまり、金属の形成のすぐ前に先行する成分が液状でないことが重要である。
【0098】
設計者は、塩バインダーシステムの潜在的候補を選択する際に、他の要素を考慮する必要がある。考慮すべき重要な条件は、塩から金属が還元される最低温度である。塩が金属に還元するために満たされなければならない1つの条件は、システムのギブスの自由エネルギの低下である。そのような条件は、熱力学的データの助けを借りて、反応物、生成物、雰囲気、および温度を考慮に入れて、計算することができる。そのようなデータは、全米標準局(National Bureau of Standards)のためにアメリカ化学協会(American Chemical Society)およびアメリカ物理学協会(American Institute of Physics)によって発行されているJANAF熱化学表などの表から入手することができる。そのような熱力学的計算は、ロイヤル・インスティテュート・オブ・テクノロジー・ストックホルム(Royal Institute of Technology, Stockholm)で開発された「Thermo−Calc」などのコンピュータ・プログラムを使用して実行することもできる。大抵の場合、処理温度の増加は、塩から金属への還元に有利に働く。したがって、そのような計算を使用して、この還元に必要な最低温度を決定することができる。例えば、Thermo−Calcは、硝酸ニッケルを水素の存在下で約850℃で燃焼したときに純粋のニッケルに還元することを示し、これは実験によって確認された。この最低温度は、候補塩の実行可能性を評価するため、および上述しかつ図5A〜図5Dに示した変形例の中から選択するのを助けるための指針として、使用することができる。比較的低い温度で還元を達成すると、設計者には材料の本体用の粉末としてより多くの選択肢が得られることを、念頭に置く必要がある。また、図5A〜図5Dに示した本発明の方法の変形例をより多く利用することが可能になるであろう。そのような熱力学的計算から、反応速度に関する情報は得られないことに注意する必要がある。また、結果的に得られる生成物の形態もそれらから予測されず、したがって、金属が薄膜または粒子として形成されるのかどうか、およびそれが下地物質に接着するのかどうかを予測することはできない。
【0099】
炉内環境で塩を還元するときに発生し得る1つの問題は、多孔性骨格内に出入りするガスの輸送に関するものである。特定の塩が水素を還元する必要がある場合、還元を促進するために、骨格に水素を輸送しなければならない。これには、かなりの量の水素が必要である。さらに、安全性を考慮して、水素はしばしば、例えば一般的に「成形ガス」として知られる水素5%とアルゴン95%の混合物を利用して、希釈した形で提供される。この形では、必要な水素を供給するために、もっと大量のガスが必要になる。さらに、還元の副生物が気体の場合、それらを骨格から外に輸送することができなければならない。したがって、水素またはその他のガスによる還元の実践では、骨格内に出入りするこれらのガスの輸送のために、充分なガス流量を提供しなければならず、かつ充分な時間を見込まななければならない。
【0100】
例えば、図5Aに示す本発明の方法の変形例に関連して以下で記述するように、硝酸銅の還元では、図12に示すようにモリブデン粉末を結合するために、1.75モルの硝酸銅溶液((Cu(NO32・3H2O)を使用して銅を提供する。粉末を60%の体積に充填し、かつ残りの空間に塩溶液を充填すると想定した場合、粉末ヘッドは1リットルにつき、粉末0.6リットルおよび塩溶液0.4リットルから成る。0.4リットルの塩溶液は0.4*1.75=0.7モルの塩を含む。塩は最初に分解してCuOになり、次いで還元してCuになる。したがって、1モルの塩が還元を行うためには、1モルの水素ガスが必要になる。粉末ヘッドは1リットルにつき、0.7モルの塩を含むので、0.7モルの水素ガスが必要になる。1モルのガスは標準温度および圧力(「STP」)で22.4リットルを占めるので、粉末ヘッドは1リットルにつき、STP時に少なくとも0.7*22.4=15.7リットルの水素ガスが必要になる。
【0101】
一部の塩は、水素の存在を必要とせずに、熱処理により還元する。必要量のガスを供給することやそれを骨格に輸送させることについて考慮を払う必要が無いので、これは有利である。しかし、気体状副生物がある場合には、これらの気体状副生物を骨格から外へ輸送させるための充分な時間を依然として考慮しなければならない。
【0102】
上記説明は、塩から金属を還元させるため504、またはその焼結または溶融のために行われる粉末商品の加熱は、塩溶液が堆積された原粉末ヘッドで行われることを想定している。そのようなやり方は本発明の方法の非常に有利な実施形態であるが、それが常に最も有利な実施形態というわけではない。場合によっては、還元金属は還元後に薄膜状の形態を形成しないことがあり、あるいは、薄膜が形成されても、その後の必要な処理に耐えるほど充分に強くないかもしれない。さらに、このような場合の幾つかにおいては、塩が印刷される粉材が、塩から得られた金属のその後の焼結または溶融に必要となる温度に耐えることができない。このような場合、印刷された部品を別の粉末、例えば高温に耐えることができるセラミック粉末にセッタリングし、次いでこの部分を還元金属に焼結または溶融させるように処理すると有利である。
【0103】
セッタリングは、プロセスに沿った様々な段階における本体の強度によって、様々な段階で行うことができる。例えば、図5Bに示すように、場合によっては、塩溶液を結晶になるまで乾燥するステップ444の後、還元の前に、本体は、原床から取り外してセッタリングする506Bことができるほど充分に強いことがある。本体は、異なる粉材中にセッタリングし506B、その後に上述と同様のステップを続けることができる。すなわちネック部の塩を金属に還元させ、かつ必要な場合には、上述の通り、還元した金属を焼結または溶融させるために充分な時間、温度を提供する504B。セッタリング粉末を除去し508、希望する場合には、上述のように緻密化を進める。
【0104】
セッタリングは粉末プロセスに幾つかの問題点を持ち込み、常に望ましいわけではないということを上述したが、本例の場合、問題点の全てが存在するわけではない。セッタリングの主要な問題は、粉末体の焼結中にそれを使用した場合に発生する。成形される部品の本体は収縮しやすい(焼結の影響の下で)が、セッタリング材は収縮に抵抗する傾向がある。しかし、本例の場合、多少の焼結は技術的に起こるが、焼結は部品の本体を形成する粉末粒子全体で発生するのではなく、堆積した金属領域内でのみ発生する。したがって、収縮が発生してもそれは最小限であり、したがってセッタリング材による収縮抵抗は、同程度の問題を提示しない。
【0105】
適切なセッタリング粉末としては、アルミナ、シリコンカーバイド、およびジルコニア粉末などのセラミック粉末、ならびにモリブデン、タングステン、またはその他の高融点金属などの金属粉末がある。一般的に、セッタリング粉末の流動性に対処するため、およびセッタリング粉末の焼結の可能性を最小にするために、30〜200ミクロンの範囲のかなり大きい粉末粒径が使用される。
【0106】
最大寸法が約2インチ(5cm)の比較的小さい部品では、原床の粉末から部品を取り外し、別の粉末中でそれをセッタリングすることなく、熱処理することがときどき可能である。これは、そのような小さい部品は、セッタリング・サポートを必要とするまでのスランピング傾向が無いためである。しかし、スランピングに対する感受性は、実際の部品の多くの要素に依存し、容易に決定することができる。
【0107】
他の状況では、図5Cに示すように、原床で塩を金属に還元し504、それによって本体に多少の強度を提供し、次いで非結合粉末を除去し506C、別の材料に本体をセッタリングして、追加熱処理を行って507、還元された金属を焼結または溶融することができるようにし、それによって上述の通り追加強度を与えることが有利であるかもしれない。セッタリング粉末を除去し508C、本体を上述のように処理する。再び、小さい部品では、セッタリングは必要無いかもしれない。
【0108】
さらに、還元例に関連して、図5Dに示すように、場合によっては、結晶塩および還元金属のどちらも、本体を原粉末ヘッドから取り外すことができるほど充分な強度を提供しない。そのような状況が存在する場合、ポリマーバインダーを塩バインダーと組み合わせて提供する542ことが役に立つ。ポリマーバインダーは低温で粉材を充分に結合するのに有効であるので、バインダーは、それが成形された原粉末マトリックスから取り外し501、別の材料にセッタリングする501ことができる(または、適当に小さい物品の場合にはセッタリングしない)。ポリマーバインダーは部品を一つに保持する。この状況で、セッタリングが行われている状態で、還元(特殊雰囲気502’、または不活性雰囲気のいずれかで)、塩から得た金属の焼結、および塩から得た金属の溶融を含む全ての加熱ステップ504´を実行することができる。焼結(部品が充分に強い場合)または溶融の後、セッタリング粉末を除去し548、例えば湿潤554または焼結556による緻密化552など、続きの処理を上述の通り適用する。
【0109】
