JP4303133B2 - エレベータシステムの超過速度調整装置 - Google Patents
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Description
現在知られている超過速度調整装置は、以下に述べる2つの状況下で用いられている。
駆動系に故障が発生した場合に、カゴの超過速度が起こり得る。
超過速度調整装置は、この超過速度を検出して駆動系を停止させる。駆動系の停止が十分でない場合には、超過速度調整装置は安全装置に係合し、カゴの下降運動を停止させる。
上昇方向のカゴと釣合い錘とを有するエレベータシステムにおいては、上昇安全装置が用いられている。
従来装置においては、上記超過速度を調整する目的を達成するために、たとえば、巻上機のブレーキまたはカゴに取り付けられた上昇安全装置、または、釣合い錘に設けられた下降安全装置が用いられている。
カゴの懸架装置が故障し、カゴが下降する場合である。
この場合、超過速度調整装置は、カゴの超過速度を検出して、カゴに設けられている下降安全装置に係合する。
従来のエレベータシステムの超過速度調整装置においては、安全装置の応答速度を改善する調速機(すなわち、カゴに取り付けられた加速度計を用いた電子式調速機)が開示されている(たとえば、特許文献1参照)。
懸架装置に故障が発生すると、下降安全装置は、超過速度(over-speed)に達するまで待つことなく、超過過速度(over-acceleration)の検出で直ちに作動される。超過速度は、測定加速度を速度に積分することにより求められる。電子式調速機は、電磁石を備えている別個に設けられた安全回路を開く。電磁石への給電が遮断されると、下降安全装置が作動する。
この場合、コントローラが駆動系に対してカゴの駆動指令を発生すると、まず、上記ピンを引き外さなければならない。カゴが指令によって動かない場合、たとえば、巻き上げシーブ(綱車)の牽引力が不十分である場合とか、または、ブレーキの制動力が不十分であるためにカゴが移動する場合には、作動を阻止された調速機が上昇安全装置または下降安全装置を作動することによって、制御できないカゴの運動を阻止する。
上昇中にカゴの故障が発生し、且つ上昇安全装置が設けられていない場合、または、上昇安全装置が設けられていてもこの上昇安全装置が適時にカゴを停止させることができない場合には、釣合い錘がその緩衝器に衝突する。
この場合、カゴの速度に起因してカゴの跳躍が起こり得る。したがって、跳躍高さに相当するスペースを昇降路の頂上部に確保しておく必要がある。カゴおよび釣合い錘の緩衝器は、或る範囲の超過速度をも含めてエレベータの定格速度に基づいて設計されている。
調速機のロープ(図示せず)は、シーブ(綱車)3を駆動する。シーブ3の側部には、カム26が取り付けられている。シーブ3が回転するにともない、ホイール27は、カム26の輪郭曲面に追従する。ホイール27は、振り子4の一端に取り付けられている。ホイール27は、バネ15により付勢されて、カム26に当接されている。振り子4は、他端に形成されたフック4aを有し、支点4bを中心に回動する。
バネ15に強いバネを用いるとか、または、取付け長を減少させてバネ15の圧縮度を増加することにより、バネ15の力を増加すると、ホイール27がカム26を追従しなくなる時点での速度は増加する。
この機構は、たとえば、カゴの制御できない運動を阻止するのに用いることができる。カゴのドアまたは昇降路が開くと、電磁石22への給電は遮断される。しかしながら、何らかの理由でカゴが動き始めると、調速機の動作は阻止され、上昇または下降安全装置が作動されることになる。
たとえば、トリップ速度として、定格速度の1.15倍でブレーキが作動し、定格速度の1.25倍で、カゴに装備された制動装置(安全装置)が作動するようになっている。
超過速度や超過加速度または制御されない運動が発生した場合には、昇降方向における安全装置を直接作動させることも提案されている(特許文献1または特許文献2参照)。
すなわち、従来の超過速度調整装置は、カゴの軌道端において、懸架装置に故障が発生した場合のみに有用であるが、軌道端で減速が十分でないような他の状況において、超過速度調整装置は、このような状況における超過速度を阻止することができないという課題があった。
すなわち、エレベータシステムのカゴの上昇方向または下降方向における超過速度を検出して、上昇安全装置または下降安全装置を作動させるエレベータシステムの超過速度調整装置において、超過速度値をカゴの位置の関数とする。
