JP4296921B2 - 発光素子 - Google Patents

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Description

本発明は発光素子、特に光励起発光を呈する有機化合物とそれを光励起し発光させるための無機化合物半導体を発光素子とする励起光源層とを備えた発光素子に関する。
多々ある発光現象の中で、有機化合物の呈する蛍光、燐光の現象は、有機化合物個々の分子構造を反映した発光色、色調を示す点で発光材料としての多色化の可能性を持っている。これらの発光の機構は、光による電子の発光電子準位への励起と、発光としてエネルギーを緩和させる過程から成る現象として知られている。この電子準位への励起が、電気的エネルギーによって起こり発光緩和過程を伴う場合、この現象は、エレクトロルミネッセンス現象の範疇に入る。中でも、有機化合物の発光の場合、いわゆる有機エレクトロルミネッセンスとして知られている。有機エレクトロルミネッセンスは、古くはアントラセン結晶等で観測されていたが、1980年半ば以降、薄膜形成した発光活性、特に蛍光を有する有機化合物を用いて観測され、薄膜型の有機エレクトロルミネッセント素子として発光素子への応用の研究、開発が行われてきた。
有機エレクトロルミネッセント素子では、上述の発光機構のうち、電気的エネルギーによって発光活性な有機化合物に外部より電荷を注入し、発光許容な励起状態を形成することで発光を得ている。従って、当該素子の応用では、本発光機構に基づき、より発光の効率を向上させる工夫、試みがためされ、その方策が模索されてきた。即ち、発光活性な有機化合物層で発光許容な電子と正孔の再結合を行わしめる方法であって、素子構造の通例としては、発光層が電子を注入する電子注入層と正孔を注入する正孔注入層との2層に挟まれた構造か、または、注入層のどちらか一方と接合した形態となっている。この形態は、発光層の持つ電荷移動性、注入層界面に於けるエネルギー障壁の大きさにより決まり、発光層、注入層の種類により最適な形態も異なる。この様な電荷の注入層と発光層とを、ITO(インジウム・錫酸化物)を代表とする透明電極を被着させた透明な基板と仕事関数の低い金属からなる電極との間に形成し、電荷注入することで発光を得ることが通例となっている。この様な、素子の一例を図5に示す。図では、ガラス等の基板(101)の表面上に被着させた透明電極(117)上に正孔注入層(111)と発光活性な有機化合物層(104)、電子注入層(110)及び、電極(107)とが順次積層された構成の素子を示している。
有機エレクトロルミネッセント素子の場合、発光素子の多色化は比較的容易である。即ち、発光色は発光活性な有機化合物を替えることで容易に選択出来、また、合成手法により新たに作り出すことが可能である。これは、発光層に有機化合物を用いた当該素子の優位点の一つである。また、発光活性な有機化合物を複数適宜混合することで、白色発光を呈する有機エレクトロルミネッセント素子も最近報告されており(例えば、非特許文献1参照。)、発光色の制御、多色化の優位性を示している。上記の様にして形成した素子の典型的な性能は数ボルトで発光輝度数百〜数千Cd/m程度の発光を呈する。しかし、その寿命は長いものでも数千時間程度であり、長寿命化、安定性が特に課題である。
一方、無機化合物材料からなる発光素子の代表的な例に発光ダイオード(LED)があり、表示装置や光通信機器等に用いられている。発光波長によってLEDには種々の化合物半導体材料が使用される。例えば、可視赤色LEDにはAlGaAsが、可視緑色LEDにはGaPなど、Al、Ga等の元素周期律表の第III族元素と第V族元素としてPやAsを組合わせた化合物半導体材料が用いられている。また、最近では高輝度の青色LED材料としてIII−V族化合物半導体の一種であるGaNやAlGaN、GaInN等の混晶も利用されている(例えば、非特許文献2または非特許文献3参照。)。
これらの無機LEDにおいても光の3原色の発光が可能となればLEDを発光素子から表示素子へと応用することによって更に大きな応用範囲が広がるという点で、赤色、緑色、青色発光は重要であり、特に、短波長の緑色、青色LEDが期待されている。一例として、GaNの混晶であるGaInNを発光層とした青色LEDの従来構造の模式図を図6に示す(例えば、非特許文献4および非特許文献5参照。)。基板(101)としては透明なサファイア単結晶が使われている(例えば、非特許文献6参照。)。基板直上には緩衝層(102)としてGaNが設けられている。緩衝層はAlNから構成される例もある(例えば、非特許文献7、非特許文献8、非特許文献9参照。)。GaN緩衝層(102)の上にはAlGaNからなる下部クラッド層(103)が設けられる。下部クラッド層(103)の上にはGaInNからなる発光層(104)が設けられている。発光層材料としてはこの他、AluInvGawN(u+v+w=1、u≠0、u>0)が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
図6に示す様に青色発光を呈する可視LEDには、発光層材料に2元化合物ではなく、わざわざ3元素からなるGaNの混晶の一例であるGaxIn1-xN(xは組成比を表し、0<x<1である。)を利用している。GaNではなく混晶化されたGaxIn1-xNを利用するのはInを混在させることにより、禁止帯幅を縮小させるためである。禁止帯幅(Eg、単位:eV)と発光波長(λ、単位:nm)とは(式1)の関係にある。
λ=1.24×103/Eg・・・・(式1)
