JP4294986B2 - 電波時計 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、時刻情報を含む所定の電波を受信して時刻を表示する電波時計に関するものであり、特に、電波受信性能の向上を図ると共に外部磁気に対する耐磁性能の向上を目指した電波時計のケース構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、モータで指針を駆動する時計の場合、外部からの磁気により指針駆動に影響が出て、時計精度が低下することがある。このため、外部磁気を遮断する耐磁板を時計ケース内に設けて時計精度の保持を図っていた。
【0003】
図8は上記のような外部磁気の影響を防ぐ耐磁板を、ムーブメントを保持する中枠と裏蓋との間に設けた腕時計の構造を示す断面図である。この構造においては、ケース2の内部にムーブメント4を固定する中枠6を設け、その中枠6の裏蓋8側に、上向きコの字形の耐磁板10を取り付けてムーブメント4を囲うように構成している(特許文献1参照)。
【0004】
この耐磁板10は、上記のようにモジュールにネジ固定または食付き固定されたり、裏蓋8の中子8aと中枠6との間に挟んで固定されたり、裏蓋8の内面に接着剤で接着して固定され、時計ケース内のスペース、モジュールの構造等に応じた固定構造によって固定されるものであった。
【0005】
【特許文献1】
実用新案登録第2505967号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような耐磁対策は、指針駆動に関して一般の時計と同様の構造を有する電波時計においても、時計精度の保持のために必要とされている。しかしながら、電波時計は、時刻情報を含む標準電波(搬送波)を受信し、この電波から時刻情報を取り出すことにより正確な時刻を得て表示するものであり、外部磁気を遮断するために耐磁板でムーブメントを包囲すると、受信性能が低下するおそれがあった。このため、電波時計では、これまで耐磁板を使用することができなかった。
【0007】
本発明は、上記従来技術の課題に鑑みなされたもので、耐磁板をケース内部に配置した時計ケースを使用しても、時刻情報等、所定の情報を含んだ電波を受信することができ、且つ外部磁気のある環境下においても所定の時刻精度を保持できる電波時計を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の電波時計はアンテナと時計装置と耐磁板とを時計ケースに収納し、該時計ケース内に配置された前記耐磁板が、前記アンテナと相対する部分に開口部を有するとともに、前記アンテナは、前記耐磁板の該開口部の外側に配設されていることを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明においては、アンテナと時計装置と耐磁板を時計ケースに収納し、その耐磁板に開口部を設けている。この耐磁板の開口部は、アンテナに相対する位置に設けられており、アンテナの受信性能が低下するのを防いでいる。また、アンテナと耐磁板は、アンテナが耐磁板の開口部に対向するように位置付けられたり、アンテナの一部又は全部が開口部から突出して、耐磁板の影響を受けることなく電波を受信することができるように位置付けられている。これにより、電波受信性能を低下させることなく、電波時計においても外部磁気から時計装置を保護することが可能となる。
【0010】
【実施例】
以下図面に基づいて本発明の実施例を説明する。図1は本発明の第1実施例に係る電波時計の断面図であり、図2は図1に示す耐磁板38の裏蓋方向からの平面図である。本実施例における時計ケース12は、胴14、裏蓋16及びガラス18により構成されている。胴14は、略筒状をなし、その図中上方の開口部の内周縁にある段部14aにパッキン20を介してガラス18が取り付けられ、図中下方の開口部に裏蓋16が圧入、螺合、ネジ等の手段により取り付けられている。尚、図1に示す裏蓋16は圧入にて胴14に取り付けられており、その立ち上がり部16aと胴14の内側面14cとの間にパッキン22が挟み込まれている。
【0011】
