本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る内燃機関の動弁装置の第1実施形態を示す断面図であり、内燃機関10は、シリンダヘッド11を備え、このシリンダヘッド11は、吸気バルブ12及び排気バルブ13を強制的に駆動して開閉するバルブ強制開閉型の動弁装置15を設けたものである。
動弁装置15は、シリンダヘッド本体17に回転自在に取付けられたカムシャフト18と、シリンダヘッド本体17に取付けられたロッカシャフト21と、このロッカシャフト21にスイング自在に取付けられるとともにカムシャフト18で駆動されるロッカアーム22と、このロッカアーム22の端部に連結機構23を介して連結されてシリンダヘッド本体17の吸気ポート24を開閉する吸気バルブ12と、図示せぬロッカシャフトにスイング自在に取付けられたロッカアーム(不図示)の端部に連結されてシリンダヘッド本体17の排気ポート26を開閉する排気バルブ13とを備える。なお、31は吸気ポート24及び排気ポート26に連通する燃焼室、32は燃焼室31に突出する点火プラグである。
カムシャフト18は、軸線に直交するように形成された円板部41を備え、この円板部41の側面41aにカム溝42が形成されている。
カム溝42は、ロッカアーム22の先端に形成された従動子22aが挿入された部分であり、吸気バルブ12を開くための開弁用カム44と、吸気バルブ12を閉じるための閉弁用カム45とを備え、これらの開弁用カム44及び閉弁用カム45が前述の従動子22aと摺動する。なお、47,48はバルブガイドである。
図2は本発明に係る内燃機関の動弁装置の第2実施形態を示す断面図であり、内燃機関60は、シリンダヘッド61を備え、このシリンダヘッド61は、吸気バルブ62を強制的に駆動して開閉するバルブ強制開閉型の動弁装置65を設けたものである。
動弁装置65は、シリンダヘッド本体61aに回転自在に取付けられたカムシャフト67と、シリンダヘッド本体61aに取付けられたロッカシャフト71,72と、これらのロッカシャフト71,72にスイング自在に取付けられるとともにカムシャフト67で駆動される開弁用ロッカアーム73及び閉弁用ロッカアーム74と、これらの開弁用ロッカアーム73及び閉弁用ロッカアーム74で駆動されて吸気ポート76を開閉する吸気バルブ62とからなる。なお、78は吸気バルブ62が開いたときに吸気ポート76に連通する燃焼室である。
カムシャフト67は、開弁用ロッカアーム73を駆動する開弁用カム81と、閉弁用ロッカアーム74を駆動する閉弁用カム82とを備える。なお、81aは開弁用ロッカアーム73と摺動する開弁用カム面、82aは閉弁用ロッカアーム74と摺動する閉弁用カム面である。
開弁用ロッカアーム73は、開弁用カム81と摺動するカム側摺動面73aと、吸気バルブ62の端部62Aと摺動するバルブ側摺動面73bとを備える。
閉弁用ロッカアーム74は、閉弁用カム82と摺動するカム側摺動面74aと、吸気バルブ62の端部62Aと摺動するバルブ側摺動面74bとを備える。
吸気バルブ62の端部62Aは、開弁用ロッカアーム73のバルブ側摺動面73bと摺動する開弁側摺動面62aと、閉弁用ロッカアーム74のバルブ側摺動面74bと摺動する閉弁側摺動面62bとを備える。
この実施形態では、吸気バルブ62の端部62Aが図1に示された実施形態の従動子22aに相当する。
図3は本発明に係る開弁用カム及び閉弁用カムに関するバルブリフト量、バルブ速度及びバルブ加速度を示すグラフであり、例えば、図1に示された開弁用カム44及び閉弁用カム45で吸気バルブ12を開閉する場合のものである。
図13に示された実施形態と同一構成については同一符号を付け、詳細説明は省略する。グラフの縦軸はバルブリフト量、このバルブリフト量から算出されるバルブ速度、及びこのバルブ速度から算出されるバルブ加速度、横軸はカム回転角度を表す。
開弁用カムのバルブリフト曲線101は、図13に示されたバルブリフト曲線301に対してカム回転角度がα1〜α2の範囲及びα4〜α5の範囲で変更されたものであり、これらの範囲で傾斜した直線部101A,101Bを備えている。これらの直線部101A,101Bの両端は変曲点103,104、変曲点106,107である。
閉弁用カムのバルブリフト曲線111は、図13に示されたバルブリフト曲線306に対してカム回転角度がα1〜α2の範囲及びα4〜α5の範囲で変更したものであり、これらの範囲で傾斜した直線部111A,111Bを備えている。これらの直線部111A,111Bの両端は変曲点113,114、変曲点116,117である。
上記したバルブリフト曲線101,111におけるカム回転角度がα1〜α2の範囲を、後に詳述する第1移り変わり区間、カム回転角度がα4〜α5の範囲を、後に詳述する第2移り変わり区間とする。
上記した直線部101Aと直線部111Aとは平行で、同様に、直線部101Bと直線部111Bとは平行である。
バルブリフト曲線101,111間のバルブリフト量差、即ち、クリアランスCCは、例えば0.1mmであり、第1移り変わり区間及び第2移り変わり区間でもこの値である。このように、本実施形態では、第1移り変わり区間及び第2移り変わり区間でのバルブリフト曲線101,111間のクリアランスCCを、例えば、図14に示された従来技術のものよりも大きくして、動弁装置の各部品の加工精度、組付精度を低くしている。これにより、内燃機関のコスト低減することが可能になる。また、従動子が開弁用カムや閉弁用カムと摺動するときの潤滑油の粘性抵抗、撹拌抵抗が小さくなり、内燃機関の出力の損失を低減することも可能になる。
上記のカム回転角度α1〜α2の範囲は、図13に示されたバルブリフト曲線301,306の変曲点302,307が存在する範囲であり、カム回転角度α4〜α5の範囲は、図13に示されたバルブリフト曲線301,306の変曲点303,308が存在する範囲である。
バルブリフト曲線101,111を微分して得られるバルブ速度曲線121におけるカム回転角度α1〜α2の範囲は、水平な直線部121Aとなり、バルブ速度曲線121におけるカム回転角度α4〜α5の範囲は、水平な直線部121Bとなる。
