JP4296784B2 - 熱電変換材料の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は熱電素子の材料である熱電変換材料の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
熱電素子の材料である熱電変換材料にはBi−Te−Sb−Se系のものが多用されているが、結晶粒の粒径が小さく且つ結晶の配向が揃っていることが高性能な熱電素子を得るのに必要な条件となる。
【0003】
そして、上記のような条件を満たすために多様な製造方法が提供されている。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−36627号公報
【特許文献2】
特開2000−357821号公報
【特許文献3】
特開平10−112558号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、結晶粒を微細化するとその配向が揃わず、配向を揃えるために塑性加工を行えば、この加工時の熱の影響で結晶粒が成長して粒径が大きくなってしまうものであり、微細化と配向の両点を共に満足することができる熱電変換材料は未だ提供されていない。
【0006】
本発明はこのような点に鑑みなされたものであって、その目的とするところは微細化と配向の両点を共に高いレベルで満足することができる熱電変換材料の製造方法を提供するにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
しかして本発明に係る熱電変換材料の製造方法は、Bi−Te−Sb−Se系材料に対し、バルク状態で外部から圧力を加えることによる塑性変形と粉砕と固化とを繰り返して平均結晶粒径が1μm以下の材料を得、次いで得られた材料と塑性加工用金型との間に塑性変形性に富んだ塑性加工支援材を介在させた状態で塑性加工を行って、上記平均結晶粒径を維持しつつ、酸素濃度が300ppm以下であり、電気的抵抗値が最も低い方向での比抵抗ρ1と、その方向と直交し且つ電気的抵抗値が最も高い方向での比抵抗ρ2との比ρ2/ρ1を1.5以上のものとすることに特徴を有している。バルクメカニカルアロイング(BMA)として知られているバルク状態で外部から圧力を加えることによる塑性変形と粉砕と固化との繰り返しで平均結晶粒径を1μm以下とするものであり、また塑性加工を行うことで結晶粒の配向を揃えるにあたり、塑性加工用金型との間に塑性変形性に富んだ塑性加工支援材を介在させておくことで、塑性加工が材料に与えてしまう熱的影響を抑制して結晶粒の粒径が大きくなってしまうことを阻止して、配向を揃えた後も上記平均結晶粒径が維持されるようにしたものである。そして、得られた熱電変換材料は、平均結晶粒径が1μm以下であるために、微細グレイン効果による熱電性能の向上を得られると同時に、酸素濃度が300ppm以下であり、電気的抵抗値が最も低い方向での比抵抗ρ1と、その方向と直交し且つ電気的抵抗値が最も高い方向での比抵抗ρ2との比ρ2/ρ1が1.5以上であって結晶粒の配列が揃っているために、この点においても高い熱電性能の向上を得られるものである。なお、平均結晶粒径はJISに基づく測定方法によるものである。
【0008】
この時、電気的抵抗値が最も低い方向を電流方向とした場合にその電流方向に結晶粒が伸びており、この方向を長軸とする時、長軸方向寸法Dと、長軸と直交する方向の寸法dとの比D/dが5以上となっている結晶粒を備えたものとなっていることが望ましい。
【0009】
そしてp型である場合はゼーベック係数が200μV/K以上、比抵抗が1.5mΩcm以下であることが好ましく、n型である場合はゼーベック係数が180μV/K以上、比抵抗が1.2mΩcm以下であることが好ましい。
【0012】
塑性変形と粉砕と固化との繰り返し工程の出発材料としては、所定分量比で投入されるBi、Te、Sb、Seの各単体を用いて、該繰り返し工程中に合金化が行われるようにしてもよいが、このような本来のBMAに限るものではなく、塑性変形と粉砕と固化との繰り返し工程の出発材料として、予め溶製法によって作成されたBi−Te−Sb−Se系合金を用いてもよい。
【0013】
後者の場合、Bi−Te−Sb−Se系合金として、液体急冷法によって作成された箔片粉末を好適に用いることができ、特に長さと幅と厚みがいずれも25μm以上である箔片粉末を好適に用いることができる。また、箔片粉末をプレスによる仮成形で一体固化物とした後、塑性変形と粉砕と固化との繰り返し工程に供給するようにしてもよい。