また、例えば2つ(またはそれ以上)の異なる塩を塩溶液中に提供することによって、2つの異なる金属の組合せであるネックを形成することができる。異なる塩を選択する際に重要なことは、塩が結合して、溶液から沈殿する種にならないようにすることである。一般的に、塩の陰イオンが同じである場合には、そのような沈殿は起こらない。例えば、硝酸銀と硝酸銅は両方とも同じ溶液中に提供して、早期沈殿を生じることなく、両方の金属を含む堆積を形成するために使用することができる。銀および銅の塩を乾燥し、次いで還元し、次いで結果的に得られた銀および銅金属を加熱して溶融すると、銅と銀の合金が形成され、強度が増大する。
【0110】
さらに、塩から金属への変換経路に沿ったどこかの位置に存在する材料の種であるネックを形成することも可能である。幾つかのそのような種は、適切な強度を提供することができる。
【0111】
以下は図5A〜図5Dに示す変形例である。
【0112】
(i)硝酸銀 図5Aに示す還元実施形態の適切な事例の1例では、水に溶解した1モルの硝酸銀(AgNO3)溶液をバインダーとして使用する。適切な粉末は直径60ミクロンの球形の316ステンレス鋼粉末である。硝酸銀溶液を粉末ヘッドに投与し、湿潤させてから乾燥させる。次いで、塩を指示する領域を含む粉末ヘッド全体を、水素5%とアルゴン95%から成る成形ガスの雰囲気の炉内に配置する。炉は、5℃/分の速度で450℃の温度まで上昇させ、450℃を1時間維持し、次いで5℃/分の速度で冷却させる。硝酸銀は銀金属と気体状副生物(窒素、酸素、窒素酸化物)に分解される。この結果、図7に示すように、より大きい球形粒子の部品を覆う銀の薄膜、および粒子間の強力な銀のネックが形成される。還元された銀金属の体積は、鋼粉末の体積の約0.69%となる。部品を粉末から取り出す。塩が乾燥した状態から金属結合骨格が形成される状態までの部品の収縮は、0.1%の実験誤差の範囲内で0と測定される。
【0113】
次に、充分に密な部品を希望する場合は、部品を湿潤することができる。適切な湿潤材は、3M社から出ている航空宇宙用エポキシEpoxy PR−500である。湿潤は、175℃の温度でオーブンで実行する。
【0114】
硝酸銀はまた、Mo、W、工具鋼P−20、および工具鋼H−13の粉末を使用して、図5Aの経路に従ってバインダーとして役立てることもできる。この例では、硝酸銀は不活性ガス下で銀に分解されるので、水素は必要ではないが、分解の副生物による粉末の酸化を防止するために、成形ガスを使用することが好ましいかもしれない。
【0115】
(ii)硝酸銅 図5Aに示す還元実施形態の適切な事例の別の例では、粉末ヘッドを金属の還元温度以上に加熱し、水に溶解した硝酸銅(Cu(NO32・3H2O)の1.75モル溶液をバインダーとして使用する。適切な粉末は、直径60ミクロンの球形モリブデン(Mo)粉末である。硝酸銅溶液を粉末ヘッドに投与し、湿潤させてから乾燥させる。次に、塩を支持する領域を含む粉末ヘッド全体を、水素5%およびアルゴン95%から成る成形ガスの雰囲気の炉内に配置する。炉を5℃/分の速度で1110℃の温度まで上昇させ、1110℃で30分間維持し、次いで5℃/分の速度で冷却させる。この熱処理中に、硝酸銅は約180℃で酸化銅(CuO)に還元され、次いで酸化銅は銅に還元される。銅は1083℃で溶融する。この結果、図12に示すように、粒子間に強力な酸化銅が形成される。還元された銅金属の体積はMo粉末の体積の約0.83%となる。部品を粉末から取り出し、次に、充分に密な部品が望ましい場合には、湿潤することができる。適切な湿潤材は、3M社から出ている航空宇宙用エポキシEpoxy PR−500である。湿潤は、175℃の温度でオーブンで実行する。
【0116】
(iii)硝酸ニッケル 図5Aに示す還元例の適切な事例の別の例では、水に溶解した硝酸ニッケル(Ni(NO32・6H2O)の1.3モル溶液をバインダーとして使用する。適切な粉末は、22ミクロンのタングステンカーバイド(WC)粉末である。硝酸ニッケル溶液を粉末ヘッドに投与し、湿潤させてから乾燥させる。次に、塩を支持する領域を含む粉末ヘッド全体を、水素5%およびアルゴン95%から成る成形ガスの雰囲気の炉内に配置する。炉を5℃/分の速度で1200℃の温度まで上昇させ、1200℃で30分間維持し、次いで5℃/分の速度で冷却させる。この熱処理中に、硝酸ニッケルは約600℃で酸化ニッケル(NiO)に還元され、これはニッケルに還元される。硝酸ニッケルの酸化ニッケルへの還元は、非還元雰囲気で達成することができるが、酸化物からニッケルへの還元は還元雰囲気で行わなければならない。還元されたニッケル金属の体積は、WC粉末の体積の約0.57%となる。部品を粉末から取り出し、次に、充分に密な部品が望ましい場合には、湿潤することができる。適切な湿潤材は、3M社から出ている航空宇宙用エポキシEpoxy PR−500である。湿潤は、175℃の温度でオーブンで実行する。硝酸ニッケルはまた、40ミクロンの球形アルミナ粉末を使用して、図5Aの経路に従ってバインダーとして役立てることができる。この場合、熱処理は1530℃で行う。
【0117】
(iv)酢酸ニッケル(II) 図5Aに示す還元例の適切な事例の別の例では、水に溶解した酢酸ニッケル(Ni(CH3COO)2・4H2O)の0.3モル溶液をバインダーとして使用する。適切な粉末は、22ミクロンのタングステンカーバイド(WC)粉末である。酢酸ニッケル溶液を粉末ヘッドに投与し、湿潤させてから乾燥させる。次に、塩を支持する領域を含む粉末ヘッド全体を、水素5%およびアルゴン95%から成る成形ガスの雰囲気の炉内に配置する。炉を5℃/分の速度で1200℃の温度まで上昇させ、1200℃で30分間維持し、次いで5℃/分の速度で冷却させる。還元されたニッケル金属の体積は、WC粉末の体積の約0.13%となる。部品を粉末から取り出し、次に、充分に密な部品が望ましい場合には、湿潤することができる。適切な湿潤材は、3M社から出ている航空宇宙用エポキシEpoxy PR−500である。湿潤は、175℃の温度でオーブンで実行する。
【0118】
(v)酢酸コバルト(II) 図5Aに示す還元例の適切な事例の別の例では、水に溶解した酢酸コバルト(Co(CH3COO)2・4H2O)の0.7モル溶液をバインダーとして使用する。適切な粉末は、22ミクロンのタングステンカーバイド(WC)粉末である。酢酸コバルト溶液を粉末ヘッドに投与し、湿潤させてから乾燥させる。次に、塩を支持する領域を含む粉末ヘッド全体を、水素5%およびアルゴン95%から成る成形ガスの雰囲気の炉内に配置する。炉を5℃/分の速度で1200℃の温度まで上昇させ、1200℃で30分間維持し、次いで5℃/分の速度で冷却させる。還元されたコバルト金属の体積は、WC粉末の体積の約0.27%となる。部品を粉末から取り出し、次に、充分に密な部品が望ましい場合には、湿潤することができる。適切な湿潤材は、3M社から出ている航空宇宙用エポキシEpoxy PR−500である。湿潤は、175℃の温度でオーブンで実行する。別の適切な湿潤材は銅金属である。湿潤は、ガス雰囲気で1250℃で行う。
【0119】
図5Bに示すように、後に続けてセッタリングおよび還元ならびに結晶化した塩の焼結または溶融を使用する、還元実施形態の適切な事例の1例は次の通りである。
【0120】
酢酸ニッケル(II) 酢酸ニッケル(Ni(CH3COO)2・4H2O)の0.3モル溶液をバインダーとして水に溶解する。適切な粉末は、22ミクロンのタングステンカーバイド(WC)粉末である。酢酸ニッケル溶液を粉末ヘッドに投与し、湿潤させてから乾燥させる。還元の前に、印刷した部品を粉末ヘッドから取り出す。それをアルミナ粉末内にセッタリングし、水素5%およびアルゴン95%から成る成形ガスの雰囲気の炉内に配置する。炉を5℃/分の速度で1200℃の温度まで上昇させ、1200℃で30分間維持し、次いで5℃/分の速度で冷却させる。還元されたニッケル金属の体積は、WC粉末の体積の約0.13%となる。部品を粉末から取り出し、次に、充分に密な部品が望ましい場合には、湿潤することができる。適切な湿潤材は、3M社から出ている航空宇宙用エポキシEpoxy PR−500である。湿潤は、175℃の温度でオーブンで実行する。
【0121】
後に続けてセッタリングおよび還元ならびに還元された金属の焼結または溶融を使用する、図5Cに示すプロセスの1例は次の通りである。
【0122】
Mo上の硝酸ニッケル 図5Cに示す還元例の適切な事例の1例は、水に溶解した硝酸ニッケル(Ni(NO32・6H2O)の1.3モル溶液をバインダーとして使用する。適切な粉末は、60ミクロンの球形Mo粉末である。硝酸ニッケル溶液を粉末ヘッドに投与し、湿潤させてから乾燥させる。次に、塩を支持する領域を含む粉末ヘッド全体を、水素5%およびアルゴン95%から成る成形ガスの雰囲気の炉内に配置する。炉を5℃/分の速度で975℃の温度まで上昇させ、975℃で30分間維持し、次いで5℃/分の速度で冷却させる。この熱処理中に、硝酸ニッケルは水を遊離し、酸化ニッケル(NiO)に還元され(約600℃で)、最終的にニッケルに還元される。この燃焼後、印刷された部品は充分に強いので粉末ヘッドから取り出すことができる。さらなる強度が望ましい場合には、第2熱処理を続けることができる。つまり、印刷された部品をアルミナ粉末内にセッタリングし、炉内に配置し、1200℃で成形ガス下で燃焼する。再び、加熱および冷却の速度は5℃/分である。還元されたニッケル金属の体積は、Mo粉末の体積の約0.57%となる。部品を粉末から取り出し、次に、充分に密な部品が望ましい場合には、湿潤することができる。適切な湿潤材は、3M社から出ている航空宇宙用エポキシEpoxy PR−500である。湿潤は、175℃の温度でオーブンで実行する。
