例えば、電気自動車やハイブリッド自動車には、燃料電池が搭載されている。また、燃料電池として、例えば固体高分子型燃料電池を用いることができ、この固体高分子型燃料電池の発電の仕組みは、一般に、燃料極(アノード側電極)に燃料ガス、例えば水素含有ガスが、一方、空気極(カソード側電極)には酸化剤ガス、例えば主に酸素(O2)を含有するガスあるいは空気が供給され、燃料極に供給された水素含有ガスは、電極の触媒の作用により電子と水素イオン(H+)に分解され、電子は外部回路を通って、燃料極から空気極に移動し、電流が作り出される。一方、水素イオン(H+)は、燃料極と空気極とに挟持された電解質膜を通過して空気極に達し、酸素および外部回路を通ってきた電子と結合することによって、反応水(H2O)を生成する。
上述した燃料電池に水素含有ガス(例えば、水素ガス)を供給するため、電気自動車やハイブリッド自動車には、水素燃料貯蔵システムが搭載されている。この水素燃料貯蔵システムは、高圧水素容器と、水素ステーションのディスペンサーから上記高圧水素容器に高圧水素を充填する際の締結部分となる水素充填コネクタとを有する。
図9に示すように、従来の水素充填コネクタ300は、水素ガスを供給するノズル(図示せず)と、前記ノズルが挿入される差込口72を有するレセプタクル70とを有し、レセプタクル70の差込口72の近傍にガスをシールするためのOリング74が設けられている。図9に示す水素充填コネクタ300は、35MPaの高圧水素ガスの充填に用いられるガス供給構造であり、ISO17268に準拠した水素充填コネクタの標準形状である。
図9に示すような水素充填コネクタ300によって、35MPaの高圧水素ガスが高圧水素容器に充填された車両の航続距離は、概略350kmであり、市場で要望される航続距離500kmに比べ航続距離が不足していた。一方、車両パッケージの制約上、高圧水素容器を大型化することは困難であるため、近年、高圧水素ガスの充填圧を35MPaから70MPaへ高圧化することが提案されている。この充填ガスの高圧化に伴い、水素充填コネクタにおけるノズル径を小径化する必要が生じ、その結果、ノズル長が長くなり、ノズル先端付近におけるガスシール性も要求されている。
例えば、70MPaによる水素充填可能なドイツの1社から提案された水素充填コネクタの新規構造(以下「ドイツ提案形状」という)の一例を、図10に示す。図10に示すように、ドイツ提案形状の水素充填コネクタ400は、ガス供給路12を有するノズル10と、ノズル10が挿入接続される差込口82を有するレセプタクル80とからなり、レセプタクル80は、差込口82の近傍に設けられガスシールのための第1のOリング84と、第1のOリング84よりガス供給の下流側に設けられガスシールのための第2のOリング88とを備え、第2のOリング88は、接合材87によってその一部がレセプタクル80の凹部に接合されている。
また、70MPaによる水素充填可能な日本の1社から提案された水素充填コネクタの新規構造(以下「日本提案形状」という)の一例を、図11に示す。図11に示すように、日本提案形状の水素充填コネクタ500は、ガス供給路92を有するノズル90と、ノズル90が挿入接続される差込口42を有するレセプタクル40とからなり、レセプタクル40は、差込口42の近傍に設けられガスシールのための第1のOリング44が設けられ、一方ノズル90のノズル先端には、ガスシールのための第2のOリング98が設けられ、第2のOリング98は、接合材97によってその一部がノズル90の先端付近に設けられた凹部に接合されている。
しかしながら、ノズル長が長くなることに連れて、ノズルの表面に付着した異物がノズル先端からガスとともにレセプタクルのガス流路へ混入するおそれがある。一方、上記ドイツ提案形状及び日本提案形状のいずれも、異物混入を抑制する手段は設けられていない。
また、特許文献1には、ガスを充填するノズルと、ノズルよりガスが供給されるレセプタクルとを有し、ガス充填時におけるレセプタクルとノズルの異常を診断する異常診断手段を備える燃料充填システムが提案されている。しかしながら、特許文献1に提案された燃料充填システムにおいても、異物混入を抑制する手段は設けられていない。
なお、特許文献2には、光通信用スリーブのフェルール差込口の内周面に、突出した摺接面を有する嵌装部材を設け、フェルールの差込時のフェルールの表面のゴミを除去し、光通信用スリーブへゴミが入り込むことを防止する光通信スリーブの構造が提案されている。また、特許文献3,4には、通過するガス中の有害成分やゴミを除去するためのフィルタの構造が提案されている。
