JP4297587B2 - 車両用ステアリング装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本出願発明は操舵輪に連動連結されて軸方向に移動するラック軸を有する車両用ステアリング装置に関し、詳細には、タイロッドが結合されたブラケットとギヤボックスハウジングに設けられた案内孔内で摺動するスライダと間の位置するシール部を有するダストブーツの構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、車両用ステアリング装置であるセンターテイクオフ型のパワーステアリング装置において、図8に図示されるように、タイロッドの一端部が結合されたブラケットaとハウジングbに設けられた案内孔c内を摺動するスライダdとの間に配置される部分を有して案内孔cを覆うダストブーツeが、ハウジングbに装着される。そして、ブラケットaとダストブーツeとの間をシールするために、例えば合成樹脂からなるダストブーツeには、ラック軸とブラケットaとを結合するボルトfが貫通する貫通孔の周囲に略同心状の環状突壁gが一体成形されている。この環状突壁gは、ボルトfが締め付けられたとき、図9に図示されるように、その先端がブラケットaに当接して、圧縮変形させられることにより、ダストブーツeとブラケットaとの間の面圧を高めることで、水・塵埃等の侵入を効果的に防止するものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、環状突壁gは、単にブラケットa側が突出し、その反対側であるスライダd側が平面状となっているため、ボルトfの締付けにより圧縮変形された際に、その圧縮変形に基づく押圧力がスライダdおよびブラケットaに作用する。このとき、通常金属製であるブラケットaに対して、案内孔cに沿う摺動を容易にするため、例えば低摩擦係数を有する合成樹脂からなるスライダdは、その押圧力によりハウジングb寄りに変形して、ハウジングbを押圧する状態になることがある。すると、スライダdに対するハウジングbからの摺動抵抗が増大し、ハウジングbとの間で円滑な摺動運動が阻害され、スムーズな転舵が困難となる難点があった。
【0004】
本出願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、良好なシール機能を確保しつつ、ダストブーツの環状突壁の圧縮変形によるスライダとハウジングのとの間の摺動抵抗の増大を抑制して、スムーズな転舵が可能な車両用ステアリング装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
本出願の請求項1記載の発明は、ハウジング内に収容されると共に、操舵輪に連動連結されて軸方向に移動自在とされたラック軸と、一対のタイロッドのそれぞれの一端部が結合されたブラケットと、前記ハウジングに前記軸方向に設けられた案内孔と、該案内孔内に配置されて前記軸方向に摺動自在なスライダと、該スライダに設けられた挿通孔に挿通されて前記ラック軸と前記ブラケットとを結合する締結具と、該締結具が貫通する貫通孔の周囲に形成されて前記スライダと前記ブラケットとの間に位置する環状突壁を有すると共に前記案内孔を覆うダストブーツとを備え、前記締結具の締付けにより該スライダと該ブラケットとで該環状突壁が圧縮変形されて該ダストブーツと該ブラケットとの間がシールされる車両用ステアリング装置において、少なくとも、前記貫通孔の内壁面に接すると共に前記ラック軸の軸線に略平行な一対の仮想平面に対して該軸線が位置する内側領域とは反対側の外側領域に属する前記環状突壁の部分には、該環状突壁の前記圧縮変形により容積が減少する空間部が設けられている車両用ステアリング装置である。
【0006】
この請求項1記載の発明によれば、環状突壁によりダストブーツとブラケットとの間の良好なシール性を確保できる。しかも、少なくとも、ダストブーツに設けられて締結具が貫通する貫通孔の内壁面に接すると共にラック軸の軸線に略平行な一対の仮想平面に対して、該軸線が位置する内側領域とは反対側の外側領域に属する環状突壁の部分に空間部が設けられている。この外側領域では、スライダと案内孔が設けられたハウジングとが僅かな間隙を介して対向していて、スライダが軸方向に移動する際に、スライダがハウジングと摺接するため、環状突壁の圧縮変形による押圧力でスライダの比較的大きな変形が生じた場合には、変形したスライダがハウジングを押圧することがある。しかしながら、前記空間部が設けられていることにより、締結具が締付けられて、環状突壁が圧縮変形されたとき、その変形は、空間部の容積を減少させつつ、空間部に吸収されるため、圧縮変形に基づくスライダへの押圧力が低減され、したがってスライダが変形してハウジングを押圧することを防止できる。
