JP4309757B2 - セラミックヒーター - Google Patents

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Description

本発明は、ディーゼルエンジンなどの始動促進用に、エンジンの燃焼室などに取り付けられるグロープラグなど、通電により発熱体部分の温度を上昇させうるセラミックヒーターに関する。
図9は、このようなセラミックヒーターの代表例である、グロープラグ100の1例を示したものである(特許文献1)。このものは、通電することによって発熱する発熱部91をセラミックなどの絶縁部材93内に備えてなるセラミックヒーター素子101が、筒状(管状)をなす金属製本体(以下、単に本体ともいう)103の先端寄り部位103aに固定されている。同図のものにおけるその固定は、金属筒105にセラミックヒーター素子(以下、ヒーター素子ともいう)101を内挿して例えば圧入によって固定した後、この金属筒105を本体103にレーザー溶接するなどによって行われている。このものでは、ヒーター素子101の一方(図示左)の電極95が金属製本体103に金属筒105を介して電気的に接続されている。そして、他方(図示右)の電極97が、金属製本体103内において、ヒーター素子101の後端より後方に配置されかつ金属製本体103と絶縁されたリード用軸部材107を介して、外部接続端子をなす端子部材109に電気的に接続(以下、単に接続ともいう)されている。同図においてヒーター素子101の他方の電極97とリード用軸部材107とは中継線(例えばコイル状の配線)99を介して接続されている。
このようなリード用軸部材107は、本体103の後端寄り部位において、外周面にガラス111をリング状に充填して、本体103との絶縁を保持するとともに、ブッシュ113や固定リング115などで固定されている。なお、本明細書において、セラミックヒーター、及びその1例であるグロープラグ、又はその構成部材に関して先端というときは、図における下方の端をいい、逆に後端とは同図における上方の端をいう。
このようなグロープラグ100は、そのリード用軸部材107が通常、剛性のある鉄系金属からなり、太さが直径で数mmと太いことから、曲りにくく、しかも、電気的特性にすぐれている。したがって、本体103と共にこのリード用軸部材107を長くすることで、ヒーター素子101と端子部材109との間の寸法を大きくとることができる。このため、グロープラグ100の長寸化が容易であり、燃料直噴型エンジンへの取り付け用のものに好適である。ところが、このようなリード用軸部材107は細いリード線と異なり重量がある。一方でその固定は、本体103の後端(発熱側の端と反対側の端)寄り部位に充填されたガラス111に依存している。ここで、本体103の後端寄り部位での固定となるのは、次の理由による。このグロープラグ100の組立は、ヒーター素子101とこれに接続されたリード用軸部材107を本体103内に組込んだ後で、リング状のガラス(肉厚円筒状の粉体プレス体)111をリード用軸部材107に外嵌、装填するという作業手順となる。このため、ガラス111のセット位置は後端寄り部位にならざるをえない。これがその主な理由である。
特開2002−359060
ところが、上記した従来のグロープラグ100におけるリード用軸部材(以下、単に軸部材ともいう)107の固定構造では基本的にその固定力が小さいといった問題があった。しかも、その固定は後端寄り部位での、いわば片持ち状態による固定となるため、エンジンの燃焼過程における熱衝撃等によって同軸部材が共振し易く、これによって破断等してショートや断線を招く恐れがあるといった問題があった。すなわち、グロープラグはエンジンの振動や爆風或いは熱衝撃に晒されているため、このようなリード用軸部材107の固定構造では、それが本体103内で弛緩し、或いは折損や破断を起して短絡を招くなどの故障の原因となることがある。そして、こうした問題は、リード用軸部材が長くなるほど発生しやすくなり、したがって、グロープラグの長寸化を妨げる理由ともなっていた。
加えて、リード用軸部材107をこのようにガラスによって固定する場合には、グロープラグの組立ての最終工程で、ガラスを同軸部材107に外嵌めし、本体103の後端部内に嵌め込んだ後で、それを加熱溶融する工程を要する。このような熱処理は工程の複雑化を招き、高コスト化の原因でもある。しかも、グロープラグの各構成部材(部品)、及び部位には、その熱処理に対する耐熱性を考慮した設計をしなければならず、したがって、その分、設計の自由度が奪われていた。
本発明は、こうした従来のグロープラグにおける問題点に鑑みてなされたもので、ガラスの加熱、溶融のための熱処理を要することなく、リード用軸部材を本体内に絶縁を保持して、強固に固定できる構造のグロープラグを提供することをその目的とする。
