JP4305584B2 - 酸素吸収性樹脂組成物及び酸素吸収性多層体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、切断性に優れた酸素吸収性樹脂組成物及び酸素吸収性多層体に関する。
【0002】
【従来の技術】
鉄系の酸素吸収剤を脱酸素剤とする包装が、食品、医薬品等を保存する方法として知られているが、近年、脱酸素包装技術の一つとして、熱可塑性樹脂に酸素吸収剤を配合した酸素吸収性樹脂組成物を通気性包装材料にて包装してなる、ラベル型、パッキン型、カード型等の脱酸素剤が使用されている。さらに、熱可塑性樹脂に酸素吸収剤を配合した樹脂組成物からなる酸素吸収層を配した、脱酸素機能を備えた多層体材料からなる包装容器、すなわち脱酸素容器の開発が行われている。脱酸素機能を備えた包装容器は、通常、脱酸素剤組成物を配した酸素吸収層を中間層とし、外側にガスバリア性の外層、内側に酸素透過性の内層を備えた脱酸素性多層体で構成され、袋、カップ、トレイ、ボトル等の成形容器として開発されている。
【0003】
鉄系酸素吸収剤を樹脂に配合した酸素吸収性樹脂組成物としては、例えば特開昭60−158257号公報、特開昭63−281964号公報、特開平4−90847号公報、特開平7−268140号公報等に鉄系酸素吸収剤を熱可塑性樹脂に分散、混合したものの記載がある。特開平8−72941号公報、特開平7−309323号公報、特開平9−40024号公報には、鉄系酸素吸収性樹脂層を有する多層シート、多層フィルム等の酸素吸収性多層体の記載がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
鉄系酸素吸収剤を配合した酸素吸収性樹脂組成物及び酸素吸収性多層体を製造する場合や容器、袋として利用する場合、樹脂組成物、シート又はフィルムのカッティング加工、スリット加工、あるいは、成形トレイのトリミング加工等をする必要がある。シートやフィルムを所望の幅にスリット加工する場合や、成形容器を所望の形状にトリミング使用する場合、通常、カッター刃が使用される。従来の鉄系酸素吸収剤を配合した樹脂組成物、多層体又は成形容器をスリット加工又はトリミング加工等の切断を工業的に行なう場合、樹脂に配合された鉄系酸素吸収剤が硬いために、切断性が悪く、切断面が滑らかでなくなる上、カッター刃の損傷が激しいという問題を有していた。
【0005】
本発明の目的は、切断加工性に優れ、切断時のカッター刃の損傷がない、切断加工性に優れた酸素吸収性樹脂組成物及び酸素吸収多層体を提供する。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、熱可塑性樹脂に、珪素含有量1000ppm以下の鉄粉及びハロゲン化金属からなる組成物である鉄系酸素吸収剤を配合した酸素吸収性樹脂組成物に関する。
また、本発明は、表面から順に、シーラント層、酸素吸収樹脂層、バリア層の少なくとも3層からなる酸素吸収多層体において、酸素吸収樹脂層が珪素含有量1000ppm以下の鉄粉及びハロゲン化金属からなる組成物である鉄系酸素吸収剤を配合した酸素吸収性樹脂組成物からなることを特徴とする酸素吸収性多層体に関する。
【0007】
本発明の酸素吸収性樹脂組成物及び酸素吸収多層体は、従来の鉄系酸素吸収剤を用いた樹脂組成物や多層体と比較し、鉄粉の硬度が低いため、樹脂組成物を製造するためのカッティング、スリット加工、多層体を包装容器として使用するためのスリット加工及びトリミング加工を行う際、カッター刃の損傷を抑制し、また、容易に切断できるため加工性に優れている。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられる鉄系酸素吸収剤中の鉄粉としては、鉄粉中の珪素含有量が1000ppm以下のもの、好ましくは500ppm以下のものが用いられる。鉄粉の製造方法には、特に制限はなく、還元鉄粉、噴霧鉄粉、電解鉄粉が用いられる。珪素の含有量がこの量より多いと、鉄粉の硬度が向上し、酸素吸収性樹脂組成物及び酸素吸収多層体のスリット加工又はトリミング加工時の切断時の切断不良、カッター刃の損傷等の問題が生じる。また、鉄系酸素吸収剤に用いる鉄粉の粒径は、酸素吸収性樹脂の層厚を薄くするために細かい方がよく、平均粒径は1〜150μmが好ましく、5〜100μmが特に好ましい。
