JP4298217B2 - 紙用透明化剤及び透明紙の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、紙用透明化剤及び透明紙の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、紙は通常40〜50%の空気を含有しており、含有される空気とセルロース繊維との屈折率の違いにより紙が白く見え、不透明度が得られている。したがって、セルロース繊維に近い屈折率を有する化合物を浸透させて紙の空隙を満たすことにより、透明紙を得ることができる。このような透明紙は、例えば、トレーシングペーパーや窓付封筒の窓の部分に使用されている。
【0003】
従来より窓付封筒は、封筒用紙の一部を切り抜き、その部分にセロファンなどの透明なフィルムを貼り付ける方法と、有機溶剤に溶かした樹脂類(例えば、アクリル系樹脂、ロジン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、石油系炭化水素樹脂、高分子脂環式化合物やワックス)を封筒用紙の一部に塗布し、その部分を加熱して樹脂を紙の中に浸透させ、透明化する方法により作られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前者の方法では窓部分の切り抜き、フィルムの糊付などの複雑な工程を必要とするので作業効率が低い。後者の方法では、使用する樹脂類が水溶性を示さず、あるいは水溶性であっても僅かに分散、乳化する程度であって、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ水であっても溶けずに古紙再生が困難となるため、古紙回収の際に、窓付封筒を新聞や広告紙などとは分別する作業が必要となり、コスト高になる。また、古紙回収の際の分別が不充分であると、パルパーなどで離解された場合に樹脂ピッチやワックス由来のスカムが発生するために、抄紙の際にトラブルが発生するだけでなく、再生紙がインクを弾くなど多くの問題が発生する。
【0005】
本発明は、上記のような窓付封筒の欠点、すなわち、製造工程及び古紙回収作業の煩雑性の問題、リサイクルの問題、品質の問題を解決するものであり、透明性に優れ、透明紙表面のべたつきがなく、透明化剤の除去が容易であって紙のリサイクル性が良好な透明紙を得ることの可能な紙用透明化剤を提供することを目的とする。また、かかる紙用透明化剤を用いた透明紙の製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の課題を達成するため鋭意研究を重ねた結果、アルキレンオキサイド鎖を有する所定の化学構造の水性化合物により上記目的が達成可能であることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表され融点が40℃以上である水性化合物からなることを特徴とする紙用透明化剤を提供するものである。
R1−(X1−(A−O)n−H)m・・・(1)
[式中、R1は炭素数1〜22のm価炭化水素基又は炭素数6〜12のヘテロシクロm価アルコール残基、X1は−O−基又は−COO−基、Aは炭素数2〜4のアルキレン基、mは2〜10の数、nはn×mが25〜700となるような数、をそれぞれ示し、n×m個のA及びm個のX1は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。なお、mが2であり、X 1 が−COO−基である場合には、R1は単結合であってもよい。]
【0009】
本発明の紙用透明化剤は、上述の一般式(1)で表され融点が40℃以上である水性化合物からなることから、透明性に優れ、透明紙表面のべたつきがなく、透明化剤の除去が容易で、紙のリサイクル性が良好な透明紙を得ることが可能になる。
【0010】
本発明は更に、多価カルボン酸及びポリグリシジルエーテルからなる群より選ばれる化合物と、下記一般式(3)で表される化合物と、を反応させてなる融点が40℃以上の水性化合物からなることを特徴とする紙用透明化剤を提供する。
R2−X2−(A−O)n−H ・・・(3)
[式中、R2は炭素数1〜22の1価炭化水素基、X2は−O−基、Aは炭素数2〜4のアルキレン基、をそれぞれ示す。但し、nは25〜700の数であり、n個のAは同一でも異なっていてもよい。]
【0012】
本発明の紙用透明化剤は、上述の一般式(3)で表される化合物と、多価カルボン酸、ポリグリシジルエーテルのいずれかを反応させた融点が40℃以上である水性化合物からなることから、透明性に優れ、透明紙表面のべたつきがなく、透明化剤の除去が容易で、紙のリサイクル性が良好な透明紙を得ることが可能になる。
【0013】
そして、本発明の透明紙の製造方法は、上記本発明の紙用透明化剤を紙に付着させる付着工程を含むことを特徴とするものである。かかる製造方法により、上記特性を発揮する透明化剤により透明化された紙(透明紙)を容易に得ることが可能になる。
【0014】
【発明の実施の形態】
上述のように、本発明の紙用透明化剤は、一般式(1)で表され融点が40℃以上である水性化合物(以下「化合物1」という。)若しくは一般式(2)で表され融点が40℃以上である水性化合物(以下「化合物2」という。)、又は、多価カルボン酸及びポリグリシジルエーテルからなる群より選ばれる化合物と、一般式(3)で表される化合物(以下「化合物3」という。)とを反応させてなる融点が40℃以上の水性化合物(以下「反応物3」という。)若しくは多価カルボン酸、ポリイソシアネート及びポリグリシジルエーテルからなる群より選ばれる化合物と、一般式(4)で表される化合物(以下「化合物4」という。)とを反応させてなる融点が40℃以上の水性化合物(以下「反応物4」という。)を含有する。
