JP4301523B2 - 糖化タンパク質割合測定方法 - Google Patents

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Description

本発明は糖化タンパク質のタンパク質に対する割合の定量方法及び定量用組成物に関する。更に詳しくは、酵素を用いた、簡便、迅速、かつ臨床生化学検査分野に有用な糖化タンパク質のタンパク質に対する割合定量法及び定量用組成物に関する。
糖尿病の診断及び管理行う上で糖化タンパク質の測定は非常に重要であり、過去約1〜2ヶ月の平均血糖値を反映する糖化ヘモグロビン、過去約2週間の平均血糖値を反映する糖化アルブミン及び、血清中の還元能を示す糖化タンパク質の総称であるフルクトサミン等が日常的に測定されている。中でも糖化アルブミン及び糖化ヘモグロビンは、タンパク質あたりの糖化タンパク質割合で値が示されている為に、個人差が少なく、またタンパク質濃度の影響を受けないことから、糖尿病のスクリーニング及び病態管理の目的で日常的に測定が行われている。
糖化タンパク質の定量法としては、以下の(a) 〜(e) の方法及び酵素法が知られている。
(a) クロマトグラフィ法〔非特許文献1〕。
(b) 電気泳動法〔非特許文献2〕。
(c) 免疫法〔非特許文献3〕。
(d) アルカリ性に於ける糖化タンパク質の還元性を利用したフルクトサミンの測定方法〔非特許文献4〕。
(e) チオバルビツール酸を用いる方法〔非特許文献5〕。
前記(a) 、(b) の方法は、操作性、精度、高価な専用装置を必要とするなどの問題が多く、前記(c) の方法は精度が必ずしも良くなく、また前記(d) 、(e) の方法は検体中の共存物質の影響を受け特異性の点で問題があった。
精度が高く、簡便かつ安価な定量方法としては酵素法があげられ、下記(f) 〜(i) の方法が知られている。
(f) プロナーゼ処理−フルクトシルアミンデグリカーゼにてフルクトサミンを測定する方法(特許文献1)。
(g) プロテアーゼ処理を行いフルクトシルアミノ酸オキシダーゼにて検出する方法(特許文献2)。
(h) リジン残基遊離試薬−ε-アルキルリジナーゼにて検出する方法(特許文献3)。
(i) リジン残基遊離試薬-CH-OH基を水素供与体としNAD および/またはNADPを水素供与体とする酸化還元酵素にて検出する方法(特許文献4)。
また本発明者らのグループは糖化アミノ酸に作用する酵素を生産する実質上純粋な形質転換された微生物を作成し、熱安定性及び反応性が高い、フルクトシルアミンオキシダーゼを効率よく生産する方法(特許文献5)を開発してきた。
しかし、酵素法は簡便、安価かつ正確である反面、別途該タンパク質の総量を定量し、酵素法で得られた定量値を除することにより糖化タンパク質割合を算出する必要があり、これまでタンパク質の定量及び糖化タンパク質の定量を同一反応槽中で行った例はなかった。
さらに、血液中には様々な疾病によりその量が大きく変化することが知られているグロブリン成分が大量に存在するために、本発明者らは、グロブリン成分の影響を回避し、グロブリン成分以外のタンパク質中の糖化タンパク質を選択的に測定する方法(特許文献6)を開発してきた。
特開平6-46846 号公報 特開平5-192193号公報 特開平2-195900号公報 特開平2-195899号公報 特開平10-201473 号公報 特願平 11-231259号公報 J.Clin.Chem.Clin.Biochem.19:81−87(1981) Clin.chem.26:1958-1602(1980) JCCLA 18:620(1993) Clin.Chem.Acta 127:87-95(1982)〕 Clin.Chem.Acta 112:197-204(1981)〕
本発明の目的は、臨床生化学検査における有用なタンパク質に対する糖化タンパク質の割合定量方法、及びその定量に使用するための定量用組成物を提供することにある。さらに詳しくは、本発明の目的は、タンパク質の定量及び酵素法を用いた該タンパク質の糖化物の定量を同一反応槽で行うことにより、タンパク質に対する糖化タンパク質の割合を簡便に定量する方法、及びその定量に用いる定量用組成物を提供することにある。
上記の目的を達成する為には、タンパク質の定量、該タンパク質のプロテアーゼ処理、糖化アミノ酸の定量を同一反応槽中で行えば良い。
しかし、タンパク質を定量する条件と糖化タンパク質を定量する条件(例えば測定のpH、波長等)が異なる点、タンパク質の定量液にプロテアーゼを作用させると、そのタンパク定量色素等の発色が変化し、続く糖化タンパク質の測定に大きな影響を生じる点、タンパク質定量試薬によっては糖化タンパク定量条件により激しく着色する点、糖化アルブミン若しくは糖化ヘモグロビンの割合を定量するには、血液中のアルブミン若しくはヘモグロビンの中の糖化物のみを選択的に測定する必要がある点から単純に公知の技術の組み合わせのみでは、両者を同一反応槽中で正確に測定することは困難であった。
そこで本発明者らは、鋭意検討の結果、タンパク質定量に用いる色素と糖化タンパク質定量に用いる色素の組み合わせを最適化する事により1波長連続測定が可能であること、及びプロテアーゼを作用させる条件を調節することによりプロテアーゼ作用によるタンパク質濃度測定の発色変化を回避し得ること、及びタンパク質定量用色素の種類と糖化タンパク質検出のpHを最適化することでタンパク質発色試薬の異常着色を回避することができることを見出した。またさらに、本発明者らが開発してきたグロブリン成分の影響を回避する方法(特願平11-231259 号) と組み合わせることにより、血液中のアルブミン及びヘモグロビンの糖化割合をグロブリン成分の影響を小さくして測定できることを見出し本発明の完成に至った。
すなわち、本発明はこのような目的を達成する為に行われたものであって、臨床生化学検査におけるタンパク質に対する糖化タンパク質の割合測定に有用な定量方法及び定量用組成物として用いられる。
本発明は、次の1)〜3)の工程を同一反応槽中で行うことを特徴とする糖化タンパク質割合測定方法に関する;
1) 被検液中のタンパク質の定量、
2) 該タンパク質のプロテアーゼ処理
3) 糖化アミノ酸に作用する酵素を用いた糖化アミノ酸の定量
本発明では、糖化タンパク質定量値をタンパク質定量値で除し、タンパク質に対する糖化タンパク質の割合を算出するとよい。
また、本発明は、タンパク質定量試薬、プロテアーゼ及び糖化アミノ酸に作用する酵素を含有してなる糖化タンパク質の割合定量用組成物に関する。
本発明の測定方法及び測定用組成物によれば、タンパク質の定量、該タンパク質のプロテアーゼ処理、糖化アミノ酸の定量を同一反応槽中で行なえるので、簡便かつ迅速に、糖化タンパク質のタンパク質に対する割合を定量することができる。
本発明の構成及び好ましい形態について更に詳しく説明する。
