JP4310639B2 - β−ケトエステル構造含有有機ケイ素化合物の製造方法 - Google Patents

β−ケトエステル構造含有有機ケイ素化合物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の原料等として有用なβ−ケトエステル構造含有有機ケイ素化合物を製造する方法に関する。
β−ケトエステル構造含有有機ケイ素化合物の製造法として、不飽和基含有β−ケトエステル化合物とヒドロアルコキシシランとを塩化白金酸を触媒として存在させて、ヒドロシリル化反応せしめて製造することは公知技術である(特許文献1〜3:特開昭63−250390号公報,特開昭63−313793号公報,特開平11−323132号公報)。また、塩化白金酸(H2PtCl6・6H2O)は、単独の添加でも触媒作用を有するが、とりわけアルコール溶液は均一系触媒であり、speier触媒と呼ばれ、その簡便さから最も用いられているものである。
従来のβ−ケトエステル構造含有有機ケイ素化合物の製造方法、即ち塩化白金酸を触媒として、不飽和基含有β−ケトエステル化合物とヒドロアルコキシシランとをヒドロシリル化反応させる方法においては、以下に示すいくつかの問題があった。
(1)ヒドロシリル化反応の開始が毎回の製造において常に安定ではなく、しかも反応の進行が不安定であるという問題があった。より詳しく説明すると、一方の原料と塩化白金酸を仕込み、次いで、もう一方の原料の供給を開始してもヒドロシリル化反応が直ちに開始しない場合があった(反応性が安定であれば、反応が開始すると反応熱による内温の上昇が直ちに観察されるが、従来製法では反応が開始せず、内温の上昇が起こらない場合があった。)。このため、反応を開始させるまでに、非常に長い熟成時間を必要とする場合があった。更に、反応が開始して進行している途中の段階で突然反応が停止したり、また予測できない不定の段階において、その停止していた反応が突然に再開し、蓄積していた未反応の原料が一気に反応して、暴走傾向の発熱を生ずる場合があり、工業的な大スケールで製造を行うには非常に危険性が高かった。
また、触媒として使用される塩化白金酸は、通常のオレフィン類のヒドロシリル化反応では安定な反応性を示すが、不飽和基含有β−ケトエステル化合物のヒドロシリル化反応では特異的に不安定な反応性を示す。この理由については、不飽和基含有β−ケトエステル化合物が、固有の性質として互変異性体のエノール形化学種を相当量含有していることが影響しているものと考えられる。不飽和基含有β−ケトエステル化合物は、メチレンを挟んだ二つのカルボニル基を有するジケトン構造をしているため、とりわけメチレンの水素原子が活性プロトンになりやすい性質にあり、ケト形化学種に対して互変異性体であるエノール形化学種が相当量共存することが知られている。不飽和基含有β−ケトエステル化合物における前述の塩化白金酸を触媒とした際のヒドロシリル化反応の不安定さは、上記のエノール形化学種もしくは活性プロトンが、塩化白金酸の触媒作用を妨害するためと推測される。
(2)従来法では、反応収率の再現性が悪く、反応が未達となって未反応原料が多く残る場合や、種々の副生物が多量に発生して低収率となる場合があった。従来製法における副生物に関しては、特開昭63−250390号公報(特許文献2)にも具体的な例が記載されているように、目的物のβ−ケトエステル構造含有有機ケイ素化合物のエノール形化学種の水酸基と同一分子もしくは異分子のケイ素原子上のアルコキシ基とがエステル交換した化合物が形成しやすいことが知られている。なお、上記のエステル交換反応は、塩化白金酸が有する塩素分の触媒作用で助長されているものと推測される。
(3)従来法では、塩化白金酸を触媒とする反応系に、補触媒としてトリフェニルホスフィンを添加する技術も知られている(特許文献3:特開平11−323132号公報)が、ホスフィン系化合物は、白金触媒の触媒毒となる性質を有するため、工業的な大スケールの製法には好ましくないという問題があった(非特許文献1:伊藤邦雄編集「シリコーンハンドブック」第27頁、日刊工業新聞社)。また、トリフェニルホスフィンは常温で固体であり、大容量の反応器に仕込む際には液体の化合物に比べて取り扱いにくく、作業性が悪いという問題もあった。
このため、不飽和基含有β−ケトエステル化合物とヒドロアルコキシシランとをヒドロシリル化反応させて、β−ケトエステル構造含有有機ケイ素化合物を製造する方法においては、毎回の製造において常に反応の開始や反応の進行が安定であり、かつ副生物が少なくて反応収率が高い方法が求められていた。また、反応に悪影響を及ぼすおそれのある物質を添加することや、繁雑な操作を追加することの必要が無い方法が求められていた。
特開昭63−250390号公報 特開昭63−313793号公報 特開平11−323132号公報 伊藤邦雄編集「シリコーンハンドブック」第27頁、日刊工業新聞社
