以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。
図1は本発明による燃料噴射弁の第1の実施形態を示す縦断面図であって、1は燃料噴射弁、2はコア、3は燃料通路、4はヨーク、5はホルダ、6は電磁コイル、7はスプリング、8は弁ニードル、9は弁体、10はストッパ面、11はスライド体、12はアンカー、13はノズル体、14はストッパ、15は弁座面、16は噴射プレート、17は燃料噴射室、18はスプリングアジャスト、19は燃料通路、20は入力端子(または、コネクタ)である。
同図において、長手方向に内部を貫通した燃料通路3を備えたコア2と、内部に貫通する中空部を備え、その中空部にコア2の一方の端部側が挿入された磁性体のヨーク4と、このヨーク4のコア2側とは反対側の端部に取り付けられたホルダ5とが、燃料噴射弁1の筐体を形成している。以下では、各部品について、ホルダ側の方を先端側といい、コア側の方を後端側という。
ヨーク4とこれに挿入されているコア2の先端側の部分との間に、電磁コイル6が設けられている。この電磁コイル6はコントローラ(図示せず)から電気信号を受け取る入力端子(または、コネクタ)20に接続されており、この入力端子(または、コネクタ)20からの駆動パルスにより、間欠的に通電される。この電磁コイル6を囲むコア2の先端側の部分とヨーク4と後述のアンカー12とが磁路を形成する。
燃料噴射弁1の先端側の方にあるホルダ5は、その内部に弁ニードル8を摺動可能に保持している。この弁ニードル8では、その先端部に球状の弁体9が設けられ、後端部にアンカー12が設けられている。このアンカー12が、前述の電磁コイル6の周りの磁路の一部を形成している。また、この弁ニードル8の先端部と後端部との間には、ストッパ面10とスライド体11とが設けられている。
一方、ホルダ5の後端には、弁ニードル8のストッパ面10と当接可能に、ストッパ14が設けられている。ここでは、このストッパ14は、ホルダ5の後端とヨーク4の内面に設けられた突起との間に挟まれて支持されている。また、ホルダ5内の先端部にノズル体13が設けられている。弁ニードル8は、その一部である先端側がこのノズル体13に設けられたガイド孔によって摺動可能に保持されている。また、このノズル体13のガイド孔の底部が弁ニードル8の先端の弁体9に対向しており、このガイド孔の底部の面がこの弁体9に対する弁座面(または、シート面)15をなしている。この弁座面15と弁体9の表面との間で燃料噴射室17が形成される。
弁ニードル8のスライド体11はホルダ5の内面に摺動可能に当接しており、このように、スライド体11がホルダ5の内面に摺動可能に当接していることと、弁ニードル8の先端部側がノズル体13のガイド孔の内面に摺動可能に当接していることにより、この弁ニードル8がホルダ5によって移動可能に保持されている。
コア2の燃料通路3内には、スプリングアジャスタ18がこの燃料通路3に沿って位置調整可能に挿入されており、このスプリングアジャスタ18と弁ニードル8との間にスプリング7が設けられている。そして、このスプリングアジャスタ18の位置を調整することにより、このスプリング7が弁ニードル8に、それを弁座面15に当接させるように(即ち、矢印Bで示す方向に)、付勢力が与えられている。また、入力端子(または、コネクタ)20から電磁コイル6にパルス(噴射パルス)が供給されると、ヨーク4,コア2及び弁ニードル8のアンカー12からなる磁路に磁束が発生し、アンカー12とコア2との間に吸引力が発生する。これにより、このアンカー12、従って、弁ニードル8がその後端側の方向に、即ち、弁ニードル8の先端の弁体9が弁座面15から離れる方向に(即ち、矢印A方向に)駆動力が発生する。この駆動力により、弁ニードル8は、スプリング7の付勢力に抗して、矢印Aで示すコア2の方向に移動する。この矢印A方向の移動は、弁ニードル8のストッパ面10がホルダ5に設けられているストッパ14に当接することにより、制限される。このようにして、弁ニードル8は、電磁コイル6が通電されると、ストッパ面10がストッパ14に当接するまで矢印A方向に移動し、電磁コイル6の通電が終了すると、スプリング7の付勢力により、弁体9が弁座面15に当接するまで矢印B方向に移動する。
図示しない燃料供給源からコア2の燃料通路3に矢印Cで示す方向に燃料が供給されている。この燃料は、この燃料通路3を通り、さらに、この燃料通路3内に配置されているスプリングアジャスタ18にその軸方向に貫通して設けられている燃料通路19を通り、さらに、スプリング7が設けられている燃料通路3を通ってホルダ5と弁ニードル8との間のスペース内に送り込まれる。なお、ストッパ面10,ストッパ14やスライド体11には、燃料が通る切欠部(図示せず)が設けられている。