請求項1に記載の本発明は、通電することによって発熱する発熱部を備えてなるセラミックヒーター素子が、筒状をなす金属製本体の先端寄り部位に固定され、一方の電極が該金属製本体に電気的に接続され、他方の電極が、該金属製本体内において前記セラミックヒーター素子の後端より後方に該金属製本体と絶縁されて配置された金属製のリード用軸部材に電気的に接続されてなるセラミックヒーターにおいて、
前記リード用軸部材の少なくとも一部の外周面に酸化皮膜を形成し、該リード用軸部材を該酸化皮膜を介して前記金属製本体との絶縁を保持しつつ該金属製本体内に固定したことを特徴とするセラミックヒーターである。
請求項2に記載の本発明は、通電することによって発熱する発熱部を備えてなるセラミックヒーター素子が、筒状をなす金属製本体の先端寄り部位に固定され、一方の電極が該金属製本体に電気的に接続され、他方の電極が、該金属製本体内において前記セラミックヒーター素子の後端より後方に該金属製本体と絶縁されて配置された金属製のリード用軸部材に電気的に接続されてなるセラミックヒーターにおいて、
前記リード用軸部材が、大径軸部と小径軸部を有するものであり、この大径軸部の外周面に酸化皮膜を形成し、該リード用軸部材を該酸化皮膜を介して前記金属製本体との絶縁を保持しつつ該金属製本体内に固定したことを特徴とするセラミックヒーターである。
請求項3に記載の本発明は、 前記リード用軸部材が、アルミニウム又はアルミニウム合金からなることを特徴とする請求項1又は2に記載のセラミックヒーターである。
請求項4に記載の本発明は、通電することによって発熱する発熱部を備えてなるセラミックヒーター素子が、筒状をなす金属製本体の先端寄り部位に固定され、一方の電極が該金属製本体に電気的に接続され、他方の電極が、該金属製本体内において前記セラミックヒーター素子の後端より後方に該金属製本体と絶縁されて配置された金属製のリード用軸部材に電気的に接続されてなるセラミックヒーターにおいて、
前記金属製本体の内周面と、前記リード用軸部材の外周面との間に、内面、外面の両方に酸化皮膜が形成された金属製のスペーサーを配置し、該リード用軸部材を、該スペーサーの酸化皮膜を介して前記金属製本体との絶縁を保持しつつ該金属製本体内に固定したことを特徴とする。
請求項5に記載の本発明は、前記スペーサーがアルミニウム又はアルミニウム合金からなることを特徴とする請求項4に記載のセラミックヒーターである。
請求項6に記載の本発明は、前記リード用軸部材は、前記金属製本体が径方向に圧縮変形されることによって固定されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のセラミックヒーターである。
請求項7に記載の本発明は、前記リード用軸部材は、前記金属製本体内に締りばめによって固定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のセラミックヒーターである。
請求項8に記載の本発明は、前記酸化皮膜が、陽極酸化処理されてなるものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のセラミックヒーターである。前記酸化皮膜を例えば高温加熱することによって形成することは理論的には可能であるが、ある程度の厚さを形成するためには陽極酸化処理によって形成することが容易であり、一定の厚さを形成する上でも陽極酸化処理であることが好ましい。
本発明において、前記酸化皮膜は、請求項9に記載のように、その厚みを5μm以上とするのが、絶縁の信頼性を高めるために好ましい。5μm未満であると、前記酸化皮膜自身の抵抗値が小さいこと、また圧縮変形させた際に前記酸化皮膜が破壊されてしまうというおそれがある。なお、酸化皮膜の厚みが厚いほど絶縁の信頼性が高められるが、それを厚くするほど形成に時間及びコストがかかる。この点を考慮すると実用的には100μmが限界と考えられる。したがって、酸化皮膜は、その厚みを5μm〜100μmの範囲にするのがよい。なお、本発明に係るセラミックヒーターは、グロープラグとして具体化されるものが代表例といえるが、これに限定されることなく広くセラミックヒーター素子を備えてなるセラミックヒーターに具体化できる。
本発明に係る請求項1に係るセラミックヒーターでは、リード用軸部材を該酸化皮膜を介して金属製本体との絶縁を保持しつつ金属製本体内に固定した構造とされているため、リード用軸部材における酸化皮膜を形成した部位で、金属製本体を径方向に圧縮変形(カシメ変形)させたり、同金属製本体内に締りばめにすることによってリード用軸部材を固定できる。このため、リード用軸部材の固定に熱処理を要しない上に、強固な固定が得られる。しかも、その固定部位は、ガラスによる固定の場合のように、リード用軸部材の後端寄り部位に制限されることもない。加えて、酸化皮膜は、耐熱性、耐候性等の耐久性に優れるばかりか、経時的な劣化もないことから、絶縁不良を招きにくく、したがって、セラミックヒーターの電気的信頼性を損なうこともない。