特開2006−177253号公報
特開2005−241882号公報
特開2003−225540号公報
特開平8−75098号公報
上述したように、充填ガスの高圧化に伴い提案されている水素充填コネクタの新規構造のいずれも、ノズル長が伸びたことによるノズル表面に付着した異物のレセプタクルのガス流路へ混入するを抑制する手段が設けられていない。
したがって、例えばドイツ提案形状の水素充填コネクタにおいて、ノズル表面の異物が付着したまま、ガス充填時のノズルをレセプタクルの差込口に挿入すると、ノズルと隙間のないレセプタクルに設けられたOリング、特にノズル先端近傍に設けられたOリングに異物が付着し、例えばOリング表面に傷がついた場合にはシール性が不良になるおそれがある。同様に、例えば日本提案形状の水素充填コネクタにおいて、レセプタクルの差込口の内周面にゴミが付着している場合にも、ノズルの先端付近のOリングにゴミが付着し、例えばOリングの表面に傷がついた場合にはシール性が不良になるおそれがある。
また、気体燃料を充填するとき、高圧水素容器(例えば、タンク)の温度上昇を防止するために、通常気体燃料を−40℃程度の低温にて充填を行う。この充填の際に、水素充填コネクタのノズルに水が付着していると氷結して固着し、ノズルがレセプタクルから外れなくなるおそれがあり、この状態で無理にノズルをレセプタクルから引き抜いた場合、特に水素充填コネクタ内のOリングが一部剥離してしまい、シール性が損なわれるおそれがある。このような低温気体燃料充填における不具合は、従来の水素充填コネクタの構造および上述した従来技術では解消することは難しい。
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、ガス充填時にノズルをレセプタクルに差し込む際に、ノズル表面の異物がガス供給構造内のOリングへ付着することを防止可能なガス供給構造を提供する。
上記目的を達成するために、本発明のガス供給構造は以下の特徴を有する。
(1)ガスを供給するノズルと、前記ノズルが差し込まれることによりガスの供給を受けるレセプタクルと、前記レセプタクルに設けられ前記ノズルとレセプタクルとをシールし、ノズルを挿入する際にノズルと摺動するOリングと、前記Oリングより前記ノズルの差込口側に位置するように前記レセプタクルに設けられた異物除去部材と、を備え、さらに、レセプタクルの差込口側に差込口側Oリングが設けられているガス供給構造である。
レセプタクルに設けられた異物除去部材が、レセプタクルに配設されたOリングよりノズルの差込口側に設けられているので、上記異物除去部材によって、ノズル先端からノズル表面に存在する異物を除去しながらノズルがレセプタクルに差し込まれる。したがって、ノズル先端及びノズル表面の異物がOリングへ付着することが抑制される。
(2)ガスを供給するノズルと、前記ノズルが差し込まれることによりガスの供給を受けるレセプタクルと、ノズルに設けられ前記ノズルとレセプタクルとをシールし、ノズルを挿入する際にレセプタクルと摺動するOリングと、前記Oリングより前記ノズルの先端側に位置するように前記ノズルに設けられた異物除去部材と、を備えたガス供給構造である。
ノズルに設けられた異物除去部材が、ノズルに配設されたOリングよりノズルの先端側に設けられているので、上記異物除去部材によって、レセプタクルの差込口から延びる内周面に存在する異物を除去しながらノズルがレセプタクルに差し込まれる。したがって、ノズルに設けられたOリングへの異物付着を抑制できる。
(3)ノズルが差し込まれることによりガスの供給を受けるレセプタクルと、前記レセプタクルに設けられ前記ノズルとレセプタクルとをシールし、ノズルを挿入する際にノズルと摺動するOリングと、前記Oリングより前記ノズルの差込口側に位置するように前記レセプタクルに設けられた異物除去部材と、を備え、さらに、レセプタクルの差込口側に差込口側Oリングが設けられているガス供給構造である。
レセプタクルに設けられた異物除去部材が、レセプタクルに配設されたOリングよりノズルの差込口側に設けられているので、上記異物除去部材によって、ノズル先端からノズル表面に存在する異物を除去しながらノズルがレセプタクルに差し込まれる。したがって、ノズル先端及びノズル表面の異物がOリングへ付着することが抑制される。
(4)ノズルが差し込まれることによりガスの供給を受けるレセプタクルと、ノズルに設けられ前記ノズルとレセプタクルとをシールし、ノズルを挿入する際にレセプタクルと摺動するOリングと、前記Oリングより前記ノズルの先端側に位置するように前記ノズルに設けられた異物除去部材と、を備えたガス供給構造である。