直線部121Aは、バルブ速度が、バルブ速度曲線121のピーク、即ち、バルブ速度曲線311(図13参照)のピークである最大速度点312よりも低下している部分であり、バルブ速度が一定に維持される部分でもある。
直線部121Bは、バルブ速度の絶対値が、バルブ速度曲線121の負側のピーク、即ち、バルブ速度曲線311(図13参照)の負側のピークである最小速度点314のバルブ速度の絶対値よりも低下している部分であり、バルブ速度の絶対値が一定に維持される部分でもある。
図中の123は開弁用カムのカム面から従動子(即ち、従動子22a(図1参照)、端部62A(図2参照)である。)が離れる飛出し点であり、バルブ速度曲線121上のカム回転角度α1に位置し、バルブ速度曲線121の正側でバルブ速度(=V1)が最大となるピークである。124は閉弁用のカム面に従動子が着地する着地点であり、直線部121A上に位置する。これらの飛出し点123及び着地点124については、図4で詳述する。
これらの飛出し点123での従動子の飛出し速度(バルブ速度)と、着地点124での従動子の着地速度(バルブ速度)との速度差をΔV1とする。
本実施形態では、飛出し点123のバルブ速度V1を、飛出し点312(図13も参照)のバルブ速度よりも低下させ、着地点124のバルブ速度を、着地点316(図13も参照)のバルブ速度よりも高くすることで、速度差ΔV1を速度差ΔVUよりも小さくしている。
同様に、図中の127は閉弁用カムのカム面から従動子が離れる飛出し点であり、バルブ速度曲線121上のカム回転角度α4に位置し、バルブ速度曲線121の負側でバルブ速度(=V2)の絶対値が最大となるピークである。128は開弁用のカム面に従動子が着地する着地点であり、直線部121B上に位置する。これらの飛出し点127及び着地点128については、図4で詳述する。
これらの飛出し点127での従動子の飛出し速度と、着地点128での従動子の着地速度との速度差をΔV2とする。
本実施形態では、飛出し点127のバルブ速度V2の絶対値を、飛出し点314(図13も参照)のバルブ速度の絶対値よりも小さくし、着地点128のバルブ速度の絶対値を、着地点318(図13も参照)のバルブ速度の絶対値よりも大きくすることで、速度差ΔV2を速度差ΔVLよりも小さくしている。
バルブ速度曲線121を微分して得られるバルブ加速度曲線125は、バルブ速度曲線121の直線部121Aに対応してカム回転角度α1〜α2の範囲にバルブ加速度が一定でゼロとなる直線部125Aと、バルブ速度曲線121の直線部121Bに対応してカム回転角度α4〜α5の範囲にバルブ加速度が一定でゼロとなる直線部125Bとを備える。
図4(a)〜(d)は本発明に係る開弁用カム及び閉弁用カムに関するバルブリフト曲線の作用を示す作用図であり、(a),(c)の実施例は図3に示されたバルブリフト曲線101,111のカム回転角度α1〜α2の範囲及びカム回転角度α4〜α5の範囲を拡大したものであり、(b),(d)の比較例は図13に示されたバルブリフト曲線301,306のカム回転角度θ1及びカム回転角度θ3を中心とした部分を拡大したものである。
(a)の実施例において、バルブリフト曲線101,111を図1に示されたカム溝42に見立て、バルブリフト曲線101を開弁用カム44、バルブリフト曲線111を閉弁用カム45とし、図1に示されたロッカアーム22の従動子22aをハッチングを施した丸印とする。また、従動子22aは実際にはカム溝42の動きに伴ってカム溝42のほぼ法線方向(図の上下方向)に移動するが、ここでは、説明の都合上、バルブリフト曲線101,111側を静止させ、従動子22aがバルブリフト曲線101,111間を移動するようにした。
まず、従動子22aが、矢印で示すように、開弁用カム44のバルブリフト曲線101と摺動しながら変曲点103に至ると、変曲点103から先は、変曲点103から飛出し速度V1(図3参照)で離れ、慣性力によって変曲点103での接線101Tに沿って移動し、バルブリフト曲線111の直線部111Aに着地する。図中の111Lは直線部111A上の着地点である。
(b)の比較例においても、バルブリフト曲線301,306をカム溝に見立て、バルブリフト曲線301をカム溝の開弁用カム、バルブリフト曲線306をカム溝の閉弁用カムとし、バルブリフト曲線301,306間を従動子22aが移動するものとする。
まず、従動子22aが、矢印で示すように、開弁用カムのバルブリフト曲線301と摺動しながら変曲点302に至ると、変曲点302から先は、変曲点302から飛出し速度VU(図13参照)で離れ、慣性力によって変曲点302での接線301Tに沿って移動し、バルブリフト曲線306に着地する。図中の306Lはバルブリフト曲線306上の着地点である。
(c)の実施例において、従動子22aが、矢印で示すように、閉弁用カム45のバルブリフト曲線111と摺動しながら変曲点116に至ると、変曲点116から先は、変曲点116から飛出し速度V2(図3参照)で離れ、慣性力によって変曲点116の接線111Tに沿って移動し、バルブリフト曲線101の直線部101Bに着地する。図中の101Lは直線部101B上の着地点である。
(d)の比較例において、従動子22aが、矢印で示すように、閉弁用カムのバルブリフト曲線306と摺動しながら変曲点308に至ると、変曲点308から先は、変曲点308から飛出し速度VL(図13参照)で離れ、慣性力によって変曲点308での接線306Tに沿って移動し、バルブリフト曲線301に着地する。図中の301Lはバルブリフト曲線301上の着地点である。
以上の(a),(b)において、(b)の比較例では、従動子22aが、変曲点302でバルブリフト曲線301から離れるため、図13に示したように、バルブ速度が最大の位置で離れることになるため、従動子22aの飛出し速度VUは最大となり、この飛出し速度VUをほとんど維持したまま、バルブリフト曲線306に着地するが、従動子22aがバルブリフト曲線301から飛出してバルブリフト曲線306に着地する間は、実際には、バルブリフト曲線306(即ち、閉弁用カム)の速度(即ち、バルブ速度)が次第に小さくなり、従動子22aがカム回転角度α2よりも角度が進んだ位置でバルブリフト曲線306に着地するときには、図13に示したように、従動子22aの着地速度は飛出し速度VUよりも大幅に小さくなるので、上記の飛出し速度と着地速度との速度差ΔVU、即ち、従動子22aのバルブリフト曲線306への衝突速度は大きくなり、衝突時の撃力は大きくなる。