また、胴14の中には、電波時計受信機、CPU、及び表示駆動部等を備えたムーブメント24が収められている。ムーブメント24の図中上方には、時刻表示部である文字板26と指針28が設けられている。このムーブメント24は、胴14の段部14aを形成する内方突出部14bの図中下面に文字板26が当接することにより位置決めされ、裏蓋16の立ち上がり部16aの上面に配設された樹脂中枠30との間に挟み込まれることで固定されている。また、このムーブメント24と裏蓋16との間には所定の空間が設けられており、その空間の中にアンテナ32が配置されている。このアンテナ32は、フェライト材等からなる棒状の磁芯材34と、この磁芯材34に巻回されたコイル36とから構成されており、ムーブメント24の下面に固定されている。
【0012】
また、本実施例においては、ムーブメント24と裏蓋16との間の空間内に耐磁板38を設けている。この耐磁板38は、フェライト系ステンレス鋼(例えばSUS430)からなるものであり、図2の裏蓋方向からの平面図に示すように、その平面形状がムーブメント24の平面形状に近似する円形をなすと共に断面形状が上向きコの字形をなし、外周部分に立ち上がり部38aを有している。本実施例における耐磁板38は、立ち上がり部38aの先端部分をムーブメント24に食付き固定又はネジ固定することによりムーブメント24に固定されている。
【0013】
また、耐磁板38には、開口部38bが設けられている。この開口部38bは、耐磁板38をムーブメント24に取り付けたときに、アンテナ32に相対する部分に位置するように設けられている。本実施例の場合、アンテナ32は、ムーブメント24の下面の隅に、その磁芯材34の軸線が時計の表裏方向に直交する方向を向くように配設されている。このため、耐磁板38の開口部38bは、アンテナ32の磁芯材34の軸線を含む平面に関して平行となるようにアンテナを耐磁板38に投影した部分に設けられている。また、この開口部38bの内部寸法は、アンテナ32の外部寸法に等しいか僅かに大きく設定されている。
【0014】
上記構成からなる電波時計においては、アンテナ32が受信した標準電波に基づいて、ムーブメント24内のCPUが、表示駆動部を動作させて、指針28を常に修正するように駆動する。このときに、本実施例では、耐磁板38でムーブメント24を囲っているため、外部磁気により指針駆動が影響を受けることがない。また、耐磁板38に開口部38bを設けているため、アンテナ32は裏蓋16の方向に開放されており、耐磁板38に遮断されることなく電波信号を受信することが可能となる。
【0015】
図3は本発明の第2実施例に係る電波時計の断面図である。この第2実施例は、時計ケース12や耐磁板38の構造等に関する基本的構成が第1実施例と同様であり、耐磁板38とアンテナ32との位置関係が第1実施例と異なるため、ここではこの異なる点に関して詳述する。この第2実施例においては、純鉄からなる耐磁板38がムーブメント24の下面に接するようにムーブメント24の下部に組み付けられている。このときに、アンテナ32は、耐磁板38の開口部38bから裏蓋16の方向に突出し、耐磁板38の外側に位置付けられる。このため、アンテナ32は、耐磁板38で囲まれていない所に位置することになり、耐磁板38の影響を受けることなく電波信号を受信することが可能となる。
【0016】
この第2実施例においては、耐磁板38とムーブメント24とが接触している部分が多いので、接着剤を用いて耐磁板38をムーブメント24に接着して固定することも可能である。
【0017】
図4は本発明の第3実施例に係る電波時計の断面図である。この第3実施例は、時計ケース12や、耐磁板38とアンテナ32の位置関係等の基本的構成が第1実施例と同様であり、非磁性部材40を設けた点が第1実施例と異なるため、この非磁性部材40に関して詳述する。非磁性部材40は、金、銀、銅、黄銅、アルミニウム,マグネシウム、亜鉛、またはそれらの合金のような、電気抵抗率が7.0μΩ−cm以下である金属材料からなるものであり、本実施例では板状の銅材からなるものを使用している。また、耐磁板38は、YUS材(クラッド材)からなり、第1実施例と同様にムーブメント24と裏蓋16との間に位置し、アンテナ32は、この耐磁板38よりもムーブメント24側に位置するように配置されている。非磁性部材40は、上記のような耐磁板38とアンテナ32との間に配置され、本実施例では耐磁板38のアンテナ32に面する内面上に取り付けられている。このように非磁性部材40をアンテナ32に対向するように設けたり、非磁性部材40をアンテナの近傍に設けたりすることで、電波信号の受信利得が2〜3dB程度向上することが実験にて確認されている。また、本実施例の非磁性部材40には、耐磁板38の開口部38bに対応する位置に開口部40bが設けられており、耐磁板38と同様に電波信号の受信を妨げない構造となっている。