【0015】
以下、本発明にかかる紙用透明化剤の実施の形態を先ず説明するが、本発明において「水性化合物」とは、1重量%となるように水と混合した場合に、透明水溶液が得られる化合物、又は同様の混合をした場合に水に分散・乳化が可能な化合物をいう。
【0016】
(化合物1を含有する紙用透明化剤)
化合物1は以下に示す、一般式(1a)で表される化合物(以下「化合物1a」という。)及び一般式(1b)で表される化合物(以下「化合物1b」という。)に大別される。
【化2】
【0017】
上記構造から明らかなように、化合物1aは、R1とm個のOHとを備えたm価アルコール1モルに、AOなるアルキレンオキサイドをn×mモル付加させ、その末端をZ1とした化合物である。また、化合物1bは、R1とm個のCOOHとを備えたm価カルボン酸1モルに、AOなるアルキレンオキサイドをn×mモル付加させ、その末端をZ1とした化合物である。なお、m個存在するnのそれぞれは、同一の数であっても異なる数であってもよい。
【0018】
Z1が水素原子である場合は、化合物1は、m価アルコール又はm価カルボン酸にAOなるアルキレンオキサイドをnモル付加させて得られる化合物であり、Z1が、アシル基、炭素数1〜22の1価炭化水素基又は−CONH−R21で表される基である場合は、このようにして得られた化合物の末端を、それぞれアシル化、エーテル化又はウレタン化させた化合物である。
【0019】
なお、m価アルコールにアルキレンオキサイドを付加させる方法としては、例えば、m価アルコールと塩基触媒(水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなど)とを高温及び減圧下で充分に脱水した後、100〜150℃でアルキレンオキサイドを添加して付加(単独付加、ブロック又はランダム付加)させる方法が挙げられる。
【0020】
また、m価カルボン酸とアルキレンオキサイドを付加させる方法としては、例えば、高圧反応装置を使用し、m価カルボン酸と塩基触媒(例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム)とを高温及び減圧下で充分に脱水した後、アルキレンオキサイドを添加して付加(単独付加、ブロック又はランダム付加)させる方法を挙げることができる。また、m価カルボン酸と、ポリオキシアルキレングリコールとを、濃硫酸の触媒の下、反応温度110〜130℃で2〜3時間反応させる方法によっても、同様の化合物を得ることができる。
【0021】
アシル化の方法としては、例えば、カルボン酸を用いて130〜250℃でエステル化させる方法、カルボン酸エステルを用いて80〜150℃でエステル交換させる方法、ハロゲン化アシルを用いるアシル化反応などを挙げることができる。エーテル化の方法としては、例えば、アルコールを濃硫酸などの触媒下で反応させる方法、グリシジルエーテルを反応させる方法を挙げることができる。また、ウレタン化の方法としては、例えば、モノイソシアネートを反応させる方法が挙げられる。
【0022】
化合物1a及び化合物1bにおいて、AOなるアルキレンオキサイドがnモル付加したポリオキシアルキレン構造が複数個存在するが、ポリオキシアルキレン構造部分は、1種のオキシアルキレンからなっていてもよく(例えばポリオキシエチレン)、2種以上のオキシアルキレンからなっていてもよい(例えばポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン)。そして2種以上のオキシアルキレンからなる場合は、ブロック共重合体を形成していてもランダム共重合体を形成していてもよい。更に、複数個存在するポリオキシアルキレン構造のそれぞれは同一であっても異なっていてもよい。なお、オキシアルキレンはオキシエチレンであることが好ましく、オキシエチレン以外のオキシアルキレンが含まれる場合は、オキシアルキレンの総モルに占めるオキシエチレンのモル数は60%以上であることが好ましい。
【0023】
化合物1a及び化合物1bにおいては、nは、n×mが40〜500となるような数であることが好ましい。また、Z1としてのアシル基は、炭素数2〜22(好ましくは2〜18)のアシル基が好ましく、Z1としての1価炭化水素基は、炭素数1〜20(好ましくは1〜18)の1価炭化水素基が好ましい。また、Z1が−CONH−R21で表される基である場合のR21は、炭素数1〜18(好ましくは6〜18)の1価炭化水素基であることが好ましい。
【0024】
なお、化合物1におけるZ1を、アシル基、炭素数1〜22の1価炭化水素基又は−CONH−R21で表される基にすることにより、透明紙の耐水性を更に向上させることが可能になり、この結果、透明紙の雨や雪等に対する耐久性が優れるようになる。また、吸湿性が制限され透明紙の安定性を向上させることもできる。
【0025】