また、基本的には、調速機の設置場所によらず、また、機械式調速機か電気式調速機かによらず、昇降路の上下終端において調速機作動速度を低下させ、終端部での緩衝器サイズおよび跳ね上がりを減少させるものである。
超過速度または超過加速度が発生すると、通常は電磁石で引き戻されているピンが、バネにより掛けられて調速機がトリップされる。この調速機により昇降安全装置が作動される。これら2つの実施の形態2、3に関しては、図2および図3を参照しながら、追って説明する。
また、この発明によれば、次のような利点が得られる。
カゴの走行の終端部でカゴの減速が保証される。
カゴのジャンプ高さを収容するスペースを減少したり、このようなスペースを省略することもできる。
緩衝器のストローク(衝程)サイズを小さくしたり、緩衝器を省略することもできる。
図1〜図5はこの発明の実施の形態1〜5による超過速度調整装置すなわち調速機を示し、図6はこの発明の実施の形態1〜3の基礎となる従来の調速機を示している。
通常、運転速度曲線は、超過速度調整装置の曲線内に止どまらねばならない。たとえば、上昇安全装置および下降安全装置の最低保証減速度は、約0.2g(gは重力加速度)である。駆動系の最大加速度/減速度は、約0.1gである。このことは、通常運転速度パターンは、常に十分なマージンで超過速度パターン内に存在することを意味する。
このような超過速度調整装置では、一般に、可能であれば、3つのトリガ点が用いられている。すなわち、超過速度調整装置の第1のトリガ点では、「速度が昇降路内のカゴの位置に対して許容し得る公称速度を超えて増加していること」を示す警報が制御系に与えられる。
第2のトリガ点での機能が不十分である場合には、第3のトリガ点で、昇降安全装置が作動される。
既存の原理に基づき、機械的には、振り子型超過速度調整装置をカゴに取り付け、ロープを昇降路に固定して調速機上に張る。カゴが昇降するにともない、超過速度調整装置のシーブ(綱車)が回転し始める。このような機械的な調速機の実施の形態1については、追って、図1を参照しながら説明する。
基準として、減速開始点を設定することができる。この減速開始点から、プロセッサで、加速度計から求められた位置に基づく最大許容速度を計算することができる。
なお、従来の振り子型超過速度調整装置を示す図6は、この発明の実施の形態1において基礎となる構成を示している。
カゴ1が下方向に走行しているときには、阻止された調速機2は、反時計方向に回転して安全装置棒10を引張り、図示しない下降安全装置(たとえば、特開平3−211181号公報参照)を作動する。
カゴ1が上方向に走行しているときには、調速機2は、時計方向に回動して安全装置棒10を押圧し、上昇安全装置を作動する。
この発明の実施の形態1による方式では、バネ15が固定の端点を有しておらず、カム8に追従するホイール14が端点を変える点で従来のものと異なる。
カム8の高さが減少すると、バネ15がホイール14を外向きに押圧しているので、このホイール14はカム8の輪郭曲面に追従する。したがって、バネ15の取り付け長さが増加するので、バネ15の力は減少し、その結果としてトリップ速度は低くなる。
カム8は、昇降路(カゴ1の通路)の側壁に取り付けられている。調速機2のトリップ速度は、カム8のパターンにしたがって変化する。カム8が最大の幅を呈する場合には、最大のトリップ速度になる。カム8が離れると、トリップ速度は零になる。
カム8を図1のように構成することにより、理由はともあれ、カム8が存在しないときには、調速機2のトリップ速度は零になる。
図2はこの発明の実施の形態2に係るエレベータシステムの超過速度調整装置および安全装置系を示すブロック構成図であり、加速度測定に基づく電子式調速機を備えた点を除いては従来構成と同様である。図2においては、付加的に電子的調速機を組み合わせて従来システムと関連させて示している。
図2のシステムにおける慣用または従来の部分は、カゴ16と、超過速度調整装置17と、調速機ロープ18および引張錘20を有する引張シーブ19とから構成される。
ピン21を引き戻された状態に保持するために、電気回路23により、定常電源(UPS)から上記電磁石22に連続して電力供給が行われる。
一方、リレー24の接点開放(OFF)により、電磁石22に対する電力供給が遮断されると、超過速度調整装置(調速機17)がトリップし、その結果として、上昇安全装置または下降安全装置が作動する。
したがって、3つの条件のうちの少なくとも1つが満たされない場合には、リレー24の接点が開放(OFF)されて、調速機17はトリップする。
