JP4306971B2 - 空気入りラジアルタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コード径をコンパクト化しつつフィラメント内へのゴム浸透性を高めうるゴム補強用の金属コードをカーカスに用いた空気入りラジアルタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
各種のゴム材料、例えば空気入りラジアルタイヤのカーカスには、複数本の金属フィラメントを撚り合わせた金属コードが多用されている。このような金属コードは、表面にメッキ処理が施されているとはいえ、水分の影響により、コード内での錆の発生ないし広がりにより、コードとゴムの接着力の低下や、コードの強度の低下、さらにはコードの破断をきたす等の問題点があった。
【0003】
そこで、近年ではこのような問題点を改善するために、金属フィラメント間に隙間が発生する様に撚り合わせたいわゆるオープンコードや、コードを構成する金属フィラメントの1ないし複数本に3次元のスパイラル状の型付けをしてから撚り合わせることによって、金属フィラメント間に隙間を形成して、コード内部にゴムの浸透性を高めることが提案されている。
【0004】
しかしながら、前記のコードでは、充分なゴムの浸透性を確保するためには、おのずとコード径が大きくなるという不具合があり、又金属フィラメントを型付けした場合、コードの初期の伸びが大となり、タイヤ形状が安定せず実用に適さない場合もあった。
【0005】
本発明は、このような実状に鑑み案出なされたもので、特定形状をなす2次元の波状に型付けした型付けフィラメントを非型付けフィラメントと捻り合わせてフィラメント束を構成し、かつこれらのフィラメント束同士又はこれらのフィラメント束と金属フィラメントとを撚り合わせることを基本として、コード径をコンパクト化しつつフィラメント間へのゴムの浸入性を確保しうる金属コードをカーカスに用いた空気入りラジアルタイヤを提供することを目的としている。
【0006】
また本発明では、撚り合わせる前に、フィラメントに施される型付けの波高さ、波ピッチなどをフィラメントの線径に対して特定範囲に限定することにより、最終的に撚り合わされたコードの強度低下とゴム浸入性を両立させ、しかもコードの初期の伸びを抑えてタイヤ形状の安定化を図ることも目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明のうち請求項1記載の発明は、
トレッド部からサイドウォール部をへてビード部のビードコアに至るカーカスと、トレッド部の内方かつカーカスの外側に配されるベルト層とを具えた空気入りラジアルタイヤであって、
前記カーカスのカーカスコードは、線径dが0.15〜0.30mmである9〜12本の金属フィラメントからなり、
かつカーカスコードは、
2本の金属フィラメントからなる4本のフィラメント束と1本の金属フィラメント、3本の金属フィラメントのみからなる少なくとも3本のフィラメント束、又は2本の金属フィラメントからなる複数のフィラメント束と3本の金属フィラメントとからなる1本以上のフィラメント束とに区分でき、しかもフィラメント束を捻りながら10〜25mmの撚りピッチPcで撚り合わせた金属コードから形成されるとともに、
かつ捻りピッチPfは、前記撚りピッチPcよりも大とし、
前記フィラメント束は、波の山部と谷部とを繰り返す2次元の波状に型付けされた型付けフィラメントと、残余の非型付けフィラメントとからなり、かつ前記型付けフィラメントの前記線径d、型付けの波ピッチPw、波高さhは、下記の式(1)、(2)の関係を満足することを特徴としている。
5.0d≦Pw≦30.0d … (1)
0.5d≦h≦4.0d … (2)
【0008】
ここで前記「金属フィラメントを2〜4本のフィラメント束に区分し」とは、金属フィラメントを複数のフィラメント束に区分するとき、1本のフィラメント束内に2〜4本の金属フィラメントが配されることを意味するのであって、フィラメント束自体の本数が2〜4本であることを意味するのではない。
【0009】