また、図示しないが、ノズル体13での弁ニードル8が摺動する面(即ち、ノズル体13の内面)には、この弁ニードル8,ホルダ5間の上記スペースに連通し、かつこの弁ニードル8の軸方向に伸延するが、燃料噴射室17には達しない複数の燃料通路が設けられて居る。
弁ニードル8が弁座面15に当接しているときには、この弁ニードル8によってこれらノズル体13の内面の燃料通路と燃料噴射室17との間が遮断され、燃料噴射弁1は閉弁状態にある。弁ニードル8が電磁コイル6の通電によって矢印A方向に移動したときには、これらノズル体13の内面の燃料通路と燃料噴射室17との間が連通した状態となり、燃料噴射弁1は開弁状態にある。この連通した開弁状態では、ホルダ5と弁ニードル8との間のスペース内に送り込まれた燃料は、さらに、これらノズル体13の内面の燃料通路を通して燃料噴射室17に送りこまれる。そして、燃料噴射室17に送り込まれた燃料は、電磁コイル6での通電が終了して弁ニードル8が、スプリング7の付勢力により、弁座面15に向かって矢印B方向に移動すると、ホルダ5の先端部に設けられた噴射プレート16が有する燃料噴射口(図示せず)から外部に噴射され、燃料噴射弁1は閉弁状態になる。
このように、燃料噴射弁1では、電磁コイル6が間欠的に通電されることにより、弁ニードル8がホルダ5内で前後に(即ち、矢印Aの方向とその逆の矢印Bの方向とに)交互に繰り返し移動し、これにより、燃料噴射室17内への燃料の供給と、供給されたこの燃料の噴射プレート16の燃料噴射口からの噴射とが交互に繰り返し行なわれる。この場合、入力端子(または、コネクタ)20からの噴射パルスの周期やパルス幅が切り替えられて、燃料噴射室17への燃料通路の開弁状態と閉弁状態との関係が切り替えが行なわれて、燃料噴射室17への燃料供給量が制御される。
図2は図1に示す燃料噴射弁1の先端部分を拡大して示す縦断面図であって、13aはノズル体13の凹部、21は燃料導入孔、22は燃料拡大通路室、23は凹形状燃料通路、24は燃料噴射孔であり、図1に対応する部分には同一符号をつけて重複する説明を省略する。
同図において、ノズル体13での弁体9に対向する部分が弁座をなしており、燃料噴射弁1が開弁状態にあるときには、弁体9は、実線で示すように、弁座の傾斜した表面、即ち、弁座面15から離れており、拡大された燃料噴射室内17内に上記の燃料通路から燃料が供給される。燃料噴射弁1が閉弁状態にあるときには、弁体9は、破線で示すように、弁座面15に当接しており、燃料噴射室17と上記の燃料通路との間が遮断され、かつ燃料噴射室17から縮小されて燃料噴射室17に供給された燃料が外部に排出された状態にある。
ノズル体13の先端面には、凹部13aが設けられており、この凹部13aの中心部と上記弁座の中心部とを連通する燃料導入孔21が設けられている。ここで、弁体9が、破線で示すように、弁座面15に当接したときには、弁体9の弁座面15での各当接点は弁座面15の中心軸(これは図1における燃料通路3や弁ニードル8などの中心を通る燃料噴射弁1の中心軸でもあり、以下、弁軸という)を中心とする同一円周上にあるが、燃料導入孔21の直径は、この円周の直径(弁座面15のシート径という)Lよりも小さい、必要最小限度の径(縮径)である。
また、ノズル体13の先端面に設けられた凹部13aには、燃料拡大通路室22や凹形状燃料通路23,燃料噴射孔24を備えた噴射プレート16が嵌め込まれ、溶接25によって固定されている。弁体9が実線で示す状態から破線で示す状態に変化することにより、燃料噴射室17内の燃料は燃料導入孔21から噴射プレート16内に燃料拡大通路室22に供給され、この燃料拡大通路室22に連通した凹形状燃料通路23に送りこまれ、この凹形状燃料通路23に設けられた燃料噴射孔24から外部に噴射される。かかる燃料噴射孔24は、燃料が目的とする方向に噴射するように、その方向が設定されている。
図3は図2における噴射プレート16の一具体例を示す平面図であって、23a1,23a2,23b1,23b2は凹形状燃料通路、24a1,24a2,24b1,24b2は燃料噴射孔であり、図2に対応する部分には同一符号をつけている。
同図において、噴射プレート16では、その中心部に燃料拡大通路室22が設けられ、ノズル体13での燃料導入孔21に対向している。より詳細には、燃料拡大通路室22と燃料導入孔21とは、弁軸0を中心として、同軸状に設けられている。また、燃料拡大通路室22は、燃料導入孔21よりも大きな径(拡径)をなしている(ここでは、燃料拡大通路室22と燃料導入孔21との位置,大きさの関係を示すために、燃料導入孔21を破線で示している)。
