JP4306946B2 - バッテリ充電装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばハイブリッド車に搭載される高電圧系のバッテリと低電圧系のバッテリとを充電するためのバッテリ充電装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境保護や省エネルギーなどの観点から、エンジンと電気モータを組み合わせた動力システムを搭載するハイブリッド車が注目されている。このハイブリッド車では、加速時には電気モータによってエンジンの出力を補助し、減速時には減速回生によってバッテリ等への充電を行う等、様々な制御を行うことにより、エンジン出力の補助を効率よく行うようになっている。このハイブリッド車には、走行用の電気モータに電気エネルギーを供給するための高電圧系(例えば42V)のバッテリと、各種補機類の電源を供給するための低電圧系(例えば12V)のバッテリが搭載されており、これら電圧仕様が異なるバッテリの双方を充電するためのバッテリ充電装置が必要とされている。
【0003】
以下、この種の従来技術に係るバッテリ充電装置について、後述する図1を援用して説明する。
なお、同図に示す電界効果トランジスタQ4〜Q6は、後述する本願発明に係るバッテリ充電装置の特徴の一部をなすものであって、従来装置では、この電界効果トランジスタに相当するものとして整流器(ダイオード)が用いられ、この整流器は、整流器D1〜D3または整流器D4〜D6と共に全波整流器を形成している。
【0004】
同図において、発電機ACGの交流出力は、整流器D1〜D3と電界効果トランジスタQ1〜Q3からなる系(オープンレギュレータ)を介して低電圧系のバッテリBLに振り分けられると共に、整流器D4〜D6を介して高電圧系のバッテリBHに振り分けられる。この発電機ACGの交流出力の振り分けは、発電機ACGの交流出力(U相,V相,W相)の各位相に同期して、低電圧側の系に設けられた電界効果トランジスタQ1〜Q3の導通をそれぞれ制御することにより行われる。即ち、図7に示すように、例えば、発電機ACGが発生するU相の電圧が高くなる期間P1において、電界効果トランジスタQ1がオンして導通状態となり、整流器D1及び電界効果トランジスタQ1を介してU相の出力が低圧系のバッテリBLに供給される。
【0005】
このとき、U相の電圧は、低電圧系のバッテリBLの端子電圧に引かれて低下するが、高電圧系側に設けられた整流器D4が逆バイアス状態とされるので、発電機の出力電圧が降下しても高電圧系のバッテリBHは放電されない。この後、期間P2においてU相の位相が反転して出力電圧が低下すると、整流器D1が逆バイアス状態となる。このとき、従来装置では、電界効果トランジスタQ4に対応する図示しない整流器を介してバッテリBLの充電が行われる。
【0006】
さらに、この後、U相の電圧が高くなる期間P3において、電界効果トランジスタQ1がオフして非導通状態となる。これにより、低電圧系のバッテリBLに対する電力の供給が遮断され、発電機ACGから出力されるU相の電圧が上昇する。この結果、整流器D4が順バイアス状態とされ、この整流器D4を介して高電圧系のバッテリBHに発電機の出力電力が供給される。
同様に、他のV相およびW相の出力による充電動作が行われる。
【0007】
このように、低電圧側の電界効果トランジスタQ1〜Q3を制御することにより、低電圧系と高電圧系とが相補的に充電され、1台の発電機を用いて双方のバッテリを充電することが可能となっている。
なお、発電機のどの位相の出力を低電圧系および高電圧系の何れの充電に振り分けるかについては、これらのバッテリの充電状態に応じて適宜決定される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の従来技術に係る装置によれば、例えば低電圧系のバッテリの充電中に高電圧系のバッテリの充電に切り替えると、発電機の出力電流波形に歪みが生じる。この電流波形に歪みが生じると、発電機の入力軸を回転駆動するために必要とされるトルク(以下、「入力トルク」と称す)に変動を生じる。この入力トルクは、発電機の出力電圧と出力電流とにより決定され、この入力トルクに抗し得る回転力(例えばエンジンの回転出力)を発電機の入力軸に与えることにより、電気エネルギーである電力が発生する。従って、充電中に出力電流に波形歪みが生じると、入力トルクが変動し、発電機の騒音や振動が発生して静粛性や耐久性が阻害されるこという問題がある。