本発明の測定対象となる被検液は、少なくとも、糖化タンパク質を含有する被検液であれば如何なるものを用いても良いが、好ましくは、血液成分、例えば全血、血球、赤血球、溶血液、血清、血漿若しくは尿等が挙げられる。
本発明の測定対象となるタンパク質としては臨床検査上有用なタンパク質であれば何れのタンパク質を測定しても良いが、好ましくは血中に存在するタンパク質であり、例えばアルブミン又はヘモグロビン等が挙げられる。
本発明の対象となるタンパク質の定量方法は、対象となるタンパク質を正確に測定できる方法であればいかなる方法を用いても良い。例えば対象となるタンパク質がアルブミンである場合には、公知のアルブミンを測定する方法であれば如何なる方法を用いても良い。このような方法には、例えばブロムクレゾールグリーン(以下 BCGと略す。)、ブロムクレゾールパープル(以下BCP と略す。)、ブロモフェノールブルー(以下BPB と略す。)、メチルオレンジ(以下MOと略す。)、または2-(4'- ヒドロキシベンゼンアゾ)安息香酸(以下HABAと略す。)等のアルブミン特異的な色素を用いる方法等が挙げられる。さらにまた、対象となるタンパク質がヘモグロビンである場合には、公知のヘモグロビンを測定する方法であれば如何なる方法を用いても良い。このような方法には、例えばメトへモグロビン法、シアンメトヘモグロビン法、アザイドメトヘモグロビン法、緑色発色団形成法またはオキシヘモグロビン法等が挙げられる。緑色発色団形成法とは、緑色発色団形成試薬とヘモグロビンを反応せしめ、安定な生成物(緑色発色団)を形成する方法であり、緑色発色団は英国特許公開第 2052056号に記述されるアルカリ性ヘマチン D-575と同様な吸収スペクトルを有する。
本発明に使用しうるプロテアーゼは、被検液に含まれる対象となるタンパク質に有効に作用するものであればいかなるものを用いても良く、例えば動物、植物、微生物由来のプロテアーゼ等が挙げられる。具体的な例を以下に示す。しかし、これらは1例に過ぎず、なんら限定されるものではない。
動物由来のプロテアーゼの例としては、エラスターゼ(Elastase)、トリプシン(Tripsin)、キモトリプシン(Chymotripsin)、ペプシン(Pepsin)、牛膵臓プロテアーゼ、カテプシン(Catepsin)、カルパイン(Calpain)、プロテアーゼタイプ−I 、−XX(以上、シグマ社製)、アミノペプチダーゼM(AminopeptidaseM)、カルボキシペプチダーゼA(CarboxypeptidaseA)(以上、ベーリンガー・マンハイム社製)、パンクレアチン(Pancreatin:和光純薬社製)等が挙げられる。
植物由来のプロテアーゼの例としては、カリクレイン(Kallikrein)、フィシン(Ficin)、パパイン(Papain)、キモパパイン(Chimopapain)、ブロメライン(Bromelain)(以上、シグマ社製)、パパインW-40、ブロメラインF (以上、天野製薬社製)等が挙げられる。
微生物由来のプロテアーゼの例としては下記(1) 〜(14)が挙げられる。
(1) バチルス(Bacillus)属由来プロテアーゼ;ズブチリシン(Subtilisin)、プロテアーゼ−タイプ-VIII 、-IX 、-X、-XV 、-XXIV 、-XXVII、-XXXI(以上、シグマ社製)、サーモリシン(termolysin)(以上、和光純薬社製)、オリエンターゼ-90N、-10NL 、-22BF 、-Y、-5BL、ヌクレイシン(以上、阪急バイオインダストリー社製)、プロレザー、プロテアーゼ-N、-NL 、-S「アマノ」(以上、天野製薬社)、GODO-BNP、-BAP(以上、合同酒清社精製)、プロチン-A、-P、デスキン、デピレイス、ビオソーク、サモアーゼ(以上、大和化成社製)、トヨチームNEP (東洋紡績社製)、ニュートラーゼ、エスペラーゼ、サビナーゼ、デュラザイム、バイオフィードプロ、アルカラーゼ、NUE 、ピラーゼ、クリアーレンズプロ、エバラーゼ、ノボザイム-FM 、ノボラン(以上、ノボノルディスクバイオインダストリー社製)、エンチロン-NBS、-SA(以上、洛東化成工業社製)、アルカリプロテアーゼ GL440 、オプティクリーン-M375 プラス、-L1000、-ALP440 (以上、協和発酵社製)、ナガーゼ(Nagarse)、ビオプラーゼAPL-30、SP-4FG、XL-416F、AL-15FG (以上、ナガセ生化学工業社製)、アロアーゼAP-10 、プロテアーゼYB、(以上、ヤクルト薬品工業社製)、コロラーゼ-N、-7089 、ベロンW (以上、樋口商会社製)、キラザイム P-1 (ロシュ社製)等。
(2) アスペルギルス(Aspergillus)由来プロテアーゼ;プロテアーゼタイプ-XIII、-XIX、-XXIII(以上、シグマ社製)、スミチーム -MP、-AP、-LP、-FP、-LPL、エンザイム P-3(以上、新日本化学工業株式会社製)、オリエンターゼ-20A、-ONS、-ON5、テトラーゼS (以上、阪急バイオインダストリー社製)、ニューラーゼA 、プロテアーゼ-A、-P、-M「アマノ」(以上、天野製薬社)、IP酵素、モルシンF 、AOプロテアーゼ(以上、キッコーマン社製)、プロチン-F、-FN 、-FA(以上、大和化成社製)、デナプシン2P、デナチーム-SA-7、-AP 、デナザイムAP (以上、ナガセ生化学工業社製)、プロテアーゼYP-SS 、パンチダーゼ-NP-2 、-P (以上、ヤクルト社製)、サカナーゼ(科研ファルマ社製)、フレーバーザイム (ノボノルディスクバイオインダストリー社製)、ベロンPS(樋口商会社製)等。
(3) リゾパス(Rhizopus)由来プロテアーゼ;プロテアーゼタイプXVIII(シグマ社製)、ペプチダーゼR 、ニューラーゼF(以上、天野製薬社製)、XP-415(ナガセ生化学工業社製)等。
(4) ペニシリウム(Penicillum)由来プロテアーゼ;PD酵素(キッコーマン社製)等。
(5) ストレプトマイセス(Streptomyces)由来プロテアー;プロテアーゼタイプXIV ;別称Pronase 、-XXI(以上、シグマ社製)、アクチナーゼ-AS 、-AF (以上、科研ファルマ社製)、タシナーゼ(協和発酵社製)、alkalofilicproteinase (東洋紡社製)等。
(6) スタフィロコッカス(Staphylococcus)由来プロテアーゼ;プロテアーゼタイプXVII(シグマ社製)等。
(7) クロストリジウム(Clostridium)由来プロテアーゼ;クロストリパイン(Clostripain)、ノンスペシフィック ニュートラルプロテアーゼ(nonspesific nutoral proteinase)(以上、シグマ社製)等。
(8) リソバクター(Lysobacter)由来プロテアーゼ;エンドプロテイナーゼLys-C (シグマ社製)等。