本発明の鉄粉において、Fe以外の元素の含有量が低いものが好ましい。特に、鉄粉中の砒素含有量が1ppm以下のものが、安全衛生上、好ましく用いられる。
【0009】
鉄系酸素吸収剤には、鉄粉とハロゲン化金属の混合物が好ましい。ハロゲン化金属は鉄粉の酸素吸収反応に触媒的に作用するものである。ハロゲン化金属としては、例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩化物、臭化物、ヨウ化物が用いられ、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム又はバリウムの塩化物又はヨウ化物が好ましく用いられる。ハロゲン化金属の配合量は、鉄粉100重量部当たり好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは0.1〜5重量部である。
【0010】
ハロゲン化金属は、鉄粉を主剤とした酸素吸収剤の必須成分として鉄粉とともに使用されるが、鉄粉に付着して容易に分離しないよう予め混合して添加することが好ましい。例えば、ボールミル、スピードミル等を用いてハロゲン化金属と鉄粉を混合する方法、鉄粉表面の凹部にハロゲン化金属を埋め込む方法、バインダーを用いてハロゲン化金属を鉄粉表面に付着させる方法、ハロゲン化金属水溶液と鉄粉を混合した後乾燥して鉄粉表面に付着させる方法等の方法がとられる。好ましい鉄系酸素吸収剤は、鉄粉とハロゲン化金属を含む組成物であり、特に好ましくは、鉄粉にハロゲン化金属を付着させたハロゲン化金属被覆鉄粉からなる酸素吸収剤である。本発明の酸素吸収性樹脂組成物には、鉄粉及びハロゲン化金属以外の成分を配合することもできる。
【0011】
本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂に鉄系酸素吸収剤を配合することにより製造される。本発明において熱可塑性樹脂に鉄系酸素吸収剤を配合する量は、酸素吸収性樹脂組成物中、鉄系酸素吸収剤10〜80重量%、好ましくは20〜70重量%となる量である。この範囲より多いと、樹脂組成物の加工性に問題が生じ、少ないと酸素吸収性能が低下する。
本発明の酸素吸収性樹脂組成物を、好ましくはシート状に成形後、切断し、通気性包装材料にて包装することにより、ラベル型、パッキン型又はカード型等の脱酸素剤が製造される。
【0012】
本発明における鉄系酸素吸収剤を配合する熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィンが好ましく用いられる。ポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンに例示されるポリエチレン類、ポリプロピレンホモポリマー、プロピレン−エチレンブロック共重合体及びプロピレン−エチレンランダム共重合体に例示されるポリプロピレン類、メタロセンポリエチレンやメタロセンポリプロピレン等のメタロセン触媒によるポリオレフィン類、ポリメチルペンテン、エチレン−酢酸ビニル共重合体やエチレン−αオレフィン共重合体に例示されるエラストマー類あるいはこれらの混合物が挙げられる。この中では、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレンーエチレンブロック共重合体、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン又はメタロセンポリエチレンが特に好ましい。
【0013】
本発明の酸素吸収性樹脂組成物を酸素吸収層とし、外側にガスバリア性の外層と内側に酸素透過性の内層とを配することにより、脱酸素機能を備えた脱酸素性多層体が構成される。
本発明において、酸素透過性の内層に用いる樹脂としても、上記の酸素吸収性樹脂組成物に使用する熱可塑性樹脂が用いられる。
酸素吸収樹脂層、酸素透過性の内層には、酸化チタン、スリップ剤、酸化防止剤、消泡剤、活性炭等の添加物を添加してもよい。
【0014】
本発明において、ガスバリア層は、包装容器とした場合に容器外部から侵入する酸素を遮断する層であり、例えば、アルミ箔等の金属箔、ポリ塩化ビニリデン、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、ナイロン6、ナイロン6, 6、ナイロンMXD6、ポリエチレンテレフタレート等のガスバリアー性樹脂、アルミニウム蒸着フィルムやシリカ蒸着フィルム等の蒸着フィルム等を単独又は組合せて用いることができる。