また請求項2の発明では、前記型付けの波ピッチPwは、前記線径dの10.0〜25.0倍であることを特徴としている。
【0010】
また請求項3の発明では、前記フィラメント束と1本の金属フィラメントとにおける前記1本の金属フィラメントは非型付けフィラメントからなることを特徴としている。
【0011】
また請求項4の発明では、前記フィラメント束は、複数の型付けフィラメントを含み、この型付けフィラメントは波ピッチPwを互いに違えたことを特徴としている。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の一形態を図面に基づき説明する。
図1は、本発明の空気入りラジアルタイヤが、トラック・バス用等の重荷重用タイヤである場合の子午断面を示す。
【0013】
図1において、空気入りラジアルタイヤ(以下タイヤ1という)は、トレッド部2と、その両端からタイヤ半径方向内方にのびる一対のサイドウォール部3と、各サイドウォール部3の内方端に位置するビード部4とを具え、このビード部4、4にはトロイド状のカーカス6が架け渡されるとともに、前記トレッド部2の内方かつカーカス6の外側には強靱なベルト層7が巻装されている。
【0014】
なお前記ベルト層7は、乗用車用タイヤでは通常2枚、重荷重用タイヤでは通常3〜4枚のベルトプライから形成される。本例では、ベルト層7が、金属コードを用いたベルトコードをタイヤ周方向に対して例えば50±15°程度の角度で配列した最内のベルトプライ7Aと、タイヤ周方向に対して15〜35°の小角度で配列したベルトプライ7B、7C、7Dとの4枚構造の場合を例示しており、ベルトコードがプライ間で互いに交差する箇所を1箇所以上設けて重置している。
【0015】
次に、前記カーカス6は、トレッド部2からサイドウォール部3をへてビード部4のビードコア5に至る本体部6aの両側に、前記ビードコア5の廻りでタイヤ軸方向内側から外側に折り返す折返し部6bを一体に設けてなり、この本体部6aと折返し部6bとの間には、前記ビードコア5からタイヤ半径方向外側に先細状にのびるビードエーペックスゴム8が配置される。
【0016】
また前記カーカス6は、カーカスコードをタイヤ周方向に対して70〜90°の角度でラジアル配列した1枚以上のカーカスプライから形成される。本例では、カーカス6が、カーカスコードを90゜の角度で配列した1枚のカーカスプライ6Aからなる場合を例示している。
【0017】
そして本発明では、図2に示すように、このカーカスコードとして、線径dが0.15〜0.30mmである9〜12本の金属フィラメントFからなる金属コード10を用いてなり、この金属コード10は、前記金属フィラメントFを2〜4本のフィラメント束B、又は2〜4本のフィラメント束Bと1本の金属フィラメントFとに区分し、これらを10〜25mmの撚りピッチPcで撚り合わせることにより形成している。しかも各フィラメント束Bを、型付けフィラメントFAと、残余の非型付けフィラメントFBとから構成している。なお図中、便宜上、型付けフィラメントFAの断面をドット模様、非型付けフィラメントFBの断面を斜線模様として互いに区別している。なお本発明ではより具体的に、2本の金属フィラメントからなる4本のフィラメント束と1本の金属フィラメント、3本の金属フィラメントのみからなる少なくとも3本のフィラメント束、又は2本の金属フィラメントからなる複数のフィラメント束と3本の金属フィラメントとからなる1本以上のフィラメント束とに区分できる。
【0018】
従来、トラック・バス用等の重荷重用タイヤのカーカスコードとしては、例えば3+9構成(トータルフィラメント本数12本)や、3+9+15構成(トータルフィラメント本数27本)などが多用されてきた。
【0019】
一般に金属フィラメントの線径を大きくし、その本数を減らすことは、コード製造時のコストや生産性の面で有利である。またコードの性能面でも、フィラメント本数が少ない方がゴムのコード内部への浸透度を上げやすいという利点がある。
【0020】
