JP4307861B2 - 超電導体の捕捉磁場のコントロール方法及び酸化物超電導体 - Google Patents

超電導体の捕捉磁場のコントロール方法及び酸化物超電導体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、超電導体の捕捉磁場をコントロールする方法と酸化物超電導体に係り、例えば捕捉磁場割れを有している超電導体を有効に利用しようとする技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
大型のバルク状の酸化物超電導体を製造する方法の一例として、以下の特許文献1と特許文献2に開示されている溶融法が知られている。これらの特許文献に記載されている溶融法とは、REBaCu7−X(REは希土類元素を示す)なる組成の酸化物超電導体を製造するに際し、REBaCuO相またはREBaCu10相と、Ba-Cu-Oを主成分とした液相とが共存する温度領域まで加熱した後、REBaCu7−X相が生成する包晶温度直上の温度まで冷却し、その温度から徐冷することにより結晶成長させ、核生成と結晶方位の制御を行い、酸化物超電導体を得る製造方法である。
【0003】
また、1つの種結晶を使用し、結晶成長開始温度が異なる材料を順次組み合わせて核生成、結晶方位および結晶成長方向を制御して酸化物超電導体を製造する半溶融凝固法が知られている。(特許文献3参照)
この半溶融凝固法では、酸化物超電導体を構成する元素の化合物粉末を混合してなる原料粉末を圧密して前駆体を得た後、この前駆体を利用してREBaCu7−X(REは希土類元素を示す)なる組成の酸化物超電導体を製造するに際し、REBaCuO相またはREBaCu10相と、Ba-Cu-Oを主成分とした液相とが共存する温度領域まで前駆体を加熱して半溶融状態とした後、半溶融状態の前駆体上に設置されている種結晶を利用し、REBaCu7−X相が生成する包晶温度直上の温度まで冷却し、その温度から徐冷することにより半溶融状態の前駆体の内部で徐々に結晶成長を行い、前駆体全体を酸化物超電導体とする製造方法である。また、半溶融凝固法による酸化物超電導体の結晶に必要に応じて更に酸素を付加して結晶構造を整えるために、酸素雰囲気中にて熱処理を施すことも知られている。
【0004】
【特許文献1】
特許第1869884号(特許文献1)
【特許文献2】
特許第2555640号(特許文献2)
【特許文献3】
特開平5−170598号公報(特許文献3)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、先に記載の製造方法により製造されたバルク状の酸化物超電導体にあっては、一般にバルク状の酸化物超電導体の中に生成される単結晶領域においてファセットと称される十字状の境界線を有するものが一般的である。
例えば図23に示すように円盤状の酸化物超電導体100を半溶融凝固法で製造した場合、その中央部には、十字状の切れ目のようなファセットと称される境界線101が形成された単結晶領域102と、その周囲に生成される多結晶領域103が形成される。この単結晶領域102は半溶融凝固法を実施して酸化物超電導バルク体を製造した場合に通常生成されるものであり、結晶成長させる際に円盤状の前駆体の上面中央部に種結晶を設置してこの種結晶を中心として結晶成長させるので、中心部から放射状にファセット101が生成するのが一般的である。また、この種の方法により得られた円盤状の酸化物超電導体100にあっては、その厚さ方向に酸化物超電導体の結晶のc軸が配向し、その面方向にa軸とb軸が配向するが、一般にファセット101はa軸とb軸に対して45度の方向に生成するとされている。
【0006】
先のファセット101は、この種の半溶融凝固法を実施して酸化物超電導体を製造した場合に必然的に生成されるもので、この部分は一種の結晶欠陥に相当するが、ファセット101において結晶の整合性の良好なものは酸化物超電導体として良品であり、結晶の整合性の悪いものを不良品として区別している。
そして、このような結晶の整合性の良否の判定は、通常、冷却して超電導状態としたバルク状の酸化物超電導体に特定の強さの磁場を印加してからその磁場を取り去った場合に酸化物超電導体が捕捉する磁場の分布を測定し、この捕捉磁場分布においてファセットに起因する大きな捕捉磁場割れを生じたものを不良品と称して廃棄処分とするようにしている。
【0007】
ところが、酸化物超電導体は希土類元素を含む高価な材料を用いて製造されるものであり、原料段階から前駆体を製造するまでの間においても原料の混合工程や圧密工程、仮焼き工程、粉砕工程などを必要とし、更に前駆体に半溶融凝固法を適用するための様々な処理工程と処理時間など、種々の工程と処理時間を経て製造されるので、不良品を製造する割合が高くなると良品の酸化物超電導体の著しいコストアップにつながる問題がある。
【0008】
本発明者が先の複数の前駆体を用いて半溶融法を実施して酸化物超電導バルク体を製造した実験の結果、原料の配合組成比の影響もあるが、概ね単結晶の育成そのものに成功する割合が低く、育成できた試料の中でも何割かは育成が不充分となり易く、更に単結晶の育成が成功したものにおいて、更に何割かがファセットに起因する捕捉磁場割れを生じるので、製造に用いた前駆体のうちの相当数のものが無駄になってしまい、歩留まりが悪いという問題があった。
【0009】
次に、先の酸化物超電導バルク体に限らず、超電導体の捕捉磁場特性を均一化したい場合があるが、現状では捕捉磁場が不均一な超電導体を捕捉磁場が均一な新規の超電導体と交換して捕捉磁場を調整すること、あるいは、超電導体の横に他の超電導体を並べて配置することで捕捉磁場特性を調整することがなされている程度であり、これらの他の手段により超電導体の捕捉磁場特性を均一化したいという要望があった。