(5)上記(2)または(4)に記載のガス供給構造において、さらに、レセプタクルに設けられ差込口側に設けられた差込口側Oリングが設けられているガス供給構造である。
(6)上記(1)から(5)のいずれか1つに記載のガス供給構造において、ガスを貯蔵するタンクと、前記レセプタクルから前記タンクに至るガス流路の上流側に配設された損失係数の小さいフィルタと、前記ガス流路の下流側に配設された損失係数の大きいフィルタと、を備えたガス供給構造である。
上記両フィルタにより、タンクに供給されるガスの異物を捕捉するとともに、相対的に損失係数の小さいフィルタと損失係数の大きいフィルタとを組み合わせることによって、単一フィルタに比べ両フィルタの前後の差圧を小さくことができる。これにより、ガス流路内のフィルタ全体の目詰まりを起こしにくくすることができる。
(7)上記(1)から(6)のいずれか1つに記載のガス供給構造において、前記異物除去部材は、JIS B 8812に準拠し引き抜き荷重の測定に基づく摺動抵抗が300N以上500N以下であるガス供給構造である。
上記摺動抵抗を有する異物除去部材を用いることにより、ガス供給構造内に存在する異物、特に水の除去特性が向上する。
本発明によれば、ガス供給構造内への異物混入を阻止することができる。
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。また、本発明のガス供給構造として、70MPa高圧ガス充填用の水素充填コネクタを例に取り、以下に説明する。
本発明の第1の実施の形態におけるガス供給構造の一例を図1及び図2に示す。図1,図2に示すように、本実施の形態のガス供給構造100は、ガスを供給するノズル10と、ノズル10が差し込まれることによりガスの供給を受けるレセプタクル20と、ノズル10とレセプタクル20とをシールするOリングと、ノズル10の先端の異物がOリングに付着することを抑制する異物除去部材26と、を備える。
ここで、本実施の形態及び後述する実施の形態における用いられる「異物」とは、ノズルの先端及びその表面に付着可能な物質を指し、例えばゴミや水分を含む意である。
さらに、詳細に説明すると、本実施の形態におけるガス供給構造100は、上述したドイツ提案形状において、ガス供給路12を有するノズル10と、ノズル10が挿入接続される差込口22を有するレセプタクル20とからなり、レセプタクル20は、差込口22の近傍に設けられガスシールのための第1のOリング24と、第1のOリング24よりガス供給の下流側に設けられガスシールのための第2のOリング28とを備え、第2のOリング28は、接合材27によってその一部がレセプタクル20の凹部に接合され、さらに、第2のOリング28より差込口22側に位置するように、異物除去部材26が配設されている。また、異物除去部材26は、レセプタクル20の差込口22から延びる内周面に対し一部突出するようにレセプタクル20に設けられている。
異物除去部材26のレセプタクル20に設けられる位置は、上述したように、第2のOリング28より差込口22側であれば如何なる位置でもよいが、ノズル10の差込時からノズル10の先端及びその表面の異物を除去するためには、レセプタクル20の差込口22の近傍であって第1のOリング24に隣接した下流側に設けることがより好ましく、次いで、第1のリング24と第2のリング28との間のいずれかの位置に設けることが好ましい。また最終的に、第2のOリング28に異物が付着することを防止するという観点では、第2のOリング28の上流側であって第2のOリング28に隣接するように設けてもよい。
次に、図1,図2を用いて、第1の実施の形態のガス供給構造における異物除去動作を説明する。図1には、ノズル10をレセプタクル20に挿入する前の状態が示されている。図1に示すように、レセプタクル20の内周面には、異物除去部材26の一部を突出させて設けられている。したがって、ノズル10をレセプタクル20の差込口22に挿入していくと、ノズル10の先端からノズル10の表面が順次異物除去部材26に摺接し、これにより、ノズル10の先端からノズル10の表面の異物が除去されていき、清浄化されたノズル10の先端及びその表面が、図2に示すようにレセプタクル20の第2のOリング28に圧接する。これにより、第2のOリング28への異物付着が阻止され、第2のOリング28の異物による表面損傷が防止されるとともに、ノズル10とレセプタクル20とのガスシール性、例えば70MPaの高圧ガスのシール性が確保される。
本実施の形態におけるノズル10及びレセプタクル20は、金属からなり、加工及び強度の観点から、例えばステンレス鋼により形成される。