請求項2に係るセラミックヒーターでは、次のような特有の効果がある。リード用軸部材には、通常、ストレートの、同径の円断面のものが使用される。しかし、請求項2に記載の発明のもののように、リード用軸部材に、大径軸部と小径軸部を有するものを用い、この大径軸部の外周面に酸化皮膜を形成し、該リード用軸部材を該酸化皮膜を介して前記金属製本体との絶縁を保持しつつ該金属製本体内に固定する場合には、固定される部位以外では、本体の内周面と軸部材の外周面との間の間隙を大きくとれる。したがって、小径軸部の外周面に酸化皮膜を形成しなくとも、短絡もなくその固定を容易にできるという効果がある。
請求項3に係るセラミックヒーターでは、リード用軸部材が、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるものであるため、陽極酸化により、酸化皮膜の形成が容易にできる上に、リード用軸部材としての導電性もよく、しかも、軽量化を図ることもできる。
請求項4に係るセラミックヒーターでは、別部品であるスペーサーに酸化皮膜を形成するものであるため、その酸化皮膜の形成が容易となる上に、信頼性の高い絶縁性を容易に確保できるという効果がある。すなわち、リード用軸部材の外周面に酸化皮膜を形成する場合には、少なくとも、ヒーター素子の電極との接続用の中継線を接続するための端子、或いは外部接続端子の形成のための部位には、酸化皮膜の形成前にマスキングをしておくか、全面に酸化皮膜の形成した後で、端子の形成のための部位の酸化皮膜を除去する必要がある。ところが、別部品であるスペーサーに酸化皮膜を形成する場合には、単にそのスペーサーの全面に酸化皮膜の形成をすればよい。しかも、このように形成する場合には、スペーサーにおける、リード用軸部材の外周面に接する面(内面)と、金属製本体内の内周面に接する面(外面)とに、それぞれ酸化皮膜が形成される。すなわち、スペーサーが筒状体をなすものであれば、その内外面(内、外周面)の各面に、あわせて2層の酸化皮膜が形成されることになるため、信頼性の高い絶縁性が容易に確保できるという効果がある。
請求項5に係るセラミックヒーターでは、前記スペーサーがアルミニウム又はアルミニウム合金からなるものであるため、陽極酸化により、酸化皮膜の形成が容易にできる上に、重量の増大も小さくできる。請求項6に係るセラミックヒーターでは、前記リード用軸部材は、前記金属製本体が径方向に圧縮変形されることによって固定されているため、その固定が、セラミックヒーターの組み立て後においてプレス装置などによって簡易に実施できる。
請求項6に記載したことからも明らかであるが、前記リード用軸部材の固定手段は、本体を縮径状にカシメ或いはプレスすることが例示される。しかし、縮径状にカシメる場合には、多角形のダイ(ダイス)で、両側方から挟み付けることによるのが普通である。しかし、この方法では、リード用軸部材の外周面のうち、ダイスの内角に対応する部位に引っ張り応力が集中し易く、したがって、表面の酸化皮膜に傷がついたり同皮膜が破損する危険性がある。
このような危険がある場合には、請求項7に記載したように、前記リード用軸部材を、前記金属製本体内に締りばめによって固定するとよい。締りばめは、本体の内周面のうち、固定状態においてリード用軸部材の皮膜形成部位に対応する部位を、その皮膜形成部位が締りばめとなるように、同対応部位の外径より微量、その内径を小さくしておき、リード用軸部材を本体内にその軸方向に押込むことによる圧入が容易であり、好ましい手法である。もつとも、締りばめは、このような圧入に限定されるものではなく、本体を加熱して熱膨張させている状態において本体内に軸部材を隙間嵌め状態で配置(セット)し、熱収縮によって締りばめを得る、いわゆる焼きばめ、或いは、逆に冷間ばめとすることでも得られる。このような、締りばめによる固定によれば、前記リード用軸部酸化皮膜に、ダイスに起因する傷がついたり酸化皮膜が破損する危険性を低減できる。
なお、いずれの発明においても、前記酸化皮膜のある部位において該リード用軸部材の外周面をカシメ等によって固定する位置は、固定力が得られるかぎりどこであってもよい。また、固定する箇所は、リード用軸部材の軸方向(長手方向)において1箇所でもよいが、間隔を設けて2箇所(又は3箇所以上)としてもよい。また、軸方向において固定する領域(範囲)は、その位置、数、リード用軸部材の長さ、或いは必要な固定力に応じて適宜に設定すればよい。
