JP4298069B2 - 回路描画用導電性ペーストおよび回路印刷方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、回路描画用導電性ペーストに関し、特には、プリント基板やガラス基板において、基板上に導体回路の描画形成に利用される導電性ペースト、より具体的には、低温硬化型銀ペースト等の導電性ペーストに関する。さらに詳しくは、導体回路の描画形成にスクリーン印刷法を用いる際に、極めて細い回路、例えば、ライン&スペースが50μm&50μmを下回る回路描画を可能とし、その際にも、体積固有抵抗率が数10-5Ω・cmを超えない良好な導電性を示す導電性ペースト、ならびに、それを用いた回路描画方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
高温処理に耐える基板上に、電子回路の配線導体を描画形成する場合、高温焼結型導電性ペーストを利用して、スクリーン印刷等で回路パターンを印刷し、高温で焼成して、導電性ペースト中に含まれる導電性金属粉末間を焼結する方法が多用されている。高温焼結型導電性ペーストでは、導電性金属粉末と無機結合剤とを有機ビヒクル中に分散したペーストを、高温焼成して、有機ビヒクルを焼損するので、極めて良好な金属間導通が達成される。一方、高温処理に耐えない、あるいは、適さない基板上に回路形成する際には、高温焼結型導電性ペーストに代えて、比較的、低温で硬化する樹脂(エポキシ樹脂、フェノール樹脂など)中に導電性金属粉末を分散させた、熱硬化型導電性ペーストが利用される。熱硬化型導電性ペーストでは、樹脂を硬化することで、導電性金属粉末相互を接触させ、導通をとるが、一般に、焼結型導電性ペーストと比較して、体積固有抵抗率は高くなる傾向がある。特に、回路線幅は狭くなるにつれ、体積固有抵抗率は高くなる傾向が増し、従来の熱硬化型導電性ペーストでは、例えば、ライン&スペースが50μm&50μmを下回る細線の回路に応用した際には、所望の低抵抗性を満足できない事態も、少なからず起こっていた。
【0003】
加えて、有機バインダー(低温硬化樹脂)にエポキシ樹脂を選択する場合、その硬化剤等には低分子量の化合物を使用するため、これら低分子量成分のため、描画パターンに滲みを生じ易いという欠点を持つ。特に、ライン&スペースが50μm&50μmを下回る、狭いピッチラインを描画する際には、滲み発生は、ピッチ下限に対する制約ともなっている。他方、有機バインダーにフェノール樹脂を利用すると、エポキシ樹脂と比べて、導電性は良好となるが、回路線幅が50μmを下回る、細線ともなると、やはり焼成型のペーストと比較すると、低抵抗性には若干の難点を持つものであった。また、フェノール樹脂を利用する際には、導電性ペースト中に溶剤を相当量含むため、通常のスクリーン印刷に応用すると、この溶剤の流動性に起因するパターンの広がりがあり、回路線幅が50μmを下回る細線など、シャープなライン形状を描く際には、大きな制約となっていた。
【0004】
昨今、高温処理に耐えない基板上に、回路線幅が50μmを下回る細線など、シャープなライン形状の回路を形成する要望・必要性が増している。特に、量産性に富む、導電性ペーストを用いる回路印刷により、導電性は焼成型のペーストと遜色のない低抵抗であり、加えて、回路線幅が50μmを下回る細線など、シャープなライン形状を描くことも可能な、従来と異なる構成、特性を示す低温硬化型導電性ペーストの開発が待たれている。さらには、ライン&スペースが50μm&50μmを下回る狭いピッチライン細線など、極めてシャープなライン形状の描画にスクリーン印刷を利用する方法の開発も待望されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の課題を解決するもので、本発明の目的は、ライン&スペースが50μm&50μmを下回る狭いピッチのラインなど、極めてシャープなライン形状の描画に利用でき、加えて、回路線幅が50μmを下回る細線であっても、従来の高温焼結型ペーストで得られている低抵抗率と遜色のない導電性を達成することが可能な、新規な構成・組成の低温硬化型導電性ペーストを提供することにある。更には、本発明の目的は、前記の新規な構成・組成の低温硬化型導電性ペーストを利用して、スクリーン印刷による回路印刷の方法を提供することにある。
【0006】
【発明を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を進めたところ、導電性金属粉末に銀粉を用いるとき、低温硬化性樹脂として、アンモニアレゾール系樹脂であって、分子量が1万以上の高分子タイプのものを採用することにより、回路線幅が50μmを下回る細線であっても、従来の高温焼結型ペーストで得られている低抵抗率と遜色のない導電性を達成することができ、また、スクリーン印刷により、前記のような狭いピッチのラインを描画した際にも、滲みの発生を抑制できることを見出した。加えて、上記アンモニアレゾール系樹脂を用いる新規な構成・組成の低温硬化型導電性ペーストを用い、回路をスクリーン印刷する際、通常持ちいられる手順、すなわち、予めスクリーン上に導電性ペーストを均一に広げる、インクコートと称される工程の後、スキージにより描画パターンの転写をするのではなく、前段のインクコート工程を省き、組をなす二つのスキージを用いて、導電性ペーストをスクリーン上に広げつつ、同時に描画パターンの転写をする、いわゆるダブルスキージ印刷の手順をとると、なお一層シャープなライン形状の描画が可能となることを見出した。本発明は、上記の知見に基づき、完成したものである。