また、この燃料拡大通路室22に外接するようにして、複数個(ここでは、4個としている)の凹形状燃料通路23a1,23a2,23b1,23b2が設けられ、これら凹形状燃料通路23a1,23a2,23b1,23b2毎に、かつその終端側に、1つずつ燃料噴射孔24a1,24a2,24b1,24b2が設けられている。これら凹形状燃料通路23a1,23a2,23b1,23b2は夫々、終端側が開放されているが、図1に示すように、噴射プレート16がノズル体13の凹部13aに嵌め込み取り付けられたときには、この凹部13aの壁によって閉鎖される。このように、凹形状燃料通路23a1,23a2,23b1,23b2の終端側を開放することにより、これら凹形状燃料通路23a1,23a2,23b1,23b2の機械的な加工を容易にしている。
燃料導入孔21から供給された燃料流が燃料拡大通路室22で四方に広がって夫々の凹形状燃料通路23a1,23a2,23b1,23b2に流れ込み、夫々の燃料噴射孔24a1,24a2,24b1,24b2から外部に噴射される。
また、夫々の凹形状燃料通路23a1,23a2,23b1,23b2の燃料噴射孔24a1,24a2,24b1,24b2は、弁軸0を中心とした同一円周上に配置されている。このような配置により、夫々の燃料噴射孔24a1,24a2,24b1,24b2には、燃料拡大通路室22から均等に燃料が供給されることになり、流量ばらつきが抑えられて的確な噴射が得られる。さらに、夫々の燃料噴射孔24a1,24a2,24b1,24b2は、夫々毎に所定の目標方向に燃料を噴射するように、適宜の角度を持って開口している。
なお、噴射プレート16での燃料拡大通路室22や凹形状燃料通路23a1,23a2,23b1,23b2、燃料噴射孔24a1,24a2,24b1,24b2の加工性や溶接時に必要な機械的強度などを考慮すると、噴孔プレート16の素材には、フェライト系ステンレスを使用することが好ましい。
図4は図3における凹形状燃料通路23での燃料の流れを示す図であって、凹形状燃料通路23a1を含む領域Aを代表として示している。なお、26は凹形状燃料通路23a1の一方の壁面、27は同じく他方の壁面、28a〜28d,29,29aは燃料流、30は燃料の逆流渦であり、図3に対応する部分には同一符号をつけて重複する説明を省略する。
同図において、凹形状燃料通路23a1は、その両側の壁面26,27が平行な(即ち、一定幅の)凹形状の溝であり、一方の壁面26が燃料拡大通路室22に外接するようにして、この燃料拡大通路室22に連通している。また、弁軸0を含み、かつこれら壁面26,27に平行で紙面に垂直な平面をX面、同じく弁軸0を含み、かつこのX面に垂直な平面をY面とすると、凹形状燃料通路23a1の壁面26,27は、X面に関し、同じ側にある。即ち、凹形状燃料通路23a1は、X面とY面とで囲まれる領域内にある。また、燃料噴射孔24a1は、弁軸0から半径Qの円周上で、X面から距離Pの位置(以下、位置(P,Q)という)に形成されているものとする。
かかる構成において、燃料導入孔21から供給された燃料は、燃料拡大通路室22の外周方向から凹形状燃料通路23a1を経て、さらに、その出口端(終端)側に開口する燃料噴射孔24a1に至って、所望の方向に噴射制御される。
さらに詳述すると、燃料は、縮径の燃料導入孔21から流入し、噴射プレート16の燃料拡大通路室22の底面に衝突した後、弁径方向に向かって放射状に流れる。燃料拡大通路室22から凹形状燃料通路23a1への燃料の流れを燃料流28a〜28dとして示している。
燃料流28a,28bは、燃料拡大通路室22にほぼ外接する凹形状燃料通路23a1の一方の壁面26に向かって流れ、燃料流28c,28dは、凹形状燃料通路23a1の他方の壁面27に向かって流れる。特に、燃料拡大通路室22から凹形状燃料通路23a1の壁面27よりもX面側に流れ出る28dは、この他方の壁面27によって流れが制約され、凹形状燃料通路23a1の他方の壁面27側に偏向される。これにより、凹形状燃料通路23a1の入口と燃料噴射孔24a1との間の壁面27付近には、逆流渦30が形成される。その後、燃料流は、凹形状燃料通路23a1内を弁径方向(弁軸0から離れる方向)に向かうが、逆流渦30の後流では、この逆流渦30の影響を受けて新たな旋回流29aが形成されている。
そして、この逆流渦30の近傍の位置(P,Q)形成されている燃料噴射孔24a 1 には、かかる旋回流29aとこの旋回流29aに誘起された旋回流れ成分をもつ燃料流29とが流入する。このような旋回燃料流は、同一円周上に配置される夫々の燃料噴射孔24a1,24a2,24b1,24b2に精度良く配分され、充分な旋回速度エネルギーを持って外部の目的の方向へ噴射される。
以上のように、図3,図4に示す具体例を備えた実施形態では、旋回型の燃料噴流が、通常の縮流型に比べて、周囲空気とのエネルギー交換が活発となるので、燃料噴流の分裂が促進されて微粒化の良い燃料の噴霧となる。