そこで本願では、とりわけ重荷重用タイヤのカーカスに多用されていた前記3+9、3+9+15構成の金属コードの代替となり、かつ耐疲労性も十分に加味した上で特にフィラメント本数を低減したものとして好ましく実施しうるよう、線径dを0.15〜0.30mmとした金属フィラメントFを9〜12本用いて構成している。
【0021】
なお前記金属フィラメントFの線径dが0.15mm未満の場合、9〜12本のフィラメントを撚り合わす場合に重荷重用タイヤのカーカス6の補強コード材として必要な強度を得ることが難しくなり、かつ後述のようにフィラメントに波状の型付けを行ってもコードに撚る前に型付けが撚り時に元に戻りやすく、ゴム浸透度が不充分になりやすい。逆に線径dが0.30mmを超える場合には、カーカス6として要求されるコードのしなやかさが損なわれる他、波状の型付けを施した際の歪みが大きくなり過ぎてフィラメントの強度低下が大きくなってしまう。なお金属フィラメントFは、ゴム組成物との加硫接着を可能とするため、その表面に金属又は樹脂など各種のメッキが施されているものが好ましい。
【0022】
また本実施形態では、コードを構成する全ての金属フィラメントFが同じ線径dを有する場合を例示している。
【0023】
また図2〜4に示すように、フィラメント束Bは、撚り合わされる前の状態で、波の山部Uと谷部Dとを交互に繰り返す2次元の波状に型付けされた型付けフィラメントFAと残余の非型付けフィラメントFBとから構成される。なお本例では、型付けとして前記山部Uと谷部Dとの間に直線部13を介在したジグザグ状のものを例示しているが、曲線のみからなるサイン曲線状等であっても良い。
【0024】
本実施形態では、前記型付けフィラメントFAの型付けの波ピッチPw、波高さhは、同一のフィラメント束B内に複数の型付けフィラメントFAがある場合、少なくとも波ピッチPwを違えた型付けフィラメントFAを用いることが好ましい。これは、波ピッチPw、波高さhを違えると、コードの強力が低下する傾向にはあるが、フィラメント束B内で型付けフィラメントFAが重ならずゴムの浸透性が優れるという大きな利点があるからである。
【0025】
また本発明では型付けフィラメントFAの型付けを2次元の波状に限定することによって、例えばスパイラル状に型付けされたものに比してコード径をコンパクト化でき、特に本例の如く直線部13を有するジグザグ状の型付けである場合には、該波の高さhなどが比較的小さくても撚り合わせた際のフィラメント間の隙間を確保するのが容易となり、コード内部へのゴムの浸透性がより向上するため好ましい。
【0026】
このように型付けフィラメントFAは、コード内部へのゴムの浸透性を確保する為に重要な役割を果たすが、本発明のように比較的太めの線径dを有する金属フィラメントFを用いてコードを形成する場合には、波状の型付けを施すと金属フィラメントFの強力低下が生じやすい。
【0027】
そこで本発明では、このような不具合を最小限に抑えるために金属コード10は、前記9〜12本の金属フィラメントFを2〜4本のフィラメント束B、又は2〜4本のフィラメント束Bと1本の金属フィラメントFとに区分している。このとき各フィラメント束Bには、図4に示すように、前記型付けフィラメントFAと非型付けフィラメントFBとを混在せしめ、この型付けフィラメントFAと非型付けフィラメントFBとを最終の撚りピッチPcの3〜20倍の捻りピッチPfで捻ることにより互いに独立した束体を構成している。
【0028】
そして、図5に示すように、これらのフィラメント束B同士、又はこれらのフィラメント束Bと1本の金属フィラメントFとを10〜25mmの最終の撚りピッチPcにて撚り合わせることにより前記金属コード10を形成しているのである。即ち前記のごとく、本発明ではより具体的に、2本の金属フィラメントからなる4本のフィラメント束と1本の金属フィラメント、3本の金属フィラメントのみからなる少なくとも3本のフィラメント束、又は2本の金属フィラメントからなる複数のフィラメント束と3本の金属フィラメントとからなる1本以上のフィラメント束とに区分できる。
【0029】