化合物1において、R1は、炭素数1〜22のm価炭化水素基又は炭素数6〜12のヘテロシクロm価アルコール残基である。ここで、炭素数6〜12のヘテロシクロm価アルコール残基とは、炭素数6〜12のヘテロシクロアルコール(ソルビタンなどのヘテロシクロ環を有するアルコール)からm個の水酸基を除いた残基をいい、ヘテロシクロ環におけるヘテロ原子は酸素原子が好ましい。化合物1におけるR1は、ソルビタン残基(なお、ソルビタン残基とはソルビタンからm個の水酸基を除いた残基をいう。以下同様。)、炭素数2〜6の直鎖状若しくは分岐鎖状のm価炭化水素基又は炭素数6〜18のベンゼン骨格を有するm価炭化水素基であり、mは2〜4の数であることが特に好ましい。そして、ポリオキシアルキレン構造は、ポリオキシエチレン、又は、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンブロック共重合体であることが特に好ましい。この場合において、オキシエチレンとオキシプロピレンの総モル数に占めるオキシエチレンのモル数は60%以上であることが好適である。かかる構造にすることにより、水性を向上させることができ、透明化剤の除去が更に容易となり、紙のリサイクル性を一段と向上させることが可能になる。また、化合物の融点が上昇し、透明紙表面のべたつきがより低減される傾向にある。
【0026】
化合物1の融点は40℃以上であるが、融点は40〜90℃であることが好ましく、45〜70℃であることがより好ましい。融点が40℃未満である場合は、透明紙にべたつきが生じる。また、化合物1は水性化合物であるが、化合物1は1重量%となるように水と混合した場合に透明水溶液を与える化合物であることが好ましい。かかる場合は紙のリサイクル性がより良好になるからである。そして、化合物1の平均分子量は20,000以下が好ましく、2,000〜15,000がより好ましい。平均分子量が20,000を超すと紙への塗布が困難になる傾向にある。
【0027】
(化合物2を含有する紙用透明化剤)
化合物2は、以下の一般式(2a)で表される化合物(以下「化合物2a」という。)に該当する。
R2−O−(A−O)n−CONH−R21 ・・・(2a)
【0028】
上記構造から明らかなように、化合物2aは、R2を有するモノオール(本発明においては、ノニルフェノール、クミルフェノール等のアルキルフェノールや、フェノールもモノオールに含めて考える。以下同様。)に、AOなるアルキレンオキサイドをnモル付加させ、その末端をウレタン化した化合物である。なお、アルキレンオキサイドの付加方法、ウレタン化の方法は上述のとおりである。
【0029】
化合物2aにおいて、AOなるアルキレンオキサイドをnモル付加したポリオキシアルキレン構造が存在するが、ポリオキシアルキレン構造部分は、1種のオキシアルキレンからなっていてもよく(例えばポリオキシエチレン)、2種以上のオキシアルキレンからなっていてもよい(例えばポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン)。そして2種以上のオキシアルキレンからなる場合は、ブロック共重合体を形成していてもランダム共重合体を形成していてもよい。なお、オキシアルキレンはオキシエチレンであることが好ましく、オキシエチレン以外のオキシアルキレンが含まれる場合は、オキシアルキレンの総モルに占めるオキシエチレンのモル数は60%以上であることが好ましい。
【0030】
化合物2aにおいては、nは40〜500であることが好ましい。また、R2は、炭素数8〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状の1価炭化水素基又は炭素数6〜18のベンゼン骨格を有する1価炭化水素基であることが好ましく、炭素数12〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状の1価炭化水素基であることが特に好ましい。更に、R21としての1価炭化水素基は、化合物1において好適例として例示したものを適用することが好ましい。そして、ポリオキシアルキレン構造は、ポリオキシエチレン、又は、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンブロック共重合体であることが好ましい。この場合において、オキシエチレンとオキシプロピレンの総モル数に占めるオキシエチレンのモル数は60%以上であることが好ましい。かかる構造にすることにより、水性を向上させることができ、透明化剤の除去が更に容易となり、紙のリサイクル性を一段と向上させることが可能になる。また、化合物の融点が上昇し、透明紙表面のべたつきがより低減される傾向にある。
【0031】
化合物2の融点は40℃以上であるが、融点は40〜90℃であることが好ましく、45〜70℃であることがより好ましい。融点が40℃未満である場合は、透明紙にべたつきが生じる。また、化合物2は水性化合物であるが、化合物2は1重量%となるように水と混合した場合に透明水溶液を与える化合物であることが好ましい。かかる場合は紙のリサイクル性がより良好になるからである。そして、化合物2の平均分子量は20,000以下が好ましく、2,000〜15,000がより好ましい。平均分子量が20,000を超すと紙への塗布が困難になる傾向にある。
【0032】
(反応物3を含有する紙用透明化剤)
反応物3は、多価カルボン酸及びポリグリシジルエーテルからなる群より選ばれる化合物と、以下に示す化合物3aとを反応させた化合物であり、化合物3aは下記構造から明らかなように、R2を備えたモノオールに、AOなるアルキレンオキサイドをnモル付加させた化合物である。なお、アルキレンオキサイドの付加方法は上述のとおりである。
R2−O−(A−O)n−H ・・・(3a)
【0033】