【0007】
その結果、環状突壁により良好なシール性を確保したうえで、スライダとハウジングとの間の摺動抵抗の増大が抑制されて、スライダは案内孔内でスムーズに摺動することができるので、操舵輪の操作に基づくラック軸、さらにはスライダを介してラック軸と一体化されたブラケットに結合されたタイロッドの移動がスムーズに行われ、スムーズな転舵が可能となる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本出願発明の実施形態を図1ないし図7を参照して説明する。
図1は、本出願発明の車両用ステアリング装置の実施形態である自動車用のセンターテイクオフ型油圧式パワーステアリング装置1の概略全体図であり、このパワーステアリング装置1は、ラックアンドピニオン式のものであり、車両の左右方向(図1における左右方向とは反対になる)に略水平に延びる略円筒状のラック軸ハウジング2aと、ラック軸ハウジング2aの右端部に結合されたピニオンハウジング2bとから構成されるギヤボックスハウジング2を備える。なお、実施形態の説明においては、特に断らない限り、「左右」は、車両における左右を意味するものとする。
【0009】
ラック軸ハウジング2aには、ラック軸3がその軸方向である左右方向に直線移動自在に収容されている。また、ピニオンハウジング2bには、ラック軸3の右端部の主としてラック歯3aが形成された部分が収容されると共に、操舵輪に連結された入力軸4が回転自在に支持され、さらに入力軸4とトーションバーを介して連結された回転自在な出力軸と、入力軸4と出力軸との相対回転により油圧を制御する油圧制御バルブ機構とが収容されている。そして、該出力軸には、ラック軸3のラック歯3aと噛合するピニオンが形成されていて、ピニオンの回転によりラック軸3が前記軸方向(左右方向)に移動する。したがって、ラック軸3は、入力軸4、出力軸等を介して操舵輪に連動連結されており、操舵輪の操作に基づいてラック軸3が前記軸方向に移動する。
【0010】
ラック軸ハウジング2aには、前記軸方向における中央部からやや右寄りに、該軸方向に長径を有する略長円形状の案内孔5が所定の長さにわたって設けられており、この案内孔5内に配置されたスライダ6が、案内孔5に案内されて前記軸方向に摺動自在に嵌合している。そして、スライダ6には、ラック軸3とダストブーツ7とブラケット8とを一体に結合する一対の締結具としてのボルト9,9が挿通されている。
【0011】
この略T字形状をしたブラケット8には、それぞれボールジョイント10,10を介して左右一対のタイロッド11,11の各内方端部が揺動自在に結合されている。そして、両タイロッド11,11の各外方端部は、転舵機構を介して車両の転舵輪に連結されている
【0012】
また、ギヤボックスハウジング2内への水・塵埃等の侵入を防止する合成樹脂製のダストブーツ7は、案内孔5がその略中央に位置するようにして、ピニオンハウジング2bとラック軸ハウジング2aの一部により形成される後述するパワーシリンダ12の右端部との間で、ラック軸ハウジング2aを覆っている。ダストブーツ7の筒状の中央部7aの一部には平坦部7bが形成され、平坦部7bが両ボルト9,9の締付けによりブラケット8とスライダ6との間で挟着され、また中央部7aの左右両側方には、蛇腹からなる左側および右側伸縮部7c,7dが形成され、さらに左側伸縮部7cの左端部がラック軸ハウジング2aの外周に固着され、右側伸縮部7dの右端部がピニオンハウジング2bの外周に固着されることで、ダストブーツ7がギヤボックスハウジング2に装着される。
【0013】
さらに、ラック軸ハウジング2aの左端部はパワーシリンダ12とされ、このパワーシリンダ12を前記軸方向に貫通して、パワーピストンロッドを兼ねるラック軸3の左端部が延びている。そして、パワーシリンダ12内に位置するラック軸3には、パワーシリンダ12内を摺動して前記軸方向に往復動するピストン13が一体的に固着され、このピストン13の左右両側にそれぞれ油室14,14が形成されている。これらの油室14,14に対しては、操舵補助力を生成する圧油が、ピニオンハウジング2b内に収容された前記油圧制御バルブ機構により切換制御されて、両油室14,14にそれぞれ接続された油管15,15を介して給排される。