なお、前記「金属フィラメントFを2〜4本のフィラメント束Bと1本の金属フィラメントFとに区分する」は、前記金属フィラメントFをフィラメント束Bに区分したときに、1本の金属フィラメントFだけ残ってしまう場合を想定しているのである。このとき、前記残る1本の金属フィラメントFは非型付けフィラメントFBとするのが良い。
【0030】
このように最終の撚り合わせに先立ち、それぞれの型付けフィラメントFAと非型付けフィラメントFBとを最終のピッチPcの3〜20倍という比較的長い捻りピッチPfで捻って束ねておくことにより、該型付けフィラメントFA、FA同士の型付けの波が重なり合うのを効果的に防止できるため、フィラメント間に隙間15を多く形成でき、内部へのゴムの浸透率を高めうる金属コード10が得られる。また本例の如く、捻りながら撚り合わせたときには、フィラメント束Bないしコード10をよりコンパクト化しながらもコード内部へのゴムの浸透率をさらに高めうる。
【0031】
なお1本のフィラメント束Bは、2〜3本のフィラメントFで形成する。
【0032】
またフィラメント束Bを形成する際の前記捻りピッチPfが、最終の撚りピッチPcの3倍未満であると、フィラメント束Bに形成される隙間15が少なくなりゴムの浸透度を低下させ、逆に20倍を超えると、フィラメント束Bを形成しても型付けフィラメントFA、FA同士の型付けが重なり易くなる不具合がある。
【0033】
なお、前記図2には、9本の金属フィラメントFからなる金属コード10の断面図を示し、詳しくは、1本の型付けフィラメントFAと1本の非型付けフィラメントFBとを束ねてなるフィラメント束B1の4本と、1本の非型付けフィラメントFBとを最終の撚りピッチPcで撚り合わせて構成されているものを示す。
【0034】
又図6(A)〜(C)は、夫々9本、10本、12本の金属フィラメントFからなる金属コード10の他の例を示し、図6(A)には、1本の型付けフィラメントFAと2本の非型付けフィラメントFBとを束ねてなるフィラメント束B2の3本を撚り合わせたものを例示している。又図6(B)には、前記フィラメント束B1の2本と、前記フィラメント束B2の2本とを撚り合わせたものを例示している。又図6(C)には、2本の型付けフィラメントFAと1本の非型付けフィラメントFBとを束ねてなるフィラメント束B3の2本と、前記フィラメント束B2の2本とを撚り合わせたものを例示している。これらはいずれも本発明の態様に含まれる。
【0035】
なお前記フィラメント束Bを形成すること及び波状の型付けの形状を限定することにより、効率良くゴムの浸透性を確保できる為、本発明の金属コード10は、最終の撚りに際してゴム浸透を確保する為に短い撚りピッチにする必要は無く、10mm〜25mmというフィラメントFの線径dに比して長い撚りピッチPcを採用することができ、ひいてはコードの生産性をも向上しうる。
【0036】
また本実施形態の金属コード10は、フィラメント束Bを構成する為の捻り方向と、最終の撚り方向とを同一方向としているが、逆方向に撚り合わせても本願の目的を達成しうる。
【0037】
また本発明者らの種々の実験の結果、限定された線径dを有しかつ特定本数の型付けフィラメントFAを含むコードを製造する場合には前記型付けフィラメントFAの前記線径d、型付けの波ピッチPw、波高さhは下記の式▲1▼、▲2▼の関係を満足することが重要であることを見出した。
5.0d≦Pw≦30.0d … ▲1▼
0.5d≦h≦4.0d … ▲2▼
【0038】
これは、もし前記波ピッチPwが、前記線径dの5.0倍未満になると、波ピッチPwが小さくなりすぎ、その型付け加工により型付けフィラメントFAが受けるダメージが大きくフィラメントの強度低下の原因となるからであり、逆に30倍を超えると、波ピッチPwが小さくなりすぎ、ゴムの浸透性が低下してしまうからである。従って、好ましくは10.0〜25.0倍の範囲である。
【0039】
又前記波高さhが、前記線径dの0.5倍未満になると、ゴム浸透性を確保するのが困難となり、逆に4.0倍を超えると、その型付け加工により型付けフィラメントFAが受けるダメージが大きくフィラメントの強度低下の原因となるからである。
【0040】