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、毎回の製造において常に反応の開始や反応の進行が安定であり、かつ副生物が少なく、反応収率が高いβ−ケトエステル構造含有有機ケイ素化合物の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、白金−ビニルシロキサン錯体を触媒として選び、この白金触媒の存在下で不飽和基含有β−ケトエステル化合物とヒドロアルコキシシランとのヒドロシリル化反応を行うと、驚くべきことに、ヒドロシリル化反応の開始や反応の進行が毎回の製造において常に安定で、かつ反応収率も高く、補触媒等の添加も必要が無いことや、更なる工程の追加も必要がないことを見出した。また、合成時に反応温度を60〜100℃の限られた範囲内で厳密に管理すると、更に種々の副生物量が減り、より高い反応収率が得られることを見出し、本発明をなすに至った。
即ち、本発明は、
〔I〕下記一般式(1)
Figure 0004310639

(式中、R1は炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基である。)
で表される不飽和基含有β−ケトエステル化合物と下記一般式(2)
HSiR2 n(OR33-n (2)
(式中、R2及びR3は互いに同一又は異種の炭素数1〜6のアルキル基であり、nは0〜2の整数である。)
で表されるヒドロアルコキシシランとを反応させて、下記一般式(3)
Figure 0004310639

(式中、R1、R2、R3、nは上記と同様である。)
で表されるβ−ケトエステル構造含有有機ケイ素化合物を製造する方法において、触媒として白金−ビニルシロキサン錯体を使用することを特徴とするβ−ケトエステル構造含有有機ケイ素化合物の製造方法、
〔II〕白金−ビニルシロキサン錯体が、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンを配位子とする白金錯体である〔I〕記載の有機ケイ素化合物の製造方法、
〔III〕式(1)及び(3)におけるR1がメチル基であり、式(2)及び(3)におけるR2及びR3がメチル基又はエチル基であり、nが0又は1である〔I〕又は〔II〕記載の有機ケイ素化合物の製造方法、
〔IV〕反応温度が、60〜100℃の範囲であることを特徴とする〔I〕乃至〔III〕のいずれかに記載の有機ケイ素化合物の製造方法、
を提供する。
本発明の製造方法によれば、毎回の製造において常に反応の開始や反応の進行が安定であり、かつ副生物が少なく、高収率でβ−ケトエステル構造含有有機ケイ素化合物を得ることができる。
本発明において、原料として使用する不飽和基含有β−ケトエステル化合物は、下記一般式(1)で示される。
Figure 0004310639
(式中、R1は炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基である。)
ここで、R1は炭素数1〜6、好ましくは1〜3のアルキル基、又はフェニル基であり、同一であっても異なっていてもよい。アルキル基として具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等が挙げられる。一般式(1)の化合物としては、以下のものが挙げられる。
Figure 0004310639
本発明において、上記化合物と反応させて使用するヒドロアルコキシシランとしては、ケイ素原子に直接結合した水素原子(Si−H基)を1つ有するシランであり、下記一般式(2)で示される。
HSiR2 n(OR33-n (2)
(式中、R2及びR3は互いに同一又は異種の炭素数1〜6のアルキル基であり、nは0〜2の整数である。)
ここで、R2及びR3は炭素数1〜6、好ましくは1〜3のアルキル基であり、同一であっても異なっていてもよい。具体的には、R1のアルキル基として挙げたものと同様の基を挙げることができる。
上記式(2)で示されるヒドロシラン化合物の典型的な例としては、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、エチルジメトキシシラン、エチルジエトキシシラン、メトキシジエトキシシラン、ジメトキシエトキシシラン、メチルメトキシエトキシシラン等を挙げることができる。
一般式(1)で示される不飽和基含有β−ケトエステル化合物と、一般式(2)で示されるヒドロキシシラン化合物とをヒドロシリル化反応させて得られるβ−ケトエステル構造含有有機ケイ素化合物としては、具体的には以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、具体的な反応条件は後述する。
Figure 0004310639
(式中、Meはメチル基、Etはエチル基を示す。)