また、前述のごとく大きな捕捉磁場割れを示さないものであっても捕捉磁場の分布が不均一になるもの、大きな捕捉磁場割れを有していなくとも磁場を捕捉できる範囲が狭く、捕捉磁場分布状態のボリュームが少ないもの等、捕捉磁場分布状態を改善したい場合がある。
【0010】
本発明は上述の課題に鑑みてなされたもので、超電導体の捕捉磁場のコントロールができる方法の提供と捕捉磁場のコントロールをなした超電導体の提供を目的とする。
本発明は上述の課題に鑑みてなされたもので、超電導体を製造した場合に捕捉磁場割れを生じているものについても有効に利用することができ、超電導体の製造コストの低減を図ることができる捕捉磁場のコントロール方法と、そのコントロールをなした超電導体の提供を目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は前述の目的を達成するために、超電導バルク体に対して他の超電導バルク体を1つまたは2つ以上、それらを厚さ方向に重ね、先の超電導バルク体の捕捉磁場分布に他の超電導バルク体で磁気的に影響を与えて先の超電導バルク体が単独で有していた捕捉磁場分布をこれらの合成としての捕捉磁場分布に調整する超電導体の捕捉磁場のコントロール方法であり、前記超電導バルク体として、半溶融状態の前駆体の上面中央部に設置した種結晶を元に結晶成長させて種結晶の設置位置から周縁に向かうファセットラインを生成した酸化物超電導バルク体を用い、積層する超電導バルク体の少なくとも1つとして、補足磁場分布のピーク部分付近に補足磁場割れを有している超電導バルク体を用い、他の超電導バルク体として、補足磁場割れを有していない超電導バルク体を用い、これらの積み重ねにより前記補足磁場割れを抑制した補足磁場特性とすることを特徴とする
半溶融状態の前駆体から種結晶による結晶成長を行った超電導バルク体に対して他の超電導バルク体をそれらの厚さ方向に重ねることで元の超電導バルク体が捕捉するべき磁場に加えて他の超電導バルク体の捕捉した磁場も影響を与え、双方の磁場の合成として全体として好ましい捕捉磁場状態を得ることが可能となる。従って、捕捉磁場割れを生じている超電導バルク体に他の超電導バルク体を積み重ねることで捕捉磁場割れを有している部分の影響を軽減してより均一な捕捉磁場特性を得ることが可能となる。
本発明は前述の目的を達成するために、積み重ねる超電導バルク体の形状と重ねる方向を調整することにより、それらの合成としての捕捉磁場分布を制御して補足磁場割れを抑制することを特徴とする。
他の超電導バルク体が元の超電導バルク体の捕捉磁場に与える影響は元の超電導バルク体の超電導バルク体に対する重ねる方向が異なれば変化するので、それらの重ね方向の調整により超電導体の捕捉磁場の調整が可能となる。
【0012】
本発明は前述の目的を達成するために、前記積み重ねる超電導バルク体として、いずれの酸化物超電導バルク体も希土類酸化物系であり、しかも、同一希土類元素の超電導バルク体であることを特徴とする。
【0013】
本発明は前述の目的を達成するために、前記超電導バルク体として、REBaCu7−X(REは希土類元素の1種又は2種以上を示す)なる組成式で示される希土類酸化物系のものを用いることができる。
REBaCu7−X系の酸化物超電導バルク体であるならば、臨界電流密度が高く、臨界温度も高い優れたものが得られ易い。
本発明の酸化物超電導体は、超電導バルク体に対して他の超電導バルク体を1つまたは2つ以上、それらを厚さ方向に重ね、先の超電導バルク体の捕捉磁場分布に他の超電導バルク体で磁気的に影響を与えて先の超電導バルク体が単独で有していた捕捉磁場分布をこれらの合成としての捕捉磁場分布に調整してなる積層構造の酸化物超電導体であり、前記超電導バルク体として、半溶融状態の前駆体の上面中央部に設置した種結晶を元に結晶成長させて種結晶の設置位置から周縁に向かうファセットラインを生成した酸化物超電導バルク体が適用され、前記積層する超電導バルク体の少なくとも1つとして、補足磁場分布のピーク部分付近に補足磁場割れを有している超電導バルク体が用いられ、他の超電導バルク体として、補足磁場割れを有していない超電導バルク体が用いられ、これらの積み重ねにより前記補足磁場割れが抑制された補足磁場特性を有することを特徴とする。
本発明の酸化物超電導体にあっては、前記積み重ねる超電導バルク体として、いずれの酸化物超電導バルク体も希土類酸化物系であり、しかも、同一希土類元素の超電導バルク体であることを特徴とする。
本発明の酸化物超電導体にあっては、前記超電導バルク体が、RE Ba Cu 7−X (REは希土類元素の1種又は2種以上を示す)なる組成式で示される希土類酸化物系のものであることを特徴とする。
本発明の酸化物超電導体にあっては、前記超電導バルク体の積み重ねに伴い、前記少なくとも1つの超電導バルク体が有していた補足磁場割れが積み重ね後の補足磁場特性において解消されてなることを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1は本発明に係る第1の実施形態の円盤状の酸化物超電導バルク体1、2を厚さ方向に2枚積み重ねてなる酸化物超電導体Aの斜視図、図2は本発明に係る酸化物超電導バルク体を製造するために用いられる円盤状の前駆体3の斜視図である。
本実施の形態においては、捕捉磁場割れを有する酸化物超電導バルク体1、2をそれらの厚さ方向に重ねることで個々のバルク体の捕捉磁場割れの影響を抑制した総合的な捕捉磁場分布特性を得ようとしたものである。
本実施の形態で用いる前駆体3とは、目的とする酸化物超電導バルク体の組成と同じ組成、あるいは、近似する組成の原料混合体の圧密体であり、本発明を適用できる酸化物超電導バルク体として例えば、RE-Ba-Cu-O系(REはYを含む希土類元素La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luのうちの1種または2種以上を示す。)で表示される希土類酸化物系のものを例示することができる。