【0014】
また、塑性変形と粉砕と固化との繰り返し工程は水素雰囲気中で行うことが望ましい。
【0015】
塑性加工としては、縮径を行う押出加工や熱間鍛造の加工法を用いることができ、前者であれば、押出温度450℃以下、押出速度0.5〜10mm/sec、押出比10以上とする。後者であれば熱間鍛造時の加熱温度を450℃以下とする。
【0016】
また、押出加工であれば、塑性加工支援材としてその内部に熱電変換材料が入れられる筒状のものを好適に用いることができ、熱間鍛造であれば、塑性加工支援材として熱電変換材料を間に挟んでいる一対の板状材を好適に用いることができる。
【0017】
このほか、塑性加工支援材としては、熱電変換材料を内部密閉空間内に封入したものを好適に用いることができ、この時、熱電変換材料の封入時に塑性加工支援材の内部密閉空間を真空にしていることがより望ましい。
【0018】
またアルミニウム製または銅製の塑性加工支援材を好適に用いることができる。
【0019】
塑性加工後に熱処理温度が250〜450℃であり且つ熱処理時間が10時間以内の熱処理を行うようにしてもよい。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下本発明を実施の形態の一例に基づいて詳述すると、本発明に係る熱電変換材料は、Bi−Te−Sb−Se系のものであり、その製造方法からまず説明すると、BMA(バルクメカニカルアロイング)として知られているバルク状態で外部から圧力を加えることによる塑性変形と粉砕と固化とを繰り返す第1の工程と、この第1の工程で得られた材料を塑性加工する第2の工程とからなる。
【0022】
BMAは、図1に示すように、上下径の異なるダイス2と、ダイス2の上部径に合致するパンチ21及び下部径に合致するパンチ22を用いて、ダイス2内においてパンチ21,22の上下駆動をタイミングをずらせて行って、ダイス2内の両パンチ21,22間に投入した出発材料1’に圧力を加えて塑性変形と粉砕と固化とを繰り返すものであり、このBMAでは均質混合及び固相合金化を比較的短時間で行うことができる。
【0023】
本発明においては、このBMAと称されている技術が結晶粒の微細化に有効であるとともに、この微細化によるフォノン熱伝導率の低下で性能の向上が可能となる点に着目してこの技術を用いるものであり、通常であれば、図2に示すように、所定分量比で投入されるBi、Te、Sb、Seの各単体を出発材料として上記繰り返し工程中に合金化及び微細化を行うのであるが、ここでは上述のように微細化を主たる目的としてBMAを採用しており、合金化が主目的ではないために、出発材料1’が図3に示すように予め溶製法によって作成されたBi−Te−Sb−Se系合金であってもよい。この点からすれば、アロイングという名称がそぐわないことから、ここではBMG(バルクメカニカルグライディング)として記載している。
【0024】
また、Bi−Te−Sb−Se系合金を出発材料1’とする場合、図4に示すように合金の溶湯Aをノズル24から出して回転する金属ロール25に接触させる液体急冷法によって作成した箔片粉末10を用いることが好ましい。結晶を微細化するのにかかる時間を短縮することができる。
【0025】
また、上記箔片粉末を用いる場合、図5に示すように、作成された箔片粉末10のうち、長さと幅と厚みがいずれも25μm以上であるものを選別する粒度調整を行ってBMGの出発材料1’とすると、微細粉末に比して酸化が少ない出発材料1’とすることができるために、最終的な熱電変換材料の酸素濃度を低くすることができる。
【0026】
酸素濃度を低くするという点では、図6に示すように箔片粉末10をその作成直後にプレスによる仮成形で一体固化物とし、この固化物をBMGに供給する出発材料1’としてもよく、この場合、箔片粉末10を直接BMGに供給する場合に比して、表面積の点で酸素濃度の低減に有利である上に、その取り扱いが容易となる。
【0027】
このほか、図7に示すように、塑性変形と粉砕と固化との繰り返し工程であるBMGを水素雰囲気H中で行うようにしてもよい。やはり酸素濃度の低い熱電変換材料を得ることができる。
【0028】