本発明において、上記ヒドロシリル化反応の触媒として用いられる白金−ビニルシロキサン錯体は、一般的にはKarstedt触媒と呼ばれる公知の化合物である。ここで、ビニルシロキサンは、ケイ素原子にビニル基が結合したユニットを含むシロキサン類すべてを包含するものであり、ケイ素原子にビニル基が結合したユニットが少なくとも1個あれば、特にそのユニットの数やケイ素原子の数に制限はない。また、ケイ素原子に結合しているビニル基の数は、1個でも2個でも3個でも構わない。
ビニル基以外にケイ素原子に結合している基には特に制限はなく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基やフェニル基等のアリール基が挙げられる。また、シロキサン構造が成り立つためにはシロキシ基は少なくとも1個は必須である。ビニルシロキサンは、鎖状構造もしくは環状構造のどちらでも構わないし、両者の混合物でも良い。
特に、ビニル基を有するケイ素原子が2〜4個のシロキサン類が好ましく、例えば、ジビニルジシロキサン、ジビニルトリシロキサン、ジビニルテトラシロキサン、トリビニルシクロトリシロキサン、テトラビニルシクロテトラシロキサン等が挙げられる。上記例示の中でも、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンが、触媒性能の高さや入手の容易さから特に好ましい。
なお、ケイ素原子に結合したビニル基が、白金に配位する数には特に制限はなく、ビニルシロキサン中のビニル基の数により任意である。好ましくはジビニルジシロキサン2分子を白金1原子に作用させた錯体を使用する。この錯体において、ジビニルジシロキサンは必ずしも白金原子とキレート形成している必要はなく、白金原子は別個のジビニルジシロキサン分子のビニル基とそれぞれ結合していても良い。
白金の原子価は0価であることが好ましいが、2価乃至は4価であっても良い。また、白金原子に、ビニルシロキサンと共に、それ以外の配位子が配位していても良い。例えば、ジエン系の化合物やニトリル基を持った化合物等が一例として挙げられる。なお、上記の白金−ビニルシロキサン錯体は、そのまま反応溶液中に溶解又は分散させて使用しても良く、活性炭やシリカゲル、アルミナ等の吸着剤等に担持させて使用しても良い。
上記白金−ビニルシロキサン錯体は、塩素分を極力含まないことが好ましく、より好ましくは中性領域のpHを示すものが良い。塩素分を低減する方法としては、塩化白金酸とビニルシロキサンを混合させた後、塩化水素を減圧加熱条件等でストリップするか、アルカリ(炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等)で遊離の塩化水素を中和する等の一般的な各種手段が選ばれる。
また、本発明の製造方法において、上記白金−ビニルシロキサン錯体の使用量は任意であるが、不飽和基含有β−ケトエステル化合物1モルに対して、約1×10-7〜1×10-3モルが好ましく、より好ましくは約1×10-6〜1×10-4モルの使用量が良い。使用量が少なすぎると反応が起こらない場合があり、多すぎると経済的に不利になる場合がある。反応温度は、好ましくは60〜100℃、より好ましくは70〜90℃の範囲で厳密に管理すると反応収率がより向上する。反応温度が100℃より高いと、今回本発明者らが新たに確認した現象として、以下の化学式で示されるような、目的物のβ−ケトエステル構造含有有機ケイ素化合物そのものの熱による分解反応が増加する場合がある。なお、下記式中、Meはメチル基を示す。
Figure 0004310639
一方、反応温度が60℃より低いと、不飽和基含有β−ケトエステル化合物とヒドロアルコキシシランとのヒドロシリル化反応の開始に時間がかかる場合がある。また、反応の進行が遅くなる場合もあり、その場合には、系内に蓄積したヒドロアルコキシシランから、水素原子がケイ素原子に結合しているものと同じアルコキシ基に転換した副生物が生じる場合がある(例えば、トリメトキシシランを使用した場合は、テトラメトキシシランが副生する)。
本発明の製造方法の反応条件において、一般式(1)で示される不飽和基含有β−ケトエステル化合物と一般式(2)で示されるヒドロアルコキシシランとのモル比は任意であるが、一方をモル比過剰にすることは、経済的に不利になるばかりでなく、無用の副生物の発生が多くなる場合があるため好ましくない。不飽和基含有β−ケトエステル化合物とヒドロアルコキシシランとのモル比は、通常2:1〜1:2、特に不飽和基含有β−ケトエステル化合物1モルに対してヒドロアルコキシシランを0.9〜1.1モル用いることが好ましい。
反応原料の導入方法には特に制限はなく、例えば、不飽和基含有β−ケトエステル化合物に白金−ビニルシロキサン錯体の存在下で、ヒドロアルコキシシランを発熱の状態を見ながらゆっくりと滴下しても良い。また、ヒドロアルコキシシランに白金−ビニルシロキサン錯体の存在下で、不飽和基含有β−ケトエステル化合物を同様に滴下しても良い。溶媒中に白金−ビニルシロキサン錯体の存在下で、不飽和基含有β−ケトエステル化合物とヒドロアルコキシシランとの混合物を滴下しても良い。また、反応は、回分式、半回分式、連続式のいずれの方式を用いても構わない。