【0015】
次に、以上の如く得られた前駆体3の上に種結晶を設置し、これらを加熱炉に装入し、半溶融凝固法に基づいて熱処理して酸化物超電導バルク体を得る。
ここで行う半溶融凝固法とは、予め酸化物超電導体の前駆体に種結晶を載せておき、この前駆体を融点以上の温度で液相と固相が共存する温度に加熱溶融させて半溶融状態とした後、冷却工程を行ない、種結晶を利用し、種結晶を起点として前駆体内に目的の酸化物超電導体の単結晶を成長させることにより、結晶構造の良好な超電導特性の優れた酸化物超電導体を得ようとする製造方法として知られている方法である。また、結晶成長を行う場合に本実施例では後述するように規定の結晶化開始温度において等温保持させて行うものとするが、徐冷しながら結晶化する方法でも差し支えない。
【0016】
この実施形態で用いる種結晶3とは、目的とする希土類酸化物超電導バルク体とは異なる希土類を用いた種類の酸化物超電導バルク体の単結晶体か薄膜を用いる。
例えば、目的の酸化物超電導バルク体がSm系のものである場合、Sm系よりも包晶温度の高いNd系の酸化物超電導バルク体の単結晶体あるいは薄膜を用いることができる。即ち、種結晶3は前駆体の半溶融温度において結晶状態を維持している必要があるので、用いる前駆体よりも包晶温度の高いものを用いる。
酸化物超電導薄膜として、MgOなどの耐熱性基板の上に成膜法により形成したNd系の酸化物超電導体の単結晶状のフィルムを有するものを適用できる。勿論、この他に、希土類として、Gd系、Dy系、Ho系、Y系など、半溶融凝固法に適用できる種々の系の単結晶体あるいは超電導薄膜を種結晶として適用することができる。
【0017】
即ち、まず、前駆体1、2の融点よりも若干高い最高到達温度(Tmax)に全体を加熱して前駆体1、2を半溶融状態とする。また、加熱雰囲気としては、大気中でも良いし、不活性ガス中に微量の酸素を供給した酸素雰囲気でも良い。例えば一例として、1%O濃度のArガス雰囲気を選択できる。
この際の加熱温度は、目的とする酸化物超電導バルク体の組成によって、あるいは、熱処理する場合の雰囲気ガスの成分により若干異なるが、概ね1%O不活性ガス雰囲気中においてNd系の酸化物超電導バルク体であるならば1000〜1200℃の範囲、他の系の酸化物超電導バルク体でも概ね950〜1200℃の範囲である。
【0018】
前駆体3を最高到達温度の半溶融状態としたならば、前駆体3の温度を先の温度から数10℃、例えば20〜40℃程度下げた後、その温度で所定の時間保持する予備加熱を行った後、先の温度から数10℃、例えば20〜40℃程度下げた結晶化開始温度に温度を下げて、その結晶化開始温度で数時間等温保持して結晶成長させてから炉冷する。これにより、図1に示すような酸化物超電導バルク体1を得ることができる。
より具体的には、Sm系の酸化物超電導バルク体を製造する場合、室温から900℃まで1時間程度かけて昇温し、そこから半溶融温度の1080℃まで1時間かけて徐々に昇温し、半溶融温度で40分程度保持し、5分程度かけて1050℃まで降温し、次いで5分程度かけて目的の結晶化温度1020℃で約5時間程度等温保持して結晶化し、その後に1時間程度かけて900℃まで降温し、その後に1時間程度かけて室温まで炉冷するという熱処理条件を例示できる。
その他の系の酸化物超電導バルク体の結晶生成温度としては、Y系が1000℃、Nd系が1060℃、Eu系が1050℃、Gd系が1030℃、Dy系が1010℃、Ho系が990℃、Er系が970℃、Yb系が900℃として知られているので、これらの系に要求される結晶化開始温度条件とする。
【0019】
半溶融状態の前駆体3に対して種結晶を設置し、結晶化温度で保持しておくことで、前駆体3の内部ではREBaCuO相(R211相)とL相(液相:3BaCuO+2CuO)とに分解し、種結晶を起点として、液相がR211相を下側に(種結晶から離れる側に)押し出すように移動しながら種結晶を起点としてREBaCu7−X(R123相)なる組成比の酸化物超電導体の結晶を成長させることができ、その結果として最終的に前駆体3の全体を結晶化させてREBaCu7−X相(R123相)の酸化物超電導バルク体とする。
【0020】
以上説明の如く製造された酸化物超電導バルク体1は、前駆体3の上面中央部に設置した種結晶を基にして放射状に単結晶領域が成長し、矩形状の単結晶領域の角部が円盤の周縁部まで到達して図1に示すような十字状のファセットライン5を有する単結晶領域6が生成し、その領域の外側には平面視弓形の多結晶領域7が生成する。なお、図1に示す単結晶領域6は一例であって、単結晶領域6が図2に示す円盤状の前駆体3の全域に完全に広がって生成し多結晶領域7を有していない場合、単結晶領域6が円盤状の前駆体3の周縁部の手前で停止して図1に示す単結晶領域6よりもより小さな矩形状の単結晶領域となる場合等、いずれの場合もあり得る。
そして、先の如く形成された酸化物超電導バルク体1に対して同様な製造方法で得られた同等の構造と寸法の円盤状の他の酸化物超電導バルク体2をその厚さ方向に積み上げて酸化物超電導体Aが形成されている。これらの酸化物超電導バルク体1、2を積み上げた場合、そのまま積み上げて置いても良いし、両者を接着剤等で固定しても良いし、一体化のためにテープ止めしても良く、樹脂カバー等により被包して一体化するなどの結合手段で一体化しても良い。
【0021】
これらの酸化物超電導バルク体1、2は捕捉磁場割れを起こしているものである。捕捉磁場割れとは、後に実施例において説明する図3の捕捉磁場分布に示すように、酸化物超電導バルク体を液体窒素で冷却し所定の磁場を印加した後に、該磁場を取り去った場合、酸化物超電導体バルク体が自身で磁場を捕捉している場合の磁場分布において1つの山を示すシングルピークではなく、部分的に複数の山に割れた状態を示す。
