JP4304549B2 - 感光性樹脂積層体 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は接着層にハレーション防止機能を有する感光性樹脂積層体に関するものであり、特に接着層にハレーション防止機能として、2種以上の紫外線吸収能を有する化合物を2種含有させることによって、ハレーション防止機能のみならず、着色がなく、経時安定性にも優れるとともに、スリット深度や網点深度を充分に有するものである。
【0002】
【従来の技術】
通常、感光性樹脂積層体(以下感光性樹脂版という)を用いて印刷用レリーフを作成する際、感光性樹脂層の上にネガフィルムを重ね、該フィルムの上から活性光線を照射して、露光部の樹脂を光硬化させ、未露光部を溶媒で洗浄除去することにより印刷用レリーフを得ている。
【0003】
このようにして得られたレリーフは原理的には樹脂層の頂面から支持体の表面にかけて垂直に切り立つように形成されるべきものであるが、実際には未露光部側にかけてなだらかな裾広がり状の断面を形成することが多く、通常「ショルダー角が広くなる」と称している。このような裾広がり部は支持体に対するレリーフの固着強度を高めるものであって、レリーフ強度という面から見れば必要なこととされている。しかし、ショルダー角が大きくなり過ぎると印刷段階で大きな印圧がかかった場合に画像部や網点部が太り、あるいはスリット部や非画像部に汚れが発生するといった問題があった。
【0004】
上記のように本来、未露光部であるべき部位の光硬化性樹脂が光硬化し、レリーフのショルダー角が大きくなったり、あるいはレリーフ間深度が浅くなったりするという事態が発生する原因については、露光部分に隣接している未露光部に斜め方向から散乱光線が入射して硬化反応を引き起こすということと、その他にハレーションの問題が挙げられる。即ち、光硬化性樹脂の上方から入射される平行活性光線が支持体との界面でハレーションを起こすと共に、支持体が透明である場合には活性光線がこれを通過して露光機表面(支持体の裏側)でハレーションを起こすが、これらのハレーションに伴う反射・散乱光が光硬化性樹脂層の下方から上方に向けて再入射することは避けられず、該再入射光が本来未露光部であるべき部位を露光して部分的な硬化反応を起こし、前述のような事態を招くことになる。
【0005】
このような理由から、感光性樹脂版にハレーション防止機能を与えることは不可欠な要素とされており、例えば感光性樹脂層と支持体との間に設けられる接着剤層中にハレーション防止機能を与える方法や、感光性樹脂層と支持体の間に、ハレーション防止剤層と接着剤層を幾層にも交互に形成する方法等が実用化されている。ところが、360nm付近まで吸収を持つ一般のUV吸収剤を添加した接着層を有する感光性樹脂版を用いて、ケミカルランプなどの露光ランプで製版した場合には、スリット深度や網点深度がまだ浅く、ハレーション防止効果が小さいという問題があった。
【0006】
また、450nm以降にも吸収を持つ化合物についてもハレーション防止効果があることが確認されたが、このような化合物をハレーション防止剤として用いると着色度が大きくなり、製版検査時に見にくい、また目が疲れやすい等、検版性が悪くなるといった問題点が出てくる。
【0007】
さらに、生版(未露光版)の保存期間中にハレーション防止剤が光硬化性樹脂層内へ拡散移行して生版を経時変化させてしまうという問題があり、細線(細線状レリーフ)のよじれや、独立点(小さな点状レリーフ)の欠けなどを引き起こしてしまう問題点がある。
【0008】
したがって、ハレーション防止効果がある理想的なUV吸収剤としてはλmaxが360nmで、UV吸収端が400nm付近まで有し、かつ経時による感光性樹脂層中への抽出を防ぐため、接着層中のイソシアネートと反応する官能基(-NH2,-OH等)を有する化合物をハレーション防止剤として添加すれば良いのだが、このような化合物は数が少なく、また、これらは製造コストや安全性等の理由から使用できないものだった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、着色がなく、ハレーション防止効果を有し、経時安定性にも優れるとともに、スリット深度や網点深度を充分に有するレリーフ版となる感光性樹脂積層体を得ることを課題とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記課題を解決するため、鋭意、研究、検討した結果、UV吸収とハレーション防止効果について、360nmの吸収だけでなく、380〜400nmの吸収もハレーション防止効果に影響を与えていることを見い出し、遂に本発明を完成するに到った。