【0123】
塩およびポリマーバインダーを使用し、後に続けてセッタリングおよび熱処理が行われる、図5Dに示すプロセスの1例は次の通りである。
【0124】
硝酸銅−ポリアクリル酸(PAA)溶液を、次の比率:硝酸銅(Cu(NO32・3H2O)の1.75モル水溶液93v.o.%およびPAA溶液7v.o.%で作成する。後者の溶液は、35wt%のH2Oおよび65wt%のPAAから成る。使用するPAAの平均分子量は約2000である。適切な粉末は、直径60ミクロンの球形モリブデン(Mo)粉末である。この硝酸銅−PAA溶液を粉末ヘッドに投与し、湿潤させてから乾燥させる。次に、印刷された部品を粉末ヘッドから取り出し(PAAが必要な強度を与える)、それをアルミナ粉末内にセッタリングする。次にそれを、水素5%およびアルゴン95%から成る成形ガスの雰囲気の炉内に配置する。炉を5℃/分の速度で500℃の温度まで上昇させる。PAAを燃焼し尽くすために500℃で維持する。次いで5℃/分の速度で1110℃の温度まで上昇させ、1110℃で30分間維持し、次いで5℃/分の速度で冷却させる。この熱処理中に、硝酸銅は酸化銅(CuO)に還元され、これは銅に還元される。銅は1083℃で溶融し、Mo粉末を結合する。還元された銅金属の体積は、Mo粉末の体積の約0.77%となる。部品を粉末から取り出し、次に、充分に密な部品が望ましい場合には、湿潤することができる。適切な湿潤材は、3M社から出ている航空宇宙用エポキシEpoxy PR−500である。湿潤は、175℃の温度でオーブンで実行する。
【0125】
PAAは、図5Aの説明に関連して上述した溶液のどれにでも添加することができる(全ての燃焼ステップが原粉末ヘッドで行われる)。同じ濃度(硝酸銅の場合と)のPAAにより、高いグリーン強度を持つ製品が生成される。
置換反応
本発明の方法の第3主要実施形態は、金属粉末と置換反応する溶液を含む塩を使用することである。置換反応結合の要点を、図8A、8B、8C、8D、8E、8F、8G、8H、および8Iに示す。塩溶液は、塩の金属と電気化学置換反応することができる金属の粉末粒子802の層808に印刷される。言い換えると、粉末の金属が塩溶液中に溶解するときに、粉末の金属が塩の金属に電子を与える。溶液806は、毛管作用のために粒子間に集まる。薄い金属膜830(塩からの金属)が、溶液から直接印刷された領域の粉末粒子802の事実上全体に堆積する。堆積は、溶液が粉末と接触してまもなく始まる。これは、層808内の単一粉末粒子802間の小さいブリッジにつながり、このブリッジが結果的には事実上、粒子を一つに粘着させる。
【0126】
印刷された層は、図8Dに示すように乾燥することができ、溶液は、上述の実施形態の場合と同様にネックへ後退し、堆積を形成する816。代替的に、この乾燥ステップは、幾つかの層が拡散され、かつその上に印刷された後で実行することができる。
【0127】
追加層808´が追加され(図8E)、塩溶液806´で印刷される(図8F)。金属は再び溶液から直接、粒子802´の周囲の薄膜830´として堆積する(図8G)。追加層808´の粒子802´は相互に、および前に塗布された層808の粒子と結合される。本体にさらなる熱処理を適用することが可能であり(図8I)、それにより乾燥後の残りの塩816から追加金属818のさらなる還元を引き起こすことができ、それによってネックが大きくなる。
【0128】
この型のバインダーの可能な候補は、塩と金属粉末の一部が電気化学置換反応する溶液と粉末の組合せである。この反応の結果、塩の金属(またはその一部分)が金属粉末上に堆積する。
【0129】
イオン溶液からの金属のこの堆積は基本的に、溶解した金属イオン(塩の)に電子を加えることから成る。これらの電子は、溶液に部分的に溶解する金属粉末によって提供される。
【0130】
置換反応では、粉末の金属の一部が溶液中に溶解する。溶液が乾燥すると、今はイオンの形の金属のこの部分は、何らかの塩の形で結晶化する。熱処理後、それを金属に還元することができる。したがって、この方法によって形成されるブリッジは、粉末の金属および添加された塩溶液の塩の金属の両方の金属構造で構成することができる。これらの構造は、合金、混合物、第1層から次層へと連続する層の被覆、他の層のマトリックス内の1つの層のアイランド、または散在する微細粒子を含むことができる。
【0131】
還元された粉末の量の上限は、関連する化学反応から推定することができる。例えば、銅が硝酸銀と反応する場合、
Cu+2AgNO3 −> Cu(NO32+2Ag
銀金属に還元される2個の銀イオンAg+につき、1個の銅原子が酸化して
Cu2+となる。溶解する銅原子の数は通常、AgNO3の全量がAgに還元されるわけではないので、理論上の最大値より小さくなる(初期溶液中に存在する
Ag+数の2分の1)。
【0132】
一部の状況で役立つかもしれない指針は、粉末の金属と塩の金属の起電力シリーズにおける相対位置を比較することである。一般的に、塩の金属が粉末の金属より高い貴(more noble)である場合には、置換反応は発生しやすい。1例として、以下に示す詳細例の銅と鉄の置換を考慮する。溶液中に存在する他の化学種は、塩の金属が粉末の金属より低い貴(less noble)である場合でも、置換反応することを可能にするかもしれない。そのような他の種として、アンモニアイオンまたはシアン化物イオンがある。
【0133】
本発明のこの実施形態の幾つかの変形のステップもまた、図9A、9B、9C、および9Dで流れ図の形で概説する。図9Aは、活動の全てが原粉末ヘッドで行われる実施形態を示す。プロセスは600から始まり、1層の粉末層を設けるステップ640がそれに続く。塩溶液を印刷し642、接触により直接金属に還元させる644。さらに形状の増強が必要な場合646、プロセスは粉末層形成ステップ640に戻る。そうでない場合には、非結合粉末が除去され652、希望するならば、上述のように本体が緻密化される。
【0134】
上述の還元実施形態の場合と同様に、純粋な置換反応法が、希望されるような高い強度またはその他の性質を常にもたらすわけではない。そうである場合には、図9Bに示す方法の変形に従って、図5Aの発明の還元実施形態に関連して上述した同様のステップと同じように、部品を原粉末ヘッドで加熱して650、堆積した金属を焼結または溶融する。熱処理前に非還元塩が本体に残っている場合には、焼結および溶融に加えて、熱処理中にその塩からも金属を還元することができる650。そのような非還元塩は、上述の通り形成された、添加溶液からの塩または金属粉末からの塩のいずれか、または両方とすることができる。
【0135】
場合によっては、図9Aに示す置換反応の生成物は、(モリブデン粉末に堆積された炭酸銀からの銀を示す図15などの走査型電子顕微鏡写真で観察されるような)還元金属の滑らかなよく画定されたネックであるかもしれない。しかし、場合によっては、これらのネックは、堆積されたままではほとんど強度を持たないかもしれず、薄膜は多孔性で弱いかもしれず、あるいは薄膜と粉末の間に弱い界面があるかもしれない(ネックにおける小さいクラックによって見ることができる)。これらの後者のような場合には、図9Bに示すように、昇温熱処理ステップ50を使用して、これらのネックの金属を焼結または溶融することによって、ネックを強化することができる。そのようなステップの結果を図16に示す。これは、図15に示す銀被覆されたモリブデン粉末を980℃で燃焼した後の状態を示す。この変形のその後のステップは、図9Aに示すものと同じであり、粉末を除去すること652と、希望するならば654緻密化すること656である。
【0136】
以上の記述は、塩との置換反応から生じる金属の焼結または溶融のいずれかを生じさせるための粉末品の加熱650が、塩溶液が印刷された原粉末ヘッドで行われることを想定している。そのようなやり方は、本発明の方法の非常に有利な実施形態であるが、それが常に最も有利な実施形態であるとは限らない。場合によっては、上述しかつ部分的に図5B、5C、および5Dによって示した還元実施形態の場合と同様に、還元金属は、還元後に薄膜状の形態を形成しないかもしれず、あるいは薄膜が形成されても、それは必要なその後の処理に耐えるほど充分に強くない。さらに、このような場合の一部において、塩が印刷される粉末の材料が、塩からの金属をその後焼結または溶融するために必要となる温度に耐えることができないことがある。そのような場合には、還元実施形態の場合と同様に、印刷された部品を別の粉末、例えば高温に耐えることができるセラミック粉末にセッタリングし、次いで還元金属を焼結または溶融するようにその部品を処理すると、有利である。
【0137】
上述の還元法の場合と同様に、部品が比較的小さい(最大寸法が2インチ(5cm)未満)場合、セッタリングの必要は無いかもしれない。
【0138】