酸化物超電導バルク体の捕捉磁場分布はピーク部分付近の領域に割れを有しないシングルピークのものが望ましいが、酸化物超電導バルク体1の単独での捕捉磁場分布の一例を図3に示し、酸化物超電導バルク体2の単独での捕捉磁場分布の一例を図4に示す。
【0022】
図3に示す例では捕捉磁場分布を示す曲線の山の頂が2つ存在する。これらの山の頂が2つ存在するのは、図1に示す円盤状の酸化物超電導バルク体1のファセットライン5の存在によっており、2つ存在する山の頂を分ける谷の部分がファセットライン5の境界線に位置する。ファセットライン5は目視して確認できる線であるが、理想的に結晶成長した場合にはファセットライン5が仮に目視できても捕捉磁場割れを起こさない。しかし、不純物の存在、原料の不均一性、溶融凝固法を実施している際の温度の不均一性等に起因してファセットライン5の部分に結晶成長の不整合部分を生じる確率が高い。
また、図4は酸化物超電導バルク体2の捕捉磁場分布の一例を示すが、先の図3に示す酸化物超電導バルク体のものと似たようなピークを有する山ではあるが、山の幅(ボリューム)が若干大きい試料であり、図3に示す例と同様に捕捉磁場分布にファセットラインに起因する割れを有している。これらの酸化物超電導バルク体1、2は図3と図4に示す捕捉磁場分布割れの状況からみれば、従来では厳密に見れば不良品に属すると判断されるものである。
【0023】
そこで本実施形態では、図1に示すようにこれらの酸化物超電導バルク体1、2をそれらの厚さ方向に積み上げて酸化物超電導体Aとして使用する。この積み上げた酸化物超電導体Aの捕捉磁場分布の一例を図5に示す。この例では、上段側に酸化物超電導体1を下段側に酸化物超電導体2を設置している。また、上下の酸化物超電導バルク体試料のファセットの方向は同じ方向に揃えている。(図5に角度00で示す。)
図5に示す捕捉磁場分布は、酸化物超電導バルク体1、2が有するファセット割れに起因して生じていた谷の部分が補い合って補正され、捕捉磁場分布としてはほぼシングルピークの均一化された形の分布にされている。これは、酸化物超電導バルク体1、2をその厚さ方向に、即ち、c軸方向に積み上げた場合、下に位置する酸化物超電導バルク体2が発生させる捕捉磁場が上の酸化物超電導バルク体1を突き抜けることにより生成され、両者の捕捉磁場の合成により捕捉磁場割れの小さい、ほとんど捕捉磁場割れを有しない均一性の高い捕捉磁場特性に調整されたものとなる。
【0024】
以上の如く従来では個々に不良品に近いとされていた酸化物超電導バルク体1、2をその厚さ方向に積み上げることによって捕捉磁場割れの抑制された良品として使用可能なシングルピークの酸化物超電導体を得ることができる。このようにするならば、従来不良品に近い状態と認識されていた酸化物超電導バルク体1、2を単に厚さ方向に積み上げることで捕捉磁場割れの生じていないシングルピークの酸化物超電導体を得ることができ、酸化物超電導体の製造の歩留まりを著しく向上させることができる。
【0025】
また、本発明で捕捉磁場割れを有している酸化物超電導バルク体1、2どうしを再利用できることに加え、例えば予め設置されて使用されていた捕捉磁場分布割れの無い良品としての酸化物超電導バルク体を長期間使用中に、何らかの原因によりその酸化物超電導バルク体に異常を生じ、捕捉磁場割れを生じるようになってしまった場合、設置されている酸化物超電導バルク体に対して他の酸化物超電導バルク体を単に積み重ねることで、積み重ねた全体としての捕捉磁場割れの無い酸化物超電導体とすることができる。この場合に用いる追加用の酸化物超電導バルク体はそれ自身が捕捉磁場割れを有していない良品としての酸化物超電導バルク体でも良いし、多少の捕捉磁場割れを生じている酸化物超電導バルク体でも良い。
また、この場合に既に設置されている酸化物超電導バルク体を取り外す必要は無く、その上に単に重ねれば良いので、酸化物超電導体を備えた機器の分解や修正作業も必要最低限の作業で済み、補修作業も簡略化できる。勿論、既に設置している酸化物超電導バルク体を設置位置から取り外してその下、または上に他の酸化物超電導バルク体を置き、その後に両者を再設置しても良い。
【0026】
以上のように酸化物超電導バルク体を利用するならば、既に設置されている酸化物超電導バルク体の補修も容易になすことができ、その補修の際に用いる酸化物超電導バルク体として捕捉磁場割れを有しないもののほかに、多少の捕捉磁場割れを有しているものでも利用することができるようになり、酸化物超電導体の補修やメンテナンス上、極めて有効になる効果がある。
【0027】
次に、前述の酸化物超電導バルク体1、2を積み重ねる場合、ファセットライン5の向きを上下で同じ向きとして重ねても良いし、上下の酸化物超電導バルク体1、2でファセットライン5の向きを時計回り方向あるいは反時計回り方向に適宜の角度、例えば30度あるいは45度、あるいは任意の角度ずらして積み重ねても良い。図8は後に詳細に説明する実施例で明らかにするように、先の酸化物超電導バルク体1を上側に先の酸化物超電導バルク体2を下側にして上下のファセットラインを同じ方向にして積み重ねた場合の捕捉磁場分布の等高線を示し、図9は後に詳細に説明する実施例で明らかにするように、上下の酸化物超電導バルク体1、2のファセットラインを45度時計方向回りにずらして積み重ねた場合の捕捉磁場分布の等高線を示し、図10は45度積み重ねの場合の捕捉磁場分布を示す。
これらの図に示すように積み重ねの方向性によっても捕捉磁場分布状態を調節して均一化することができる。
【0028】
本発明ではこれらの積み重ね手法の他に、上下の酸化物超電導バルク体として同一形状ではないものを積み重ねること、同一形状のものを水平位置をずらして積み重ねることなどの構造を採用しても良いのは勿論である。例えば酸化物超電導バルク体として長方形板状のもの、棒状のもの、円環状のものなど種々の形状のものを適宜厚さ方向に組み合わせて使用できる。