【0015】
また、ガスバリア層の破損やピンホールを防ぐために、バリア層の外側に熱可塑性樹脂からなる保護層を設けることが好ましい。
保護層に用いる樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン等のポリエチレン類、プロピレンホモポリマー、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体等のポリプロピレン類、ナイロン6、ナイロン6,6等のポリアミド類、さらに、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル類およびこれらの組合せが挙げられる。
【0016】
本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、好ましくはシート状等に成形後、通気性包装材料にて包装して、ラベル型、パッキン型、カード型等の脱酸素剤として使用される。また、本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、酸素吸収性多層体の酸素吸収樹脂層に用いられる。
本発明の酸素吸収性多層体は、多層フィルム又は多層シート等として、フィルム原反への加工時、包装袋への加工時又はトレイ成形品の加工時の切断性に優れた包装材料として各種の用途に用いられる。
【0017】
【実施例】
本発明を実施例に沿ってさらに詳しく説明する。尚、本発明は実施例に必ずしも限定されない。
[実施例1]
平均粒径30μm、珪素含有量780ppm、砒素含有量0.3ppmの鉄粉1000kgを加熱ジャケット付き真空混合乾燥機中に投入し、10mmHgの減圧下140℃で加熱しつつ、塩化カルシウム50重量%水溶液50kgを噴霧し、乾燥した後、篩い分けし粗粒を除き、鉄系酸素吸収剤Aを得た。
次に、ベント付き二軸押出機を用いて、エチレン−プロピレンブロック共重合体(日本ポリケム(株)製・商品名EC9J)を押出しながら、サイドフィード
にて鉄系酸素吸収剤を供給し、ポリプロピレン:鉄系酸素吸収剤=70/30となるように、混練し、ストランドダイから押し出した後、冷却、ペレタイザーにてペレット化し、約1tの酸素吸収性樹脂組成物Aを得た。ペレタイジングの際のペレットのカット不良等の問題はなかった。また、ペレタイザーのカッター刃の損傷は、全く観察されなかった。
【0018】
次いで、第1〜第5押出機、フィードブロック、Tダイ、冷却ロール、引取装置、スリッター及び巻取り機からなる5種6層多層シート成形装置を用い、第1〜第5押出機から、それぞれ、表1に示す樹脂組成物を押出し、ヒートシール性内層(エチレン−プロピレンブロック共重合体:酸化チタン=80:20(混合物重量比、以下同様))/酸素吸収層(酸素吸収性樹脂組成物A:酸化カルシウム60重量%含有ポリプロピレン=98:2)/接着剤層(無水マレイン酸変性ポリプロピレン)/ガスバリア層(エチレンビニルアルコール共重合体;(株)クラレ製・商品名エバールG)/接着剤層(無水マレイン酸変性ポリプロピレン)/保護層(エチレン−プロピレンブロック共重合体:酸化チタン=90:10)の積層構成からなる酸素吸収性多層シート(650mm幅)Aを500m製造した。スリット加工でのトラブル又は多層装置のスリッターのカッター刃の損傷は観察されなかった。
【表1】
Figure 0004305584
【0019】
さらに、真空成形機、トリミング機からなる連続多列成形機に、トレイ状容器金型(縦90mm×横130mm×深さ25mm)4列をセットし、得られた酸素吸収性多層シートAを用いてトレイ状容器に成形した。次いで、トリミング機にてフランジ部が約8mmとなるようにカットし、トレイ状容器を1000個得た。トリミング時の容器の切れ残りはなく、スムーズにトリミングが可能で、容器カット部の切断面が滑らかであり、外観は良好であった。トリミング機カッター刃の損傷は観察されなかった。
【0020】
[実施例2]
酸素吸収性樹脂組成物に用いる熱可塑性樹脂をメタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレンに代えた他は実施例1と同様にして、ペレット化し、約1tの酸素吸収性樹脂組成物Bを得た。ペレタイジングの際のペレットのカット不良等の問題はなかった。また、ペレタイザーのカッター刃の損傷は、全く観察されなかった。