化合物3aと多価カルボン酸との反応は、前者の末端OHと後者のCOOH基との間で生じ、反応によりエステル結合が形成される。また、化合物3aとポリグリシジルエーテルとの反応は、前者の末端OHと後者のグリシジル基との間で生じ、−O−CH2−CH(OH)−結合が形成される。
【0034】
化合物3aと多価カルボン酸との反応は、前者2モルに対して後者1モルとすることが好ましく、化合物3aとポリグリシジルエーテルとの反応は、前者2モルに対して後者1モルとすることが好ましい。また、多価カルボン酸はジカルボン酸が好ましく、ポリグリシジルエーテルはジグリシジルエーテルが好ましい。
【0035】
化合物3aと多価カルボン酸との反応は、例えば、硫酸、p−トルエンスルホン酸などの酸触媒、酢酸亜鉛などのルイス酸触媒、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムなどの塩基触媒の存在下に、常圧及び減圧にて100℃〜300℃で行うことができ、化合物3aとポリグリシジルエーテルとの反応は、公知の反応条件がいずれも採用できる。
【0036】
化合物3aにおいて、AOなるアルキレンオキサイドをnモル付加したポリオキシアルキレン構造が存在するが、ポリオキシアルキレン構造部分は、1種のオキシアルキレンからなっていてもよく(例えばポリオキシエチレン)、2種以上のオキシアルキレンからなっていてもよい(例えばポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン)。そして2種以上のオキシアルキレンからなる場合は、ブロック共重合体を形成していてもランダム共重合体を形成していてもよい。更に、複数個存在するポリオキシアルキレン構造のそれぞれは同一であっても異なっていてもよい。なお、オキシアルキレンはオキシエチレンであることが好ましく、オキシエチレン以外のオキシアルキレンが含まれる場合は、オキシアルキレンの総モルに占めるオキシエチレンのモル数は60%以上であることが好ましい。
【0037】
化合物3aにおいては、pは40〜500であることが好ましい。また、R2は、炭素数8〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状の1価炭化水素基又は炭素数6〜18のベンゼン骨格を有する1価炭化水素基であることが好ましく、炭素数12〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状の1価炭化水素基であることが特に好ましい。そして、ポリオキシアルキレン構造は、ポリオキシエチレン、又は、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンブロック共重合体であることが好ましい。この場合において、オキシエチレンとオキシプロピレンの総モル数に占めるオキシエチレンのモル数は60%以上であることが好ましい。かかる構造にすることにより、水性を向上させることができ、透明化剤の除去が更に容易となり、紙のリサイクル性を一段と向上させることが可能になる。また、化合物の融点が上昇し、透明紙表面のべたつきがより低減される傾向にある。
【0038】
反応物3の融点は40℃以上であるが、融点は40〜90℃であることが好ましく、45〜75℃であることがより好ましい。融点が40℃未満である場合は、透明紙にべたつきが生じる。また、反応物3は水性化合物であるが、反応物3は1重量%となるように水と混合した場合に透明水溶液を与える化合物であることが好ましい。かかる場合は紙のリサイクル性がより良好になるからである。そして、反応物3の平均分子量は20,000以下が好ましく、2,000〜15,000がより好ましい。平均分子量が20,000を超すと紙への塗布が困難になる傾向にある。
【0039】
(反応物4を含有する紙用透明化剤)
反応物4は、多価カルボン酸、ポリイソシアネート及びポリグリシジルエーテルからなる群より選ばれる化合物と、以下に示す化合物4a又は化合物4bとの反応物である。
【化3】
【化4】
【0040】
上記構造から明らかなように、化合物4aは、R1とm個のOHとを備えたm価アルコール1モルに、AOなるアルキレンオキサイドをn×mモル付加させ、末端水素原子の一部をZ1とした化合物であり、化合物4bは、R1とm個のCOOHとを備えたm価カルボン酸1モルに、AOなるアルキレンオキサイドをn×mモル付加させ、末端水素原子の一部をZ1とした化合物である。なお、m個存在するnのそれぞれは、同一の数であっても異なる数であってもよい。
【0041】
アルキレンオキサイドの付加方法、並びに、化合物4と、多価カルボン酸、ポリイソシアネート又はポリグリシジルエーテルとの反応及び反応条件は上述のとおりである。なお、化合物4と、多価カルボン酸、ポリイソシアネート又はポリグリシジルエーテルとの反応は、前者2モルに対して後者1モルとすることが好ましい。
【0042】
化合物4a及び化合物4bにおいて、AOなるアルキレンオキサイドをnモル付加したポリオキシアルキレン構造が複数個存在するが、ポリオキシアルキレン構造部分は、1種のオキシアルキレンからなっていてもよく(例えばポリオキシエチレン)、2種以上のオキシアルキレンからなっていてもよい(例えばポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン)。そして2種以上のオキシアルキレンからある場合は、ブロック共重合体を形成していてもランダム共重合体を形成していてもよい。更に、複数個存在するポリオキシアルキレン構造のそれぞれは同一であっても異なっていてもよい。なお、オキシアルキレンはオキシエチレンであることが好ましく、オキシエチレン以外のオキシアルキレンが含まれる場合は、オキシアルキレンの総モルに占めるオキシエチレンのモル数は60%以上であることが好ましい。