【0014】
したがって、操舵輪が操舵されて、操舵軸と連動連結された出力軸のピニオンと噛み合うラック軸3が前記軸方向に移動すると、案内孔5に沿って移動するスライダ6に案内されて、ブラケット8およびタイロッド11,11が、ラック軸3と共に一体に左右方向に移動して、左右の転舵輪の転舵が行なわれる。同時に、前記油圧制御バルブ機構により車輪の操舵トルクに応じて制御された前記圧油がピストン13に作用して操舵補助力を発生し、該操舵補助力が、ラック軸3、ブラケット8およびタイロッド11,11を介して転舵輪に伝えられる。
【0015】
さらに、パワーシリンダ12の左端部および該左端部から突出するラック軸3の左端部には、蛇腹からなる伸縮部を有するブーツ16の各端部が固着されていて、パワーシリンダ12内に水・塵埃等が侵入するのを防止している。
【0016】
ここで、図2ないし図7を参照して、主として、スライダ6、ダストブーツ7およびブラケット8、そしてそれら相互の関連についてさらに説明する。
図2ないし図5に図示されるように、スライダ6は、両端部が半円形の輪郭を有し、中央部に透孔16aが設けられた低摩擦係数を有する合成樹脂製の細長の板状のガイドシュー16と、ガイドシュー16の両端部に設けられた貫通孔からなる一対の嵌合孔16b,16bにそれぞれ嵌合された金属製で筒状の一対のカラー17,17とから構成される。それゆえ、ガイドシュー16の両端部は、カラー17,17を保持する保持部16c,16cをそれぞれ構成している。各嵌合孔16b,16bは、円孔からなる小径孔と対向する一対の平面部を有する大径孔とで形成される段部16d,16dを有し、一方各カラー17,17は、該小径孔および該大径孔にそれぞれ対応する形状の小径部と大径部とで形成される段部17a,17aを有し、各嵌合孔16b,16bの段部16d,16dに各カラー17,17の段部17a,17aが当接して、両者が一体となっている。
【0017】
また、各カラー17,17の内側は、ボルト9,9が挿通される挿通孔18,18を構成しており、大径部の端部17b,17bはラック軸3に設けられた凹部に嵌合されて、その端面がラック軸3と当接する。両カラー17,17の小径部の端部17c,17cの端面には、略T字形状の金属製のブラケット8の両腕部8a,8aがそれぞれ当接していて、両腕部8a,8aにそれぞれ設けられた一対の挿通孔8c,8cに、カラー17,17の挿通孔18,18を貫通してラック軸3に形成された一対のねじ穴にそれぞれ螺合する一対のボルト9,9が挿通される。したがって、両カラー17,17はラック軸3とブラケット8との間隔を規定するスペーサの機能を有しており、両カラー17,17が嵌合しているガイドシュー16が、案内孔5内でラック軸ハウジング2aの径方向の所定位置を確実に占めるようにしている。
【0018】
さらに、ガイドシュー16の各保持部16c,16cの案内孔5側には、案内孔5に嵌入する案内部16e,16eと、該案内部16e,16eよりも広い幅を有すると共に、ラック軸ハウジング2aの外周よりも径方向外方に位置する係合部16f,16fとが設けられている。なお、幅とは案内孔5の平面視で、すなわち図4において、ラック軸3の軸線Lと直交する方向の幅を意味する。
【0019】
そして、各案内部16e,16eは、案内孔5の前記軸方向の周壁である一対の軸方向周壁2a1,2a1(図4参照)とそれぞれ僅かな間隙を介して対向しかつ軸方向周壁2a1,2a1と摺接し得る平面からなる一対の第1摺接面16g,16g,16g,16gを有し、第1摺接面16g,16g,16g,16gが対向する軸方向周壁2a1,2a1と摺接することで、スライダ6の軸方向への移動が案内される。また、係合部16f,16fは、ラック軸ハウジング2aの外周であって案内孔5の縁部のうち、前記軸方向に延びる縁部である一対の軸方向外縁2a2,2a2と僅かな間隙を介して対向しかつ軸方向外縁2a2,2a2と摺接し得る平面からなる一対の第2摺接面16h,16h,16h,16hを有し、第2摺接面16h,16h,16h,16hが対向する軸方向外縁2a2,2a2と摺接することで、スライダ6のラック軸ハウジング2aの径方向内方への移動が規制される。したがって、これら第1,第2摺接面16g,16g,16g,16g,16h,16h,16h,16hによりスライダ6の安定した軸方向の移動が確保される。