【0007】
すなわち、本発明の回路描画用導電性ペーストは、
導電性金属粉末として、描画すべき最小線幅の1/2以下の直径を有する球状銀粉と前記描画すべき最小線幅の1/2以下の最大長を有するフレーク状銀粉とを混合した金属銀粉、
低温硬化型樹脂として、アンモニアレゾール系樹脂であって、分子量が1万以上の高分子型の樹脂、
溶剤として、前記アンモニアレゾール系樹脂に対する不活性な溶剤であって、常圧での沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤、
可塑剤として、前記溶剤に溶解しえるアルコキシ基含有変性シリコーンオリゴマー系可塑剤、ならびに、
必要に応じて、沈降防止剤(チキソ剤)を含み、
前記金属銀粉100重量部に対して、前記低温硬化型樹脂を4〜17重量部、
前記可塑剤を2〜10重量部、
また、前記金属銀粉、低温硬化型樹脂、および可塑剤の合計100重量部に対して、前記溶剤を10〜40重量部の比率で混合されることを特徴とする導電性ペーストである。
【0008】
なお、前記金属銀粉が、球状銀粉とフレーク状銀粉を重量比で球状銀粉:フレーク状銀粉=1:9〜8:2の範囲、一般には、球状銀粉:フレーク状銀粉=1:9〜5:5の範囲で混合されたものを用いると好ましい。特に、描画すべき最小線幅を50μmを下回る細線とする際などでは、前記金属銀粉が、球状銀粉とフレーク状銀粉を重量比で球状銀粉:フレーク状銀粉=2:8〜4:6の範囲で混合されたものを用いるとより好ましい。
【0009】
また、本発明の回路描画用導電性ペーストを用いた回路印刷方法は、描画印刷すべき回路パターンのマスク開口部を有し、スクリーン紗目サイズが描画すべき最小線幅の1/4以下である、マスクされたスクリーンを用いて、基板上に回路を印刷する際、
上記本発明の回路描画用導電性ペーストを用い、
前記スクリーン上に前記導電性ペーストを予めインクコートする工程を設けず、代わりに、組をなす二つのスキージを用いて、
前記スキージの摺動により、少なくとも前記マスク開口部の設けられているスクリーン部分と前記基板の印刷面とスクリーンとを接触させ、回路パターンを印刷することを特徴とする回路印刷の方法である。
【0010】
より具体的には、前記組をなす二つのスキージは、互いにスキージの摺動方向が相対するべく摺動することにより、回路パターンを印刷することを特徴とする回路印刷の方法である。この組をなす二つのスキージによる摺動は、メタルマスク印刷において利用される、いわゆるダブルスキージ印刷と類する摺動である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の回路描画用導電性ペーストを構成する、導電性金属粉末、低温硬化型樹脂、溶剤、ならびに、可塑剤の必須成分について、より詳しく説明する。
【0012】
本発明の導電性ペーストにおいては、導電性金属粉末として、描画すべき最小線幅の1/2以下の直径を有する球状銀粉と前記描画すべき最小線幅の1/2以下の最大長を有するフレーク状銀粉とを混合した金属銀粉が用いられる。そもそも本発明の導電性ペーストは、スクリーン印刷を適用して回路印刷をすることを前提として、その構成を定めるものであるので、用いる金属銀粉の粒子サイズは、スクリーンの紗目サイズに適合して決定させる。
【0013】
一般に、スクリーンの紗目サイズは、描画すべき回路パターンにおいて、最小線幅を基準として、決定されるものである。具体的には、スクリーンの紗目サイズは、大きくとも最小線幅の以下に選択するのが望ましく、好ましくは、最小線幅の1/2以下に選択するとよい。仮に、紗目サイズが最小線幅より大きい場合には、印刷すべきパターン開口部において、最小線幅となる部分をみると、パターン開口部内に紗の線材が存在する箇所と存在しない箇所ができることになる。その際には、両者でペーストの抜け性に差異があり、バラツキが生じることになる。なお、現状市販されているスクリーンでは、その紗目サイズが30μm程度より細かなものは少ない。所望する開口径が得られない場合、例えば、紗目サイズが30μm程度のスクリーンを用いて、最小線幅50μmを下回るパターンの描画を行う場合には、紗の角度(バイアス)を工夫して、パターン開口部の最小線幅においても、ペーストの抜け性に伴うバラツキを抑えることがなされる。
【0014】
このように描画すべきパターン開口部の最小線幅を考慮して、スクリーンの紗目サイズを最適なスクリーンの紗目サイズを選択した上で、用いる金属銀粉の粒子サイズは、前記スクリーンの紗目サイズよりも有意に細かに選択する。望ましくは、球状銀粉の直径最大値は、前記スクリーンの紗目サイズの1/2以下に選択する。球状銀粉の最大粒径をこのサイズに選択すると、容易にスクリーンの紗目を通過でき、紗目の間に複数の銀粉が橋架け状に滞留したブリッジ現象が生ずることを防げる。
【0015】