【0009】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、発電機の出力を高電圧系と低電圧系の各バッテリに振り分ける際に発生する発電機の出力電流波形の歪みを抑制し、この出力電流波形の歪みに起因した騒音や振動の発生を防止することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、この発明は以下の構成を有する。
すなわち、本発明は、交流電力を発生する発電機(例えば後述する発電機ACGに相当する構成要素)と、前記発電機の出力に同期したタイミングで該発電機の出力を低電圧系の第1のバッテリに振り分けて該第1のバッテリを充電する第1の充電系(例えば後述する整流器D1〜D3および電界効果トランジスタQ1〜Q3に相当する構成要素)と、前記発電機の出力に同期したタイミングであって前記第1のバッテリを充電するサイクルと同一のサイクル内で前記発電機の出力を高電圧系の第2のバッテリに振り分けて該第2のバッテリを充電する第2の充電系(例えば後述する整流器D4〜D6に相当する構成要素)と、前記発電機の出力電流波形が正弦波に近似するように、前記第2のバッテリに振り分けられるべき前記発電機の出力を断続させるスイッチ系(例えば後述する電界効果トランジスタQ4〜Q6に相当する構成要素)と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、スイッチ系により発電機の出力を断続させることにより、この発電機の出力電圧を高電圧系の第2のバッテリを充電可能な電圧に維持したまま、発電機の出力電流波形が正弦波に近似した波形となる。従って、発電機の出力を低電圧系の第1のバッテリと低電圧系の第2のバッテリとに振り分ける際に、この発電機の出力電流波形の歪に起因した入力トルクの変動が抑制される。これにより、前記本願目的を達成する。
【0012】
また、前記バッテリ充電装置において、前記第1の充電系として、アノードが前記発電機の出力端子側に接続されると共にカソードが前記第1のバッテリの電極側に接続された第1の整流器(例えば後述する整流器D1〜D3に相当する構成要素)と、前記第1の整流器のカソードと前記第1のバッテリの電極との間に設けられ、前記第1のバッテリを充電すべきタイミングで導通状態とされると共に前記第2のバッテリを充電すべきタイミングで非導通状態とされる第1の電界効果トランジスタ(例えば後述する電界効果トランジスタQ1〜Q3に相当する構成要素)とを備え、前記第2の充電系として、アノードが前記発電機の出力端子側に接続されると共にカソードが前記第2のバッテリの電極側に接続された第2の整流器(例えば後述する整流器D4〜D6に相当する構成要素)を備え、前記スイッチ系として、前記発電機の出力端子と接地との間に設けられ、前記発電機の出力電流波形が正弦波に近似するように設定されたデューティを有するクロック信号に基づきスイッチングして前記発電機の出力を断続させる第2の電界効果トランジスタ(例えば後述する電界効果トランジスタQ4〜Q6に相当する構成要素)を備えたことを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、第1の電界効果トランジスタが導通状態となると、第1の整流器が順バイアス状態とされ、この第1の整流器を介して発電機の出力が低電圧系の第1のバッテリに振り分けられ、この第1のバッテリが充電される。これに対し、第1の電界効果トランジスタが非導通状態となると、発電機の出力電圧が上昇する結果、第2の整流器が順バイアス状態とされ、この第2の整流器を介して発電機の出力が高電圧系の第2のバッテリに振り分けられ、この第2のバッテリが充電される。このとき、第2の電界効果トランジスタは、クロック信号に基づきスイッチングして、発電機の出力を断続させる。これにより、この発電機の出力電圧を、第2のバッテリを充電する上で必要とされる電圧に維持しながら、1サイクル内の発電機の出力電流波形を正弦波に近似させる。従って、発電機の出力電流波形の歪に起因した入力トルクの変動が抑制され、前記第1の目的が達成される。
【0014】
また、前記バッテリ充電装置において、前記第2の電界効果トランジスタは、前記第1のバッテリの充電時には前記発電機の出力位相の変化に従って導通制御され、前記第2のバッテリの充電時には前記クロック信号に基づき導通制御されることを特徴とする(例えば後述する制御部CTLの機能に相当する要素)。