【0021】
次いで、単軸押出機2台、Tダイ、冷却ロール及びスリッター及び巻取機からなるタンデム押出ラミネーター装置を用い、繰り出されるLDPE20μm/アルミ箔9μm/PET12μmからなる積層フィルムに、作製した酸素吸収樹脂組成物Bを厚さ40μmで押出ラミネートし、次いで、押出機より酸化チタンを5重量%配合したメタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレン(ダウケミカル社製・商品名PT1450)をTダイから厚さ30μmとなるように押出しラミネートし、ヒートシール性内層(メタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレン:酸化チタン=80:20)/酸素吸収層(酸素吸収性樹脂組成物B:酸化カルシウム60重量%含有メタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレン=98:2)/LDPE/ガスバリア層(アルミ箔)/保護層(PET)の積層構成からなる、酸素吸収多層フィルムBを得た(幅600mm、長さ750m)。ラミネーター装置のスリッターのスリット加工問題なく、スリットしたフィルムの端面の外観異常なく滑らかであり、スリット刃の損傷は観察されなかった。
【0022】
さらに、得られた酸素吸収多層フィルムBをフィルム中心スリット2枚合わせ方式の3列4方シール包装機にて、縦20cm×横10cmの包装袋を1000枚作製した。スリット時の切断加工性が良く、フィルムの端面の切断面が滑らかであり、また、スリットのカッター刃の損傷は観察されなかった。
【0023】
[比較例1]
実施例1、2で用いた鉄粉に変えて、珪素含有量1400ppmの鉄粉を用いて、実施例1同様の試験を実施し、約1tの酸素吸収性樹脂組成物Cを得た。
ペレタイジングの際、ペレタイザーのカッター刃の損傷があり、ペレット製造途中に全くカッティングできなくなったため、カッター刃の交換を行わなければならなかった。また、ペレットのカット不良が発生し、完全にカットされなかったものが多発したため、篩分けによりカット不良品を除かなければならなかった。
【0024】
次いで、酸素吸収性樹脂組成物Cを用いて、実施例1同様に、酸素吸収多層シートを製造した。
スリット加工において、途中カット不十分なトラブルが発生するため、カッターによるスリットを2回行い、多層シートを得た。さらに、多層装置のスリッターのカッター刃の損傷が観察された。
【0025】
さらに、実施例1と同様に、トレイ状容器1000個を作製した。トリミング時に容器の切れ残りが発生し、十分にカット出来なかった容器があった。また、トリミングされた容器カット部が滑らかでなく、髭状の樹脂の切れかすが残っている場合があった。
【0026】
以上の結果からわかるように、本発明の酸素吸収性樹脂組成物及び酸素吸収性多層体は、カッティング加工、スリット加工、トリミング加工等の切断加工性に優れたものである。
【0027】
【発明の効果】
本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、従来の鉄系酸素吸収剤を用いた樹脂組成物と比較し、樹脂組成物又はその成形体を製造するためのカッティング加工又はスリット加工等の切断を伴なう加工を行う際、容易に切断でき、また、カッター刃の損傷を抑制するので、工業的に有利である。
本発明の酸素吸収性多層体は、従来の鉄系酸素吸収剤を用いた酸素吸収性多層体と比較し、多層体を包装容器として使用するための製袋加工、スリット加工又はトリミング加工等の切断を伴なう加工を行う際、容易に切断でき、また、カッター刃の損傷を抑制するので、工業的に有利である。

Claims (2)

  1. ポリオレフィン中に鉄系酸素吸収剤を10〜80重量%配合した酸素吸収性樹脂組成物において、鉄系酸素吸収剤が、珪素含有量が1000ppm以下の鉄粉及び該鉄粉100重量部当たり0.1〜20重量部のハロゲン化金属からなる組成物であることを特徴とする酸素吸収性樹脂組成物。
  2. 表面から順に、シーラント層、酸素吸収樹脂層、バリア層の少なくとも3層からなる酸素吸収多層体において、酸素吸収樹脂層が請求項1記載の酸素吸収性樹脂組成物からなることを特徴とする酸素吸収性多層体。
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