JP4306945B2 - バッテリ充電装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばハイブリッド車に搭載される高電圧系のバッテリと低電圧系のバッテリとを充電するためのバッテリ充電装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境保護や省エネルギーなどの観点から、エンジンと電気モータを組み合わせた動力システムを搭載するハイブリッド車が注目されている。このハイブリッド車では、加速時には電気モータによってエンジンの出力を補助し、減速時には減速回生によってバッテリ等への充電を行う等、様々な制御を行うことにより、エンジン出力の補助を効率よく行うようになっている。このハイブリッド車には、走行用の電気モータに電気エネルギーを供給するための高電圧系(例えば36V)のバッテリと、各種補機類の電源を供給するための低電圧系(例えば12V)のバッテリが搭載されており、これら電圧仕様が異なるバッテリの双方を充電するためのバッテリ充電装置が必要とされている。
【0003】
以下、この種の従来技術に係るバッテリ充電装置について、後述する図1を援用して説明する。
なお、同図に示す電界効果トランジスタQ4〜Q6は、後述する本願発明に係るバッテリ充電装置の特徴の一部をなすものであって、以下に説明する従来装置では、この電界効果トランジスタに相当するものとして整流器(ダイオード)が用いられ、この整流器は、整流器D1〜D3または整流器D4〜D6と共に全波整流器を形成している。
【0004】
同図において、発電機ACGの交流出力は、整流器D1〜D3と電界効果トランジスタQ1〜Q3からなる系(オープンレギュレータ)を介して低電圧系のバッテリBLに振り分けられると共に、整流器D4〜D6を介して高電圧系のバッテリBHに振り分けられる。この発電機ACGの交流出力の振り分けは、発電機ACGの交流出力(U相,V相,W相)の各位相に同期して、低電圧側の系に設けられた電界効果トランジスタQ1〜Q3の導通をそれぞれ制御することにより行われる。即ち、図4に示すように、例えば、発電機ACGが発生するU相の電圧が高くなる期間P1において、電界効果トランジスタQ1がオンして導通状態となり、整流器D1及び電界効果トランジスタQ1を介してU相の出力が低圧系のバッテリBLに供給される。
【0005】
このとき、U相の電圧は、低電圧系のバッテリBLの端子電圧に引かれて低下するが、高電圧系側に設けられた整流器D4が逆バイアス状態とされるので、発電機の出力電圧が降下しても高電圧系のバッテリBHは放電されない。この後、期間P2においてU相の位相が反転して出力電圧が低下すると、整流器D1が逆バイアス状態となる。このとき、従来装置では、電界効果トランジスタQ4に対応する図示しない整流器を介してバッテリBLの充電が行われる。
【0006】
さらに、この後、U相の電圧が高くなる期間P3において、電界効果トランジスタQ1がオフして非導通状態となる。これにより、低電圧系のバッテリBLに対する電力の供給が遮断され、発電機ACGから出力されるU相の電圧が上昇する。この結果、整流器D4が順バイアス状態とされ、この整流器D4を介して高電圧系のバッテリBHに発電機の出力電力が供給される。
同様に、他のV相およびW相の出力による充電動作が行われる。
【0007】
このように、低電圧側の電界効果トランジスタQ1〜Q3を制御することにより、低電圧系と高電圧系とが相補的に充電され、1台の発電機を用いて双方のバッテリを充電することが可能となっている。
なお、発電機のどの位相の出力を低電圧系および高電圧系の何れの充電に振り分けるかについては、これらのバッテリの充電状態に応じて適宜決定される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、充電時に発電機の入力軸を回転駆動するために必要とされるトルク(以下、「入力トルク」と称す)は、発電機の出力電圧と出力電流とにより決定され、発電機の入力トルクと充電に費やされる電力との間には相関関係が存在する。即ち、発電機の出力電圧が一定であれば、充電電流が大きいほど、発電機の入力トルクが大きく、発電機の出力電流が一定であれば、充電電圧が大きいほど、発電機の入力トルクが大きくなる。この入力トルクに抗し得る回転力(例えばエンジンの回転出力)を外部から発電機の入力軸に与えることにより、電気エネルギーである電力が発生する。従って、理想的には、発電機の入力軸に与えられる回転力が一定であれば、出力電圧と出力電流とが出力電力を一定とするように決定されるべきである。
