JP4302973B2 - ハニカム構造体、これを用いた触媒体、触媒担持フィルタ、及びこれらの製造方法 - Google Patents

ハニカム構造体、これを用いた触媒体、触媒担持フィルタ、及びこれらの製造方法 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、排ガス浄化用のハニカム触媒体や触媒担持ハニカムフィルタとして好適に用いることができるハニカム構造体及びその製造方法に関し、詳しくは、NOX吸蔵触媒としてアルカリ金属類を担持させた場合に、クラックの発生や触媒性能の低下を有効に防止することが可能なハニカム構造体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、排ガス規制が強化される中、リーンバーンエンジンや直噴エンジン等が普及するに伴い、リーン雰囲気下で、排ガス中の窒素酸化物(以下、「NOX」と記す)を効果的に浄化することのできるNOX吸蔵触媒が実用化されている。NOX吸蔵触媒は、アルカリ金属(カリウム(K)、ナトリウム(Na)、リチウム(Li)、セシウム(Cs)等)、アルカリ土類金属(バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)等)、希土類(ランタン(La)、イットリウム(Y)等)等をその有効成分とするものであり、特に、BaはNOX吸蔵触媒の実用化当初より広く使用されている。また、最近では、高温度域でのNOX吸蔵能に優れるKの添加が試みられつつある。
【0003】
このようなNOX吸蔵触媒は、通常、コージェライトのような酸化物系セラミックス材料やFe−Cr−Al合金のような金属材料からなるハニカム状の担体(ハニカム担体)に担持されたハニカム触媒体の形で使用される。
【0004】
しかし、これらのハニカム担体は、排ガスによる高温下で活性となったアルカリ金属やアルカリ土類金属(以下、「アルカリ金属類」と記す)による腐食によって劣化し易く、劣化が進展するとハニカム担体にクラックが発生するという問題があった。また、ハニカム担体とアルカリ金属類とが反応するために経時的に触媒性能が低下するという問題もあった。
【0005】
ところで、近年、アルカリ金属固溶型コージェライトのバルク体や粉末の作製方法が文献にて多数発表されている。例えば、アルカリ金属固溶型コージェライト組成を有するガラスを作製し、これを結晶化させる方法(例えば、非特許文献1、及び非特許文献2)や、カオリン−マグネシア−アルカリ炭酸塩から固相反応で作製する方法(例えば、非特許文献3)等が開示されている。
【0006】
しかし、これらの文献には、ハニカム担体にNOX吸蔵触媒であるアルカリ金属類を担持させた際の問題点については何ら言及されておらず、アルカリ金属固溶型コージェライトを排ガス浄化用のハニカム触媒体や触媒担持ハニカムフィルタに適用した例についても開示されていない。
【0007】
【非特許文献1】
H.IKAWA et al., Sintering '87 vol.2 (1988) 854-859
【非特許文献2】
D.MERCURIO et al., J. Mater. Sci. 24 (1989) 3976-3983
【非特許文献3】
松本泰治,栃木県県南工業指導所研究報11,1997
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、NOX吸蔵触媒としてアルカリ金属類を担持させた場合に、クラックの発生や触媒性能の低下を有効に防止することが可能なハニカム構造体及びその製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上述の課題を解決するべく鋭意研究した結果、アルカリ金属をコージェライト結晶格子の間隙に侵入固溶させてなるアルカリ金属侵入固溶型コージェライトを主たる成分としてハニカム担体を構成することによって、上記課題を解決可能であることに想到し、本発明を完成させた。即ち、本発明は、以下のハニカム構造体、これを用いたハニカム触媒体、触媒担持ハニカムフィルタ、及びこれらの製造方法を提供するものである。
【0010】
[1] 隔壁によって区画された、流体の流路となる複数のセルを有し、下記化学式(1)で表されるアルカリ金属侵入固溶型コージェライトを主たる成分として構成されてなることを特徴とするハニカム構造体。
(1):xM O・2MgO・(2+x)Al ・(5−2x)SiO
(但し、M:アルカリ金属、x=0.02〜0.5)
【0011】
[2] 前記アルカリ金属侵入固溶型コージェライトは、コージェライトの結晶構造中のSiO 四面体又はAlO 四面体が形成する六員環に囲まれた空隙に、カリウム(K)が侵入し、コージェライト結晶中に固溶したものである前記[1]に記載のハニカム構造体。
【0012】
[3] 前記アルカリ金属侵入固溶型コージェライトを構成する結晶のa軸の格子定数が9.7710〜9.8360Å、c軸の格子定数が9.3540〜9.3970Åである上記[1]又は[2]に記載のハニカム構造体。
【0013】
[4] 前記アルカリ金属侵入固溶型コージェライトを構成する結晶のa軸の平均線熱膨張係数(25〜600℃)が1.5×10−6〜3.0×10−6/K、c軸の平均線熱膨張係数(25〜600℃)が−2.1×10−6〜−0.5×10−6/Kである上記[1]〜[3]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0014】
[5] 前記セルの形成方向の平均線熱膨張係数(40〜800℃)が0.5×10-6〜2.9×10-6/Kである上記[1]〜[4]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0015】
[6] 前記アルカリ金属が、カリウム(K)である上記[1]〜[5]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0016】