上記3つの条件は、基本的に、加速度計31によってカゴ16の加速度αを測定することにより決定される。この測定加速度αは、電子回路に対する入力情報として用いられる。
こうして求められた相対走行距離Ltと、昇降路内に設けられた1つまたは2つの基準点(スイッチ)Prとにより、カゴ16の正確な位置を知ることができ、測定距離を絶対値Laとして求めることができる。
こうして求められた超過速度値Vs1、Vs2は、コンパレータ41、42により、それぞれ実際の速度Vtと比較される。
コンパレータ41は、速度Vtが、Vt≧Vs1を示す場合に、コントローラ100に対し警報信号を発生する。
一方、走行相対距離Lt1が、Lt1<Lmaxを示す場合、すなわち、カゴ16が、制御無しで最大運動距離よりも長い距離だけ走行した場合には、調速機17をトリップさせるための出力信号(Lレベル)を発生する。
また、コンパレータ42、44、45による上記3つの条件のいずれか1つが、それぞれの限界値を超えた場合に、ANDゲート回路25は、Lレベルの出力信号を発生し、リレー24の常開接点を開放して、調速機17をトリップさせる。
図3はこの発明の実施の形態3に係るエレベータシステムの超過速度調整装置および安全装置系を示すブロック構成図であり、距離測定に基づく電子式調速機を備えた点を除いては従来システムと同様である。
図3において、前述(図2参照)と同様のものについては、同一符号を付して詳述を省略する。
この場合、電子回路は、測定加速度α(図2参照)を入力情報として用いておらず、距離センサ51からの測定距離Lを直接用いている。この点を除いては、前述(図1参照)の実施の形態1と類似している。
また、測定距離Lは、コントローラ100からの駆動指令Cが無しの状態でカゴ16が移動した走行相対距離Ls1を導出するのにも用いられる。
速度Vtおよび加速度αは、微分器52、53を介して測定距離Lを微分することにより導出することができる。
導出された速度値Vtは、前述と同様に、各コンパレータ41、42において、各超過速度値Vs1、Vs2と組み合わせて用いられる。
図3のように構成した場合も、調速機17に対する基本的なトリップ動作は、前述(図2参照)と同様であり、同様の作用効果を奏することは言うまでもない。
図4はこの発明の実施の形態4に係るエレベータシステムの超過速度調整装置および安全装置系を示すブロック構成図であり、上昇または下降安全装置を直接作動する加速度測定に基づく電子式超過速度調整装置(電式調速機と称する)の構成を示している。
図4において、前述(図2参照)と同様のものについては、同一符号を付して詳述を省略する。
この場合、電子式調速機(図示せず)は、上昇調速機トリガを構成するピン21Uおよび電磁石22Uと、下降調速機トリガを構成するピン21Dおよび電磁石22Dとを備えており、上昇安全装置または下降安全装置を直接作動する。
また、電力供給がない場合、各安全装置は、バネにより作動される。これを阻止するために、電磁石22U、22Dには、定常的に電力が供給される。この定常電力供給回路は2つの電気回路23U、23Dに分割される。各電気回路23U、23Dは、個別に上昇安全トリガ装置および下降安全トリガ装置に電力を供給することにより、前述(図1参照)の電子回路23を拡張して、上昇運動と下降運動とを識別する。
ANDゲート25Uの他の入力端子には、コンパレータ62の出力信号が印加される。ANDゲート25Dの他の入力端子には、コンパレータ45および63の各出力信号が印加される。
上昇(UP)方向の第3の超過速度値Vs3Uは、コンパレータ62に入力されて実際の速度Vtと比較され、下降(DOWN)方向の第3の超過速度値Vs3Dは、コンパレータ63に入力されて実際の速度Vtと比較される。
第1の超過速度値Vs1は、前述と同様に、コントローラ100に対して警報を発生するのに用いられる。
また、前述と同様に、超過加速度値αsは、懸架装置の故障時のみに用いられるので、下降方向においてしか用いられないことになる。
「制御されない運動」は、作動すべき安全装置を識別するために、上昇方向の「制御されない運動」と下降方向の「制御されない運動」とに分けられる。
図4の構成により、さらに確実に「制御されない運動」を阻止することができる。
図5はこの発明の実施の形態5に係るエレベータシステムの超過速度調整装置および安全装置系を示すブロック構成図であり、距離測定を用いて昇降安全装置を作動する電子式超過速度調整装置(電式調速機と称する)の構成を示している。
図5において、前述(図3、図4参照)と同様のものについては、同一符号を付して詳述を省略する。