他方、本発明者らは、前記線径d、型付けの波ピッチPw、および波高さhからなるd×h/Pwの値をパラメータとし、この値を種々変化させてコードの強度低下率(%)とゴム浸透度(%)とを調べたところ、d×h/Pwの値を0.014〜0.028の範囲に限定することにより、顕著な効果が発揮されることを見出した。
【0041】
図7には、コードの強度低下率(%)、ゴム浸透率(%)と、前記パラメータd×h/Pwの関係を示している。この図から明らかなように、d×h/Pwが大きくなるとコードの強度低下率が大きく性能が悪化する反面、ゴムの浸透率が向上することが判る。従って、コードの強度低下率を許容範囲内に抑え、同時にゴムの浸透度を高めるためには、前記d×h/Pw値を、0.014〜0.028、さらには0.020〜0.025とするのが好ましい。なお、ここでいう強度低下率(%)、ゴム浸透度(%)は実施例(後述)での定義に従っている。
【0042】
また前記金属フィラメントFは、例えば炭素含有量が0.65〜0.88wt%の硬鋼線材を用いるのが好ましい。金属フィラメントFの炭素含有量が0.65%を下回ると、フィラメントの強度が低下する傾向があり、逆に0.88wt%を超えるとフィラメントの硬度が高すぎて型付けの際に強度低下が大きくなる傾向がある。
【0043】
また前記金属コード10は、等間隔で並列されかつトッピングゴムで被覆されることにより前記カーカスプライ6Aを形成するが、コードの長手方向と直角な方向のプライの単位長さ当たりに含まれる金属コードの本数、所謂コード打ち込み本数は、要求されるタイヤの仕様に応じて種々設定される。
【0044】
なお、このコード打ち込み本数が少なすぎると、加硫成形時などにコード間隔が不均一になるなどコード配列に乱れが生じやすく、逆にコードの間隔が小さくなりすぎるとタイヤ走行時に隣り合うコードとの間に挟まれたゴムの歪が大きくなり、ゴム層内の亀裂等の発生によるタイヤの耐久性能の低下を起こしやすくなる。
【0045】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、例えばタイヤ1を乗用車用、小型トラック用など種々のカテゴリのタイヤとして形成することができる。
【0046】
【実施例】
本発明の効果を確認すべく、種々の金属コードを表1、2の仕様で試作するとともに、試供コードの特性及び試供コードをカーカスコードに用いたときのタイヤ性能について比較評価を行った。なおタイヤの仕様は表3に示し、カーカスコード以外は全て同一である。
なお表中の用語の定義は次の通りである。
【0047】
<強度低下率>
同一組成(炭素含有量等の組成が同一)の材料かつ同じ本数の金属フィラメントを使い、同じ撚りピッチで撚ったコンパクト構造のコード(以下、「比較対象コード」という)に対する強度の低下率であり、タイヤに使用する前の状態で測定したものである。数値が小さいほど強度の低下が少なく良好である。
【0048】
<荷重時伸度>
コード1本に50Nの荷重を加えた時のコードの伸び率。
【0049】
<曲げ剛性>
テーバ社(米国)製の「V−5剛性試験機」を用いてコードの曲げ剛性を測定した。
【0050】
<ゴムの浸透率>
試供金属コードを用いたカーカスを具えるタイヤを製造し、そのタイヤから金属コードをトッピングゴムが付着した状態で取出す。このゴム付コードの表面からできる限りゴムを除去した後、断面からナイフを入れて9〜12本のフィラメントの内、隣り合う2本のフィラメントを除去し、除去された2本のフィラメントと残りのフィラメント束との間に形成されている空隙にゴムが完全に充填されている部分の長さを約10cmにわたり測定し、ゴムが充填されている部分の長さの全長さに対する比率をもってゴムの浸透率とする。上記測定を10本のコードについて行い、平均値をもってコードの測定値とする。
【0051】
<走行後の錆発生>
タイヤを約20万km走行させた後、タイヤを解体して金属コードの錆の発生状況を観察して比較対象コードを100とする指数で表示している。数値が小さいほど錆の発生が少なく良好である。
【0052】
<走行後の強度保持率>
タイヤを約20万km走行させた後、タイヤを解体して金属コードを取り出し、走行前のコードの強度を100とする指数で表示している。数値が大きいほど良好である。