[7] アルキメデス法により測定した気孔率が0〜70%である上記[1]〜[6]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0017】
[8] 上記[1]〜[7]のいずれかに記載のハニカム構造体に、アルカリ金属類を含有するNOX吸蔵触媒が担持されてなることを特徴とする触媒体。
【0018】
[9] 前記複数のセルの入口側端面と出口側端面とが目封じ部によって互い違いに目封じされている上記[1]〜[7]のいずれかに記載のハニカム構造体に、アルカリ金属類を含有するNOX吸蔵触媒が担持されてなることを特徴とする触媒担持フィルタ。
【0019】
[10] コージェライト化原料及びアルカリ金属源を、焼成後の組成が下記化学式(1)で示されるアルカリ金属侵入固溶型コージェライトとなるように秤量・混合し、少なくとも、前記コージェライト化原料、水、有機バインダ、及び前記アルカリ金属源を中性条件下で混合し、混練することによって坏土とし、前記坏土を流体の流路となる複数のセルを有するハニカム状に成形し、乾燥することによってハニカム成形体を得、前記ハニカム成形体を焼成することによってハニカム構造体を得ることを特徴とするハニカム構造体の製造方法。
(1):xM O・2MgO・(2+x)Al ・(5−2x)SiO
(但し、M:アルカリ金属、x=0.02〜0.5)
【0020】
[11] 前記アルカリ金属源が、アルカリ金属化合物である上記[10]に記載のハニカム構造体の製造方法。
【0021】
[12] 前記アルカリ金属源が、カリウム化合物である上記[10]に記載のハニカム構造体の製造方法。
【0022】
[13] 前記アルカリ金属源が、カリ長石である上記[10]に記載のハニカム構造体の製造方法。
【0023】
[14] 前記コージェライト化原料が、カオリン、マグネシア、アルミナ、及びシリカである上記[10]〜[13]のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【0024】
[15] 前記焼成の温度が、1250〜1450℃である上記[10]〜[14]のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【0025】
[16] 上記[10]〜[15]のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法によりハニカム構造体を製造した後、前記ハニカム構造体に、アルカリ金属類を含有するNOX吸蔵触媒を担持させることを特徴とする触媒体の製造方法。
【0026】
[17] 上記[10]〜[15]のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法によりハニカム構造体を製造するに際し、前記ハニカム成形体の前記複数のセルの入口側端面と出口側端面とを目封じ材によって互い違いに目封じして目封じ部を形成するとともに、上記[10]〜[15]のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法によりハニカム構造体を製造した後、前記ハニカム構造体に、アルカリ金属類を含有するNOX吸蔵触媒を担持させることを特徴とする触媒担持フィルタの製造方法。
【0027】
【発明の実施の形態】
本発明者は、本発明のハニカム構造体を開発するに際し、まず、NO吸蔵触媒であるアルカリ金属類を担持させたハニカム担体にクラックが発生し、経時的に触媒性能が低下してしまう原因について検討した。その結果、コージェライト(2MgO・2Al・5SiO)からなるハニカム担体にNO吸蔵触媒であるアルカリ金属類を担持させた場合、排ガスによる高温下で活性となったアルカリ金属類が、コージェライトの結晶構造中の空隙に侵入固溶することによって、コージェライト結晶の格子定数が増大し、これに伴ってコージェライト結晶が膨張することが原因であると考えられた。
【0028】
コージェライト(2MgO・2Al・5SiO)からなるハニカム担体にNO吸蔵触媒としてカリウム(K)を担持させた場合の例を用いて、より具体的に説明すると、排ガスによる高温下で活性となったKが、コージェライトの結晶構造中のSi(或いはAl)O四面体が形成する六員環に囲まれた空隙に侵入して、コージェライト結晶中に固溶することによって、K侵入固溶型コージェライト(xKO・2MgO・(2+x)Al・(5−2x)SiO)が生成する。このK侵入固溶型コージェライトの格子定数は、一般のコージェライト(高温型コージェライト(別名:インディアライト)を指す)の格子定数より大きいため、一般のコージェライトからK侵入固溶型コージェライトに変化する際に、結晶体積の増大(膨張)が起こり、ハニカム担体にクラックが発生し易くなるのである。また、コージェライト結晶中にKが取り込まれることによって触媒性能も低下することになる。本発明者は、前記現象について鋭意研究した結果、前記現象を回避するためには、コージェライト結晶構造中に予めアルカリ金属又はアルカリ土類金属を侵入固溶させておくことが有効であることを見出した。
【0029】
そこで、本発明においては、ハニカム担体をアルカリ金属侵入固溶型コージェライトを主たる成分として構成することとした。このような構成としたのは、コージェライト結晶構造中に予めアルカリ金属を侵入固溶させておくことにより、アルカリ金属類が侵入固溶し得る結晶構造中の空隙をなくすためである。こうすることにより、NO吸蔵触媒としてアルカリ金属類を担持させた場合であっても、アルカリ金属類が結晶構造中に侵入固溶することが防止され、クラックの発生や触媒性能の低下を有効に防止することが可能となる。
【0030】
以下、本発明のハニカム構造体、及びその製造方法の実施の形態を具体的に説明する。
【0031】
本発明のハニカム構造体は、隔壁によって区画された、流体の流路となる複数のセルを有し、アルカリ金属侵入固溶型コージェライトを主たる成分として構成されてなるものである。
【0032】