(9) グリフォラ(Grifola)由来プロテアーゼ;メタロエンドペプチダーゼ(Metalloemdopeputidase ;シグマ社製)等。
(10)酵母(Yeast)由来プロテアーゼ;プロテイナーゼA (proteinaseA ;シグマ社製)、カルボキシペプチダーゼY (CarboxypeputidaseY;ベーリンガー・マンハイム社製)等。
(11)トリチラチウム(Tritirachium)由来プロテアー;プロテイナーゼK (ProteinaseK;シグマ社製)等。
(12)サーマス(Thermus)由来プロテアーゼ;アミノペプチダーゼT(AminopeputidaseT ;ベーリンガー・マンハイム社製)等。
(13)シュードモナス(Pseudomonus)由来プロテアーゼ;エンドプロテイナーゼ Asp-N (Endoproteinase Asp-N;和光純薬社製)等。
(14)アクロモバクター(Achromobacter)由来プロテアーゼ;リジルエンドペプチダーゼ(Lysylendopeputidase)、アクロモペプチダーゼ(以上、和光純薬社製)等。
また、測定対象であるタンパク質がアルブミンである場合にはバチルス属及びストレプトマイセス属の微生物由来プロテアーゼがヒトアルブミンに対する作用が大きい為より好ましく、また測定対象であるタンパク質がヘモグロビンで有る場合にはバチルス属、アスペルギルス属、ストレプトマイセス属、トリチラチウム属由来のプロテアーゼがヒトヘモグロビンに対する作用が大きい為により好ましい。
本発明に用いることの出来るプロテアーゼの活性測定法を下記に示す。
<<プロテアーゼの活性測定方法>>
下記の測定条件で30℃、1 分間に 1μg のチロシンに相当する呈色を示すプロテアーゼ活性を1PU (proteolytic Unit)と表示する。
<基質> 0.6% ミルクカゼイン(メルク社製)
<酵素溶液> 10PU〜20PUに希釈
<酵素希釈溶液> 20mM 酢酸緩衝液 pH7.5
1mM 酢酸カルシウム
100mM 塩化ナトリウム
<反応停止液> 0.11M トリクロル酢酸
0.22M 酢酸ナトリウム
0.33M 酢酸
<操作>
プロテアーゼ溶液を10〜20PU/ml になるように酵素希釈溶液にて溶解し、この液1ml を試験管に取り30℃に加温する。あらかじめ30℃に加温しておいた基質溶液5ml を加え正確に10分後反応停止液5ml を添加し反応を停止する。そのまま30℃30分加温を続け沈殿を凝集させ、東洋ろ紙N0.131(9cm) でろ過を行い、ろ液を得る。ブランク測定はプロテアーゼ溶液 1mlを試験管に取り30℃に加温し、まず反応停止液5ml を添加し続いて基質溶液 5mlを添加後同様に凝集、ろ過を行う。
ろ液 2mlを0.55M 炭酸ナトリウム溶液 5ml、3 倍希釈フォリン試薬 1mlを加え30℃、30分反応後 660nmの吸光度を測定する。酵素作用を行った吸光度からブランク測定の吸光度を差し引いた吸光度変化、ΔAを求め、別に作成した作用標準曲線より酵素活性を求める。
<標準作用曲線作成法>
約50PU/ml に調整した酵素溶液を希釈し2 〜50PU/ml の一連の希釈倍率を持った酵素溶液を作成し上記操作を行い、得られたΔAを縦軸に希釈倍数を横軸にプロットする。一方L-チロシンを0.2N塩酸に0.01% の濃度に溶解しその1ml に0.2N塩酸10ml加えたものを標準チロシン溶液とする(チロシン濃度9.09μg/ml)。標準チロシン溶液2ml と0.2N塩酸2ml についてそれぞれ上記測定操作を行い、得られたΔAがチロシン18.2μg に相当する。このΔA を前記グラフ上にとり、その点から横軸に垂線を下ろし横軸との交点が10PU/ml に相当する。
本発明に使用しうる糖化アミノ酸に作用する酵素としては、前記プロテアーゼの作用により、被検液に含まれる糖化タンパク質から生成される糖化アミノ酸若しくは糖化ペプチドに有効に作用し、実質的に糖化タンパク質が測定できる酵素であれば如何なるものを用いても良い。例えば、糖化アルブミンを測定対象とする場合には、ε-アミノ基が糖化された糖化アミノ酸若しくはペプチドに作用する酵素が好ましく、また糖化ヘモグロビンを測定対象とする場合には、α-アミノ基が糖化された糖化アミノ酸若しくはペプチドに作用する酵素が好ましい。
ε-アミノ基が糖化された糖化アミノ酸に作用する酵素の例としては、ギベレラ(Gibberella)属またはアスペルギルス(Aspergillus)属(例えばIFO-6365、-4242、-5710 等)由来フルクトサミンオキシダーゼ、カンジダ(Candida)属由来フルクトシルアミンデグリカーゼ、ペニシリウム(Penicillium)属(例えばIFO-4651、-6581、-7905、-5748、-7994、-4897、-5337 等)由来フルクトシルアミノ酸分解酵素、フサリウム(Fusarium)属(例えばIFO-4468、-4471、-6384、-7706、-9964、-9971、-31180、-9972 等)由来、アクレモニウム(Acremonium)属由来又はデバリオマイゼス(Debaryomyces)属由来ケトアミンオキシダーゼ等が挙げられる。
α-アミノ基が糖化された糖化アミノ酸若しくはペプチドに作用する酵素の例としては、上記ε-アミノ基が糖化された糖化アミノ酸若しくはペプチドに作用する酵素及びコリネバクテリウム(Corynebacterium)由来の酵素が挙げられ、α-アミノ基が糖化された糖化アミノ酸若しくはペプチドに特異的に作用する酵素の例としてはコリネバクテリウム属由来の酵素が挙げられる。
さらに、α-アミノ基及びε-アミノ基が糖化された糖化アミノ酸若しくはペプチドに作用し、プロテアーゼと共存させた状態でも充分な活性を有する酵素の例としては、遺伝子組み替え型フルクトサミンオキシダーゼ(R-FOD ;旭化成工業社製)が挙げられる。
糖化アミノ酸に作用する酵素の活性は下記の方法にて測定する。
<<糖化アミノ酸に作用する酵素の活性測定法>>
<反応液の組成>
50mM トリス緩衝液 pH7.5
0.03% 4-アミノアンチピリン(以下4-AAと略す。;和光純薬社製)
0.02% フェノール(和光純薬社製)
4.5U/ml パーオキシダーゼ(以下 PODと略す。;シグマ社製)
1.0mM α- カルボベンズオキシ- ε-D- フルクトシル-L- リジン若しくはフルクトシ
ルバリン(ハシバらの方法に基づき合成、精製した。Hashiba H、
J.Agric.Food Chem.24:70、1976。以下 ZFLと略す。)