【0009】
しかしながら、現実には、発電機に与えられる回転力が一定であっても、負荷の変動により出力電圧が変わると、発電機の特性上、出力電力を一定とするように出力電流が応答せず、出力電力も変化する傾向がある。このため、図4に示すように、低電圧側のバッテリを充電している期間P1と、高電圧側のバッテリを充電している期間P3とでは、入力トルクTの大きさが異なり、発電機の出力を各バッテリに振り分ける際に入力トルクTに変動が生じる。これにより、発電機の騒音や振動が発生し、静粛性や耐久性が阻害されることとなる。
【0010】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、発電機の出力を高電圧系と低電圧系との各バッテリに振り分けることに伴う発電機の入力トルクの変動を有効に抑制することができ、この入力トルクの変動に起因する騒音や振動の発生を防止することが可能なバッテリ充電装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、この発明は以下の構成を有する。
すなわち、本発明は、交流電力を発生する発電機(例えば後述する発電機ACGに相当する構成要素)と、前記発電機の出力に同期したタイミングで該発電機の出力を低電圧系の第1のバッテリに振り分けて該第1のバッテリを充電する第1の充電系(例えば後述する整流器D1〜D3および電界効果トランジスタQ1〜Q3に相当する構成要素)と、前記発電機の出力に同期したタイミングであって前記第1のバッテリを充電するタイミングとは異なるタイミングで前記発電機の出力を高電圧系の第2のバッテリに振り分けて該第2のバッテリを充電する第2の充電系(例えば後述する整流器D4〜D6に相当する構成要素)と、前記発電機の出力電力の変化を抑制するように、前記第2のバッテリに振り分けられるべき前記発電機の出力を断続させるスイッチ系(例えば後述する電界効果トランジスタQ4〜Q6に相当する構成要素)と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、スイッチ系により発電機の出力を断続させることにより、この発電機の出力電圧を高電圧系の第2のバッテリを充電可能な電圧に維持したまま、発電機の出力電力が変化する。従って、例えば断続の割合を適切に設定すれば、発電機の入力トルクを制御することができ、低電圧側のバッテリを充電している状態での入力トルクと、高電圧側のバッテリを充電している状態での入力トルクとを等しくすることができる。これにより、高電圧系のバッテリと低電圧系のバッテリとに発電機の出力を振り分ける際に発生する入力トルクの変動を有効に抑制し、この入力トルクの変動に起因する騒音や振動の発生を防止することが可能となる。なお、前記スイッチ系のスイッチング動作により、発電機の出力を昇圧するものとしてもよい。
【0013】
また、上記バッテリ充電装置において、前記第1の充電系として、アノードが前記発電機の出力端子側に接続されると共にカソードが前記第1のバッテリの電極側に接続された第1の整流器(例えば後述する整流器D1〜D3に相当する構成要素)と、前記第1の整流器のカソードと前記第1のバッテリの電極との間に設けられ、前記第1のバッテリを充電すべきタイミングで導通状態とされると共に前記第2のバッテリを充電すべきタイミングで非導通状態とされる第1の電界効果トランジスタ(例えば後述する電界効果トランジスタQ1〜Q3に相当する構成要素)とを備え、前記第2の充電系として、アノードが前記発電機の出力端子側に接続されると共にカソードが前記第2のバッテリの電極側に接続された第2の整流器(例えば後述する整流器D4〜D6に相当する構成要素)を備え、前記スイッチ系として、前記発電機の