【0020】
一方、略T字形状のブラケット8の脚部8bに、一対のタイロッド11,11がボールジョイント10,10を介して揺動自在に結合されている。すなわち、図2に図示されるように、ブラケット8の脚部8bの前記軸方向の両側部には、ボールジョイント10,10の本体をなす一対の軸受体10a,10aが左右対称にそれぞれ螺着されていて、これらの軸受体10a,10aに設けられた軸受凹部10b,10bに、タイロッド11,11の各内方端に設けられた球体部10c,10cが離脱不能に収容されている。そして、各軸受体10a,10aの軸受凹部10b,10bと各球体部10c,10cとの結合部には、該結合部を覆うシールカバー10d,10dが装着されている。
【0021】
ブラケット8の両腕部8a,8aとガイドシュー16との間にダストブーツ7の中央部7aの前記平坦部7bが配置され、平坦部7bには、ガイドシュー16のブラケット8側の面から所定の突出高さHで突出した両カラー17,17の小径部の端部17c,17cがそれぞれ嵌合される一対の貫通孔19,19が設けられている。各貫通孔19,19には、ボルト9,9が挿通されるカラー17,17の小径部が嵌合されているため、ボルト9,9が貫通する孔ともなっている。
【0022】
また、平坦部7bは、ブラケット8の両腕部8a,8aが丁度嵌合される広さに形成された嵌合凹部20の底壁を構成している。そして、この嵌合凹部20は、図4に図示されるように、略長円形状に形成されており、したがってブラケット8の両腕部8a,8aのダストブーツ7側の輪郭形状も、嵌合凹部20のその形状と合致するものとなっていて、凹部に両腕部8a,8aが嵌合される。
【0023】
ダストブーツ7の各貫通孔19,19の周囲には、ガイドシュー16とブラケット8の両腕部8a,8aとの間で、各カラー17,17の小径部の突出した端部17c,17cを囲み、その先端がブラケット8の腕部8a,8aのダストブーツ7側の面に当接する、貫通孔19,19と略同心状の円環状の環状突壁21,21が形成されている。この環状突壁21,21は、カラー17,17の挿通孔18,18に挿通されるボルト9,9が、前記端部17c,17cにブラケット8の腕部8a,8aが当接するまで締め付けられることにより、設定された締め代Aの範囲で押し潰され、平坦部7bがガイドシュー16とブラケット8の腕部8a,8aとの間で挟着されて、スライダ6とブラケット8との間のシールがなされる。そのため、両環状突壁21,21は、ダストブーツ7のシール部を構成している。
【0024】
ところで、図6も併せて参照すると、ダストブーツ7の各環状突壁21,21には、ガイドシュー16に向かって開放すると共に、環状突壁21,21の径方向断面形状に略沿った径方向断面形状を有する円環状の環状凹部22,22が設けられている(各環状凹部22,22は、図4においては、環状突壁21,21と重なって示されている)。そして、図7に図示されるように、各環状突壁21,21の空間部としての環状凹部22,22により、ボルト9,9の締付けで環状突壁21,21が締め代Aで押し潰されて圧縮変形したとき、環状凹部22,22の容積が減少することで、環状突壁21,21の圧縮変形による変形が吸収されるため、ボルト9,9の締付け方向における環状突壁21,21の剛性が低下することになる。そのため、締め代Aによる環状突壁21,21の圧縮変形に基づいてガイドシュー16およびブラケット8の両腕部8a,8aに作用する押圧力が低減される。
【0025】
また、ブラケット8の両腕部8a,8aにおいて、ダストブーツ7の嵌合凹部20に嵌合している部分は、ラック軸3が左右方向に移動して、貫通孔19,19に嵌合している両カラー17,17を介してダストブーツ7に左右方向の力が伝達されたとき、移動方向とは反対方向のダストブーツ7からの反力を受ける部分として機能する。例えば、ラック軸3の右方移動により両カラー17,17を介してダストブーツ7に力が伝達されて、右側伸縮部7dが圧縮されたときに発生する圧縮反力は、嵌合凹部20の周壁の右側部分がブラケット8の右側の腕部8a,8aの右側壁に当接することにより、該右側壁で受け止められる。これにより、この圧縮反力が、貫通孔19,19の周縁にストレスを生じさせて、貫通孔19,19を変形させることがなく、スライダ6、ダストブーツ7およびブラケット8間の良好なシール性を長期に渡って保持できる。