この構成によれば、第1のバッテリの充電時には、第1の整流器と第2の電界効果トランジスタとが全波整流器を形成し、発電機の出力を全波整流して第1のバッテリに供給する。また、第2のバッテリの充電時には、第2の整流器と第2の電界効果トランジスタとが全波整流器を形成すると共に、第2の電界効果トランジスタが、発電機の出力電流を正弦波に近似させるためのスイッチ系として機能する。これにより、発電機の出力電流波形の歪みに起因した発電機の入力トルクの変動を抑えながら、低電圧系のバッテリと高電圧系のバッテリに発電機の出力を割り振ることが可能となる。
【0015】
さらに、前記バッテリ充電装置において、前記発電機は、多相交流(例えば後述するU相、V相、W相の3相交流に相当する要素)を発生するものであって、前記第1及び第2の整流器並びに第1及び第2の電界効果トランジスタは、前記多相交流の各相ごとに設けられたことを特徴とする。
この構成によれば、発電機の出力の各相を、独立した充電経路を介してバッテリに供給する。従って、充電経路での干渉や各充電経路の電流密度を抑えることができ、充電動作を安定化させることが可能となる。
【0016】
なお、前記バッテリ充電装置において、前記クロック信号のデューティを、前記発電機の出力電力の変化を抑制するように設定してもよい。
これにより、低電圧側のバッテリを充電している状態での入力トルクと、高電圧側のバッテリを充電している状態での入力トルクとが略等しくなる。従って、高電圧系のバッテリと低電圧系のバッテリとの各充電時の入力トルクの差分が小さくなり、発電機の出力を低電圧系の第1のバッテリと低電圧系の第2のバッテリとに振り分ける際に、この発電機の入力トルクの差分に起因した騒音や振動の発生を防止することが可能となる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
<実施の形態1>
図1に、本発明の実施の形態1に係るバッテリ充電装置の構成を示す。同図において、ACGは、3相交流(U相,V相,W相)を発生する発電機、LFは発電機の界磁コイル、CNVは、発電機の交流出力を直流に変換して充電対象の低電圧系(例えば12[V])のバッテリBLおよび高電圧系(例えば36[V])のバッテリBHに振り分けるコンバータである。
【0018】
また、コンバータCNVにおいて、D1〜D3は、発電機ACGの交流出力を整流して低電圧側のバッテリBLに供給する整流器、Q1〜Q3は、発電機ACGの出力の振り分け先を制御する電界効果トランジスタ(n型)であり、これら整流器D1〜D3および電界効果トランジスタQ1〜Q3は、低電圧系のバッテリBLを充電するための第1の充電系を構成する。
D4〜D6は、発電機ACGの交流出力を整流して高電圧側のバッテリBHに供給する整流器であり、高電圧系のバッテリBHを充電するための第2の充電系を構成する。
【0019】
Q4〜Q6は、発電機ACGの出力電圧を昇圧するための電界効果トランジスタ(n型)であって、この発電機の出力電圧を断続(チョッピング:chopping)するスイッチ系を構成する。この電界効果トランジスタQ4〜Q6は、上述の低電圧系側の整流器D1〜D3または高電圧系側の整流器D4〜D6と共に全波整流器を形成する。CTLは、電界効果トランジスタQ1〜Q6の導通を制御する制御部である。D7はダイオード、Q7は電界効果トランジスタであり、これらは、制御部CTLの制御の下に界磁コイルLFに流れる電流量を調整するためのものである。
このように、充電経路をなす各整流器および各電界効果トランジスタは、発電機ACGが発生するU相,V相,W相の各相ごとに設けられている。
【0020】
さらに具体的に、各構成要素の接続関係を説明する。
整流器D1〜D3のアノードは、発電機ACGの出力端子に接続される。電界効果トランジスタQ1〜Q3は、整流器D1〜D3のカソードとバッテリBLの正極との間に設けられ、バッテリBLを充電すべきタイミングで導通状態とされると共にバッテリBHを充電すべきタイミングで非導通状態とされる。整流器D4〜D6のアノードは、発電機ACGの出力端子に接続され、そのカソードはバッテリBHの正極に接続される。電界効果トランジスタQ4〜Q6は、発電機ACGの出力端子と接地との間に設けられる。この電界効果トランジスタQ4〜Q6は、制御部CTLからのクロック信号CLKに基づきスイッチングして発電機ACGの出力を断続させるものとして機能する。このクロック信号CLKのデューティは、発電機ACGの出力電流波形が正弦波に近似するように予め設定されている。このデューティの設定方法については後述する。