テストの結果を表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【0056】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、カーカスコードとして、特定形状をなす2次元の波状に型付けした型付けフィラメントを非型付けフィラメントと捻り合わせてフィラメント束を構成し、かつこれらのフィラメント束同士又はこれらのフィラメント束と金属フィラメントとを撚り合わせたものを使用している。従って、コード径をコンパクト化しつつもコード内部へのゴム浸透率を高めることができ、コード内部での錆の発生を大幅に減じ、耐久性を向上しうる。
【0057】
しかもカーカスコードは、フィラメントに施される型付けの波高さ、波ピッチなどをフィラメントの線径に対して特定範囲に規制しているため、最終的に撚り合わされたコードの強度低下とゴム浸入性とを両立でき、しかもコードの初期の伸びを抑えうるなど、経済的でかつ耐久性、および寸法安定性に優れるタイヤを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例のタイヤの断面図である。
【図2】カーカスコードとして好適な金属コードの一例の断面図である。
【図3】型付けフィラメントの一例を示す平面図である。
【図4】フィラメント束を例示する斜視図である。
【図5】金属コードの形成過程を説明する側面図である。
【図6】(A)〜(C)は、金属コードの他の例を示す断面図である。
【図7】コードの強度低下率、ゴム浸透度と、d×h/Pwの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
2 トレッド部
3 サイドウォール部
4 ビード部
5 ビードコア
6 カーカス
7 ベルト層
10 金属コード
B フィラメント束
F 金属フィラメント
FA 型付けフィラメント
FB 非型付けフィラメント
U 山部
D 谷部
Claims (4)
- トレッド部からサイドウォール部をへてビード部のビードコアに至るカーカスと、トレッド部の内方かつカーカスの外側に配されるベルト層とを具えた空気入りラジアルタイヤであって、
前記カーカスのカーカスコードは、線径dが0.15〜0.30mmである9〜12本の金属フィラメントからなり、
かつカーカスコードは、
2本の金属フィラメントからなる4本のフィラメント束と1本の金属フィラメント、3本の金属フィラメントのみからなる少なくとも3本のフィラメント束、又は2本の金属フィラメントからなる複数のフィラメント束と3本の金属フィラメントとからなる1本以上のフィラメント束とに区分でき、しかもフィラメント束を捻りながら10〜25mmの撚りピッチPcで撚り合わせた金属コードから形成されるとともに、
かつ前記フィラメント束の捻りピッチPfは、前記撚りピッチPcの3〜20倍とし、
前記フィラメント束は、波の山部と谷部とを繰り返す2次元の波状に型付けされた型付けフィラメントと、残余の非型付けフィラメントとからなり、かつ前記型付けフィラメントの前記線径d、型付けの波ピッチPw、波高さhは、下記の式(1)、(2)の関係を満足することを特徴とする空気入りラジアルタイヤ。
5.0d≦Pw≦30.0d … (1)
0.5d≦h≦4.0d … (2) - 前記型付けの波ピッチPwは、前記線径dの10.0〜25.0倍であることを特徴とする請求項1記載の空気入りラジアルタイヤ。
- 前記フィラメント束と1本の金属フィラメントとにおける前記1本の金属フィラメントは非型付けフィラメントからなることを特徴とする請求項1又は2記載の空気入りラジアルタイヤ。
- 前記フィラメント束は、複数の型付けフィラメントを含み、この型付けフィラメントは波ピッチPwを互いに違えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りラジアルタイヤ。
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