いずれにしても、このようなBMGによって平均結晶粒径が1μm以下の熱電変換材料1が得られたならば、この熱電変換材料1に対し、結晶粒を配向させるための塑性加工を行う。この塑性加工としては、押出加工や熱間鍛造等を用いることができるが、前述のように、上記熱電変換材料1を押出加工や熱間鍛造に直接供すると、熱電変換材料1と押出加工や鍛造加工のための金型との間に働く摩擦などによる熱が金型及び熱電変換材料1に与えた熱に加わるために、熱による粒成長が進んでしまう。
【0029】
このためにここでは塑性加工に際して熱電変換材料1と金型との間に塑性変形性に富んだ塑性加工支援材3を介在させることで、熱電変換材料1と金型との直接接触を避けた状態で塑性加工を行う。
【0030】
図8は押出加工で塑性加工を行う場合を示しており、塑性加工支援材3として図9にも示すようにBMGで得られた平均結晶粒径1μm以下の熱電変換材料1を一端が閉じた筒状であり且つ他端がプラグ30で閉じられる塑性加工支援材3内に入れた状態で、押出温度450℃以下、押出速度0.5〜10mm/secの条件で押出比10以上の押出加工を行っている。このような条件で塑性加工を行えば、結晶粒の配向が揃うために、電気的抵抗値が最も低い方向での比抵抗ρ1と、その方向と直交し且つ電気的抵抗値が最も高い方向での比抵抗ρ2との比ρ2/ρ1を1.5以上のものとすることができ、しかも押出温度が450℃以下という比較的低温の条件でも塑性加工支援材3の存在により熱電変換材料1に対する塑性加工を完了することができるとともに、塑性加工時の熱電変換材料1の温度上昇を塑性加工支援材3の存在で抑制することができるために、熱電変換材料1の粒径が成長してしまうことを抑えることができるものであり、BMGによって平均結晶粒径を1μm以下にした状態を維持することができる。
【0031】
なお、結晶は一般に加圧方向に結晶面c面が揃う傾向にあるとともにそのc面の面内方向に電気的抵抗値が低くなる傾向にあり、例えばホットプレスであればプレス方向に直交する方向がρ1、プレス方向がρ2となり、押出の場合は押出方向がρ1、押出方向と直交する方向がρ2となる。
【0032】
表1に押出温度を450℃以下、押出速度0.5〜10mm/secの条件で押出比10以上の押出加工を行った場合(実施例1〜5)と、押出温度を500℃とした場合(比較例1,2)と、押出速度を0.2mm/secとした場合(比較例2,3,5)と、押出速度を15mm/secとした場合(比較例4)と、押出比を5とした場合(比較例5,6)とにおける得られた平均結晶粒径及び比抵抗の比ρ2/ρ1の値を示す。押出温度450℃以下、押出速度0.5〜10mm/sec、押出比10以上という条件での押出加工であれば、平均結晶粒径1μm以下を保ちつつ、比抵抗の比ρ2/ρ1を1.5以上とすることができる。
【0033】
【表1】
【0034】
ここで、金型4と熱電変換材料1との接触を避けるための塑性加工支援材3として、熱電変換材料1を密封できるものを用いているのは塑性加工後の熱電変換材料1の酸素濃度を少なくするためであり、この点からすれば、図10に示すように、プラグ30による密閉時に真空引きVを行った後、溶接Mでプラグ30を固定することにより、塑性加工支援材3の内部密閉空間を真空に保つようにすることがより好ましい。
【0035】
もっとも、酸素濃度の増加を抑えることができる雰囲気中で押出加工を行うことができる場合は、図11に示すように筒状で両端が開放されている塑性加工支援材3を用いてもよい。図中Sは金型4の接触面を示している。
【0036】
図12に示すように熱間鍛造で塑性加工を行う場合は、図13にも示すように金型4と接触することになる上下面に板状の塑性加工支援材3,3を配して、一対の塑性加工支援材3,3で熱電変換材料1を間に挟んだ状態で塑性加工を行えばよく、この時、熱間鍛造時の加熱温度は450℃以下に保つことで、上記押出加工時と同じく、熱電変換材料1の粒径の成長を抑えて平均結晶粒径1μm以下の状態を維持することができる。また、この場合、塑性加工後の塑性加工支援材3の分離が容易である。
【0037】
塑性加工支援材3としては、アルミニウム製や銅製のものが塑性加工の高速化の点で好適である。特にアルミニウムはその融点や塑性加工時の変形抵抗が熱電変換材料1に比較的近いために、塑性加工時に熱電変換材料1と塑性加工支援材1との間に大きな摩擦が働くことがなくて好ましい。
【0038】