更に本発明においては、3個以上の酸化物超電導バルク体を積み重ねて捕捉磁場分布を調整することで使用することもできるのは勿論である。
次に、酸化物超電導バルク体1、2において、捕捉磁場特性は中央部に存在する単結晶領域6とその周囲に存在する多結晶領域7の両方の領域の合成効果として存在する。
従って単結晶領域6のみを酸化物超電導バルク体1、2から切削するなどの手段で分離し、単独で利用しても良いし、単結晶領域6のみを切削により切り出して4つの多結晶領域7のみの枠形状に加工し、この枠の内側に別途製造した大きさの合う単結晶体をはめ込むようにして酸化物超電導バルク体として、それを複数用意して積み重ねて使用しても良い。
【0029】
ところで、以上説明した例においては、ファセットを有する酸化物超電導体に対してファセットを有する他の酸化物超電導体を重ねた場合について説明したがファセットを有しない全体が単結晶状の酸化物超電導体あるいは全体が多結晶状態の酸化物超電導体、あるいは酸化物系以外の化合物系や合金系の超電導バルク体の捕捉磁場調整に本発明の手法を適用しても良いのは勿論である。
【0030】
【実施例】
NdBaCu7−Xの組成の種結晶を用いた溶融凝固法により、SmBaCu7−Xの組成の直径約20mm、厚さ約5mmの酸化物超電導バルク体試料を得た。
各酸化物超電導バルク体試料について、各試料が非超電導状態にあるとき、それぞれ200〜5000Gの磁界をヘルムホルツ型コイルで印加後、液体窒素温度(77.3K)に冷却する磁場中冷却を行って各試料を冷却し、冷却後に磁場を除去してからホール素子を用いて各試料表面の磁界を検出し、捕捉磁界分布を測定した。
【0031】
図3と図4は先に製造した試料の内の1つのサンプルNo.1、No.2の試料の捕捉磁場分布を示すが、これらのサンプルNo.1、No.2の試料は、いずれもファセットが成長して充分に結晶化しているように目視により確認できるものである。しかし、このサンプルNo.1、No.2の試料においても捕捉磁場割れを生じている。
図5は、図3に示す捕捉磁場分布を有するサンプルNo.1の酸化物超電導バルク体試料を上側に、図4に示すサンプルNo.2の酸化物超電導バルク体試料を下側にして積み重ねた2段重ねの酸化物超電導体試料の捕捉磁場分布を示す。図5に示す捕捉磁場分布はシングルピークを有するものであり、この酸化物超電導体試料は優れた捕捉磁場分布を有する。また、捕捉磁場分布を示す山の中腹部分の幅(ボリューム)もサンプルNo.1のものに比べて充分に広く、優れた捕捉磁場分布を示すものと認識できる。
【0032】
従って捕捉磁場割れを示す2つの酸化物超電導バルク体を積み重ねることにより、捕捉磁場割れを生じていない優れた捕捉磁場特性の酸化物超電導体を得られることが明らかになった。
なお、以下に示す捕捉磁場分布を示す各図において、磁場の強さの単位はエルステッド(Oe)で示すが、SI単位である(A/m)に換算すると、約80倍とすれば良いので、100 Oeは8000A/m、500 Oeは40000A/m、1000 Oeは80000A/mと換算し、各図面の縦軸に付記しておく。
【0033】
図6はサンプルNo.3の酸化物超電導バルク体試料の捕捉磁場分布を示すが、このNo.3の試料はシングルピークを示す上に、捕捉磁場のピークも高い試料である。このサンプルNo.3の試料を用い、下から順にNo.2の試料/No.1の試料/No.3の試料というように3段積みした酸化物超電導体の捕捉磁場分布を図7に示す。サンプルNo.1、2、3の各試料のファセットの方向は同じ方向とした。(図7に角度00で示す)
この3段積みの試料の捕捉磁場特性は、図7に示すように高い捕捉磁場の範囲では若干の捕捉磁場割れを発生したものの、捕捉磁場割れを起こしている部分の谷の部分でも捕捉磁場レベルが大きく、サンプルNo.1とNo.2の試料単独においては捕捉磁場割れを生じている磁場強さ範囲では図7に示す酸化物超電導体は捕捉磁場割れを生じておらず、サンプルNo.1、No.2単独の場合の試料に比べても優れた捕捉磁場特性を発揮していると解釈できる。従って酸化物超電導バルク体を3段積みした酸化物超電導体としても、捕捉磁場割れの影響を回避可能であり、3段積み構造を利用できることが明らかとなった。
【0034】
この種の酸化物超電導体においては、捕捉磁場分布のピーク値自体が高いということより、ある程度の捕捉磁場強さまで、できるだけ広い範囲で磁場を捕捉できることも重要と考えられる。即ち、捕捉磁場分布を示す山の幅が細くてピークが高いよりは、山のピークが多少低くとも、捕捉磁場分布を示す山の幅、換言すると山のボリュームが広く、それがある磁場強さまで維持されていることが望ましい。このようなことにおいて図7に示す捕捉磁場分布では、図6に示すサンプルNo.3の酸化物超電導バルク体試料の捕捉磁場分布よりも山のピークは若干下がっているが山の幅(ボリューム)が広がっていて、しかも、捕捉磁場割れを生じて谷となっている部分の磁場強さ自体が高い値であるので使用目的に応じて充分に利用できると見なすことができる。
【0035】
図8は、先のサンプルNo.1の酸化物超電導バルク体を上側に、先のサンプルNo.2の酸化物超電導バルク体を下側にして上下のファセットを同じ方向にして(図8に角度00で示す)積み重ねた場合の捕捉磁場分布の等高線を示し、図9は上下の酸化物超電導バルク体のファセットを45度時計方向回りにずらして積み重ねた場合(図9に角度45で示す)の捕捉磁場分布の等高線を示し、図10はその場合の捕捉磁場分布を示す。