【0026】
次に、前述のように構成された実施形態の作用効果について説明する。
ガイドシュー16とブラケット8の両腕部8a,8aとの間において、ダストブーツ7の平坦部7bに貫通孔19,19の周囲に略同心状に形成された環状突壁21,21により面圧が高められるため、ダストブーツ7とブラケット8との間の良好なシール性を確保できる。
【0027】
さらに、環状突壁21,21には、ガイドシュー16に向かって開放する環状凹部22,22が設けられているため、ボルト9,9が締付けられて、環状突壁21,21がガイドシュー16とブラケット8により圧縮変形されたとき、その変形は、環状凹部22,22の容積を減少させつつ、環状凹部22,22に吸収されるため、該圧縮変形に基づくガイドシュー16への押圧力が低減される。したがって、ラック軸ハウジング2aに設けられた案内孔5内に摺動自在に配置されたガイドシュー16が該押圧力により変形して、ガイドシュー16の案内部16e,16eおよび係合部16f,16fが、僅かな間隙を介してそれぞれ対向する案内孔5の軸方向周壁2a1,2a1および軸方向外縁2a2,2a2、すなわちラック軸ハウジング2aを押圧することを防止できる。
【0028】
その結果、環状突壁21,21により良好なシール性を確保したうえで、ガイドシュー16と案内孔5が設けられたラック軸ハウジング2aとの間の摺動抵抗の増大が抑制されて、ガイドシュー16、すなわちスライダ6は案内孔5内でスムーズに摺動することができ、したがって操舵輪の操作に基づくラック軸3、さらにはスライダ6を介してラック軸3と一体化されたブラケット8に結合されたタイロッド11,11の移動がスムーズに行われ、スムーズな転舵が可能となる。
【0029】
また、ボルト9,9が締め付けられたとき、ボルト9,9の締付け方向での環状突壁21,21の圧縮変形の程度である締め代Aは、ダストブーツ7の平坦面から突出したカラー17,17の小径部の突出高さHにより規制されるので、環状突壁21,21の過度の圧縮が防止され、その結果、圧縮変形により生じるガイドシュー16の変形で、ガイドシュー16がラック軸ハウジング2aを押圧することを確実に防止できる。
【0030】
以下、前述した実施形態の一部の構成を変更した実施形態について、変更した構成に関して説明する。
前記実施形態では、両空間部は円環状の環状凹部22,22から構成されていたが、シール性を損なわない範囲で、両空間部は、少なくとも、貫通孔19,19の内壁面19a,19aに接すると共に軸線Lに略平行な一対の仮想平面P,Pに対して、軸線Lが位置する内側領域D1とは反対側の外側領域D2,D2(図4参照)に属する環状突壁21,21の部分に設けられていればよく、環状突壁21,21の周方向における空間部の形成範囲は、環状突壁21,21の圧縮変形によるガイドシュー16の変形により、ガイドシュー16がラック軸ハウジング2aを押圧しない範囲で適宜決定される。ここで、「略平行」とは、軸線Lに平行である場合を含むと共に、環状突壁21,21の圧縮変形で生じるガイドシュー16の変形により、ガイドシュー16がラック軸ハウジング2aを押圧しないような空間部を形成し得る外側領域D2,D2を規定する仮想平面P,Pであれば、厳密に平行である必要はないことを意味する。
【0031】
すなわち、図4に図示されるように、ガイドシュー16の案内部16e,16eの第1摺接面16g,16g,16g,16gおよび係合部16f,16fの第2摺接面16h,16h,16h,16hは、これら仮想平面P,Pに対して外側領域D2,D2に位置していて、前記軸方向に移動するガイドシュー16は、これら外側領域D2,D2に属する部分で、案内孔5の軸方向周壁2a1,2a1および軸方向外縁2a2,2a2、すなわちラック軸ハウジング2aと摺接する。そのため、環状突壁21,21の圧縮変形により生じる押圧力によりガイドシュー16が変形した場合に、ガイドシュー16が軸方向周壁2a1,2a1および軸方向外縁2a2,2a2を押圧するのは外側領域D2,D2においてである。
【0032】