上記の反応液1ml を小試験管に入れ、37℃−5 分間予備加温した後、適当に希釈した酵素液0.02mlを添加して攪拌し、反応を開始する。正確に10分間反応の後に0.5%のSDSを2ml 添加して反応を停止し、波長500nm の吸光度を測定する(As)。またブランクとして酵素液のかわりに蒸留水0.02mlを用いて同一の操作を行って吸光度を測定する(Ab)。この酵素作用の吸光度(As)と盲検の吸光度(Ab)の吸光度差(As−Ab)より酵素活性を求める。別にあらかじめ過酸化水素の標準溶液を用いて吸光度と生成した過酸化水素との関係を調べ、37℃−1 分間に 1μM の過酸化水素を生成する酵素量を1Uと定義する。計算式を下記に示す。
酵素活性(U/ml)=(As−Ab)×2.32×酵素の希釈率
本発明に使用しうるグロブリン成分選択的なプロテアーゼ阻害剤は、例えば血液成分のごとき、グロブリン成分及びグロブリン成分以外のタンパク質を含有する被検液に、プロテアーゼをグロブリン成分選択的なプロテアーゼ阻害剤存在下作用せしめ、主にグロブリン成分以外のタンパク質から、糖化アミノ酸に作用する酵素の基質を生じうるグロブリン成分選択的なプロテアーゼ阻害剤であれば、如何なるものを用いても良い。その例として金属イオン、プロテインA、プロテインGなどが挙げられる。
金属イオンとしては、例えば、遷移金属、III 族、IV族の金属イオンが好ましく、遷移金属イオンとしては亜鉛、ニッケル、鉄、銅、コバルトイオンがより好ましく、III 族金属イオンとしてはアルミニウム、ガリウムイオンがより好ましく、IV族金属イオンとしては錫、鉛イオンがより好ましい。さらに金属の毒性、血清との相互作用による沈殿の生成等を考慮すると、アルミニウム若しくはニッケルイオンが最も好ましい。尚、これらの金属イオンは単独若しくは組み合わせて用いても良く、また金属イオンを添加するには、例えば、その金属イオン放出能力のある塩の水溶液を用いれば良い。
本発明の糖化タンパク質割合の定量方法に於ける液組成については、タンパク質定量試薬、プロテアーゼを用いたタンパク質の分解試薬、生成した糖化アミノ酸若しくはペプチドの定量を行う糖化アミノ酸定量試薬を同一反応槽中で使用できるように適宜組み合わせれば良い。
本発明に使用しうるタンパク質定量試薬組成は、公知のタンパク質定量試薬を用いれば良い。例えばアルブミンを定量する目的では、前記BCG 、BCP 、BPB 、MO、チバクロンブルー誘導体若しくはHABA等のアルブミン定量色素を用いることが出来、例えばHABAを用いる場合には pH3.0〜10.0、好ましくは pH4.0〜9.0 に於いて、0.001 〜10% 、好ましくは0.01〜1%の濃度で使用すれば良く、480 〜550nm の吸光度変化を測定し既知の濃度の標準品の発色と比較すればよい。また同様にBCP を用いる場合には、pH 4.0〜8.0 、好ましくはpH 4.5〜7.5 に於いて着色を押さえる界面活性剤、例えばBriJi35 等を0.01〜5%、好ましくは0.05〜1%の共存下、0.0001〜0.2%、好ましくは0.0005〜0.1%で使用すれば良く、600nm 付近の吸光度変化を測定し既知濃度の標準品の発色と比較すれば良い。
また例えばヘモグロビンを定量する目的には、公知のヘモグロビン定量法、例えば、前記メトへモグロビン法、シアンメトへモグロビン法、アザイドメトへモグロビン法、緑色発色団形成法またはオキシへモグロビン法等を用いることが出来、メトヘモグロビン法を用いる場合には、例えばフェリシアン化カリウム等の酸化剤を、シアンメトヘモグロビン法を用いる場合には例えばシアン化カリウム等のシアンイオンを、アザイドメトヘモグロビン法を用いる場合には例えばアジ化ナトリウム等のアザイドを、緑色発色団形成法を用いる場合には例えば非イオン性界面活性剤等の緑色発色団形成試薬を、公知の方法で添加するれば良く、またオキシヘモグロビン法を用いる場合には、例えば検体を蒸留水で希釈しオキシへモグロビンに変換後540nm の吸収を測定ば良い。またヘモグロビンの変性を防
ぐ目的で界面活性剤、例えば少なくとも硫酸基を有する界面活性剤、及び/または非イオン性界面活性剤、及び/又は両イオン性界面活性剤を好ましくは0.001 〜10% の濃度で添加すると好ましい。
本発明に使用しうるタンパク質の分解試薬組成としては、使用するプロテアーゼの至適pHを考慮し、反応が効率よく進行するようにpH及びプロテアーゼ濃度を決定し、必要であればその後グロブリン成分選択的なプロテアーゼ阻害剤を有効な濃度になるよう適宜調製して添加すればよい。
例えば前記プロテアーゼタイプXXVII(シグマ社製)はpHが 7〜10付近でタンパク質分解活性が強く、反応のpHは7 〜10を選択できる。またプロテアーゼ添加濃度は実際に使用される反応時間中に被検液中の糖化タンパク質を十分に分解し得る濃度で有れば良く、500 〜50万PU/ml が好ましく、1000〜10万PU/ml がより好ましい。さらにグロブリン成分選択的なプロテアーゼ阻害剤として例えばアルミニウムイオンを使用する場合、好ましくは0.05mM以上、実質的にグロブリン成分へのプロテアーゼ作用が無くなる0.3mM 以上がさらに好ましく、また被検液添加時の濁りが2mM 以上から顕著になることから、0.05mM〜2mM が好ましく、0.1mM 〜1mM がさらに好ましい。
本発明に使用しうる糖化アミノ酸定量試薬組成については、使用する糖化アミノ酸に作用する酵素の至適pHを考慮し、反応が効率よく進行するようにpHを選択しその後、糖化アミノ酸に作用する酵素量を決定すればよい。
例えばR-FOD (旭化成工業社製)を使用する場合、活性を有する領域が pH5.0〜11と広く、反応のpHは 5.0〜11を選択できる。また酵素添加濃度は、使用される反応液中で糖化アミノ酸を十分に検出し得る濃度で有れば良く、0.01〜1000U/mlが好ましく、0.1 〜500U/ml がより好ましい。
また本発明に使用しうる糖化アミノ酸に作用する酵素作用の検出は、例えばデヒドロゲナーゼを用いた場合には補酵素の変化量を、例えば補酵素としてニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(以下NAD と略す。)を用た場合には、還元型補酵素である還元型NAD をその極大吸収波長域である340nm 付近の波長にて比色計で直接定量するか、若しくは生じた還元型補酵素を各種ジアフォラーゼ、またはフェナジンメトサルフェート(以下PMS と略す。)、メトキシPMS 、ジメチルアミノベンゾフェノキサジニウムクロライド(メルドラブルー)等の電子キャリアー及びニトロテトラゾリウム、2- (4-インドフェニル)-3- (4-ニトロフェニル)-5-(2、4 ジスルフォフェニル)-2H-テトラゾリウム、モノナトリウム塩(WST-1)〜2-(2- メトキシ-4- ニトロフェニル)-3-(4- ニトロフェニル)-5-(2- メトキシ-4- ニトロフェニル)-3-(4- ニトロフェニル)-5-(2,4- ジスルフォフェニル)-2H-テトラゾリウム、1ナトリウム塩(WST-8)(水溶性テトラゾリウム塩シリーズ1〜8)(以上、同人化学研究所社製) に代表される各種テトラゾリウム塩等の還元系発色試薬を用い間接的に定量してもよく、またこれ以外の公知の方法により直接、間接的に測定してもよい。