図8と図9に示す捕捉磁場分布の等高線の比較から、上下の酸化物超電導バルク体の相対位置を時計方向に沿って変えることにより、捕捉磁場分布の状態を更に微調整できることがわかる。特に図9に示す角度45の捕捉磁場特性と図5に示す角度00の捕捉磁場特性を比較して見ると明らかなように、図9に示すように超電導バルク体を回転させて方向を変えることで、図5の場合よりも捕捉磁場特性の山の高さを高く、山の幅を若干狭くすることができており、超電導バルク体の方向を変えることで捕捉磁場特性を調整できることが明らかである。
【0036】
図11は先のサンプルNo.1の試料とサンプルNo.2の試料を積み重ねた場合の位置13列における測定位置毎の捕捉磁場分布を示す。ここで位置13列とは、サンプルNo.1の試料であれば図3に示すS13の位置に沿って得られる捕捉磁場分布の2次元測定結果を示し、サンプルNo.2の試料であれば、図4に示すS13の位置に沿って得られる捕捉磁場分布の2次元測定結果を示す。また、各図においてSの後に付される数値の位置がmm単位で示す試料の平面位置を示す。
図11において△印で示す捕捉磁場はサンプルNo.1のもの、×印で示す捕捉磁場はサンプルNo.2のものであり、●印で示す捕捉磁場が計算上の単純平均値であり、■印で示す捕捉磁場が実測値を示しているが、サンプルNo.1とNo.2の酸化物超電導バルク体試料を積み重ねた場合、合成で得られると思われる単純平均の値ではない、捕捉磁場分布になることが明らかである。
しかも、サンプルNo.2の試料の捕捉磁場特性でピーク付近で生じている大きな谷の部分が消失し、実測値では、全体として上に凸型のなだらかなシングルピークの捕捉磁場特性となっている。従ってこの図11に示す結果から、サンプルNo.1、2の試料を重ねることで捕捉磁場割れを有する不均一な捕捉磁場を均一な捕捉磁場に修正できることがより明瞭にわかる。
図12は同試料の位置17行における図11と同じような捕捉磁場と計算上の単純平均値と実測値を示す。(位置17行とは、サンプルNo.1の試料であれば図3に示す17の位置に沿って得られる捕捉磁場分布の2次元測定結果を示し、サンプルNo.2の試料であれば、図4に示す17の位置に沿って得られる捕捉磁場分布の2次元測定結果を示す。)
図12においても図11で示す結果と同等の結果を示し、酸化物超電導バルク体の積み重ねにより捕捉磁場割れを回避でき、捕捉磁場を均一化できていることが明らかである。
【0037】
これらの結果は、この種の希土類系酸化物超電導バルク体において超電導電子が酸化物超電導体の結晶のab面(CuO面)を流れることや、RE123系の希土類系酸化物超電導体は結晶のab面が層状に生成し、非等方性が大きいことを考慮し、図3〜図12に示す試験結果から総合的に鑑みると、酸化物超電導バルク体の積み重ねにおいては、下方側の酸化物超電導バルク体の捕捉磁場が、上側の酸化物超電導バルク体を突き抜けているか、あるいは、磁場による電流の合成かによって、酸化物超電導バルク体の積み重ねにより異なる磁場形状を組み合わせることで、異なる形状の捕捉磁場分布を作り出すことができると考えられる。従って超電導バルク体の重ね操作により、1つの超電導バルク体の不均一な捕捉磁場を均一化できていることが明らかである。
【0038】
これに対して例えば永久磁石どうしを用いて磁場分布を調整しようとしても、上下に磁石を単に積み重ねた場合に磁極のN極とS極が引き合い、同極どうしは反発するので自由な方向に自然に重ねて設置することは難しいが、本発明で用いる酸化物超電導バルク体どうしは冷却して磁場を印加して磁場を取り去った段階で捕捉磁場分布を示すので、酸化物超電導バルク体どうしで自由な積み重ね状態を容易に実現できる。従って捕捉磁場調整のための超電導バルク体の設置も容易にできる。
【0039】
図13はNdBaCu7−Xの組成の種結晶を用いた溶融凝固法により形成した、SmBaCu7−Xの組成の直径約20mm、厚さ約5mmの平面視半月状の酸化物超電導バルク体試料の捕捉磁場分布を示し、図14は先に説明した製造方法により形成された同一サイズの他の半月状の酸化物超電導バルク体試料の捕捉磁場分布を示す。
そして、図13に示す捕捉磁場分布を示す試料を上に、図14に示す捕捉磁場分布を示す試料を下にして平面視十字状に積み上げて形成した酸化物超電導体の捕捉磁場分布を図15に示す。
図15に示す捕捉磁場分布特性から、平面形状の異なる酸化物超電導バルク体どうしを組み合わせて積み重ねてもシングルピークを示す良好な捕捉磁場特性の酸化物超電導体を得られることが明らかとなった。また、これらの比較から明らかなように、上側の超電導バルク体の捕捉磁場に下側の超電導バルク体の捕捉磁場が影響を与えている。
【0040】
これに対して図16は、先の2つの半月状の酸化物超電導バルク体試料を2つ左右に隣接させて並列配置した酸化物超電導体の捕捉磁場分布を示す。
この例のように酸化物超電導バルク体を2つ単に左右に隣接させて並列配置すると、2つの捕捉磁場特性のピークの山の間に反磁界に起因する大きな谷を有する捕捉磁場特性が得られ、この使用状態では捕捉磁場を調整して均一化するという目的を達成できないことが明らかである。
【0041】
従って以上の試験結果から、捕捉磁場割れを有する酸化物超電導バルク体を厚さ方向に上下に積み重ねる場合に、積み重ねる酸化物超電導バルク体の捕捉磁場特性の種類と積み重ね方向と個数、並びに、積み重ねる酸化物超電導バルク体の形状や厚さを種々のものとすることで、総合的に種々の形状の捕捉磁場分布を発揮させ得ることが明らかであり、目的の捕捉磁場分布を有する酸化物超電導体を得られることが明らかとなった。
【0042】
図17はフェライトからなる長さ20mm、幅10mm、厚さ5mmの長方形板状の永久磁石試料(MG1)を用い、先の実施例と同じようにして磁場分布を測定した結果を示し、図18はフェライトからなる長さ20mm、幅10mm、厚さ5mmの長方形板状の永久磁石試料(MG2)を用い、先の実施例と同じようにして磁場分布を測定した結果を示し、図19は永久磁石試料(MG1)の上に永久磁石試料(MG2)を互いの隅部がはみ出さないように上下で位置合わせして重ねた場合の2つの永久磁石試料による磁場分布を示す。