一方、フレーク状銀粉については、通常、その最大長に対して、断面の形状は、その1/2を超えることはなく、すなわち、アスペクト比(長手方向の最大長/フレーク断面の厚み)は2以上であるので、最大長を、前記スクリーン紗目サイズ以下に選択すれば、容易にスクリーンの紗目を通過できる。フレーク状銀粉では、その形状からブリッジ現象は起きにくいものの、フレーク周囲の形状が滑らかで無いことも多く、一般に、球状銀粉と比べて流動性も悪い。この点を考慮すると、併せて用いる球状銀粉と紗目透過性に差異が生じないように、前記スクリーンの紗目サイズの1/2以下に選択すると好ましい。
【0016】
具体的には、描画すべき回路パターンの最小線幅を40μmとすると、スクリーンの紗目サイズは40μm以下とされ、それに伴い、最大長20μm以下であるフレーク状銀粉と最大直径20μm以下の球状銀粉を混合して用いる。なお、前記の数値は、上限を示し、通常は、この上限値より有意に小さなサイズの銀粉が用いられる。加えて、描画された回路において、フレーク状銀粉と球状銀粉とが最密な充填をとることが可能となるように、フレーク状銀粉の最大長は、前記球状銀粉の直径最大値の3/2以下に選択するとより好ましい。つまり、フレーク状銀粉の最大長を前記の範囲に選択すると、球状銀粉の隙間をフレーク状銀粉が埋めるように、互いに重ね合わされるので、良好な体積固有抵抗率を達成できる。例えば、描画すべき回路パターンの最小線幅を40μmとするとき、紗目サイズ30μmのスクリーンを利用し、前記紗目サイズ30μmの1/2に当たる、最大長15μm以下のフレーク状銀粉と、15μmの2/3に当たる、最大粒径10μm以下の球状銀粉とを混合して用いると一層好ましい。
【0017】
描画された回路パターンにおいて、球状銀粉とフレーク状銀粉とは、互いに均一に分布して接触するように、その混合比率を選択する。すなわち、フレーク状銀粉と球状銀粉の平均粒子サイズに応じて、混合比を適宜選択すべきものであるが、重量比で、球状銀粉:フレーク状銀粉=1:9〜8:2の範囲にはなるように混合する。一般に、フレーク状銀粉の比率を高くするにつれ、得られる体積固有抵抗率は下がる傾向はあるが、導電性ペーストのスクリーンの紗目からの抜け性はしだいに劣り、また、印刷された回路バターンの厚さの均一化、レベリングも劣化する。一方、球状銀粉の比率を高くするにつれ、スクリーンの紗目からの抜け性およびレベリングは良好となるものの、得られる体積固有抵抗率は十分に低い値とならない傾向がある。この点を考慮して、一般に、重量比で、球状銀粉:フレーク状銀粉=1:9〜5:5の範囲にはなるように混合するのが好ましく、回路パターンが細線化する際には、球状銀粉:フレーク状銀粉=2:8〜4:6の範囲に混合比を選択するとより好ましい。すなわち、回路パターンが細線化した際に問題となる、スクリーンの紗目からの抜け性およびレベリングの良好さを維持しつつ、得られる体積固有抵抗率の低下も果たせるものとなる。なお、用いる銀粉は、その表面を脂肪酸等で処理することにより、樹脂に対する分散性をより改善することもできる。特に、粒子サイズの細かな銀粉を用いる際には、前記の表面処理は有効な手段となる。
【0018】
低温硬化型樹脂として、本発明においては、アンモニアレゾール系樹脂であって、分子量が1万以上の高分子型の樹脂を用いる。このアンモニアレゾール系樹脂は、フェノールまたはフェノール誘導体を主原料とし、アンモニア触媒下に、副原料のホルムアルデヒドと反応して得られる高分子化合物である。前記の反応においては、アンモニアを触媒とする点が特徴的な点であり、フェノール骨格を与える主原料としては、石炭酸(フェノール)の他、種々のフェノール誘導体、例えば、クレゾール、キシレノール、t-ブチルフェノールなどのアルキルフェノール類、その他、フェニルフェノール、レゾルシノール、ハイドロキノンなどを使用しても、それぞれアンモニアレゾール系樹脂を得ることができる。一般に、アンモニアレゾール系樹脂において、分子量が1万より有意に小さい、すなわち、フェノール骨格が80に有意に満たない場合には、流動性が高くなり、銀粉との馴染みが劣り、また、印刷時の滲みも生じ易い。この点をも考慮して、本発明者らは、アンモニアレゾール系樹脂であって、分子量が1万以上の高分子型の樹脂を選択した。前記のアンモニアレゾール系樹脂は、高分子型の樹脂であるので、重合度に分布を持ち、分子量分布を示すが、前記分子量が1万以上とは、分子量の平均が1万以上であることを意味する。一方、分子量があまり高くなりすぎると、導電性ペーストの低温硬化型樹脂に必要な流動性が不足し、描画した際にかすれが生じ易くなる。加えて、分子量があまりにも高いと、硬化する際、柔軟性を欠くこともあり、導電性ペーストに含まれる高沸点溶剤が膜内で島状に残留する、あるいは、気泡を生ずることもある。これらの不具合が生じないように、フレキシブルな性状を示す範囲で分子量の上限が決められる。特に、スクリーン印刷を利用して、描画すべき回路パターンの最小線幅を40μm程度まで下げる際には、前記分子量の上限は、9万程度を超えず、好ましくは、5万以下とする。
【0019】
アンモニアレゾール系樹脂には、上述するとおり、用いるフェニール源の違い、重合形態の違い、具体的には、ランダム重合型、ブロック重合型などにより、種々の高分子がある。なかでも、下記一般式(I):
【0020】
【化3】
(式中、nは、およそ80以上の整数であり、Aは酸素(−O−)もしくはアミン(−NH−)が任意に配列しており、少なくとも1以上はアミン(−NH−)が選択される)で表される高分子は、より好ましいものである。このアンモニアレゾール系樹脂は、フレキシブルで、基板との密着性が高い。また、金属(銀粉)との馴染みも良好である。硬化温度も、250℃以下であり、かつ速硬化性も優れている。特に、熱収縮が大きく、それに伴い、導電性ペースト中に含まれる導電性金属粉末(銀粉)相互のコンタクトをより確実なものとでき、体積固有抵抗率の低下にも効果を持つ。これらの特質は、本発明の導電性ペーストにおける目的・特性によく合致するものである。
