JP4299495B2 - 熱硬化性被覆用組成物、及び該組成物を用いてなる塗料 - Google Patents

熱硬化性被覆用組成物、及び該組成物を用いてなる塗料 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車のトップコート用塗料等として好適であり、ハイソリッド化に対応可能な熱硬化性被覆用組成物、及び該組成物を用いた塗料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車のトップコート用塗料には、低温硬化性、貯蔵安定性に優れると共に、塗膜形成時に表面ハジキが少なく、硬度、靱性、架橋密度、耐酸性、耐熱黄変性、耐候性、耐水性、耐溶剤性、耐擦傷性等が良好な塗膜を形成できることが要求される。なお、「表面ハジキ」とは、塗膜形成時に塗料がはじけて塗膜に穴やくぼみ等が形成される現象を意味する。
【0003】
従来、自動車のトップコート用塗料の主成分としては、耐候性及び美粧性に優れた塗膜が得られることから、アクリル−メラミン系樹脂が広く用いられている。しかしながら、アクリル−メラミン系樹脂に硬化剤として含まれるメラミン樹脂は耐酸性が不十分であるため、形成される塗膜が酸性雨に曝されると、塗膜に雨ジミ等が発生し、外観が悪化する恐れがある。そこで、メラミン樹脂に代わる硬化系として、特開平2−45577号公報、特開平3−287650号公報等をはじめとして、酸基とエポキシ基の架橋反応を利用した硬化系が多数提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年、環境問題に対する関心の高まりから、塗料中の溶剤量を低減し、いわゆる「ハイソリッド化」を図ることが重要な課題となってきている。しかしながら、ハイソリッド化に伴って溶液粘度が増加し、塗装作業性が低下する傾向にある。
ここで、塗料のハイソリッド化と作業性改善(すなわち低粘度化)を両立する手段として、ビニル系共重合体の低分子量化が挙げられるが、ビニル系共重合体の低分子量化に伴って、製造の際に必要な重合開始剤量が増加するため、耐酸性、耐候性、耐擦傷性等の塗膜性能が低下する傾向にあり、好ましくない。また、重合開始剤の使用量を増加させることなくビニル系共重合体の低分子量化を図る手段としては、メルカプタン類等の連鎖移動剤を併用するのが一般的であるが、連鎖移動剤が塗膜の耐候性低下を引き起こす恐れがある。
【0005】
そこで、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、低温硬化性、貯蔵安定性に優れると共に、塗膜形成時に表面ハジキが少なく、硬度、靱性、架橋密度、耐酸性、耐熱黄変性、耐候性、耐水性、耐溶剤性、耐擦傷性等が良好な塗膜を形成でき、自動車のトップコート用塗料等として好適であり、ハイソリッド化に対応可能な熱硬化性被覆用組成物、及び該組成物を用いた塗料を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記課題を解決するべく検討した結果、以下の熱硬化性被覆用組成物及び塗料を発明した。
本発明の熱硬化性被覆用組成物は、質量平均分子量が2000〜7000のエポキシ基含有ビニル系共重合体(A)を主成分とし、残存ビニル基含有モノマー量が1質量%以下、樹脂固形分量が50〜90質量%の共重合体(A)溶液と、質量平均分子量が2000〜7000のカルボキシル基及び/又は酸無水物基含有ビニル系共重合体(B)を主成分とし、残存ビニル基含有モノマー量が1質量%以下、樹脂固形分量が50〜90質量%の共重合体(B)溶液とを配合してなることを特徴とする。
【0007】
なお、本明細書において、共重合体溶液中の「主成分」とは、共重合体溶液中の含有量が50質量%以上の成分であると定義する。
また、ビニル系共重合体(A)、(B)の「質量平均分子量」は、ビニル系共重合体のテトラヒドロフラン溶液(0.4質量%)を調整後、TOSO社製カラム(GE4000HXL及びG2000HXL)が装着されたTOSO社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)装置に、調製した溶液100μlを注入し、流量:1ml/分、溶離液:テトラヒドロフラン、カラム温度:40℃の条件下でGPC法により測定される標準ポリスチレン換算の質量平均分子量を意味しているものとする。
また、共重合体(A)溶液、(B)溶液の「樹脂固形分量」は、1gの共重合体溶液をアルミ皿上にサンプリングし、150℃で1時間乾燥させた時の不揮発分量の割合(質量%)であると定義する。
【0008】
また、本発明の熱硬化性被覆用組成物において、成分(A)のエポキシ当量が250〜500g/eq、ガラス転移温度(Tg)が10〜50℃であることが好ましい。また、成分(A)が水酸基を有するビニル系単量体単位を有すると共に、成分(A)の水酸基当量が250〜2500g/eqであることが好ましい。また、成分(B)の酸当量が250〜500g/eq、ガラス転移温度(Tg)が20〜70℃であることが好ましい。
なお、本明細書において、成分(A)の「エポキシ当量」は、1当量のエポキシ基を有する樹脂のグラム数により定義され、「水酸基当量」は、1当量の水酸基を有する樹脂のグラム数により定義されるものとする。また、成分(B)の「酸当量」は、1当量のカルボキシル基又は酸無水物基を有する樹脂のグラム数により定義されるものとする。
【0009】
また、本発明の熱硬化性被覆用組成物において、組成物の総量100質量部に対して、共重合体(A)溶液の配合量が10〜85質量部、共重合体(B)溶液の配合量が10〜85質量部であると共に、共重合体(A)溶液と共重合体(B)溶液の合計配合量が50〜99質量部であることが好ましい。また、本発明の熱硬化性被覆用組成物が補助硬化剤(C)をさらに含有すると共に、組成物の総量100質量部に対して、補助硬化剤(C)の含有量が1〜50質量部であることが好ましい。
また、本発明の熱硬化性被覆用組成物において、共重合体(A)溶液及び/又は共重合体(B)溶液が、50〜95質量部のモノマー成分と50〜5質量部の溶剤とを反応容器中に連続供給し、150〜300℃の範囲で反応させて得られたものであることが好ましい。
また、本発明の熱硬化性被覆用組成物において、共重合体(A)溶液及び/又は共重合体(B)溶液が、ビニル系単量体の総量100質量部に対して、重合開始剤を0.01〜8質量部使用して得られたものであることが好ましい。
【0010】
また、本発明の塗料は、以上の本発明の熱硬化性被覆用組成物からなることを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
[熱硬化性被覆用組成物]
本発明の熱硬化性被覆用組成物は、エポキシ基含有ビニル系共重合体(A)を主成分とする共重合体(A)溶液と、カルボキシル基及び/又は酸無水物基含有ビニル系共重合体(B)を主成分とする共重合体(B)溶液とを配合してなる。
【0012】
(共重合体(A)溶液)
共重合体(A)溶液の主成分であるビニル系共重合体(A)は、少なくともエポキシ基含有ビニル系単量体単位(a−1)を有するものである。
