JP4308988B2 - 空気入りタイヤの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新品タイヤを製造する方法に関し、さらに詳しくは、タイヤ内部の初期歪みを低減すると共に、各タイヤ構成部品を最適の条件で加硫することを可能にした空気入りタイヤの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、新品タイヤとして市場に流通する空気入りタイヤは、未加硫のタイヤ構成部品を貼り合わせてグリーンタイヤを成形し、それを金型に入れて加硫することにより製造されている。このような金型による加硫時にグリーンタイヤがブラダーの膨張により外径成長し、金型内面に設けたパターンに応じてトレッド面に溝が形成される。
【0003】
しかしながら、上述した空気入りタイヤの製造方法では、未加硫のタイヤ構成部品を円筒状の成形ドラム上に重ねて貼り合わせた後、大きな変形工程を経てグリーンタイヤを成形し、これを更に金型内で最終製品形状に変形させるため、カーカス部品やベルト部品のようにコードとゴムとの複合体からなるタイヤ構成部品では上記成形工程においてコードとゴムとが複雑に変位し、その結果、タイヤ内部に初期歪みを持ちやすいという問題があった。
【0004】
しかも従来の製造方法では、多種類のタイヤ構成部品を未加硫の状態で貼り合わせて一体加硫するため、タイヤの厚い部位と薄い部位では加硫の進行度合いが異なるにも拘らず、タイヤ全体として一定の加硫時間を設定せざるを得ず、各タイヤ構成部品を最適の条件で加硫することが困難であった。なお、加硫の度合いを均一にするためにタイヤ構成部品毎に加硫剤の調整を行ったり、加硫機において局部的な温度調整を可能にするなどの工夫がなされているが、前者の場合は加硫剤の配合設計が複雑になり、後者の場合は加硫設備が複雑になるという不都合があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、タイヤ内部の初期歪みを低減すると共に、各タイヤ構成部品を最適の条件で加硫することを可能にした空気入りタイヤの製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明の空気入りタイヤの製造方法は、タイヤ構成部品のうち少なくともカーカス部品とベルト部品を予め最終製品形状に近い形状で加硫し、これらタイヤ構成部品を最終製品形状に近い形状となるように貼り合わせて成形する空気入りタイヤの製造方法であって、予め加硫されたタイヤ構成部品の貼り合わせ面側の加硫度を非貼り合わせ面側の加硫度よりも低くしたことを特徴とするものである。
【0007】
このようにタイヤ構成部品のうち少なくともカーカス部品とベルト部品、好ましくは全てのタイヤ構成部品を予め最終製品形状に近い形状で加硫することにより、各タイヤ構成部品に見合った加硫条件を個別に設定し、これら部品を最適の条件で加硫することが可能になるので、製品タイヤの耐久性を高めることができる。しかも、従来のように多種類のタイヤ構成部品を未加硫の状態で貼り合わせて一体加硫する場合とは異なって加硫の進行度合いをタイヤ全体で調和させる必要がないので、各タイヤ構成部品についての加硫剤の配合設計が容易になる。
【0008】
また、予め加硫されたタイヤ構成部品を最終製品形状に近い形状となるように貼り合わせて成形することにより、コード・ゴム複合部品の乱れを最小限に止めることが可能になるので、タイヤ内部の初期歪みを低減することができる。しかも、タイヤ構成部品の個別加硫ではゴムの流動による形状変化の予測が容易であるため、タイヤ構成部品及びそれを用いた製品タイヤの寸法精度を向上することができる。
【0009】