また例えばオキシダーゼを用いた場合には、酸素の消費量または反応生成物の量を測定することが好ましい。反応生成物として、例えばフルクトサミンオキシダーゼを用いた場合には反応により過酸化水素及びグルコソンが生成し、過酸化水素及びグルコソン共に公知の方法により直接、間接的に測定する事が出来る。
上記過酸化水素の量は、例えばPOD 等を用いて色素等を生成し、発色、発光、蛍光等により定量しても良く、カタラーゼ等を用いてアルコールからアルデヒドを生成せしめて、生じたアルデヒドの量を定量しても良い。
過酸化水素の発色系は、POD の存在下で4-AA若しくは3-メチル-2- ベンゾチアゾリノンヒドラゾン(以下MBTHと略す。)等のカップラーとフェノール等の色原体との酸化縮合により色素を生成するトリンダー試薬、POD の存在下で直接酸化呈色するロイコ型試薬等を用いることが出来る。
トリンダー型試薬の色原体としては、フェノール誘導体、アニリン誘導体、トルイジン誘導体等が使用可能であり、具体例としてN,N ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、2,4-ジクロロフェノール、N-エチル-N- (2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-3, 5-ジメトキシアニリン(DAOS) 、N-エチル-N- スルホプロピル-3,5ジメチルアニリン(MAPS)、N-エチル-N- (2-ヒドロキシ-3- スルホプロピル)-3,5- ジメチルアニリン(MAOS)、N-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3- スルホプロピル)-m-トルイジン(TOOS)、N-エチル-N- スルホプロピル-m- アニシジン(ADPS)、N-エチル-N- スルホプロピルアニリン(ALPS)、N-エチル-N- スルホプロピル-3,5- ジメトキシアニリン(DAPS)、N-スルホプロピル-3,5- ジメトキシアニリン(HDAPS)、N-エチル-N- スルホプロピル-m- トルイジン(TOPS) 、N-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3- スルホプロピル)-m- アニシジン(ADOS)、N-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3- スルホプロピル)アニリン(ALOS)、N-(2-ヒドロキシ-3- スルホプロピル)-3,5- ジメトキシアニリン(HDAOS)、N-スルホプロピル−アニリン(HALPS)(以上、同人化学研究所社製)等が挙げられる。
またロイコ型試薬の具体例としては、o-ジアニシジン、o-トリジン、3,3 ジアミノベンジジン、3,3,5,5-テトラメチルベンジジン (以上、同人化学研究所社製) 、N-(カルボキシメチルアミノカルボニル)-4,4- ビス(ジメチルアミノ)ビフェニルアミン(DA64)、10-(カルボキシメチルアミノカルボニル)-3,7- ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン(DA67) (以上、和光純薬社製) 等が挙げられる。
さらに蛍光法には、酸化によって蛍光を発する化合物、例えばホモバニリン酸、4-ヒドロキシフェニル酢酸、チラミン、パラクレゾール、ジアセチルフルオレスシン誘導体等を、化学発光法には、触媒としてルミノール、ルシゲニン、イソルミノール、ピロガロール等を用いることが出来る。
カタラーゼ等を用いてアルコールからアルデヒドを生成せしめて、生じたアルデヒドを定量する方法としては、ハンチ反応を用いる方法や、MBTHとの縮合反応により発色させる方法、若しくはアルデヒドデヒドロゲナーゼを用いる方法等が挙げられる。
グルコソンの定量はジフェニルアミン等の公知のアルドース試薬を用いて定量すればよい。
タンパク質定量試薬、タンパク質分解試薬及び糖化アミノ酸発色試薬を組み合わせる手順としては、例えば、タンパク質定量試薬と糖化アミノ酸定量用試薬の検出波長が等しくなるように発色試薬の種類を選択し、続いて、タンパク質定量のシグナルが糖化アミノ酸定量のシグナルに影響を与えないように、プロテアーゼの濃度、タンパク質分解及び糖化アミノ酸発色のpHを決定すれば良い。
タンパク質定量のシグナルが糖化アミノ酸定量のシグナルに影響を与えないように条件を調整するには、十分量のプロテアーゼを添加することにより、糖化アミノ酸定量試薬を添加する前にタンパク質分解反応を終了させ、タンパク質分解反応に伴うタンパク質定量試薬のシグナル変化が一定になるように調整すれば良い。また例えば、BCP 、BCG 、BPB 及びMO等のアルブミン定量試薬は、アルカリ性で激しく着色する色素がある為に、タンパク質定量試薬が糖化タンパク質定量に影響を及ぼさないように注意して反応のpHを選択する必要がある。
また、タンパク質定量試薬と糖化アミノ酸定量試薬の検出波長が等しくなるように設定するには、タンパク質定量色素及び糖化アミノ酸定量色素の吸収極大波長が、同一波長若しくはその近傍であるとよい。近傍とは測定波長において生体成分中のタンパク質及び糖化タンパク質が十分な感度で定量出来る範囲であれば良く、例えばUV〜可視領域で検出可能な色素を用いる場合には、健常者の試料(アルブミン量 3.5〜5.5/dl、ヘモグロビン12〜18g/dl、糖化アルブミン11.6〜16.3%、糖化ヘモグロビン 4.3%〜5.8 %) から得られる吸光度が、それぞれの試薬において50mAbs以上であればよい。
例えばアルブミン糖化割合を定量する場合、アルブミン定量試薬としてHABAを、タンパク質の分解試薬としてアルブミンに高い分解活性を示すプロテアーゼタイプ XXVII (シグマ社製)を、糖化アミノ酸定量用試薬の主成分としてR-FOD(旭化成工業社製)を選択する事が出来、HABAは480 〜550nm 付近でアルブミンの定量が可能であるから、R-FOD により生じた過酸化水素を比色定量するには、例えば 480〜550nm 付近で十分な感度を有する色素、例えば 400〜630nm に吸収極大をもつ色素 (4-AAとTOOS等;λmax=555nm)の組み合わせを選択すれば良い。またHABAを用いる場合には pH4.0〜9.0 で使用可能であり、この間のpH変動により着色等が見られないために、続くタンパク質の分解試薬は何れのpHに選択しても良く、糖化アミノ酸定量用試薬はR-FOD の作用が強い、 pH5.0〜10.0の範囲で設定
可能である。プロテアーゼ濃度としては 500〜50万PU/ml が好ましく、1000〜10万PU/ml がより好ましい。