本明細書に言う「ハニカム」とは、例えば、図1に示すハニカム構造体1のように、極めて薄い隔壁4によって区画されることによって、流体の流路となる複数のセル3が形成されている形状を意味する。本発明に言う「アルカリ金属侵入固溶型コージェライト」は、ペレット、ビーズ、リング、フォーム等の形状の触媒担体に適用した場合でも当然にクラックの発生や触媒性能の低下を防止することができるが、特に、触媒担体の形状をハニカム構造体とした場合に、クラックの発生や触媒性能の低下を最も効果的に防止することができる。なお、ハニカム構造体の全体形状については特に限定されるものではなく、例えば、図1に示すような円筒状の他、四角柱状、三角柱状等の形状を挙げることができる。
【0033】
また、ハニカム構造体のセル形状(セルの形成方向に対して垂直な断面におけるセル形状)についても特に限定はされず、例えば、図1に示すような四角形セルの他、六角形セル、三角形セル等の形状を挙げることができるが、円形セル若しくは四角形以上の多角形セルとすることにより、セル断面において、コーナー部の触媒の厚付きを軽減し、触媒層の厚さを均一にすることができる。セル密度、開口率、多角化のバランスを考慮すると、六角形セルが好適である。
【0034】
ハニカム構造体のセル密度も特に制限はないが、触媒担体として用いる場合には、6〜1500セル/平方インチ(0.9〜233セル/cm2)の範囲であることが好ましい。また、隔壁の厚さは、20〜2000μmの範囲であることが好ましい。特に、隔壁の厚さ方向の中心部までアルカリ金属類が拡散し易い20〜200μm程度の薄壁のハニカム構造体には、本発明の構成は極めて有効である。
【0035】
「固溶」には、アルカリ金属がコージェライト結晶格子の間隙に侵入する場合(侵入固溶)の他、アルカリ金属がコージェライト結晶格子を構成する原子(イオン)と置換する場合(置換固溶)も含まれる。但し、本発明のハニカム構造体は、アルカリ金属侵入固溶型コージェライトを主たる成分とするものである。また、「主たる成分」とは、アルカリ金属侵入固溶型コージェライトが、ハニカム構造体の全質量に対し、65質量%以上を占めていることを意味する。
【0036】
本明細書に言う「アルカリ金属侵入固溶型コージェライト」とは、具体的には、下記化学式(1)で表されるものである。この化学式において、xが0.02未満であると、NO吸蔵触媒としてアルカリ金属類を担持させ、触媒体として実使用する際に、触媒成分のアルカリ金属類が結晶構造中に容易に侵入固溶してしまうため、アルカリ金属類に対する耐久性に劣る点において、0.5を超えると、分解して異相(ガラス相等)が生成し、それが主成分となってしまう等、目的の結晶相が得られない点において好ましくない。
(1):xMO・2MgO・(2+x)Al・(5−2x)SiO
(但し、M:アルカリ金属、x=0.02〜0.5)
【0037】
上記の「アルカリ金属侵入固溶型コージェライト」は、これを構成する結晶の格子定数が、一般のコージェライトの格子定数(a軸:9.7700Å、c軸:9.3520Å)と比較して大きい点に特徴がある。格子定数は、アルカリ金属の種類、侵入固溶量によって異なるが、アルカリ金属の侵入固溶量が増えるにつれて増加する傾向があり、最大でa軸:9.8360Å、c軸:9.3970Åといった値をとる。
【0038】
特に、本発明のハニカム構造体としては、アルカリ金属侵入固溶型コージェライトを構成する結晶のa軸の格子定数が9.7710〜9.8360Å、c軸の格子定数が9.3540〜9.3970Åであるものが好ましい。上述の如く、格子定数はアルカリ金属の侵入固溶量の指標となるものであり、a軸の格子定数が9.7710Å未満、或いはc軸の格子定数が9.3540Å未満であると、アルカリ金属の侵入固溶量が不十分である点において、a軸の格子定数が9.8360Åを超え、或いはc軸の格子定数が9.3970Åを超えると、分解して異相(ガラス相等)が生成し、それが主成分となってしまう等、目的の結晶相が得られない点において好ましくない。
【0039】
また、上記の「アルカリ金属侵入固溶型コージェライト」は純粋なコージェライトではないにも拘わらず、これを構成する結晶の熱膨張率が、一般のコージェライトと同程度に低いという特徴がある。
【0040】
特に、本発明のハニカム構造体としては、アルカリ金属侵入固溶型コージェライトを構成する結晶のa軸の平均線熱膨張係数(25〜600℃)が1.5×10−6〜3.0×10−6/K、c軸の平均線熱膨張係数(25〜600℃)が−2.1×10−6〜−0.5×10−6/Kであるものが好ましい。a軸の平均線熱膨張係数が3.0×10−6/Kを超え、或いは、c軸の平均線熱膨張係数が−0.5×10−6/Kを超えると、触媒体として実使用した際に、熱応力によってクラックが発生する点において好ましくない。なお、上記化学式(1)におけるxの値を0.02以上とした場合には、a軸の平均線熱膨張係数は1.5×10−6/K以上、c軸の平均線熱膨張係数は−2.1×10−6/K以上といった値をとる。
【0041】
ハニカム構造体を触媒担体として用いる場合には、耐熱衝撃性を向上させる観点から熱膨張率が小さいことが望ましいが、本発明のハニカム構造体は、上記のアルカリ金属侵入固溶型コージェライトを主たる成分とするため、セルの形成方向の熱膨張率が低いという特徴がある。熱膨張率は、ハニカム構造体の全質量に対して、アルカリ金属侵入固溶型コージェライトの質量が占める比率が増えるにつれて低下する傾向があり、アルカリ金属侵入固溶型コージェライトが100%に近いほど、熱膨張率を低くすることができる。
【0042】
特に、押出成形によりハニカム構造体を成形すると、コージェライト化原料のカオリン、タルク等は板状粒子であるため、口金の幅の狭いスリットを通過する際に、これらの板状粒子がセル形成方向に沿って配向する。その後の焼成過程において、カオリン、タルク等の結晶に対して垂直に、六角柱状のコージェライト結晶が生成されるため、コージェライト結晶も配向し、より低い熱膨張率を示す。
【0043】