即ち、従来の製造方法ではコードとゴムとの複合体からなるカーカス部品やベルト部品を未加硫の状態で貼り合わせた後に大きな変形を与えるので、コードの弾性率や配向方向の差から複雑な変位を起こし、コードの並びが乱れたり、コードの角度が乱れたりして耐久性を損なってしまう。また、従来の製造方法では複合体を金型内で一体加硫する際にゴムの流動が複雑になるため、未加硫時の部品形状の設計が困難であると共に製品開発に多大な時間を要することがある。これに対して、本発明では、上述のような不都合を回避することができる。
【0010】
本発明では、加硫済み部品を重ね合わせてタイヤを組み立てるので、各々の部品を最終製品形状に近い形状にしておくことが必要である。即ち、予め加硫されたタイヤ構成部品を最終製品形状に近い形状となるように貼り合わせて成形する際に、形状が不一致である部品を貼り付けようとすると、その部品を最終製品形状になるように変形させなければならない。その際、加硫済み部品であるが故に弾性率が高く変形に要する力が大きいので、部品間の粘着力が不十分であると、貼り付け成形工程において部品間の剥離を生じてしまう。タイヤ構成部品を最終製品形状に近い形状にしておけば、部品間の粘着力を特別に高くしなくとも剥離を生じることはない。
【0011】
上記タイヤ構成部品を個別に加硫するための加硫金型は、従来のタイヤ加硫金型に比べて小型で簡便なものとなる。特に、従来の製造方法では、トレッド面に当接する複数のセクターとサイド面に当接する上下型の動きを開閉時に互いに直角方向に制御するようにしたセクショナル金型等は高価なものになるが、このような複雑な制御は部品毎の加硫設備では不要になる。
【0012】
加硫済み部品の組み立ては、タイヤ構成部品を最終製品形状に近い形状となるように支持する剛性支持台を備えた成形機の上で行うことが好ましい。剛性支持台は金属製、樹脂製、木製等の所望の最終製品形状を維持しうるものであれば良い。また、剛性支持台はカーカス部品に埋設された剛直なビードコアよりタイヤ内側に挿入し、そのタイヤを内側から固定するためにタイヤ径方向に拡縮可能であることが好ましい。このような剛性支持台の上でタイヤ構成部品の貼り合わせを行うことにより、部品の組み立て精度が向上し、またインフレート時の初期歪みを少なくすることができる。
【0013】
上記加硫済み部品を用いる場合、以下のような利点がある。即ち、加硫された部品を扱うので、部品の搬送中に多少の変形を与えても、貼り合わせ成形時には元の形状に復元できる。従来の製造方法では、未加硫部品の形状を保持するための特別な搬送装置を各所に設け、部品に力を与えないように取り扱っている。しかし、本発明では、加硫済み部品は簡単に元の形状に復元するので、製造工程の付帯設備を簡略化することができ、部品の精度も向上する。
【0014】
また、従来の製造方法では、未加硫部品の組み立てがあるが故に、貼り合わせ成形工程では、部品の変形を抑制するために、部品の圧着や部品間のエア溜まりを排除するためのステッチャーを十分にかけることができなかった。そのため、ステッチャーによる押圧が不足することに起因して圧着不良やエア溜まりによる製品故障が発生していた。これに対して、本発明の製造方法では、加硫済み部品故に部品の変形がないので、これら故障を未然に防ぐようにステッチャーを効果的に用いることができる。なお、ステッチャー作業を効率良く行うためには、成形支持台はステッチャーの押圧力で変形しないような剛性支持台であることが望まれる。
【0015】
更に、従来の製造方法では、部品を円筒状に成形するために、連続した部材を所望の長さに切断し、部品の先端部と後端部とを互いに重ね合わせてスプライス部を形成するが、このスプライス部では部品の厚さが略2倍になり、これが周上の段差となってタイヤの均一性を損ない、タイヤ走行時の振動の原因となる。これに対して、本発明では、タイヤ構成部品を成形する段階では従来同様にスプライス部が形成されるものの、部品の加硫段階でスプライス部を滑らかにするような加硫を行うことが可能である。即ち、特定のスプライス部を狙って強く圧着加硫することができる。なお、全ての部品のスプライス部がグリーンタイヤ中に多数配置される従来の一体貼り合わせ方式では、スプライス部の多くがタイヤ内部に隠されているので、これらスプライス部を滑らかにすることは実質的に不可能である。
