JP4305645B2 - 板成形のシミュレーション方法 - Google Patents
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そこで、板成形をシェル要素(シミュレーション解析では、構造体の大きさと材料の厚さとの関係から材料の厚みを無視した板状で解析できる場合、構造体を薄板状に分割するが、これをシェル要素と呼ぶ。)でモデル化し、かつ、金型のたわみをソリッド要素(シミュレーション解析では、構造体をたて・よこ・高さ方向に細かく分割し、各直方体の力学的変化を表現し解析するが、これをソリッド要素と呼ぶ。)でモデル化し、同時に解く方法が考えられている(例えば、非特許文献1参照。)。
また、同様の課題を、静的溶解法により解決する手法も発明されている(例えば、非特許文献2参照。)。
ここで、動的陽解法とは、衝突、振動のように動的な問題を扱う為の手法で、動的な釣り合いを加速度の項を含んだ仮想仕事の原理式を用いて解く手法である。この動的陽解法は、時間増分ステップ(有限要素シミュレーションにおいて、金型を少しづつ進めること。)毎の計算が速い為、プレス成形シミュレーションに適用され得るものである。
しかし、欠点として、解が時間とともに変動している為、静的釣り合いを解くスプリングバックの計算には向いていないという特徴がある。しかも、動的陽解法による場合には、板成形で重要な金型ダイアール部分の有限要素を細かく再現する必要があり、この金型ダイアール部分の有限要素の大きさを、素材(板)の有限要素の、1/10〜1/20以下のサイズにせざるを得ない。すると、動的陽解法の特徴から、時間増分ステップが剛体を除く全モデルの要素の最少サイズ(有限要素の有効長さ)に比例することから、剛体と仮定した場合の金型モデルと比較し、時間増分ステップが極端に小さくなってしまう。さらに、膨大な数の金型のソリッド要素の計算が必要となることから、例えば、自動車部品の車体パネル等の大型のプレス製品を対照とする場合には、非現実的な計算時間となってしまい、実用に耐えないシミュレーション方法となってしまう。
そして、当該たわみ分布を、動的陽解法により板成形シミュレーションを行う際の金型表面の節点に対し強制変位条件として与えて、当該板成形シミュレーションを行うステップにおいて、正確に求めたたわみ分布を考慮した板成形シミュレーションを行う。
さらに、それによって得られる成形荷重が所望の製品形状を得るために必要となる目標の成形荷重と一致するまで、前記金型のたわみ分布を変えることなく、金型全体の変位量を変えるステップにおいて、成形荷重の目標値と計算値との比較、検証を行い、理想的な成形荷重条件下における板成形シミュレーションを行うことで、板成形品の形状をシミュレーションすることができる。
そして、当該たわみ相当分を、動的陽解法により板成形シミュレーションを行う際の前記しわ抑え荷重を与える部分の表面の節点に対し強制変位条件として与えて、当該板成形シミュレーションを行うステップにおいて、正確に求めたたわみ分布を考慮した、板成形シミュレーションを行うものである。ここで、金型の前記しわ抑え荷重を与える部分を除いた部分を剛体と仮定していることから、成形荷重の目標値と計算値との比較、検証は不要である。
本発明の実施の形態では、図1の(a)〜(c)に示すステップによって、プレス成形中の金型たわみ分布を得るものである。具体的には、次のようになる。
(a)ステップ:金型を剛体と仮定して金型表面のみシェル要素としてモデル化し、動的陽解法により板成形シミュレーションを行う。
(b)ステップ:後の(c)ステップで行う、静的陰解法による金型剛性シミュレーションのために、金型を弾性体と仮定してソリッド要素としてモデル化し、当該モデルの節点位置に、(a)ステップの板成形シミュレーションの際に求めた金型メッシュの節点反力を内・外挿(当てはめ)する。
(c)ステップ:実際に、静的陰解法による金型剛性シミュレーションを行う。
(d−1)ステップ:(a)〜(c)ステップを一例とするシミュレーション方法により求めた、金型のたわみ分布を、動的陽解法により板成形シミュレーションを行う際の、金型表面の節点に対し強制変位条件として与える(板成形用メッシュにマッピングする。)。このときの強制変位の量は、自動車パネル用プレス成形金型の場合には、通常、0.3〜。4mm程度である。
(d−2)ステップ:実際に、動的陽解法によって板成形シミュレーションを行う。