【0043】
化合物4a及び化合物4bにおいては、nは、n×mが40〜500となるような数であることが好ましい。また、Z1としてのアシル基、Z1としての炭素数1〜22の1価炭化水素基、及び、R21としての炭素数1〜22の1価炭化水素基は、化合物1において好適例として例示したものを適用することが好ましい。
【0044】
なお、化合物4a及び化合物4bにおけるZ1を、アシル基、炭素数1〜22の1価炭化水素基又は−CONH−R21で表される基にすることにより、透明紙の耐水性を更に向上させることが可能になり、この結果、透明紙の雨や雪等に対する耐久性が優れるようになる。また、吸湿性が制限され透明紙の安定性を向上させることもできる。
【0045】
化合物4において、R1は、炭素数1〜22のm価炭化水素基又は炭素数6〜12のヘテロシクロm価アルコール残基である。ここで、炭素数6〜12のヘテロシクロm価アルコール残基におけるヘテロ原子は、酸素原子が好ましい。化合物4におけるR1は、ソルビタン残基、炭素数2〜6の直鎖状若しくは分岐鎖状のm価炭化水素基又は炭素数6〜18のベンゼン骨格を有するm価炭化水素基であり、mは2〜4の数であることが特に好ましい。そして、ポリオキシアルキレン構造は、ポリオキシエチレン、又は、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンブロック共重合体であることが特に好ましい。この場合において、オキシエチレンとオキシプロピレンの総モル数に占めるオキシエチレンのモル数は60%以上であることが好適である。かかる構造にすることにより、水性を向上させることができ、透明化剤の除去が更に容易となり、紙のリサイクル性を一段と向上させることが可能になる。また、化合物の融点が上昇し、透明紙表面のべたつきがより低減される傾向にある。
【0046】
反応物4の融点は40℃以上であるが、融点は40〜90℃であることが好ましく、45〜70℃であることがより好ましい。融点が40℃未満である場合は、透明紙にべたつきが生じる。また、反応物4は水性化合物であるが、反応物4は1重量%となるように水と混合した場合に透明水溶液を与える化合物であることが好ましい。かかる場合は紙のリサイクル性がより良好になるからである。そして、反応物4の平均分子量は20,000以下が好ましく、2,000〜15,000がより好ましい。平均分子量が20,000を超すと紙への塗布が困難になる傾向にある。
【0047】
(その他成分)
本発明の紙用透明化剤は、上述した化合物1、化合物2、反応物3、反応物4のいずれかを含むものであれば、その他の成分を含有していてもよい。例えば、粘度を下げたり紙への浸透性を向上させる目的で、アルコール系溶剤や界面活性剤を少量含有していてもよい。アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどが挙げられ、界面活性剤としては、浸透性良好な非イオン活性剤(例えば、ラウリルアルコールのエチレンオキサイド9モル付加物)、浸透性良好なアニオン界面活性剤(例えば、ジオクチルスルホサクシネート)などが挙げられる。
【0048】
(原料となる化合物の例示)
化合物1及び化合物4の製造に用いられる多価アルコール(m価アルコール)としては、例えば、ネオペンチルグリコール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、ジヒドロキシジフェニルスルホン、ソルバイドなどの2価のアルコール、トリメチロールプロパン、グリセリンなどの3価のアルコール、ジグリセリン、ペンタエリスリット、ソルビタンなどの4価のアルコール、グルコピラノースなどの5価のアルコール、ソルビトールなどの6価のアルコール、ショ糖などの8価のアルコールが挙げられる。なお、上記のうち、ソルバイド、ソルビタン、グルコピラノース、及びショ糖は、本発明におけるヘテロシクロm価アルコールに該当する。
【0049】
また、化合物1及び化合物4の製造に用いられる多価カルボン酸(m価カルボン酸)としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、無水コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリト酸、無水トリメリト酸、ピロメリト酸、無水ピロメリト酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸が挙げられる。
【0050】
化合物1及び反応物4においてアシル化反応に用いられるハロゲン化アシルとしては、アセチルクロライド、プロピオン酸クロライド、オクタン酸クロライド、ラウリン酸クロライド、オレイン酸クロライド、ステアリン酸クロライドなどのモノカルボン酸クロライド等が挙げられる。
【0051】