【0016】
また、本発明の製造方法は、加硫済み部品を貼り合わせて最終製品とするので、多品種のタイヤを製造する時の自由度が高く、生産性が良好である。例えば、カーカス部品を多品種に共通利用し、サイドウォール部品、トレッド部品、ベルト部品を任意に選択して貼り合わせることで複数の品種を製造することができる。一方、従来の方式では、製造の早い段階から全ての部品を未加硫状態で貼り合わせてしまうので、需要の変化に見合ったフレキシブルな生産体制を作ることが困難である。
【0017】
本発明の製造方法では、タイヤ構成部品のうち少なくともカーカス部品とベルト部品を予め最終製品形状に近い形状で加硫しておくことが必要であるが、全ての部品が加硫済みのものでなくても良い。この場合、タイヤ構成部品の一部を未加硫状態のままとするか、或いは電子線照射や加熱による半加硫状態とし、貼り合わせ後に電子線照射や加熱により加硫を完了すれば良い。少なくともカーカス部品とベルト部品を加硫しておけば、上述した基本的な作用効果を得ることができる。
【0018】
また、カーカス部品とベルト部品に加えて、サイドウォール部品を加硫済みとすることが好ましい。従来の成形方法では、グリーンタイヤの1次成形を最終製品形状より小径の円筒ドラムで行い、その後、製品の径に近い状態へと変形させ、この状態でグリーンタイヤを成形機から取り外して加硫機へと運搬する。成形機からグリーンタイヤを外すと、グリーンタイヤを支持するものが無くなり、各部品が膨らみ変形で生じた力により定まる形状に変形してしまう。この変形が加硫工程における各種の故障の原因となる。本発明のように加硫済みのカーカス部品を用い、その上に未加硫のサイドウォール部品を貼り付ける場合、カーカス部品が予め最終製品形状に加硫されているので、上記変形を最小限に抑制することができる。勿論、サイドウォール部品も予め最終製品形状に近い形状で加硫しておけば、上記変形を一層抑制することができる。
【0019】
他の応用例として、タイヤ内面側に配置されるライナー、カーカス、ベルトを各々加硫済み部品として製作し、支持台の上で組み立て、次いで他のトレッドやサイドウォールを未加硫部品又はセミキュア部品として組み立てても良い。この場合、タイヤ内面側の部品が加硫済みであるため、組み立て後に残り部品の加硫を行う際に、タイヤ内面側からの加熱が不要であり、主としてタイヤ外面側からの加熱で加硫を完了することができる。これにより、タイヤ内面側の加熱システムを除去した簡素な加硫機とすることができる。更には、タイヤ内面側の加熱システムが不要であることから、成形支持台をそのまま加硫機に挿入することができ、成形支持台からグリーンタイヤを一旦取り除くという工程を省略できる。これは、グリーンタイヤの変形防止にも有効である。
【0020】
1つのタイヤ構成部品を予め加硫する際に、その貼り合わせ面側の加硫度を非貼り合わせ面側の加硫度よりも低くする。即ち、非貼り合わせ面側を十分に加硫する一方で、貼り合わせ面側を未加硫状態又は半加硫状態にする。このような加硫を行うと、他の部品との加硫後の接着力が高まり、製品タイヤの耐久性が一層高まり、或いは成形工程における他の部品との粘着性が高まって成形し易いという利点がある。
【0021】