この状況を処理する1つの方法を、図9Cに示す。還元金属が本体の処理を可能にするだけの充分な強度を与える場合、塩を金属に還元させ644、かつ任意選択的に乾燥させた後、本体を原粉末ヘッドから取り外し652C、別のより高い溶融温度の粉末ヘッドにセッタリングする。図13は、硫酸銅溶液から工具鋼上に還元され、部品を取り外してセッタリングするだけの充分な強さを与える銅を示す電子顕微鏡写真である。結晶化された非還元塩もまた、図3に示す結晶化実施形態に関連して上述した通り、本体の強度に貢献する。図14は、図13に示した銅結合鋼部品をセッタリングし、1110℃で燃焼して銅金属を溶融させた後の状態を示す。セッタリング粉末を除去し648、希望するならば、本体を緻密化する。
【0139】
別の場合には、本体を原粉末ヘッドから本体を取り外せるだけの充分な強度が、還元金属から得られない。そのような場合、図9Dに示すように、印刷される塩溶液にポリマーを添加することができ、2つを一緒に印刷することができる642´。金属は塩溶液から粉末に直接還元する。図5Dで述べた還元実施形態に関連して上述したように、ポリマーはバインダーとして作用し、部品を取り外して647、他のより高い温度の粉末にセッタリングすることを可能にする。次いで、上記実施形態に関連して述べたように、本体を加熱して650、ポリマーバインダーを除去すると共に、還元金属を焼結または溶融する。セッタリング粉末を除去し652´、必要に応じて本体を湿潤するか、またはしない。
【0140】
還元実施形態の場合と同様に、セッタリングおよび焼結に伴う問題点の全部がこの場合に存在するわけではない。焼結のために発生する収縮は最小限であり、したがってセッタリング材による収縮への抵抗は、同程度の問題を生じない。
【0141】
本発明の置換反応法のさらなる利点は、上述した水素などの還元ガスを必要とせずに、金属の還元が溶液中で行われることである。
【0142】
上記の種類の置換反応は多くの例を挙げることができる。
【0143】
(i)Mo上のAg2CO3 還元後に本体を燃焼する、図9Bに示す置換実施形態の適切な事例の1例では、炭酸銀(Ag2CO3)の0.3モル溶液を使用する。触媒は次の成分、すなわち87v.o.%のH2Oおよび13v.o.%の水酸化アンモニウム(ACS、29.6%NH3)から成る。適切な粉末は直径60ミクロンの球形モリブデン(Mo)粉末である。炭酸銀溶液を粉末ヘッドに投与する。銀は、図15に示すように、置換反応によって粉末上に堆積する。(モリブデンは塩の金属イオンに電子を運び、それらを金属(銀)に変換する。)酸化を防止するために、次いで粉末ヘッド全体を、水素5%およびアルゴン95%の成形ガスの雰囲気の炉内に入れる。炉を5℃/分の速度で980℃の温度まで上昇させ、980℃で30分間維持し、次いで5℃/分の速度で冷却させる。その結果、大きい粒子の部分を被覆する銀薄膜が形成される。これらの薄膜の一部は、図16に示すように、Mo粒子を結合する。銀金属の体積はMo粉末の体積の約0.41%となる。部品を粉末から取り出す。塩が乾燥した状態から金属結合骨格が形成される状態までの部品の収縮は、0.1%の実験誤差の範囲内で0と測定される。
【0144】
次に、充分に密な部品を希望する場合は、部品を湿潤することができる。適切な湿潤材は、3M社から出ている航空宇宙用エポキシEpoxy PR−500である。湿潤は、175℃の温度でオーブンで行う。
【0145】
(ii)工具鋼上のCuSO4 部品を原粉末ヘッドから取り出し、セッタリングして燃焼する、図9Cに示す置換実施形態の適切な事例の1例では、水に溶解した硫酸銅(CuSO4)の0.6モル溶液をバインダーとして使用する。適切な粉末は、直径60ミクロンの球形工具鋼P−20粉末である。硫酸銅溶液を粉末ヘッドに投与する。置換反応によって銅は粉末上に堆積する。印刷された部品は、粉末ヘッドから取り外すだけの充分な強さを持つ。次に、印刷された部品をアルミナ粉末にセッタリングし、水素5%およびアルゴン95%から成る成形ガスの雰囲気の炉内に配置する。炉を5℃/分の速度で1110℃の温度まで上昇させ、1110℃で30分間維持し、次いで5℃/分の速度で冷却させる。還元された銅金属の体積は、鋼粉末の体積の約0.28%となる。部品を粉末から取り出し、次に、充分に密な部品が望ましい場合には、湿潤することができる。適切な湿潤材は、3M社から出ている航空宇宙用エポキシEpoxy PR−500である。湿潤は、175℃の温度でオーブンで実行する。
【0146】
セッタリングを助けるために塩溶液バインダーにポリマーを追加する、図9Dに示す実施形態の適切な事例の1例として、0.3モル炭酸銀溶液93v.o.%と、35wt%のH2Oおよび65wt%のPAAから成るPAA溶液7v.o.%とで構成される溶液(上で図9Bに関連して、モリブデン上の炭酸銀の例で述べた溶液と同一)を使用する。使用するPAAの平均分子量は約2000である。適切な粉末は、直径60ミクロンの球形モリブデン(Mo)粉末である。この溶液を粉末ヘッドに投与する。置換反応によって銀は粉末上に堆積する。PAAは、銀で被覆されたMo粉末を結合する。印刷された部品をMo粉末から取り外す。次にそれをアルミナ粉末にセッタリングし、次いで水素5%およびアルゴン95%から成る成形ガスの雰囲気の炉内に配置する。炉を5℃/分の速度で500℃の温度まで上昇させる。PAAを燃焼し尽くすために500℃で維持する。次いで5℃/分の速度で980℃の温度まで上昇させ、980℃で30分間維持し、次いで5℃/分の速度で冷却させる。還元された銀金属の体積は、Mo粉末の体積の約0.38%となる。部品を粉末から取り出し、次に、充分に密な部品を希望する場合には、湿潤することができる。適切な湿潤材は、3M社から出ている航空宇宙用エポキシEpoxy PR−500である。湿潤は、175℃の温度でオーブンで実行する。
【0147】
プロセス上の一般的考慮事項 任意の塩について、溶液中にどれだけの塩を使用するかを決定するために、設計者は、溶解限度を決定し、次いで限界未満の様々な濃度を用いて、希望する強度を提供できる充分に高い濃度を決定する必要がある。次に、希望する強度を提供するのに充分であるが、塩の沈殿を引き起こすほどには多くない塩の量のバランスを検討する。
【0148】
塩溶液を粉末ヘッドに印刷すると、それは塩溶液が粉末ヘッドの空隙を完全には充填することができない平衡構成に達する。つまり、印刷直後に、それは完全またはほぼ完全に空隙を充填することができるが、その後毛管現象により、平衡構成に達するまで、液体の一部が周囲の粉末へと汲み上げる。球形の粉末では、この平衡構成の結果、一般的に空隙体積の約60%が液体で満たされる。この段階で、空隙内の液体はつながっている。乾燥するにつれて、それは分断されるようになる。乾燥の終わりに近い段階では、各粒子ネックにごく少量の液体があり、粒子ネックはつながっていないので、液体もつながらない。液体が蒸発すると、残りの液体は粒子間のネックに集まる傾向がある。この作用は、塩をネックに引き寄せる傾向があり、そこはまさしくそれが希望される場所である。
【0149】
塩溶液を完全飽和状態で印刷すると、乾燥が起こるにつれて、一部の塩がすぐに沈殿し、ネックまで移動する機会が無くなる。しかし、塩が過飽和溶液から出てくるまで少し時間がかかるので、塩の大部分は希望通りにネックに引き寄せられそうである。
【0150】
乾燥が起こるにつれて、液体の小さいアイランドは、ネックに完全には引き寄せられずに、粉末粒子の表面に固着し、かつこの結果一部の塩がネックではない球形粉末粒子の表面で再結晶化するようなことも起こりそうである。この塩は結合に貢献しない。しかし、加熱中に、それを塩の状態または金属の状態で溶融すると、結合に貢献することができる。
【0151】
金属塩溶液は、様々な3D印刷システム構成のバインダーとして使用することができる。このバインダーは、ドロップ・オン・デマンド(「DOD」)プリンタを使用して印刷することができる。この装置では、ターゲットに液滴を印刷することを希望しない限り、印刷液の液滴がノズルで生成されない。液滴は一般的に、よく知られている圧電結晶を用いて生成される。適切な圧電型のインクジェット・印刷ヘッドの1例は、ジーメンス社(Siemens,Inc.)によって提供される9ノズル・システム「PT88S型インクジェット印刷機構」である。
【0152】
また、ベクトル運動が開始される前に開き、ベクトル経路の最後で閉じる簡単なノズルからベクトル・印刷することも可能である。代替的に、液滴を必要な場所に配置する高速作動電磁弁を使用することもできる。
【0153】
一部の金属塩は、印刷ヘッドに通常見られる構成部品に対する高い腐食性を持つ。潜在的塩バインダー候補の腐食性を考慮しなければならない。
【0154】
さらに、一部の塩は、人間オペレータに対する健康上の危険性がある。通常の製造施設では、これらの健康上の危険性はあまり望ましくないが、乗り越えられないものではない。もっと危険な材料(ベリリウムなど)が使用されている他の製造施設では、金属塩による危害を防止するために注意を払うことに、不利益が追加されることはない。
【0155】
例えば、硝酸銀は、ドロップ・オン・デマンド型プリンタを使用して、ベリリウム粉末に印刷することができる。
【0156】