ここで、単量体単位(a−1)としては、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、グリシジルアリルエーテル、オキソシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3−グリシジルオキシプロピル(メタ)アクリレート、3−グリシジルオキシブチル(メタ)アクリレート、4−グリシジルオキシブチル(メタ)アクリレート、6−グリシジルオキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−グリシジルオキシオクチル(メタ)アクリレート、9−グリシジルオキシノニル(メタ)アクリレート、2−グリシジルオキシエチル(メタ)アクリレート、2−グリシジルオキシプロピル(メタ)アクリレート、2−グリシジルオキシブチル(メタ)アクリレート等を例示することができる。これらは必要に応じて単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0013】
ビニル系共重合体(A)中のエポキシ基含有ビニル系単量体単位(a−1)の含有量は、全単量体単位100質量%に対して、20〜70質量%であることが好ましく、25〜60質量%であることがより好ましい。エポキシ基含有ビニル系単量体(a−1)の含有量が20質量%以上であれば、低温硬化性に優れた組成物が得られ、硬度や耐溶剤性が良好な塗膜が得られる。また、エポキシ基含有ビニル系単量体(a−1)の含有量が70質量%以下であれば、貯蔵安定性に優れた組成物が得られると共に、耐熱黄変性が良好な塗膜が得られる。
【0014】
また、ビニル系共重合体(A)のエポキシ当量が250〜500g/eqであることが好ましく、270〜480g/eqであることがより好ましい。ビニル系共重合体(A)のエポキシ当量が250g/eq以上であれば、貯蔵安定性に優れた組成物が得られ、500g/eq以下であれば、低温硬化性に優れた組成物が得られ、硬度が良好な塗膜が得られる。
【0015】
また、ビニル系共重合体(A)は、エポキシ基含有ビニル系単量体(a−1)の他、水酸基を有するビニル系単量体単位(a−2)を含有することが好ましい。ここで、水酸基を有するビニル系単量体単位(a−2)の含有量は、全単量体単位100質量%に対して5〜50質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましい。水酸基を有するビニル系単量体単位(a−2)の含有量が5質量%以上であれば、低温硬化性に優れた組成物が得られ、50質量%以下であれば、十分な相溶性を有し、低温硬化性に優れた組成物が得られると共に、耐熱黄変性、耐水性が良好な塗膜が得られる。
【0016】
また、ビニル系共重合体(A)は、水酸基を有するビニル系単量体単位(a−2)を含有すると共に、その水酸基当量が250〜2500g/eqであることが好ましく、350〜1500g/eqであることがより好ましい。ビニル系共重合体(A)の水酸基当量が250g/eq以上であれば、十分な相溶性を有し、低温硬化性に優れた組成物が得られると共に、耐熱黄変性、耐水性に優れた塗膜が得られる。また、水酸基当量が2500g/eq以下であれば、低温硬化性に優れた組成物が得られる。
【0017】
ここで、ビニル系共重合体(A)に用いて好適な水酸基を有するビニル系単量体単位(a−2)としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル類、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートへのε−カプロラクトン又はγ−ブチロラクトンの開環付加物(例えば、ダイセル化学(株)製プラクセルF単量体、UCC社製トーンM単量体等)、メタクリル酸へのエチレンオキシドの開環付加物、メタクリル酸へのプロピレンオキシドの開環付加物、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート又は2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートの2量体や3量体等の末端に水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル類、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、p−ヒドロキシスチレン等を例示することができる。これらは必要に応じて単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも特に、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートが好適である。
【0018】
また、ビニル系共重合体(A)は、上記単量体単位(a−1)、(a−2)に加えて、他のビニル系単量体単位(a−3)を有するものであっても良い。なお、他のビニル系単量体単位(a−3)の配合量は、単量体単位(a−1)、(a−2)の必要量に応じて決定される。
他のビニル系単量体単位(a−3)としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、2−ヘキシルデカニル(メタ)アクリレート等の直鎖状又は分岐状の脂肪族炭化水素置換基を有する(メタ)アクリル酸エステル類、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の脂環式炭化水素置換基を有する(メタ)アクリル酸エステル類、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−フェニルスチレン等のスチレン誘導体類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のエチレン性不飽和ニトリル類、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド等のN−アルコキシ置換アミド類、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のビニル塩基性単量体類、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジブチル等の不飽和脂肪族二塩基酸ジアルキルエステル類等を例示することができる。これらは必要に応じて単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
これらの中でも、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、スチレンが好適である。これらの中でも特に、平滑性に優れた塗膜が得られることから、i−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレートが好適である。また、硬度の高い塗膜が得られることから、スチレン、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレートが好適である。
【0020】
また、本発明において、ビニル系共重合体(A)の質量平均分子量は2000〜7000とする。また、質量平均分子量は2100〜5000であることが好ましく、2200〜4800であることがより好ましい。ビニル系共重合体(A)の質量平均分子量が2000以上であれば、低温硬化性に優れた組成物が得られ、7000以下であれば比較的低粘度となるため、低粘度で且つ高固形分の塗料材料として好適な組成物が得られる。
【0021】
また、ビニル系共重合体(A)のガラス転移温度(Tg)が10〜50℃であることが好ましく、15〜49℃であることがより好ましい。ガラス転移温度が10℃以上であれば、硬度、耐擦傷性が良好な塗膜が得られ、50℃以下であれば、塗膜の靭性、貯蔵安定性に優れた組成物が得られる。