GaNの室温での禁止帯幅は3.4eVである(例えば、非特許文献10参照。)。従って、(式1)に依ればλは約365nmとなる。よって、GaNは紫外線を発光するLEDの発光層材料とはなるが可視LED用途の発光層材料にはならない。GaNにInを加えたGaxIn1-xNでは、(x)の如何に依って禁止帯幅をGaNの3.4eVからInNの1.9eV(例えば、非特許文献11参照。)の間で変化させる事ができる。例えば、波長が460nmの青色発光を得るには、(式1)によりEgを約2.7eVとする必要がある。GaxIn1-xNのEgの(x)依存性(例えば、非特許文献12参照。)から、(x)は約0.3とする必要がある。即ち、460nmの青色発光を得るにはGa0.7In0.3Nの組成の層を発光層とする必要がある。
しかし、実際には(x)を小さくする、即ちInの組成比を高くするのは結晶成長の技術上、困難を伴っている。実用上は結晶性が悪化するためInの組成比を0.2〜0.3を越えて高めるのは困難となっている。また、禁止帯幅を変化させるという意味に於いては、従来では、GaxIn1-xN層の(x)を実用上0.8程度に抑制して上で亜鉛(元素記号:Zn)等の不純物をGaxIn1-xN混晶層に添加し、Znが形成する不純物準位を利用して見掛け上、禁止帯幅を縮小する操作が行われている。Znを添加した場合、禁止帯幅は約0.5eV縮小するとされる(例えば、非特許文献13参照。)。
不純物によって半導体の価電子帯−伝導帯間に形成される準位は一般に唯一ではない。よって、Znの様な不純物を添加した発光層からは種々の不純物の準位に対応した波長の発光が混在する。波長の異なる発光が混在すると、結果として発光スペクトルは幅広くなる。実際、Znを添加したGaInNには主発光に隣接した副次的な発光が観測されている(中村 修二、『InGaN高輝度青色発光ダイオード』(日本学術振興会光電相互変換第125委員会第148回研究会(平成6年5月27日)資料))。GaNにZnを添加した場合にも、Znの添加量の増大に伴いLEDの発光スペクトルが拡大されることが報告されている(T.Kawabata他、J.Appl.Phys.,56(8)(1984)、2367)。従って、不純物準位を利用して発光波長を長波長化させる従来の方法は、発光スペクトルの半値幅が狭い単色化された発光を得るには難があった。
光の3原色の一つに青色よりも長波長である緑色がある。(式1)に依れば、より長波長の発光を得るにはEgを更に低下させる必要がある。GaxIn1-xN層を発光層材料として採用する場合には、更にInの組成比を上昇させなければならない。例えば波長が550nmの緑色発光を得るには、Egを2.25eVとする必要がある。Egを2.25eVとするにはInの組成比を約0.6に高めなければならない(S.SAKAI他、Jpn.J.Appl.Phys.、32(1993)、4413.参照)。前述の如く、結晶性を損なわずにInの組成比を高めるのは容易ではない。Znを発光不純物として添加し、0.5eV程度の禁止帯幅の縮小を意図するにしても(x)を約0.6、即ちIn組成比を約0.4とする必要があった。この組成比はGaxIn1-xNの結晶性を損なわない実用的なIn組成比の上限である0.2〜0.3を越えている。
「応用物理」第63巻第10号(1994)、1026頁 中村 修二、「電子情報通信学会誌」第76巻第9号(1993)、913頁 真部 勝英、「豊田合成技報」、第35巻第4号(1993)、68頁 NIKKEI MATERIALS&TECHNOLOGY94.4(no.140)、48頁 NIKKEIELECTRONICS1994.1.3(no.598)、59頁 H.M.Manasevit他、J.Electrochem.Soc.,118(1971)、1864 Yasuo KOIDE他、Jpn.J.Appl.Phys.,27(7)(1988)、p.p.1156−1161 H.Amano他、Thin Solid Films、163(1988)、415 小出 康夫他、「日本結晶成長学会誌」、第13巻第4号(1986)、8頁 特公平6−14564号公報 赤崎 勇編著、「III−V族化合物半導体」(1994年5月20日培風館発行)、150頁 K.Kubota他、J.Appl.Phys.、66(1989)、2984 S.SAKAI他、Jpn.J.Appl.Phys.、32(1993)、4413. 中村 修二、「日本学術振興会光電相互変換第125委員会第148回研究会資料(平成6年5月27日)
無機化合物からなる発光層材料を含み、無機化合物から構成さたLEDは、有機色素化合物からなる或いはそれを含む層を発光層として備えた発光素子に比べれば一般には、高輝度であるのが特長となっている。しかし、青色や緑色の発光を呈する短波長の可視LEDを得るに例えば、発光層にGaxIn1-xNを採用する場合にあっては、上述の様に良質の混晶層を得るに成長技術上の難しさを伴っており、Znを発光不純物として添加しても発光スペクトルが広がり、先鋭な単色化したスペクトルでなくなるという課題があった。
一方、従来のGaxIn1-xNの様な混晶化された発光層ではなく、より成長が容易なGaN等の2元素からなる無機化合物半導体材料を利用すれば比較的簡便にLEDを得ることもできる。しかしながら、GaNを発光層とした場合はGaNのEgが3.4eVであるため紫外光を発光し、可視光は発しない。
他方、従来の有機化合物を利用した有機エレクトロルミネッセント素子の発光層からの発光は、有機化合物の選択性故に多色化が可能であるが、その発光自体は、電気エネルギーの注入によってもたらされている。このため、電気エネルギーが発光層や注入層といった有機化合物層中において熱エネルギーに変換され、熱による有機化合物層の劣化、即ち、熱エネルギーによる電子状態の変化によって発光許容が損なわれるという問題があり、注入されたエネルギーを有効に光のエネルギーに変換して高輝度発光を得、長寿命化を図るという高効率化が課題である。