即ち本発明は、(1)少なくとも支持体、接着層および感光性樹脂層を有する印刷レリーフ用感光性樹脂積層体において、前記支持体および接着層が、360nmでの吸光度0.6以上、380〜400nmでの吸光度0.3以上、450nm以上での吸光度が0.1以下であり、且つ接着層に、ポリエステル樹脂、イソシアネート基を2個以上有する化合物、360nm付近に吸収を持つ化合物Aとしてジヒドロチオ-p-トルイジン、380〜400nmに吸収を持つ化合物Bとして2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸エチレングリコールエステル、9−アントラセンメタノール、又は2−アミノベンゾフェノンが含有されていることを特徴とする感光性樹脂積層体である。
【0011】
本発明における支持体としては、スチール、アルミニウム、プラスチックフィルム、ガラス等任意のものが使用できるが、本発明においては、プラスチックフィルム、とくにポリエステルフィルムが好ましい。
【0012】
本発明における接着層を構成する成分としては、特に限定されるものではなく、支持体と接着層とが、360nmでの吸光度0.6以上、好ましくは、0.80以上、特に0.85以上が望ましい。また380〜400nmでの吸光度0.3以上、好ましくは、0.40以上、特に0.45以上が望ましい。さらに450nm以上での吸光度が0.1以下、好ましくは、0.08以下、特に0.05以下が望ましい。
なお、360nmでの吸光度が0.6未満あるいは、380〜400nmでの吸光度が0.3未満の場合は、白抜け深度が浅くなってしまい、ハレーション防止効果が発現しない等の問題がある。さらに450nm以上での吸光度が0.1を超えると、着色度が大きくなり、製版検査時に見にくい、また、目が疲れやすい等検版性が悪くなる等の問題があるので、好ましくない。
【0013】
前記条件を満足する接着層の成分としては、バインダーポリマー、360nm付近に吸収を持つ化合物Aおよび380〜400nm付近に吸収を持つ化合物B(以下ハレーション防止剤または、UV吸収剤ともいう)、イソシアネート化合物、重合禁止剤、その他の添加剤からなり、主成分であるバインダーポリマーとして、イソシアネート基と反応し得る官能基を有しているポリマーが好ましく、具体的には、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバチン酸などの酸成分とエチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、4,4’ージ(2ーヒドロキシエトキシフェニル)2,2’ープロパンなどのグリコール成分とから、あるいはカプロラクトンから得られるポリエステルである。
【0014】
また接着層中のイソシアネート化合物としては、イソシアネート基を2個以上有する化合物であり、例えば、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−または2、6ーシクロヘキサンジイソシアネートー1ーメチル、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、4,4’ージフェニルメタンジイソシアネート、4,4’ージシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、m−またはpーキシリレンジイソシアネート、1,3−または1,4−シクロヘキサンジメチルイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ビス(2ーイソシアネートエチル)フマラート、2,2,4ートリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、3,3’ージメトキシー4,4’ージフェニルジイソシアネート、2,4ートリレンダイマー、トリス(4ーフェニルイソシアネート)チオフォスフェート、ジフェニルエーテル2,4,4’ートリイソシアネート、2,4’ートリレンジイソシアネートの3量体、トリレンジイソシアネートと多官能アルコールの反応物から得られるオリゴイソシアネート(例えばトリメチロールプロパンー1ーメチルー2ーイソシアノー4ーカルバメートなど)、トリフェニルメタンp,p’,p”トリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートの2量体、3量体(例えばDESMODUR−N〔BAYER社商標〕、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、3ーヒドロキシメチルペンタン−2,4−ジオールとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応物、あるいは前記イソシアネート類のオキシム、フェノールなどのブロックイソシアネート類などが挙げられる。