なお、以上の構成の噴射プレート16による燃料の旋回強さは、凹形状燃料通路23a1,23a2,23b1,23b2の幅や高さ、燃料噴射孔24の弁軸0からの距離Q(この距離Qが短いほど旋回が弱く、長いほど旋回が強い)、燃料噴射孔24の直径や長さ、燃料噴射孔24から凹形状燃料通路23a1,23a2,23b1,23b2の壁面27までの距離(燃料噴射孔24が壁面27に近い程、旋回が強くなる)などに応じて異なるものであり、これらのいずれかにより、様々な噴射形態が生成可能である。
また、上記のように、噴射プレート16では、燃料拡大通路室22や凹形状燃料通路23a1,23a2,23b1,23b2のように、燃料通路を凹形状とすることにより、これらを加工し易くしているし、また、燃料噴射孔24a1,24a2,24b1,24b2を凹形状燃料通路23a1,23a2,23b1,23b2と一体に、かつ、同一円周上に配置したことにより、燃料分配性能を良くしている。これにより、組み立て体の不良品を発生させることなく、コストパホーマンスに優れた安価な燃料噴射弁1を得ることができる。
図5は図2における噴射プレート16の他の具体例の要部を示す平面図であって、27aは凹形状燃料通路23a1の壁面であり、図4に対応する部分には同一符号をつけて重複する説明を省略する。
この具体例は、図4に示す具体例とは、凹形状燃料通路の形状が異なるものであり、それ以外の構成は、図1〜図3に示す構成と同様である。
図5において、凹形状燃料通路23a1の一方の壁面26は、図4での凹形状燃料通路23a1の壁面26と同様、燃料拡大通路室22にほぼ外接するものであるが、凹形状燃料通路23a1の他方の壁面27は壁面26に平行ではなく、凹形状燃料通路23a1の入り口側の幅が終端部の幅よりも狭まるように、壁面26に対して傾斜している。
かかる凹形状燃料通路23a1の構成によると、燃料導入孔21から燃料拡大通路室22に供給されて弁径方向に放射状に流れる燃料流28a〜28dの中で、特に、燃料流28dが、入口側の壁面27aの強い制約により、他方の壁面26側に急変され、これに伴って、壁面27aの入口付近に生成される逆流渦30は燃料噴射孔24の中心近傍に発生することになる。このため、この逆流渦30の後流に生成される旋回流29aは、図4に示す具体例の場合よりも、さらに、旋回速度エネルギーを増すことなり、旋回速度が大きくなって燃料の微粒化が促進される。
図6は本発明による燃料噴射弁の第2の実施形態の要部、即ち、この燃料噴射弁の先端部部を示す縦断面図であって、13bは凸部、16aは噴射プレート、31は溶接であり、前出図面に対応する部分には同一符号をつけて重複する説明を省略する。
同図において、この第2の実施形態では、ノズル体13の先端面に凸部13bを設け、これに燃料拡大通路室22と複数の凹形状燃料通路23とを形成したものである。この燃料拡大通路室22に、弁座面15のシート径(図2)より縮径の燃料導入孔21が連通している。
ノズル体13の凸部13bに形成されている燃料拡大通路室22と凹形状燃料通路23の形状,大きさ,個数や接続関係は図3,図4に示したものと同様である。凹形状燃料通路23は、その終端側が開放している。これら燃料拡大通路室22,凹形状燃料通路23は窪み状,溝状に加工形成され、さらに、燃料拡大通路室22の部分に、この燃料拡大通路室22と同心状に、燃料導入孔21が加工形成される。
このように、燃料拡大通路室22,凹形状燃料通路23及び燃料導入孔21が窪み状,溝状に加工形成され、また、凹形状燃料通路23がその終端部が開放するように形成されるものであるから、その加工が非常に容易なものとなっている。
噴射プレート16aは窪み部を有するものであって、この窪み部が燃料拡大通路室22や凹形状燃料通路23が形成されているノズル体13の凸部13bに嵌め込むようにして、噴射プレート16aがノズル体13の先端面に取り付けられ、溶接31で固定される。
噴射プレート16aには、また、ノズル体13の凸部13bに設けられた凹形状燃料通路23毎の複数個の燃料噴射孔24が設けられており、この噴射プレート16aは、上記のように、ノズル体13の凸部13bに取り付けられると、燃料拡大通路室22や凹形状燃料通路23を夫々塞いで閉鎖された燃料拡大通路室22や凹形状燃料通路23が形成されるが、これとともに、凹形状燃料通路23夫々に噴射プレート16aの燃料噴射孔24が1つずつ連通するようになる。
以上の構成以外の構成は、上記の第1の実施形態と同様である。
このように、この第2の実施形態では、燃料導入孔21と燃料拡大通路室22とを同じ行程で加工することができ、複数個の凹形状燃料通路23が加工基準面を燃料導入孔21もしくは燃料拡大通路室22のいずれかと同じにすることができる。これにより、対象性に優れた燃料通路が形成されるので、燃料の分配性が著しく良くなる。