また、化合物1及び反応物4においてエーテル化に用いられる飽和又は不飽和アルコールとしては、炭素数1〜22のものが好ましく、これは直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。このようなアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、オクタノール、2−エチルヘキシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、アリルアルコール、オレイルアルコール、ドコセノール等が挙げられる。
【0052】
そして、エーテル化に用いられるグリシジルエーテルとしては、炭素数1〜18のアルコールのグリシジルエーテルが好ましく、例えば、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、ラウリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0053】
化合物1、化合物2及び反応物4においてウレタン化に用いられるモノイソシアネートとしては、炭素数1〜18のアルキル基を有するモノイソシアネートが好ましく、例えば、メチルイソシアネート、ブチルイソシアネート、ネオペンチルイソシアネート、オクチルイソシアネート、ラウリルイソシアネート、ステアリルイソシアネート等が挙げられる。
【0054】
また、反応物3及び反応物4を得るための多価カルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、無水コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリト酸、無水トリメリト酸、ピロメリト酸、無水ピロメリト酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等が挙げられる。
【0055】
そして、反応物3及び反応物4を得るためのポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートなどの脂環式ジイソシアネート;ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート等が挙げられる。これらの中でも、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートは、透明紙が無黄変性となるので特に好適である。これらのポリイソシアネート化合物は1種を単独で使用しても良いし、2種以上を併用してもよい。
【0056】
また、反応物3及び反応物4を得るためのポリグリシジルエーテルとしては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0057】
(透明紙の製造方法)
次に、本発明にかかる透明紙の製造方法について説明する。本発明の透明紙の製造方法は、上述した本発明の紙用透明化剤を紙に付着させる付着工程を含むことを特徴とするものであり、前記付着工程においては、紙用透明化剤を加熱溶融させて紙に付着させる方法、紙用透明化剤の水溶液を紙に付着させる(塗布する)方法が採用可能である。
【0058】
紙用透明化剤を付着させる紙としては、本発明の透明化の作用機構上、セルロース繊維からなる植物パルプを主体として抄造した紙を用いることが好ましい。
本発明の紙用透明化剤は、紙の少なくとも片面に塗布することが好ましい。塗布方法には従来公知の方法が適用でき、例えば、バーコーター、ドクターコート、ブレードコート、エアーナイフコート、スクイズコート、リバースロールコート、グラビアコート、オフセットグラビアコート、トランスファーロールコート、カーテンコート、エクストールジョンコート、ダイコート、スライドコート、リップコート、マイクログラビアコートなどのほか、ローラーや刷毛などを用いる方法、スプレーによる塗布などの方法が挙げられる。本発明においては、有効成分が紙の坪量の20〜100%となるような重量で、紙用透明化剤を塗布するのが好ましい。
【0059】
なお、本発明の紙用透明化剤を塗布して得られた透明紙に耐水性を付与する場合は、必要に応じて、酸化澱粉、澱粉誘導体、ポリビニルアルコール、酢酸ビニルとマレイン酸とのコポリマー、メチルセルロース、アクリルアミド樹脂等などの水溶性樹脂や市販されているニスを塗布してもよい。
【0060】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0061】
(紙用透明化剤の融点)
融点は、JIS K 0064(1992)、目視による方法に準じて測定した。
【0062】
(透明紙の作製及び紙用透明化剤の評価)
不透明度が68%であり、坪量50g/m2の試験紙の表面に、実施例及び比較例の紙用透明化剤を塗布してバーコーターで塗布を行った。この場合において、紙用透明化剤が固形である場合は各実施例及び比較例に記載した温度に加熱溶融して試験紙表面に塗布し、紙用透明化剤が液状である場合はそのまま塗布した。また、紙用透明化剤における水性化合物等の有効成分が35g/m2(試験紙に対し70%)になるように塗布を行った。塗布終了後、105℃で60秒間乾燥し、室温にて冷却させることにより透明紙を得た。そして、透明性、表面のべたつき及び紙のリサイクル性について、それぞれ以下の(1)、(2)及び(3)の方法で評価した。
【0063】
(1)透明性
JIS P 8138(1976)に準じ、REFLECTOMETER MODEL TC−ED(東京電色(株))を用いて、透明紙の不透明度(%)を測定した。この数値が小さいほど、透明性が良好である。
【0064】
(2)表面のべたつき
指の触感で、透明紙の表面(紙用透明化剤の塗布面)のべたつきの有無を判断した。