【0021】
以下、図2〜図5を参照して、この実施の形態1の動作を説明する。ここで、図2は、このバッテリ充電装置の全体動作を説明するための波形図であり、図3は、クロック信号CLKと入力トルクTとの関係を示す特性図であり、図4は、このバッテリ充電装置の詳細動作を説明するための波形図であり、図5は、クロック信号CLKのデューティと発電機の出力電流IHとの関係を説明するための波形図である。
なお、この実施の形態1では、発電機ACGは、昇圧するまでもなく低電圧系のバッテリBLを充電可能な電圧を発生し得るものとする。また、この実施の形態1に係るバッテリ充電装置の動作は、U相〜W相の各相について同様であるから、U相に着目して説明することとする。
【0022】
この実施の形態1に係るバッテリ充電装置は、以下に詳細に説明するように、低電圧系のバッテリBLを充電するサイクルと同一のサイクル内で高電圧系のバッテリBHの充電を行い、先に高電圧系を充電した後に低電圧系を充電する。
まず、図2の示すサイクルS1〜S4のように、U相による高電圧系バッテリBHの充電を要しない場合を説明する。この場合、制御部CTLは、発電機ACGのU相の位相を検出し、この位相に同期したタイミングに従って電界効果トランジスタQ1の導通を制御し、低電圧系のバッテリBLを充電する。
【0023】
具体的には、制御部CTLは、U相の電圧が高くなる各サイクルの始点で電界効果トランジスタQ1をオンさせる。電界効果トランジスタQ1がオンすると、整流器D1を介して発電機ACGのU相の出力が低電圧系のバッテリBLの正極に供給される。即ち、発電機ACGの出力に同期したタイミングで、この発電機ACGの出力が低電圧系のバッテリBLに振り分けられ、このバッテリが充電される。
【0024】
この後、同一サイクル内で発電機のU相の位相が切り替わり、発電機の出力電圧が低下すると、制御部CTLは、電界効果トランジスタQ4をオンさせる。ここで、バッテリBLの負極と電界効果トランジスタQ4のソースは共にグランドを介して接続されているから、発電機ACGは、全波整流器を形成する電界効果トランジスタQ4を介してバッテリBLを充電する。この例のように、電界効果トランジスタQ4を用いて全波整流器を形成し、このトランジスタの導通を発電機の出力の位相変化に従って制御することにより、整流器のみから構成される従来の全波整流器に比較して、電界効果トランジスタQ4での電圧降下が小さい分だけ充電効率が改善される。
このように、電界効果トランジスタはQ4は、低電圧系のバッテリBLの充電時には、発電機ACGの出力位相の変化に従って導通制御される。
【0025】
次に、図2に示すサイクルS5のように、U相による高電圧系バッテリBHの充電を行う場合の動作を説明する。この場合、先に高電圧系の充電をした後に低電圧系の充電を行う。即ち、制御部CTLは、発電機ACGのU相の電圧が高くなるサイクルS5の始点で電界効果トランジスタQ1をオフさせると共に、電界効果トランジスタQ4のゲートに後述するデューティを有するクロック信号CLKを印加し、この電界効果トランジスタQ4をスイッチング動作させる。これにより、発電機ACGの出力電圧が昇圧されて高電圧系のバッテリBHに供給され、このバッテリBHが充電される。
【0026】
即ち、電界効果トランジスタQ4がオンの期間、発電機ACGの電機子コイルに電流が流れ、この電機子コイルに電気エネルギーが蓄積される。この期間に蓄えられた電気エネルギーは、電界効果トランジスタQ4がオフの期間に発電機ACGが新たに発生する電気エネルギーに重畳して放出され、発電機ACGの出力電圧が昇圧される。この結果、整流器D4が順バイアス状態とされ、この整流器D4を介して発電機ACGのU相の出力が高電圧系のバッテリBHの正極に供給される。このようにして、発電機ACGの出力に同期したタイミングであって上述の低電圧系のバッテリBLを充電するタイミングとは異なるタイミングで、発電機ACGの出力がバッテリBHの充電に振り分けられる。
以上により、高電圧系のバッテリBHの充電と、低電圧系のバッテリBLの充電とが各サイクル内で順に行われる。