図19に示す磁場分布測定結果から、この磁場分布は図18に示す永久磁石試料(MG2)の磁場分布とほぼ同じであり、下側に配置された永久磁石試料の磁場が上側に配置された永久磁石試料の磁場にほとんど影響を及ぼしていないものと考えられる。
【0043】
次に、図20は上側の永久磁石試料(MG2)を下側の永久磁石試料(MG1)に対して90゜交差させて配置した場合の磁場分布を示すが、上側の永久磁石試料が示す磁場分布を90゜回転させた状態に近い磁場分布が得られた。
更に、図21はフェライトからなる長さ20mm、幅10mm、厚さ5mmの長方形板状の永久磁石試料(MG3)の磁場分布を測定した結果を示し、図22は先の2段積みの永久磁石試料の上に更に永久磁石試料(MG3)を載置して測定した磁場分布を示す。
図22に示す磁場分布は図21に示す永久磁石試料の磁場分布を多少変形させたものであるが、ほぼ似たような磁場分布を示す。
以上のことから、永久磁石試料を用いた場合、永久磁石試料を重ねても総合的な磁場分布を修正することはできず、若干磁場分布に変形を生じる程度であることが判明した。
なお、これらの永久磁石試料を重ねて位置決めする場合、各永久磁石試料のN極とS極が引き合うか、反発するので、これらの永久磁石試料の向きを固定するには別途支持金具などの支持部材が必要であり、これら永久磁石試料の位置決めは容易ではなかった。特に永久磁石試料を3つ重ねる場合はそれぞれの永久磁石試料の磁極が磁力を作用させ合うので、それらの磁気反発力よりも強い力で各永久磁石試料を固定する必要が有り、位置決めが極めて困難であった。
従って永久磁石のみを用いて磁場分布を修正したり調整することは容易にはできないものと思われる。
【0044】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明に係る捕捉磁場のコントロール方法及び酸化物超電導体によれば、半溶融状態の前駆体から種結晶による結晶成長を行った超電導バルク体をそれらの厚さ方向に2つ以上積み重ねることで上側に設置されている超電導バルク体が捕捉するべき磁場に加えて下側に設置されている超電導バルク体が捕捉するべき磁場も影響を与えることができ、双方の捕捉磁場分布の合成として、全体として好ましい捕捉磁場状態を得ることが可能となる。
従って、捕捉磁場割れを生じている超電導バルク体を複数積み重ねるか、捕捉磁場割れを有している超電導バルク体と捕捉磁場割れを有していない超電導バルク体を重ねることで捕捉磁場割れの部分を無くするか、抑制できることが可能となり、従来は不良品としていた超電導バルク体を有効利用できるようになる。
従って本発明に係る捕捉磁場のコントロール方法では、均一な捕捉磁場分布が必要な超電導体応用のあらゆる分野に応用可能であり、磁気遮蔽装置を有する医療装置、印加磁場装置、磁場搬送用アクチュエータ、浮上式鉄道用の超電導機器、電力貯蔵用超電導設備、超電導電動機、通信機用超電導中継器、汚水浄化用超電導機器等、超電導バルク体を利用するあらゆる分野に広く適用可能となる。
【0045】
本発明に係る捕捉磁場のコントロール方法ではREBaCu7−X(REは希土類元素の1種又は2種以上を示す)なる組成式で示される希土類系の酸化物超電導バルク体に適用できる。
更に、本発明において、REBaCu7−X系の酸化物超電導バルク体であるならば、臨界電流密度が高く、臨界温度も高い優れたものが得られ易く、例え捕捉磁場割れを起こしたものであっても組み合わせの仕方によって捕捉磁場割れの影響を回避できる。
【0046】
本発明に係る超電導体では、超電導バルク体を積み重ねることによりそれらの合成として均一に制御できた捕捉磁場特性を有する超電導体を提供できる。
また、捕捉磁場特性を制御する手段は、積み重ねる形状と方向で微調整することができる。これにより、単独では捕捉磁場割れを生じている超電導バルク体であっても複数個積み重ねて有効利用できるようになる。あるいは、捕捉磁場割れを有している超電導バルク体と捕捉磁場割れを有していない超電導バルク体を組み合わせて、捕捉磁場割れを抑制した捕捉磁場特性の超電導体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は本発明に係る酸化物超電導バルク体を積み重ねてなる酸化物超電導体の斜視図である。
【図2】 図2は図1に示す酸化物超電導体を製造する場合に用いられる前駆体の斜視図である。
【図3】 図3は実施例で得られたサンプルNo.1の酸化物超電導バルク体試料の捕捉磁場分布を示す図である。
【図4】 図4は実施例で得られたサンプルNo.2の酸化物超電導バルク体試料の捕捉磁場分布を示す図である。
【図5】 図5は実施例で得られたサンプルNo.1とNo.2の酸化物超電導バルク体を積み重ねてなる酸化物超電導体の捕捉磁場分布を示す図である。
【図6】 図6は実施例で得られたサンプルNo.3の酸化物超電導バルク体試料の捕捉磁場分布を示す図である。
【図7】 図7は実施例で得られたサンプルNo.2の試料とサンプルNo.1の試料とサンプルNo.3の試料を積み重ねてなる酸化物超電導体の捕捉磁場分布を示す図である。
【図8】 図8は実施例で得られたサンプルNo.1とNo.2の酸化物超電導バルク体を積み重ねてなる酸化物超電導体の捕捉磁場分布の等高線を示す図である。
【図9】 図9は実施例で得られたサンプルNo.1とNo.2の酸化物超電導バルク体を積み重ね、両酸化物超電導バルク体を時計方向に45度ずらしてなる酸化物超電導体の捕捉磁場分布の等高線を示す図である。
【図10】 図10は図9に示す酸化物超電導体の捕捉磁場分布を示す図である。