【0022】
また、本発明において、共重合体(A)溶液の総量100質量%に対して、残存未反応ビニル基含有モノマー量を1質量%以下とする。また、残存未反応ビニル基含有モノマー量は0.5質量%以下であることが好ましい。
未反応モノマーが多量に残存していると、塗膜形成時に表面ハジキが発生したり、気泡が発生してピンポールが発生する等によって、均一な塗膜を形成することが難しくなると共に、塗膜物性が悪化する恐れがあるが、残存未反応ビニル基含有モノマー量が1質量%以下であれば、かかる恐れはなく、塗膜形成時に表面ハジキの少ない組成物が得られ、均一な塗膜が得られる。
【0023】
また、共重合体(A)溶液の樹脂固形分量は50〜90質量%とする。また、樹脂固形分量は55〜85質量%であることが好ましく、60〜80質量%であることがより好ましい。共重合体(A)溶液の樹脂固形分量が50質量%以上であれば、使用溶剤量が少なくハイソリッド化に対応可能であり、90質量%以下であれば、共重合体溶液の粘度が十分に低く、取扱いが容易となる。
【0024】
また、共重合体(A)溶液は、ビニル系単量体の総量100質量部に対して、重合開始剤量を0.01〜8質量部、好ましくは0.1〜4質量部、より好ましくは0.2〜3.5質量部として、製造されたものであることが望ましい。製造時(共重合時)に使用される重合開始剤量が0.01質量部以上であれば、共重合体(A)の低分子量化が容易になるため、低粘度で且つ高固形分の塗料材料として好適な組成物が得られると共に、均一で外観が良好な塗膜が得られる。また、使用される重合開始剤量が8質量部以下であれば、耐熱黄変性、耐酸性、耐水性、耐溶剤性、耐候性、靭性、耐擦傷性、硬度が良好な塗膜が得られる。
【0025】
(共重合体(B)溶液)
共重合体(B)溶液の主成分であるビニル系共重合体(B)は、少なくともカルボキシル基及び/又は酸無水物基を有するビニル系単量体単位(b−1)を有するものである。このような共重合体(B)溶液を配合することにより、ビニル系共重合体(B)中のカルボキシル基及び/又は酸無水物基と、ビニル系共重合体(A)中のエポキシ基や水酸基とを架橋反応させ硬化させることができる。
【0026】
ここで、カルボキシル基及び/又は酸無水物基を含有するビニル系単量体単位(b−1)としては、メタクリル酸、アクリル酸、クロトン酸、ビニル安息香酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸等のカルボキシル基含有α,β−不飽和ビニル系単量体類、β−(メタ)アクリロキシエチルアシッドサクシネート、β−(メタ)アクリロキシエチルアシッドマレエート、β−(メタ)アクリロキシエチルアシッドフタレート、β−(メタ)アクリロキシエチルヘキサヒドロフタレート、γ−(メタ)アクリロキシプロピル−アシッドサクシネート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートへのε−カプロラクトン又はγ−ブチロラクトンの開環付加物(例えば、ダイセル化学(株)製プラクセルF単量体、UCC社製トーンM単量体等)の末端水酸基を無水コハク酸や無水フタル酸又は無水ヘキサヒドロフタル酸でエステル化して末端にカルボキシル基を導入したコハク酸モノエステルやフタル酸モノエステル又は無水ヘキサヒドロフタル酸モノエステル等のカプロラクトン変性水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルと酸無水物化合物との半エステル化反応生成物等の長鎖カルボキシル基含有ビニル系単量体類、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、2,3−ジメチル無水マレイン酸等のα,β−ジカルボン酸無水物基を有するビニル系単量体、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノオクチル、イタコン酸モノオクチル、フマル酸モノブチル、フマル酸モノ−2−エチルヘキシル、シトラコン酸モノエチル等のジカルボン酸モノエステル基を有するビニル系単量体等を例示することができる。これらは必要に応じて単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
特に、α,β−ジカルボン酸無水物基を有する単量体単位とα,β−ジカルボン酸無水物基のモノエステル化基を有する単量体単位を共存させることが好ましい。なお、かかる共重合体(B)は以下のようにして得ることができる。
例えば、α,β−ジカルボン酸無水物基を有する単量体と後述する他のビニル系単量体(b−2)を共重合した後、その酸無水物基を部分的にアルカノールで開環することにより、酸無水物基とそのモノエステル化基を共存させることができ、α,β−ジカルボン酸無水物基を有する単量体単位とα,β−ジカルボン酸無水物基のモノエステル化基を有する単量体単位を有する共重合体(B)を得ることができる。この方法では、添加するアルカノールの量を調整するなどして、残存させる酸無水物基量を調整することができる。
【0028】
ここで、酸無水物基をモノエステル化するために用いて好適なアルカノールとしては、メタノール、エタノール、i−プロパノール、t−ブタノール、i−ブタノール、n−ブタノール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、アセトール、プロパギルアルコール、アリルアルコール等を例示することができる。これらは必要に応じて単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらの中でもメタノール、エタノールが好適である。また、酸無水物基のモノエステル化は、必要に応じてテトラブチルアンモニウム等の第4級アンモニウム塩類やトリエチルアミン等の第3級アミン類等の反応触媒を併用して行うことができる。
【0029】
また、α,β−ジカルボン酸無水物基を有する単量体とα,β−ジカルボン酸無水物基のモノエステル化基を有する単量体と後述する他のビニル系単量体(b−2)を共重合することによっても、α,β−ジカルボン酸無水物基を有する単量体単位とα,β−ジカルボン酸無水物基のモノエステル化基を有する単量体単位を有する共重合体(B)を得ることができる。
【0030】
ビニル系共重合体(B)において、全単量体単位100質量%に対して、カルボキシル基及び/又は酸無水物基を有するビニル系単量体単位(b−1)の含有量は、10〜70質量%であることが好ましく、17〜60質量%であることがより好ましく、20〜55質量%であることが特に好ましい。単量体単位(b−1)の含有量が10質量%以上であれば、低温硬化性に優れた組成物が得られ、60質量%以下であれば、貯蔵安定性に優れた組成物が得られると共に、耐水性に優れた塗膜が得られる。
【0031】
また、ビニル系共重合体(B)の酸当量が250〜500g/eqであることが好ましく、270〜480g/eqであることがより好ましい。ビニル系共重合体(B)の酸当量が250g/eq以上であれば、貯蔵安定性に優れた組成物が得られると共に、耐水性に優れた塗膜が得られる。また、酸当量が500g/eq以下であれば、低温硬化性に優れた組成物が得られる。
【0032】
また、ビニル系共重合体(B)は、上記のカルボキシル基及び/又は酸無水物基を有するビニル系単量体単位(b−1)に加えて、他のビニル系単量体単位(b−2)を含有するものであっても良い。他のビニル系単量体単位(b−2)の配合量は、上記単量体単位(b−1)の必要量に応じて決定される。