例えば、予め略最終製品形状にて加硫されたライナー部品、カーカス部品を略最終製品形状の支持台にて貼り合わせた後、これに湾曲したリング状のサイドウォール部品を貼り付ける。このサイドウォール部品として、外面側を完全に加硫し、カーカス部品と接する内面側を20%程度の加硫度にしたものを使用する。このようなサイドウォール部品はカーカス側の加硫済み部品との密着性が良く、かつカーカス巻き上げ端等の凹凸に追随し易く、エア溜まりを生じ難い。次いで、加硫済みのベルト部品とトレッド部品を貼り合わせ、最後にオーブンで加熱してサイドウォール部品の未加硫部分を完全に加硫して製品を得る。
【0022】
本発明では、寸法精度の面から剛性支持体を備えた成形機を用いてタイヤ構成部材を貼り合わせることが好ましいが、必ずしも剛性支持体を用いる必要はない。即ち、円筒状の成形ドラムに巻き付けたカーカスの両端部にビードコアを外装した後、その両端部をビードコアの廻りに折り返すという従来から一般的な方法でカーカス部品を成形し、これをカーカス専用金型で最終製品形状に近い形状に加硫する場合、寸法精度の面では拡縮機構を有する剛性支持台を用いることが好ましいが、予め加硫されたカーカス部品(ビードコアとカーカスとの複合体)に内圧を充填し、このカーカス部品を支持体とすれば、剛性支持台のような特別な成形支持台を用いなくとも貼り合わせ作業を行うことが可能になる。カーカス部品はビードコアとカーカスとが一体に加硫されているので、タイヤの圧力容器としての基本要件を満たし、内圧を充填すれば、後の貼り合わせに必要な剛性を持つようになり、成形支持台として十分に用いることができる。
【0023】
このようにカーカス部品に内圧を充填して支持体とする場合、カーカス部品はビードコアとカーカス以外に、ライナーやビードフィラーを予め一体化したものでも良い。更に、カーカス部品にベルトも一体化したものを支持台とすれば一層望ましい。タイヤのインフレート形状(最終製品形状)はビードコアとカーカスとベルトとの力関係で定まるため、これら3者が予め加硫されて組み合わされたものを成形支持台とすれば、より最終製品形状に近づくという利点がある。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0025】
図1(a)〜(e)は本発明の空気入りタイヤの製造方法に用いるタイヤ構成部品を例示するものであり、図2(a)〜(d)は本発明の空気入りタイヤの製造方法を例示するものである。
【0026】
本発明では、タイヤ構成部品のうち少なくともカーカス部品1とベルト部品2、好ましくはビードフィラー部品3、サイドウォール部品4、トレッド部品5を含む全てのタイヤ構成部品を予め最終製品形状に近い形状で加硫しておく。タイヤ構成部品は上記部品に限定されるものではなく、必要に応じて他の部品を用いても良い。
【0027】
図1に示すように、カーカス部品1は左右一対のビードコア11,11間に複数本のカーカスコードをゴム被覆してなるカーカス12を装架し、その両端部をそれぞれ環状のビードコア11の廻りにタイヤ内側から外側へ巻き上げた構造になっている。カーカスコードとしてはスチールコードや有機繊維コードを使用することができる。カーカス12の内側にはライナー13が積層されている。また、ビードコア11の外周側にはビードフィラー14が挿入されている。
【0028】
このカーカス部品1を得るには、未加硫の各部材を所望の手順で貼り合わせて円筒状の1次成形物を作成する。一方、カーカスケーシング専用の金型としては、最終製品形状と略同一の形状に製作されたものを用意する。そして、1次成形物をカーカスケーシング専用の金型に膨径させた状態で挿入し、これを所望の条件で加硫することで最終製品形状と略同一の形状を有するカーカス部品1を得る。なお、ライナー13はこの段階でカーカス部品1に一体化しても良いが、後工程で貼り合わせても良い。
【0029】
ベルト部品2は複数本のベルトコードをゴム被覆してなる2層の環状のベルト21,21から構成されている。これら2層のベルト21,21はコードがタイヤ周方向に対して交差し、かつ層間でコードが互いに交差するように配置されている。ベルトコードとしてはスチールコードや芳香族ポリアミド等の高弾性の有機繊維コードを使用することができる。このベルト部品2は未加硫状態で成形した後に所望の条件で加硫することで最終製品形状と略同一の形状にする。