また、噴射プレート16aは板状をなしており、凹部や穴明け加工がプレス加工などによって行なうことができるので、多量の生産を可能とし、安価に製作できる。
図7は本発明による燃料噴射弁の第3の実施形態の要部、即ち、この燃料噴射弁の先端部分を示す縦断面図であって、16bは噴射プレートであり、前出図面に対応する部分には同一符号をつけて重複する説明を省略する。
同図において、この第3の実施形態では、ノズル体13の平坦な先端面に燃料拡大通路室22と複数の凹形状燃料通路23とを形成したものである。ノズル体13の先端面に形成されている燃料拡大通路室22と凹形状燃料通路23の形状,大きさ,個数や接続関係は図3,図4に示したものと同様である。この燃料拡大通路室22に、弁座面15のシート径(図2)より縮径の燃料導入孔21が連通している。各凹形状燃料通路23の終端部は、閉止するように形成される。このような通路は、プレス加工(塑性加工)や放電加工などによって形成される。
噴孔プレート16bは平板状をなしており、これに各凹形状燃料通路23毎の複数の燃料噴射孔24が設けている。この噴射プレート16bは燃料拡大通路室22や凹形状燃料通路23が形成されたノズル体13の先端面に取り付けられ、溶接31などで固定される。これにより、燃料拡大通路室22や凹形状燃料通路23が噴射プレート16bによって塞がれて閉鎖された燃料拡大通路室22や凹形状燃料通路23が形成されるが、これとともに、凹形状燃料通路23夫々に噴射プレート16bの燃料噴射孔24が1つずつ連通するようになる。
以上の構成以外の構成は、上記の第1の実施形態と同様である。
以上のことから、この第3の実施形態は、図6に示した第2の実施形態と同様の効果が得られるが、特に、噴孔プレート16bが平板状をなしており、プレス加工などによる穴明けのみで燃料噴射孔24を形成できるので、加工がより容易になって安価に製作できる。
図8は本発明による燃料噴射弁の第4の実施形態の要部、即ち、この燃料噴射弁の先端部分を示す縦断面図であって、21aは燃料導入孔、32は中間プレート、33は燃料導入孔であり、図2に対応する部分には同一符号をつけて重複する説明を省略する。
同図において、この第4の実施形態では、上記第1の実施形態と同様、ノズル体13の先端面に凹部13aを形成し、これに噴射プレート16を嵌め込むようにしたものであるが、さらに、燃料導入孔33を備えた中間プレート32を噴射プレート16よりも凹部13aの奥部に嵌め込んだものである。この中間プレート32を嵌め込む分、この凹部13aは図2での凹部13aよりも深い。
また、ノズル体13での弁体9が対向する弁座部分には、弁座面15のシート径L(図2)よりも縮径(小径)であるが、図2〜図7に示した実施形態での燃料導入孔21よりも大きい直径の燃料導入孔21aが設けられている。
ここで、弁座面15の傾斜角は一定であり、かかる弁座面15が形成されている弁座に直径が大きい燃料導入孔21aを形成すると、この燃料導入孔21は弁体9側に移動した位置となり、その分燃料噴射室17の容積が減少することになる。即ち、弁座に形成する燃料導入孔21aの直径を大きくすることにより、燃料噴射室17の無駄な容積を減少させて、燃料噴射弁1が閉弁状態にあるときの燃料噴射室17での残留燃料を減少させることができ、流れ損失の小さい燃料通路を構成できることになる。
中間プレート32の燃料導入孔33は、直径を大きくした弁座での燃料導入孔21aに代えて、必要最小限度の直径とするものであり、これにより、この中間プレート32の燃料導入孔33から、図3,図4で説明したように、燃料拡大通路室22の中心部に燃料が供給されて、各凹形状燃料通路23に良好に流れ、強い旋回速度エネルギーの旋回流が得られることになる。
このように、この第4の実施形態では、燃料噴射室17に供給された燃料を有効に噴射プレート16に送りこむことができ、噴射プレート16では、中間プレート32の作用により、良好に燃料流を微粒化するための燃料の旋回流が得られることになる。
図9は本発明による内燃機関の一実施形態の要部を示す断面図であって、101は気筒、102は燃焼室、103はピストン、104はキャビティ、105はシリンダ、106はシリンダヘッド、107は吸気弁、108は吸気ポート、109は排気弁、110は点火プラグ、111は吸気通路、112は2方向噴霧である。ここでは、ポート噴射式内燃機関としている。