出力端子と接地との間に設けられ、前記発電機の出力電力の変化を抑制するように設定されたデューティを有するクロック信号に基づきスイッチングして前記発電機の出力を断続させる第2の電界効果トランジスタ(例えば後述する電界効果トランジスタQ4〜Q6に相当する構成要素)を備えたことを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、第1の電界効果トランジスタがオンして導通状態になると、第1の整流器が順バイアス状態とされ、この第1の整流器を介して発電機の出力が低電圧系の第1のバッテリに振り分けられ、この第1のバッテリが充電される。これに対し、第1の電界効果トランジスタがオフして非導通状態となると、発電機の出力電圧が上昇する結果、第2の整流器が順バイアス状態とされ、この第2の整流器を介して発電機の出力が高電圧系の第2のバッテリに振り分けられ、この第2のバッテリが充電される。このとき、第2の電界効果トランジスタは、クロック信号に基づきスイッチングして、第2のバッテリに供給される発電機の出力を断続させる。これにより、この発電機の入力トルクの変動を抑制するように出力電力を調節する。
【0015】
さらに、上記バッテリ充電装置において、前記第2の電界効果トランジスタは、前記第1のバッテリの充電時には前記発電機の出力の位相変化に従って導通制御され、前記第2のバッテリの充電時には前記クロック信号に基づき導通制御されることを特徴とする(例えば後述する制御部CTLの機能に相当する要素)。
この構成によれば、第1のバッテリの充電時には、第1の整流器と第2の電界効果トランジスタとが全波整流器を形成し、発電機の出力を全波整流して第1のバッテリに供給する。また、第2のバッテリの充電時には、第2の整流器と第2の電界効果トランジスタとが全波整流器を形成すると共に、第2の電界効果トランジスタが、発電機の出力電流を正弦波に近似させるためのスイッチ系として機能する。これにより、発電機の入力トルクの変動を抑えながら、低電圧系のバッテリと高電圧系のバッテリに発電機の出力を割り振ることが可能となる。
【0016】
さらにまた、上記バッテリ充電装置において、前記発電機は、多相交流(例えば後述するU相、V相、W相の3相交流に相当する要素)を発生するものであって、前記第1及び第2の整流器並びに第1及び第2の電界効果トランジスタは、前記多相交流の各相ごとに設けられたことを特徴とする。
この構成によれば、発電機の出力の各相を、独立した充電経路を介してバッテリに供給する。従って、充電経路での干渉や各充電経路の電流密度を抑えることができ、充電動作を安定化させることが可能となる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
図1に、本発明の実施の形態に係るバッテリ充電装置の構成を示す。同図において、ACGは、3相交流(U相,V相,W相)を発生する発電機、LFは発電機の界磁コイル、CNVは、発電機の交流出力を直流に変換して充電対象の低電圧系(例えば12[V])のバッテリBLおよび高電圧系(例えば42[V])のバッテリBHに振り分けるコンバータである。
【0018】
また、コンバータCNVにおいて、D1〜D3は、発電機ACGの交流出力を整流して低電圧側のバッテリBLに供給する整流器、Q1〜Q3は、発電機ACGの出力の振り分け先を制御する電界効果トランジスタ(n型)であり、これら整流器D1〜D3および電界効果トランジスタQ1〜Q3は、低電圧系のバッテリBLを充電するための第1の充電系を構成する。
D4〜D6は、発電機ACGの交流出力を整流して高電圧側のバッテリBHに供給する整流器であり、高電圧系のバッテリBHを充電するための第2の充電系を構成する。
【0019】
Q4〜Q6は、発電機ACGの出力電圧を昇圧するための電界効果トランジスタ(n型)であって、この発電機の出力電圧を断続(チョッピング:chopping)するスイッチ系を構成する。この電界効果トランジスタQ4〜Q6は、上述の低電圧系側の整流器D1〜D3または高電圧系側の整流器D4〜D6と共に全波整流器を形成する。CTLは、電界効果トランジスタQ1〜Q6の導通を制御する制御部である。D7はダイオード、Q7は電界効果トランジスタであり、これらは、制御部CTLの制御の下に界磁コイルLFに流れる電流量を調整するためのものである。