【図11】 図11は図3に示す捕捉磁場分布を示す酸化物超電導体の測定位置13列における捕捉磁場分布実測結果と、各酸化物超電導バルク体の捕捉磁場分布と両者の平均捕捉磁場分布の計算例とを比較して示す図である。
【図12】 図12は図3に示す捕捉磁場分布を示す酸化物超電導体の測定位置17行における捕捉磁場分布実測結果と、各酸化物超電導バルク体の捕捉磁場分布と両者の平均捕捉磁場分布の計算例とを比較して示す図である。
【図13】 図13は長方形状の酸化物超電導バルク体試料の捕捉磁場分布を示す図である。
【図14】 図14は長方形状の他の酸化物超電導バルク体試料の捕捉磁場分布を示す図である。
【図15】 図15は図13に示す捕捉磁場分布を示す試料と、図14に示す捕捉磁場分布を示す試料とを重ねた構成の酸化物超電導体の捕捉磁場分布を示す図である。
【図16】 図16は図13に示す捕捉磁場分布を示す試料と、図14に示す捕捉磁場分布を示す試料とを並列配置した構成の酸化物超電導体の捕捉磁場分布を示す図である。
【図17】 図17は長さ20mm、幅10mm、厚さ5mmの長方形板状の第1の永久磁石試料の磁場分布を測定した結果を示す図である。
【図18】図18は長さ20mm、幅10mm、厚さ5mmの長方形板状の第2の永久磁石試料の磁場分布を測定した結果を示す図である。
【図19】 図19は図17に示す磁場分布の永久磁石試料の上に図18に示す磁場分布の永久磁石試料を位置合わせして重ねた場合の磁場分布を示す図である。
【図20】 図20は図17に示す磁場分布の永久磁石試料の上に図18に示す磁場分布の永久磁石試料を90゜交差させて設置した場合の磁場分布を示す図である。
【図21】 図21は長さ20mm、幅10mm、厚さ5mmの長方形板状の第3の永久磁石試料の磁場分布を測定した結果を示す図である。
【図22】 図22は図17に示す磁場分布の永久磁石試料の上に図18と図21に示す磁場分布の各永久磁石試料を位置合わせして重ねた場合の磁場分布を示す図である。
【図23】 図23は一般的な半溶融凝固法により製造されたファセットを有する酸化物超電導体の斜視図である。
【符号の説明】
A…酸化物超電導体、1、2…酸化物超電導バルク体、3…前駆体、
5…ファセット、6…単結晶領域、7…多結晶領域。

Claims (8)

  1. 超電導バルク体に対して他の超電導バルク体を1つまたは2つ以上、それらを厚さ方向に重ね、先の超電導バルク体の捕捉磁場分布に他の超電導バルク体で磁気的に影響を与えて先の超電導バルク体が単独で有していた捕捉磁場分布をこれらの合成としての捕捉磁場分布に調整する超電導体の捕捉磁場のコントロール方法であり、
    前記超電導バルク体として、半溶融状態の前駆体の上面中央部に設置した種結晶を元に結晶成長させて種結晶の設置位置から周縁に向かうファセットラインを生成した酸化物超電導バルク体を用い、
    積層する超電導バルク体の少なくとも1つとして、補足磁場分布のピーク部分付近に補足磁場割れを有している超電導バルク体を用い、他の超電導バルク体として、補足磁場割れを有していない超電導バルク体を用い、これらの積み重ねにより前記補足磁場割れを抑制した補足磁場特性とすることを特徴とする超電導体の捕捉磁場のコントロール方法。
  2. 前記先の超電導バルク体に対して重ねる前記他の超電導バルク体の形状と重ねる方向を調整することにより、それらの合成としての捕捉磁場分布を制御して補足磁場割れを抑制することを特徴とする請求項1に記載の超電導体の捕捉磁場のコントロール方法。
  3. 前記積み重ねる超電導バルク体として、いずれの酸化物超電導バルク体も希土類酸化物系であり、しかも、同一希土類元素の超電導バルク体であることを特徴とする請求項1または2に記載の超電導体の捕捉磁場のコントロール方法。
  4. 前記超電導バルク体として、REBaCu7−X(REは希土類元素の1種又は2種以上を示す)なる組成式で示される希土類酸化物系のものを用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の超電導体の捕捉磁場のコントロール方法。
  5. 超電導バルク体に対して他の超電導バルク体を1つまたは2つ以上、それらを厚さ方向に重ね、先の超電導バルク体の捕捉磁場分布に他の超電導バルク体で磁気的に影響を与えて先の超電導バルク体が単独で有していた捕捉磁場分布をこれらの合成としての捕捉磁場分布に調整してなる積層構造の酸化物超電導体であり、
    前記超電導バルク体として、半溶融状態の前駆体の上面中央部に設置した種結晶を元に結晶成長させて種結晶の設置位置から周縁に向かうファセットラインを生成した酸化物超電導バルク体が適用され、前記積層する超電導バルク体の少なくとも1つとして、補足磁場分布のピーク部分付近に補足磁場割れを有している超電導バルク体が用いられ、他の超電導バルク体として、補足磁場割れを有していない超電導バルク体が用いられ、これらの積み重ねにより前記補足磁場割れが抑制された補足磁場特性を有することを特徴とする酸化物超電導体。
  6. 前記積み重ねる超電導バルク体として、いずれの酸化物超電導バルク体も希土類酸化物系であり、しかも、同一希土類元素の超電導バルク体であることを特徴とする請求項5に記載の酸化物超電導体。
  7. 前記超電導バルク体が、RE Ba Cu 7−X (REは希土類元素の1種又は2種以上を示す)なる組成式で示される希土類酸化物系のものであることを特徴とする請求項5または6に記載の酸化物超電導体。
  8. 前記超電導バルク体の積み重ねに伴い、前記少なくとも1つの超電導バルク体が有していた補足磁場割れが積み重ね後の補足磁場特性において解消されてなることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の酸化物超電導体。
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