更に、従動子22aの着地時のバルブリフト曲線306への入射角θi11が大きくなるため、衝突面に対して直交する向きの従動子22aのバルブ速度成分が大きくなり、このことからも、撃力は大きくなる。
これに対して、(a)の実施例では、比較例の変曲点302((b)参照)よりもカム回転角度が手前の位置にある変曲点103で従動子22aがバルブリフト曲線101から離れるため、図3に示したように、従動子22aの飛出し速度V1(図3参照)は、比較例に対して小さくなる。この飛出し速度V1は、従動子22aの移動中はほとんど維持されて直線部111Aに着地するが、従動子22aがバルブリフト曲線101から飛出してバルブリフト曲線111に着地する間に、実際には、バルブリフト曲線111(即ち、閉弁用カム45)の速度(即ち、バルブ速度)が変化し、従動子22aがカム回転角度α2よりも手前の位置で直線部111Aに着地するときには、図3に示したように、従動子22aの着地速度は飛出し速度よりもやや小さくなるだけで、上記の飛出し速度と着地速度との速度差ΔV1、即ち、従動子22aの直線部111Aへの衝突速度は、比較例の場合よりも小さくなり、衝突時の撃力は小さくなる。即ち、騒音が抑えられる。
更に、従動子22aの着地時の直線部111Aへの入射角θi1は(b)の比較例の入射角θi11よりも小さくなるため、衝突面に対して直交する向きの従動子22aのバルブ速度成分は小さくなり、このことからも、撃力は比較例に比べて小さくなる。
上記したカム回転角度がα1〜α2の範囲は、実施例において、従動子22aがバルブリフト曲線101からバルブリフト曲線111へ移り変わるので、第1移り変わり区間と呼ぶ。
以上の(c),(d)においても同様に、(d)の比較例では、従動子22aが、変曲点308でバルブリフト曲線306から離れるため、図13に示したように、バルブ速度の絶対値が最大の位置で離れることになるため、従動子22aの飛出し速度VLの絶対値は最大となり、この飛出し速度VLをほとんど維持したまま、バルブリフト曲線301に着地するが、従動子22aがバルブリフト曲線306から飛出してバルブリフト曲線301に着地する間は、実際には、バルブリフト曲線301(即ち、開弁用カム)の速度(即ち、バルブ速度)の絶対値が次第に小さくなり、従動子22aがカム回転角度α5よりも角度が進んだ位置でバルブリフト曲線301に着地するときには、図13に示したように、従動子22aの着地速度の絶対値は飛出し速度VLの絶対値よりも大幅に小さくなるので、上記の飛出し速度VLの絶対値と着地速度の絶対値との速度差ΔVL、即ち、従動子22aのバルブリフト曲線301への衝突速度は大きくなり、衝突時の撃力は大きくなる。
更に、従動子22aの着地時のバルブリフト曲線301への入射角θi12が大きくなるため、衝突面に対して直交する向きの従動子22aのバルブ速度成分が大きくなり、このことからも、撃力は大きくなる。
これに対して、(c)の実施例では、比較例の変曲点308((b)参照)よりもカム回転角度が手前の位置にある変曲点116で従動子22aがバルブリフト曲線111から離れるため、図3に示したように、従動子22aの飛出し速度V2の絶対値は、比較例の飛出し速度の絶対値に対して小さくなる。この飛出し速度V2は、従動子22aの移動中はほとんど維持されて直線部101Bに着地するが、従動子22aがバルブリフト曲線111から飛出してバルブリフト曲線101に着地する間に、実際には、バルブリフト曲線101(即ち、開弁用カム44)の速度(即ち、バルブ速度)が変化し、従動子22aがカム回転角度α5よりも手前の位置で直線部101Bに着地するときには、図3に示したように、従動子22aの着地速度は飛出し速度よりもやや小さくなるだけで、上記の飛出し速度と着地速度との速度差ΔV2、即ち、従動子22aの直線部101Bへの衝突速度は、比較例の場合よりも小さくなり、衝突時の撃力は小さくなる。即ち、騒音が抑えられる。
更に、従動子22aの着地時の直線部101Bへの入射角θi2は(d)の比較例の入射角θi12よりも小さくなるため、衝突面に対して直交する向きの従動子22aのバルブ速度成分は小さくなり、このことからも、撃力は比較例に比べて小さくなる。
上記したカム回転角度がα4〜α5の範囲は、実施例において、従動子22aがバルブリフト曲線111からバルブリフト曲線101へ移り変わるので、第2移り変わり区間と呼ぶ。
図5は本発明に係る開弁用カム及び閉弁用カムに関するバルブリフト量、バルブ速度及びバルブ加速度の別実施形態を示すグラフであり、例えば、図1に示された開弁用カム44及び閉弁用カム45で吸気バルブ12を開閉する場合のものである。
図13に示した実施形態と同一構成については同一符号を付け、詳細説明は省略する。グラフの縦軸はバルブリフト量、このバルブリフト量から求められるバルブ速度、及びこのバルブ速度から求められるバルブ加速度、横軸はカム回転角度を表す。
開弁用カムのバルブリフト曲線131は、図13に示したバルブリフト曲線301に対してカム回転角度がα1〜α2の範囲(即ち、第1移り変わり区間)及びα4〜α5の範囲(第2移り変わり区間)で変更したものであり、これらの範囲で二次曲線部131A,131Bを備えている。これらの二次曲線部131A,131Bの両端は変曲点133,134、変曲点136,137である。
閉弁用カムのバルブリフト曲線141は、図13に示されたバルブリフト曲線306に対してカム回転角度がα1〜α2の範囲及びα4〜α5の範囲で変更したものであり、これらの範囲で二次曲線部141A,141Bを備えている。これらの二次曲線部141A,141Bの両端は変曲点143,144、変曲点146,147である。
上記した二次曲線部131Aと二次曲線部141Aとは平行で、同様に、二次曲線部131Bと二次曲線部141Bとは平行である。