塑性加工としては、上記押出加工や熱間鍛造だけでなく、他の加工方法を用いてもよい。ただし、塑性加工のために熱電変換材料1と接触することになる金型等の加工用部材と熱電変換材料1との間に塑性加工支援材3を介在させる。この塑性加工支援材3の存在により、塑性加工支援材3を用いない場合に比して比較的低温の条件で熱電変換材料1に対する塑性加工を完了することができる上に、熱電変換材料1と加工用部材との接触面で発生する熱の問題を避けることができる。
【0039】
そして、上述のようにBMGで平均結晶粒径を1μm以下とした熱電変換材料1を塑性加工支援材3を用いた塑性加工に供して配向を揃えた場合、上記粒径の状態を維持しつつ、電気的抵抗値が最も低い方向での比抵抗ρ1と、その方向と直交し且つ電気的抵抗値が最も高い方向での比抵抗ρ2との比ρ2/ρ1が1.5以上であり、またp型であれば、ゼーベック係数が200μV/K以上、比抵抗が1.5mΩcm以下、n型であれば、ゼーベック係数が180μV/K以上、比抵抗が1.2mΩcm以下という高性能な熱電変換材料1を得ることができるとともに、電気的抵抗値が最も低い方向を電流方向(図14中のi)とした場合にその電流方向iに結晶粒が伸びており、この方向を長軸とする時、長軸方向寸法Dと、長軸と直交する方向の寸法dとの比D/dが5以上となっている結晶粒を得ることができる。
【0040】
上記製造方法によって得た平均結晶粒径が1μm以下であり且つ前記比ρ2/ρ1が1.5以上であるn型熱電変換材料1(実施例1〜4)と、平均結晶粒径が1μmを越えるn型熱電変換材料(比較例1〜4)と平均結晶粒径が1μm以下であるものの前記比ρ2/ρ1が1.5未満であるn型熱電変換材料(比較例5)におけるゼーベック係数と比抵抗と熱伝導率及び性能指数を表2に示す。実施例に係るものでは性能指数が3(10-3/K)以上を示しており、高い性能を有していることがわかる。
【0041】
【表2】
【0042】
また、p型のものにおいて、ゼーベック係数が200μV/K以上であり且つ比抵抗が1.5mΩcm以下という条件を満たすものと、この条件を満たさないものとを比較した場合、表3に示すように、性能指数の点で上記条件を満たすものの方が高い性能を示すものとなっており、同様にn型であれば、ゼーベック係数が180μV/K以上であり且つ比抵抗が1.2mΩcm以下という条件を満たすものと、この条件を満たさないものとを比較した場合、表4に示すように、性能指数の点で上記条件を満たすものの方が高い性能を示すものとなっている。
【0043】
【表3】
【0044】
【表4】
【0045】
この時、熱電変換材料1の酸素濃度が300ppm以下となるように製造時に酸素濃度を調製することにより、更に高性能なものとすることができる。ちなみにBi−Te−Sb−Se系n型熱電変換材料1で平均結晶粒径1μm、比抵抗の比ρ2/ρ1が1.8〜2であるものにおいて、酸素濃度を図18に示すように変化させたところ、酸素濃度が低くなるにつれて比抵抗が減少するとともに性能指数が増大し、酸素濃度が300ppmの時に性能指数が3.0(10-3/K)を越えるものを得ることができた。
【0046】
また、上記長軸方向の寸法Dと長軸と直交する方向の寸法dとの比D/dの値が性能指数に与える影響を調べたところ、図19に示すように、D/dの値が大きくなるにつれて、すなわち結晶粒の形状が針状になるに連れて、性能指数が大きくなることがわかる。これは、電子の流れが阻害されずにフォノン散乱による熱伝導率低減の効果が大きくなるためと考えられ、D/dの値が5以上の時に性能指数が3.0(10−3/K)を越えるものを得ることができた。
【0047】
前記塑性加工が終われば、塑性加工支援材3を外して取り出した熱電変換材料1から熱電変換素子Tを切り出して熱電モジュールを形成するのであるが、塑性加工後に図15に示すように250〜450℃・10時間以内という条件で熱電変換材料1の熱処理を行うようにしてもよい。熱電変換材料1から残留歪みを除去して抵抗を減少させることができるために、さらに高性能なものとすることができる。特に上記の温度条件での熱処理では、粒成長を招いてしまうこともない。
【0048】
図20に熱処理温度及び熱処理時間(イは1時間、ロは10時間、ハは20時間)を変えて不活性ガス中で熱処理を行った後の平均結晶粒径及び性能指数を示す。250〜450℃・10時間以内の熱処理を行った時、250℃以下の温度で熱処理した場合に比して性能指数が高くなっていることがわかるとともに、250℃以下の温度での熱処理では歪み除去の効果が小さく、450℃を超えたり10時間を超える熱処理を行うと再結晶により結晶粒が粗大化してしまうことがわかる。