このように、充電経路をなす各整流器および各電界効果トランジスタは、発電機ACGが発生するU相,V相,W相の各相ごとに設けられている。
【0020】
さらに具体的に、各構成要素の接続関係を説明する。
整流器D1〜D3のアノードは、発電機ACGの出力端子に接続される。電界効果トランジスタQ1〜Q3は、整流器D1〜D3のカソードとバッテリBLの正極との間に設けられ、バッテリBLを充電すべきタイミングで導通状態とされると共にバッテリBHを充電すべきタイミングで非導通状態とされる。整流器D4〜D6のアノードは、発電機ACGの出力端子に接続され、そのカソードはバッテリBHの正極に接続される。電界効果トランジスタQ4〜Q6は、発電機ACGの出力端子と接地との間に設けられる。この電界効果トランジスタQ4〜Q6は、制御部CTLからのクロック信号CLKに基づきスイッチングして発電機ACGの出力を断続させるものとして機能する。このクロック信号CLKのデューティは、出力の振り分けに伴う発電機ACGの出力電力の変化を抑制するように予め設定されている。
【0021】
以下、図2を参照して、この実施の形態に係るバッテリ充電装置の動作を説明する。
なお、この実施の形態では、発電機ACGは、昇圧するまでもなく低電圧系のバッテリBLを充電可能な電圧を発生し得るものとする。また、この実施の形態に係るバッテリ充電装置の動作は、U相〜W相の各相について同様であるから、U相に着目して説明することとする。
【0022】
まず、低電圧系のバッテリBLを充電する場合を説明する。
制御部CTLは、発電機ACGのU相〜W相について各位相を検出し、この位相に同期したタイミングに従って電界効果トランジスタQ1〜Q3の導通をそれぞれ制御する。具体的には、制御部CTLは、U相の電圧が高くなる期間P1の始点で電界効果トランジスタQ1をオンさせる。電界効果トランジスタQ1がオンすると、整流器D1を介して発電機ACGのU相の出力が低電圧系のバッテリBLの正極に供給される。これにより、発電機ACGの出力に同期したタイミングで、この発電機ACGの出力が低電圧系のバッテリBLに振り分けられ、このバッテリが充電される。
【0023】
この後、期間P2において発電機のU相の位相が切り替わって電圧が低下すると、制御部CTLは、電界効果トランジスタQ4をオンさせる。ここで、バッテリBLの負極と電界効果トランジスタQ4のソースは共にグランドを介して接続されているから、発電機ACGは、全波整流器を形成する電界効果トランジスタQ4を介してバッテリBLを充電する。このように、電界効果トランジスタQ4を用いて全波整流器を形成し、このトランジスタの導通を発電機の出力の位相変化に従って制御することにより、整流器のみから構成される従来の全波整流器に比較して、電界効果トランジスタQ4での電圧降下が小さい分だけ充電効率が改善される。
このように、電界効果トランジスタはQ4は、低電圧系のバッテリBLの充電時には、発電機ACGの出力位相の変化に従って導通制御される。
【0024】
次に、高電圧系のバッテリBHを充電する場合の動作を説明する。
制御部CTLは、発電機ACGのU相の電圧が高くなる期間P3の始点で電界効果トランジスタQ1をオフさせると共に、電界効果トランジスタQ4のゲートに後述する所定のデューティを有するクロック信号CLKを印加し、この電界効果トランジスタQ4をスイッチング動作させる。これにより、発電機ACGの出力電圧が昇圧されて高電圧系のバッテリBHに供給され、このバッテリBHが充電される。
【0025】
即ち、電界効果トランジスタQ4がオンの期間、発電機ACGの電機子コイルに電流が流れ、この電機子コイルに電気エネルギーが蓄積される。この期間に蓄えられた電気エネルギーは、電界効果トランジスタQ4がオフの期間に発電機ACGが新たに発生する電気エネルギーに重畳して放出され、発電機ACGの出力電圧が昇圧される。この結果、整流器D4が順バイアス状態とされ、この整流器D4を介して発電機ACGのU相の出力が高電圧系のバッテリBHの正極に供給される。このようにして、発電機ACGの出力に同期したタイミングであって上述の低電圧系のバッテリBLを充電するタイミングとは異なるタイミングで、発電機ACGの出力がバッテリBHの充電に振り分けられる。