上記のカム回転角度α1〜カム回転角度α2の範囲は、図13に示されたバルブリフト曲線301,306の変曲点302,307が存在する範囲であり、カム回転角度α4〜カム回転角度α5の範囲は、図13に示されたバルブリフト曲線301,306の変曲点303,308が存在する範囲である。
バルブリフト曲線131,141を微分して得られるバルブ速度曲線151におけるカム回転角度α1〜α2の範囲は、傾斜した直線部151Aとなり、バルブ速度曲線151におけるカム回転角度α4〜α5の範囲は、傾斜した直線部151Bとなる。
直線部151Aは、バルブ速度が、バルブ速度曲線151のピーク、即ち、バルブ速度曲線311(図13参照)のピークである最大速度点312よりも低下している部分であり、バルブ速度が一定の割合で低下する部分でもある。
直線部151Bは、バルブ速度の絶対値が、バルブ速度曲線151の負側のピーク、即ち、バルブ速度曲線311(図13参照)の負側のピークである最小速度点314のバルブ速度の絶対値よりも低下している部分であり、バルブ速度の絶対値が一定の割合で低下する部分でもある。
図中の153は開弁用カムのカム面から従動子(即ち、従動子22a(図1参照)、端部62A(図2参照)である。)が離れる飛出し点であり、バルブ速度曲線151上のカム回転角度α1に位置し、バルブ速度曲線151の正側でバルブ速度(=V3)が最大となるピークである。154は閉弁用のカム面に従動子が着地する着地点であり、直線部151A上に位置する。これらの飛出し点153及び着地点154については、図6で詳述する。
これらの飛出し点153での従動子の飛出し速度(バルブ速度)と、着地点154での従動子の着地速度(バルブ速度)との速度差をΔV3とする。
本実施形態では、飛出し点153のバルブ速度を、飛出し点312(図13も参照)のバルブ速度よりも小さくし、着地点154のバルブ速度を、着地点316(図13も参照)のバルブ速度よりも大きくすることで、速度差ΔV3を速度差ΔVUよりも小さくしている。
同様に、図中の157は閉弁用カムのカム面から従動子が離れる飛出し点であり、バルブ速度曲線151上のカム回転角度α4に位置し、バルブ速度曲線151の負側でバルブ速度(=V4)の絶対値が最大となるピークである。158は開弁用のカム面に従動子が着地する着地点であり、直線部151B上に位置する。これらの飛出し点157及び着地点158については、図6で詳述する。
これらの飛出し点157での従動子の飛出し速度と、着地点158での従動子の着地速度との速度差をΔV4とする。
本実施形態では、飛出し点157のバルブ速度の絶対値を、飛出し点314(図13も参照)のバルブ速度の絶対値よりも小さくし、着地点158のバルブ速度の絶対値を、着地点318(図9も参照)のバルブ速度の絶対値よりも大きくすることで、速度差ΔV4を速度差ΔVLよりも小さくしている。
バルブ速度曲線151を微分して得られるバルブ加速度曲線155は、バルブ速度曲線151の直線部151Aに対応してカム回転角度α1〜α2の範囲にバルブ加速度が一定で負となる直線部155Aと、バルブ速度曲線151の直線部151Bに対応してカム回転角度α4〜α5の範囲にバルブ加速度が一定で正となる直線部155Bとを備える。
図6(a)〜(d)は本発明に係る開弁用カム及び閉弁用カムに関するバルブリフト曲線の別実施形態の作用を示す作用図であり、(a),(c)の実施例は図5に示されたバルブリフト曲線131,141のカム回転角度α1〜α2の範囲及びカム回転角度α4〜α5の範囲を拡大したものであり、(b),(d)の比較例は図13に示されたバルブリフト曲線301,306のカム回転角度θ1及びカム回転角度θ3を中心とした部分を拡大したものである。
(a)の実施例において、バルブリフト曲線131,141を図1に示されたカム溝42に見立て、バルブリフト曲線131を開弁用カム44、バルブリフト曲線141を閉弁用カム45とし、図1に示されたロッカアーム22の従動子22aをハッチングを施した丸印とする。また、従動子22aは実際にはカム溝42の動きに伴ってカム溝42のほぼ法線方向(図1の上下方向)に移動するが、ここでは、説明の都合上、バルブリフト曲線131,141側を静止させ、従動子22aがバルブリフト曲線131,141間を移動するようにした。
まず、従動子22aが、矢印で示すように、開弁用カム44のバルブリフト曲線131と摺動しながら変曲点133に至ると、変曲点133から先は、変曲点133から飛出し速度V3(図5参照)で離れ、慣性力によって変曲点133での接線131Tに沿って移動し、バルブリフト曲線141の二次曲線部141Aに着地する。図中の141Lは二次曲線部141A上の着地点、141Sは着地点141Lでの接線である。
(b)の比較例において、従動子22aは、矢印で示すように、開弁用カムのバルブリフト曲線301と摺動しながら変曲点302に至ると、変曲点302から先は、変曲点302での接線301Tに沿って移動し、バルブリフト曲線306の着地点306Lに着地する。
(c)の実施例において、従動子22aが、矢印で示すように、閉弁用カム45のバルブリフト曲線141と摺動しながら変曲点146に至ると、変曲点146から先は、変曲点146から飛出し速度V4(図5参照)で離れ、慣性力によって変曲点146の接線141Tに沿って移動し、バルブリフト曲線131の二次曲線部131Bに着地する。図中の131Lは二次曲線部131B上の着地点、131Sは着地点131Lでの接線である。
(d)の比較例において、従動子22aが、矢印で示すように、閉弁用カムのバルブリフト曲線306と摺動しながら変曲点308に至ると、変曲点308から先は、変曲点308での接線306Tに沿って移動し、バルブリフト曲線301の着地点301Lに着地する。
以上の(a),(b)において、(b)の比較例では、従動子22aの変曲点302での飛出し速度と着地点306Lでの着地速度との速度差ΔVUが大きく、バルブリフト曲線306に衝突したときの撃力は大きくなり、更に、従動子22aの着地時のバルブリフト曲線306への入射角θi11が大きくなるために衝突面に対して直交する向きの従動子22aのバルブ速度成分が大きくなり、このことからも、撃力は大きくなる。