有機化合物は光エネルギーの注入に依っても発色を呈する。蛍光や燐光はその例であることは前に述べた。この場合、一般に発光波長に相当するエネルギーよりも大きなエネルギーで光エネルギーを注入する。即ち、可視光領域の発光を得るためには、それよりも大きなエネルギーの光、例えば、短波長の可視光や紫外光を適宜用いれば良い。尚、光の波長(λ)とそのエネルギーの大きさ(E)とは、プランク定数をh、光速度Cを用いると(式2)で表される関係にある。
E=h・C/λ・・・・(式2)
従って、光励起により発光する有機化合物の発光源として無機化合物半導体からなる発光素子を利用することができる。例えば、上述のGaNからなる励起光源層から発せられる紫外線を有機色素化合物を光励起するための光源として利用し、有機化合物の発光を得ることも可能である。
この様な構成からなる発光素子では、発光層にはわざわざGaxIn1-xNの様な混晶を敢えて必要とせず、よって長波長化を意図したInの組成比を上昇させる必要性もなくなる。GaNからの紫外域の発光は、有機化合物を光励起するには都合が良く、従って、GaxIn1-xNよりもGaNの様な禁止帯幅(Eg)のより大きな材料から発光層を構成するのが良い。しかし、この様な光励起光を供給する例えば、無機化合物からなる励起光源層と有機化合物からなる発光層との双方を備えた発光素子は知られていない。
また、有機化合物からなる或いはそれを含む樹脂等を励起光源を発する例えば、無機化合物からなる励起光源層の周辺に配置することによっても、発光は得られる。しかし、この様な有機化合物を励起光源層の周辺に配置した簡易な構成からなる発光素子は知られていない。
本発明者は上記の課題を解決すべく努力した結果、本発明に到達した。即ち、本発明は光励起発光を呈する有機化合物からなる若しくは光励起発光を呈する有機化合物を含んでなる発光層と該有機化合物を光励起により発光させるための無機化合物半導体を発光素子とする励起光源層とを備えてなる発光素子である。また光励起発光を呈する有機化合物からなる若しくは光励起発光を呈する有機化合物を含んでなる化合物と、該有機化合物を光励起により発光させるための励起光源層とを備え、該励起光源層を前記有機化合物若しくはそれを含む化合物で囲繞し、封止してなる発光素子である。これらの発光素子に於いて有機化合物を光励起により発光させるための励起光源層は、中心が400nm以下である波長の発光をもたらす材料から構成することができる。中心が400nm以下である波長の発光をもたらす励起光源層は例えばAlN、GaN若しくはそれらとInNとの混晶から構成するものである。更に、有機化合物は中心が400nm以下である波長の光によって光励起発光現象を呈する有機化合物とすることができる。
本発明の有機化合物からなる層若しくは有機化合物を含む層(以下、有機化合物層と称す。)と該有機化合物層を光励起し発光を得るための励起光を発する励起光源層とを備えてなる発光素子は、単純には基板上に設けられた例えば、GaNなどのpn接合からなる励起光源層の上方に有機化合物層を設ければ形成できる。また、基板とする材料が光学的に透明或いは透光性であれば、励起光源層の下方に位置する例えば基板の裏面側に設けても良い。基板材料が絶縁性で、これにより基板の一面に電極を形成するのが不可能な場合は、基板の表面側に設ける積層構造の中間に有機化合物層を挿入することもできる。また、絶縁性基板の上に設ける緩衝層が高抵抗層であれば、緩衝層の上に有機化合物層を設けることもできる。また、励起光源発生層を含む積層構造の側面の一部或いは全面を有機化合物層で被覆しても良い。これらの例をもとに構成すれば本発明のいう有機化合物層と有機化合物を光励起し発光させるための励起光源層とを備えた発光素子が形成される。
有機化合物層の導電性や伝導性には特に制限はない。有機化合物層が高抵抗層であれば、例えば電極を載置する無機化合物層の電極が形成される領域以外の領域を被覆する様に設ければ良い。また、導電性を有する有機化合物層であれば、当該有機化合物層そのものを電極とするか、金属電極と有機化合物とが接触する部分を光を透過する性質を有する絶縁材料で被覆すれば良い。また、励起光源層を含む積層構造の導電性であることが要求される層間、例えばクラッド層とコンタクト層の中間に挿入しても差し支えない。要は、有機化合物層を励起光源層からの発光を得るための動作駆動電流の流通を阻害せず、且つ励起光源層から放出される有機化合物を励起するための励起光を広範囲に亘り受光出来る様に配置する。
有機化合物層と励起光源層とを備えてなる発光素子の断面及び平面模式図の一例を図1及び図2に各々示す。この構造例では、基板(101)に透光性の窒化アルミニウム(AlN)を用いている。基板材料はAlNに限定されないが、基板材料の裏面側に有機化合物層を設ける場合には、励起光源層から発せられる波長の光を吸収しない、即ち励起光源層を構成している材料よりも大きなEgを有する材料から構成するのが好ましい。基板の裏面側に配置する有機化合物層を励起するための励起光の強度を減じないためである。基板の裏面側とは、励起光源層を備えた積層構造を堆積する、基板の表面とは反対側の基板の面のことをいう。基板の裏面側をも有機化合物層で被覆する場合、材料のEgの観点から励起光源層と基板材料との好ましい組合せの一例としては、励起光源層をGaNから構成し、基板をよりEgの大きい石英ガラス材料やAlNとする例がある。