【0026】
また、スイッチング制御用のクロック信号CLKに基づき電界効果トランジスタQ4がスイッチングすると、発電機ACGの出力電圧が断続し、いわゆるチョッピング(chopping)が行われる。このクロック信号CLKのデューティを調節することにより、後述するように、発電機ACGの出力電力を調節し、発電機ACGの入力トルクTの変動を小さく抑えることができる。なお、この実施の形態では、クロック信号CLKのデューティとは、このクロック信号CLKの1サイクルにおいて、電界効果トランジスタQ4(Q5,Q6)をオフ状態とするパルス幅が占める比率を意味するものとする。従って、このクロック信号CLKは、昇圧された発電機ACGの出力パルスのデューティを与える。この実施の形態では、クロック信号CLKのデューティと発電機ACGの出力のデューテイとは、同義語であるものとする。ただし、クロック信号CLKのデューティと発電機ACGの出力のデューテイとは同一である必要はなく、これらのデューティの間に一定の関係があれば足りる。
このように、高電圧系のバッテリBHの充電時には、電界効果トランジスタQ4は、制御部CTLからのクロック信号CLKに基づき導通制御され、発電機ACGの出力電圧を昇圧すると共に、この発電機の入力トルクの変動を抑制するように機能する。
【0027】
以下、図3を参照して、スイッチング制御用のクロック信号CLKのデューテイにより発電機ACGの入力トルクの変動が抑制される原理を説明する。
前述したように、発電機ACGの入力トルクはバッテリBL,BHの充電に要する電力に依存する。逆に言えば、高電圧系および低電圧系の充電に必要とされる電圧をそれぞれ確保することを条件に発電機ACGの出力電力(充電電力)の変化を小さく抑えることができれば、発電機の出力を振り分ける際の入力トルクの変動を小さくすることができ、しかも双方のバッテリの充電に対応することができる。
【0028】
ここで、図3に示すように、高電圧系のバッテリBHを充電している状態での入力トルクTは、電界効果トランジスタQ4のスイッチングを制御するクロック信号CLKのデューティDRが大きくなるにつれて増加する傾向を示す。これに対し、低電圧系のバッテリBLを充電している状態では、クロック信号CLKによる電界効果トランジスタQ4のスイッチングは行われないので、このときの入力トルクTは、クロック信号CLKのデューティDRに依存せずに一定である。従って、高電圧系の充電時の特性線と低電圧系の充電時の特性線との交点Aが存在し、この交点Aでは、高電圧系の充電時と低電圧系の充電時とで入力トルクTが等しくなる。
【0029】
そこで、クロック信号CLKのデューティDRを上述の交点AでのデューティDR(A)に設定し、この状態で発電機ACGの出力電圧を断続させれば、高電圧系の充電時と低電圧系の充電時とで発電機ACGの出力電力が略等しくなり、従って入力トルクTの差分dが小さくなる。よって、発電機ACGの出力を低電圧系のバッテリBLと高電圧系のバッテリBHとに振り分ける際に発生する入力トルクTの変動が抑制され、この入力トルクTの変動に起因する発電機の振動や騒音の発生が防止されることとなる。このように、電界効果トランジスタQ4は、発電機ACGの出力電力(即ち発電機の入力トルク)の変動を抑制するように、バッテリBHに振り分けられるべき発電機ACGの出力を断続させる。
【0030】
上述のU相と同様に、V相およびW相によるバッテリの充電が行われる。この場合、整流器D2,D3は上述の整流器D1と同様に機能し、電界効果トランジスタQ2,Q3は上述の電界効果トランジスタQ1と同様に機能する。また、整流器D5,D6は上述の整流器D4と同様に機能し、電界効果トランジスタQ5,Q6は上述の電界効果トランジスタQ4と同様に機能する。
【0031】