これに対して、(a)の実施例では、比較例の変曲点302((b)参照)よりもカム回転角度が手前の位置にある変曲点133で従動子22aがバルブリフト曲線131から離れるため、図5に示したように、従動子22aの飛出し速度V3(図5参照)は、比較例に対して小さくなる。この飛出し速度V3は、従動子22aの移動中はほとんど維持されて二次曲線部141Aに着地するが、従動子22aがバルブリフト曲線131から飛出してバルブリフト曲線141に着地する間に、実際には、バルブリフト曲線141(即ち、閉弁用カム45)の速度(即ち、バルブ速度)が変化し、従動子22aがカム回転角度α2よりも手前の位置で二次曲線部141Aに着地するときには、図5に示したように、従動子22aの着地速度は飛出し速度よりもやや小さくなるだけで、上記の飛出し速度と着地速度との速度差ΔV3、即ち、従動子22aの二次曲線部141Aへの衝突速度は、比較例の場合よりも小さくなり、撃力は小さくなる。即ち、騒音が抑えられる。
更に、従動子22aの着地時の二次曲線部141Aへの入射角θi3は(b)の比較例の入射角θi11よりも小さくなるため、衝突面に対して直交する向きの従動子22aのバルブ速度成分は小さくなり、このことからも、撃力は比較例に比べて小さくなる。
以上の(c),(d)においても同様に、(d)の比較例では、従動子22aの飛出し速度の絶対値と着地速度の絶対値との速度差ΔVLが大きく、この速度差ΔVLで従動子22aのバルブリフト曲線301に衝突したときの撃力は大きくなり、更に、従動子22aの着地時のバルブリフト曲線301への入射角θi12が大きくなるために衝突面に対して直交する向きの従動子22aのバルブ速度成分が大きくなり、このことからも、撃力は大きくなる。
これに対して、(c)の実施例では、比較例の変曲点308((b)参照)よりもカム回転角度が手前の位置にある変曲点146で従動子22aがバルブリフト曲線141から離れるため、図5に示したように、従動子22aの飛出し速度V4は、比較例に対して小さくなる。この飛出し速度V4は、従動子22aの移動中はほとんど維持されて二次曲線部131Bに着地するが、従動子22aがバルブリフト曲線141から飛出してバルブリフト曲線131に着地する間に、実際には、バルブリフト曲線131(即ち、開弁用カム44)の速度(即ち、バルブ速度)が変化し、従動子22aがカム回転角度α5よりも手前の位置で二次曲線部131Bに着地するときには、図5に示したように、従動子22aの着地速度の絶対値は飛出し速度の絶対値よりもやや小さくなるだけで、上記の飛出し速度と着地速度との速度差ΔV4、即ち、従動子22aの二次曲線部131Bへの衝突速度は、比較例の場合よりも小さくなり、撃力は小さくなる。即ち、騒音が抑えられる。
更に、従動子22aの着地時の二次曲線部131Bへの入射角θi4は(d)の比較例の入射角θi12よりも小さくなるため、衝突面に対して直交する向きの従動子22aのバルブ速度成分は小さくなり、このことからも、撃力は比較例に比べて小さくなる。
図7(a)〜(c)は本発明に係る開弁用カム及び閉弁用カムのカムプロフィールの設定手順(前半)を示す説明図である。
(a)の第1ステップでは、エンジンの基本仕様に基づき、基本バルブリフト曲線301と、この基本バルブリフト曲線301を微分して求められる基本バルブ速度曲線311を作成する。バルブが開いているカム回転角度範囲を基本カム開角とする。
(b)の第2ステップでは、基本バルブ速度曲線311((a)参照)における速度差ΔVU((a)参照)よりも小さな速度差ΔV1となる部分を含む任意のバルブ速度曲線(改良バルブ速度曲線である。)として、例えば、改良バルブ速度曲線241A、改良バルブ速度曲線241Bを作成する。
改良バルブ速度曲線241Aでのバルブが開いているカム回転角度範囲をカム開角A、改良バルブ速度曲線241Bでのバルブが開いているカム回転角度範囲をカム開角Bとする。
(c)の第3ステップでは、改良バルブ速度曲線(改良バルブ速度曲線241A、改良バルブ速度曲線241B)のバルブ速度の積分値が基本バルブ速度曲線311のバルブ速度の積分値に合致する又は近づくように、改良バルブ速度曲線241A,241Bのバルブ速度の積分値を基本バルブ速度曲線311のバルブ速度の積分値に合わせる作業を行い、最終バルブ速度曲線121を作成する。このステップでは、カム開角A,Bを基本カム開角に合わせる作業も行う。
ここで、改良バルブ速度曲線241A,241Bのバルブ速度の積分値が基本バルブ速度曲線311のバルブ速度の積分値に合致する、又は近づくとは、基本バルブ速度曲線311のバルブ速度の積分値と改良バルブ速度曲線241A,241Bのバルブ速度の積分値との差が、基本バルブ速度曲線311のバルブ速度の積分値に対して0〜10%の範囲にあることをいう。
図8(a),(b)は本発明に係る開弁用カム及び閉弁用カムのカムプロフィールの設定手順(後半)を示す説明図である。
(a)の第4ステップでは、最終バルブ速度曲線121を積分して、例えば、開弁用カムの最終バルブリフト曲線101を作成する。なお、閉弁用カムの最終バルブリフト曲線については、開弁用カムの最終バルブリフト曲線にバルブリフト量差を加味して作成する。
(b)の第5ステップでは、最終バルブリフト曲線101((a)参照)にロッカアーム仕様を加味した上で、開弁用カム44,81及び閉弁用カム45,82のカムプロフィールを決定する。
図9は本発明に係る開弁用カム及び閉弁用カムのバルブリフト曲線の第1変形例を示すグラフであり、縦軸はバルブリフト量、横軸はカム回転角度を表す。
図中の161は中央部が高い山形の開弁用カムのバルブリフト曲線であり、図3に示されたバルブリフト曲線101の一部が変形されたものである。また、図中の171は中央部が高い山形の閉弁用カムのバルブリフト曲線であり、図3に示されたバルブリフト曲線111の一部が変形されたものである。カム回転角度β3〜β4の範囲が図3のカム回転角度α1〜α2の範囲、カム回転角度β6が図3のカム回転角度α3、カム回転角度β8〜β9の範囲が図3のカム回転角度α4〜α5の範囲である。