(d−4)ステップ:(d−3)ステップで計算値Cが目標の成形荷重Tと一致したことを確認した時点で、プレス成形中の製品形状のシミュレーション結果を出力する。出力として得られるものは、例えば、プレス成形品の板厚分布や、スプリングバック量等が挙げられる。これらの出力値は、プレス成形中の金型たわみが考慮された、高精度なものとなる。
(e―2)ステップ:金型の前記しわ抑え荷重を与える部分を除いた部分(シングルアクションプレスの場合は上型が該当し、ダブルアクションプレスの場合には、上下型が該当する。)を剛体と仮定して、所望の製品形状を得るために必要となる目標の成形荷重を与え、当該板成形シミュレーションを行う。この場合には、金型の前記しわ抑え荷重を与える部分を除いた部分を剛体と仮定していることから、成形荷重の目標値と計算値とは必ず一致するので、図2の(d−2)、(d−3)ステップのごとき成形荷重のチェックは不要である。
(e―3)ステップ:プレス成形中の製品形状のシミュレーション結果を出力する。出力として得られるものは、図2の(d−4)ステップと同様である。
続く(b)ステップでは、(c)ステップで行う静的陰解法による金型剛性シミュレーションのために、金型を弾性体と仮定してソリッド要素としてモデル化し、当該モデルの節点位置に、前記板成形シミュレーションの際に求めた金型メッシュの節点反力を内・外挿する。
すなわち、動的陽解法による板成形シミュレーションと、静的陰解法による金型剛性シミュレーションとでは、各要素を構成する節点位置が自ずと異なってくることから、(a)ステップの板成形シミュレーションによって得られた板成形品のメッシュを構成する節点毎の反力(節点反力)を、弾性体と仮定してソリッド要素としてモデル化した金型の、各節点位置に内・外挿(当てはめ)するものである。なお、当該内・外挿作業は、シミュレーションにおける一般的な処理手順によって行うことができる。
ここで、静的陰解法が、有限要素法で時間増分ステップの終わりに応力の釣り合いを満たすように繰り返し計算をする時間積分法であることから、時間増分毎の計算結果を正確に得ることが可能となる。また、成形中の板材と金型各部との関係は、互いに常時接触しているか又は互いに常時離間している条件下にあると考えて良いことから、1の時間増分ステップ中、金型と板との接触状態が変化してしまうような場合に、釣り合い状態へ計算が収束しないといった、静的陰解法特有の不具合も生じない。
そして、動的陽解法に比べ遥かに少ない、静的陰解法の時間増分ステップ毎の解を、静的陰解法の特徴として正確に得ることにより、プレス成形中の金型たわみ分布を高精度かつ効率的に解くことができる。
また、プレス成形中の金型たわみ分布を求める手法としては、図1に示すシミュレーション方法に限らず、次に示す測定装置および測定方法によることも可能である。
そして、変位量検出手段2、3、4は、何れも渦電流センサによって構成されている。このうち、変位量検出手段2は、下型7に対しスライドガイド8を介して上下方向に移動可能に支持されたクッションリング9と、下型7に対し固定されたポンチ10との間の、水平方向の距離を測定するものである。そして、変位量検出手段2に係る渦電流センサは、ポンチ10の適当な鉛直面10aを感知面としており、渦電流センサの本体は、プレス成形中も鉛直面10aに対向する姿勢を維持するように、ブラケットを介してクッションリング9に強固に固定されている。
さらに、変位量検出手段4は、上型11の適当な鉛直端面11bと、下型7の適当な鉛直面7aとの変位量を測定するものである。図示の例では、鉛直面7aは、下型7に固定された部材12(図5では、図示の都合上、金型7と分離したように図示されている。)に支持された、板状部品13の表面が、感知面としての鉛直面7aとして選択されている。また、変位量検出手段4に係る渦電流センサの本体は、プレス成形中も鉛直面7aに対向する姿勢を維持するように、ブラケットを介して上型の鉛直端面11aに強固に固定されている。
これらの変位量検出手段2、3、4に用いられる渦電流センサは、測定範囲が5mm程度、分解能が2μm程度であり、上記各部位の変位量の精密測定に適している。また、渦電流センサはφ20mm×20mm程度の小型のセンサであるため、金型内部に装着する上でも適している。
なお、渦電流センサと同様の性能を有し、かつ、プレス成形中の測定結果を連続して得ることができるように、電圧などの出力を得られるセンサであれば、他の非接触式センサ等を用いることも可能である。