上述のように、発電機ACGの入力トルクの変動を抑制しながら、低電圧系のバッテリBLと高電圧系のバッテリBHに対して発電機ACGの出力が振り分けられる一方、発電機ACGの発電量そのものは、各バッテリの充電状態に応じて界磁コイルLFを流れる界磁電流により制御される。すなわち、充電対象のバッテリが満充電状態であれば、充電電力を必要としないため、制御部CTLは、電界効果トランジスタQ7のスイッチングを制御して界磁電流を減少させ、発電量を抑制する。逆に未充電状態であれば、制御部CTLは界磁電流を増加させ、発電量を増やす。このように、この実施の形態に係るバッテリ充電装置によれば、入力トルクの変動を抑制しながら、各バッテリの充電状態に応じて発電機ACGの発電量が適切に制御される。従って、入力トルクの変動に起因する振動や騒音の発生を抑制しながら、効率よく各バッテリを充電することが可能となる。
【0032】
以上、この発明の実施の形態を説明したが、この発明は、この実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。例えば、上述の実施の形態では、昇圧用の電界効果トランジスタQ4〜Q6をスイッチングさせることにより、発電機ACGの出力電力を調節するものとしたが、発電機ACGの出力電圧を昇圧する必要がなければ、発電機ACGの出力端子と高電圧系のバッテリBHの電極との間に、整流器D4〜D6と直列に電界効果トランジスタQ4〜Q6を接続してもよい。この場合、トランジスタQ4〜Q6をスイッチングさせることによりバッテリに供給される充電電力が断続的に抑制されて発電機ACGの入力トルクが調整される。
【0033】
また、上述の実施の形態では、電界効果トランジスタQ1〜Q3を設けたが、これに限定されることなく、整流器D1〜D3のカソードを共通に接続し、この共通に接続されたカソードとバッテリBLとの間に、電界効果トランジスタQ1〜Q3に対応する一つの電界効果トランジスタを設けるものとしてもよい。
さらに、上述の実施の形態では、整流器D4〜D6を介して発電機ACGの出力を高電圧系のバッテリBHに供給するものとしたが、これに限定されることなく、整流器D4〜D6に代えて、電界効果トランジスタQ1〜Q3に対して相補的に導通制御される電界効果トランジスタを採用してもよい。
さらにまた、上述の実施の形態では、電界効果トランジスタQ1〜Q6としてn型電界効果トランジスタを用いたが、これに限定されることなく、p型電界効果トランジスタを用いて構成することも可能である。
なお、本発明は、発電機ACGの出力の何れのサイクルを低電圧系および高電圧系の何れの充電に振り分けるかについては、特に限定されるものではなく、このバッテリ充電装置が適用されるシステムに応じて適宜取り決めればよい。
【0034】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、以下の効果を得ることができる。
即ち、高電圧系の充電時と低電圧系の充電時とで、発電機の出力電力の変化を抑制するように、高電圧系のバッテリに振り分けられるべき前記発電機の出力を断続させるようにしたので、発電機の出力を高電圧系と低電圧系との各バッテリに振り分けることに伴う発電機の入力トルクの変動を有効に抑制することができる。従って、入力トルクの変動に起因する騒音や振動の発生を防止することが可能となる。また、発電機の騒音や振動の発生が防止されるので、この発電機の静粛性や耐久性が向上する。
【0035】
また、上記バッテリ充電装置において、前記第1の充電系として、発電機の出力端子側と第1のバッテリの電極側との間に接続された第1の整流器と、第1の整流器のカソードと前記第1のバッテリの電極との間に設けられた第1の電界効果トランジスタとを備え、前記第2の充電系として、前記発電機の出力端子側と第2のバッテリの電極側との間に接続された第2の整流器を備え、前記スイッチ系として、発電機の出力端子と接地との間に設けられてスイッチングする第2の電界効果トランジスタを備えたので、第2のバッテリに供給される発電機の出力を断続させ、この発電機の入力トルクの変動を抑制するように、その出力電力を調節することが可能となる。
【0036】