本発明の実施の形態について、図1〜図4に基いて詳細に説明する。図中1は、ディーゼルエンジン用のグロープラグであり、全体が筒状(管状)に形成された、例えば炭素鋼からなる本体103と、セラミックヒーター素子101、リード用軸部材107などから構成されている。本体103は、内周面104が軸(線)方向(長手方向)の略全域においてストレート(同径)で、一部が径違いの段付き円筒状をなしている。そして、先端(図示下端)寄り部位は、外周面もストレートの円筒部103aとされ、この円筒部103aより後端(図示上端)寄り部位には、エンジンにねじ込み方式で固定するための雄ネジ103bが形成され、そのさらに後方には後方円筒部103cを介し、詳しくは図示しないが、エンジンへのねじ込みにおいて工具を掛けるための工具係合部103dが径大で、軸G方向から見て六角状に形成されている。なお、本体103の後端寄り部位の内側には気密保持を兼ねた絶縁ブッシュ113を装填するための装填部103eが拡径状に形成されている。ただし、このような本体103は、グロープラグ1の完成状態では、軸方向における雄ネジ103bと後方円筒部103cとの間(軸方向における後端寄り部位)が、軸方向から見て例えば六角形(又は八角形)で、縮径状(くびれ状)にかしめられており、かしめ部103fをなしている。詳しくは後述する。なお、本体103は、S45C、SUM24L、SWCH6又はSUS430などから形成されており、リード用軸部材107は、鋼材製などとしてもよいが、本例ではアルミニウム製又はアルミニウム合金製とされている。
このような本体103の内側(内周面)の先端寄り部位には、円柱状のセラミックヒーター素子101がその先端寄り部位を突出させて配置されている。本形態において、セラミックヒーター素子101は、絶縁性セラミック93内に、先端側においてU字状に折り返し曲げられた形の発熱部91が埋設され、その各端部は、セラミックヒーター素子101の中間部位と後端寄り部位との両側面に各電極95、97として露出状に設けられている。なお、セラミックヒーター素子101の軸線方向における中間部位には金属筒105が圧入により外嵌めされている。
そして、後述するようにして、その金属筒105の後端寄り部位における大径部105aの外周に周方向に凹設された嵌合部105bに、本体103の先端寄り部位の円筒部103aの内周面104が嵌合され、溶接により固定されている。こうして、ヒーター素子101は、本体103内に固定された状態において、その図示左側の電極95が金属筒105を介して本体103と電気的に接続されている。なお、本形態では、ヒーター素子101が、金属筒105を介して本体103に固定されているが、このような金属筒105を介することなく、直接固定されていてもよい。すなわち、本形態における本体と金属筒105とが一体となって本発明の金属製本体をなすものとしてもよい。
一方、リード用軸部材107は、本体103内のセラミックヒーター素子101の後端101bよりも後方に配置されている。この軸部材107は、本形態では例えばアルミニウム(又はアルミニウム合金)製の円断面をなす丸棒からなり、その長手方向における中間部位が、他の軸部に対し、同心(同軸)で、大径の大径軸部127をなし、その上下が小径軸部128とされている。なお、大径軸部127は、上記した本体のかしめ部103fに対応する部位及びその上下に跨る部位(範囲)に配置されている。本形態では、この大径軸部127を除き、軸部材107の周囲と、本体103の内周面104と間には絶縁用の空隙が保持されており、同軸部材107は本体103内に同心状に配置されている。ただし、リード用軸部材107における大径軸部127の外周面(表面)127a、および大径軸部127の両端面127b、127cには、ダブルハッチングで示したように絶縁層をなす酸化皮膜106が形成されている。本形態においてこの酸化皮膜106は例えば、組立前のリード用軸部材107の製造過程で、同酸化皮膜106形成個所以外にはマスキングをして、陽極酸化処理をすることによって形成されている。なお、酸化皮膜の厚さは、上記もしたように5〜100μmの範囲とするのが好ましいが、特に好ましくは、30〜50μmの範囲である。したがって、本実施例ではその厚さを40μmに設定している。
このようなグロープラグ(完成品)1は、リード用軸部材107におけるその酸化皮膜106の部位(大径軸部127)において、本体103が縮径されるように多角形状にかしめられている。こうして、そのカシメ変形された本体103の内周面104で、リード用軸部材107におけるその酸化皮膜106のある部位、すなわち、大径軸部127の外周面127aを固定している。なお、同軸部材107の先端寄り部位107bと、ヒーター素子101の後端101bに露出する(図示右側)の電極97に導通を保持して固定された端子金具98とが、中継線99を介して電気的に接続されている。また、リード用軸部材107の後端部107cは本体103の後端から突出しており、本形態では突出しているその後端部107cが外部接続端子をなすように形成されている。