【0030】
また、ビードフィラー部品3、サイドウォール部品4及びトレッド部品5についても未加硫状態で環状に成形した後に所望の条件で加硫することで最終製品形状と略同一の形状にする。但し、これらビードフィラー部品3、サイドウォール部品4及びトレッド部品5は未加硫状態又は半加硫状態で貼り付け工程に供しても良い。未加硫状態とする場合は、未加硫ゴムをストリップ状に押し出しながら部材を成形しても良い。トレッド部品5は最終製品形状よりやや小径になるように貼り合わせ、トレッド専用の溝付き金型の内側で外径を少し拡大することでトレッド面に溝を転写しながら加硫を行えば良い。このトレッド部品5はベルト部品2と一体化させても良い。また、ビードフィラー部品3はカーカス部品1と一体化させても良い。
【0031】
上記各部品を専用金型で加硫する際は、後の貼り合わせ接着処理を容易にするために、離型剤を塗布しなくとも済むように離型処理を施した金型を用いると良い。また、専用金型で個々の部品を加硫するため、部品の厚さやゴム材料の加硫特性に合わせて、各部品につき最適な条件(温度、時間、圧力)を設定すれば良い。
【0032】
上述のようにしてタイヤ構成部品を用意した後、図2(a)〜(d)の手順にしたがって空気入りタイヤを製造する。即ち、図2(a)に示すように、タイヤ構成部品を最終製品形状に近い形状に保持可能な剛性支持台6に対して、予め最終製品形状に加硫されたカーカス部品1を装着する。また、カーカス部品1のビード部には最終製品形状に加硫された環状のビードフィラー部品3を貼り合わせる。
【0033】
上記剛性支持台6はタイヤ径方向に拡縮自在に構成され、収縮状態ではビードコア11を避けてカーカス部品1の内側に挿入することが可能であり、拡張状態ではカーカス部品1を内側から支持することが可能である。但し、剛性支持台6の構造は特に限定されるものではなく、金属部材を用いた折り畳み機構や収縮自在のゴムブラダー等を用いることができる。また、剛性支持台6の替わりに、カーカス部品1に内圧を充填し、このカーカス部品1を支持体としても良い。
【0034】
次に、図2(b)〜(d)に示すように、カーカス部品1のサイドウォール部に最終製品形状に加硫された環状のサイドウォール部品4を貼り合わせ、更にトレッド部に最終製品形状に加硫された環状のベルト部品2及びトレッド部品5をそれぞれ外装して貼り合わせる。
【0035】
各タイヤ構成部品を貼り合わせるための接着剤としては、ゴム系のほか、ウレタン系、アクリル系、エポキシ系等が挙げられる。接着剤として使用する成分は隣接するゴムとの臨界表面張力rc が式|rc |≦3mN/mであることが好ましい。また、トリアジンチールのように異種ゴム間に化学結合をもたらす化合物を用いても良い。或いは、このような化合物を未加硫ゴムに配合したゴム系接着剤としても良い。
【0036】
これら接着剤は予めタイヤ構成部材の貼り合わせ面に塗布しておくことが好ましい。また、貼り合わせ成形工程において、接着剤を含浸させたテープ状の基体をタイヤ構成部材に巻き付けても良い。接着性を更に高めるために、タイヤ構成部材の貼り合わせ面を粗面加工しても良い。接着剤の後処理としては、加熱のほか、加湿、電子線照射等の方法が挙げられる。
【0037】
例えば、加硫済みのベルト部品2やトレッド部品5をカーカス部品1に貼り合わせる場合は、これら部品の貼り合わせ面をバフし、塩化イソシアール酸の3%溶液で表面処理を施すようにする。そして、塩化ゴムとフェノール系樹脂を主成分とする熱硬化性の接着剤(商品名:ケムロック234B)をロールコータで貼り合わせ面に塗布し、これら貼り合わせ面を互いに貼り合わせる。後処理としては、この段階で近赤外線炉を用いて約130℃で約30分間加熱することで接着剤を反応させて接着を完了する。但し、貼り合わせ成形後に加硫を要する場合は、その加硫工程を利用して加熱しても良い。