【0021】
上記のアンモニアレゾール系樹脂は、導電性ペーストに含有する銀粉100重量部に対して、通常、4〜17重量部を使用するとよい。低温硬化型樹脂を17重量部を超えて用いると、個々の銀粉は樹脂に覆われ、銀粉相互の接触が阻害される。従って、体積固有抵抗率は、高いものとなる。なお、銀粉相互の十分な接触が確保できるか否かは、銀粉自体の形状にも依存する。すなわち、銀粉相互の十分な接触が確保できる状態で配置されている際、銀粉間の隙間を樹脂が埋め、熱硬化に伴う樹脂体積収縮により、銀粉相互のコンタクトをより密にすることが最も好ましい。銀粉100重量部に対する、上記低温硬化型樹脂の使用量上限17重量部は、銀粉形状、球状銀粉とフレーク状銀粉の混合比を考慮して、銀粉間の隙間が最大となる際に用いる低温硬化型樹脂の使用量上限に相当する。
【0022】
一方、低温硬化型樹脂の使用量が4重量部に満たないと、銀粉同士の密なバインドが得られず、やはり、体積固有抵抗率は、高いものとなる。すなわち、銀粉相互の十分な接触が確保できる状態で配置されていても、銀粉間の隙間の一部にしか、樹脂が存在しておらず、熱硬化に伴う樹脂体積収縮により、銀粉相互のコンタクトをより密にする効果が得られないものである。この下限値4重量部は、銀粉形状、球状銀粉とフレーク状銀粉の混合比を考慮して、銀粉間の隙間が最小となる際に、銀粉同士のバインドに不可欠な量に相当する。低温硬化型樹脂の使用量が不足すると、十分にバインドされていない銀粉があり、印刷後、硬化した際、銀粉の粉飛び(回路以外のところに遊離した銀粉が観察される現象)が生じやすい。加えて、硬化時のレベリングも、悪くなる傾向がある。
【0023】
最も適切な低温硬化型樹脂の使用量は、上述したとおり、銀粉のタップ密度にも関係し、また、依存するので、銀粉形状、球状銀粉とフレーク状銀粉の混合比を考慮して適宜選択すべきものであるが、例えば、球状銀粉:フレーク状銀粉=2:8〜4:6の範囲に混合比を選択する際には、6〜12重量部の範囲に選択するとより好ましい。
【0024】
溶剤は、上記の低温硬化型樹脂自体の流動性を補い、導電性ペーストを利用して、スクリーン印刷により回路の描画を行う上で、導電性ペーストの粘度を適度な範囲に調整するために、希釈溶剤として添加される。従って、前記アンモニアレゾール系樹脂に対する不活性な溶剤を利用する。スクリーン印刷により回路の描画を行う際には、溶剤の蒸散に伴い、スクリーン紗目等で目詰まりが起こすことがないように、沸点の高い溶剤を用いるのが好ましい。従って、少なくとも、常圧での沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤を用いるのが通常であり、沸点が200℃以上の溶剤が好ましい。例えば、上記一般式(I)で表されるアンモニアレゾール系樹脂に対しては、メチルカルビトール、エチルカルビトール、メチルカルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブ、ブチルセロソルブアセテート等の溶剤を、単独または混合溶剤として用いると好ましい。一方、上記の低温硬化型樹脂を熱硬化する際には、溶剤は蒸散(乾固)するのが好ましい。つまり、熱硬化処理を行う温度、キュア温度よりは沸点が低い高沸点溶剤を選択する。従って、キュア温度が低い場合には、溶剤も比較的に低沸点なものを使用する。また、硬化後の回路膜厚を所望の値とするには、溶剤の蒸散(乾固)ならびに低温硬化型樹脂自体の熱収縮に伴う、体積減少を念頭に入れ、描画される導電性ペースト層の厚さを調整する。具体的には、スクリーン印刷に用いるマスクの乳剤厚により、描画される導電性ペースト層の厚さを調整する。描画の際、導電性ペーストの初期粘度が低すぎると、パターンの広がり、滲みを起こし、初期粘度が高すぎると、描画後、基板の印刷面とスクリーンとの離れ(版離れ)が悪くなる。通常、導電性ペーストの初期粘度が、30〜120Pa・sの範囲となるように、溶剤を添加して希釈するのが好ましい。
【0025】
従って、溶剤の蒸散(乾固)に伴う体積減少と、導電性ペーストの初期粘度の双方を考慮すると、例えば、金属銀粉100重量部に対して、前記低温硬化型樹脂を4〜17重量部、可塑剤を2〜10重量部を使用する導電性ペーストにおいては、前記金属銀粉、低温硬化型樹脂、および可塑剤の合計100重量部に対して、溶剤を10〜40重量部の比率で混合すると好ましい。なお、描画すべき最小線幅が細くなるにつれ、一般に、導電性ペーストの初期粘度をより高くして、パターンの広がり、滲みを抑制する必要がある。従って、描画すべき最小線幅が細くなる際には、低温硬化型樹脂に対しても、溶剤の添加比率を相対的に下げるのが好ましい。加えて、低温硬化型樹脂以外の成分、すなわち可塑剤などにより、大きな粘度低下が見込まれる際には、溶剤の添加量を、前記の下限10重量部より若干下回る量とする態様も、実質的に本発明に包含される。すなわち、可塑剤などの用途で添加される成分が、実質的に溶剤の役割を補完する際には、当然に好適な初期粘度とするために、添加する溶剤量を相対的に減ずることができる。