成形体 上記の説明は、一般的に3D印刷技術に従って、粉材の層を形成することに関連して行った。しかし、本発明の教示は、3D印刷にも、またレイヤード法(layered method)にも限定する必要は無い。例えば、粉材を鋳型内またはその周囲に充填し、次に全体を鋳型の形状を引き受けるように処理する。幾つかのこのような技術によると、バインダーは鋳型内の粉末全体に混合される。その他のそのような技術によると、粉末を焼結するかまたはその他の方法で熱処理して、鋳型の形状を呈するようにする。
【0157】
上述した本発明の3つの一般的実施形態(再結晶化、還元、および置換反応)のどれも成形法に使用することができる。例えば、図10Aに示すように、希望する形状を持つ鋳型1000を用意する。任意の適切な方法に従って、鋳型に粉末1002を充填する。次に、図10Bに示すように、塩溶液1006を粉末体全体に添加する。塩溶液を乾燥させる。再結晶化実施形態によると、プロセスは、図10Cに示すように、本体1060を鋳型から取り外すことができるように、本体を一つに保持するのに充分な強度の結晶塩の形成により終了する。
【0158】
還元実施形態によると、乾燥した本体を、上述の通り、元素金属の還元を引き起こす雰囲気および熱条件下でさらに処理する。金属は隣接する粉末粒子を一つに結合し、本体全体が充分な強度を持つ。
【0159】
上述の通り、最初に粉末が鋳型内に投入され、希望する通りに鋳型全体に分配される。次いで、液体バインダー溶液が添加される。この2段階手順は、粉末を乾燥状態で取り扱うことができるので、状況によっては有利である。粉末の乾燥取扱いは、濡れた粉末の取り扱いより、しばしば実行しやすく、あるいはより常套である。しかし、鋳型に粉末を充填し、それから塩溶液を適用するのではなく、粉末を鋳型に充填する前に、粉末と塩溶液を混合することも可能である。
【0160】
場合によっては、希望する最終製品は、相互接続された多孔率および相互接続された骨格を持つ多孔性本体である。そのような製品は、フィルタとして、または触媒体として、またはフロー・ディフューザとして有用である。その他の場合、完全に密な本体が希望される。再結晶化または還元実施形態のいずれかにより、その後に湿潤材を与えて本体を緻密化することができる。
【0161】
置換反応法も成形技術に使用することができる。そのような場合、鋳型に粉末を充填し、次いで液体塩バインダー溶液を型全体に与える。基本的に塩溶液の導入と同時に、金属は金属粉末の表面に堆積し始める。この置換反応は、上述の通りその本来の過程に従って進行する。
【0162】
ここで、粉末を最初に鋳型に充填し、次いで液体を加える方法のさらに特定的な説明に移ると、粉末1002は、それがよく流動し、かつよく充填されるように、完全に乾燥した状態で使用することができる。次いで塩溶液1006を適用し、毛管現象によって湿潤させる。次に、それを乾燥させる。溶液が乾燥するにつれて、それが部品の外側に、つまり乾燥が起こる表面に向かって吸い出される傾向があるので、乾燥プロセスの制御には注意を払わなければならない。制御されない場合、これは不適切な量の塩が本体の内部に残る結果になりかねない。ゆっくり乾燥することによって、これはある程度まで制御することができる。しかし、別の方法として、液体を局所的に結合させるゲル化剤を塩溶液に添加する方法がある。第3の可能性は、一方が他方より早く蒸発する2つの区別される液相から成る塩溶液を作成することである。第1液相が蒸発した後、残りの液体が粉末粒子の離散した非接続ネックに分配され、したがって結果的に塩の局所的再結晶化が行われる。
【0163】
乾燥表面への塩の移動の問題は、本発明の置換反応実施形態の場合には関係が無い。この場合、金属はすでに溶液から出てきているからである。しかし、この場合、液体が粉末ヘッド全体に湿潤するまで置換反応が完了しないという、別の問題が生じる。
【0164】
代替的に、塩溶液および粉末を鋳型に充填する前に予め混合する場合、かなり流動性の高いスラリが形成される。(避けなければならないのは、少量の液体を含む粉末である。この少量の液体は粉末を一つに凝集させるだけに終わる傾向がある。)次いで、このスラリを所定位置に充填し、乾燥させる。この方法は、炉の作動中における再結晶化塩または塩の還元による結合に最も有用である。
【0165】
上述の通り、本発明の方法を成形技術に使用することは、液体および従って溶解塩が、乾燥が行われる粉末の領域の表面でより密に蓄積する傾向があるという事実によって、ある程度制限されることがある。上述した3D印刷などのレイヤード技術では、層の厚さ全体の不均一性は、不均一性が容認できる程度まで、層の厚さを低減することによって、最小限にとどめることができる。成形技術の問題の同様の解決法は、乾燥中の塩の移動を最小限にとどめるように決定された厚さの層単位で状粉材を鋳型に充填することによって、実行することができる。そのような場合、粉末を乾燥した状態で適用することが、特に有利である。
【0166】
レイヤード技術の場合と同様に、成形技術にも変形例が存在する。多くの場合、鋳型は、塩から導出された金属を還元、焼結、または溶融するために必要な熱処理ステップに耐えることができない。そのような場合、鋳型から成形部品を取り外し、それをセッタリング粉末などの耐火材に交換することができる。
【0167】
溶融塩 一部の塩は、溶融状態で印刷することができる。溶解塩および溶液の印刷に比べたこの方法の利点は、より大量の塩を印刷できることである。さらに、一部の塩は、容認できる溶剤に容易に溶解できない場合がある。
【0168】
塩の適用のその他の形態 本発明の別の態様は、塩を液体、溶液、または溶融塩として以外の方法で適用できることである。
【0169】
例えば、3次元印刷では、最初に1層の金属粉末またはセラミック粉末を展開し、次いで液体ビヒクル(塩が溶解しない液体またはすでに塩が飽和した液体)中の塩のスラリの状態の別の材料として塩を選択的に適用することによって、塩を適用することができる。
【0170】
代替的に、塩は、液体ビヒクル中ではなく、例えばステンシル・マスクを介した打ち粉の技法によって、乾燥粉末として適用することができる。このような場合、部品は、例えば粉末ヘッドで部品を燃焼することによってさらに処理して、塩を金属に還元し、かつ必要な場合には塩の金属を焼結または溶融して強度を高めることができる。部品が塩の結晶、還元金属、またはポリマー、あるいはそれらの組合せのいずれかによって軽く結合されたときに部品を取り外すなど、上で詳述したその他のプロセス経路も適用することができる。
【0171】
さらに、3次元印刷で使用する場合、塩は、層の位置の仕様を持たないスプレッドとして粉末の層全体に提供することができる。これは、塩の微細粉末と混合した金属またはセラミック粉末の層を展開することによって、または金属またはセラミック粉末を1層の塩で被覆することによって、達成することができる。被覆は、例えば塩の溶液中で粉末を粉砕し、粉末を乾燥させ、次いで粉末を砕いて個々の粒子にするために乾燥粉砕することによって形成することができる。技術上知られているその他の粉末被覆技法も、使用することができる。次に、層内の部品の形状を画定するために、さらなる材料としてポリマーバインダーを適用することができる。例えば、ポリアクリル酸の水溶液は、粉末の層にインクジェット印刷することができる。この溶液は塩を溶解することができ、かつグリーン強度を提供する。次いで部品を粉末ヘッドから取り出し、上述した幾つかの方法に従って処理することができる。場合によっては、溶解塩は、上述の通り、部品を取り出すのに充分な強度を提供することができるので、印刷液にポリマー添加剤は必要無いかもしれない。このモードは、塩の再結晶化、塩の熱的還元、または塩の置換反応還元を用いて実行することができることに注意すべきである。さらに、このモード時には、液体が印刷される領域と印刷されない領域を区別することが難しいので、部品をさらに処理する前に、粉末ヘッドから部品を取り外すことが好ましい。
【0172】
上述の通り、成形体を形成する技術では、例えば乾燥塩と金属またはセラミック粉末との混合物を作成することによって、または粉末を塩で被覆することによって、乾燥塩を使用することも可能である。
収縮に寛容な適用分野
本発明の態様は、収縮の回避が主要な関心事ではない一部の適用分野でも使用することができる。これらの場合、塩または塩溶液を印刷することは、金属結合元素を提供するための効果的な方法となることができる。例えば、セメンテド・タングステン・カーバイド・コバルト切削工具を製造するとき、従来の方法では、微細タングステン・カーバイド粉末を微細コバルト粉末と混合する。例えば、1ミクロンのタングステン・カーバイド粉末と1ミクロンのコバルト粉末は、適切な体積分率で混合することができ、スラリを使用してスプレー乾燥粉末を形成することができる。次いで、このスプレー乾燥粉末を圧縮成形型に流し込む。次に、グリーン・カッティング・インサートを圧縮する。次にインサートを液相焼結して、完全に密な部品を生成する。
【0173】