【0033】
他のビニル系単量体単位(b−2)としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、2−ヘキシルデカニル(メタ)アクリレート等の直鎖状又は分岐状の脂肪族炭化水素置換基を有する(メタ)アクリル酸エステル類、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の脂環式炭化水素置換基を有する(メタ)アクリル酸エステル類、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−フェニルスチレン等のスチレン誘導体類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のエチレン性不飽和ニトリル類、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド等のN−アルコキシ置換アミド類、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のビニル塩基性単量体類、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジブチル等の不飽和脂肪族二塩基酸ジアルキルエステル類等を例示することができる。これらは必要に応じて単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
また、ビニル系単量体単位(b−1)として酸無水物基を有する単量体を用いない場合は、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル類、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートへのε−カプロラクトン又はγ−ブチロラクトンの開環付加物(例えば、ダイセル化学(株)製プラクセルF単量体、UCC社製トーンM単量体等)、メタクリル酸へのエチレンオキシドの開環付加物、メタクリル酸へのプロピレンオキシドの開環付加物、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート又は2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートの2量体や3量体等の末端に水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル類、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、p−ヒドロキシスチレン等の他の水酸基含有ビニル系単量体類等を用いることもできる。これらは必要に応じて単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
これらの中でも、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、スチレンが好適である。これらの中でも、平滑性に優れた塗膜が得られることから、i−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレートが好適である。また、硬度の高い塗膜が得られることから、スチレン、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレートが好適である。
【0036】
本発明において、ビニル系共重合体(B)の質量平均分子量は2000〜7000とする。また、質量平均分子量は2100〜6900であることが好ましく、2200〜5000であることがより好ましい。ビニル系共重合体(B)の質量平均分子量が2000以上であれば、低温硬化性に優れた組成物が得られ、7000以下であれば比較的低粘度となるため、低粘度で且つ高固形分の塗料材料として好適な組成物が得られ、また貯蔵安定性に優れた組成物が得られる。
【0037】
また、ビニル系共重合体(B)のガラス転移温度(Tg)が20〜70℃であることが好ましく、25〜69℃であることがより好ましい。ガラス転移温度が20℃以上であれば、硬度、耐擦傷性が良好な塗膜が得られ、70℃以下であれば、靭性に優れた塗膜が得られる。
【0038】
また、本発明において、共重合体(B)溶液の総量100質量%に対して、残存未反応ビニル基含有モノマー量を1質量%以下とする。また、残存未反応ビニル基含有モノマー量は0.5質量%以下であることが好ましい。残存未反応ビニル基含有モノマー量が1質量%以下であれば、塗膜形成時に表面ハジキの少ない組成物が得られ、均一な塗膜が得られる。
【0039】
また、共重合体(B)溶液の樹脂固形分量は50〜90質量%とする。また、樹脂固形分量は55〜85質量%であることが好ましく、60〜80質量%であることがより好ましい。共重合体(B)溶液の樹脂固形分量が50質量%以上であれば、使用溶剤量が少なくハイソリッド化に対応可能であり、90質量%以下であれば、共重合体溶液の粘度が十分に低く、取扱いが容易となる。
【0040】
また、ビニル系共重合体(B)は、ビニル系単量体の総量100質量部に対して、重合開始剤量を0.01〜8質量部、好ましくは0.1〜4質量部、より好ましくは0.2〜3.5質量部として、製造されたものであることが望ましい。製造時(共重合時)に使用される重合開始剤量が0.01質量部以上であれば、共重合体(B)の低分子量化が容易になるため、低粘度で且つ高固形分の塗料材料として好適な組成物が得られると共に、均一で外観が良好な塗膜が得られる。また、使用される重合開始剤量が8質量部以下であれば、耐熱黄変性、耐酸性、耐水性、耐溶剤性、耐候性、靭性、耐擦傷性、硬度が良好な塗膜が得られる。
【0041】
(共重合体(A)、(B)溶液の製造方法)
本発明の組成物に用いる共重合体(A)溶液及び(B)溶液は、溶液重合法、塊状重合法、乳化重合法等の既知の重合法により製造することができるが、中でも溶液重合法を採用することが好ましい。
また、溶液重合法の中でも、製造コストや生産効率に優れると共に、耐酸性、耐熱黄変性に優れた塗膜が得られることから、モノマー成分と溶剤との混合物を反応容器中に連続供給する連続重合方式で溶液重合を行い、未反応モノマーを分離することなく処理することにより製造する方法が特に好適である。
【0042】
なお、連続重合方式を採用する場合、溶剤の他、重合開始剤及び必要に応じて重合連鎖移動剤の存在下でビニル系単量体混合物を共重合させる。ここで、モノマー成分と溶剤との総量100質量部に対して、モノマー成分の配合量を50〜95質量部、溶剤の配合量を50〜5質量部として反応させることが好ましい。
【0043】
連続重合方式を採用した場合に用いて好適な溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類等を例示することができる。また、共重合体(B)の構成単位に、α,β−ジカルボン酸無水物基を有する単量体が含まれない場合には、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール類等も用いることができる。
【0044】