さらに、上記バッテリ充電装置において、前記第2の電界効果トランジスタは、第1のバッテリの充電時には発電機の出力の位相変化に従って導通し、第2のバッテリの充電時にはクロック信号に基づき導通するようにしたので、発電機の入力トルクの変動を抑えながら、低電圧系のバッテリと高電圧系のバッテリに発電機の出力を割り振ることが可能となる。
【0037】
さらにまた、上記バッテリ充電装置において、前記発電機は、多相交流(例えば後述するU相、V相、W相の3相交流に相当する要素)を発生するものであって、前記第1及び第2の整流器並びに第1及び第2の電界効果トランジスタを、前記多相交流の各相ごとに設けたので、発電機の出力の各相を、独立した充電経路を介してバッテリに供給することができる。従って、充電経路での干渉や各充電経路の電流密度を抑え、充電動作を安定化させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態にかかるバッテリ充電装置の構成を示すブロック図である。
【図2】 この発明の実施の形態にかかるバッテリ充電装置の動作を説明するための波形図である。
【図3】 この発明の実施の形態にかかるバッテリ充電装置の動作原理を説明するための特性図である。
【図4】 従来技術にかかるバッテリ充電装置の動作を説明するための波形図である。
【符号の説明】
ACG:発電機
BH:高電圧系のバッテリ
BL:低電圧系のバッテリ
CTL:制御部
CNV:コンバータ
D1〜D7:整流器
LF:界磁コイル
Q1〜Q7:電界効果トランジスタ(n型)

Claims (4)

  1. 交流電力を発生する発電機と、
    前記発電機の出力に同期したタイミングで該発電機の出力を低電圧系の第1のバッテリに振り分けて該第1のバッテリを充電する第1の充電系と、
    前記発電機の出力に同期したタイミングであって前記第1のバッテリを充電するタイミングとは異なるタイミングで前記発電機の出力を高電圧系の第2のバッテリに振り分けて該第2のバッテリを充電する第2の充電系と、
    前記発電機の出力電力の変化を抑制するように設定されたデューティを有するクロック信号に基づきスイッチングして、前記第2のバッテリに振り分けられるべき前記発電機の出力を断続させるスイッチ系と、
    前記スイッチ系のスイッチングを制御するクロック信号のデューティを設定することにより、前記第2のバッテリの充電時の前記発電機の出力電力を制御して、前記第2のバッテリの充電時と前記第1のバッテリの充電時との記発電機の入力トルクの変動を抑えるように制御する制御部と、
    を備えたことを特徴とするバッテリ充電装置。
  2. 前記第1の充電系として、
    アノードが前記発電機の出力端子側に接続されると共にカソードが前記第1のバッテリの電極側に接続された第1の整流器と、
    前記第1の整流器のカソードと前記第1のバッテリの電極との間に設けられ、前記第1のバッテリを充電すべきタイミングで導通状態とされると共に前記第2のバッテリを充電すべきタイミングで非導通状態とされる第1の電界効果トランジスタとを備え、
    前記第2の充電系として、アノードが前記発電機の出力端子側に接続されると共にカソードが前記第2のバッテリの電極側に接続された第2の整流器を備え、
    前記スイッチ系として、
    前記発電機の出力端子と接地との間に設けられ、前記発電機の出力電力の変化を抑制するように設定されたデューティを有するクロック信号に基づきスイッチングして前記発電機の出力を断続させる第2の電界効果トランジスタを備えたことを特徴とする請求項1に記載されたバッテリ充電装置。
  3. 前記第2の電界効果トランジスタは、
    前記第1のバッテリの充電時には前記発電機の出力位相の変化に従って導通制御され、前記第2のバッテリの充電時には前記クロック信号に基づき導通制御されることを特徴とする請求項2に記載されたバッテリ充電装置。
  4. 前記発電機は、多相交流を発生するものであって、前記第1及び第2の整流器並びに第1及び第2の電界効果トランジスタは、前記多相交流の各相ごとに設けられたことを特徴とする請求項2または3に記載されたバッテリ充電装置。
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