本発明を使用して、酢酸コバルトなどのコバルト塩の溶液を介してコバルトを提供することができる。例えば、1層の微細タングステン・カーバイド粉末を堆積し、酢酸コバルトの溶液をこの粉末に印刷して、部品の形状を画定すると共に、コバルト供給源を提供することができる。タングステン・カーバイド粉末は微粒であるので、特許協力条約に基づいて米国国内段階処理して、PCT/US98/12280の出願番号でザックス(Sachs)らの名前で出願した「JETTING LAYERS OF POWDER AND THE FORMATION OF FINE POWDER BEDS THEREBY」と称する特許に記載されているように、それをスラリに噴射することによって、タングステン・カーバイド粉末を堆積することは有利であるかもしれない。この特許の開示内容を参照によってここに組み込む。
【0174】
本発明のこの実施形態の1つの利点は、粉末を混合する必要が無いことである。粉末を混合するとき、それらはときどき分離する(混合されない)傾向がある。別の利点は、多かれ少なかれ添加する材料を様々な位置で投入できることである。既知の技術では、比較的均質な混合物が得られる。
【0175】
その他の例として、先に記したように、銀によるベリリウム粉末の結合、および銀によるチタン粉末およびチタン合金粉末の結合があり、両方ともその後に部品を緻密化するために焼結が行われる。
【0176】
粉末の種類 粉末粒子はどのような形でもよい。ガス噴霧化球形金属粒子を使用して、有利な結果が達成されている。この結果、よく流動し、かつ取扱いもあまり難しくない、非常に規則的な形状が得られる。さらに、球形粒子は最高可能な充填密度に近い密度を達成し、それによって必要な湿潤は最小限に止まる。一方、不規則な形状の粉末粒子も使用することができる。一般的に、粒子は10〜200ミクロン台である。そのような粉末は、上述のレイヤード・プロセスで使用するときに、乾燥粉末として新しい層に展開することができる。0.5〜10ミクロンの範囲などのより細かい粉末も使用することができる。しかし、これらは一般的にスラリとして適用し、塩溶液を投与する前に乾燥させなければならない(例えば上述の特許出願番号PCT/US98/12280の方法に従う)。
【0177】
金属およびセラミックスの両方をはじめ、幅広い範囲の種類の粉末を、成形される部品の本体に使用することができる。一般的に、粉末が焼結し始めないように、塩が還元する(または結晶化実施形態の場合には、結晶化する)温度に比較して、粉末は充分に高い焼結温度を持たなければならない。さらに、粉末は、選択された塩の金属が接着する物質で無ければならない。置換反応実施形態の場合、粉末は金属でなければならない。
【0178】
多くの材料が粉末に適している。工具鋼およびステンレス鋼(特に416SS)をはじめ、大抵の鋼は適している。その他の適する金属として、ニッケル、銅、青銅、真鍮、チタン、チタン合金、ならびにタンタル、モリブデン、およびタングステンなどの耐火金属がある。適切なセラミック材としては、タングステン・カーバイド、チタン・カーバイド、およびアルミナがある。一部のセラミックスは、何よりも金属によってよく湿潤する。これらの種類のいずれかの粉末に印刷された硝酸銀塩溶液は、容認できる結果をもたらす。
【0179】
粉末のTmaxを高めるために、より高い耐火性の材料でそれを被覆することができる。例えば、鋼粉末にはクロムを電気めっきすることができる。一部の金属粉末は、昇温におけるガスとの反応によって、被覆することができる。例えば、ステンレス鋼粉末は、空気中で400〜700℃の温度で燃焼することによって酸化することができ、酸化物は耐火性被膜として作用する。したがって、本書および請求の範囲で使用する「金属」粉末とは、表面が例えばセラミック粉末粒子の周囲を覆った被膜であるか、それとも完全な金属粒子の一部であるかに関係なく、金属の表面を持つ粉末を意味するものとする。
その他のソリッド・フリーフォーム製造プロセス
教示した多くの技法は、他のソリッド・フリーフォーム製造(Solid Freeform Fabrication)プロセス、特に粉末を使用できる例えば選択的レーザ焼結法、溶融堆積モデリング法、および積層物体製造法などのプロセス、ならびに粉末合成シート(prepared sheet of powder)を使用するその他の方法などに適用することができる。
【0180】
選択的レーザ焼結法では、上述の通り、粉末に塩を予め被覆するか、または粉末を微細乾燥塩と混合することができる。次いでレーザ焼結は、上述の通り、塩をその場で金属に熱還元して、部品を含む金属を形成することができる。代替的に、ポリマーバインダーも粉末に含めることができ、レーザ焼結はポリマー結合によってグリーン部品を画定することができる。
【0181】
溶融堆積モデリング法では、塩を押出し原料内で金属粉末またはセラミック粉末と一緒に供給することができる。塩は、原料バインダーの粒子として含まれるか、あるいは金属粒子またはセラミック粒子を被覆する、原料のバインダー(一般的に熱可塑性ポリマーまたはその他のポリマー)中に溶解することができる。
【0182】
粉末合成シートを使用できるプロセス(例えば積層物体製造法およびCAM−LEMプロセス)では、合成シートは、原料のバインダー(一般的に熱可塑性ポリマーまたはその他のポリマー)中に溶解した塩を含めることができ、あるいは塩を原料バインダー中の粒子として含めるか、塩を金属粒子またはセラミック粒子に被覆することができる。
【0183】
以上の記述は解説として理解すべきであって、いかなる意味でも限定と考えるべきではない。本発明を特に、その好適な実施形態に関連して示しかつ説明したが、請求の範囲に規定する本発明の精神および範囲から逸脱することなく、形態および詳細を様々に変化させることができることを、当業者は理解されるであろう。
【0184】
請求の範囲における全ての手段またはステップおよび機能要素の対応する構造、材料、作用、および等価物は、明確に請求するその他の要素と共に、機能を実行するための全ての構造、材料、または作用を含むつもりである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1Aは燒結処理によって緩い粉末を結合させる従来技術方法の概略図である。図1Bは塩溶液から発生する成分によって粉末を結合させる本願発明の基本方法の概略図である。
【図2】 図2Aから図2Fは本願発明の1実施例のステップを示す概略図であり、粉末層が提供され(図2A)、塩が粉末層上に印刷され(図2B)、乾燥され(図2C)、別の粉末層が適用され(図2D)、追加塩溶液が印刷され(図2E)、塩溶液が乾燥されて結晶となり、層間で粉末顆粒を結合させている(図2F)。図2Gは本願発明の還元実施例のステップを示す概略図であり、図2Fの乾燥塩結晶は熱処理後に金属に還元される。
【図3】 図3は本願発明の再結晶化実施例のフローチャートである。
【図4】 図4はステンレス鋼粉末のスケルトンでのロシェル塩結合製品の電子顕微鏡断面図である。
【図5】 図5Aは本願発明の方法の還元実施例のフローチャートであり、物体の全加熱処理はオリジナル粉末ベッド内で行われている。図5Bは本願発明の方法の別な還元実施例のフローチャートであり、物体はオリジナル粉末ベッドから取り出され、塩が結晶化された後にセッター処理され、物体の全加熱処理はセッターベッド内で実施される。図5Cは本願発明の方法のさらに別な還元実施例のフローチャートであり、物体は塩が還元された後にオリジナル粉末ベッドから取り出されてセッター処理され、物体の燒結処理あるいは溶解のための追加加熱処理がセッターベッド内で実施される。図5Dは本願発明の別な還元実施例のフローチャートであり、塩バインダーに加えてフュジティブバインダーが提供され、物体はオリジナル粉末ベッドから取り出されてセッター処理される。
【図6】 図6は鋼粉末のスケルトンでの硝酸銀塩結合製品の電子顕微鏡断面図である。
【図7】 図7は、形成ガス内に置かれた後の鋼粉末のスケルトンでの硝酸銀結合製品の電子顕微鏡断面図であり、銀が薄い膜に還元されて、粉末顆粒を結合している様子を示している。
【図8】 図8Aから図8Iは本願発明の置換反応実施例のステップを示す概略図であり、粉末層が提供され(図8A)、塩が粉末層上に印刷され(図8B)、金属が置換反応で粉末上に還元され(図8C)、層内で粉末顆粒が結合され、溶液が乾燥され(図8D)、別層の粉末が適用され(図8E)、追加塩溶液が印刷され(図8F)、追加金属が置換反応で粉末上に還元され、層内及び層間で粉末顆粒が結合され(図8G)、第2積層塩溶液が乾燥され(図8H)、層内と層間で粉末顆粒が結合され、オプションとして熱処理が行われ(図8I)、塩からさらに多くの金属の還元が行われている。
【図9】 図9Aは本願発明の方法の電子化学置換反応実施例のフローチャートである。図9Bは本願発明の方法の別な電子化学置換反応実施例のフローチャートであり、物体はオリジナル粉末ベッド内でさらに熱処理され、還元金属を燒結処理または溶解させている。図9Cは本願発明の方法のさらに別な電子化学置換反応実施例のフローチャートであり、物体はオリジナル粉末ベッドから取り出されて別の粉末内でセッター処理され、セッター処理ベッド内でさらに熱処理されて、還元金属を燒結処理または溶解させている。図9Dは本願発明の方法のさらに別な電子化学置換反応実施例のフローチャートであり、フュジティブバインダーが塩バインダーに加えて提供され、物体はオリジナル粉末ベッドから取り出されて、さらなる熱処理のためにセッター処理される。
【図10】 図10A、図10B及び図10Cは成型技術を利用した本願発明の方法の概略図であり、粉末材料で充填された型(図10A)、液体塩溶液の追加(図10B)及び取り出された成型パーツ(図10C)が図示されている。