また、用いて好適な重合開始剤としては公知の重合開始剤を用いることができ、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、過酸化ベンゾイル、クメンヒドロペルオキシド、ラウリルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルパーオキ−2−エチルヘキサノエート等を例示することができる。
【0045】
また、連続重合方式を採用する場合、150〜300℃の温度で、かつ1〜30分の滞在時間で連続重合を行うことが好ましい。150℃以上で連続重合を行うことにより、製造される共重合体溶液中の残存モノマー量を低減することができる。その結果、塗膜形成時に表面ハジキの少ない組成物を得ることができ、均一な塗膜を形成することができる。また、300℃以下で連続重合を行うことにより、生成される共重合体の熱分解を抑制することができる。
また、1分以上の滞在時間で連続重合を行うことにより、製造される共重合体溶液中の残存モノマー量を低減することができる。その結果、塗膜形成時に表面ハジキの少ない組成物を得ることができ、均一な塗膜を形成することができる。また、30分以下の滞在時間で連続重合を行うことにより、共重合体の熱による変質、劣化を抑制することができるため、塗膜の耐酸性や耐熱黄変性を向上させることができる。
【0046】
本発明の熱硬化性被覆用組成物において、組成物の総量100質量部に対して、共重合体(A)溶液の配合量が10〜85質量部、共重合体(B)溶液の配合量が10〜85質量部であることが好ましい。また、共重合体(A)溶液の配合量が20〜80質量部、共重合体(B)溶液の配合量が20〜80質量部であることがより好ましい。このように共重合体(A)溶液、(B)溶液を配合することにより、低温硬化性に優れた組成物が得られ、硬度、耐酸性、耐溶剤性が良好な塗膜が得られる。
【0047】
また、本発明の熱硬化性被覆組成物において、組成物の総量100質量部に対して、共重合体(A)溶液と共重合体(B)溶液の合計配合量が50〜99質量部であることが好ましい。また、共重合体(A)溶液と共重合体(B)溶液の合計配合量が60〜98質量部であることが好ましい。共重合体(A)溶液と共重合体(B)溶液の合計配合量が50質量部以上であれば、耐酸性、架橋密度、耐候性、耐水性、外観等が良好な塗膜が得られる。
【0048】
また、本発明の熱硬化性被覆用組成物には、得られる塗膜の架橋密度や外観のさらなる向上のために、必要に応じてエポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基、水酸基のうち少なくとも1種と反応する官能基を有する化合物又は樹脂からなる補助硬化剤(C)を添加しても良い。
補助硬化剤(C)の添加量は組成物の総量100質量部に対して、1〜50質量部とすることが好ましく、2〜40質量部とすることがより好ましい。補助硬化剤(C)の添加量が1質量部以上であれば、得られる塗膜の架橋密度や外観の向上効果が得られ、50質量部以下であれば、貯蔵安定性に優れた組成物が得られ、耐酸性や耐熱黄変性が良好な塗膜が得られる。
【0049】
ここで、補助硬化剤(C)としては、メラミン系樹脂やブロックイソシアネート系樹脂の他、グリシジルエーテル化合物、グリシジルエステル化合物、脂環式エポキシ化合物等のエポキシ化合物類、アジピン酸、フタル酸等の多塩基酸化合物類、分子中にカルボキシル基を有するソリッド酸価50〜200mgKOH/g(すなわち酸当量280〜1120g/eq)のポリエステル樹脂等を例示することができる。これらは単独であるいは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
また、本発明において、ビニル系共重合体(A)中のエポキシ基とビニル系共重合体(B)中のカルボキシル基のモル比(エポキシ基/カルボキシル基)が、1/5〜5/1であることが好ましく、1/4〜4/1であることがより好ましく、1/3〜3/1であることが特に好ましい。かかる構成とした場合には、前述の補助硬化剤(C)を併用しなくても、塗膜形成時の未反応の官能基が少なくなるため、架橋密度が高く、耐水性、耐候性等に優れた塗膜が得られる。
【0051】
本発明の熱硬化性被覆用組成物には、硬化性を向上させることを目的として、硬化触媒を添加することもできる。硬化触媒としては、酸基とエステル基のエステル化反応に用いられる、4級アンモニウム塩や4級ホスホニウム塩等の公知の触媒を用いることができる。具体的には、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、ベンジルトリフェニルホスホニウムブロマイド等が挙げられる。
【0052】
また、本発明の熱硬化性被覆用組成物には、貯蔵安定性を向上させることを目的として、必要に応じて、スルホン酸系やリン酸系に代表される酸性化合物あるいはそれらのブロック化物を添加しても良い。これらの具体例としては、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、及びこれらのアミンブロック化物、モノアルキルリン酸、ジアルキルリン酸、モノアルキル亜リン酸等が挙げられる。
【0053】
また、本発明の熱硬化性被覆用組成物には、有機ベントン、ポリアミド、マイクロゲル、繊維素系樹脂等のレオロジー調節剤や、シリコーンに代表される表面調整剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、垂れ止め剤等の添加剤を、必要に応じて適宜配合することができる。
【0054】
[塗料]
本発明の塗料は、以上の本発明の熱硬化性被覆用組成物により構成されたものであり、自動車のトップコート用として好適なものである。
なお、本発明の塗料を自動車のトップコート用として用いる場合、ベースコートには、本発明の塗料を用いても良いし、公知のベースコート用塗料を用いても良い。
公知のベースコート用塗料としては、アクリル−メラミン系等の熱硬化性樹脂を用いたものが挙げられる。例えば、アクリル−メラミン系等の熱硬化性樹脂、揮発性の有機溶剤からなる希釈剤、アミノ樹脂やポリイソシアネート化合物等からなる硬化剤、アルミニウムペースト、マイカ、リン片状酸化鉄等の光輝剤、酸化チタン、カーボンブラック、キナクリドン等の無機顔料又は有機顔料、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、セルロース樹脂等の添加樹脂、表面調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の添加剤等からなるベースコート用塗料が知られている。
【0055】
ベースコートとトップコートの塗装方法としては、ベースコート用塗料を塗装した後焼成硬化せずに、トップコート用塗料(本発明の塗料)を塗装し、双方の塗膜を同時に硬化させる、いわゆる2コート1ベーク硬化方式を採用することが好ましい。
但し、ベースコートとして水性塗料を用いる場合には、良好な外観を得ることができることから、トップコートを塗装する前にあらかじめベースコートを60〜100℃にて1〜10分程度加熱し半硬化しておくことが好ましい。水性のベース塗料としては、例えば、米国特許第5,151,125号、米国特許第5,183,504号等に記載されているものを例示できる。
【0056】
本発明の熱硬化性被覆用組成物及び塗料は、特定のエポキシ基含有ビニル系共重合体(A)を主成分とする共重合体(A)溶液と、特定のカルボキシル基及び/又は酸無水物基含有ビニル系共重合体(B)を主成分とする共重合体(B)溶液とを配合してなるものであるので、低温硬化性、貯蔵安定性に優れると共に、塗膜形成時に表面ハジキが少なく、硬度、靱性、架橋密度、耐酸性、耐熱黄変性、耐候性、耐水性、耐溶剤性、耐擦傷性等が良好な塗膜を形成でき、自動車のトップコート用塗料等として好適なものである。また、本発明の熱硬化性被覆用組成物及び塗料は、ハイソリッド化にも対応可能であり、環境面からも好適なものである。