【0026】
なお、導電性ペースト初期粘度の最適値は、ペーストに含まれる銀粉の混合比、形状等も関係するチキソ性、タック、降伏値にも支配され、描画するパターンの緻密さ、回路膜厚等の目的に沿って、前記する30〜120Pa・sの範囲から選択することになる。その際、チキソ指数を、回転粘度計により測定される10rpm時の粘度と60rpm時の粘度を用いて、log10(10rpm時の粘度/60rpm時の粘度)/log10(60/10)の値とするとき、チキソ指数は、0.5〜0.9とするのが好ましい。
【0027】
可塑剤は、本発明の導電性ペーストにおいては、導電性ペースト初期粘度を高く設定した際、低温硬化型樹脂を硬化した時、レベリングに問題を残す欠点を除くために、添加するものである。特に、スクリーン印刷を適用して、ファインピッチの回路を印刷する際、上述するようにパターンの広がりや滲みを防止するため、導電性ペーストの初期粘度やチキソ性を下げることができない。その場合、スクリーン印刷を適用することもあって、硬化時のレベリングが悪くなる傾向が強く、その影響は、ファインラインでは一層顕著となる。本発明者らは、改善の方策を鋭意検討を進めた結果、キュアの際、初期には、導電性ペーストが一旦軟化し、その後、硬化する工程とできれば、この軟化時に、所望のレベリングがなされることに想到した。このキュア中に、一時的な軟化を誘起するため、可塑剤を添加することが有効であることを見出した。上述したアンモニアレゾール系樹脂に対して、好適な可塑剤を探索したところ、アルコキシ基含有変性シリコーンオリゴマー類が、キュア温度を250℃を超えない範囲に設定すると好適な結果を与えていた。また、アルコキシ基含有変性シリコーンオリゴマー類を添加すると、導電性ペーストのタックも下がり、スクリーン印刷において、より安定した印刷を継続する上でも、好ましい作用を示す。
【0028】
特に、低温硬化型樹脂に、一般式(I)で表される高分子型のアンモニアレゾール系樹脂を利用するとき、可塑剤として、下記一般式(II):
【0029】
【化4】
(式中、p,qは、0以上の整数であり、ともに0となることはない)で表されるアルコキシ基含有変性シリコーンオリゴマーなどがより好ましいものである。このオリゴマー自体は公知の方法で製造でき、原料のフェニルトリアルコキシシランとメチルアルコキシシランを縮合反応させ、目的の共重合体等に調製することができる。一般式(II)において、構成単位のユニット数p,qの合計(p+q)が2もしくは3であるオリゴマーは、一般式(I)で表される高分子型のアンモニアレゾール系樹脂との相溶性が優れる。一方、(p+q)が5を超えると、樹脂との相溶性が劣り、可塑剤としての作用を果たせなくなる。相溶性が劣ることに伴い、導電性ペーストの硬化特性にも悪影響を及ぼす。また、導電性ペーストの洗浄性をも悪化させる。一方、(p+q)が1または2のものでは、分子量が小さいほど、揮発性が高いので、キュアの際に、所望する可塑剤添加の成果を得ることができなくなる。また、添加量を増すと、印刷時に、滲みを起こす要因にもなり得る。従って、構成単位のユニット数p,qの合計(p+q)を、2〜4とするものがより好ましい。なかでも、(p+q)が3の化合物が、一層好ましい可塑剤となる。このようなアルコキシ基含有変性シリコーンオリゴマーのいくつかは市販されており、前記の(p+q)が3前後の化合物の例としては、例えば、商品名 KR213(信越化学工業(株)製)を挙げることができる。なお、前記商品名 KR213の市販品は、前記の(p+q)が3の化合物を主成分とするが、若干(p、q)の組み合わせが異なる成分をも含む混合物である。
【0030】
可塑剤は、低温硬化型樹脂を硬化する際に、上記の一時的な軟化現象を誘起する役割を持つものであり、低温硬化型樹脂に対して、一定の比率で添加する。例えば、金属銀粉100重量部に対して、低温硬化型樹脂を4〜17重量部を用いるときには、可塑剤の添加量を2〜10重量部の範囲で選択すると好ましい。一般に、金属銀粉に対する、低温硬化型樹脂の使用量が少なくなるにつれ、レベリングの問題が顕在化する傾向にあり、低温硬化型樹脂に対する、可塑剤の添加比率を高くするとより好ましく、低温硬化型樹脂の使用量が多くなると、レベリングの問題は希になり、低温硬化型樹脂に対する、可塑剤の添加比率を低くすることができる。
【0031】
本発明の回路描画用導電性ペーストは、以上に説明した必須成分、導電性金属粉末、低温硬化型樹脂、可塑剤および溶剤を均一に混合したものであるが、商品として、保存した際に、比重差等により、導電性金属粉末が沈降することを抑制するため、必要に応じて、市販の沈降防止剤(チキソ剤)を添加する。あるいは、市販の分散剤を加えることもできる。さらに、描画を施す基板等の材質に応じて、必要ならば、各種のカップリング剤を添加することができる。
【0032】
カップリング剤は、基板等の材質に応じて、選択されるものであるが、低温硬化型樹脂との反応性に富み、導電性ペーストの保存性を損なうものは、当然に除外される。すなわち、低温硬化型樹脂との反応により、導電性ペーストのポットライフを悪化させない範囲で、適宜カップリング剤を添加することができる。カップリング剤の添加量は、低温硬化型樹脂に対する重量比で、1〜10%の範囲で、基板等との密着性、描画された回路の導電性を考慮して決定する。低温硬化型樹脂として、例えば、一般式(I)で表される高分子型のアンモニアレゾール系樹脂を利用するとき、揮発性が低く、樹脂との反応性が低いという要件を満たす好ましいカップリング剤の一例として、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルジメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0033】