【0049】
このようにして得た熱電変換材料1は、図16に示すように、スライスによってウェハーWとし、該ウェハーWの表面に成膜を行った後、ダイシングによって多数の熱電変換素子Tを切り出す。
【0050】
そしてこの熱電変換素子Tは、p型のものとn型のものとを電極32で交互に接続することで熱電モジュールとするのであるが、図17に示すように基板31上に形成した電極32上に熱電変換素子Tをはんだ33で接合するにあたり、ヒータ6による予熱温度は350℃以下としておく。この温度条件を保持することで熱電変換素子Tの結晶粒の成長を抑えることができ、熱電変換素子1が有している性能を活かした熱電モジュールを得ることができる。
【0051】
【発明の効果】
以上のように本発明に係る熱電変換材料の製造方法は、Bi−Te−Sb−Se系材料に対し、バルク状態で外部から圧力を加えることによる塑性変形と粉砕と固化とを繰り返して平均結晶粒径が1μm以下の材料を得、次いで得られた材料と塑性加工用金型との間に塑性変形性に富んだ塑性加工支援材を介在させた状態で塑性加工を行って、上記平均結晶粒径を維持しつつ、酸素濃度が300ppm以下であり、電気的抵抗値が最も低い方向での比抵抗ρ1と、その方向と直交し且つ電気的抵抗値が最も高い方向での比抵抗ρ2との比ρ2/ρ1を1.5以上のものとするために、平均結晶粒径を1μm以下とすることが容易なものであり、また塑性加工を行うことで結晶粒の配向を揃えるにあたり、塑性加工用金型との間に塑性変形性に富んだ塑性加工支援材を介在させておくことで、塑性加工が材料に与えてしまう熱的影響を抑制して結晶粒の粒径が大きくなってしまうことを阻止して、配向を揃えた後も上記平均結晶粒径が維持されるものであり、配向を揃えるための塑性加工の際に結晶粒が成長してしまうことがなく、そして、この製造方法で得られた熱電変換材料は、微細グレイン効果による熱電性能の向上を得られるものであり、しかも酸素濃度が300ppm以下であり、電気的抵抗値が最も低い方向での比抵抗ρ1と、その方向と直交し且つ電気的抵抗値が最も高い方向での比抵抗ρ2との比 ρ2/ρ1が1.5以上であって結晶粒の配列が揃っているために、この点においても高い熱電性能の向上を得られるものである。
【0053】
また、電気的抵抗値が最も低い方向を電流方向とした場合にその電流方向に結晶粒が伸びており、この方向を長軸とする時、長軸方向の寸法Dと、長軸と直交する方向の寸法dとの比D/dが5以上となっている結晶粒を備えていると、電流方向に電気抵抗が低く、しかも熱伝導率の増加を抑制した高性能なものとなる。
【0054】
そしてp型である場合はゼーベック係数が200μV/K以上、比抵抗が1.5mΩcm以下であり、n型である場合はゼーベック係数が180μV/K以上、比抵抗が1.2mΩcm以下であることが性能面で好ましい。
【0057】
塑性変形と粉砕と固化との繰り返し工程の出発材料としては、所定分量比で投入されるBi、Te、Sb、Seの各単体を用いて、該繰り返し工程中に合金化が行われるようにした場合、溶融させる必要がないことから生産性が向上する。
【0058】
また、塑性変形と粉砕と固化との繰り返し工程の出発材料として、予め溶製法によって作成されたBi−Te−Sb−Se系合金を用いた時には、均一な塑性のものを得ることができ、特に、Bi−Te−Sb−Se系合金として、液体急冷法によって作成された箔片粉末を用いると、結晶を微細化するのにかかる時間を短縮することができ、さらに長さと幅と厚みがいずれも25μm以上である箔片粉末を用いると、酸素濃度の増加を抑えることができる。また、箔片粉末をプレスによる仮成形で一体固化物とした後、塑性変形と粉砕と固化との繰り返し工程に供給するようにしてもよく、この時には取り扱いが容易となる。
【0059】
塑性変形と粉砕と固化との繰り返し工程は水素雰囲気中で行うようにしてもよく、この時にも酸素濃度を増加を抑えることができる。
【0060】
塑性加工としては、縮径を行う押出加工や熱間鍛造の加工法を用いることができ、前者であれば、押出温度450℃以下、押出速度0.5〜10mm/sec、押出比10以上とし、後者であれば熱間鍛造時の加熱温度を450℃以下とすることで、組織が微細で結晶配向性の高い高性能な熱電変換材料を容易に得ることができる。