本発明のハニカム構造体としては、セルの形成方向の平均線熱膨張係数(40〜800℃)が0.5×10−6〜2.9×10−6/Kであることが好ましく、より耐熱衝撃性を重視する場合には、0.5×10−6〜2.0×10−6/Kとすることが更に好ましく、熱衝撃が特に過酷な条件下で使用する場合には、0.5×10−6〜1.5×10−6/Kとすることが特に好ましい。セルの形成方向の平均線熱膨張係数(40〜800℃)が、この範囲を超えると、触媒体として実使用した際に、熱応力によってクラックが発生する点において好ましくない。なお、ハニカム構造体を、アルカリ金属侵入固溶型コージェライトのみによって構成した場合には、セルの形成方向の平均線熱膨張係数(40〜800℃)を0.5×10−6/K程度まで低下させることができる。
【0044】
本発明のハニカム構造体は、コージェライト結晶に侵入固溶させるアルカリ金属が、カリウム(K)であることが好ましい。コージェライト結晶に侵入固溶させるアルカリ金属は、触媒担体に担持されるNO吸蔵触媒と同種の物質とした方が本発明の効果はより大きいものとなるのであるが、近年では、KがNO吸蔵触媒として一般的となりつつあるためである。なお、コージェライト結晶にアルカリ土類金属を侵入固溶させた場合にも、本発明と同様の効果を得ることができる。
【0045】
本発明のハニカム構造体は、アルキメデス法により測定した気孔率が0〜70%であることが好ましい。気孔率が70%を超えると、ハニカム構造体の強度が不足し、触媒体としての実使用に耐えられなくなる点において好ましくない。触媒担体として用いる場合には、0〜40%程度であることが好ましく、触媒担持フィルタとして用いる場合には、40〜70%程度であることが好ましい。気孔率は、焼成温度や、原料の調合組成により制御することができる。例えば、アルカリ金属侵入固溶型コージェライトの比率を減らし、ガラス相を増やすことで気孔率の小さな緻密質のものを作製することが可能であり、逆に、原料に有機物(グラファイト、澱粉等)を加え、焼成の際に焼失させて気孔を形成させることによって、気孔率の大きい多孔質のものを作製することもできる。
【0046】
本発明の触媒体は、上述のハニカム構造体を触媒担体として用い、これにアルカリ金属類を含有するNOX吸蔵触媒を担持させたものである。
【0047】
本明細書において「アルカリ金属類」というときは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及びこれらの混合物を意味する。本発明の触媒体においては、NOX吸蔵触媒として担持されるアルカリ金属類の種類は特に制限はなく、例えば、アルカリ金属としてはLi、Na、K、Cs、アルカリ土類金属としてはCa、Ba、Sr等が挙げられる。中でもコージェライトと反応し易いアルカリ金属、特に、Kを用いた場合に、本発明は最も効果的である。
【0048】
また、本発明の触媒体に担持させる触媒成分としては、上述のNOX吸蔵触媒の他、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等の貴金属を用いることも好ましい。これらの貴金属は、アルカリ金属類がNOXを吸蔵するに先立って排ガス中のNOとO2とを反応させてNO2を発生させたり、一旦吸蔵されたNOXが放出された際に、そのNOXを排ガス中の可燃成分と反応させて無害化させたりすることができ、NOXの浄化能力が向上する点において好ましい。アルカリ金属類や貴金属等の触媒成分は、高分散状態で担持させるため、予めアルミナのような比表面積の大きな耐熱性無機酸化物に一旦担持させた後、ハニカム担体に担持させることが好ましい。
【0049】
本発明の触媒体には、三元触媒に代表されるNOX吸蔵触媒以外の触媒成分、セリウム(Ce)及び/又はジルコニウム(Zr)の酸化物に代表される助触媒、HC(Hydro Carbon)吸着材等、排ガス系に適用される他の浄化材と同時に適用することもできる。その場合、NOX吸蔵触媒とこれらの浄化材とを混在させた状態で担持させてもよいが、層状に積層して担持させた方が、より本発明の効果が高まる点で好ましい。更には、NOX吸蔵触媒とこれらの浄化材とを別個の担体に担持させ、これらを排気系内で適宜組み合わせて用いることも好ましい。
【0050】
本発明の触媒担持フィルタは、複数のセルの入口側端面と出口側端面とが目封じ部によって互い違いに目封じされている上述のハニカム構造体を触媒担体として用い、これにアルカリ金属類を主たる成分とするNOX吸蔵触媒を担持させたものである。
【0051】
例えば、図2に示すような、複数のセル23の入口側端面Bと出口側端面Cとを互い違いに目封じ部22によって目封じした構造としたハニカム構造体21によれば、被処理ガスG1を入口側端面Bからセル23に導入すると、ダストやパティキュレートが隔壁24において捕集される一方、多孔質の隔壁24を透過して隣接するセル23に流入した処理済ガスG2が出口側端面Cから排出されるため、被処理ガスG1中のダストやパティキュレートが分離された処理済ガスG2を得ることができる。即ち、NOX吸蔵触媒体にフィルタとしての機能を付加することができる。なお、目封じ部を設けること以外の構成(担持させる触媒成分等)については、上記触媒体と全く同様に構成することができる。
【0052】
上述した本発明のハニカム構造体は、コージェライト化原料及びアルカリ金属源を、焼成後の組成が下記化学式(1)で示されるアルカリ金属侵入固溶型コージェライトとなるように秤量・混合し、少なくとも、前記コージェライト化原料、水、有機バインダ、及び前記アルカリ金属源を中性条件下で混合し、混練することによって坏土とし、その坏土を流体の流路となる複数のセルを有するハニカム状に成形し、乾燥することによってハニカム成形体を得、そのハニカム成形体を焼成することによって得ることができる。
(1):xM O・2MgO・(2+x)Al ・(5−2x)SiO
(但し、M:アルカリ金属、x=0.02〜0.5)
【0053】