一方、このような軸部材107の後端寄り部位の外周には、絶縁材からなるリング状の絶縁ブッシュ113が嵌着され、軸部材107と本体103との絶縁が確保されている。ただし、この絶縁ブッシュ113は、本体103の後端寄り部位の内周面の拡径された装填部103eに装填されている。そして軸部材107の突出する後端部107cにキャップ状の端子部材109がその筒部109aを介して外嵌状に取付けられている。そして、この筒部109aにて絶縁ブッシュ113を先端側に押し込む状態としつつ、筒部109aを半径方向にかしめることで端子部材109を軸部材107に、後端部(以下、外部接続端子ともいう)107cを突出させて固定している。このようなグロープラグ1は、ヒーター素子101の先端が、図示しないエンジンの燃焼室内に位置するように、その雄ネジ103bを介してねじ込み方式で固定される。そして、外部接続端子107cから、リード用軸部材107、中継線99、発熱部91、そして本体103へと電流を流すことで、ヒーター素子101の先端を発熱し、燃料の着火を促進するようにされている。
さて、このようなグロープラグ1は、上記したように、リード用軸部材107をその大径軸部127の外周面127aに形成された酸化皮膜106の部分(ダブルハッチング部分)で、本体103を半径方向に圧縮してかしめ変形を付与してリード用軸部材107を固定している。このようなリード用軸部材107の固定には、ガラスによる固定の場合のような熱処理を要しない上に、強固な固定が得られる。しかも、大径軸部127の外周面127aに形成された酸化皮膜106の部分で、本体103を半径方向に圧縮してかしめ変形を付与して固定できるため、少ない変形量で固定できる。さらに、その固定部位は、ガラスによる固定の場合のように、リード用軸部材107の後端寄り部位に制限されることもない。加えて、本体103とリード用軸部材107の絶縁を確保している酸化皮膜106は、耐熱性、耐候性等の耐久性に優れるばかりか、経時的な劣化もないことから、絶縁不良を招きにくく、したがって、グロープラグの電気的信頼性を損なうおそれを低減できる。
なお、本体103の内周面104で、酸化皮膜の形成部位を固定できる限り、軸部材107は同径でストレートのものとしてもよいが、本形態では、大径軸部127と小径軸部128を有するものを用い、その大径軸部127の外周面に酸化皮膜106を形成し、この酸化皮膜106を介してリード用軸部材107を金属製本体103内において絶縁を保持しつつ固定した。このため、この固定部位以外では、本体103の内周面104と軸部材107の外周面との間の間隙を大きくとれるから、小径軸部128の外周面に酸化皮膜を形成しなくとも、短絡もなく少ない圧縮変形で軸部材107の固定を容易に確保できるという効果がある。
なお、酸化皮膜106の形成は、熱処理等によっても形成できるが、本形態では、リード用軸部材107をアルミニウム又はアルミニウム合金製としたため、陽極酸化処理によって簡易に形成できる。また、上記形態では、軸部材107のうち、固定(圧縮圧入)されることになる部位、つまり、大径軸部のみに、酸化皮膜106を形成したが、端子部位を除く全体に酸化皮膜106を形成しておいてもよい。
なお、前記形態のグロープラグ1は、次のようにして組立てられる(図2〜図4参照)。まず、図2に示したように、軸部材107の大径軸部127の外周面127a及びその両端面127b、127cに、同図右に示したように、酸化皮膜106を形成しておく。この場合、酸化皮膜106を形成すべきでない部位にマスキングをして酸化処理すればよい。ただし、軸部材107の外面の全体に酸化皮膜を形成し、その後、外部端子(電極)部位又は中継線接続用の端子部位における酸化皮膜を削り落とすこととしてもよい。
一方、金属筒105にヒーター素子101を圧入して一体化し、一方の電極95と金属筒105との導通を確保する(図3参照)。また、ヒーター素子101の他方の電極97に端子金具98を固定し、その端子金具98と軸部材107とを中継線99を介して接続しておく。このようにして、図3の左側に示したヒーター素子101と軸部材107の組立て体を作る。そして、このような組立体を、図3の右側に示した本体103内に内挿して位置決めし、図4左側(A)に示した状態とし、その後、本体103の先端と、金属筒105の後端とを嵌合し、その嵌合部を溶接する。次いで、図4右側(B)に示したように、図示はしないが、かしめ装置の例えば軸方向から見て六角を二分割してなるダイスによって、軸部材107の大径軸部127に対応する本体103の外周面の部位(かしめ部)103fを半径方向に圧縮してかしめる。その後、絶縁ブッシュ113を本体103の後端にセットし、端子部材109を軸部材107の後端部107cに嵌合し、端子部材109の筒部109aをかしめることで、図1に示したグロープラグ1となる。