またHABAの代わりにBCP を用いる場合には、BCP-アルブミンの発色は吸収極大が600nm 付近であり、 550〜630 nmでアルブミンの定量が可能であることから、例えば 550〜630 nm付近で十分な感度を有する色素、例えば 480〜700nm に吸収極大をもつ色素、MBTHとHALP等の組み合わせ (λmax=582nm)を選択すれば良い。また BCPは中性以上で激しく着色するために pH4.5〜7.5 で使用し、続くタンパク質の分解試薬、糖化アミノ酸定量試薬はpH7.5 以下を選択する必要があり、例えば糖化アミノ酸定量試薬は R-FODの至適pHを考慮すると pH5.0〜7.5 の範囲で設定可能である。
またHABAの代わりにBCG を用いる場合には、BCG-アルブミンの吸収極大が630 nm付近であり、530 〜670 nmでアルブミンの定量が可能であるから、例えば 530〜670nm 付近で十分な感度を有する色素、例えば 450〜750 nmに吸収極大をもつ色素、例えば4-AAとMAOS等の組み合わせ (λmax=630nm)を選択すればよい。また BCGはpH5.6 以上で激しく着色するために、続くタンパク質の分解試薬、糖化アミノ酸定量試薬はpH5.5 以下を選択する必要があり、例えば糖化アミノ酸定量試薬はR-FOD の至適pHを考慮すると pH5.0〜5.5 の範囲で設定可能である。
さらに、例えばヘモグロビン糖化割合を定量する場合には、ヘモグロビン定量方法としてオキシヘモグロビン法を、タンパク質の分解試薬としてヘモグロビンに高い分解活性を示すプロテアーゼタイプ XIV(シグマ社製)を、糖化アミノ酸定量用試薬の主成分として R-FOD(旭化成工業社製)を選択する事が出来、オキシへモグロビンは540nm 付近に吸収極大を持つことから、R-FOD により生じた過酸化水素を比色定量するには、例えば 540nm付近で十分な感度を有する色素、例えば 570〜610 nmに吸収極大を持つ色素、4AA とTOOS等の組み合わせ (λm=555)を用いれば良い。またオキシヘモグロビンはアルカリ性ではメト化が起こり吸収が変化することから、界面活性剤の存在下、酸性〜中性付近での測定が好ましく、例えばTritonX-100 0.01〜10% の存在下、pH5.0 〜9.5 付近でヘモグロビンの
定量を行えば良く、続くプロテアーゼ反応及び糖化アミノ酸の検出反応も5.0 〜9.5 付近で行うと良い。またプロテアーゼ濃度としては 500〜10万PU/ml が好ましく、1000〜5万PU/ml がより好ましい。
タンパク質定量試薬、タンパク質分解試薬、糖化アミノ酸定量試薬のpHは液状であればそのまま、液状凍結品であれば溶解後、凍結乾燥品であれば蒸留水等に溶解後、市販のpHメーターで測定すればよい。
以上のことから、本発明に於ける糖化タンパク質割合定量用組成物としては、タンパク質定量用試薬、プロテアーゼ、糖化アミノ酸に作用する酵素を含有するものとして調製すれば良く、また、グロブリン成分の影響を受けない糖化タンパク質割合定量用組成物としては、タンパク質定量試薬、プロテアーゼ、グロブリン成分選択的なプロテアーゼ阻害剤及び糖化アミノ酸に作用する酵素を含有するものとして調製すれば良く、例えば液状品及び液状品の凍結物あるいは凍結乾燥品として提供できる。
さらに本発明に基づく糖化タンパク質割合定量試薬組成には、例えば界面活性剤、塩類、緩衝剤、pH調製剤や防腐剤などを適宜選択して添加しても良い。
適宜な添加物において、界面活性剤としてはポリオキシエチレンアルキルエーテル類〔例えばトリトンX-100 、ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル(以上、ナカライテスク社製) 〕、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類(ツイーン20、ツイーン40、ツイーン60、ツイーン80、ツイーン85;以上、関東化学社製)、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルホルムアルデヒド縮合物、ポリオキシエチレンひまし油、ポリオキシエチレンステロール類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンラノリン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン・脂肪酸アミド類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸・リン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩類、ポリグリセリン脂肪酸エステル類、グリセリン脂肪酸エステル類、プロピレングリコール脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、Nアシルアミノ酸塩類、アルキルエーテルカルボン酸塩類、アルキルリン酸塩、Nアシルタウリン酸塩、スルホン酸塩、アルキル硫酸、酢酸ベタイン型両性界面活性剤、イミダゾリン型両性界面活性剤、レシチン誘導体(以上、日光ケミカルズ社製)、アデカトール720N、アデカトールB-795、アデカトールSO-120、アデカノールB-795 (以上、旭電化工業社製)、ポリエチレングリコール類、ポリエチレングリコールラウリルエーテル、ポリエチレングリコールイソオクチルフェニルエーテル、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、トリトンX-305 、トリトンX-114 、トリトンX-405 、トリトンWR-1339 (以上、ナカライテスク社製)等の0.01〜10% 、好適には0.05〜5%、各種金属塩類、例えば塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マンガン、塩化コバルト、塩化亜鉛、塩化カルシウム等の1mM 〜5M、好適には10mM〜1M、各種緩衝液、例えばトリス−塩酸緩衝液、グリシン-NaOH 緩衝液、燐酸緩衝液、グッドの緩衝液等の10mM〜2M、好適には20mM〜1M、各種防腐剤、例えばアジ化ナトリウムの0.01〜10% 、好適には0.05〜1%を適宜添加すればよい。