本発明の製造方法は、固相反応により直接、アルカリ金属侵入固溶型コージェライトからなるハニカム構造体を製造することが可能である。従って、既述の非特許文献1、及び非特許文献2のように、一旦ガラスを作製した後、これを結晶化させるといった複数回の熱処理を行う必要がない。また、既述の非特許文献3のように、アルカリ金属侵入固溶型コージェライトが粉末やバルク体(ペレット状)としてしか得られないということもない。このように、本発明の製造方法は、煩瑣な製造過程を経ることなく、簡便にアルカリ金属侵入固溶型コージェライトからなるハニカム構造体を製造することができるので、製造コストを低廉化することが可能である。
【0054】
(i) 第1工程(坏土の調製)
本発明の製造方法においては、まず、コージェライト化原料及びアルカリ金属源を、焼成後の組成が下記化学式(1)で示されるアルカリ金属侵入固溶型コージェライトとなるように秤量・混合し、少なくとも、前記コージェライト化原料、水、有機バインダ、及び前記アルカリ金属源を中性条件下で混合し、混練することによって坏土とする。
(1):xM O・2MgO・(2+x)Al ・(5−2x)SiO
(但し、M:アルカリ金属、x=0.02〜0.5)
【0055】
本明細書に言う「コージェライト化原料」とは、焼成によりコージェライトに変換される物質を意味し、例えば、カオリン、仮焼カオリン、タルク、マグネシア、アルミナ、シリカ、水酸化アルミニウム、ムライト、コージェライト、各種珪酸塩等を混合したものが挙げられる。但し、コスト、ハニカム成形体の成形性、焼結体中のコージェライト結晶の配向性を考慮すると、コージェライト化原料が、カオリン、マグネシア、アルミナ、及びシリカであることが好ましい。
【0056】
アルカリ金属源は、アルカリ金属化合物であれば特に制限はなく、例えば、アルカリ金属のフッ化物、炭化物、塩化物、炭酸塩、水酸化物、酸化物、珪酸塩、アルミン酸塩、アルミノ珪酸塩、その他の無機酸塩、有機酸塩等が挙げられる。アルミン酸塩、アルミノ珪酸塩の場合は、コージェライト成分であるアルミニウムや珪素の酸化物を含むので、コージェライト化原料の一部を置換することになる。但し、アルカリ金属源としては、NOX吸蔵触媒に用いられるアルカリ金属類と同種の元素の化合物を用いると、触媒担体のアルカリ金属類に対する耐久性がより向上する。近年、カリウムがNOX吸蔵触媒として一般化しつつあるため、アルカリ金属源としてもカリウム化合物を用いることが好ましい。更には、原料コスト、ハニカム成形体の成形性の観点から、カリ長石を用いることが好ましい。なお、アルカリ金属源のうち、水に溶解して塩基性を示すものについては、ハニカム成形体の成形時に悪影響を及ぼすため、酢酸等のpH調整剤を同時に添加することが必要となる。
【0057】
上記コージェライト化原料及びアルカリ金属源については、焼成後の組成が下記化学式(1)で示されるアルカリ金属侵入固溶型コージェライトとなるように、その質量比を調整する。但し、他の結晶相(ガラス相)を生成させるために、それぞれの原料の質量比を適宜調整してもよい。
(1):xMO・2MgO・(2+x)Al・(5−2x)SiO
(但し、M:アルカリ金属、x=0.02〜0.5)
【0058】
有機バインダは、焼成前の成形体(坏土)においてゲル状となり、成形体の機械的強度を維持する補強剤としての機能を果たす添加剤である。従って、有機バインダとしては、成形体(坏土)においてゲル化し得る有機高分子、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を好適に用いることができる。
【0059】
本発明における坏土には、少なくとも、上記コージェライト化原料、水、有機バインダ、及びアルカリ金属源を含有することが必要であるが、必要に応じて、この他の添加剤を含有させてもよい。例えば、造孔剤や分散剤等を含有させることも可能である。
【0060】
造孔剤は、成形体を焼成する際に焼失して気孔を形成させることによって、気孔率を増大させ、高気孔率のハニカム構造体を得るための添加剤である。従って、造孔剤としては、成形体を焼成する際に焼失する有機物質、例えば、グラファイト、小麦粉、澱粉、フェノール樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレン、架橋ポリスチレン、又はポリエチレンテレフタレート等が挙げられるが、中でも、発泡樹脂からなるマイクロカプセル(アクリル樹脂系マイクロカプセル等)を特に好適に用いることができる。発泡樹脂からなるマイクロカプセルは、中空であることから少量の添加で高気孔率の多孔質ハニカム構造体を得られることに加え、焼成時の発熱が少なく、熱応力の発生を低減することができるという利点がある。
【0061】
分散剤は、分散媒である水への分散を促進するための添加剤であり、例えば、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を挙げることができる。本発明においては、坏土のpHに影響を与えないノニオン系界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等)が好ましい。
【0062】
本発明においては、コージェライト化原料、水、有機バインダ、及びアルカリ金属源等を「中性条件下」で混合し、混練することが重要である。固相反応により直接、アルカリ金属侵入固溶型コージェライトからなるハニカム構造体を製造するためには、押出成形可能な坏土を調製する必要があるが、単純にコージェライト化原料にアルカリ金属類の炭酸塩や水酸化物を添加するとそのpHが高いことに起因して、坏土の硬度や加圧する際の挙動が不適当なものしか得られない。従って、アルカリ金属源が水に溶解して塩基性を示すものである場合等には、酢酸等のpH調整剤を同時に添加して、坏土を中性条件に調整することが必要となる。一方、アルカリ金属源として、カリ長石(アルミノ珪酸塩)等のように水に溶解しても塩基性を示さないものを選択するという方法もある。この場合には、坏土のpHは中性に保持されているので、特にpH調整は必要としない。
【0063】