図1に示す如く、AlN基板(101)上には下部クラッド層としてp形の伝導を呈するAlyGa1-yN(yは組成比を表し、ここでは、0<y≦1である。)を下部クラッド層(103)として堆積してある。下部クラッド層(103)上にはp形のGaNからなる励起光源層(104)が設けられている。励起光源層(104)上には、n形のAlyGa1-yNからなる上部クラッド層(105)が在る。上下のクラッド層共にAlyGa1-yNから構成する必要はない。但し、上下のクラッド層((103)及び(105))は励起光源層(104)への電子や正孔を効率良く閉じ込めるために、即ち『発光の閉じ込め』を効率良く行うために設けるものであるため、励起光源層を構成する材料よりもEgの大きな材料から構成する必要がある。例えば、Alの組成比を0.2とするAl0.2Ga0.8Nを励起光源層とする場合、クラッド層をAlの組成比をより高めた例えば、Al0.4Ga0.6Nとするのがこの例に当たる。AlyGa1-yN混晶に於いては、Alの組成比を増加させることにより、Egを高められるからである(S.SAKAI他、Jpn.J.Appl.Phys.、32(1993)、4413.参照)。励起光源層/クラッド層の好ましい材料の組合せの例にはこの他、Ga0.85In0.15N/GaNやGaN/AlN等がある。励起光源層とクラッド層材料との組合せについて望ましくは、双方の材料をヘテロ接合させた際に室温での熱電子エネルギー(約0.026eV)の10倍程度の伝導帯間のバンド不連続性が得られる組合せが良い。また上、下クラッド層については同一の材料で構成する必要もない。
上部クラッド層(105)の中央部の上には、平面形状が円形の電極(107)が設けられている。他方の電極(108)は下部クラッド層(103)上に設けてある。下部クラッド層(103)上の電極(108)は、図2に示す様に平面的に見て上部クラッド層(105)の周囲に、電極(107)に対し同心円状に設けてある。電極の形状や配置は図1及び図2に例示した構成に限定されるものではない。
上記の様な無機化合物からなる積層構造の構成層は、有機金属熱分解気相成長方法(MOCVD法とかMOVPE法或いはOMVPE法などと称される。)、気相成長方法(VPE法)や分子線エピタキシャル法(MBE法)等の気相成長方法を利用すれば形成できる。例えばMOCVD法は、層を成長させるための気相成長反応を行う際の圧力に依って、常圧(大気圧)方式と減圧方式とに大まかに区別されるが、上記の様な構成層は方式を問わず得られる。また、MBE法にも使用する原料の種類や形態によってガスソースMBE(GS−MBE)や有機金属MBE(MO−MBE)法があるが、いずれの方式も利用できる。また、化学ビーム成長法(CBE法)も利用できる。
上部クラッド層(105)上の電極(107)の周囲は、有機化合物層(106)で被覆してある。この様な構成により無機化合物と有機化合物とからなる発光素子を構成できる。電極(107)上は結線のために有機化合物層(106)で被覆していない。有機化合物層(106)の表面は平坦でも良く、同層(106)からの発光を散乱させるためにその表面を凹凸状としても差し支えない。
励起光源により光励起さあれる発光活性有機化合物層は当該化合物そのもの、もしくは、該化合物を含有する組成物で形成される。発光活性有機化合物層中の当該化合物の含有量は、当該化合物の発光が得られる濃度であれば基本的には良く、0.0001〜100モル%の範囲で設定することができる。前者の光励起発光活性有機化合物そのものにより当該層を形成する場合には、化合物の蒸着やラングミュア−ブロジェット膜作製法によって形成できる他、該化合物を溶媒に溶解し利用することができる。特に、この溶媒への溶解は、可溶性の重合体の場合には有効である。また、組成物を用いて形成する場合、当該化合物を、該化合物の光励起発光による発光が吸収されない物質中に分散させる方法が簡便である。その方法としては、該化合物を可視光領域で光透過性を有する高分子重合体中に物理的に分散させた材料は工程上簡便で有用である。この高分子重合体には、ポリメタクリル酸メチルエステルやポリカーボネート、ポリスチレン等を挙げることができる。更に、この方法の分散方法としては、発光活性有機化合物と高分子重合体とを共通に溶解する溶媒に溶解するか、互いに相溶する溶媒に溶解し、この溶液同士を混合した溶液を当該化合物層の形成に利用できる。上記で、溶媒に溶解し溶液より当該層を形成する場合、塗布法が利用できる。当該溶液を当該層を備えた発光素子を設けようとする面に吹き付けるスプレー法、また、当該面を例えば、面に垂直な回転軸周りに回転させ溶液を滴下し塗布するスピンコート法、更に、当該面上にスクリーン印刷技術等を用いて層を形成し、然る後に固化することで容易に形成できる。この様な溶液の塗布は比較的簡単に大面積に亘り当該化合物を含む被膜層を形成できるため工程が簡略化され有用である。また、有機化合物層の積層方法は、発光活性有機化合物、若しくは当該化合物を含有する組成物を励起光源を備えた発光素子を設けようとする面に直接形成し当該層を積層する方法や、当該層を自立膜化させ発光素子を設けようとする面に接合、貼付する方法等で良く、また、これらを組合せて積層形成しても良い。
有機化合物層は1種類の発色を示す有機化合物から構成する必要もない。例えば、赤色と緑色の発色を示す有機化合物を混在させて含ませても良い。赤と緑色の発色を示す有機化合物を同一層内に混在させておけば、双方の発光が混合し、結果として橙色の発光素子を得ることもできる。或いは、被覆する領域を区分し、領域毎に異なる発光を呈する有機化合物層を設けても構わない。この様に図れば単一の光励起源のみからなる多色の発光素子を簡単に得ることができる。例えば、赤、緑及び青色の3原色を各々、発光する有機化合物層と単一の光励起源となるGaN励起光源層とを組合せて利用すれば白色の発光素子も得られる。励起光源層と有機化合物層とを組合せる利点の一つがここにある。