一方、本実施の形態における異物除去部材26の素材は、ノズル10の表面との摺接時に損傷を与えない程度の弾性及び可撓性の少なくとも一方を有する素材であれば如何なる素材でもよいが、例えばゴムや可撓性樹脂を用いることができ、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を用いることが好ましい。
また、異物除去部材26は、レセプタクル20の内周面に一連のリング状又は断続的なリング状で設けられていてもよく、異物除去部材26の前記内周面より一部突出する部分は、例えばブレード状、ブラシ状であってもよい。また、一部突出する部分の長さは、選択した異物除去部材26の弾性又は可撓性の度合いによって、適宜選択される。
さらに、異物除去部材26は、JIS B 8812に準拠し引き抜き荷重の測定に基づく摺動抵抗が、300N以上500N以下である。摺動抵抗を前記範囲にすることによって、ノズル10の差込時にノズル10の表面と摺接しても、ノズル10への損傷がなく且つノズル10の先端及びその表面の異物を除去することができ、特に異物が水の場合における除去性が高い。例えば、気体燃料を高圧水素容器(例えば、タンク)に充填するとき、気体燃料を−40℃程度の低温にして充填を行う際に、ノズル10表面の水が異物除去部材26により除去されてからレセプタクル20に挿入されるため、ノズル10とレセプタクル20との間の隙間のない第2のOリング28において水が氷結するおそれはなく、したがって、ノズル10とレセプタクル20との脱着時に、第2のOリング28の一部剥離などの損傷を防止することができる。
次に、本発明の第2の実施の形態におけるガス供給構造の一例を図3及び図4に示す。図3,図4に示すように、本実施の形態のガス供給構造200は、ガスを供給するノズル30と、ノズル30が差し込まれることによりガスの供給を受けるレセプタクル40と、ノズル30とレセプタクル40とをシールするOリングと、ノズル30の先端の異物がOリングに付着することを抑制する異物除去部材36と、を備える。
さらに、詳細に説明すると、本実施の形態におけるガス供給構造200は、上述した日本提案形状において、ガス供給路32を有するノズル30と、ノズル30が挿入接続される差込口42を有するレセプタクル40とからなり、レセプタクル40は、差込口42の近傍に設けられガスシールのための第1のOリング44が設けられ、一方ノズル30のノズル先端には、ガスシールのための第2のOリング38が設けられ、第2のOリング38は、接合材37によってその一部がノズル30の先端付近に設けられた凹部に接合されている。また、異物除去部材36は、第2のOリング38よりノズル30の先端側に位置するように、ノズル30に設けられている。
異物除去部材36のノズル30に設けられる位置は、上述したように、第2のOリング38よりノズル30の先端側であれば如何なる位置でもよいが、ノズル30の差込時からレセプタクル40の内周面の異物を除去するためには、ノズル30の先端付近に設けることがより好ましく、次いで第2のOリング38への異物付着防止の観点から、第2のOリング38に隣接したノズル30の先端側設けることが好ましい。
次に、図3,図4を用いて、第2の実施の形態のガス供給構造における異物除去動作を説明する。図3には、ノズル30をレセプタクル40に挿入する前の状態が示されている。図3に示すように、ノズル30の表面には、異物除去部材36の一部が突出するように設けられている。したがって、ノズル30をレセプタクル40の差込口42に挿入していくと、異物除去部材36がレセプタクル40の差込口42から延びる内周面を摺接し、これにより、レセプタクル40の内周面の異物が除去されていき、清浄化されたレセプタクル40の内周面が、図4に示すように、ノズル30の第2のOリング38に圧接する。これにより、第3のOリング28への異物付着が阻止され、第2のOリング28の異物による表面損傷が防止されるとともに、ノズル30とレセプタクル40とのガスシール性、例えば70MPaの高圧ガスのシール性が確保される。
なお、第2の実施の形態におけるノズル30及びレセプタクル40は、上述した第1の実施の形態と同様に、金属からなり、例えばステンレス鋼により形成される。また、異物除去部材36の素材は、上述した第1の実施の形態と同様、レセプタクル40の表面との摺接時に損傷を与えない程度の弾性及び可撓性の少なくとも一方を有する素材であれば如何なる素材でもよいが、例えばゴムや可撓性樹脂を用いることができ、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を用いることが好ましい。