本形態では、軸部材107を内挿した後で本体103を径方向に圧縮変形することで、リード用軸部材107における酸化皮膜106の部位を固定した場合を説明したが、この固定は、本体103内にリード用軸部材107をその軸方向に圧入することとしてもよい。このように圧入による場合には、本体103の内径よりも、上記の形態では大径軸部127の外径を若干(圧入代分)大きくしておく。なお、酸化皮膜106が薄いと、かしめによる変形、或いは圧入時に、それが破壊又は破れて絶縁不良を招く危険がある。このため、酸化皮膜106はなるべく厚く形成するのが好ましく、少なくとも5μm以上とするのが好ましい。
なお、上記形態において、軸部材107が長いものであれば、軸方向に間隔をおいて複数箇所(例えば2箇所)に大径軸部127を設けておき、かつその各大径軸部127の外周面に酸化皮膜106を形成しておき、本体103における軸方向のその大径軸部127に対応する外周面の複数箇所を上記のように圧縮変形又はかしめるなどして固定するとよい。このように、固定箇所を増やせば軸部材107をより強固に固定でき、耐振性にも優れた構造となる。
さて次ぎに本発明の別の実施の形態について、図5〜図8に基づいて説明する。ただし、前記形態のものが、酸化皮膜106をリード用軸部材107自体の外周面、すなわち、その大径軸部127の外周面に形成したのに対し、本形態はこれとは基本的に次の点で相違するだけである。すなわち、本形態のグロープラグ21では、軸部材207を同径のストレートのものとしている。一方で、この軸部材207の外周面と本体103の内周面104との間に、表面全体(内外周面及び全端面)に酸化皮膜106を形成した、スリーブ状(管状)のスペーサー131を介在させ、この酸化皮膜106によって、本体103内に軸部材207を絶縁を確保しつつ固定したという点で相違するだけである。このため、その相違点を中心として説明し、同一の部位には、同一の符号を付し、適宜その説明を省略する。
すなわち、本形態では図5に示したように、軸部材207は一定の円断面でストレートの丸棒とされている。この軸部材207の先端寄り部位207bと、ヒーター素子101の後端寄りの電極97とは前記形態と同様に中継線99及び端子金具98を介して接続されている。そして、ヒーター素子101は金属筒105の内側に固定され、その金属筒105の後端と本体103の先端とが前記形態と同様に接合されている。
一方、軸部材207には、その上下の各端寄り部位を除いた軸G方向の所定範囲にわたって、アルミニウム(又はアルミニウム合金)製で、その表面の全体に酸化皮膜(図6中ダブルハッチングで示す)が形成された、円筒状をなすスペーサー131が外嵌状に配置されている。このスペーサー131は、その空孔132をなす内周面の内径がグロープラグの完成品前においては軸部材207の外径より若干大き目とされ、その外側の円筒部133の外径は本体103の内径より若干小さ目とされ、完成品前において、それぞれに対し隙間ばめで嵌合するように形成されている。そして、本形態では、上端部外周にリング状のフランジ134が突出形成され、下端部外周135は段付状に小径とされている。なお、このように下端部外周135を小径としたのは次の理由による。このようなスペーサー131を陽極酸化処理によって酸化皮膜を形成する場合、表面全体に同皮膜を形成することは難しく、陽極酸化処理時の治具(通電治具)のクリップ痕として一部に酸化皮膜106が施されていない箇所(例えば、図6の右図の表面のダブルハッチングのない部位)136ができる。このため、このような下端部外周135の小径部分を治具でクリップしてその処理をすることで、酸化皮膜106が施されない箇所136をその小径部分の外周面に位置させるようにしたものである。すなわち、このようにすれば、酸化皮膜が施されない箇所136が、本体103の内周面104と直接接触(通電)するのを防止できるためである。ただし、本形態では、スペーサー131の内周面132にも酸化皮膜106が施されるために絶縁は確保されているが、このようにすることでスペーサー131の内、外周面での絶縁が確保される。