バルブリフト曲線161は、カム回転角度β1〜β4の範囲の第1基本リフト部162と、カム回転角度β4〜β5の範囲の直線状の第2接続部163と、カム回転角度β5〜β7の範囲の大リフト部164と、カム回転角度β7〜β8の直線状の第3接続部166と、カム回転角度β8〜β11の範囲の第2基本リフト部167とからなり、第1基本リフト部162及び第2基本リフト部167はバルブリフト曲線101の一部である。
第1基本リフト部162は直線部101Aを含み、第2基本リフト部167は直線部101Bを含む。
バルブリフト曲線171は、カム回転角度β1〜β2の範囲の第1ランプ部172と、カム回転角度β2〜β3の範囲の直線状の第1接続部173と、カム回転角度β3〜β9の範囲の基本リフト部174と、カム回転角度β9〜β10の範囲の直線状の第4接続部176と、カム回転角度β10〜β11の範囲の第2ランプ部177とからなり、基本リフト部174はバルブリフト曲線111の一部である。
基本リフト部174は直線部111A,111Bを含む。
カム回転角度は、バルブリフト曲線161,171の山のふもとを含むカム回転角度β1〜β3の範囲の第1ランプ区間と、バルブリフト曲線161,171の山の中腹を含むカム回転角度β3〜β4の範囲の前述の第1移り変わり区間と、バルブリフト曲線161,171の山の頂上である最大リフト点168,309及びこの近傍を含むカム回転角度β4〜β8の範囲の大リフト区間と、バルブリフト曲線161,171の山の中腹を含むカム回転角度β8〜β9の範囲の前述の第2移り変わり区間と、バルブリフト曲線161,171の山のふもとを含むカム回転角度β9〜β11の範囲の第2ランプ区間とに区分される。
バルブリフト曲線161では、カム回転角度β4〜β5の範囲が第2接続区間、カム回転角度β7〜β8の範囲が第3接続区間となっている。
バルブリフト曲線171では、カム回転角度β2〜β3の範囲が第1接続区間、カム回転角度β9〜β10の範囲が第4接続区間となっている。
上記した第1基本リフト部162と第1ランプ部172とのクリアランスをCA、第2基本リフト部167と第2ランプ部177とのクリアランスをCB、大リフト部164と基本リフト部174とのクリアランスをCDとすると、例えば、CA=CB=CD=0.5mmである。
このように、開弁用カムのバルブリフト曲線161と閉弁用カムのバルブリフト曲線171とのクリアランスを、第1移り変わり区間及び第2移り変わり区間を除いた部分で、第1移り変わり区間及び第2移り変わり区間のクリアランスCCよりも大きなクリアランスCA,CB,CDとすることで、第1移り変わり区間及び第2移り変わり区間に対応する開弁用カム及び閉弁用カムのカム面を除くカム面の加工精度や、このカム面から吸気バルブ、排気バルブに至るまでの部品の加工精度を高くする必要がなくなるため、カムシャフトを含め、動弁系部品のコストを下げることができる。
図10は本発明に係る開弁用カム及び閉弁用カムのバルブリフト曲線の第2変形例を示すグラフであり、縦軸はバルブリフト量、横軸はカム回転角度を表す。図13に示された実施形態と同一構成については同一符号を付け、詳細説明は省略する。
図中の181は中央部が高い山形の開弁用カムのバルブリフト曲線であり、図5に示されたバルブリフト曲線131の一部が変形されたものである。また、図中の191は中央部が高い山形の閉弁用カムのバルブリフト曲線であり、図5に示されたバルブリフト曲線141の一部が変形されたものである。
バルブリフト曲線181は、カム回転角度β1〜β4の範囲の第1基本リフト部182と、第2接続部163と、大リフト部164と、第3接続部166と、カム回転角度β8〜β11の範囲の第2基本リフト部187とからなり、第1基本リフト部182及び第2基本リフト部187はバルブリフト曲線131の一部である。
第1基本リフト部182は二次曲線部131Aを含み、第2基本リフト部187は二次曲線部131Bを含む。
バルブリフト曲線191は、第1ランプ部172と、第1接続部173と、カム回転角度β3〜β9の範囲の基本リフト部194と、第4接続部176と、第2ランプ部177とからなり、基本リフト部194はバルブリフト曲線141の一部である。
基本リフト部194は二次曲線部141A,141Bを含む。
上記した第1基本リフト部182と第1ランプ部172とのクリアランスをCE、第2基本リフト部187と第2ランプ部177とのクリアランスをCF、大リフト部164と基本リフト部194とのクリアランスをCGとすると、例えば、CE=CF=CG=0.5mmである。
このように、開弁用カムのバルブリフト曲線181と閉弁用カムのバルブリフト曲線191とのクリアランスを、第1移り変わり区間及び第2移り変わり区間を除いた部分で、第1移り変わり区間及び第2移り変わり区間のクリアランスCCよりも大きなクリアランスCE,CF,CGとすることで、第1移り変わり区間及び第2移り変わり区間に対応する開弁用カム及び閉弁用カムのカム面を除くカム面の加工精度や、このカム面から吸気バルブ、排気バルブに至るまでの部品の加工精度を高くする必要がなくなるため、カムシャフトを含め、動弁系部品のコストを下げることができる。
第1ランプ区間及び第2ランプ区間は、バルブリフト曲線181,191の山のふもとを含み、第1移り変わり区間及び第2移り変わり区間は、バルブリフト曲線181,191の山の中腹を含み、大リフト区間は、バルブリフト曲線181,191の山の頂上である最大リフト点188,309及びこの近傍を含む。
バルブリフト曲線181では、カム回転角度β4〜β5の範囲が第2接続区間、カム回転角度β7〜β8の範囲が第3接続区間となっている。
バルブリフト曲線191では、カム回転角度β2〜β3の範囲が第1接続区間、カム回転角度β9〜β10の範囲が第4接続区間となっている。
図11は本発明に係る開弁用カム及び閉弁用カムのバルブリフト曲線の第3変形例を示すグラフであり、縦軸はバルブリフト量、横軸はカム回転角度を表す。図13に示された実施形態と同一構成については同一符号を付け、詳細説明は省略する。
開弁用カムの正規バルブリフト曲線201は、図13に示された開弁用カムのバルブリフト曲線301に対してθ1〜θ3のカム回転角度範囲の大部分をバルブリフト量が小さくなる側へオフセットさせたものであり、θ1よりも小さいカム回転角度範囲の第1ランプ曲線202と、カム回転角度範囲θ1〜θ3の大リフト修正曲線203と、θ3より大きいカム回転角度範囲の第2ランプ曲線204とからなる。