本発明の回路描画用導電性ペーストを調製する方法を説明する。上に説明した必須成分である、導電性金属粉末、低温硬化型樹脂、可塑剤および溶剤、その他必要に応じて添加する、沈降防止剤(チキソ剤)、分散剤、カップリング剤、これらを所定の比率で配合し、均一に混練することで、導電性ペーストに調製することができる。均一な混練を行う手段としては、例えば、プラネタリーミキサー、3本ロールなど、通常使用される機器・装置以外に、特に、密閉系での混練が可能な自転−公転併用のらいかい機、もしくは攪拌脱泡機、例えば、型式名 MS−SNB−2000:松尾産業(株)製等の市販機も、好適に利用できる。
【0034】
混練に際しては、導電性ペーストの粘度を市販の回転粘度計(例えば、製品名 Malcom PC1TL VS-3)を用いて、10rpm時の粘度を測定する。製品の用途に応じて、溶剤添加量の増減を行い、所定の粘度調整を行い、真空脱泡後、低温、例えば、10℃以下で数日間放置・熟成する。
【0035】
次に、上述した本発明の回路描画用導電性ペーストを用いた回路印刷方法について、説明を加える。描画印刷に用いる印刷機は、通常のスクリーン印刷機と異なり、ダブルスキージ印刷を適用するため、若干の変更・改造が施されている。通常のスクリーン印刷機では、予めインクコートを行うために、スクレパーと印刷を行うスキージが装備されている。ダブルスキージ印刷においては、インクコートを実施しないため、スクレパーは不要であり、その代わりに第2のスキージが装備される。例えば、二つのスキージを互いに向かい合った「ハ」の字型に配置する。図1は、通常のスクリーン印刷機のスクレパーとスキージの配置と、ダブルスキージ印刷用のスクリーン印刷機の二つのスキージ配置とを対比して示す概念図である。図1に示すように、スクレパーの代わりに配置される、第2のスキージに対して、必要なスキージストロークを確保するため、スキージ摺動方向にマスク長さを延長する。このマスク長の延長に伴い、対応したマスクホルダーを作成し、通常型のマスクホルダーと置き換えるなど、スクリーン印刷機を適宜設計変更・改造を行う。
【0036】
通常のスクリーン印刷では、スクリーン紗目にあるペーストが乾燥し、目詰まりを起こすことのないように、インクコートを行う。極めて線幅の狭い、超ファインパターンを描画する場合、用いるスクリーン紗目サイズが細かくなり、その細い紗目開口部で、毛細管現象が起こり、インクコートしたペーストは、基板(ワーク)側に浸出する現象が起こる。
【0037】
この浸出する現象に伴い、スクリーン上のマスクパターンより外に、ワーク側のペースト浸出領域が広がり、インクコートを行って印刷を繰り返すたびに、僅かづづではあるが、その広がりは拡大する。従って、インクコートを行う通常のスクリーン印刷では、超ファインパターンを描画する場合、安定した印刷が継続できないことになる。
【0038】
本発明の回路印刷方法では、インクコートを行わないので、前記の毛細管現象に伴うワーク側へのペースト浸出は、本質的に排除される。一方、スクリーン紗目にあるペーストが乾燥し、目詰まりを起こすことを防止するため、紗目を綺麗にワイプするスキージを使用することで、ペーストの紗目上への残留を実質的になくする。加えて、利用する導電性ペースト自体、溶剤に高沸点溶剤を用いるため、乾燥による目詰まりは更に低減される。また、可塑剤として添加するアルコキシ基含有変性シリコーンオリゴマー等は、導電性ペーストのタックを下げる作用もあり、ペーストの紗目開口部に対する透過性を高くされるので、目詰まりの問題を回避するものである。
【0039】
上記の印刷方法を適用すると、本発明の回路描画用導電性ペーストを利用するスクリーン印刷では、ライン&スペースが、40μm/40μmの極めて繊細な回路パターンでも、スペース間隔が狭まることがなく、また、体積固有抵抗率も十分に低い回路の形成が可能となった。
【0040】
本発明の回路印刷方法により、基板などの上に描画される回路パターンは、用いるアンモニアレゾール系樹脂などの低温硬化型樹脂は、フレキシブルであり、アルミニウム等の金属との馴染み・密着性も高いので、種々のIC素子をフリップ・オン・チップ型のフェイスダウン実装等に利用される。例えば、液晶ドライバーICなどを、ガラス基板上に描画された配線回路パターン上にフェイスダウン実装する際に、本発明の回路印刷方法を利用して描画されるファインピッチの回路を利用することができ、また、量産性にも優れるので、コスト低減にも利する。
【0041】
以下に、具体例を挙げて、本発明の回路描画用導電性ペーストの調製、ならびに、その導電性ペーストを利用し、スクリーン印刷により最小線幅が50μmを下回る繊細な回路パターンの描画に適用するときの利点について、より詳しく説明する。
【0042】
【実施例】
(導電性ペーストの調製例)