【0057】
【実施例】
次に、本発明に係る合成例、実施例及び比較例について説明する。
(合成例1) 共重合体(A−1)溶液の合成
攪拌翼、原料供給ライン、重合物抜出ライン、窒素加圧ライン、温調装置を備えた加圧対応の連続式槽型反応容器を、窒素ガス雰囲気下で220℃に予め加熱しておいた。この反応容器中に容器上部から、溶剤としてソルベッソ#150(エッソ社製、芳香族炭化水素)2000g、単量体として、グリシジルメタクリレート2000g、4−ヒドロキシブチルアクリレート1000g、i−ブチルメタクリレート500g、2−エチルヘキシルメタクリレート500g、シクロヘキシルメタクリレート500g、及びスチレン500g、重合開始剤として2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル140gを配合した混合物を、滴下注入ポンプにて、100g/分の速度で連続的に注入滴下した。
上記混合物の注入を開始してから5分後に、容器下部にある取り出し口から100g/分の速度で樹脂溶液の取り出しを開始し、1500g取り出した時点でこれを初留分として廃棄した。引き続き別に準備した撹拌機、温度制御装置及びコンデンサーを備えた内容積5Lのフラスコに100g/分の速度にて樹脂溶液を連続的に回収した。4500g採取後、取り出しを停止し連続式槽型反応容器内の残存樹脂溶液を廃棄した。
次に、回収樹脂溶液の入ったフラスコを145℃に保持し、追加の重合開始剤(追加触媒)として2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル25gを1時間かけて連続的に添加し、更に130℃で1時間保持して樹脂への転化率を十分に高め、樹脂固形分量約71質量%のエポキシ基含有ビニル系共重合体(A−1)溶液を得た。
共重合体(A−1)を合成する際に用いた単量体の組成、重合開始剤の添加量、重合温度、及び得られた共重合体溶液、共重合体の特性を表1に示す。
【0058】
(合成例2〜8) 共重合体(A−2)〜(A−8)溶液の合成
用いる単量体の組成、添加する重合開始剤量、重合温度を表1に示すものとした以外は合成例1と同様にして、エポキシ基含有ビニル系共重合体(A−2)〜(A−8)溶液を合成した。得られた各共重合体溶液、共重合体の特性を表1に示す。
【0059】
(合成例9〜11) 共重合体(E−1)〜(E−3)溶液の合成
比較のため、用いる単量体の組成、添加する重合開始剤量、重合温度を表2に示すものとした以外は合成例1と同様にして、共重合体(A)溶液で規定した条件を満さないビニル系共重合体(E−1)〜(E−3)溶液を合成した。得られた各共重合体溶液、共重合体の特性を表2に示す。なお、表2には、共重合体(E−1)〜(E−3)溶液において、共重合体(A)溶液で規定した範囲外の特性に*印を付している。
【0060】
【表1】
Figure 0004299495
【0061】
【表2】
Figure 0004299495
【0062】
なお、表1、2において、単量体、重合開始剤の配合量の単位は「質量部」を示す。また、エポキシ当量、水酸基当量、ガラス転移温度は理論値を示している。また、各略号は以下の化合物を示す。
GMA:グリシジルメタクリレート
HBA:4−ヒドロキシブチルアクリレート
HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
i−BA:i−ブチルアクリレート
n−BA:n−ブチルアクリレート
i−BMA:i−ブチルメタクリレート
EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
EHMA:2−エチルヘキシルメタクリレート
CHMA:シクロヘキシルメタクリレート
IBXA:イソボロニルアクリレート
St:スチレン
重合開始剤▲1▼:2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル
【0063】
(合成例12) 共重合体(B−1)溶液の合成
攪拌翼、原料供給ライン、重合物抜出ライン、窒素加圧ライン、温調装置を備えた加圧対応の連続式槽型反応容器を窒素ガス雰囲気下で200℃に予め加熱しておいた。この反応容器中に容器上部から、溶剤として、ソルベッソ#150 625g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート125g、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート500g、単量体として、無水マレイン酸500g、メタクリル酸250g、i−ブチルメタクリレート500g、2−エチルヘキシルメタクリレート250g、シクロヘキシルメタクリレート500g、及びスチレン500g、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート70gを配合した混合物を、滴下注入ポンプにて、100g/分の速度で連続的に注入滴下した。
上記混合物の注入を開始してから5分後に、容器下部にある取り出し口から100g/分の速度で樹脂溶液の取り出しを開始し、1500g取り出した時点でこれを廃棄した。引き続き別に準備した撹拌機、温度制御装置及びコンデンサーを備えた内容積5Lのフラスコに100g/分の速度にて樹脂溶液を連続的に回収した。3000g採取後、取り出しを停止し連続式槽型反応容器内の残存樹脂溶液を廃棄した。
回収樹脂溶液の入ったフラスコを145℃に加熱し、追加の重合開始剤(追加触媒)としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート12.5gを1時間かけて連続的に滴下し、更に130℃で1時間保持して樹脂への転化率を十分に高めた。その後、回収樹脂溶液の入ったフラスコ容器の内温を70℃に低下させ、さらにメタノール155g及びトリエチルアミン12.5gを加え、内温を70℃で7時間保持し、酸無水物基の部分的なモノエステル化を行った。
酸無水物基が減少していることをIR(赤外分光法;1780cm-1)で確認し、樹脂固形分量64質量%のビニル系共重合体(B−1)溶液を得た。
共重合体(B−1)を合成する際に用いた単量体の組成、重合開始剤の添加量、重合温度、及び得られた共重合体溶液、共重合体の特性を表3に示す。得られたビニル系共重合体(B−1)は、全単量体単位100質量%に対して、無水マレイン酸単量体単位1質量%と、マレイン酸モノメチル単量体単位19質量%と、メタクリル酸単量体単位10質量%を有するものであった。
【0064】
(合成例13〜16) 共重合体(F−1)〜(F−4)溶液の合成
比較のため、用いる単量体の組成、添加する重合開始剤量、重合温度を表3に示すものとした以外は合成例12と同様にして、共重合体(B)溶液で規定した条件を満さないビニル系共重合体(F−1)〜(F−4)溶液を合成した。得られた各共重合体溶液、共重合体の特性を表3に示す。なお、表3には、共重合体(F−1)〜(F−4)溶液において、共重合体(B)溶液で規定した範囲外の特性に*印を付している。
【0065】
【表3】
Figure 0004299495
【0066】