本発明の製造方法では特に反応溶媒を必要としないが、使用する場合は、例えばトルエン、キシレン等の芳香族系、ヘキサン、イソオクタン、デカン等の脂肪族系、THF等のエーテル類等の種々の溶媒を用いることができる。また、これらの溶媒は、1種単独で又は2種以上の溶媒を混合して用いても良い。
更に、必要に応じてヒドロシリル化反応をより活性化するための公知の手段を付け加えることもできる。例えば、適量の酸素を含む乾燥空気を反応系に吹き込むこともでき、反応を促進させるような各種添加剤の使用も適用可能である。
不飽和基含有β−ケトエステル化合物及びヒドロアルコキシシランは、これらをそれぞれ活性炭、活性白土、アルミナ、シリカゲル、酸化マグネシウム等の吸着剤、あるいはこれらを組み合わせた吸着剤やモレキュラーシーブ等により処理したものを用いることもできる。
反応圧力は、常圧もしくは加圧で実施でき、特に制限はない。また、反応系は水分の混入を避けるように窒素やアルゴン等の不活性ガスで置換され、反応中も同様のガスでシールされていることが好ましい。水分が混入すると、ヒドロアルコキシシランや目的物が加水分解して収率が低下するおそれがある。更に、反応系への水分混入防止のためには、原料の不飽和基含有β−ケトエステル化合物は水分が低いものを使用することが好ましく、水分を脱水して用いればより好ましく、この場合、各種脱水剤の使用や溶剤を用いた共沸脱水等の公知の各種脱水方法が選ばれる。
反応系に含まれる水分量は、1000ppm以下、好ましくは200ppm以下であればより好ましく、ゼロに近い程より望ましい結果を与える。
本発明の製造方法によって得られるβ−ケトエステル構造含有有機ケイ素化合物は、プラスチックに対する優れた接着性を示す室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物の原料として、また、金属をキレートとして捕捉する能力があることから、金属捕捉能を有するシランカップリング剤や、溶液中からの金属吸着剤及び金属回収剤の原料として有用である。更に、電気・電子工業(液晶や配線基板等)や自動車工業における接着剤、絶縁シール剤、ポッティング剤、コーティング剤の原料として、金属を固定化した触媒やエポキシ系樹脂等の硬化剤や建築用シーリング剤原料として、多分野にわたり広く利用することができる。
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
窒素置換をそれぞれ十分に行った滴下ロート、還流冷却管、撹拌機及び温度計を備えた四口フラスコ中に、142.2 g(1モル)のアセト酢酸アリル及び白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液0.10g(白金原子15×10-6モルを含有する。)を導入し、70〜80℃に加熱した。これに、3.7g(0.03モル)のトリメトキシシランを投入したところ、直ちに発熱が起こり、反応温度が9℃上昇した。30分後にガスクロマトグラフィー(GC)測定すると、トリメトキシシランは完全に消費されており、アセト酢酸3−トリメトキシシリルプロピルの生成が認められた。
次いで、118.5g(0.97モル)のトリメトキシシランを、約5時間かけて滴下した。滴下の間は、反応温度を70〜90℃で管理した。1時間毎にGC測定したが、どの段階でもトリメトキシシランの残存は0〜0.2質量%であり、常にほぼ定量的な反応が進行していた。滴下終了時にはトリメトキシシランの残存は0.1質量%しかなく、そのまま1時間熟成したところ、トリメトキシシランの残存はゼロになり、反応は完結していた。
GC測定により、トリメトキシシランからのアセト酢酸3−トリメトキシシリルプロピルの収率は約90%であった。また、アセト酢酸3−トリメトキシシリルプロピルのβ−ケトエステル基のエノール形互変異性体とケイ素原子上のメトキシ基がエステル交換した化合物はほとんど検出されなかった。
[実施例2]
窒素置換をそれぞれ十分にした滴下ロート、還流冷却管、撹拌機及び温度計を備えた四口フラスコ中に、42.6g (0.3モル)のアセト酢酸アリル及び白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液0.06g(白金原子9×10-6モルを含有する。)を導入し、70〜80℃に加熱した。これに、40.3g(0.33モル)のトリメトキシシランを約2時間かけて滴下した。滴下当初には速やかに5℃以上の発熱が見られた。滴下の間は、反応温度を70〜90℃で管理した。滴下中に温度の急変はなく、滴下終了時にはトリメトキシシランの残存はほとんどなかった。更に、3時間熟成したところ、トリメトキシシランの残存は全くゼロになり反応は完結していた。