このようにして調製された本発明の糖化タンパク質割合定量用組成物 (試薬)によって、被検液中の糖化タンパク質割合を定量するには、タンパク質定量用試薬に被検液 0.001〜1.0ml を加え、37℃にて反応させ、一定時間後の変化した吸光度を測定し、次いでタンパク質分解試薬 0.001〜1.0ml を加え37℃にてタンパク質分解反応を行い、次いで糖化アミノ酸定量試薬 0.001〜1.0ml を加え37℃にて吸光度変化を測定すれば良い。またタンパク質定量反応は、タンパク質分解反応に比して極めて早いことから、タンパク質定量試薬とタンパク質分解試薬を同時に添加し、素早くタンパク質の定量を行い、同時にタンパク質分解反応を進行させても良く、またタンパク質分解試薬と糖化アミノ酸定量試薬を同時に添加してタンパク質分解反応と糖化アミノ酸定量反応を同時に行っても良い。この場合、既知濃度の対象となるタンパク質濃度及び糖化タンパク質濃度の標準タンパク質を測定した場合の吸光度変化と比較すれば、被検液中の対象となるタンパク質濃度及び対象となる糖化タンパク質濃度を求めることが出来、この割合を取ることにより糖化タンパク質割合を算出する事が出来る。
ついで、本発明の実施例を詳しく述べるが、本発明は何らこれにより限定されるものではない。
アルブミン定量色素に及ぼすpHの影響
<試薬組成>
アルブミン定量色素 HABA 0.0167%
BCG 0.00167%
BCP 0.00167%
緩衝液 pH4 、5 、6 クエン酸緩衝液 67mM
pH7 、8 、9 トリス緩衝液 67mM
界面活性剤 Briji35 1%
<基質溶液>
HSA 基質溶液;Albumin Human ;Essentially Globulin Free ; 25mg/ml 、糖化アルブミン率=31.9%、フルクトサミン値=265 μmol/L 〔シグマ社製;基質溶液中のアルブミンの濃度はアルブミン測定キット(アルブミンII-HA テストワコー;和光純薬社製)にて定量し、糖化アルブミン率は糖化アルブミン測定計(GAA-2000;京都第一科学社製)にて測定し、フルクトサミン値はフルクトサミン測定キット(オートワコー フルクトサミン(和光純薬社製)にて測定した。〕
<操作>
反応液1.2ml を試験管にとり0.06mlのHSA 基質溶液若しくは蒸留水を添加する。攪拌後室温で1分以上放置し分光光度計にて吸収スペクトルを測定する。結果は図1〜3に記載した。
図 1〜3 から分かるように、HABAは pH4.0〜9.0(図1) で、BCG は pH5.5以下(図2)で、BCP は pH4.5〜7.5 (図3)にて使用可能である。また試料の代わりに蒸留水を加えたブランクの吸光度もこの範囲で低いことから、タンパク質定量試薬に直接添加される糖化タンパク質定量試薬のpHも、混合後に、HABAを用いた場合にはpH4.0 〜9.0 に、BCG を用いた場合には pH5.5以下に、BCP を用いた場合には pH4.5〜7.5 になるように調整すればよい。
さらに同様に界面活性剤の存在下ヘモグロビンの540nm の発色を様々なpHにて測定した結果、pH5.0 〜9.5 に於いて使用可能であった。
アルブミン定量発色に及ぼすプロテアーゼ濃度の影響
<試薬組成>
100mM トリス緩衝液 pH8.5
0.017% HABA
166mg/dl HSA (実施例1記載のHSA)
<操作>
上記反応液 1.0mlを吸光光度計セルに分注し、37℃に加温する。温度が一定になったところで 545nmの測光を開始し、測光開始後1 分後に濃度の異なるプロテアーゼ溶液(プロテアーゼタイプXXVII ;シグマ社製)0.1ml を添加し継続して545nm の吸光度を測定した。結果を図4に示す。
図4から分かるようにプロテアーゼ最終濃度500PU/ml以上で 600秒 (10分) 以内にアルブミン発色のプロテアーゼ作用による変化が終了し、プロテアーゼ最終濃度500PU/ml以上にて遅くとも10分間後に続く糖化タンパク質測定を行えば良いことが明白であった。
アルブミン糖化割合の測定1
<R-1 > 10mM Tris 緩衝液 pH8.5
8mM 4-AA(和光純薬社製)
15U/ml POD(シグマ社製)
10mg/ml プロテアーゼタイプ XXVII (シグマ社製、1 万PU/ml)
1% (3-[(3-cholamidopropyl)-dimethylammonio] -2-hydroxy-1-
propanesulfonate ;以下CHAPSOと略す。)
0.6mM AlCl3
0.017% HABA
<R-2 > 150mM Tris緩衝液 pH8.5
12mM TOOS
24U/ml FOD
<基質溶液>
実施例1記載のHSA 基質溶液(2.5g/dl)を調製し、0.2 、0.4 、0.6 、0.8 、1.0 倍濃度の試料を作成した。
<操作>
上記R-1 (タンパク質定量試薬、タンパク質分解試薬)270μl をセルにとり、37℃にインキュベートし、試料 9μl を添加、攪拌し37℃にて反応を開始した。
反応開始後10秒後にタンパク質定量値を求める目的で545nm の吸光度(A1)を測定し、引き続き37℃にてタンパク質分解反応を継続した。反応開始後 270秒(4.5分) 後に545nm の吸光度(A2)を測定し、反応開始後 300秒(5分) 後に上記R-2を90μl添加、攪拌し、さらに37℃ 300秒 (5分) 間反応を行い、545nm の吸光度(A3)を測定した。同様にブランク試料の測定を行い、A1ブランク、A2ブランク、A3ブランクを測定した。アルブミン定量の吸光度変化 (ΔA(Alb)) はA1−A1ブランク、糖化タンパク質定量の吸光度変化 (ΔA(GA))は(A3−A2) − (A3ブランク−A2ブランク)により計算した。HSA 濃度1.0 倍、0.6 倍及びブランクの反応曲線を図5に、測定結果を図6に示す。
図5から分かるように反応開始直後にアルブミン定量試薬の反応により発色が確認され、その後プロテアーゼの反応によりアルブミンが分解され200 秒近辺ではほぼ試料添加前のレベルに落ち着いていることから、反応開始直後にアルブミン定量を行えば良く、200 秒以降に続く糖化アミノ酸定量を行うことにより、アルブミン定量に由来する吸光度変化の影響を受けないことが明らかであった。また図6から分かるように、HSA 標準品を希釈したサンプルはアルブミン定量 (□) 、糖化アルブミン酸定量(○)共に良好な直線性を示し、連続で同一反応槽中で測定しても問題なく定量が行えることが明確となった。さらに同一の試薬を用いてヒトグロブリン(シグマ社製;コーンフラクションII、III)をヒト血清濃度(1.69mg/ml)になるように溶かし、同様の測定を行った結果、アルブミン定量、糖化アルブミン酸定量共に検出限界以下であり、糖化アルブミンのみを選択的に
測定していることが明白であった。
アルブミン糖化割合の測定2
<R-1 > 10mM Tris 緩衝液 pH7.25
8mM 4-AA(和光純薬社製)
15U/ml POD(シグマ社製)
10mg/ml アルカリプロテアーゼ(長瀬産業社製、3000PU/ml)
1% CHAPSO
0.4mM AlCl3
10mM EDTA
0.001675% BCP
0.5% Tween20
<R-2 > 150mM Tris緩衝液 pH8.5
12mM TOOS
24U/ml FOD