【0018】
また、非磁性部材40には腐食を防ぐため、メッキ等の表面処理を施すことも可能であり、表面処理を施したことによる受信感度の低下は認められなかった。
【0019】
図5は本発明の第4実施例に係る電波時計の断面図である。この第4実施例は、時計ケース12や、耐磁板38とアンテナ32の位置関係等の基本的構成が第1実施例と同様であり、耐磁板38の開口部38b内に非磁性部材42を設けた点が第1実施例と異なるため、この異なる点に関して詳述する。この非磁性部材42は、前述した第3実施例と同じ電気抵抗率が7.0μΩ−cm以下である金属材料からなるものであり、本実施例では黄銅からなるものを使用している。また、本実施例における耐磁板38は、フェライト系ステンレス鋼(例えばSUS430)からなり、前述した第1実施例と同様にムーブメント24と裏蓋16との間に配設され、ムーブメント24の下面に取り付けられたアンテナ32に相対する位置に開口部38bを有している。非磁性部材42は、この耐磁板38の開口部38b内にカシメ、ロー付、接着等により取り付けられて、アンテナ32に対向するものとなっている。このように非磁性部材42を設けると、アンテナ近傍での共振現象の乱れを低減して受信感度を向上させ、電波信号の受信利得が2〜3dB程度向上することになる。
【0020】
また、非磁性部材42には、第3実施例における非磁性部材40と同様に、メッキ等の表面処理を施すことも可能であり、表面処理を施したことによる受信感度の低下は認められなかった。
【0021】
図6は本発明の第5実施例に係る電波時計の断面図であり、図7は図6に示す耐磁板38の裏蓋方向からの平面図である。この第5実施例は、時計ケース12や、耐磁板38とアンテナ32の位置関係等の基本的構成が第1実施例と同様であり、耐磁板38に回転止めを設けた点と、耐磁板38の固定をネジタイプの裏蓋16の立ち上がり部16aの上面とムーブメント24の下面とで挟んで固定した点とが第1実施例と異なるため、この異なる点に関して詳述する。この耐磁板38にはムーブメント24を囲う立ち上がり部38aが設けられている。本実施例においては、この立ち上がり部38aの一部に切欠部38cを設け、胴14を貫通する側パイプ44の内端に切欠部38cを嵌め込むことにより、耐磁板38の回転を止めて、容易に位置決めできるように構成している。また、胴14に裏蓋16をネジ固定するため、裏蓋16の立ち上がり部16a上面の耐磁板38も回転することが考えられるが、前述した切欠部38cに側パイプ44が嵌め込まれているので、耐磁板38の回転も阻止できるようになっている。
【0022】
尚、上記各実施例における胴14、裏蓋16等からなる時計ケース12の材質は、電波時計に適したものであればステンレス、プラスチック等どのようなものであっても良い。
【0023】
また、上記各実施例においては、アンテナ32をムーブメント24の下面の隅に、その磁心材34の軸線が時計の表裏方向に直交する方向を向くように配設しているが、アンテナ32の指向性を考慮しつつ、アンテナ32の端部外面と胴14の内面又は裏蓋16の内面が平行になるようにアンテナ32を配置したり、裏蓋16の内面に対してアンテナ32の一端面を略垂直方向に配置して縦に立てた状態に配置することも可能である。この場合、耐磁板38の開口部38bは、前述した各実施例のように、アンテナ32の全形に相対するように形成しても良いし、また、アンテナ32の端部に対向するように例えば立ち上がり部38aに形成しても良い。
【0024】
また、耐磁板38及び非磁性部材40,42に使用する材料は一種類だけを用いるだけでなく、複数の金属及び非磁性部材を組み合わせて使用することも可能である。
【0025】
尚、非磁性部材40,42に使用する材質の選定に関しては、実験用ケースの中に、使用する材質で形成した非磁性部材と実験用アンテナを設置し、所定位置に設置された送信アンテナから信号を送信する実験を行って選定した。この実験の結果、金、銀、銅、黄銅、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、それらの合金の場合は、チタン、チタン合金、ステンレススチール、タンタルカーバイドの場合に比べて、利得が2〜3dB(デシベル)高くなった。
【0026】