なお、表3において、単量体、重合開始剤の配合量の単位は「質量部」を示す。また、酸当量、ガラス転移温度は理論値を示している。また、各略号は以下の化合物を示す。
MAA:メチルアクリレート
i−BMA:i−ブチルメタクリレート
n−BA:n−ブチルアクリレート
EHMA:2−エチルヘキシルメタクリレート
CHMA:シクロヘキシルメタクリレート
St:スチレン
重合開始剤▲2▼:t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート
【0067】
(実施例1)
共重合体(A−1)溶液100g、共重合体(B−1)溶液100g、モダフロー(モンサント社製、アクリル系表面調整剤)0.2g、ベンジルトリ−n−ブチルアンモニウムブロマイド1g、チヌビン900(チバガイギー社製、紫外線吸収剤)2g、サノールLS−765(三共社製、光安定化剤)2g、n−ブタノール10gを配合し、撹拌混合した。さらにソルベッソ#150/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを質量比80/20で混合した混合溶剤で希釈し、20℃における粘度がフォードカップ#4で28秒となるように調製し、本発明の塗料(熱硬化性被覆用組成物)を得た。調製した塗料の主な組成を表4に示す。
【0068】
(実施例2〜8)
実施例2〜6では、用いる共重合体(A)溶液の種類や共重合体(A)溶液と(B)溶液の配合量を表4に示すものとした以外は実施例1と同様にして、本発明の塗料(熱硬化性被覆用組成物)を得た。また、実施例7、8では、用いる共重合体(A)溶液の種類や共重合体(A)溶液と(B)溶液の配合量を表4に示すものとし、さらに、補助硬化剤(C)を表4に示す配合量で配合した以外は実施例1と同様にして、本発明の塗料(熱硬化性被覆用組成物)を得た。なお、補助硬化剤(C)としては、補助硬化剤(C−1):ユーバン20SE60(三井化学社製、n−ブチル化メラミン樹脂、不揮発分60質量%)、(C−2):デナコールEX−212(ナガセ化成社製、脂肪族エポキシ樹脂、不揮発分100質量%)のうちいずれかを用いた。
【0069】
(比較例1〜7)
比較例1〜3では、共重合体(A)溶液の代わりに共重合体(E)溶液を用い、比較例4〜7では、共重合体(B)溶液の代わりに共重合体(F)溶液を用いた以外は実施例と同様にして、比較用の塗料を得た。調製した各塗料の主な組成を表5、6に示す。
【0070】
(評価項目及び評価方法)
<貯蔵安定性>
60℃で24時間放置した後の塗料の粘度をフォードカップ#4で測定し、試験前からの増加秒数から、下記基準に基づいて評価した。
判定基準
◎:増加秒数が13秒未満であり、貯蔵安定性が非常に良好である。
○:増加秒数が13秒以上20秒未満であり、貯蔵安定性が良好で実用上問題がない。
△:増加秒数が20秒以上30秒未満であり、貯蔵安定性が不良で実用上問題がある。
×:増加秒数が30秒以上であり、貯蔵安定性が極めて不良で使用できない。
【0071】
<表面ハジキ>
脱脂処理したブリキ板(300mm×450mm)上に、得られた塗料を乾燥後膜厚が30μmとなるように重ね塗りにより塗布し、常温で15分間放置した後、140℃の熱風乾燥機で30分間焼成し塗膜を形成した。この試験板の塗膜表面に、塗膜形成時の表面ハジキによる外観不良の有無を目視により観察し、下記基準に基づいて評価した。
判定基準
○:表面ハジキが無く、外観(表面状態)が良好である。
×:表面ハジキがあり、外観(表面状態)が不良である。
【0072】
<架橋間分子量(架橋密度)>
ブリキ板の代わりに、脱脂処理したポリプロピレン板(150mm×150mm)を用いた以外は表面ハジキの評価と同様に、試験板を作成した。
作成した試験板から塗膜(4mm×30mm)を切り出し、(株)東洋ボールドウィン製RHEOVIBRON(DDV−II−EP)にて、測定周波数:3.5Hz、昇温速度:3℃/分の条件で粘弾性測定を行い、下記式に基づいて架橋間分子量Mcを求めた。Mcは、その値が小さいほど架橋密度が高いことを意味する。
Mc=3ρRT/E’
(但し、式中、ρは塗膜の密度(本試験では、1とした。)、Rは気体定数、E’は高温ゴム状域での動的弾性率の最小値、Tは高温ゴム状域で動的弾性率が最小値E’となるときの温度をそれぞれ示す。)
なお、架橋間分子量が600以下のものを良好と判定した。
【0073】
<ゲル分率>
架橋間分子量の評価と同様に試験板を作成し、作成した試験板から塗膜(50mm×50mm)を切り出し、アセトン/メタノールを質量比50/50で混合した混合溶剤中に還溜温度で3時間浸漬した後の不溶解分の比率(質量%)をゲル分率として評価した。ゲル分率はその値が大きいほど塗膜の架橋度が高いことを示すが、ゲル分率が90%以上のものを良好と判定した。
【0074】
<破断時の伸度(靱性)>
架橋間分子量の評価と同様に試験板を作成し、作成した試験板から塗膜(10mm×70mm)を切り出し、(株)オリエンテック製RTA−250にて、引っ張り速度を10mm/分として引っ張り試験測定を行い、破断時の伸度(%)を測定した。破断時の伸度が大きいほど靱性が高いことを示すが、破断時の伸度が5%以上のものを良好と判定した。
【0075】
<鉛筆硬度(硬度)>
表面ハジキの評価と同様に試験板を作成し、形成した塗膜に対して、三菱鉛筆ユニを用いて45度の角度で引っ掻き傷のつかない最も硬い鉛筆の硬度を測定し、鉛筆硬度がF以上のものを良好と判定した。
【0076】
<耐酸性>
表面ハジキの評価と同様に試験板を作成し、形成した塗膜に対して40質量%の硫酸水溶液をスポット状に滴下し、70℃で15分放置した後水洗し、スポット跡の外観変化を目視により観察した。
<耐溶剤性>
表面ハジキの評価と同様に試験板を作成し、形成した塗膜に対して、ガーゼにメチルエチルケトンを浸したものを50往復ラビングするラビング試験を行い、外観変化を目視により観察した。
【0077】
<耐擦傷性>
表面ハジキの評価と同様に試験板を作成し、形成した塗膜に対して、大栄科学精器(株)製の摩擦堅牢度試験機を用い、マケン石鹸(株)製マケンクレンザーの50質量%水溶液を塗りつけたガーゼを塗膜と接触させ、荷重1kgをかけた状態で50往復の摩擦試験を行い、外観変化を目視により観察した。
<耐熱黄変性>
表面ハジキの評価と同様に試験板を作成し、160℃で1時間オーバーベークした。日本電色工業製SE2000を用い、塗膜の試験前後のb値をそれぞれ測定し、その差を黄変の程度として評価した。
【0078】
<耐水性>
表面ハジキの評価と同様に試験板を作成し、40℃の温水に10日間浸漬させ、試験前後の塗膜表面状態を目視により観察し、「膨れ」や「ブリスター」、「白化」等の状態変化の発生有無を調べた。
<耐候性>
表面ハジキの評価と同様に試験板を作成し、サンシャインウェザーメーター(スガ試験機製)を用い、初期光沢値と2000時間試験後の光沢値をそれぞれ測定し、その差を評価した。
【0079】
<低温硬化性>
脱脂処理したブリキ板(300mm×450mm)上に、得られた塗料を乾燥後膜厚が30μmとなるように重ね塗りにより塗布し、常温で15分間放置した後、120℃の熱風乾燥機で30分間焼成して塗膜を形成した。この塗膜に対して、キシレンを用いて上記の耐溶剤性試験を行い、塗膜の外観変化を目視により観察した。
【0080】
なお、耐酸性、耐溶剤性、耐擦傷性、耐熱黄変性、耐水性、耐候性、低温硬化性については、下記基準に基づいて評価した。
判定基準
◎:試験後の塗膜品質が試験前と変わらず、極めて優れた塗膜性能を維持していた。