異なる発色を呈する有機化合物層を混在させるに際し、得られる発色の強度が有機化合物層毎に相対的に異なる場合にあっては、例えば相対的に発色強度が弱い有機化合物層の占有する面積を広くし、逆に相対的に発色強度が強い有機化合物層の占める領域を縮小する様に配置する。この様に図れば発する色の差異に依る元来の発光強度差に依存せずに強度的にほぼ同一な発光を混合できる。発光を呈する有機化合物層の面積を適宣、調整するのみでほぼ同一の強度を有する発色を混合させた光の調和性に優れる多色発光素子が得られのもまた利点である。
積層構造のある位置或いは基板材料に直接、有機化合物を被着せずに、励起光源層を含む発光素子を有機化合物を含む有機化合物等で封止しても新たな構成の発光素子とすることができる。
例えば、LEDの封止材料として従来から使用されている一般的なエポキシ樹脂などに有機化合物を含有させる。これにより、GaN等の紫外線発光材料からなる有機化合物を光励起するための励起光源層を備えたLEDを封止する。LEDから発せられる紫外光により例えばエポキシ樹脂内の有機化合物はその化合物に独特の発色を呈する。これにより、励起源は可視光でなくとも有機化合物を含む封止樹脂で封止する簡便な方法にて可視光を発する発光素子となすことができる。即ち、元来、紫外光を発する材料である2元化合物材料をより長波長側の発光を得るために結晶成長に困難さを伴う多元混晶とする必要もなく、また、Zn等の不純物の添加による長波長化に伴う発光スペクトルの半値幅の増大も招かずに可視光を発する発光素子を得ることができる。
有機化合物は封止用樹脂に均一に分散させても良い。また、励起光源層からの発光が集中して一部の領域に投射される工夫が施されている場合には、その一部領域に対応する封止用樹脂の領域に集中的に有機化合物を含有させても良い。封止用樹脂に混合させる有機化合物は1種類に限定されず、異なる発色を呈する多種の有機化合物を含有させるのも一つの応用として考えられる。この様な構成に於いても、例えば、GaN励起光源層から発せられる紫外光が封止材料内の有機化合物を光励起し、可視光が発光される。即ち、従来の如く可視光を得るためにわざわざ結晶を成長させるのが難しい混晶を利用する必要が無くなる。
本発明に係わる有機化合物を含む物質で励起光源層を備えた発光素子を封止するには、従来の封止技術が利用できる。単に従来の封止材料を本発明に係わる有機化合物を含む封止材料に変更するのみで封止ができる。例えば、所望の外形を与える金型等に流し込まれ、加熱され融解された本発明に係わる有機化合物を含む封止用エポキシ樹脂等に励起光源層を備えた発光素子を含浸し、然る後、当該封止用材料を冷却し固化させれば発光素子を封止する事ができる。発光素子を適当な型の内部に載置し、この型の中に有機化合物を含む封止用樹脂を滴下し固化しても発光素子を封止できる。
本発明は無機化合物からなる積層構造を励起用光として有機化合物を光励起して発光素子を得る訳であるが、この目的のためには光励起エネルギーが発光のエネルギーよりも高い方が好ましい。光エネルギーは(式2)により波長と関連付けられ、短波長になる程、光エネルギーは大きくなる。本発明では、有機化合物を効率良く励起するために、望ましい例としては、励起光源層の発光波長を規定する。具体的には励起光源層からの発光は中心波長を400nm以下とする。換言すれば、中心波長を400nm以下とする発光を与える材料から励起光源層を構成する。中心波長とは、或る波長の幅を持った発光の中で最大の発光強度をもたらす波長を指す。
中心波長を400nm以下とするのは、(式2)により短波長の光である程、エネルギーが高いからである。特に波長が400nm以下の紫外線光は、光励起発光性を呈する有機化合物を光励起し、可視光領域の発光をもたらすに充分な励起エネルギーを有しているからである。
この中心波長の要件を満たす材料には例えば、GaN等のIII−V族化合物半導体がある。(式1)により算出されるGaNの発光波長は365nmである。GaNの他にはAlN(発光波長=207nm)やAl組成比に依って207nmから360nmに至る紫外線発光が得られるAlzGa1-zN(zは組成比を表し、≦z≦1である。)が適する。また、Egが3.1eV以上となるGaxIn1-xN混晶も適する。
本発明に係る光励起発光活性有機化合物としては、有機分子の単量体、重合体、会合体等何れでも良く、基本的には光励起発光を呈する有機化合物であれば良い。ここで言う光励起発光とは、光照射により発光を呈する現象であり、例えば、蛍光、燐光といった現象は当然含まれる。その具体的な例としては、単量体では、アントラセン、ペリレン等の縮合六員環やパラ−オリゴフェニレン誘導体、オキサゾール誘導体、オキソジアゾール誘導体、スチルベン誘導体、クマリン誘導体、ローダミン系色素に代表されるキサニセン系色素、オキサジン系色素等を挙げることができる。また、重合体としては、主鎖が発光活性なものと側鎖が発光活性であるもの等に大別できるが、基本的には重合体の一部、若しくは、全体として発光活性を持つものと考えれば良い。前者の例としては、ポリパラフェニレン誘導体やポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリナフトビニレン誘導体に代表されるアリーレンビニレン誘導体、ポリ(3−アルキルチオフェン)等に代表されるポリチオフェン誘導体、ポリフルオレン誘導体等を挙げることができる。また、ポリメタクリル酸メチルやポリカーボネート、ポリスチレン等の高分子重合体の側鎖に上記の発光活性有機化合物の単量体を化学的に結合させた重合体が後者の例となる。更には、架橋体の一部が光励起発光活性であるものも、この重合体に含まれる。また、例えば、8−キノリノール誘導体が金属イオンに会合し形成した錯体やアゾメチン錯体等の金属錯体、シアニン系色素の会合体(J−会合体)等もここで云う化合物である。