【0015】
次に、ハレーション防止剤またはUV吸収剤である360nm付近に吸収を持つ化合物Aと、380〜400nmに吸収を持つ化合物Bとしては、経時安定性のためにイソシアネート化合物と結合し、かつそれが、ベースポリマーと結合するような官能基を有していることが好ましい。イソシアネートと反応し得る官能基としてはヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、メルカプト基等が挙げられ、反応性や効果の安定性などを考慮すると、アミノ基やヒドロキシル基が好ましい。また、これらと結合しているUV吸収能を有するUV吸収剤の基本分子骨格としてはベンゼン、ナフタリン、アントラセン、クマリン、キノリン、ベンジイミダゾールやベンゾチアゾール、ベンゾフェノンやベンゾトリアゾールなどが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、これら以外の分子構造を有していてもよい。
【0016】
これらの中で、360nm付近に吸収を持つ化合物Aとして具体的には、ジヒドロチオ-p-トルイジンである。
また、380〜400nmに吸収を持つ化合物Bとして具体的には、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸エチレングリコールエステル、2−ヒドロキシ−3ーナフトエ酸プロピレングリコールエステル、9−アントラセンメタノールである。
【0017】
なお、これらを溶解させる溶剤としては、ベンゼンやトルエンなどのベンゼン系有機溶剤、メチルエチルケトン、アセトンなどのケトン系有機溶剤、酢酸エチルなどのエステル系溶剤、エチレングリコール系溶剤、ジメチルアミノホルムアルデヒド、ジメチルアミノアセトアミドなどの有機溶剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
次に、本発明感光性樹脂積層体を構成する感光性樹脂層としては特に限定されるものではないが、感光性樹脂層を構成する成分として、ベースポリマー、光架橋剤、光増感剤、重合禁止剤、その他の添加剤等が含有され、その主成分であるベースポリマーの種類によって、例えばポリアミド系、ポリウレタン系、ポリビニルアルコール系、ポリエステル系、ポリ酢酸ビニル系などと称されている。本発明は公知のいずれの感光層へ適応しても良く、特に制限はない。
なお、本発明において、その他の要素、例えば各層の厚みや保護層の有無などの要件については一切制限するものではない。
【0019】
【実施例】
以下、本発明を以下の実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお本発明の評価は以下の方法により測定した。
1)360nm、380〜400nm、450nmでの吸光度:基板を日立製作所株式会社製U−3210形自記分光光度計により測定した。
2)版性能:未露光の感光性樹脂積層体(製造後50℃で1週間保存した生版、3ヶ月保存した生版)を検査ネガを用いて、ケミカルランプ付き露光機で4分間露光、現像してレリーフを作って評価した。
3)白抜け深度(スリット深度):ネガにおける細線(600μm巾、300μm巾)が、レリーフにおいて何μmの深さとなって現れるかを評価するものであり、これはレリーフ同士が接近した網点や白抜き文字等のレリーフ間の深さの評価となり、深いほどシャープな印刷物が得られる。
【0020】
参考例1
UV吸収剤Aとしてジヒドロチオ-p-トルイジン0.5重量部、UV吸収剤Bとして2ーヒドロキシナフトエ酸エチレングリコールエステル1.0重量部をジメチルアミノアセトアミド3.6重量部に溶解させて、ポリエステル樹脂溶液として"バイロン30SS"(東洋紡績(株)製品、固形分濃度30%、分子量20000〜25000)100重量部、アミン塩触媒として"U−CAT SA102"0.2重量部をジオキサン0.7重量部に溶解して調合した。次に多官能イソシアネートとして"コロネートL"(日本ポリウレタン工業(株)製品)10.2重量部を酢酸エチル1.4重量部で溶解させて調合し、接着剤組成物溶液1を得た。この溶液を125μm厚みの透明ポリエステルフィルム(支持体)に均一に塗布し、120℃熱風乾燥機で1分間乾燥して塗膜約20μmの透明な接着剤層を有する支持体1を得た。
【0021】
参考例2