【0061】
また、押出加工であれば、塑性加工支援材としてその内部に熱電変換材料が入れられる筒状のものを用い、熱間鍛造であれば、塑性加工支援材として熱電変換材料を間に挟んでいる一対の板状材を用いることで、均一且つ割れのない熱電変換材料を得ることができる。
【0062】
さらに、塑性加工支援材として、熱電変換材料を内部密閉空間内に封入したものを用いると、酸素濃度が少ないものを得ることができるとともに歩留まりを向上させることができる。特に、熱電変換材料の封入時に塑性加工支援材の内部密閉空間を真空にすれば、不純物混入がほとんどない材料を得ることができる。
【0063】
またアルミニウム製または銅製の塑性加工支援材を用いると、塑性加工を高速に行うことができる。
【0064】
塑性加工後に熱処理温度が250〜450℃であり且つ熱処理時間が10時間以内の熱処理を行うと、残留歪みがなくなって抵抗が減少する上に、上記条件下であれば結晶粒が成長しないためにさらに高性能なものを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の一例における製造方法を示す説明図である。
【図2】同上の出発材料を示す説明図である。
【図3】同上の他の出発材料を示す説明図である。
【図4】同上の箔片粉末を用いる場合の説明図である。
【図5】同上の箔片粉末を用いる場合の他の説明図である。
【図6】同上の箔片粉末を用いる場合の更に他の説明図である。
【図7】同上の水素雰囲気中でのBMG(BMA)の説明図である。
【図8】同上の塑性加工の一例の説明図である。
【図9】同上の塑性加工支援材を示すもので、(a)は斜視図、(b)は密閉についての説明図である。
【図10】同上の塑性加工支援材の密閉についての他の説明図である。
【図11】同上の他の塑性加工支援材を示すもので、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
【図12】 (a)(b)は塑性加工の他例を示す断面図である。
【図13】同上の塑性加工支援材を示すもので、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
【図14】熱電変換材料の結晶組織の説明図である。
【図15】塑性加工後の熱処理についての説明図である。
【図16】同上の熱電変換素子の切り出しについての説明図である。
【図17】同上の熱電モジュールの製造方法についての説明図である。
【図18】同上の酸素濃度と比抵抗と性能指数との相関図である。
【図19】同上の結晶粒形状と性能指数との相関図である。
【図20】 (a)は熱処理温度と平均粒径との相関図、(b)は熱処理温度と性能指数との相関図である。
【符号の説明】
1 熱電変換材料
3 塑性加工支援材
Claims (5)
- Bi−Te−Sb−Se系材料に対し、バルク状態で外部から圧力を加えることによる塑性変形と粉砕と固化とを繰り返して平均結晶粒径が1μm以下の材料を得、次いで得られた材料と塑性加工用金型との間に塑性変形性に富んだ塑性加工支援材を介在させた状態で塑性加工を行って、上記平均結晶粒径を維持しつつ、酸素濃度が300ppm以下であり、電気的抵抗値が最も低い方向での比抵抗ρ1と、その方向と直交し且つ電気的抵抗値が最も高い方向での比抵抗ρ2との比ρ2/ρ1を1.5以上のものとすることを特徴とする熱電変換材料の製造方法。
- 所定分量比で投入されるBi、Te、Sb、Seの各単体を、塑性変形と粉砕と固化との繰り返し工程の出発材料として、合金化を該繰り返し工程中に行っていることを特徴とする請求項1記載の熱電変換材料の製造方法。
- 予め溶製法によって作成されたBi−Te−Sb−Se系合金を塑性変形と粉砕と固化との繰り返し工程の出発材料としていることを特徴とする請求項1記載の熱電変換材料の製造方法。
- 塑性変形と粉砕と固化との繰り返し工程を水素雰囲気中で行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載の熱電変換材料の製造方法。
- 塑性加工後に熱処理温度が250〜450℃であり且つ熱処理時間が10時間以内の熱処理を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載の熱電変換材料の製造方法。
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