【図11】 図11は鋼粉末のスケルトンの電子顕微鏡断面図であり、銅金属は粉末顆粒間のネック部に存在し、その銅は硝酸銅溶液から得られたものであり、この製品は乾燥され、480℃で燃焼処理されて銅を還元させるが溶解はさせない。
【図12】 図12はモリブデン粉末のスケルトンでの銅結合製品の電子顕微鏡断面図であり、その銅は硝酸銅溶液から得られたものであり、この製品は乾燥されて1110℃で燃焼処理され、銅を溶解させる。
【図13】 図13は工具鋼粉末のスケルトンの電子顕微鏡断面図であり、硫酸銅の塩が印刷され、置換反応が施されたものであり、この製品は乾燥されているが燃焼処理されてはいない。
【図14】 図14はツール鋼粉末での銅結合製品の電子顕微鏡断面図であり、銅は図13に示すように硫酸銅からのものであり、製品は乾燥され、オリジナル粉末ベッドから取り出されており、セッター処理されて1110℃で燃焼処理されている。
【図15】 図15はモリブデン粉末のスケルトンでの銀結合製品の電子顕微鏡断面図であり、炭酸銀塩溶液との置換反応後のものであり、製品は乾燥されているが燃焼処理されていない。
【図16】 図16はモリブデン粉末のスケルトンでの銀結合製品の電子顕微鏡断面図であり、図15に示すような置換反応後のものであり、製品は乾燥されて980℃で燃焼処理されている。

Claims (55)

  1. 三次元印刷技術を利用して物体を粉末から成型させる方法であって、
    a.第1材料の粉末をその粉末層の顆粒が互いに接触する状態で提供するステップと、
    b.該粉末層上に、前記粉末顆粒を互いに結合させる塩を含んだ液体ビヒクルを印刷するステップと、
    c.前記ステップaとステップbとを反復し、望む量の印刷された粉末を提供するステップと、
    d.該印刷された液体と粉末とを、前記第1材料とは異なり、前記塩溶液から発生する金属が前記顆粒間のインターフェースで凝結し、隣接顆粒を各層内及び層間で結合させる条件下で固持するステップであって、前記塩からの金属がそれ以上の温度では前記インターフェースにて前記粉末顆粒上に還元される温度で前記物体をさらに処理するステップと、
    を含んでいることを特徴とする方法。
  2. さらに処理するステップは、それ以上の温度で還元された材料が燒結開始する温度で物体をさらに処理するステップを含んでいることを特徴とする請求項記載の方法。
  3. さらに処理するステップは、それ以上の温度で還元された材料が溶解開始する温度で物体をさらに処理するステップを含んでいることを特徴とする請求項記載の方法。
  4. 三次元印刷技術体を利用して粉末から物体を形成する方法であって、
    a.その顆粒が互いに接触状態であるように第1材料の粉末層を提供するステップと、
    b.前記粉末層の選択領域に、前記粉末顆粒を該選択領域で相互結合させる金属塩を含有した液体ビヒクルを印刷するステップと、
    c.望む量の印刷された粉末が提供され、前記選択領域に物体を提供させるまで前記ステップaとステップbとを反復するステップと、
    d.いかなる数の層であっても1度に1層づつ全ての層まで同時的に処理して前記物体を乾燥させ、塩溶液からの結晶金属で顆粒を互いに緩く結合させて結合物体を成型させるステップと、
    e.該緩く結合された顆粒物体を周囲の非結合粉末から取り出すステップと、
    f.前記第1材料とは異なり、前記塩溶液から発生する金属が前記顆粒間のインターフェースで形成され、各層内及び層間で隣接する顆粒同士を結合させるように前記印刷液と粉末とを固持するステップであって、結晶化された前記塩からの金属を前記インターフェースにおいて、それ以上の温度にて前記粉末顆粒上に還元される温度で前記物体をさらに処理するステップと、
    を含んでいることを特徴とする方法。
  5. さらに処理するステップは、それ以上の温度で還元された金属が燒結開始する温度で物体をさらに処理するステップを含んでいることを特徴とする請求項記載の方法。
  6. さらに処理するステップは、それ以上の温度で還元された金属が溶解開始する温度で物体をさらに処理するステップを含んでいることを特徴とする請求項記載の方法。
  7. 緩く結合された物体を取り出すステップと、金属を還元する温度で該物体を処理するステップとの間で、該取り出された物体を別のセッタリング粉末内でセッター処理するステップをさらに含んでいることを特徴とする請求項記載の方法。
  8. 還元された金属を、顆粒が互いに緩く結合して結合物体を成型するように提供し、
    a.顆粒間のインターフェースの還元された金属で緩く結合された顆粒物体を、結合されていない周囲の粉末顆粒から取り出すステップと、
    b.それ以上の温度で前記還元された金属が燒結する温度で前記物体をさらに処理するステップと、
    をさらに含んでいることを特徴とする請求項1記載の方法。
  9. さらに処理するステップは、それ以上の温度で燒結された金属が溶解開始する温度で物体をさらに処理するステップを含んでいることを特徴とする請求項記載の方法。
  10. 緩く結合された物体を取り出すステップと、還元された金属を燒結させる温度で該物体をさらに処理するステップとの間で、該取り出された物体を別のセッタリング粉末内でセッター処理するステップをさらに含んでいることを特徴とする請求項記載の方法。
  11. 三次元印刷技術体を利用して粉末から物体を形成する方法であって、
    a.その顆粒が互いに接触状態であるように第1材料の粉末層を提供するステップと、
    b.前記粉末層の選択領域に、前記粉末顆粒を該選択領域で相互結合させる金属塩とポリマーバインダーとを含有した液体ビヒクルを印刷するステップと、
    c.望む量の印刷された粉末が提供され、前記選択領域に物体を提供させるまで前記ステップaとステップbとを反復するステップと、
    d.個別または複数で前記層を乾燥させ、前記顆粒を互いに緩く結合させて結合物体を成型させるステップと、
    e.該緩く結合された顆粒物体を周囲の非結合粉末から取り出すステップと、
    f.前記第1材料とは異なり、前記塩溶液から発生する金属が前記粉末顆粒間のインターフェースで形成され、各層内及び層間で隣接する顆粒同士を結合させるように前記印刷液と粉末とを固持するステップであって、前記塩からの金属を前記インターフェースにおいて、それ以上の温度にて前記粉末顆粒上に還元される温度で前記物体をさらに処理するステップと、
    を含んでいることを特徴とする方法。
  12. さらに処理するステップは、それ以上の温度で還元された金属が燒結開始する温度で物体をさらに処理するステップを含んでいることを特徴とする請求項11記載の方法。
  13. さらに処理するステップは、それ以上の温度で還元された金属が溶解開始する温度で物体をさらに処理するステップを含んでいることを特徴とする請求項11記載の方法。
  14. 緩く結合された物体を取り出すステップと、塩からの金属を還元させる温度で該物体をさらに処理するステップとの間で、該取り出された物体を別のセッタリング粉末内でセッター処理するステップをさらに含んでいることを特徴とする請求項11記載の方法。
  15. 還元ステップは還元剤を含んだ環境内で粉末物体を燃焼処理するステップを含んでいることを特徴とする請求項1記載の方法。
  16. 還元剤は水素を含んでいることを特徴とする請求項15記載の方法。
  17. 三次元印刷技術体を利用して粉末から物体を形成する方法であって、
    a.その顆粒が互いに接触状態であるように第1材料の粉末層を提供するステップと、
    b.前記粉末層の選択領域に、前記粉末顆粒を該選択領域で相互結合させる金属塩を含有した液体ビヒクルを印刷するステップと、
    c.望む量の印刷された粉末が提供され、前記選択領域に物体を提供させるまで前記ステップaとステップbとを反復するステップと、
    d.前記第1材料とは異なり、前記塩溶液から発生する金属が前記粉末顆粒間のインターフェースで形成され、各層内及び層間で隣接する顆粒同士を結合させるように前記印刷液と粉末とを固持するステップであって、該印刷液から前記塩を還元させ、前記粉末顆粒間の前記インターフェースにおいて金属膜を形成するステップと、
    を含んでいることを特徴とする方法。
  18. は膜形成塩を含んでいることを特徴とする請求項17記載の方法。
  19. 塩は、還元された金属の直前物質が溶融する温度でのみ金属に還元される塩を含んでいることを特徴とする請求項18記載の方法。
  20. 塩溶液は硝酸銀を含んでいることを特徴とする請求項17記載の方法。
  21. 三次元印刷技術を利用して物体を粉末から成型させる方法であって、
    a.第1材料の粉末をその粉末層の顆粒が互いに接触する状態で提供するステップと、
    b.該粉末層上に、前記粉末顆粒を互いに結合させる塩を含んだ液体ビヒクルを印刷するステップと、
    c.前記ステップaとステップbとを反復し、望む量の印刷された粉末を提供するステップと、
    d.該印刷された液体と粉末とを、前記塩溶液から発生する金属が、該塩が前記液体ビヒクル内に存在するときに該塩から還元され、前記顆粒間のインターフェースで該粉末顆粒に接着し、隣接顆粒を各層内及び層間で結合させる条件下で固持するステップと、