【0065】
(3)紙のリサイクル性
2重量%の水酸化ナトリウム水溶液中に5時間浸漬した後取り出し、乾燥して試験前後の透明紙の重量を測定し、下式の通り、透明紙からの有効成分の溶出率を算出した。
溶出率=(浸漬前の重量−浸漬後の重量)/有効成分の全付着量×100
有効成分の溶出率により透明紙のリサイクル性を評価した。溶出率が高いほど紙のリサイクル性は良好である。
非常に良好;溶出率が95%以上
良好 ;溶出率が90%以上95%未満
やや劣る ;溶出率が20%以上90%未満
劣る ;溶出率が20%未満
【0066】
(実施例1:ネオペンチルグリコールエチレンオキサイド80モル付加体)
5Lの高圧反応装置に、ネオペンチルグリコール104g及び水酸化カリウム3.6gを仕込み、130〜140℃で30分減圧脱水した後、130〜150℃でエチレンオキサイド3520gを、反応圧力を4kg/cm2以下に保ちながら導入した。導入後、150℃で、反応圧力がほぼ0kg/cm2になるまで約30分間反応させた後、冷却し、次いで、80℃以下で酢酸を約4g加えて中和し、ネオペンチルグリコールエチレンオキサイド80モル付加体を得た。この付加体は室温では白色の固体であり、融点は52℃であった。この付加体を紙用透明化剤とし、100℃に加熱溶融して透明紙を作製した。
【0067】
(実施例2:グリセリンエチレンオキサイド90モル付加体)
5Lの高圧反応装置に、グリセリン92g及び水酸化カリウム4.1gを仕込み、130〜140℃で30分減圧脱水した後、130〜150℃でエチレンオキサイド3960gを、反応圧力を4kg/cm2以下に保ちながら導入した。導入後、150℃で、反応圧力がほぼ0kg/cm2になるまで約30分間反応させた後、冷却し、次いで、80℃以下で酢酸を約4.5g加えて中和し、グリセリンエチレンオキサイド90モル付加体を得た。この付加体は室温では白色の固体であり、融点は約48℃であった。この付加体を紙用透明化剤とし、100℃に加熱溶融して透明紙を作製した。
【0068】
(実施例3:ビスフェノールAのエチレンオキサイド100モル付加体)
5Lの高圧反応装置に、BPA−16(日華化学(株)製、ビスフェノールAのエチレンオキサイド16モル付加物)700g及び水酸化カリウム3.5gを仕込み、130〜140℃で30分減圧脱水した後、130〜150℃でエチレンオキサイド2776gを、反応圧力を4kg/cm2以下に保ちながら導入した。導入後、150℃で、反応圧力がほぼ0kg/cm2になるまで約30分間反応させた後、冷却し、次いで、80℃以下で酢酸を約3.9g加えて中和し、ビスフェノールAのエチレンオキサイド100モル付加体を得た。この付加体は室温では白色の固体であり、融点は54℃であった。この付加体を紙用透明化剤とし、100℃に加熱溶融して透明紙を作製した。
【0069】
(実施例4:アジピン酸のエチレンオキサイド付加体)
500mLの4つ口フラスコに脱水装置、温度計、窒素導入管を装着し、その中にPEG2000(三洋化成(株)製、ポリエチレングリコール、平均分子量2000)400g、アジピン酸14.6g及びパラトルエンスルホン酸0.5gを仕込み、窒素ガスを導入しながら昇温し、酸価が0.5mgKOH/g以下になるまで200〜220℃で約5時間反応させ、アジピン酸のエチレングリコール付加体を得た。この付加体の融点は54℃であった。この付加体を紙用透明化剤とし、100℃に加熱溶融して透明紙を作製した。
【0070】
(実施例5:コハク酸のエチレンオキサイド付加体)
500mLの4つ口フラスコに脱水装置、温度計、窒素導入管を装着し、その中にPEG2000(三洋化成(株)製、平均分子量2000)400g、コハク酸11.8g及びパラトルエンスルホン酸0.5gを仕込み、窒素ガスを導入しながら昇温し、酸価が0.5mgKOH/g以下になるまで200〜220℃で約5時間反応させ、コハク酸のエチレンオキサイド付加体を得た。この付加体の融点は53℃であった。この付加体を紙用透明化剤とし、100℃に加熱溶融して透明紙を作製した。
【0071】
(実施例6:コハク酸のエチレンオキサイド付加体)
500mLの4つ口フラスコに脱水装置、温度計、窒素導入管を装着し、その中にPEG4000(三洋化成(株)製、平均分子量3000)400g、コハク酸11.8g及びパラトルエンスルホン酸0.5gを仕込み、窒素ガスを導入しながら昇温し、酸価が0.5mgKOH/g以下になるまで200〜220℃で約5時間反応させ、コハク酸のエチレンオキサイド付加体を得た。この付加体の融点は59℃であった。この付加体を紙用透明化剤とし、100℃に加熱溶融して透明紙を作製した。
【0072】
(実施例7:トリメリト酸のエチレンオキサイド付加体)
500mLの4つ口フラスコに脱水装置、温度計、窒素導入管を装着し、その中にPEG2000(三洋化成(株)製、平均分子量2000)360g、無水トリメリト酸11.6g及びパラトルエンスルホン酸0.5gを仕込み、窒素ガスを導入しながら昇温し、酸価が0.5mgKOH/g以下になるまで200〜220℃で約5時間反応させ、トリメリト酸のエチレンオキサイド付加体を得た。この付加体の融点は53℃であった。この付加体を紙用透明化剤とし、100℃に加熱溶融して透明紙を作製した。
【0073】
(実施例8:テレフタル酸のエチレンオキサイド付加体)