上記コージェライト化原料、水、有機バインダ、及びアルカリ金属類等は、例えば、真空土練機等により混合し、混練することによって、適当な粘度の坏土に調製する。
【0064】
(ii) 第2工程(成形・乾燥)
次いで、上述のように調製した坏土を流体の流路となる複数のセルを有するハニカム状に成形し、乾燥することによってハニカム成形体を得る。
【0065】
成形の方法は、特に限定されるものではなく、押出成形、射出成形、プレス成形等の従来公知の成形法を用いることができるが、中でも、上述のように調製した坏土を、所望のセル形状、隔壁厚さ、セル密度を有する口金を用いて押出成形する方法等を好適に用いることができる。乾燥の方法も特に限定されず、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等の従来公知の乾燥法を用いることができるが、中でも、成形体全体を迅速かつ均一に乾燥することができる点で、熱風乾燥とマイクロ波乾燥又は誘電乾燥とを組み合わせた乾燥方法が好ましい。
【0066】
(iii) 第3工程(焼成)
最後に、上述のようにして得られたハニカム成形体を焼成することによって多孔質ハニカム構造体を得る。焼成とは、骨材粒子原料を焼結させて緻密化し、所定の強度を確保するための操作を意味する。本発明の製造方法においては、焼成の温度が、1250〜1450℃であることが好ましく、1300℃〜1430℃であることが更に好ましい。この範囲未満であると、アルカリ金属侵入固溶型コージェライトが生成し難くなる点において好ましくなく、この範囲を超えると、アルカリ金属侵入固溶型コージェライトが溶融するおそれがある点において好ましくない。
【0067】
なお、焼成の前、或いは焼成の昇温過程において、成形体中の有機物(バインダ、造孔剤、分散剤等)を燃焼させて除去する操作(仮焼)を行うと、有機物の除去を促進させることができる点において好ましい。バインダの燃焼温度は160℃程度、造孔剤の燃焼温度は300℃程度であるので、仮焼温度は200〜1000℃程度とすればよい。仮焼時間は特に限定されないが、通常は、1〜10時間程度である。
【0068】
本発明のハニカム構造体を触媒体や触媒担持フィルタとして用いる場合には、上記の製造方法によりハニカム構造体を製造した後、そのハニカム構造体に、アルカリ金属類を主たる成分とするNOX吸蔵触媒を担持させることが必要である。
【0069】
NOX吸蔵触媒の担持は、例えば、γ−Al23粉末と、Kをはじめとするアルカリ金属類、及び任意的に白金などの貴金属を含む溶液との混合物から得られたウォッシュコート用スラリーを用いて、上記のハニカム構造体(触媒担体)にウォッシュコートして乾燥した後、電気炉にて焼成することにより行うことができる。
【0070】
なお、触媒担持フィルタを製造するにあたっては、上記の製造方法によりハニカム構造体を製造するに際し、予め、ハニカム成形体の複数のセルの入口側端面と出口側端面とを目封じ材によって互い違いに目封じして目封じ部を形成しておくことが必要である。目封じ材としては、例えば、既述の坏土と同一組成の坏土、或いはその坏土を水に分散させてなるスラリー等を好適に用いることができる。
【0071】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0072】
[坏土の調製]
(実施例1)
アルカリ金属としてカリウムを選択し、アルカリ金属源としては炭酸カリウムを用いた。コージェライト化原料としては、カオリン、マグネシア、アルミナ、シリカを用い、これらが0.25K2O・2MgO・2.25Al23・4.5SiO2という組成となるように秤量・混合した。この粉末100質量部に対して、有機バインダとしてメチルセルロース6質量部、分散剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル2.5質量部、及び水24質量部を加え、更に、pH調整剤として酢酸をpH=6となるように添加し、これらを真空土練機により均一に混合し、混練して坏土を調製した。
【0073】
(実施例2)
アルカリ金属としてカリウムを選択し、アルカリ金属源としてはカリ長石を用いた。コージェライト化原料としては、カオリン、マグネシア、アルミナ、シリカを用い、これらが0.25K2O・2MgO・2.25Al23・4.5SiO2という組成となるように秤量・混合した。この粉末100質量部に対して、有機バインダとしてメチルセルロース6質量部、分散剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル2.5質量部、及び水24質量部を加え、これらを真空土練機により均一に混合し、混練して坏土を調製した。
【0074】
(実施例3)
アルカリ金属としてカリウムを選択し、アルカリ金属源としてはカリ長石を用いた。コージェライト化原料としては、カオリン、マグネシア、アルミナ、シリカを用い、これらが0.05K2O・2MgO・2.05Al23・4.9SiO2という組成となるように秤量・混合した。この粉末100質量部に対して、有機バインダとしてメチルセルロース6質量部、分散剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル2.5質量部、及び水24質量部を加え、これらを真空土練機により均一に混合し、混練して坏土を調製した。
【0075】
(比較例1)
アルカリ金属を全く含まない一般的なコージェライトの坏土を作製した。コージェライト化原料としては、カオリン、マグネシア、アルミナ、シリカを用い、これらが2MgO・2Al23・5SiO2組成となるように秤量・混合した。この粉末100質量部に対して、有機バインダとしてメチルセルロース6質量部、分散剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル2.5質量部、及び水24質量部を加え、これらを真空土練機により均一に混合し、混練して坏土を調製した。
【0076】
(比較例2)