【0027】
次に、クロック信号CLKのデューティの設定方法を説明する。
この実施の形態1では、クロック信号CLKのデューティは、高電圧系と低電圧系の各バッテリの充電時の入力トルクの差分を抑制し、発電機ACGの出力電流波形が正弦波に近似するように設定される。なお、この実施の形態では、クロック信号CLKのデューティとは、このクロック信号CLKの1サイクルにおいて、電界効果トランジスタQ4(Q5,Q6)をオフ状態とするパルス幅が占める比率を意味するものとする。従って、このクロック信号CLKは、昇圧された発電機ACGの出力パルスのデューティを与える。この実施の形態では、クロック信号CLKのデューティと発電機ACGの出力のデューテイとは、同義語であるものとする。ただし、クロック信号CLKのデューティと発電機ACGの出力のデューテイとは同一である必要はなく、これらのデューティの間に一定の関係があれば足りる。
以下、図3を参照して、スイッチング制御用のクロック信号CLKのデューテイにより発電機ACGの入力トルクの差分が抑制される原理を説明する。
発電機ACGの入力トルクはバッテリBL,BHの充電に要する電力に依存する。逆に言えば、高電圧系および低電圧系の充電に必要とされる電圧をそれぞれ確保することを条件に発電機ACGの出力電力(充電電力)の変化を小さく抑えることができれば、発電機の出力を振り分ける際の入力トルクの変動を小さくすることができ、しかも双方のバッテリの充電に対応することができる。
【0028】
ここで、図3に示すように、高電圧系のバッテリBHを充電している状態での入力トルクTは、電界効果トランジスタQ4のスイッチングを制御するクロック信号CLKのデューティDRが大きくなるにつれて増加する傾向を示す。これに対し、低電圧系のバッテリBLを充電している状態では、クロック信号CLKによる電界効果トランジスタQ4のスイッチングは行われないので、このときの入力トルクTは、クロック信号CLKのデューティDRに依存せずに一定である。従って、高電圧系の充電時の特性線と低電圧系の充電時の特性線との交点Aが存在し、この交点Aでは、高電圧系の充電時と低電圧系の充電時とで入力トルクTが等しくなる。
【0029】
そこで、クロック信号CLKのデューティDRを上述の交点AでのデューティDR(A)に設定し、この状態で発電機ACGの出力電圧を断続させれば、高電圧系の充電時と低電圧系の充電時とで発電機ACGの出力電力が略等しくなり、従って入力トルクTの差分が小さくなる。よって、発電機ACGの出力を各バッテリに振り分ける際に発生する入力トルクTの変動が抑制され、この入力トルクTの変動に起因する発電機の振動や騒音の発生が防止されることとなる。
このように、高電圧系のバッテリBHの充電時には、電界効果トランジスタQ4は、制御部CTLからのクロック信号CLKに基づき導通制御され、発電機ACGの出力電圧を昇圧すると共に、この発電機の入力トルクの差分を抑制するように機能する。
【0030】
上述のようにクロック信号CLKのデューティを設定した場合、以下に説明するように、高電圧系の充電期間と高電圧系の充電期間とに亘って、発電機ACGの出力電流波形の波形歪みが抑えられ、この出力電流波形が正弦波に近似したものとなる。
即ち、図4に示すように、高電圧系の充電期間PHにおいて、発電機ACGの出力電流IHが断続的に高電圧系のバッテリBHに振り分けられ、この高電圧系のバッテリBHが充電される。このとき、発電ACGの出力電流は、電機子コイルに誘導された電流であるから、急激に変化せず、図4に平均値波形として示すように連続した波形となる。発電機ACGの入力トルクTの波形は、この出力電流IHの波形に応じたものとなる。この入力トルクTを平均化して得られる平均トルクTAVEは、高電圧系充電期間PHと低電圧系充電期間PLとに亘って滑らかな弧(破線)を描き、歪みのないトルク特性が得られる。
【0031】
ここで、仮に、高電圧系と低電圧系の各バッテリの充電時の入力トルク(即ち出力電力)の差分を抑制するようにクロック信号CLKのデューティを設定しない場合、図4において、出力電流ILと出力電流IHとの境界(低電圧系充電期間PLと高電圧系充電期間PHとの境界)で電流波形に不連続が生じ、この電流波形に歪みが生じることとなる。
結局、クロック信号CLKのデューティを調節して、発電機ACGの出力電流波形を歪みのない正弦波に近似させることにより、発電機の入力トルクの変動を抑えることができ、騒音や振動の発生を防止することが可能となる。