<基質溶液>
実施例1記載のHSA 基質溶液(2.5g/dl)を調整し、0.0 、0.25、0.5 、0.75、1.0 倍濃度の試料を作成した。
<操作>
上記R-1 (タンパク質定量試薬、タンパク質分解試薬)270μl をセルにとり、37℃にインキュベートし、試料 9μl を添加、攪拌し37℃にて反応を開始した。
反応開始後10秒後にタンパク質定量値を求める目的で600nm の吸光度(A1)を測定し、引き続き37℃にてタンパク質分解反応を継続した。反応開始後4.5 分後に600nm の吸光度(A2)を測定し、反応開始後5 分後に上記R-2 を90μl 添加、攪拌し、さらに37℃5分間反応を行い、600nm の吸光度(A3)を測定した。同様にブランク試料の測定を行い、A1ブランク、A2ブランク、A3ブランクを測定した。アルブミン定量の吸光度変化はA1−A1ブランク、糖化タンパク質定量の吸光度変化は(A3−A2) − (A3ブランク−A2ブランク)により計算した。測定結果を図7に示す。
図7から分かるように、HABA同様 BCPを用いてもHSA 標準品を希釈したサンプルはアルブミン定量(□)、糖化アルブミン酸定量(○)共に良好な直線性を示し、同一反応槽中で測定しても問題なく定量が行えることが明確となった。
ヘモグロビン糖化割合の測定
<R-1 > 10mM Tris緩衝液 pH8.5
8mM 4-AA (和光純薬社製)
15U/ml POD(シグマ社製)
200mg/ml プロテアーゼタイプXIV (シグマ社製、13mU(Hb)/ml)
1% TritonX-100
0.6mM AlCl3
<R-2 > 150mM Tris緩衝液 pH8.5
12mM TOOS
24U/ml FOD
<基質溶液>
Hb基質溶液;Hemoglobin Human;5.5g/dl 、糖化ヘモグロビン率;HbA1c =4.5%〔シグマ社製;HbA1c 値は糖化ヘモグロビン計(ハイオートエーワンシーHA-8150 ;京都第一科学社製)にて測定した。〕
Hb基質溶液(5.5g/dl)を調整し、0.2 、0.4 、0.6 、0.8 、1.0 倍濃度の試料を作成した。
<操作>
上記R-1 (タンパク質定量試薬、タンパク質分解試薬)540μl をセルにとり、37℃にインキュベートし、試料18μlを添加、攪拌し37℃にて反応を開始した。反応開始後50分後にヘモグロビン定量値を求める目的で545nm の吸光度(A1)を測定し、反応開始後60分後に反応液を排除分子量1万の膜(ウルトラフリーMC;ミリポア社製)で濾過した。糖化アミノ酸の定量は、濾液279μl の吸光度(A2)を測定後、上記R-2 を90μl添加、攪拌し、さらに37℃5分間反応を行い、545nm の吸光度(A3)を測定した。同様にブランク試料の測定を行い、A1ブランク、A2ブランク、A3ブランクを測定した。ヘモグロビン定量の吸光度変化はA1−A1ブランク、糖化タンパク質定量の吸光度変化は(A3−A2)−(A3ブランク−A2ブランク)により計算した。測定結果を図8(ヘモグロビン定量値は吸光度変
化に1/10を乗じて表示した。)に示す。
図8から分かるように、アルブミン同様、ヘモグロビン定量(□)、糖化ヘモグロビン定量(○)共に良好な直線性を示し、同一反応槽中で測定しても問題なく定量が行えることが明確となった。
さらに同一の試薬を用いてヒトグロブリン(シグマ社製;コーンフラクションII、III )をヒト血清濃度(1.69mg/ml )になるように溶かし、同様の測定を行った結果、ヘモグロビン定量、糖化ヘモグロビン定量共に検出限界以下であり、血清中のグロブリン成分の影響を回避してヘモグロビンが測定されている事が明白であった。
糖化アルブミンHPLC法と酵素法(本発明)の相関性
<R-1 > 実施例4に同じ。
<R-2 > 実施例4に同じ。
<基質溶液> 糖尿病患者血清 10検体
健常者血清 10検体
<操作> 操作は実施例4に同じ。
健常者及び糖尿病患者血清20検体を用い本発明に基づく酵素法と、公知のHPLC法の相関を確認した。尚HPLC法の測定は、糖化アルブミン計(GAA-2000;京都第一科学社製)にて糖化アルブミン率を測定した。アルブミン糖化割合 は実施例1記載のHSA をキャリブレーターとし、糖化アルブミン定量値/アルブミン定量値から算出した。結果本発明に基づく定量方法から得られる糖化アルブミン割合は、HPLC法糖化アルブミン率と、相関係数r=0.957 と非常によい相関を示し、本発明に基づく定量方法は糖化アルブミンを正確に定量していることが明らかとなった。
本発明の実施例1に基づくHABA発色のpH依存性を示す。 本発明の実施例1に基づくBCG 発色のpH依存性示す。 本発明の実施例1に基づくBCP 発色のpH依存性示す。 本発明の実施例2に基づくアルブミン発色変化に及ぼすプロテアーゼ濃度の影響示す。 本発明の実施例2に基づく糖化アルブミン測定反応のタイムコース示す。 本発明の実施例3に基づく糖化アルブミン測定反応のタイムコース示す。 本発明の実施例4に基づくアルブミン、糖化アルブミンの定量曲線示す。 本発明の実施例5に基づくヘモグロビン、糖化ヘモグロビンの定量曲線を示す。

Claims (5)

  1. 次の1)〜3)を同一反応槽中で行うことを特徴とする糖化ヘモグロビンのヘモグロビンに対する割合の測定方法
    1)被検液中のヘモグロビンを、少なくとも硫酸基を含有する界面活性剤、及び/又は非イオン性界面活性剤、及び/または両イオン性界面活性剤の存在下、pH5.0〜9.5の範囲内で定量する工程
    2)被検液に、500〜500000PU/mlのプロテアーゼを添加し、工程1)のシグナル変化が一定になるようにする工程
    3)上記2)の反応液に、pH5.0〜9.5の範囲内でフルクトサミンオキシダーゼを作用させて糖化ヘモグロビンを定量する工程。
  2. プロテアーゼを金属イオン、プロテインA若しくはプロテインGの存在下作用せしめる請求項1記載の方法
  3. ヘモグロビンの定量及び糖化ヘモグロビンの定量を同一波長で行う請求項1または2に記載の測定方法。
  4. 1)少なくとも硫酸基を含有する界面活性剤、及び/又は非イオン性界面活性剤、及び/または両イオン性界面活性剤、及び定量時のpHが5.0〜9.5になる緩衝液;
    2)500〜500000PU/mlのプロテアーゼ;
    3)ケトアミンオキシダーゼ、定量時のpHが5.0〜9.5になる緩衝液、糖化ヘモグロビン定量用色素;
    を含有する同一反応槽中でヘモグロビンの定量及び糖化ヘモグロビンの定量を行うための組成物。
  5. 金属イオン、プロテインA若しくはプロテインGを含有してなる請求項記載の糖化ヘモグロビンのヘモグロビンに対する割合測定用組成物。
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