同図において、ここでは、この実施形態としての多気筒内燃機関での1つの気筒101を示しており、この気筒101は、先に説明した本発明による燃料噴射弁1を吸気ポート108に向けて配置した吸気2弁式のものである。シリンダ105では、キャビティ104を有するピストン103が上下に移動し、これにより、燃焼室102の容積が変化する。この燃焼室102には、吸気弁107と排気弁109とが設けられ、吸気弁107による吸気口の開閉と排気弁109による排気口の開閉とが交互に行なわれる。
吸気弁107によって吸気口が開状態となったときには、シリンダヘッド106に設けられた燃料噴射弁1から燃料が噴射され、噴霧112となって燃料室102内に供給されるとともに、図示しないスロットル装置から空気も供給される。燃料室102内に燃料が供給されると、点火プラグ110によって点火され、燃料が燃焼される。この燃焼によって爆発が生じ、この爆発力によってピストン103が降下する。そして、ピストン103が上昇する。このようなピストン103の上下動に伴って図示しないクランク軸が回転するが、このクランク軸の回転により、ピストン103の上昇とともに排気弁109が開き、燃焼室102内の燃焼によって発生した気体が排出される。ピストン103が上昇して気体の排気が終わると、排気弁109が閉じ、吸気弁107が開いて、燃料室102内に燃料噴射弁1から燃料が、図示しないスロットル装置から空気が再び供給される。以上の動作が繰り返し行なわれる。
燃料噴射弁1は、吸気弁107の上流側に1つずつ配置され、マルチポイントインジェクション(MPI)システム化された燃料噴射方式となっている。
ここで、燃料噴射弁1としては、上記の各実施形態の燃料噴射弁1が使用される。図3に示すように、4個の燃料噴射孔24a1,24a2,24b1,24b2が設けられた燃料噴射弁1では、2方向への燃料噴射が行なわれる。
ここで、気筒内の混合気の質や形成状態の向上を図るために、噴霧112は微粒化度が高められているが、さらに、シリンダヘッド106や吸気通路111の内壁面への燃料付着を低減するために、噴霧112の方向性や形状に最適化が図られている。即ち、燃料噴射弁1の噴霧形状は、吸気通路111の壁面に触れないように、その広がりを小さくしている。
ここで、図10により、燃料噴射弁1の2方向噴射について説明する。なお、図10は、ストロボ光やレーザ光を利用した噴霧の光学撮影によって得られた噴霧写真を基に、2方向噴霧112を模式的に示したものである。
同図において、2方向噴霧112は、異なる方向に噴射される2つの噴霧113,114からなるものである。これら噴霧113,114は、その拡がりがほぼ同一となるように、形成される。これによって、周囲空気へのエネルギー置換もほぼ同一になるため、個々の到達距離が同じになっている。ポート噴射式内燃機関の場合、燃料噴射弁1の燃料噴射孔の噴射口から燃焼室102(図9)までの距離はほぼ80〜100mmであり、この距離の間で噴霧113,114が吸気通路111の壁面に触れないようにする。
図11は図10での分断線B−Bに沿う噴霧113,114の断面を示す図である。
同図において、噴霧113は2つの噴霧113a,113bが干渉して形成されたものであり、噴霧114も2つの噴霧114a,114bが干渉して形成されたものであって、これらは略コーン状の旋回噴流をなすものであり、夫々断面が略楕円形状をなしている。ここで、噴霧113a,114aは、その広がりを大きくして微粒化が促進された噴霧であり、噴霧113b,114bは、噴霧113a,114aに比べてその広がりが小さく、比較的貫通力の強い噴霧である。広がりが大きい噴霧113a,114aは広がりが小さい噴霧113b,114bに接して噴射され、このため、広がりが小さい噴霧113b,114bが貫通力が高速の噴射であることから、これに接した噴霧113a,114aはこの噴霧113b,114bに引き寄せられることになる。
図示するように、貫通力が大きい噴霧113b,114bは夫々、微粒化が促進された噴霧113a,114aよりも外側、即ち、吸気通路111(図9)の壁面側に位置付けられる。貫通力が大きい噴霧113b,114bは、指向性が高く周囲空気の流動の影響を受けにくい噴霧となっており、噴霧113b,114bを噴霧113a,114aよりも外側に位置付けることにより、微粒化が促進された噴霧113a,114aが吸気通路111の壁面に飛散するのを防止している。
ここで、燃料噴射弁1が図3に示す構成の噴射プレーシ16を備えている場合の噴霧113,114の生成について説明する。
噴霧113は噴射プレート16の燃料噴射孔24a1,24a2によって形成され、噴霧114は噴射プレート16の燃料噴射孔24b1,24b2によって形成される。また、噴霧113の噴霧113aは燃料噴射孔24a1で、噴霧113bは燃料噴射孔24a2で夫々形成され、噴霧114の噴霧114aは燃料噴射孔24b1で、噴霧114bは燃料噴射孔24b2で夫々形成される。