    を含んでいることを特徴とする方法。
  22. 液体と粉末とを固持するステップを、粉末と印刷液を提供するステップでも反復するように印刷ステップと反復ステップとの間で実施することを特徴とする請求項21記載の方法。
  23. 反復ステップ後に液体と粉末とを固持するステップを実施することを特徴とする請求項21記載の方法。
  24. 印刷ステップと反復ステップとの間と該反復ステップの後とで、液体と粉末を固持するステップを実施することを特徴とする請求項22記載の方法。
  25. 還元ステップは塩を含んだ液体を顆粒と接触させるステップを含んでいることを特徴とする請求項21記載の方法。
  26. 塩が液体ビヒクル内に存在するときに該塩を金属に還元させるステップは、該溶液が接触した粉末の顆粒を結合させるものであり、本方法は、該結合された顆粒を結合されていない顆粒から取り出し、物体を成型させるステップをさらに含んでいることを特徴とする請求項21記載の方法。
  27. a.顆粒の物体を、それ以上の温度で塩からの還元された金属が燒結する温度でさらに処理し、燒結された金属で顆粒を結合させるステップと、
    b.該結合された物体を結合されていない金属粉末顆粒から取り出すステップと、
    をさらに含んでいることを特徴とする請求項21記載の方法。
  28. a.顆粒の物体を、それ以上の温度で塩からの還元された金属が溶解する温度でさらに処理し、溶解した金属で顆粒を結合させるステップと、
    b.該結合された物体を結合されていない金属粉末顆粒から取り出すステップと、
    をさらに含んでいることを特徴とする請求項21記載の方法。
  29. 還元された金属は顆粒を互いに緩く結合させて結合物体を成型させるように提供され、本方法は、
    a.ネック部で還元金属によって緩く結合された顆粒物体を周囲の非結合粉末から取り出すステップと、
    b.前記物体を、それ以上の温度で前記還元された金属が燒結する温度でさらに処理するステップと、
    をさらに含んでいることを特徴とする請求項26記載の方法。
  30. さらに処理するステップは、それ以上の温度で燒結された金属が溶解開始する温度で物体をさらに処理するステップを含んでいることを特徴とする請求項29記載の方法。
  31. 緩く結合された物体を取り出すステップと、還元された金属が燒結する温度で該物体をさらに処理するステップとの間で、取り出された該物体を別のセッタリング粉末内でセッター処理するステップをさらに含んでいることを特徴とする請求項29記載の方法。
  32. 液体溶液はポリマー性バインダーをさらに含んでおり、固持ステップは、
    a.物体を乾燥させ、顆粒を互いに緩く結合させて成型させるステップと、
    b.該緩く結合された顆粒物体を周囲の非結合粉末から取り出すステップと、
    c.前記塩からの金属を、前記顆粒が互いに接触するネック部で、それ以上の温度で燒結される温度で前記物体をさらに処理するステップと、
    を含んでいることを特徴とする請求項21記載の方法。
  33. さらに処理するステップは、それ以上の温度で還元された金属が溶解開始する温度で物体をさらに処理するステップを含んでいることを特徴とする請求項32記載の方法。
  34. 緩く結合された物体を取り出すステップと、金属を燒結させる温度で該物体を処理するステップとの間で、該取り出された物体を別のセッタリング粉末内でセッター処理するステップをさらに含んでいることを特徴とする請求項32記載の方法。
  35. 還元ステップが置換反応を含むように粉末と液体ビヒクルとを選択することを特徴とする請求項21記載の方法。
  36. 粉末と液体溶液とは金属塩溶液を含んでおり、該溶液と該金属塩とは、粉末金属が該溶液内で溶解するときに粉末金属が塩の金属イオンに電子を提供することができるように選択されることを特徴とする請求項21記載の方法。
  37. 塩の金属は標準電位率での測定で金属粉末の金属よりもさらにネガティブ(negative: noble)であることを特徴とする請求項21記載の方法。
  38. 物体を粉末から成型させる方法であって、
    a.第1材料の粉末をその粉末層の顆粒が互いに接触する状態で提供するステップと、
    b.前記粉末の顆粒を相対的に固定した状態で、該粉末内に該顆粒を結合させる金属塩を含んだ液体ビヒクルを提供するステップと、
    c.該液体と粉末とを、前記第1材料とは異なり、前記塩溶液から発生する金属が前記顆粒間のインターフェースで凝結し、隣接顆粒を各層内及び層間で結合させる条件下で固持し、前記液体と前記粉末を処理して前記粉末顆粒間で前記金属の頚部を形成して該顆粒を結合させるステップと、
    を含んでおり、該液体及び粉末処理は、i)前記物体を乾燥させ、ii)該物体を前記顆粒が相互接触する前記インターフェースにて、それ以上の温度では前記塩が前記粉末顆粒上に還元する温度でさらに処理することを特徴とする方法。
  39. さらに処理するステップは、それ以上の温度で還元された材料が燒結開始する温度で物体をさらに処理するステップを含んでいることを特徴とする請求項38記載の方法。
  40. さらに処理するステップは、それ以上の温度で還元された材料が溶解開始する温度で物体をさらに処理するステップを含んでいることを特徴とする請求項38記載の方法。
  41. 粉末から物体を形成する方法であって、
    a.その顆粒が相互に接触するように第1材料の粉末を提供するステップと、
    b.該顆粒を実質的固定状態にて固持した状態で、該顆粒を結合させるために前記粉末内に金属塩を含有する液体ビヒクルを提供するステップと、
    c..前記第1材料とは異なり、前記塩溶液から発生する金属が前記粉末顆粒間のインターフェースで形成され、隣接する顆粒同士を結合させるように前記印刷液と粉末とを固持し、前記塩を金属に還元するステップと、
    を含んでいることを特徴とする方法。
  42. 還元ステップは還元剤を含んだ環境内で粉末物体を燃焼処理するステップを含んでいることを特徴とする請求項41記載の方法。
  43. 還元剤は水素を含んでいることを特徴とする請求項42記載の方法。
  44. 固持ステップは、液体を乾燥させ、塩の結晶を顆粒間のネック部で凝結させるステップを含んでいることを特徴とする請求項38記載の方法。
  45. 固持ステップは、塩の結晶を顆粒を結合保持させる物性に変換させるステップをさらに含んでいることを特徴とする請求項44記載の方法。
  46. 印刷ステップ後であって、反復ステップの前に印刷された層を乾燥させるステップをさらに含んでおり、該反復ステップにも該乾燥ステップを含ませることを特徴とする請求項1記載の方法。
  47. 印刷された層を乾燥させるステップをさらに含んでおり、該乾燥ステップは少なくとも2層を実質的同時に乾燥させることを特徴とする請求項1記載の方法。
  48. 乾燥ステップは、全層が提供され、印刷された後に全層を実質的同時に乾燥させることを特徴とする請求項47記載の方法。
  49. 塩は、金属が溶融開始する温度以下で金属を還元し、膜を形成させる塩を含んでいることを特徴とする請求項17記載の方法。
  50. 固持ステップは液体からの塩を還元し、粉末顆粒間のインターフェースで金属膜を形成させるステップをさらに含んでおり、該還元ステップは該金属膜の金属が溶融開始する温度以下で実行されることを特徴とする請求項17記載の方法。
  51. 三次元印刷技術を利用して物体を粉末から成型させる方法であって、
    a.第1材料の粉末をその粉末層の顆粒が互いに接触する状態で提供するステップと、
    b.選択領域において該粉末層上に、前記粉末顆粒を互いに結合させ、該顆粒を前記選択領域にて結合させる金属化合物を含んだ液体ビヒクルを印刷するステップと、
    c.前記ステップaとステップbとを反復し、望む量の印刷された粉末を提供し、前記選択領域に物体を提供させるステップと、
    d.該印刷された液体と粉末とを、前記第1材料とは異なり、前記液体ビヒクルから発生する金属が前記粉末顆粒間のインターフェースで形成され、隣接顆粒を各層内及び層間で結合させる条件下で固持するステップであって、前記化合物がそれ以上の温度では前記インターフェースにて前記粉末顆粒上に金属を形成させるように反応する温度にて前記物体をさらに処理するステップと、
    を含んでいることを特徴とする方法。
  52. 物体をさらに処理するステップはそれ以上の温度では化合物が還元されて金属を形成する温度にて実行されることを特徴とする請求項51記載の方法。
  53. 物体をさらに処理するステップはそれ以上の温度では化合物が分解して金属を形成する温度にて実行されることを特徴とする請求項51記載の方法。
  54. 物体をさらに処理するステップは化合物が還元されて金属を形成するように該物体をさらに処理するステップを含んでいることを特徴とする請求項51記載の方法。
  55. 物体をさらに処理するステップは化合物が分解して金属を形成するように該物体をさらに処理するステップを含んでいることを特徴とする請求項51記載の方法。
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