【0032】
上述のU相と同様に、V相およびW相によるバッテリの充電が行われる。この場合、整流器D2,D3は上述の整流器D1と同様に機能し、電界効果トランジスタQ2,Q3は上述の電界効果トランジスタQ1と同様に機能する。また、整流器D5,D6は上述の整流器D4と同様に機能し、電界効果トランジスタQ5,Q6は上述の電界効果トランジスタQ4と同様に機能する。これら各相について得られるトルクが合成される結果、発電機ACGの入力トルクは、見かけ上、略一定となる。
【0033】
上述の発電機ACGの入力トルクの変動を抑制するための制御が行われる一方、発電機ACGの発電量そのものは、各バッテリの充電状態に応じて界磁コイルLFを流れる界磁電流により制御される。即ち、充電対象のバッテリが満充電状態であれば、充電電力を必要としないため、制御部CTLは、電界効果トランジスタQ7のスイッチングを制御して界磁電流を減少させ、発電量を抑制する。逆に未充電状態であれば、制御部CTLは界磁電流を増加させ、発電量を増やす。
【0034】
上述したように、この実施の形態1に係るバッテリ充電装置によれば、発電機ACGの出力電流の波形歪みに起因する入力トルクの変動を抑制することができる。また、同一サイクル内で高電圧系と低電圧系のバッテリの充電を行うことに加えて、発電機ACGの出力電流波形を正弦波に近似させたので、この発電機ACGの出力電流のリップルを低減させることができる。従って、振動や騒音の発生を抑制しながら、効率よく各バッテリを充電することが可能となる。
【0035】
<実施の形態2>
以下、この発明の実施の形態2を説明する。
この実施の形態2に係るバッテリ充電装置は、基本的には上述の図1に示す実施の形態1と同様の構成を有するが、低電圧系のバッテリBLを先に充電した後に高電圧系の充電を行うものであって、この充電順序の相違によりクロック信号CLKのデューティの設定方法が異なる。
【0036】
以下、クロック信号CLKのデューテイの設定方法について説明する。
基本的には、クロック信号CLKのデューティは、上述の実施の形態1と同様に、発電機ACGの入力トルクの差分を抑えるように設定される。しかしながら、実施の形態1で得られるデューティをこの実施の形態2のデューティとしてそのまま設定すると、以下に説明するように、発電機ACGの出力電流波形に歪みが発生し、これにより入力トルクが変動して上述の種々の問題が生じる。
【0037】
即ち、低電圧系の充電を行った後に、上述の実施の形態1で得られるデューティをそのまま使用して高電圧系の充電を行うと、図5に示すように、低電圧系充電期間PLから高電圧系充電期間PHに移行する際に、低電圧系充電期間PLでの出力電流ILに上乗せされて高電圧系充電時の出力電流IHが出力され、この出力電流IHの最初の電流パルスが過大となる。このため、発電機の出力電流ILと出力電流IHとを合成して得られる出力電流IACGは、この過大な電流成分を含んだものとなり、平均電流IAVEに波形歪みが生じる。この電流に波形歪みが生じると、入力トルクの変動が発生し、騒音や振動が発生する。
【0038】
そこで、この実施の形態2では、この発電機ACGの出力電流の波形歪みに着目し、この波形の歪みを抑制するようにクロック信号CLKのデューティを制御する。以下、図1を援用し、図6に示す波形を参照しながら、クロック信号CLKのデューティの設定方法を説明する。
図6に示す低電圧系充電期間PLにおいて、図1に示す電界効果トランジスタQ1〜Q3がオンとなり、電界効果トランジスタQ4〜Q6がオフとなる。これにより、発電機ACGの出力が低電圧系のバッテリBLに振り分けられ、このバッテリBLが充電される。このとき、発電機ACGの出力電流は正弦波に沿って増加する。
【0039】
次に、図6に示す高電圧系充電期間PHに移行すると、電界効果トランジスタQ1〜Q3がオフとなり、電界効果トランジスタQ4〜Q6が、クロック信号CLKに基づきスイッチング動作して昇圧が行われる。このとき、同図に示すように、クロック信号CLKのデューティは、制御部CTLの制御の下に、高電圧充電期間PHの初期には小さく設定され、その後、徐々に増加される。これにより、低電圧系充電期間PLから高電圧系充電期間PHに移行した直後において、発電機の出力電流IACGの最初の電流パルスの尖塔値が抑制される。従って、図6に示すように、発電機の出力電流IACGの波形が平均化されると、この出力電流IACGが正弦波に近似したものとなる。