500mLの4つ口フラスコに減圧脱水装置、マノメーター、温度計、窒素導入管を装着し、その中にPEG2000(三洋化成(株)製、平均分子量2000)360g、ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート17.8g及び酢酸亜鉛0.1gを仕込み、窒素ガスを導入しながら昇温し、減圧下(50〜100mmHg)で220〜250℃で約4時間反応させ、テレフタル酸のエチレンオキサイド付加体を得た。この付加体の融点は50℃であった。この付加体を紙用透明化剤とし、100℃に加熱溶融して透明紙を作製した。
【0074】
(実施例9:ステアリルアルコールエチレンオキサイド付加物のコハク酸ジエステル)
500mLの4つ口フラスコに脱水装置、温度計、窒素導入管を装着し、その中にステアリルアルコールエチレンオキサイド28モル付加体320g、コハク酸12.6g及びパラトルエンスルホン酸0.5gを仕込み、窒素ガスを導入しながら昇温し、酸価が0.5mgKOH/g以下になるまで200〜220℃で約5時間反応させ、ステアリルアルコールエチレンオキサイド付加物のコハク酸ジエステルを得た。この化合物の融点は46℃であった。この化合物を紙用透明化剤とし、100℃に加熱溶融して透明紙を作製した。
【0075】
(参考例1)
サンモールN−300(日華化学(株)製、ノニルフェノールエチレンオキサイド30モル付加体、融点43℃)を紙用透明化剤とし、100℃に加熱溶融して透明紙を作製した。
【0076】
(比較例1)
パラフィンワックス115゜F(日本精蝋(株)、融点45℃)を紙用透明化剤とし、100℃に加熱溶融して用い、透明紙を作製した。
【0077】
(比較例2)
パラフィンワックス130゜F(モービル石油(株)、融点58℃)を紙用透明化剤とし、100℃に加熱溶融して用い、透明紙を作製した。
【0078】
(比較例3)
クラレポバールPVA−110((株)クラレ製、ポリビニルアルコール、重合度1000、40℃以上で固形状)を100gと水900gとを混合し、90〜100℃で3〜4時間攪拌して溶解させた後、室温に冷却して10重量%のポリビニルアルコール水溶液を得た。この水溶液を紙用透明化剤として用いて透明紙を作製した。
【0079】
(比較例4)
ポリアクリル酸ナトリウム(分子量10,000、40℃以上で固形状)の40重量%水溶液を作製し、この水溶液を紙用透明化剤として用いて透明紙を作製した。
【0080】
上記の実施例、参考例及び比較例で得られた透明紙の評価結果を、以下の表1に記載した。
【表1】
【0081】
本発明の実施例の紙用透明化剤を用いて得られる透明紙は、透明性に優れ、表面のべたつきもなく、また、有効成分の溶出率が高いことから、透明紙から紙用透明化剤の除去が容易であり、紙のリサイクル性が良好であることが分かった。
【0082】
一方、比較例1及び2で得られた透明紙は、透明性は実施例よりやや劣り、表面のべたつきはないが、有効成分の溶出率は20%以下であって、リサイクル性が劣っていた。また、比較例3及び4においては40℃で固形の水性化合物を用いたが、化学構造が本発明のものとは異なるため、透明性の点において非常に劣っていた。
【0083】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、透明性に優れ、透明紙表面のべたつきがなく、透明化剤の除去が容易であって紙のリサイクル性が良好な透明紙を得ることの可能な紙用透明化剤を提供することが可能になる。また、かかる紙用透明化剤を用いた透明紙の製造方法を提供することが可能になる。
Claims (6)
- 下記一般式(1)で表され融点が40℃以上である水性化合物からなることを特徴とする紙用透明化剤。
R1−(X1−(A−O)n−H)m・・・(1)
[式中、R1は炭素数1〜22のm価炭化水素基又は炭素数6〜12のヘテロシクロm価アルコール残基、X1は−O−基又は−COO−基、Aは炭素数2〜4のアルキレン基、mは2〜10の数、nはn×mが25〜700となるような数、をそれぞれ示し、n×m個のA及びm個のX1は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。なお、mが2であり、X 1 が−COO−基である場合には、R1は単結合であってもよい。] - 前記一般式(1)における前記R1が、ソルビタン残基、炭素数2〜6の直鎖状若しくは分岐鎖状のm価炭化水素基又は炭素数6〜18のベンゼン骨格を有するm価炭化水素基であり、前記mは2〜4の数であることを特徴とする請求項1記載の紙用透明化剤。
- 多価カルボン酸及びポリグリシジルエーテルからなる群より選ばれる化合物と、下記一般式(3)で表される化合物と、を反応させてなる融点が40℃以上の水性化合物からなることを特徴とする紙用透明化剤。
R2−X2−(A−O)n−H・・・(3)
[式中、R2は炭素数1〜22の1価炭化水素基、X2は−O−基、Aは炭素数2〜4のアルキレン基、をそれぞれ示す。但し、nは25〜700の数であり、n個のAは同一でも異なっていてもよい。] - 請求項1〜3のいずれか一項に記載の紙用透明化剤を紙に付着させる付着工程を含むことを特徴とする透明紙の製造方法。
- 前記付着工程において、前記紙用透明化剤を加熱溶融させて前記紙に付着させることを特徴とする請求項4記載の透明紙の製造方法。
- 前記付着工程において、前記紙用透明化剤の水溶液を前記紙に付着させることを特徴とする請求項4記載の透明紙の製造方法。
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