軸部材207は、このようなスペーサー131の空孔132をなす内周面内を通され、そのスペーサー131が、上端部のフランジ134の下面を、本体103の上部のねじ込み回動用の工具係合部(六角部)103dの上端に当接状とし、本体103の上端寄り部位内に内嵌状に配置されている。そして、その状態の下で、スペーサー131に対応する本体103の外周面を側方から圧縮変形し、同時に、そのスペーサー131を圧縮変形することで、同スペーサー131を介して軸部材207を締付けている。なお、軸部材207の上端部207cには、外部接続端子をなす端子部材109が嵌められ、その下端部外周のフランジ109bの下面をスペーサー131のフランジ134の上面に当接した状態で、その筒部109aを径方向にカシメられて固定されている。こうして、この端子部材109と本体103との絶縁、そして軸部材207と本体103との絶縁が、それぞれスペーサー131の表面の酸化皮膜106を介して保持され、その状態の下で軸部材207は本体103の内側に固定されている。
しかして、このような本形態のグロープラグ21では、軸部材207ではなく、別部品であるスペーサー131の表面に酸化皮膜106を形成したため、例えば、これを陽極酸化する際にはマスキングをする必要がない。また、そのスペーサー131の内外周面を含む全体に酸化皮膜が形成されているため、いわば絶縁層を二重に備えていることから、信頼性の高い絶縁を得ることができる。しかも、本形態では、スペーサー131はその上端部にフランジ134を設け、そのフランジの表面にも酸化皮膜(絶縁層)106を備えているため、上記の形態のような絶縁ブッシュを要しないため、部品点数の増大を招くこともない。
なお、本形態のグロープラグ21の組み立ては次のようである。すなわち、図6に示したように、別途にスペーサー131を、その表面の全体に酸化皮膜106を形成して製造しておく。そして、図7に示したように、前記形態におけるのと同様、軸部材207とセンサ素子(金属筒付)101を含んでなる組立て体を、その軸部材207の後端側から、本体103の内側に挿入するとともに、酸化処理したスペーサー131を本体103の後端側開口からその内部に挿入する。この挿入時に、本体103内に103挿入したスペーサー131の内側(空孔132内)に、軸部材207を挿入する。次に、本体103と金属筒105とを溶接等により接合する。そして、図8に示したように、スペーサー131の外周面に対応する本体103の外周面(103c)を側方から圧縮してかしめ、スペーサー131を介して軸部材207を本体103内に固定する。最後に端子部材109を軸部材207の後端にかぶせてカシメることにより固定することで、図5に示したグロープラグが得られる。
なお、本形態において、軸部材207が長いものであれば、酸化皮膜を形成するスペーサー131を長いものとし、或いは、酸化皮膜を形成した複数のスペーサー131を軸方向に配置し、本体103における軸方向のそのスペーサー131に対応する外周面の複数箇所をかしめるなどして固定してもよい。また、スペーサー131を本体103内に圧入してから、軸部材207をそのスペーサー131内にすきま嵌めで挿入し、或いは、スペーサー131内に軸部材207を圧入したものを本体103内に隙間羽嵌めで挿入し、その後において、本体103を径方向に圧縮変形して軸部材207を固定してもよい。
前記形態ではスペーサーは、筒状(管状)のものとして具体化したが、本発明におけるスペーサーは、このような形態のものに限定されるものではない。自身の表面に酸化処理を施し、これを軸部材と本体との間に介在させることで、絶縁が確保できる形状、構造のものであればよい。さらに、スペーサーを管状のものとする場合でも、全表面に酸化皮膜を施した径の異なるものを、複数、年輪状に重ねた多層管状としたものとしても具体化できる。このようにすれば、絶縁層が重ねた管ごと2層づつ増えるため、絶縁の信頼性をより高めることができる。
なお、本発明は、上記した各実施例のものに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々設計変更できる。酸化皮膜の形成は、陽極酸化により形成するのが好ましいが、これに限定されるものではなく、絶縁の確保できる酸化皮膜であれば、いずれの方法で形成してもよい。なお、陽極酸化した表面には着色しておくと、目視により瞬時に酸化皮膜の有無の識別ができるので部品管理上において便利である。
また、陽極酸化によって、軸部材の外周面やスペーサーの表面に酸化皮膜を形成する場合には、これらの部材をアルミニウム又はアルミニウム合金製とするのが好ましいが、そのほか、陽極酸化に適した、例えば、Mg、Ta、或いはTiとするのもよい。そして、リード用軸部材は鉄系金属とすることも、もちろん可能であり、その場合には熱処理などで酸化皮膜層を形成することとしてもよい。さらに、本発明におけるセラミックヒーター素子は、絶縁部材の中に通電することによって発熱する抵抗発熱体を備えてなるものでもよいし、導電性セラミックによって形成されたセラミックシースであってそれ自体を発熱させる形態のものであってもよい。さらに、上記においては、セラミックヒーターがグロープラグである場合で説明したが、本発明のセラミックヒーターはグロープラグに限定されるものではなく、これ以外のセラミックヒーターに広く適用できる。