本発明の回路描画用導電性ペーストの調製に利用される、アンモニアレゾール系樹脂について、一般式(I)で表され、種々の重合度(分子量)と組成比(n/m)のものを合成した。比較のため、従来のレゾール系樹脂についても、同様に種々の重合度(分子量)のものを合成した。
【0043】
一般式(I)で表されるアンモニアレゾール系樹脂は、次に述べる合成手順により、アンモニアを触媒として合成できる。原料のフェノール、ホルムアルデヒド水溶液、ならびに、触媒ともなるアンモニア水をフラスコに仕込み、混合した後、攪拌をしつつ85℃で数時間加熱する。次いで、フラスコに蒸留用の冷却器を取り付け、減圧下(50〜60mmHg)50℃で水を留去する。脱水が進むにつれ、30mmHgまで減圧し、さらに75℃まで加熱する。この脱水工程においては、時折サンプリングのため、フラスコ内の混合物(樹脂)少量を採取し、この試料を室温まで冷却する時、固化する温度を確認する。冷却時の固化点を目安とし、脱水終了を判断する。脱水終了後、直ちにフラスコ内の反応生成物(樹脂)を金属製バット上に流し出す。なお、原料のフェノール/ホルムアルデヒドの仕込み量比、ならびに付加・重合反応の加熱時間等を調整し、目的とする分子量と組成比(n/m)が得られるように制御する。
【0044】
一方、従来のレゾール系樹脂(樹脂B)の合成は、原料のフェノール、ホルムアルデヒド水溶液を用い、アンモニアに代えて、水酸化ナトリウム(NaOH)を触媒として、同様の手順で行うことができる。
【0045】
上記の樹脂を用いて、下記する組成の導電性ペーストを調整した。先ず、アンモニアレゾール系樹脂10重量部、可塑剤として、アルコキシ基含有変性シリコンオリゴマー:商品名KR−213(信越化学工業(株)製)5重量部、チキソ剤10重量部、溶剤として、エチルカルビトールアセテート30重量部を、攪拌脱泡機MS−SNB−2000(松尾産業(株)製)で2分間攪拌混合する。金属銀末は、粒径2.0〜15μmで、平均粒径7μmの球状銀粉末と、粒径2.0〜15μm(アスペクト比2程度)で、平均粒径7μmのフレーク状銀粉末とを、重量比を球状銀粉末:フレーク状銀粉末=a:bとして、混合した銀粉末100重量部を用いる。前記の樹脂混合物に銀粉末を加え、前記の攪拌脱泡機で3分間攪拌混合する。得られたペーストを3本ロールミルで均一に練肉して、導電性ペーストとする。
【0046】
同じく、従来のレゾール系樹脂(樹脂B)についても、同じ組成、混練手順で、従来型の導電性ペーストを調製した。
【0047】
アンモニアレゾール系樹脂として、平均分子量が5000、15000、100000の三種、また、銀粉末の混合比(球状銀粉末:フレーク状銀粉末)について、a:bを、2:8、4:6、6:4の三種に選び、計9種の導電性ペーストを調製した。加えて、従来のレゾール系樹脂(樹脂B)についても、平均分子量が5000、15000、100000の三種、また、銀粉末の混合比(球状銀粉末:フレーク状銀粉末)について、a:bを、2:8、4:6、6:4の三種に選び、計9種の導電性ペーストを調製した。
【0048】
これらの導電性ペーストを用いて、スクリーン印刷により、図2に示すパターンを印刷し、熱硬化させ回路パターンを形成した。このライン&スペースが50μm&50μmの回路パターンにおいて、描画性、ならびに得られた回路における体積固有抵抗率を評価した。印刷時に滲みがあり、線幅にバラツキが生じたもの、あるいは、印刷にかすれが生じて、回路膜厚さが不均一なものでは、体積固有抵抗率の正当な評価はできないので、「滲み」あるいは「かすれ」と評価結果に示した。表1に、アンモニアレゾール系樹脂を用いた、計9種の導電性ペーストの評価結果、表2に、従来のレゾール系樹脂(樹脂B)を用いた、計9種の導電性ペーストの評価結果をそれぞれ示す。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
表1に示す、ライン&スペースが50μm&50μmの回路パターンにおいても、分子量15000のアンモニアレゾール系樹脂を用いた3種の導電性ペーストでは、銀粉末の混合比(球状銀粉末:フレーク状銀粉末)に依らず、滲みもかすれもなく、また、体積固有抵抗率も5×10-5Ω・cm未満となっており、極めて良好な回路印刷が可能となっている。
【0052】
表2に示す、分子量15000の従来のレゾール系樹脂(樹脂B)を用いた3種の導電性ペーストでも、銀粉末の混合比(球状銀粉末:フレーク状銀粉末)によっては、比較的良好な回路形成がなされている。しかしながら、前記表1と表2に示す結果を比較すると、アンモニアレゾール系樹脂を用いた本発明の導電性ペーストは、描画性および体積固有抵抗率の双方で、従来のレゾール系樹脂(樹脂B)を用いた導電性ペーストより、有意に優れていると判断される。なお、ライン&スペースが50μm&50μmの微細な回路では、滲み、かすみが若干生じているが、その程度は、アンモニアレゾール系樹脂を用いた導電性ペーストは、従来のレゾール系樹脂(樹脂B)を用いた導電性ペーストよりも格段に軽微なものであった。
【0053】
(繊細な回路パターンの描画例)
この微細なパターンを描画した際、滲み、かすみがなく、再現性よく回路印刷形成ができる下限について、重ねて検討した。分子量15000のアンモニアレゾール系樹脂を用いた3種の導電性ペーストおよび分子量15000の従来のレゾール系樹脂(樹脂B)を用いた3種の導電性ペーストを用いて、図2に示すようなライン&スペースパターンを滲みやかすれがなく、高い再現性で形成できる下限を再評価した。その評価結果、高い再現性で形成できるライン&スペースパターンの下限を、表3に示す。この比較においても、アンモニアレゾール系樹脂を用いた導電性ペーストは、従来のレゾール系樹脂(樹脂B)を用いた導電性ペーストよりも、微細なパターンの描画特性に優れていると判断される。