UV吸収剤Aとしてジヒドロチオ-p-トルイジン0.5重量部、UV吸収剤Bとして9ーアントラセンメタノール0.5重量部ジメチルアミノアセトアミド3.6重量部に溶解させて、ポリエステル樹脂溶液として"バイロン30SS"(東洋紡績(株)製品、固形分濃度30%、分子量20000〜25000)100重量部、アミン塩触媒として"U−CAT SA102"0.2重量部をジオキサン0.7重量部に溶解して調合した。次に多官能イソシアネートとして"コロネートL"(日本ポリウレタン工業(株)製品)10.2重量部を酢酸エチル1.4重量部で溶解させて調合して接着剤組成物溶液2を得た。この溶液を参考例1と同様に125μm厚みの透明ポリエステルフィルムに均一に塗布し、120℃熱風乾燥機で1分間乾燥して塗膜約20μmの透明な接着剤層を有する支持体2を得た。
【0022】
参考例3
UV吸収剤Aとしてジヒドロチオ-p-トルイジン0.5重量部、UV吸収剤Bとして2ーアミノベンゾフェノン1.0重量部、ジメチルアミノアセトアミド3.6重量部に溶解させて、ポリエステル樹脂溶液として"バイロン30SS"(東洋紡績(株)製品、固形分濃度30%、分子量20000〜25000)100重量部、アミン塩触媒として"U−CAT SA102"0.2重量部をジオキサン0.7重量部に溶解して調合した。次に多官能イソシアネートとして"コロネートL"(日本ポリウレタン工業(株)製品)10.2重量部を酢酸エチル1.4重量部で溶解させて調合し、接着剤組成物溶液3を得た。この溶液を参考例1と同様に125μm厚みの透明ポリエステルフィルムに均一に塗布し、120℃熱風乾燥機で1分間乾燥して塗膜約20μmの透明な接着剤層を有する支持体3を得た。
【0023】
参考例4
ポリエステル樹脂溶液として"バイロン30SS"(東洋紡績(株)製品、固形分濃度30%、分子量20000〜25000)100重量部、アミン塩触媒として"U−CAT SA102"0.2重量部をジオキサン0.7重量部に溶解して調合した。次に多官能イソシアネートとして"コロネートL"(日本ポリウレタン工業(株)製品)10.2重量部を酢酸エチル1.4重量部で溶解させて調合し、接着剤組成物溶液4を得た。この溶液を実施例1と同様に125μm厚みの透明ポリエステルフィルムに均一に塗布し、120℃熱風乾燥機で1分間乾燥して塗膜約20μmの透明な接着剤層を有する支持体4を得た。
【0024】
参考例5
UV吸収剤Aとしてジヒドロチオ-p-トルイジン0.5重量部とジメチルアミノアセトアミド1.0重量部に溶解させて、ポリエステル樹脂溶液として"バイロン30SS"(東洋紡績(株)製品、固形分濃度30%、分子量20000〜25000)100重量部、アミン塩触媒として"U−CAT SA102"0.2重量部をジオキサン0.7重量部に溶解して調合した。次に多官能イソシアネートとして"コロネートL"(日本ポリウレタン工業(株)製品)10.2重量部を酢酸エチル1.4重量部で溶解させて調合し、接着剤組成物溶液5を得た。この溶液を参考例1と同様に125μm厚みの透明ポリエステルフィルムに均一に塗布し、120℃熱風乾燥機で1分間乾燥して塗膜約20μmの透明な接着剤層を有する支持体5を得た。
【0025】
実施例1〜3、比較例1、2
前記参考例1〜5で得られた接着層を有する支持体1〜5の上に水現像可能な感光性樹脂版“プリンタイト”EFタイプ及びKFタイプ(商標、東洋紡績(株)製)に相当する感光性樹脂組成物を約300μm程度の層厚になるように、それぞれ塗布した後で125μmのポリエステルフィルムをラミネートし、感光性樹脂積層体(生版)1〜5を得た。
製造後50℃で1週間保存した生版と3ヶ月保存した生版を用いて、それぞれケミカルランプ付き露光機で4分間露光、現像してレリーフを作って評価した。その結果を下記表1に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
【発明の効果】
本発明感光性樹脂積層体は、表1からも明らかなように、ハレーション防止効果に優れ、解像性も優れ、且つ経時安定性にも優れているので、産業界に寄与すること大である。
Claims (1)
- 少なくとも支持体、接着層および感光性樹脂層を有する印刷レリーフ用感光性樹脂積層体において、前記支持体および接着層が、360nmでの吸光度0.6以上、380〜400nmでの吸光度0.3以上、450nm以上での吸光度が0.1以下であり、且つ接着層に、ポリエステル樹脂、イソシアネート基を2個以上有する化合物、360nm付近に吸収を持つ化合物Aとしてジヒドロチオ-p-トルイジン、380〜400nmに吸収を持つ化合物Bとして2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸エチレングリコールエステル、9−アントラセンメタノール、又は2−アミノベンゾフェノンが含有されていることを特徴とする感光性樹脂積層体。
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