第1ランプ曲線202及び第2ランプ曲線204は、バルブリフト曲線301に重なるものである。
大リフト修正曲線203は、バルブリフト曲線301の一部がオフセットされた中央曲線206と、この中央曲線206の両端に接続された接続曲線207,208とからなる。
閉弁用カムの正規バルブリフト曲線211は、図13に示された閉弁用カムのバルブリフト曲線306に対してθ1よりも小さいカム回転角度範囲の大部分、及びθ3よりも大きいカム回転角度範囲の大部分をバルブリフト量が大きくなる側へオフセットさせたものであり、θ1よりも小さいカム回転角度範囲の第1ランプ修正曲線212と、カム回転角度範囲θ1〜θ3の大リフト曲線213と、θ3より大きいカム回転角度範囲の第2ランプ修正曲線214とからなる。
第1ランプ修正曲線212は、バルブリフト曲線306の一部がオフセットされた端部曲線216と、この端部曲線216と大リフト曲線213とを接続する接続曲線217とからなる。
大リフト曲線213は、バルブリフト曲線306に重なるものである。
第2ランプ修正曲線214は、バルブリフト曲線306の一部がオフセットされた端部曲線218と、この端部曲線218と大リフト曲線213とを接続する接続曲線219とからなる。
図4(b),(d)に示したように、従動子22aは、カム回転角度がθ1まではバルブリフト曲線301上を摺動し、変曲点302でバルブリフト曲線301から飛出してバルブリフト曲線306上に着地し、バルブリフト曲線306上を摺動する。そして、カム回転角度θ3の変曲点308でバルブリフト曲線306から飛出し、バルブリフト曲線301上に着地する。
従って、バルブリフト曲線301のカム回転角度θ1〜θ3の範囲と、バルブリフト曲線306のカム回転角度θ1未満の範囲及びカム回転角度角度θ3を越える範囲とは、従動子22aが摺動しない範囲である。
図11に戻って、バルブリフト曲線301のカム回転角度θ1〜θ3の範囲の曲線を開弁用カムの無負荷部曲線331、バルブリフト曲線306のカム回転角度θ1未満の範囲の曲線を閉弁用カムの無負荷部曲線332、バルブリフト曲線306のカム回転角度θ3を越える範囲の曲線を無負荷部曲線333とする。
上記した中央曲線206は無負荷部曲線331の大部分をバルブリフト量が小さくなる側へオフセットさせ、端部曲線216は無負荷部曲線332の大部分をバルブリフト量が大きくなる側へオフセットさせ、端部曲線218は無負荷部曲線333の大部分をバルブリフト量が大きくなる側へオフセットさせたものである。
図13に示された開弁用カムのバルブ速度曲線311での飛出し点312と着地点316では、従動子は、バルブリフト曲線301での変曲点302で飛出し、着地点306L(図4(b)参照)で着地することから、従動子は、変曲点302のカム回転角度θ1よりも小さいカム回転角度で開弁用カムと摺動し、着地点306Lのカム回転角度よりも大きいカム回転角度で閉弁用カムと摺動することになる。
本発明では、従動子が摺動するカム回転角度範囲においては、バルブリフト曲線301,306の従動子が摺動する方をそのまま利用し、従動子が摺動しないカム回転角度範囲においては、バルブリフト曲線301,306の従動子が摺動しない方を他方に対して離れる側へオフセットさせた無負荷部バルブリフト摺動曲線としての大リフト修正曲線203、第1ランプ修正曲線212、第2ランプ修正曲線214を設定し、第1ランプ曲線202と、大リフト修正曲線203と、第2ランプ曲線204とで開弁用カムの正規バルブリフト曲線201を定め、この正規バルブリフト曲線201に基づいて開弁用カムのカムプロフィールを決定し、また、第1ランプ修正曲線212と、大リフト曲線213と、第2ランプ修正曲線214とで閉弁用カムの正規バルブリフト曲線211を定め、この正規バルブリフト曲線211に基づいて閉弁用カムのカムプロフィールを決定する。
このようにして、従動子と摺動しない側、即ち、無負荷側の基本バルブリフト曲線を他方の基本バルブリフト曲線から離れる側にオフセットすることで、開弁用カム及び閉弁用カムの正規バルブリフト曲線間のクリアランスを大きくして、摺動しない側のカムと従動子との間に起きる潤滑油の粘性抵抗や撹拌抵抗を低減し、カムと従動子の摺動部におけるフリクションを大幅に低減することができる。
また、従動子と摺動しない側のカムには、高い寸法精度が不要になる、即ち、開弁用カムと閉弁用カムとの間に高精度なクリアランス管理が不要になり、カムの加工精度や組付精度を高くする必要性がなくなって、大幅なコスト削減を図ることもできる。
図12は本発明に係る開弁用カム及び閉弁用カムのバルブリフト曲線の第4変形例を示すグラフであり、縦軸はバルブリフト量、横軸はカム回転角度を表す。図13に示された実施形態と同一構成については同一符号を付け、詳細説明は省略する。
開弁用カムの正規バルブリフト曲線221は、図13に示された開弁用カムのバルブリフト曲線301に対してカム回転角度範囲θ1〜θ3を、バルブリフト量が小さくなる形状に変更したものであり、θ1よりも小さいカム回転角度範囲の第1ランプ曲線202と、カム回転角度範囲θ1〜θ3の中央部修正曲線223と、θ3より大きいカム回転角度範囲の第2ランプ曲線204とからなる。
中央部修正曲線223は、任意の曲線、即ち、数式で容易に表現できる代数曲線や、数式で容易に表現することが困難で、連続性を有する自由曲線である。
閉弁用カムの正規バルブリフト曲線231は、図13に示された閉弁用カムのバルブリフト曲線306に対してθ1よりも小さいカム回転角度範囲、及びθ3よりも大きいカム回転角度範囲をバルブリフト量が大きくなる形状に変更したものであり、θ1よりも小さいカム回転角度範囲の端部修正曲線232と、カム回転角度範囲θ1〜θ3の大リフト曲線213と、θ3より大きいカム回転角度範囲の端部修正曲線234とからなる。
端部修正曲線232,234は、任意の曲線、即ち、数式で容易に表現できる代数曲線や、数式で容易に表現することが困難で、連続性を有する自由曲線である。