【0038】
上述した空気入りタイヤの製造方法によれば、カーカス部品1やベルト部品2のようなコード・ゴム複合部品の乱れを最小限に止めてタイヤ内部の初期歪みを低減することができ、しかも各タイヤ構成部品を精度良く最適の条件で加硫することができる。そのため、製品タイヤの耐久性、寸法精度、ユニフォミティー等を向上することができる。また、部品の共通化により少量多品種のタイヤ生産を行う場合であっても、フレキシブルな生産体制を確立することが可能になる。
【0039】
上記実施形態では、主として全てのタイヤ構成部品を貼り合わせ成形工程に先駆けて加硫した場合について説明したが、必ずしも全てのタイヤ構成部品を予め加硫する必要はない。例えば、サイドウォール部品4を未加硫とした場合、貼り合わせ成形工程後に、タイヤ外側からサイドウォール部に当接するサイドウォール専用の金型を用いてサイドウォール部品4を加硫すれば良い。このとき、サイドウォール専用の金型に刻印を設けておけば、所望のブランディングを施すことが可能になる。
【0040】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、タイヤ構成部品のうち少なくともカーカス部品とベルト部品を予め最終製品形状に近い形状で加硫し、これらタイヤ構成部品を最終製品形状に近い形状となるように貼り合わせて成形すると共に、予め加硫されたタイヤ構成部品の貼り合わせ面側の加硫度を非貼り合わせ面側の加硫度よりも低くしたことにより、タイヤ内部の初期歪みを低減し、しかも加硫剤の配合設計を複雑にすることなく各タイヤ構成部品を最適の条件で加硫することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態からなる空気入りタイヤの製造方法に用いるタイヤ構成部品を示し、(a)はカーカス部品の断面図、(b)はベルト部品の断面図、(c)はビードフィラー部品の断面図、(d)はサイドウォール部品の断面図、(e)はトレッド部品の断面図である。
【図2】本発明の実施形態からなる空気入りタイヤの製造方法を示し、(a)はカーカス部品とビードフィラー部品を貼り合わせる工程の断面図、(b)はサイドウォール部品を貼り合わせる工程の断面図、(c)はベルト部品を貼り合わせる工程の断面図、(d)はトレッド部品を貼り合わせる工程の断面図である。
【符号の説明】
1 カーカス部品
2 ベルト部品
3 ビードフィラー部品
4 サイドウォール部品
5 トレッド部品
6 剛性支持台
11 ビードコア
12 カーカス
13 ライナー
14 ビードフィラー
21 ベルト
Claims (4)
- タイヤ構成部品のうち少なくともカーカス部品とベルト部品を予め最終製品形状に近い形状で加硫し、これらタイヤ構成部品を最終製品形状に近い形状となるように貼り合わせて成形する空気入りタイヤの製造方法であって、予め加硫されたタイヤ構成部品の貼り合わせ面側の加硫度を非貼り合わせ面側の加硫度よりも低くした空気入りタイヤの製造方法。
- 全てのタイヤ構成部品を予め最終製品形状に近い形状で加硫する請求項1に記載の空気入りタイヤの製造方法。
- 前記タイヤ構成部品を剛性支持台を備えた成形機の上で最終製品形状に近い形状となるように貼り合わせて成形する請求項1又は請求項2に記載の空気入りタイヤの製造方法。
- 予め加硫されたカーカス部品に内圧を充填し、該カーカス部品を支持体として前記タイヤ構成部品を最終製品形状に近い形状となるように貼り合わせて成形する請求項1又は請求項2に記載の空気入りタイヤの製造方法。
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