この場合、加速度αを測定しておらず、測定距離Lを前述(図3参照)の実施の形態3と同じ仕方で直接用いる点を除き、図4に示した実施の形態4と同じ構成および動作である。
したがって、上昇方向に関連したコンパレータ44Uは、走行相対距離LtUと最大運動距離Lmaxとを比較し、下降方向に関連したコンパレータ44Dは、走行相対距離LtUと最大運動距離Lmaxとを比較する。
以下、各ANDゲート25U、25Dを介してリレー24U、24Dが駆動され、前述と同様に各安全装置が作動する。
すなわち、カゴが終端階床に近づくにつれてトリップ速度を低減させることにより、緩衝器に衝突する速度を理論的に零にすることができ、この結果、理論的には緩衝器を省略することができる。
したがって、少なくとも、カゴの走行の終端部において、カゴの減速が保証されるとともに、カゴのジャンプ(跳ね上がり)高さを収容するスペース(昇降路上部の余裕スペース)を減少したり、このようなスペースを省略することができる。
また、緩衝器のストローク(衝程)サイズを小さくすることにより、昇降路のサイズを小さくすることもできる。
Claims (8)
- エレベータシステムのカゴを運転するためのコントローラを備え、
前記カゴの上昇方向の超過速度を検出したときには前記カゴに設けられた上昇安全装置を作動させ、また、前記カゴの下降方向の超過速度を検出したときには前記カゴに設けられた下降安全装置を作動させて、前記カゴを停止させるエレベータシステムの超過速度調整装置であって、
前記カゴのトリップ速度を決定するためのバネを有する振り子式調速機を備え、
前記振り子式調速機は、前記カゴの昇降路内部に固定されたカムにより、前記バネの圧縮度を変化させ、
前記超過速度の超過速度値は、前記振り子式調速機と係合するように前記カムの輪郭曲面形状に応じた値として表されることを特徴とするエレベータシステムの超過速度調整装置。 - 前記振り子式調速機は、一端が固定され且つ他端が引張錘に連結されたロープによって駆動されるカゴの屋根に配設されたことを特徴とする請求項1に記載のエレベータシステムの超過速度調整装置。
- 機械式調速機を備え、
前記機械式調速機は、付加的に設けられた電子式調速機により、または、別個の安全回路によって直接制御される手段により、機械的にトリップされ、
前記別個の安全回路は、付加的に設けられた前記電子式調速機により制御されることを特徴とする請求項1に記載のエレベータシステムの超過速度調整装置。 - 前記上昇安全装置または前記下降安全装置は、電子式調速機により直接作動されることを特徴とする請求項1に記載のエレベータシステムの超過速度調整装置。
- 前記上昇安全装置および前記下降安全装置は、それぞれ電子式超過速度調速機により制御される2つの独立のループからなる別個の安全回路を介して制御されることを特徴とする請求項1に記載のエレベータシステムの超過速度調整装置。
- 前記電子式調速機は、前記カゴの測定加速度を用いて前記カゴの速度および走行した相対距離を導出するように構成されており、
前記相対距離を前記カゴの昇降路内の1つまたは複数の基準点と組み合わせて絶対距離を導出し、
前記絶対距離を用いて、前記カゴの現在位置に対する超過速度値を計算するか、または、前記超過速度値を計算する代わりにメモリに記憶されているテーブルを参照して、前記カゴの位置の関数として前記超過速度値をテーブルルックアップで求めることを特徴とする請求項3または請求項4に記載のエレベータシステムの超過速度調整装置。 - 前記電子式調速機は、前記カゴの測定距離を用いて速度および加速度を導出するように構成されており、
前記測定距離を用いて前記カゴの現在位置に対する超過速度値を計算するか、または、前記超過速度値を計算する代わりにメモリに記憶されているテーブルを参照し、前記カゴの位置の関数として前記超過速度値をテーブルルックアップで求めることを特徴とする請求項3または請求項4に記載のエレベータシステムの超過速度調整装置。 - 前記カゴの速度が前記カゴの位置に依存する超過速度値よりも小さく、
前記カゴの加速度が超過加速度値よりも小さく、且つ、
前記コントローラからの指令無しで前記カゴが走行した距離があらかじめ定められた値よりも小さい、
という条件の全てが同時に満たされた場合には、前記下降安全装置の作動を禁止することを特徴とする請求項3または請求項4に記載のエレベータシステムの超過速度調整装置。
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