これらの光励起発光活性有機化合物を用いれば、例えば、ローダミンBからは波長が630nm近傍の赤色発光、クマリン153からは波長が535nm近傍の、ポリパラフェニレンビニレンからは波長が510nm近傍のそれぞれ緑色発光、クマリン1からは波長が430nm近傍の、クマリン120では波長450nm近傍の青色発光を呈する。有機化合物からの発光は、一般には有機化合物の発光波長よりも短い波長の励起光を照射すれば得られる。従って、少なくとも光の3原色を得るには励起光の波長は400nmとすれば充分である。
上記に例示した有機化合物からなる層或いはそれらを含む化合物からなる発光層には、発光活性な有機化合物からの発光を促進する発光の増感作用を持つ物質を添加させても良い。この場合、具体的な添加物質とその添加量は発光活性な有機化合物の発光の増感が保たれる様に選択すれば良い。
発光層には、発光活性な有機化合物の発光特性の劣化を防止、低減する化合物を添加しても良い。この場合、具体的な添加物質と添加量は発光活性な有機化合物の発光が阻害される事の無い範囲で選択できる。
発光層を構成する有機化合物の光劣化を防止できる或いは低減できる物質を含有し、励起光である紫外光を減光し且つ発光層からの発光を透過する性質を有する発光層の光劣化を防止するための光劣化防止層を例えば、発光層と励起光源層との中間に設けることも有用である。この場合、光劣化防止層としては、光透過性の高分子材料、例えばポリメタクリル酸メチルエステルやポリカーボネート等の中に紫外線の吸収剤として例えば、サリチル酸誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体やシアノアクリレート誘導体等や更には発光特性を安定化させるための例えば、ヒンダードアミン系等からなる単一或いは複数種の光安定剤を分散させて形成した有機組成物を挙げることができる。
更に、本発明に係わる発光素子の外部からの紫外光が発光素子に入射することによる有機化合物層の光劣化を防止する場合には、上記の光劣化防止層を発光層からの発光を取り出す方向に形成すれば良い。発光層からの発光を取り出す方向にある例えば、封止外層を通過して逆に外部から光が侵入する確率が高いからである。例えば、発光層からの発光を上部に取り出す素子にあっては、発光層の上部に設けるのが良い。発光を取り出す方向に設出られた光劣化防止層は、発光素子の励起光源層からの励起光が発光層から発光された可視光と同時に出射されることを防止し低減する効果も合わせ持つ。
酸化珪素等に代表される光透過性を有する無機物からなる光透過性無機物層を有機化合物発光層に被着させても、発光素子の特性の劣化を防止するに効果がある。この様な光透過性無機物層は例えば、水とか酸素等が有機化合物発光層の表面に直接、吸着するのを防止できるため、素子の寿命特性などの特性を向上させる。
励起光源から発光せられる光を有機化合物層或いは有機化合物を含む封止用樹脂に入射させることにより、光励起により有機化合物を発光させる。この有機化合物から発光される光の波長は励起光源層から発せられる光の波長よりも長いものとなる。
(実施例1)本発明を実施例を基に詳細に説明する。図3は本発明に係わる発光素子の断面模式図である。無機化合物からなる積層構造を形成するための基板(101)には硫黄(元素記号:S)が添加されたn形GaP単結晶を用いた。基板(101)の面方位は<111>±2゜とした。基板(101)の形状は直径約50mmの円形で厚さは約200μmであった。
基板(101)の表面(101−1)上に0.2μmの膜厚のn形のAlN層を下部クラッド層(103)として堆積した。下部クラッド層(103)のキャリア濃度は約1×1018cm-3とした。下部クラッド層(103)上にはp形のGaNからなる励起光源層(104)を設けた。励起光源層(104)のキャリア濃度は約9×1016cm-3とし、膜厚は約0.1μmとした。励起光源層(104)上には、p形のAl0.2Ga0.8N層を上部クラッド層(105)として堆積した。同層(105)の膜厚は0.2μmとし、キャリア濃度は2×1018cm-3とした。積層構造の各構成層((102)から(105))は、常圧のMOCVD法により成長させた。成長温度は構成層に依らず750℃とした。
上部クラッド層(105)上に、青色の発光を呈する有機化合物であるクマリン1と可視光領域で光透過性な高分子重合体、ポリメチルメタクリル酸メチルエステルとを溶媒クロロホルムに重量比1:5:125となるように溶解し、この溶液を室温に於いて市販のマイクロディスペンサーを利用して定量、滴下しスピンコート法により塗布した。滴化後、温度を室温から固化温度である70℃に昇温し、溶媒を揮散させると共に固化させた。使用する有機化合物は本実施例の化合物に限定されず、所望する発色に応じて溶質を変え、また溶質に応じて溶媒を選択しても良いのは勿論である。固化は酸化を防止するため、不活性ガスである窒素気流中で約200Torrの減圧下で実施した。固化をある程度の減圧環境下で実施すると溶液に溶解している気体成分の発散が促進されるため、従って、良く脱泡された気泡の少ない緻密な絶縁性の有機化合物層(106)が得られた。有機化合物層(106)の膜厚は約0.3μmであった。