先に図4で説明したように、噴射プレート16による燃料の旋回強さは、凹形状燃料通路23a1,23a2,23b1,23b2の幅や高さ、燃料噴射孔24a1,24a2,24b1,24b2の弁軸0からの距離Q、燃料噴射孔24の直径や長さ、燃料噴射孔24a1,24a2,24b1,24b2から凹形状燃料通路23a1,23a2,23b1,23b2の壁面27までの距離(燃料噴射孔24a1,24a2,24b1,24b2が壁面27に近い程、旋回が強くなる)などに応じて異なるものであり、これらのいずれかにより、様々な噴射形態、即ち、微粒化度や貫通力が異なる噴霧を生成可能である。
そこで、凹形状燃料通路23a1の幅や高さ、燃料噴射孔24a1の弁軸0からの距離Qあるいは燃料噴射孔24a1から凹形状燃料通路23a1の壁面27までの距離を適宜設定することにより、燃料噴射孔24a1から旋回速度エネルギーが大きい噴霧113aを噴射させる。燃料噴射孔24a1では、燃料が高速に旋回しているため、この燃料噴射孔24a1の壁面にこの旋回速度に応じた薄い層厚の旋回する燃料層が発生し、その燃料層の形態で噴霧113aが噴射される。この噴霧113aの層は旋回速度が速いほど薄くなり、噴射中に粒状に離散して噴霧となる。かかる噴霧での粒子の大きさは、この噴霧での燃料層が薄いほど、小さく、従って、燃料噴射孔24a1での燃料の旋回速度(旋回速度エネルギー)を大きくすることにより、微粒化度を高めることができる。このようにして、燃料噴射孔24a1から微粒化度の高い噴霧113aを噴射させる。また、凹形状燃料通路23a2の幅や高さ、燃料噴射孔24a2の弁軸0からの距離Qあるいは燃料噴射孔24a2から凹形状燃料通路23a2の壁面27までの距離を適宜設定することにより、燃料噴射孔24a2での燃料の旋回速度を小さくして、燃料噴射孔24a2から貫通力が強い噴霧113bを噴射させる。同様にして、凹形状燃料通路23b1の幅や高さ、燃料噴射孔24b1の弁軸0からの距離Qあるいは燃料噴射孔24b1から凹形状燃料通路23b1の壁面27までの距離を適宜設定することにより、燃料噴射孔24b1から微粒化度が高い噴霧114aを噴射させ、また、凹形状燃料通路23b2の幅や高さ、燃料噴射孔24b2の弁軸0からの距離Qあるいは燃料噴射孔24b2から凹形状燃料通路23b2の壁面27までの距離を適宜設定することにより、燃料噴射孔24b2から貫通力が強い噴霧114bを噴射させる。
図12は図9での矢印C方向に見た図であって、108aは吸気ポート108の中央隔壁、108bは吸気ポート108の内壁面(即ち、吸気通路111の壁面)、115a,115bは吸気口、116a,116bは排気口であり、図9〜図11に対応する部分には同一符号をつけて重複する説明を省略する。
同図において、吸気通路111は、吸気ポート108の中央隔壁108aにより、吸気口115a側と吸気口115b側とに2分されている。
燃料噴射弁1から噴射される噴霧113では、その貫通力が大きい噴霧113bが燃焼室102(図9)の吸気口115aの中心(吸気弁107が閉じているときのそのステム中心)に向かって噴射するように、燃料噴射弁1の前出の噴射プレート16での燃料噴射孔24a2の向きが設定されており、また、微粒化度が大きく、広がりがある噴霧113aが吸気口115aの中心よりも若干吸気ポート108の内壁面108bから離れる方向(例えば、燃焼室102(図9)の中心軸の方向)にずれているように、噴射プレート16での燃料噴射孔24a1の向きが設定されている。
このように、燃料噴射孔24a1,24a2での噴霧113a,113bの噴射方向を設定することにより、広がりのある噴霧113aは吸気ポート108の内壁面108bから離れて吸気通路111内を通ることになるから、この噴霧113aが吸気ポート108の内壁面108bに飛散することがなく、燃料がこの内壁面108bに付着することがない。また、この噴霧113aは、貫通力が大きい噴霧113bに引き寄せられるから、燃焼室102に供給されるときには、その吸気口115aの中心に近づくことになり、効率良く供給されることになる。
燃料噴射弁1から噴射される噴霧114では、その貫通力が大きい噴霧114bが燃焼室102(図9)の吸気口115bの中心(吸気弁107が閉じているときのそのステム中心)に向かって噴射するように、燃料噴射弁1の前出の噴射プレート16での燃料噴射孔24b2の向きが設定されており、また、微粒化度が高く、広がりがある噴霧114aが吸気口115bの中心よりも若干吸気ポート108の内壁面108bから離れる方向(例えば、燃焼室102(図9)の中心軸の方向)にずれているように、噴射プレート16での燃料噴射孔24b1の向きが設定されている。