また、実験に使用した金属の電気抵抗率を比較し、電気抵抗率が7μΩ−cm以下のものが良好な受信感度を保つことが可能であることが判明した。その結果、金、銀、銅、黄銅、アルミニウム,マグネシウム、亜鉛、またはそれらの合金のような材料で非磁性部材40,42を形成すれば、耐磁板38を使用した場合であっても受信感度を良好にすることができることが判明した。
【0027】
【発明の効果】
本発明によれば、電波時計であっても耐磁板を設けることにより、外部磁気から時計装置を保護することができるので、時刻表示精度を向上させることができる。
【0028】
また、耐磁板を設けても、耐磁板に開口部や非磁性部材を設けているので、時刻情報等の電波受信性能の低下を著しく少なくすることができ、電波時計本来の性能に影響を与えずに耐磁構造を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例に係る電波時計を示す断面図である。
【図2】図1に示す耐磁板の裏蓋方向からの平面図である。
【図3】本発明の第2実施例に係る電波時計を示す断面図である。
【図4】本発明の第3実施例に係る電波時計を示す断面図である。
【図5】本発明の第4実施例に係る電波時計を示す断面図である。
【図6】本発明の第5実施例に係る電波時計を示す断面図である。
【図7】図6に示す耐磁板の裏蓋方向からの平面図である。
【図8】耐磁板を用いた一般の腕時計の構造の従来例を示す断面図である。
【符号の説明】
2 ケース
4 ムーブメント
6 中枠
8 裏蓋
8a 中子
10 耐磁板
12 時計ケース
14 胴
14a 段部
14b 内方突出部
14c 内側面
16 裏蓋
16a 立ち上がり部
18 ガラス
20,22 パッキン
24 ムーブメント
26 文字板
28 指針
30 樹脂中枠
32 アンテナ
34 磁芯材
36 コイル
38 耐磁板
38a 立ち上がり部
38b 開口部
38c 切欠部
40,42 非磁性部材
40b 開口部
44 側パイプ

Claims (10)

  1. アンテナと時計装置と耐磁板とを時計ケースに収納し、該時計ケース内に配置された前記耐磁板が、前記アンテナと相対する部分に開口部を有するとともに、
    前記アンテナは、前記耐磁板の該開口部の外側に配設されていることを特徴とする電波時計。
  2. 前記アンテナは、磁芯材とこの磁芯材に複数巻かれたコイルとから構成され、
    前記磁芯材の軸線を含む少なくとも1つの平面に沿って、
    前記アンテナが平行に投影される前記耐磁板に開口部が設けられている
    ことを特徴とする請求項1記載の電波時計。
  3. 前記アンテナは、磁芯材とこの磁芯材に複数巻かれたコイルとから構成され、
    少なくとも前記アンテナの端部とそれぞれ相対する前記耐磁板に開口部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の電波時計。
  4. 前記アンテナは、その少なくとも一部が、前記耐磁板の開口部より突出し、
    前記時計ケースの胴内面側に位置していることを特徴とする請求項1記載の電波時計。
  5. 前記アンテナは、その少なくとも一部が、前記耐磁板の開口部より突出し、
    前記時計ケースの裏蓋側に位置していることを特徴とする請求項1記載電波時計。
  6. 前記アンテナは、その少なくとも一部が、前記耐磁板の開口部より突出し、
    表示板側に位置していることを特徴とする請求項1記載の電波時計。
  7. 前記耐磁板の内面には、電気抵抗率が7.0μΩーCm以下の非磁性部材が配設されていることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の電波時計。
  8. 前記耐磁板の開口部内には、前記非磁性部材が配設されていることを特徴とする請求項1、2、3または記載の電波時計。
  9. 前記非磁性部材は、銅、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、銀、金またはそれらの合金の中の少なくとも1つからなることを特徴とする請求項または記載の電波時計。
  10. 前記耐磁板は、前記表示板方向に向かって立上がった立上がり部を有し、
    該立上がり部が前記時計ケースの一部に当接し、前記耐磁板の回転を規制する
    ことを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の電波時計。
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