○−◎:試験後の塗膜品質が試験前とほとんど変わらず、優れた塗膜性能を維持していた。
○:試験後の塗膜品質は試験前より若干低下しているが、実用性能は十分に有していた。
△−○:試験後の塗膜品質は試験前より低下しているが、実用性能は有していた。
×−△:試験後の塗膜品質が試験前より低下し、実用上問題があった。
×:試験後の塗膜品質が試験前より著しく低下し、実用上使用不可能であった。
【0081】
(結果)
各実施例、比較例において得られた結果を表4〜6に示す。
表4に示すように、実施例1〜8において調製した本発明の塗料(熱硬化性被覆用組成物)は、貯蔵安定性、低温硬化性に優れたものであった。また、得られた塗料を用いて形成した塗膜は、表面ハジキが無く良好な外観を呈しており、架橋密度(架橋間分子量)、ゲル分率、靱性(破断時の伸度)、硬度(鉛筆硬度)が高く、耐酸性、耐溶剤性、耐擦傷性、耐熱黄変性、耐水性、耐候性に優れたものであった。このように、実施例1〜8において得られた本発明の塗料(熱硬化性被覆用組成物)は、優れた塗料性能と塗膜性能とを兼ね備えたものであった。
【0082】
これに対して、表5、6に示すように、本発明で規定する条件を満さない塗料(熱硬化性被覆用組成物)を調製した比較例1〜7では、評価したすべての性能を同時に満足するものは得られなかった。
【0083】
詳細には、共重合体(A)溶液の代わりに、残存未反応モノマー量が1質量%超、エポキシ当量が500g/eq超、水酸基当量が2500g/eq超の共重合体(E−1)溶液を用いて塗料を調製した比較例1では、塗膜に表面ハジキによる外観不良が発生し、塗料の低温硬化性が不十分であり、塗膜の架橋密度、靱性、硬度、耐酸性、耐溶剤性、耐擦傷性、耐水性、耐候性が不十分であった。
【0084】
また、共重合体(A)溶液の代わりに、重合開始剤使用量が8質量%超、質量平均分子量が2000未満、エポキシ当量が250g/eq未満の共重合体(E−2)溶液を用いて塗料を調製した比較例2では、塗料の低温硬化性、貯蔵安定性が不十分であり、塗膜の靱性、耐酸性、耐溶剤性、耐擦傷性、耐熱黄変性、耐水性、耐候性が不十分であった。
また、共重合体(A)溶液の代わりに、ガラス転移温度が10℃未満、水酸基当量が250g/eq未満、質量平均分子量が7000超の共重合体(E−3)溶液を用いて塗料を調製した比較例3では、塗料の低温硬化性、貯蔵安定性が不十分であり、耐溶剤性、耐擦傷性、耐熱黄変性、耐水性、耐候性が不十分であった。
【0085】
また、共重合体(B)溶液の代わりに、重合開始剤使用量が8質量%超、質量平均分子量が2000未満、酸当量が250g/eq未満の共重合体(F−1)溶液を用いて塗料を調製した比較例4では、塗料の低温硬化性、貯蔵安定性が不十分であり、塗膜の靱性、耐酸性、耐溶剤性、耐擦傷性、耐熱黄変性、耐水性、耐候性が不十分であった。
また、共重合体(B)溶液の代わりに、酸当量が500g/eq超、質量平均分子量が7000超の共重合体(F−2)溶液を用いて塗料を調製した比較例5では、塗料の貯蔵安定性、低温硬化性が不十分であり、塗膜の硬度、耐溶剤性、耐擦傷性、耐水性、耐候性が不十分であった。
【0086】
また、共重合体(B)溶液の代わりに、残存未反応モノマー量が1質量%超、ガラス転移温度が70℃超の共重合体(F−3)溶液を用いて塗料を調製した比較例6では、塗膜に表面ハジキによる外観不良が発生し、塗膜の靱性が不十分であった。
また、共重合体(B)溶液の代わりに、残存未反応モノマー量が1質量%超、ガラス転移温度が20℃未満の共重合体(F−4)溶液を用いて塗料を調製した比較例7では、塗膜に表面ハジキによる外観不良が発生し、塗料の低温硬化性が不十分であり、塗膜の硬度、耐擦傷性、耐水性、耐候性が不十分であった。
【0087】
【表4】
Figure 0004299495
【0088】
【表5】
Figure 0004299495
【0089】
【表6】
Figure 0004299495
なお、表4〜6において、共重合体溶液、補助硬化剤の配合量の単位は「質量部」を示す。また、貯蔵安定性のデータは、増加秒数を示す。
【0090】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、低温硬化性、貯蔵安定性に優れると共に、塗膜形成時に表面ハジキが少なく、硬度、靱性、架橋密度、耐酸性、耐熱黄変性、耐候性、耐水性、耐溶剤性、耐擦傷性等が良好な塗膜を形成でき、自動車のトップコート用塗料等として好適であり、ハイソリッド化に対応可能な熱硬化性被覆用組成物、及び該組成物を用いた塗料を提供することができる。

Claims (8)

  1. 質量平均分子量が2000〜7000のエポキシ基含有ビニル系共重合体(A)を主成分とし、残存ビニル基含有モノマー量が1質量%以下、樹脂固形分量が50〜90質量%の共重合体(A)溶液であって、50〜95質量部のモノマー成分と50〜5質量部の溶剤とを反応容器中に連続供給し、150〜300℃の範囲で反応させて得られた共重合体(A)溶液と、
    質量平均分子量が2000〜7000のカルボキシル基及び/又は酸無水物基含有ビニル系共重合体(B)を主成分とし、残存ビニル基含有モノマー量が1質量%以下、樹脂固形分量が50〜90質量%の共重合体(B)溶液であって、50〜95質量部のモノマー成分と50〜5質量部の溶剤とを反応容器中に連続供給し、150〜300℃の範囲で反応させて得られた共重合体(B)溶液とを配合してなることを特徴とする熱硬化性被覆用組成物。
  2. 成分(A)のエポキシ当量が250〜500g/eq、ガラス転移温度が10〜50℃であることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性被覆用組成物。
  3. 成分(A)が水酸基を有するビニル系単量体単位を有すると共に、成分(A)の水酸基当量が250〜2500g/eqであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の熱硬化性被覆用組成物。
  4. 成分(B)の酸当量が250〜500g/eq、ガラス転移温度が20〜70℃であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の熱硬化性被覆用組成物。
  5. 組成物の総量100質量部に対して、共重合体(A)溶液の配合量が10〜85質量部、共重合体(B)溶液の配合量が10〜85質量部であると共に、共重合体(A)溶液と共重合体(B)溶液の合計配合量が50〜99質量部であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の熱硬化性被覆用組成物。
  6. 補助硬化剤(C)をさらに含有すると共に、組成物の総量100質量部に対して、補助硬化剤(C)の含有量が1〜50質量部であることを特徴とする請求項5に記載の熱硬化性被覆用組成物。
  7. 共重合体(A)溶液及び/又は共重合体(B)溶液が、ビニル系単量体の総量100質量部に対して、重合開始剤を0.01〜8質量部使用して得られたものであることを特徴とする請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の熱硬化性被覆用組成物。
  8. 請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の熱硬化性被覆用組成物からなることを特徴とする塗料。
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