アルカリ金属としてカリウムを選択し、アルカリ金属源としてはカリ長石を用いた。コージェライト化原料としては、カオリン、マグネシア、アルミナ、シリカを用い、これらが0.6K2O・2MgO・2.6Al23・3.8SiO2という組成となるように秤量・混合した。この粉末100質量部に対して、有機バインダとしてメチルセルロース6質量部、分散剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル2.5質量部、及び水24質量部を加え、これらを真空土練機により均一に混合し、混練して坏土を調製した。
【0077】
(比較例3)
アルカリ金属としてカリウムを選択し、アルカリ金属源としては炭酸カリウムを用いた。コージェライト化原料としては、カオリン、マグネシア、アルミナ、シリカを用い、これらが0.25K2O・2MgO・2.25Al23・4.5SiO2という組成となるように秤量・混合した。この粉末100質量部に対して、有機バインダとしてメチルセルロース6質量部、分散剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル2.5質量部、及び水24質量部を加え、これらを真空土練機により均一に混合し、混練して坏土を調製した。
【0078】
[ハニカム成形体の製造]
上記実施例1〜3、及び比較例1〜2の坏土を後述するセル形状、隔壁厚さ、セル密度を有する口金を用いて押出成形する方法により、ハニカム状に成形した後、熱風乾燥とマイクロ波乾燥とを組み合わせた乾燥方法により乾燥して、ハニカム成形体を得た。得られたハニカム成形体の全体形状は、端面(セル開口面)形状が外径40mmφの円形、長さが10mmであり、セル形状は約1.5mm×1.5mmの正方形セル、隔壁の厚さが300μm、セル密度が約300セル/平方インチのものであった。なお、比較例3に示した坏土は、その硬度や加圧した時の挙動が不適当であり、押出成形が不可能であった。比較例3の坏土は押出成形が不可能であったため、以下に示す焼成以降の工程は実施しなかった。
【0079】
[焼成]
上記実施例1〜3、及び比較例1〜2のハニカム成形体は、大気雰囲気中、約500℃で4時間、仮焼(脱脂)した後、大気雰囲気中、1350℃で10時間、焼成することによって、ハニカム構造体とした。これらのハニカム構造体をX線回折により定性分析した結果、実施例1〜3のハニカム構造体は、カリウム侵入固溶型コージェライトを主相とするものであり、比較例1のハニカム構造体は、六方晶の高温型コージェライト(インディアライト)を主相とするものであった。一方、比較例2のハニカム構造体にはカリウム侵入固溶型コージェライトは存在するものの、大部分はガラス相であった。なお、上記実施例1〜3、及び比較例1〜2のハニカム構造体のカリウム侵入固溶型コージェライトの含有量については、粉末X線回折による結晶定量分析により算出した。各ハニカム構造体における、粉末X線回折によるカリウム侵入固溶型コージェライトの結晶定量分析値は、表1に示した。なお、比較例2のハニカム構造体は目的とする組成物となっていないため、以下に示す耐カリウム試験は実施しなかった。
【0080】
実施例1〜3、及び比較例1〜2のハニカム構造体の諸特性を表1に示す。
【0081】
【表1】
Figure 0004302973
【0082】
各結晶の格子定数は室温(25℃)での粉末X線回折により算出した。各結晶の線熱膨張係数は、粉末X線回折により、格子定数を室温(25℃)〜600℃の温度範囲で測定し、その変化からa軸、c軸についての室温(25℃)〜600℃における線熱膨張係数を算出した。ハニカム構造体のセルの形成方向の平均線熱膨張係数については、ハニカム構造体から3セル×3セル×40mmの測定サンプルを切り出し、JIS R1618に記載の方法に準拠して測定した。
【0083】
共存する結晶相については、粉末X線解析の定性分析により評価した。気孔率は、ハニカム構造体の隔壁1枚を測定サンプルとして切り出し、アルキメデス法により算出した。
【0084】
[耐カリウム試験]
(触媒成分の調製)
市販のγ−Al23粉末(比表面積:200m2/g)を、(NH32Pt(NO22水溶液とKNO3水溶液とを混合した溶液に浸漬し、ポットミルにて2時間撹拌した後、水分を蒸発乾固させ、乾式解砕して600℃で3時間、電気炉にて焼成した。こうして得られた(白金+カリウム)含有γ−アルミナ粉末((Pt+K)−predoped γ−Al23)に、市販のAl23ゾルと水分を添加し、再びポットミルにて湿式粉砕することにより、ウォッシュコート用スラリーを調製した。
【0085】
γ−Al23とPt及びKとの量関係は、実施例1〜3、及び比較例1のハニカム構造体にスラリーをウォッシュコートし最終的に焼成を経た段階で、K触媒担持量が100g/L(ハニカム構造体体積あたり)である場合に、Ptが30g/cft(1.06g/L)(ハニカム構造体体積あたり、Pt元素ベースの質量)、Kが20g/L(ハニカム構造体体積あたり、K元素ベースの質量)となるよう、混合浸漬の段階で調整した。Al23ゾルの添加量は、その固形分が、Al23換算で、全Al23の5質量%となる量とし、水分についてはスラリーがウォッシュコートしやすい粘性となるよう、適宜添加した。
【0086】
(触媒体の作製)
触媒材原料の調製で得られたウォッシュコート用スラリーに、実施例1〜3、及び比較例1のハニカム構造体を浸漬し、セル内の余分な液を吹き払った後、ハニカム構造体を乾燥した。カリウムの担持量が、焼成後に20g/L(ハニカム構造体の体積あたりのカリウムの質量)となるよう調整した。1度の浸漬及び乾燥で所望の担持量に不足がある場合には、到達するまで浸漬及び乾燥の工程を繰り返した。これを電気炉にて600℃で1時間焼成して、触媒体を得た。
【0087】
(耐久試験)
実施例1〜3、及び比較例1で得られた触媒体を、電気炉にて、水分を10%共存させながら、850℃で30時間保持し、耐久試験を行った。この後、外観観察(マクロクラックの観察)及び電子顕微鏡による微構造観察(マイクロクラックの観察)を行い、耐久試験前後のクラックの有無を調査し、その結果を表1に示した。また、耐久試験前後の抗折強度をJIS R1601に記載の方法に準拠して測定し、耐久試験前の抗折強度を100%とし、これに対する耐久試験後の抗折強度の比を強度劣化値として、表1に示した。