よって、この実施の形態2によれば、過大な電流パルスに起因する発電機ACGの出力電流の波形の歪みを抑制し、この波形歪みに起因する騒音や振動の発生を防止することができる。
【0040】
以上、この発明の実施の形態を説明したが、この発明は、上述の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。例えば、上述の実施の形態では、昇圧用の電界効果トランジスタQ4〜Q6をスイッチングさせることにより、発電機ACGの出力電力を調節するものとしたが、発電機ACGの出力電圧を昇圧する必要がなければ、発電機ACGの出力端子と高電圧系のバッテリBHの電極との間に、整流器D4〜D6と直列に電界効果トランジスタQ4〜Q6を接続してもよい。この場合、トランジスタQ4〜Q6をスイッチングさせることによりバッテリに供給される充電電力が断続的に抑制されて発電機ACGの入力トルクが調整される。
【0041】
また、上述の実施の形態では、電界効果トランジスタQ1〜Q3を設けたが、これに限定されることなく、整流器D1〜D3のカソードを共通に接続し、この共通に接続されたカソードとバッテリBLとの間に、電界効果トランジスタQ1〜Q3に対応する一つの電界効果トランジスタを設けるものとしてもよい。
さらに、上述の実施の形態では、整流器D4〜D6を介して発電機ACGの出力を高電圧系のバッテリBHに供給するものとしたが、これに限定されることなく、整流器D4〜D6に代えて、電界効果トランジスタQ1〜Q3に対して相補的に導通制御される電界効果トランジスタを採用してもよい。
さらにまた、上述の実施の形態では、電界効果トランジスタQ1〜Q6としてn型電界効果トランジスタを用いたが、これに限定されることなく、p型電界効果トランジスタを用いて構成することも可能である。
【0042】
さらにまた、上述の実施の形態2では、クロック信号CLKのデューティを徐々に増加するものとしたが、これに限定されることなく、高電圧系充電期間の最初の1クロックのデューティのみを小さく設定するものとしてもよく、発電機ACGの出力電流の波形歪みを有効に抑制する限度において、クロック信号CLKのデューティをどのように設定してもよい。
なお、本発明は、発電機ACGの出力の何れのサイクルで低電圧系と高電圧系の充電を行うかについて特に限定されるものではなく、このバッテリ充電装置が適用されるシステムに応じて適宜取り決めればよい。
【0043】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、以下の効果を得ることができる。
即ち、高電圧系の充電時と低電圧系の充電時とで、発電機の出力電流波形が正弦波に近似するように、高電圧系のバッテリに振り分けられるべき前記発電機の出力を断続させるようにしたので、発電機の出力を高電圧系と低電圧系の各バッテリに振り分ける際に発生する発電機の出力電流波形の歪みを抑制し、この出力電流波形の歪みに起因した騒音や振動の発生を防止することができる。従って、入力トルクの変動に起因する騒音や振動の発生を防止することが可能となる。また、発電機の騒音や振動の発生が防止されるので、この発電機の静粛性や耐久性が向上する。
【0044】
また、前記バッテリ充電装置において、前記第1の充電系として、発電機の出力端子側と第1のバッテリの電極側との間に接続された第1の整流器と、第1の整流器のカソードと前記第1のバッテリの電極との間に設けられた第1の電界効果トランジスタとを備え、前記第2の充電系として、前記発電機の出力端子側と第2のバッテリの電極側との間に接続された第2の整流器を備え、前記スイッチ系として、発電機の出力端子と接地との間に設けられてスイッチングする第2の電界効果トランジスタを備えたので、第2のバッテリに供給される発電機の出力を断続させ、この発電機の入力トルクの変動を抑制するように、その出力電力を調節することが可能となる。
【0045】
さらに、前記バッテリ充電装置において、前記第2の電界効果トランジスタは、第1のバッテリの充電時には発電機の出力の位相変化に従って導通し、第2のバッテリの充電時にはクロック信号に基づき導通するようにしたので、発電機の入力トルクの変動を抑えながら、低電圧系のバッテリと高電圧系のバッテリに発電機の出力を割り振ることが可能となる。
【0046】