本発明を具体化した実施の形態の正面縦断面図及び要部拡大図。 図1のグロープラグに用いたリード用軸部材の図。 図1のグロープラグの製造(組立て)工程を説明する図。 図1のグロープラグの製造(組立て)工程を説明する図。 本発明を具体化した別の実施の形態の正面縦断面図。 図5のグロープラグに用いたスペーサーの説明図。 図5のグロープラグの製造(組立て)工程を説明する図。 図5のグロープラグの製造(組立て)工程を説明する図。 従来のグロープラグの正面縦断面図。
符号の説明
1、21 グロープラグ
95,97 ヒーター素子の電極
101 ヒーター素子
101b ヒーターの後端
103 金属製本体
104 金属製本体の内周面
106 酸化皮膜
107、207 リード用軸部材
127 リード用軸部材の大径軸部
127a リード用軸部材の大径軸部の外周面
128 リード用軸部材の小径軸部
131 スペーサー

Claims (10)

  1. 通電することによって発熱する発熱部を備えてなるセラミックヒーター素子が、筒状をなす金属製本体の先端寄り部位に固定され、一方の電極が該金属製本体に電気的に接続され、他方の電極が、該金属製本体内において前記セラミックヒーター素子の後端より後方に該金属製本体と絶縁されて配置された金属製のリード用軸部材に電気的に接続されてなるセラミックヒーターにおいて、
    前記リード用軸部材の少なくとも一部の外周面に酸化皮膜を形成し、該リード用軸部材を該酸化皮膜を介して前記金属製本体との絶縁を保持しつつ該金属製本体内に固定したことを特徴とするセラミックヒーター。
  2. 通電することによって発熱する発熱部を備えてなるセラミックヒーター素子が、筒状をなす金属製本体の先端寄り部位に固定され、一方の電極が該金属製本体に電気的に接続され、他方の電極が、該金属製本体内において前記セラミックヒーター素子の後端より後方に該金属製本体と絶縁されて配置された金属製のリード用軸部材に電気的に接続されてなるセラミックヒーターにおいて、
    前記リード用軸部材が、大径軸部と小径軸部を有するものであり、この大径軸部の外周面に酸化皮膜を形成し、該リード用軸部材を該酸化皮膜を介して前記金属製本体との絶縁を保持しつつ該金属製本体内に固定したことを特徴とするセラミックヒーター。
  3. 前記リード用軸部材が、アルミニウム又はアルミニウム合金からなることを特徴とする請求項1又は2に記載のセラミックヒーター。
  4. 通電することによって発熱する発熱部を備えてなるセラミックヒーター素子が、筒状をなす金属製本体の先端寄り部位に固定され、一方の電極が該金属製本体に電気的に接続され、他方の電極が、該金属製本体内において前記セラミックヒーター素子の後端より後方に該金属製本体と絶縁されて配置された金属製のリード用軸部材に電気的に接続されてなるセラミックヒーターにおいて、
    前記金属製本体の内周面と、前記リード用軸部材の外周面との間に、内面、外面の両方に酸化皮膜が形成された金属製のスペーサーを配置し、該リード用軸部材を、該スペーサーの酸化皮膜を介して前記金属製本体との絶縁を保持しつつ該金属製本体内に固定したことを特徴とするセラミックヒーター。
  5. 前記スペーサーがアルミニウム又はアルミニウム合金からなることを特徴とする請求項4に記載のセラミックヒーター。
  6. 前記リード用軸部材は、前記金属製本体が径方向に圧縮変形されることによって固定されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のセラミックヒーター。
  7. 前記リード用軸部材は、前記金属製本体内に締りばめによって固定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のセラミックヒーター。
  8. 前記酸化皮膜が、陽極酸化処理されてなるものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のセラミックヒーター。
  9. 前記酸化皮膜の厚みが5μm以上あることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のセラミックヒーター。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載のセラミックヒーターがグロープラグであることを特徴とするセラミックヒーター。
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