【0088】
[評価]
実施例1〜3の触媒体は、耐久試験後にクラックは認められず、強度劣化も低いレベルに抑えられた。特に、アルカリ金属の固溶量の多いものが良好な結果を示した。これに対し、比較例1の触媒体は、耐久試験後にクラックが認められ、強度劣化も著しいものであった。
【0089】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のハニカム構造体は、アルカリ金属侵入固溶型コージェライトを主たる成分として構成することとしたので、NO吸蔵触媒としてアルカリ金属類を担持させた場合に、クラックの発生や触媒性能の低下を有効に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ハニカム構造体の例により、「ハニカム」を説明する模式図である。
【図2】 一般的なハニカム構造体の構造を示す模式図である。
【符号の説明】
1…ハニカム構造体、3…セル、4…隔壁、21…ハニカム構造体、22…目封じ部、23…セル、24…隔壁、B…入口側端面、C…出口側端面、G1…被処理ガス、G2…処理済ガス。

Claims (17)

  1. 隔壁によって区画された、流体の流路となる複数のセルを有し、下記化学式(1)で表されるアルカリ金属侵入固溶型コージェライトを主たる成分として構成されてなることを特徴とするハニカム構造体。
    (1):xM O・2MgO・(2+x)Al ・(5−2x)SiO
    (但し、M:アルカリ金属、x=0.02〜0.5)
  2. 前記アルカリ金属侵入固溶型コージェライトは、コージェライトの結晶構造中のSiO 四面体又はAlO 四面体が形成する六員環に囲まれた空隙に、カリウム(K)が侵入し、コージェライト結晶中に固溶したものである請求項1に記載のハニカム構造体。
  3. 前記アルカリ金属侵入固溶型コージェライトを構成する結晶のa軸の格子定数が9.7710〜9.8360Å、c軸の格子定数が9.3540〜9.3970Åである請求項1又は2に記載のハニカム構造体。
  4. 前記アルカリ金属侵入固溶型コージェライトを構成する結晶のa軸の平均線熱膨張係数(25〜600℃)が1.5×10−6〜3.0×10−6/K、c軸の平均線熱膨張係数(25〜600℃)が−2.1×10−6〜−0.5×10−6/Kである請求項1〜3のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
  5. 前記セルの形成方向の平均線熱膨張係数(40〜800℃)が0.5×10−6〜2.9×10−6/Kである請求項1〜4のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
  6. 前記アルカリ金属が、カリウム(K)である請求項1〜5のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
  7. アルキメデス法により測定した気孔率が0〜70%である請求項1〜6のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載のハニカム構造体に、アルカリ金属類を含有するNO吸蔵触媒が担持されてなることを特徴とする触媒体。
  9. 前記複数のセルの入口側端面と出口側端面とが目封じ部によって互い違いに目封じされている請求項1〜7のいずれか一項に記載のハニカム構造体に、アルカリ金属類を含有するNO吸蔵触媒が担持されてなることを特徴とする触媒担持フィルタ。
  10. コージェライト化原料及びアルカリ金属源を、焼成後の組成が下記化学式(1)で示されるアルカリ金属侵入固溶型コージェライトとなるように秤量・混合し、
    少なくとも、前記コージェライト化原料、水、有機バインダ、及び前記アルカリ金属源を中性条件下で混合し、混練することによって坏土とし、
    前記坏土を流体の流路となる複数のセルを有するハニカム状に成形し、乾燥することによってハニカム成形体を得、
    前記ハニカム成形体を焼成することによってハニカム構造体を得ることを特徴とするハニカム構造体の製造方法。
    (1):xM O・2MgO・(2+x)Al ・(5−2x)SiO
    (但し、M:アルカリ金属、x=0.02〜0.5)
  11. 前記アルカリ金属源が、アルカリ金属化合物である請求項10に記載のハニカム構造体の製造方法。
  12. 前記アルカリ金属源が、カリウム化合物である請求項10に記載のハニカム構造体の製造方法。
  13. 前記アルカリ金属源が、カリ長石である請求項10に記載のハニカム構造体の製造方法。
  14. 前記コージェライト化原料が、カオリン、マグネシア、アルミナ及びシリカである請求項10〜13のいずれか一項に記載のハニカム構造体の製造方法。
  15. 前記焼成の温度が、1250〜1450℃である請求項10〜14のいずれか一項に記載のハニカム構造体の製造方法。
  16. 請求項10〜15のいずれか一項に記載のハニカム構造体の製造方法によりハニカム構造体を製造した後、前記ハニカム構造体に、アルカリ金属類を含有するNO吸蔵触媒を担持させることを特徴とする触媒体の製造方法。
  17. 請求項10〜15のいずれか一項に記載のハニカム構造体の製造方法によりハニカム構造体を製造するに際し、前記ハニカム成形体の前記複数のセルの入口側端面と出口側端面とを目封じ材によって互い違いに目封じして目封じ部を形成するとともに、請求項10〜15のいずれか一項に記載のハニカム構造体の製造方法によりハニカム構造体を製造した後、前記ハニカム構造体に、アルカリ金属類を含有するNO吸蔵触媒を担持させることを特徴とする触媒担持フィルタの製造方法。
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