さらにまた、前記バッテリ充電装置において、第1及び第2の整流器並びに第1及び第2の電界効果トランジスタを、発電機が発生する多相交流の各相ごとに設けたので、発電機の出力の各相を、独立した充電経路を介してバッテリに供給することができる。従って、充電経路での干渉や各充電経路の電流密度を抑え、充電動作を安定化させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1にかかるバッテリ充電装置の構成を示すブロック図である。
【図2】 この発明の実施の形態1にかかるバッテリ充電装置の全体動作を説明するための波形図である。
【図3】 この発明の実施の形態1にかかるクロック信号のデューティの設定方法を説明するための特性図である。
【図4】 この発明の実施の形態1にかかるバッテリ充電装置の詳細動作を説明するための波形図である。
【図5】 この発明の実施の形態2にかかるバッテリ充電装置の動作の特徴を説明するための参考図である。
【図6】 この発明の実施の形態2にかかるバッテリ充電装置の動作を説明するための波形図である。
【図7】 従来技術にかかるバッテリ充電装置の動作を説明するための波形図である。
【符号の説明】
ACG:発電機
BH:高電圧系のバッテリ
BL:低電圧系のバッテリ
CTL:制御部
CNV:コンバータ
D1〜D7:整流器
LF:界磁コイル
Q1〜Q7:電界効果トランジスタ(n型)

Claims (4)

  1. 交流電力を発生する発電機と、
    前記発電機の出力に同期したタイミングで該発電機の出力を低電圧系の第1のバッテリに振り分けて該第1のバッテリを充電する第1の充電系と、
    前記発電機の出力に同期したタイミングであって前記第1のバッテリを充電するサイクルと同一のサイクル内で前記発電機の出力を高電圧系の第2のバッテリに振り分けて該第2のバッテリを充電する第2の充電系と、
    前記第1のバッテリを充電する期間において、前記発電機の出力電流を前記第1の充電系に出力させ、前記第2のバッテリを充電する期間において、前記発電機の出力電流波形が正弦波に近似するように設定されたデューティを有するクロック信号に基づきスイッチングして前記発電機の出力電流前記第2の充電系に断続して出力させるスイッチ系と、
    前記第1のバッテリを充電する期間において、前記スイッチ系により前記発電機の出力を前記第1の充電系に通電させる設定をし、前記第2のバッテリを充電する期間において、前記スイッチ系のスイッチングを制御する前記クロック信号のデューティを設定することにより、前記第2のバッテリの充電時と前記第1のバッテリの充電時との前記発電機の出力電流波形を正弦波に近似させて前記発電機の入力トルクの変動を抑える制御部と
    を備えたことを特徴とするバッテリ充電装置。
  2. 前記第1の充電系として、
    アノードが前記発電機の出力端子側に接続されると共にカソードが前記第1のバッテリの電極側に接続された第1の整流器と、
    前記第1の整流器のカソードと前記第1のバッテリの電極との間に設けられ、前記第1のバッテリを充電すべきタイミングで導通状態とされると共に前記第2のバッテリを充電すべきタイミングで非導通状態とされる第1の電界効果トランジスタとを備え、
    前記第2の充電系として、アノードが前記発電機の出力端子側に接続されると共にカソードが前記第2のバッテリの電極側に接続された第2の整流器を備え、
    前記スイッチ系として、
    前記発電機の出力端子と接地との間に設けられ、前記発電機の出力電流波形が正弦波に近似するように設定されたデューティを有するクロック信号に基づきスイッチングして前記発電機の出力を断続させる第2の電界効果トランジスタを備えたことを特徴とする請求項1に記載されたバッテリ充電装置。
  3. 前記第2の電界効果トランジスタは、前記第1のバッテリの充電時には前記発電機の出力位相の変化に従って導通制御され、前記第2のバッテリの充電時には前記クロック信号に基づき導通制御されることを特徴とする請求項2に記載されたバッテリ充電装置。
  4. 前記発電機は、多相交流を発生するものであって、前記第1及び第2の整流器並びに第1及び第2の電界効果トランジスタは、前記多相交流の各相ごとに設けられたことを特徴とする請求項2または3の何れかに記載されたバッテリ充電装置。
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