また、異物除去部材36は、ノズル30の表面に一連のリング状又は断続的なリング状で設けられていてもよく、異物除去部材36のノズル30の表面より一部突出させた部分は、例えばブレード状、ブラシ状であってもよく、また、一部突出する部分の長さは、選択した異物除去部材36の弾性又は可撓性の度合いによって、適宜選択される。
さらに、異物除去部材36は、上述した第1の実施の形態と同様に、JIS B 8812に準拠し引き抜き荷重の測定に基づく摺動抵抗が、300N以上500N以下である。摺動抵抗を前記範囲にすることによって、ノズル30の差込時にレセプタクル40の内周面と摺接しても、レセプタクル40への損傷がなく且つレセプタクル40の内周面の異物を除去することができ、特に異物が水の場合における除去性が高い。上述したように、気体燃料を高圧水素容器(例えば、タンク)に充填するとき、気体燃料を−40℃程度の低温にして充填を行う際に、レセプタクル40の表面の水がノズル30の異物除去部材36により除去されるため、ノズル30とレセプタクル40との間の隙間のない第2のOリング38において水が氷結するおそれはなく、したがって、ノズル30とレセプタクル40との脱着時に、第2のOリング38の一部剥離などの損傷が防止される。
また、本発明の第3の実施の形態におけるガス供給構造の一例を図5に示す。図5に示すように、本実施の形態のガス供給構造は、上記第1、第2の実施の形態におけるガス供給構造において、さらにガスを貯蔵するタンクと、レセプタクルから前記タンクに至るガス流路50の上流側に配設された損失係数の小さいフィルタ52と、ガス流路50の下流側に配設された損失係数の大きいフィルタ54とを備える。
図7には、相対的に損失係数の小さいフィルタ52の前後の差圧(すなわち、図1のΔPf=P0−P1)とフィルタ52の上流側のガス圧との関係を表すグラフが示されている。図7に示すように、上流側のガス圧が高いほど、差圧ΔPf=P0−P1)は低くなる。一方、図8には、相対的に損失係数の大きいフィルタ54の前後の差圧(すなわち、図1のΔPs=P1−P2)とフィルタ54の上流側のガス圧との関係を表すグラフが示されている。図8に示すように、上流側のガス圧が高いほど、差圧ΔPs=P0−P1)は高くなる。したがって、高圧ガスが最初に進入してくるガス流路50の上流側に相対的に損失係数の小さいフィルタ52を配置することによって、フィルタ52前後の差圧ΔPfを低くすることができ、フィルタ52への目詰まりを防止しながら、フィルタ52にてタンクに供給されるガス中の相対的に大きい異物を捕捉することができる。したがって、一部異物が除去された高圧ガスが、ガス流路50の下流側に配置された相対的に損失係数の大きいフィルタ54を通過しても、従来のフィルタ54のみの配設時に比べ、差圧ΔPsを小さくすることができ、且つ異物による目詰まりを起こしにくくすることができる。
すなわち、相対的に損失係数の小さいフィルタ52と損失係数の大きいフィルタ54とを組み合わせることによって、タンクに供給されるガスの異物をより確実に捕捉するとともに、単一フィルタ、特にフィルタ54のみの場合に比べ、両フィルタ52,54の前後の差圧ΔPf,ΔPsを小さくすることができ、これにより、ガス流路50内のフィルタ全体の目詰まりを起こしにくくすることができる。
損失係数の小さいフィルタ52としては、例えば網状フィルタを用いることができ、網状フィルタを形成するワイヤ間の距離は、例えば0.2mmであるものが好ましいが、これに限るものではない。また、配設されるフィルタ52は、1個であってもよいが、2個以上を用いてもよく、例えば図6に示すように、同じワイヤ間距離を有するフィルタ52を一方向に徐々に回転させて積層又は間隔をあけて配置してもよい。このように2個以上を用いることによって、フィルタ52の孔径を変えることもでき、また間隔をあけて配置することによってより差圧を低減することもできる。
損失係数の大きいフィルタ54としては、例えば焼結金属フィルタを用いることができ、焼結金属フィルタとしては孔径5μmのものが好ましいが、これに限るものではない。
また、フィルタ52とフィルタ54のそれぞれの通過孔径は、通過させるガス圧及びガスに混入する異物によって適宜選択される。
10,30 ノズル、12,32 ガス供給路、20,40 レセプタクル、22,42 差込口、24,44 第1のOリング、26,36 異物除去部材、27,37 接合材、28,38 第2のOリング、50 ガス流路、52,54 フィルタ、100,200 ガス供給構造。