固化させた有機化合物層(106)の表面を一旦、通常のプラズマCVD堆積法により二酸化珪素(SiO2)膜を被膜した。その後、素子形状のパターニングに一般的に使用されるフォトレジスト剤を塗布した。その後、従来からの一般的な露光工程を経て、上部クラッド層(105)上に設ける電極(107)の形状にパターニングした。パターニング後、電極(107)を形成する領域に於いて露出したSiO2膜及び有機化合物層(106)を有機溶剤によりエッチングし除去し、上部クラッド層(105)の表面を露呈させた。本実施例では電極形状を円形としたため、有機化合物層(106)が除去された領域は電極形状と相似の円形領域となった。
パターニング終了後、電極材料とする純度99.999%の高純度アルミニウムを残存するフォトレジスト上及びパターニングにより露出した上部クラッド層(105)の一部表面上に通常の真空蒸着法により蒸着した。蒸着後、フォトレジスト剤をレジスト剥離用の薬品を用い剥離した。これにより、レジスト剤上に被着したAl膜は、レジスト剤が上部クラッド層(105)から剥離されるに伴って同時に除去された。電極(107)の形成領域に於いては、蒸着されたAl膜の直下にはフォトレジスト剤が存在しないため、リフトオフ法では除去されず、電極の形成領域に円形に残存した。基板(101)の裏面側(101−2)には高純度Alからなるいわゆる『べた』電極(108)を設けた。然る後に基板(101)上の全面に形成された素子を個別に分割してチップ化し図3に示す様な断面構造を有する無機化合物から構成される励起光源層と有機色素化合物を含む層とを備えた発光素子を形成した。
電極((107)及び(108))間に20mAの駆動用電流を流通させ、有機化合物層(106)を光励起により発光させた。得られた発光波長は約430nm近傍の青色発光であった。発光スペクトルの半値幅は約70nmで、従来のGaxIn1-xN混晶を発光層とした青色LEDのそれに比較すれば顕著に単色化されていた。
(実施例2)先ず図3に示すような発光素子チップを得た。n形のGaP単結晶を基板(101)として使用した。基板(101)上にn形のAl0.8Ga0.2Nからなる下部クラッド層(103)、p形励起光源層(104)及びp形のAl0.7Ga0.3Nからなる上部クラッド層(105)を順次、堆積した。励起光源層(104)は理論上、波長が約253nmの紫外線を発するp形Al0.6Ga0.4Nから構成した。各層のキャリア濃度及び膜厚は実施例1に記載の数値とほぼ同一とした。
Al0.7Ga0.3N上部クラッド層(105)上には、緑色の発光をもたらすクマリン153を含む有機化合物層(106)を堆積した。有機化合物(106)は、電極(107)の表面を被覆せずに、その周囲の上部クラッド層(105)の表面上を覆う様に設けた。有機化合物層(106)は基板(101)の裏側(101−2)には設けなかった。基板上には発光素子が多数配列されているので、これを裁断して各発光素子チップとした。
次いでこの発光素子チップを用いて樹脂で封止した発光素子をつくった。その断面構造を図4に示す。発光素子チップ(112)を市販のステム(113)にマウントし、基板(101)の裏面側(101−2)の電極(108)とステム(113)を導通させた。次に電極(107)をボンデングワイヤ(114)によりリード端子部(115−1)に結線した。
電気結線後、ステム(113)にマウントした発光素子チップ(112)を本発明に係わる有機化合物である一つであるクマリン153を含有した半導体素子封止用のエポキシ樹脂(116)で外囲し封止した。エポキシ樹脂(116)には上記の緑色を発光する有機化合物を重量にして約2重量%含有させた。封止に際しては、温度が約190℃に保持された金型の中に流し込まれたエポキシ樹脂内に発光素子チップ(112)を含浸させた。冷却後、エポキシ樹脂(116)で周囲を成形し、有機化合物を含む物質で外囲された発光素子を形成した。図4に本実施例に係わる封止された状態に於ける構造断面図を示す。
リード端子(115−1及び115−2)を通じての駆動用の電流を流通させ、波長が535nm近傍の緑色の発光を示す発光素子が得られた。半値幅は約40nmであった。また、従来の白色EL素子に色フィルターを取り付けることによって得られる同色よりも発光強度は優れていた。
光励起され発光を呈する有機化合物からなる或いはそれを含む層を備えることにより、従来の如く成長に困難さが伴う多元混晶ではなく、結晶成長が容易な2元化合物が利用できる。可視光を発する発光素子を得るにあたり、安定的に成長が果たせる結晶成長層を光励起元源の発生層として利用できることにより、発光素子を安定して提供することが可能となり、また、発光素子の低価格化を可能にする経済的効果も生まれる。更に、従来のLEDにあっては、特定の波長の発光を得るには、その都度その波長に対応した結晶層なり組成が特定された混晶層を発光層とする必要があった。即ち、発光波長と発光層の材質、組成とは1:1の対応が必要とされていたが、本発明に依れば、発光の励起源として、中心波長が400nm以下の近紫外線若しくは紫外線を発する材料でさえあれば所望する発光波長に依って発光層の材料を変更する必要もなく、単に同一の光励起源をもってしてでも有機色素化合物の種類を変えることにより所望の発光或いは多色の発光が得られる。しかも、従来の如く白色EL素子と色フィルターの組合せによる多色発光素子とは異なり、有機化合物が光エネルギーの大きい紫外線による光励起に基づいて発光するため、より強度的に優れる発光素子がもたらされる。