【0054】
【表3】
【0055】
上記の微細なパターンの描画特性の評価に加えて、熱硬化時のレベリングの程度についても評価した。その際、可塑剤の添加量が、描画特性ならびに熱硬化時のレベリングに影響を有するので、可塑剤:商品名KR−213(信越化学工業(株)製)の添加量のみを変えた組成の導電性ペーストについても、同様の評価を行った。表4に、ライン&スペースが50μm&50μmの微細な回路形成において、熱硬化時のレベリングの指標として、回路膜厚の最大、最小の差、peek to bottomを測定した結果を示す。表4に示す通り、分子量15000のアンモニアレゾール系樹脂を用いた導電性ペーストにおいて、可塑剤を含まないもの(0重量部)では、熱硬化時のレベリングが十分でなく、極く軽いかすれを生じている。一方、可塑剤を15重量部まで増したものでは、熱硬化時に過度の軟化が起こり、見かけ上、僅かではあるが滲みを生じたものがあった。スクリーン印刷時の、紗目によるペーストの透過性の差異が、可塑剤を適量添加することで、熱硬化時のレベリングにより平滑化できることが判る。可塑剤が多すぎると、導電性ペースト自体の流動性を増すため、印刷時に滲みがなくとも、熱硬化時のレベリングにおける軟化が過度に進み、結果として、滲みを生ずることもあることが確認された。
【0056】
【表4】
【0057】
【発明の効果】
本発明の回路描画用導電性ペーストを用いると、低温での熱硬化型ペーストによって、最小線幅が50μmを下回る繊細な回路パターンをスクリーン印刷により描画することが可能となる。特に、最小線幅が50μmを下回る細線においても、体積固有抵抗率は、低温での熱硬化型ペーストにおいても、従来の焼結型導電性ペーストにより得られる値と遜色のないものとできる。この利点は、回路抵抗を低くする必要が高い、ガラス基板上に液晶ドライバーICなどフェイスダウン実装に利用する回路形成に好適に利用でき、また、製造の効率化を図ることができる。加えて、本発明の回路印刷方法では、インクコートを行わないので、繰れ返し印刷を行う際にも、パターン広がりや滲みが大幅に低減でき、最小線幅が50μmを下回る繊細な回路パターンを再現性よく印刷形成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のインクコートを行うスクリーン印刷法に利用されるスクレパーとスキージの配置(上図)と本発明の回路印刷方法において利用されるダブルスキージの配置(下図)とを対比して示す図である。
【図2】描画性の評価に用いたライン&スペースが50μm&50μm等の微細な回路パターンを示す図である。
Claims (7)
- 導電性金属粉末として、描画すべき最小線幅の1/2以下の直径を有する球状銀粉と前記描画すべき最小線幅の1/2以下の最大長を有するフレーク状銀粉とを混合した金属銀粉、
硬化温度が250℃以下の低温硬化型樹脂として、アンモニアレゾール系樹脂であって、分子量が1万以上の高分子型の樹脂、
溶剤として、前記アンモニアレゾール系樹脂に対する不活性な溶剤であって、常圧での沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤、ならびに、
可塑剤として、前記溶剤に溶解しえるアルコキシ基含有変性シリコーンオリゴマー系可塑剤を含み、
前記金属銀粉100重量部に対して、前記低温硬化型樹脂を4〜17重量部、
前記可塑剤を2〜10重量部、
また、前記金属銀粉、低温硬化型樹脂、および可塑剤の合計100重量部に対して、前記溶剤を10〜40重量部の比率で混合される
ことを特徴とする回路描画用導電性ペースト。 - 前記金属銀粉が、球状銀粉とフレーク状銀粉を重量比で球状銀粉:フレーク状銀粉=1:9〜8:2の範囲で混合されるものである
ことを特徴とする請求項1に記載の回路描画用導電性ペースト。 - 前記導電性ペーストの粘度が、30〜120Pa・sの範囲に調整されている
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の回路描画用導電性ペースト。 - さらに、
前記低温硬化型樹脂に対する重量比で1〜10%の範囲でカップリング剤を添加する
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の回路描画用導電性ペースト。 - 描画印刷すべき回路パターンのマスク開口部を有し、スクリーン紗目サイズが描画すべき最小線幅以下である、マスクされたスクリーンを用いて、基板上に回路を印刷する際、
前記請求項1〜6のいずれか一項に記載の回路描画用導電性ペーストを用い、
前記スクリーン上に前記導電性ペーストを予めインクコートする工程を設けず、代わりに、組をなす二つのスキージを用いて、
前記スキージの摺動により、少なくとも前記マスク開口部の設けられているスクリーン部分と前記基板の印刷面とスクリーンとを接触させ、回路パターンを印刷する
ことを特徴とする回路印刷方法。
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