以上の図1、図11及び図12で示したように、本発明は第1に、吸気バルブ12及び排気バルブ13を強制的に駆動する強制開・閉弁用カム44,45において、グラフの縦軸に吸気バルブ12及び排気バルブ13のバルブリフト量、横軸にカム回転角度をとったときの、開弁用カム44のカム回転角度とバルブリフト量との関係を示す開弁用カム44の基本バルブリフト曲線301と、この開弁用カム44の基本バルブリフト曲線301と同一の曲線をバルブリフト量が大きくなる側へオフセットさせることで形成された閉弁用カム45のカム回転角度とバルブリフト量との関係を示す閉弁用カム45の基本バルブリフト曲線306とを描き、吸気バルブ12及び排気バルブ13を作動させる従動子22aと摺動しない開弁用カム44の基本バルブリフト曲線301上の無負荷部曲線331及び閉弁用カム45の基本バルブリフト曲線306上の無負荷部曲線332,333を、他方の基本バルブリフト曲線に対して離れる側へオフセットさせる、あるいは、このオフセットさせた曲線を任意形状に変更して無負荷部バルブリフト修正曲線としての中央曲線206、端部曲線216,218を設定し、この無負荷部バルブリフト修正曲線206,216,218と残りの基本バルブリフト曲線とを必要に応じて接続曲線207,208,217,219で繋いだ正規バルブリフト曲線201,211に基づき、開弁用カム44及び閉弁用カム45のカムプロフィールを設定することを特徴とする。
本発明は第2に、図1及び図9に示したように、開弁用カム44の基本バルブリフト曲線101及び閉弁用カム45の基本バルブリフト曲線111が、中央部が高い山形形状を有し、これらの開弁用カム44の基本バルブリフト曲線101及び閉弁用カム45の基本バルブリフト曲線111の山のふもとを含む2つのカム回転角度範囲を第1ランプ区間及び第2ランプ区間とし、山の中腹を含む2つのカム回転角度範囲であって、吸気バルブ44又は排気バルブ45の従動子22aが開弁用カム44から閉弁用カム45に移り変わるカム回転角度範囲を第1移り変わり区間、閉弁用カム45から開弁用カム44に移り変わるカム回転角度範囲を第2移り変わり区間とし、山の頂上付近を含むカム回転角度範囲を大リフト区間としたときに、開弁用カム44の正規バルブリフト曲線161を、開弁用カム44の基本バルブリフト曲線101の大リフト区間をバルブリフト量が小さくなる側へオフセットすることで形成された開弁用カム44の無負荷部バルブリフト修正曲線164と、開弁用カム44の基本バルブリフト曲線101の第1移り変わり区間、第2移り変わり区間と、開弁用カム44の基本バルブリフト曲線101の第1ランプ区間及び第2ランプ区間とを接続曲線としての第2接続部163、第3接続部166で繋いで形成し、この開弁用カム44の正規バルブリフト曲線164に基づき開弁用カム44のカムプロフィールを設定し、閉弁用カム45の正規バルブリフト曲線171を、閉弁用カム45の基本バルブリフト曲線111の第1ランプ区間及び第2ランプ区間をバルブリフト量が大きくなる側へオフセットすることで形成された閉弁用カム45の無負荷部バルブリフト修正曲線としての第1ランプ部172、第2ランプ部177と、閉弁用カム45の基本バルブリフト曲線111の第1移り変わり区間及び第2移り変わり区間と、閉弁用カム45の基本バルブリフト曲線111の大リフト区間とを接続曲線としての第1接続部173、第4接続部176で繋いで形成し、この閉弁用カム45の正規バルブリフト曲線171に基づき閉弁用カム45のカムプロフィールを設定することを特徴とする。
これにより、開弁用カム44の正規バルブリフト曲線161と閉弁用カム45の正規バルブリフト曲線171とのクリアランスを部分的に大きく設定することができ、第1移り変わり区間及び第2移り変わり区間のみクリアランスを高い精度で管理するだけで、第1移り変わり区間及び第2移り変わり区間を除く区間ではクリアランスを高い精度で管理する必要がなく、動弁装置15の各部品の加工精度、組付精度を高くしなくてもよいため、内燃機関10の大幅なコスト低減を図ることができる。
また、上記のクリアランスを大きくすることで、開弁用カム44、閉弁用カム45と従動子22aとの間の潤滑油の粘性抵抗や撹拌抵抗を減らすことができ、内燃機関10の出力、燃費等の性能を向上させることができる。
尚、本実施形態では、図9及び図10に示されたように、第1接続部173、第2接続部162、第3接続部166及び第4接続部176を直線状としたが、これに限らず、隣り合う線に滑らかに接続する曲線としてもよい。
また、第1ランプ部172を、第1基本リフト部162のカム回転角度β1〜β2の範囲を上方へオフセットしたものとし、第2ランプ部177を、第2基本リフト部167のカム回転角度β10〜β11の範囲を上方へオフセットしたものとしたが、これに限らず、第1ランプ部172を、第1接続部173と連続的に且つカム回転角度β3側からカム回転角度β1側へ徐々に第1基本リフト部162とのクリアランスが大きくなるようにし、また、第2ランプ部177を、第4接続部176と連続的に且つカム回転角度β9側からカム回転角度β11側へ徐々に第2基本リフト部167とのクリアランスが大きくなるようにしてもよい。
10,60…内燃機関、12,62…吸気バルブ、13…排気バルブ、22a,62A…従動子、44,81…開弁用カム、45,82…閉弁用カム、101,131…開弁用カムの基本バルブリフト曲線(開弁用カムのバルブリフト曲線)、111,141…閉弁用カムの基本バルブリフト曲線(閉弁用カムのバルブリフト曲線)、161,181…開弁用カムの正規バルブリフト曲線(開弁用カムのバルブリフト曲線)、163,166,173,176…接続曲線(第2接続部、第3接続部、第1接続部、第4接続部)、164,172、177,206,216,218,232,234…無負荷部バルブリフト修正曲線(大リフト部、第1ランプ部、第2ランプ部、中央曲線、端部曲線、端部曲線、端部修正曲線、端部修正曲線)、171,191…閉弁用カムの正規バルブリフト曲線(閉弁用カムのバルブリフト曲線)、201,221…開弁用カムの正規バルブリフト曲線、211,231…閉弁用カムの正規バルブリフト曲線、301,306…基本バルブリフト曲線(バルブリフト曲線)、331…開弁用カムの無負荷部曲線、332,333…閉弁用カムの無負荷部曲線。