本発明に係わる発光素子の一例を示す断面模式図である。 図1に示す発光素子の平面模式図である。 実施例1に記載の本発明に係わる発光素子の断面構造を示す模式図である。 実施例2に記載の本発明に係わる発光素子の断面模式図である。 従来の有機EL素子の構造の一例を示す断面模式図である。 従来の構造の模式図である。
符号の説明
101 基板
101−1 基板表面
101−2 基板裏面
102 緩衝層
103 下部クラッド層
104 励起光源層
105 上部クラッド層
106 有機化合物の発光層
107 電極
108 電極
110 電子注入層
111 正孔(ホール)注入層
112 チップ
113 ステム
114 ボンデイングワイヤ
115 リード端子
116 有機色素化合物を含有させたエポキシ樹脂
117 透明電極

Claims (17)

  1. 励起光源層と発光層と光劣化防止層を備える発光素子であって、励起光源層はAl z Ga 1-z N(zは組成比を表し、0≦z≦1である。)または、Egが3.1eV以上のGa x In 1-x N(xは組成比を表し、0≦x≦1である。)からなり、窒化アルミニウム・ガリウム(組成式:Al Ga N:0≦X,Y≦1、X+Y=1)を上部および下部クラッド層としたダブルヘテロ接合構造であり、発光層は励起光源層からの光により異なる励起発光色を呈する複数の有機化合物を含み、光劣化防止層は励起光源層から発せられる紫外線を吸収する物質を含有してなり、該光劣化防止層は励起光源層と発光層との間に位置しており、有機化合物の光劣化を防止する作用を有することを特徴とする発光素子。
  2. 発光層と光劣化防止層とが接していることを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
  3. 発光層内の複数の有機化合物が、その層内において各々別の領域に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の発光素子。
  4. 複数の有機化合物を各々別の領域に設ける際の各領域の面積を、発色強度が弱い有機化合物については広くし、発色強度が強い有機化合物については狭くすることを特徴とする請求項3に記載の発光素子。
  5. 励起光源層が、非対称型バンド構造であることを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載の発光素子。
  6. 発光層が、上部クラッド層上の電極の周囲に被覆されていることを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載の発光素子。
  7. 発光層の表面に、凹凸が設けられていることを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載の発光素子。
  8. 励起光源層が、有機化合物を含む樹脂材料で囲繞され、かつ封止されていることを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載の発光素子。
  9. 有機化合物が、有機分子の単量体、重合体、会合体であることを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載の発光素子。
  10. 有機分子の単量体が、アントラセン、ペリレンの縮合六員環やパラ−オリゴフェニレン誘導体、オキサゾール誘導体、オキソジアゾール誘導体、スチルベン誘導体、クマリン誘導体、ローダミン系色素に代表されるキサニセン系色素、オキサジン系色素であることを特徴とする請求項に記載の発光素子。
  11. 有機分子の重合体が、主鎖が発光活性の物質、または側鎖が発光活性の物質であることを特徴とする請求項9または10に記載の発光素子。
  12. 主鎖が発光活性の物質が、ポリパラフェニレン誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリナフトビニレン誘導体に代表されるアリーレンビニレン誘導体、ポリ(3−アルキルチオフェン)等に代表されるポリチオフェン誘導体、ポリフルオレン誘導体であることを特徴とする請求項11に記載の発光素子。
  13. 側鎖が発光活性の物質が、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリスチレンの高分子重合体の側鎖に発光活性有機化合物の単量体を化学的に結合させた重合体、または、架橋体の一部が光励起発光活性であるもの、または、8−キノリノール誘導体が金属イオンに会合し形成した錯体やアゾメチン錯体等の金属錯体、シアニン系色素の会合体(J−会合体)であることを特徴とする請求項11に記載の発光素子。
  14. 光劣化防止層を、透光性の高分子材料から構成することを特徴とする請求項1〜13の何れか1項に記載の発光素子。
  15. 透光性の高分子材料が、ポリメタクリル酸メチルエステルまたはポリカーボネートの中に、サリチル酸誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、シアノアクリレート誘導体、ヒンダードアミン系物質からなる群から選ばれる何れか1種以上を分散させたものであることを特徴とする請求項14に記載の発光素子。
  16. 基板上に励起光源層、発光層、光劣化防止層を設け、基板を光学的に透明、或いは透光性の材料から構成し、発光層を、励起光源層と基板を挟んで反対側に設けることを特徴とする請求項1〜15の何れか1項に記載の発光素子。
  17. 基板を、励起光源層を構成している材料よりも大きな禁止帯幅を有する材料から構成することを特徴とする請求項16に記載の発光素子。
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