それゆえ、両外側領域D2,D2に属する環状突壁21,21の部分に、空間部としての、例えばガイドシュー16に向かって開放すると共に、環状突壁21,21の径方向断面形状に略沿った径方向断面形状を有する弧状の凹部に設けることによっても、前記実施形態と同様の作用効果を奏するうえに、貫通孔19,19の周囲のダストブーツ7においては、環状突壁21,21の前記軸方向の部分には凹部が設けられていないため、その部分の剛性が高くなり、両伸縮部7c,7dの前記圧縮反力等による貫通孔19,19の変形が一層抑制される。
【0033】
前記実施形態では、空間部は、連続した環状凹部22,22であったが、周方向に適宜間隔をおいて環状に配置された凹部とすることもでき、またその径方向断面形状も任意である。さらに、単一のブラケット8に一対のタイロッド11,11のそれぞれの一端部が結合されたが、2つのブラケットに、一対のタイロッドの一端部がそれぞれ結合されたものであってもよい。
【0034】
前記実施形態では、スライダ6は、別部材であるガイドシュー16とカラー17,17とから構成されていたが、ガイドシューとカラーとを一体成形して形成することもできる。ガイドシュー16は合成樹脂から形成されていたが、金属から形成されるものであってもよく、その際、摺動抵抗を低減するために低摩擦係数を有する材料をガイドシューの表面に形成するような表面処理を施してもよい。
【0035】
前記実施形態では、車両用ステアリング装置は、油圧式パワーステアリング装置1であったが、電動式のものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本出願発明の車両用ステアリング装置の実施形態である自動車用のセンターテイクオフ型油圧式パワーステアリング装置の概略全体図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】スライダの図2のIII矢視図である。
【図4】ブラケットおよびボルトを外したときの図2のIV矢視図である。
【図5】ボールジョイントを外したときの図2のV−V線断面図である。
【図6】ダストブーツの環状突壁近傍を示す断面図であり、ボルトの締付け前の状態を示す図である。
【図7】図5の要部拡大図に相当し、図6と同様の断面図であって、ボルト締付け後の状態を示す図である。
【図8】従来技術のダストブーツの環状突壁近傍を示す断面図であり、ボルトの締付け前の状態を示す図である。
【図9】図8と同様の断面図であり、ボルトの締付け後の状態を示す図である。
【符号の説明】
1…油圧式パワーステアリング装置、2…ギヤボックスハウジング、2a…ラック軸ハウジング、2b…ピニオンハウジング、3…ラック軸、4…入力軸、5…案内孔、6…スライダ、7…ダストブーツ、8…ブラケット、9…ボルト、10…ボールジョイント、11…タイロッド、12…パワーシリンダ、13…ピストン、14…油室、15…油管、16…ガイドシュー、17…カラー、18…挿通孔、19…貫通孔、19a…内壁面、20…嵌合凹部、21…環状突壁、22…環状凹部、
A…締め代、D1…内側領域、D2…外側領域、H…突出高さ、L…軸線、P…仮想平面。
Claims (1)
- ハウジング内に収容されると共に、操舵輪に連動連結されて軸方向に移動自在とされたラック軸と、一対のタイロッドのそれぞれの一端部が結合されたブラケットと、前記ハウジングに前記軸方向に設けられた案内孔と、該案内孔内に配置されて前記軸方向に摺動自在なスライダと、該スライダに設けられた挿通孔に挿通されて前記ラック軸と前記ブラケットとを結合する締結具と、該締結具が貫通する貫通孔の周囲に形成されて前記スライダと前記ブラケットとの間に位置する環状突壁を有すると共に前記案内孔を覆うダストブーツとを備え、前記締結具の締付けにより該スライダと該ブラケットとで該環状突壁が圧縮変形されて該ダストブーツと該ブラケットとの間がシールされる車両用ステアリング装置において、
少なくとも、前記貫通孔の内壁面に接すると共に前記ラック軸の軸線に略平行な一対の仮想平面に対して該軸線が位置する内側領域とは反対側の外側領域に属する前記環状突壁の部分には、該環状突壁の前記圧縮変形により容積が減少する空間部が設けられていることを特徴とする車両用ステアリング装置。
Priority Applications (1)
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