また、荷重検出手段6は、ロードセルによって構成されており、ポンチ荷重を測定するものである。ロードセルの本体部分は下型7に固定され、下型7とは別体のポンチ10を下方から支えている。さらに、ポンチ10をスライドプレート類似のガイドによって支持することにより、荷重を受けた場合のポンチズレを防止している。
そして、変位量検出手段2、3、4、5および荷重検出手段6の測定結果(測定電圧)は、図5に模式的に示すアンプ17を介し、かつ、アナログ−デジタルデータ変換機18を経由し、パソコン等の処理装置19によって処理され、必要に応じ、ディスプレイ、プリンタ等の表示手段20によって表示することができる。
(1)測定条件の決定を行う。
(i)ステップ:プレス成形に必要なポンチ荷重の算出
成形シミュレーションを用い、若しくは幾何学上の計算を行うことにより、金型1が剛体であると仮定した場合の、設計上の下死点となるポンチ荷重(所望のポンチ荷重)を求める。
(ii)ステップ:実際のダイハイトの決定
上記(i)で算出したポンチ荷重となるように、荷重検出手段6によってポンチ荷重を実測しながら試打を繰り返し行い、所望のポンチ荷重を得るために必要な実際のダイハイトを決定する。
(i)ステップ:無負荷ダイハイトを決定する。
素材を金型にセットしない状態で、かつ、クッションピン16(図5)のクッション荷重をクッションリング9に付与しない無負荷状態(このとき、クッションリング9は自重により降下している。)で、荷重検出手段6によってポンチ荷重を実測しながら上型11を下降させる。そして、実際にポンチ荷重が発生し始めるダイハイトを把握する。この、実際にポンチ荷重が発生し始めるダイハイトに初期板厚分を加算したものを、無負荷ダイハイトとする。
(ii)ステップ:続いて、クッションピン16に荷重を与えてクッションリング9を上昇させ、クッションリング9の下面と当該下面に対向する下型7の平面との間に隙間を持たせる。
(iii)ステップ:クッションリング9の底面と当該底面に対向する下型11の平面との間に形成したシムの当り面に、下型7に形成した開口から、シムを挿入する。このとき用いられるシムは、クッションリング9が自重によって降下し、下型11との間に挟まれた状態で、クッションリング9の上面が、プレス加工時の下死点に相当する位置に保持されるだけの厚みを有するものである。
(v)ステップ:上記(2)(i)ステップで決定した無負荷ダイハイトへと、上型11を下降させることにより、無負荷状態でクッションリングおよび上型を下死点に置き、かつ、ポンチおよびクッションリングと、上型との間に板厚分の空きを与えた状態となる。
(vi)ステップ:上記(2)(v)ステップの状態で、変位量検出手段2、3、4、5のゼロ点調整を行う。
(i)ステップ:上記(2)(iii)〜(vi)ステップで用いたシムを金型から取り除く。
(ii)ステップ:上記(1)(ii)ステップで決定した実際のダイハイトにより、プレス成形を行う。そして、プレス成形中、変位量検出手段2、3、4、5による金型各部の変位量の測定を行う。
(4)測定結果を出力する。
パネル成形を行い、変位量検出手段2の測定結果から、プレス成形中におけるクッションリング9とポンチの鉛直面10aとのクリアランスの変化を、経時的に検出することができる。
また、変位量検出手段3の測定結果から、プレス成形中におけるクッションリング9と上型11とのクリアランスの変化を、経時的に検出することができる。
さらに、変位量検出手段4の測定結果から、プレス成形中における上型11の開き量の変化を、経時的に検出することができる。
加えて、変位量検出手段5により、上型11とポンチ上面10bとの変位量を複数箇所で検出し、金型各部の変位量の測定を行い、金型1の全体のたわみを経時的に検出することができる。
そして、上記測定結果を処理装置19によって処理し、必要に応じ、表示手段20にグラフ化して表示し、または、プリンタによってプリントアウトすることができる。
図8は、変位量検出手段2で検出した、クッションリング9の開き量を経時的に示している。なお各測定位置A、B、C、Dには、変位量検出手段2が二つづつ設けられているので、図8における各測定位置の検出結果は、二つの検出手段の測定結果の平均値を表している。図中、符号Bhで示す線はブランクホールド時点を示し、符号Bdcで示す線は上型11およびクッションリング9の下死点を示している(図9も同じ)。
また、図5は、変位量検出手段3で検出した、しわ抑え面のクリアランスを経時的に示している。図5では、各測定位置A、B、C、Dの二つの変位量検出手段3の測定結果を、A1、A2、B1、B2、C1、C2、D1、D2として別々に示している。