反応液の赤外吸収スペクトルを測定したところ、Si−H基に基づく吸収は全くなくなっていた。また、アセト酢酸3−トリメトキシシリルプロピルのβ−ケトエステル基のエノール形互変異性体とケイ素原子上のメトキシ基がエステル交換した化合物はほとんど検出されなかった。GC及び1H−NMR測定により、アセト酢酸3−トリメトキシシリルプロピルは約90%の収率であることを確認した。
[比較例1]
白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液の代わりに、塩化白金酸(H2PtCl6)のイソプロパノール溶液0.09g(白金原子9×10-6モルを含有する。)を用いた以外は、実施例2と同じ操作を行った。その結果、トリメトキシシランの滴下を始めても、当初に見られるはずのヒドロシリル化反応の開始に由来する発熱がほとんど起こらなかった。70〜80℃に温調しつつ、そのまま滴下を続けていたところ、滴下途中で突然に内温が急激に約20℃上昇した(ヒドロシリル化反応が突然開始した。)。
トリメトキシシランの滴下を止め、急冷した。その後、70〜80℃に温調して、残りのトリメトキシシランの滴下を行った(約2時間)。滴下終了後、2時間熟成した。反応液のGC測定により、アセト酢酸3−トリメトキシシリルプロピルの収率は30%程度に過ぎないことが確認された。未反応のアセト酢酸アリル及びトリメトキシシランが残存し、かつ種々の副生物により反応液の組成は複雑であった。
同じ操作を繰り返したが、反応開始時の発熱はほとんど見られず、トリメトキシシラン滴下途中で突然急な発熱が起こる現象は、毎回予測できない不定の反応段階で起こった。なお、収率もバッチにより変動し(20〜60%)、一定の値になり難かった。
[比較例2]
塩化白金酸(H2PtCl6)のイソプロパノール溶液の代わりに、塩化白金酸(H2PtCl6)のブタノール溶液0.09g(白金原子9×10-6モルを含有する。)を用いた以外は、比較例1と同じ操作を行った。トリメトキシシラン滴下終了後に10時間熟成したが、反応がほとんど起こらず、アセト酢酸3−トリメトキシシリルプロピルの収率は1%程度であった。
[比較例3]
反応温度を100〜120℃とする以外は実施例2と同じ操作を行った。その結果、反応液中にはアセト酢酸3−トリメトキシシリルプロピルはほとんど見られず、以下の反応式における2種の副生物が大量に検出された。アセト酢酸3−トリメトキシシリルプロピルのほとんどは、以下の反応式の経路で熱分解しているものと考えられる。
従って、アセト酢酸3−トリメトキシシリルプロピルは、反応温度が100〜120℃であると、本質的に熱分解する性質を持っていることが確認された。この結果は、反応温度が100℃より高いと好ましくないことを示唆している。
Figure 0004310639

(式中、Meはメチル基を示す。)
[比較例4]
反応温度を50〜60℃とする以外は実施例1と同じ操作を行った。その結果、反応液中のアセト酢酸3−トリメトキシシリルプロピルの収率は約60%であった。なお、テトラメトキシシランが副生しており、約15質量%検出された。この結果は、反応温度が60℃より低いと好ましくないことを示唆している。

Claims (4)

  1. 下記一般式(1)
    Figure 0004310639

    (式中、R1は炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基である。)
    で表される不飽和基含有β−ケトエステル化合物と下記一般式(2)
    HSiR2 n(OR33-n (2)
    (式中、R2及びR3は互いに同一又は異種の炭素数1〜6のアルキル基であり、nは0〜2の整数である。)
    で表されるヒドロアルコキシシランとを反応させて、下記一般式(3)
    Figure 0004310639

    (式中、R1、R2、R3、nは上記と同様である。)
    で表されるβ−ケトエステル構造含有有機ケイ素化合物を製造する方法において、触媒として白金−ビニルシロキサン錯体を使用することを特徴とするβ−ケトエステル構造含有有機ケイ素化合物の製造方法。
  2. 白金−ビニルシロキサン錯体が、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンを配位子とする白金錯体である請求項1項記載の有機ケイ素化合物の製造方法。
  3. 式(1)及び(3)におけるR1がメチル基であり、式(2)及び(3)におけるR2及びR3がメチル基又はエチル基であり、nが0又は1である請求項1又は2記載の有機ケイ素化合物の製造方法。
  4. 反応温度が、60〜100℃の範囲であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の有機ケイ素化合物の製造方法。
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