このように、燃料噴射孔24b1,24b2での噴霧114a,114bの噴射方向を設定することにより、広がりのある噴霧114aは吸気ポート108の内壁面108bから離れて吸気通路111内を通ることになるから、この噴霧114aが吸気ポート108の内壁面108bに飛散することがなく、燃料がこの内壁面108bに付着することがない。また、この噴霧114aは、貫通力が大きい噴霧114bに引き寄せられるから、燃焼室102に供給されるときには、その吸気口115bの中心に近づくことになり、効率良く供給されることになる。
このようにして、噴霧113,114は、内側の微粒化の良い噴霧113a,114aの飛散を防止することができ、指向性が高く、周囲空気の流動の影響を受けにくい噴霧となっている。
かかる内燃機関の燃焼試験を実施したところ、排ガス性能の向上や燃費の向上が図られており、この燃料噴射弁1の噴霧によって、吸気ポート108の内壁面108bへの燃料付着が抑制されて、混合気の質や形成状態の向上が図られることが確認された。
なお、以上は、噴霧113,114毎に貫通力が強い噴霧を1つずつ設けるようにしたが、2以上ずつ設けるようにしてもよい。例えば、2個ずつ貫通力が大きい噴霧を設ける場合には、燃料噴射弁1の噴射プレート16に、図13に示すように、図3に示す噴射プレート16に対し、上記と同様の構成の凹形状燃料通路23a3,23b3を追加し、夫々の凹形状燃料通路23a3,23b3に、例えば、他の燃料噴射孔24a1,24a2,24b1,24b2と同じ円周上に、燃料噴射孔24a3,24b3を設けるようにする。凹形状燃料通路23a3,23b3の燃料拡大通路室22に対する位置は任意である。
かかる構成において、燃料噴射孔24a1から微粒化度が高い噴霧を噴射させ、燃料噴射孔24a2,24a3から貫通力が大きい噴霧が噴射されるようにする。この場合、燃料噴射孔24a2,24a3からの噴霧が図12に示す吸気口115aに向かうように、燃料噴射孔24a2,24a3の向きを設定し、燃料噴射孔24a1からの噴射がシリンダ105の内側に向かうように、燃料噴射孔24a1の向きを設定する。
これにより、図14に示すように、燃料噴射孔24a2,24a3からの貫通力が強い噴霧113b1,113b2が外側で、燃料噴射孔24a1からの微粒化度が高い噴霧113aが内側の噴霧113が得られることになる。
図13において、同様にして、燃料噴射孔24b1から微粒化度が高い噴霧を噴射させ、燃料噴射孔24b2,24b3から貫通力が大きい噴霧が噴射させ、これら燃料噴射24b1,24b2,24b3を適宜設定することにより、図14に示すように、燃料噴射孔24b2,24b3からの貫通力が強い噴霧114b1,114b2が外側で、燃料噴射孔24b1からの微粒化度が高い噴霧114aが内側の噴霧114が得られることになる。
なお、ここでは、燃料噴射孔24a1,24b1,24a2,24b2,24a3,24b3を同一円周上に配置するようにしたが、燃料噴射孔24a2,24b2,24a3,24b3を、燃料噴射孔24a1,24b1が配置される円周よりも小さい円周上に配置し、図14に示すように、燃料噴射孔24a1,24b1から微粒化度が高い噴霧113a,114aを噴射させ、燃料噴射孔24a2,24b2,24a3,24b3から貫通力が強い噴霧113b1,113b2,114b1,114b2を噴射させるようにすることもできる。
以上説明したように、上記実施形態の燃料噴射弁は、次のような構成と機能乃至作用を奉することを特徴とするものである。
即ち、燃料噴射弁の弁座から複数個の噴射孔に至る燃料通路に、弁座径より縮径した燃料導入孔と、この燃料導入孔に同心状に位置する拡径の燃料拡大通路室と、この燃料拡大通路室にその一端がほぼ外接し、弁径方向に伸びる複数個の凹形状燃料通路と、この凹形状燃料通路の出口側に位置し弁径方向に同心状に配置される複数個の燃料噴射孔とを設ける。
この複数個の燃料通路内の燃料流は、燃料導入孔から流入し、燃料拡大通路室の底面に衝突した後、弁径方向に向かって放射状に流れる。この際、凹形状燃料通路の一方の壁面によって流れが制約され、通路内を横切る方向に偏向される。これにより、この壁面の入口付近に逆流渦が形成され、この逆流渦の後流にこの逆流渦による新たに旋回流れが形成される。そして、このような旋回燃料流は、同じ円周上にに配置される夫々の燃料噴射孔に精度良く配分され、均等なな旋回速度エネルギーに置換されて外部へ噴射される。噴射された噴霧は、周囲空気とのエネルギー交換が活発に行なわれるので、分裂が促進されて微粒化の良い噴霧となる。
また、燃料通路を凹形状として加工を容易にしたことや、燃料噴射孔を一体的に構成し、かつ、同心状に配置したことにより燃料分配性能を良くしている。これによって、燃料噴射弁組み立て体の流量不良品を発生させることなく、コストパホーマンスに優れた、安価な燃料噴射弁とすることができる。