また、図11は、変位量検出手段5で検出した、下死点での上型11のたわみと、荷重検出手段6で測定したパンチ荷重との関係を示している。
なお、以上の測定結果は、図12に示すように、下型7および上型11がプレスマシン50に装着された状態で、上型11を駆動するラム51に対する推進装置の加圧力Fが、下型7および上型11よりも外側に作用する条件下で測定したものである。
すなわち、図2に示すシミュレーション方法では、成形ストロークに応じた金型のたわみ分布を求めるステップにおいて、当該たわみ分布を正確に求めておく。その手法としては、図1の(a)〜(c)ステップのごとき、高精度が保証されたシミュレーションや、図5〜図12で説明した測定装置を用いることができる。
そして、(d−1)ステップにおいて、当該たわみ分布を、動的陽解法により板成形シミュレーションを行う際の金型表面の節点に対し強制変位条件として与え、(d−2)ステップにおいて、正確に求めたたわみ分布を考慮した板成形シミュレーションを行う。
さらに、(d−3)ステップにおいて、(d−2)ステップで得られる成形荷重が所望の製品形状を得るために必要となる目標の成形荷重と一致するまで、前記金型のたわみ分布を変えることなく、金型全体の変位量を変える。すなわち、図3に示すように、成形荷重の目標値Tと計算値Cとの比較、検証を行い、理想的な成形荷重条件下における板成形シミュレーションを行うことで、板成形品の形状を高精度にシミュレーションすることができる。
そして、(e−1)ステップにおいて、当該たわみ相当分を、動的陽解法により板成形シミュレーションを行う際の前記しわ抑え荷重を与える部分の表面の節点に対し強制変位条件として与えて、(e―2)ステップにおいて、正確に求めたたわみ分布を考慮した、板成形シミュレーションを行うものである。ここで、金型の前記しわ抑え荷重を与える部分を除いた部分を剛体と仮定していることから、図2の例のごとく、成形荷重の目標値Tと計算値Cとの比較、検証は不要である。したがって、図4の手法によっても、板成形品の形状を高精度にシミュレーションすることができる。
(d−1):(a)〜(c)ステップを一例とするシミュレーション方法により求めた、金型のたわみ分布を、動的陽解法により板成形シミュレーションを行う際の、金型表面の節点に対し強制変位条件として与える(板成形用メッシュにマッピングする。)ステップ
(d−2):実際に、動的陽解法によって板成形シミュレーションを行うステップ
(d−3):(d−2)ステップで行った板成形シミュレーションの結果、求められる成形荷重をチェックするステップ
(d−4):(d−3)ステップで計算値が目標の成形荷重と一致したことを確認した時点で、プレス成形中の製品形状のシミュレーション結果を出力するステップ
(e−1):(a)〜(c)ステップを一例とするシミュレーション方法により求めた、金型のたわみ分布を、動的陽解法により板成形シミュレーションを行う際の、しわ抑え荷重を与える部分の表面の節点に対し強制変位条件として与える(板成形用メッシュにマッピングする。)ステップ
(e―2):金型の前記しわ抑え荷重を与える部分を除いた部分を剛体と仮定して、所望の製品形状を得るために必要となる目標の成形荷重を与え、当該板成形シミュレーションを行うステップ
(e―3):プレス成形中の製品形状のシミュレーション結果を出力するステップ
Claims (2)
- 成形ストロークに応じた金型のたわみ分布を求めるステップと、
当該たわみ分布を、動的陽解法により板成形シミュレーションを行う際の金型表面の節点に対し強制変位条件として与えて、当該板成形シミュレーションを行うステップと、
それによって得られる成形荷重が所望の製品形状を得るために必要となる目標の成形荷重と一致するまで、前記金型のたわみ分布を変えることなく、金型全体の変位量を変えるステップとからなることを特徴とする板成形のシミュレーション方法。 - 成形ストロークに応じて金型のしわ抑え荷重を与える部分のたわみ分布を求めるステップと、
当該たわみ相当分を、動的陽解法により板成形シミュレーションを行う際の前記しわ抑え荷重を与える部分の表面の節点に対し、強制変位条件として与えるステップと、
金型の前記しわ抑え荷重を与える部分を除いた部分を剛体と仮定して所望の製品形状を得るために必要となる目標の成形荷重を与え、当該板成形シミュレーションを行うステップとからなることを特徴とする板成形のシミュレーション方法。
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