JP4292504B2 - ガラス板の風冷強化装置およびその方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はガラス板の風冷強化装置およびその方法に係り、特に曲げ成形された高温状態下にある湾曲ガラス板の両面に冷却エアを吹き付けてガラス板を風冷強化するガラス板の風冷強化装置およびその方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガラス板を加熱炉で軟化点近くまで加熱し、これを成形型で曲げ成形した後、風冷強化装置で急冷することにより自動車用窓ガラス等の湾曲ガラス板を製造する製造装置が従来から知られている。
【0003】
風冷強化装置は、上部吹き口部材と下部吹き口部材とから構成されている。これらの上部吹き口部材と下部吹き口部材との間に湾曲ガラス板が搬入されると、上部吹き口部材から湾曲ガラス板の上面に冷却エアが吹きつけられるとともに、下部吹き口部材から湾曲ガラス板の下面に冷却エアが吹きつけられる。これにより、高温のガラス板は急冷され、ガラス板の表面に圧縮応力層が形成されることにより、ガラス板が強化される。なお、複数の吹き口部材によって形成される吹き口面は、ガラス板全体を均等に冷却するために、湾曲ガラス板との距離が湾曲ガラス板全面に対して等しくなるように設定されている。
【0004】
ところで、本願出願人は、少量多品種の湾曲ガラス板の生産に対応するために、上部吹き口部材と下部吹き口部材とを複数の吹き口部材にそれぞれ分割するとともに、分割された吹き口部材の隣接する吹き口部材同士を、複数のリンクからなるリンク機構を介して連結することにより、複数の吹き口部材によって形成される吹き口面を、ガラス板の湾曲面に対応した曲率半径に変更できるガラス板の風冷強化装置を提案している(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−281369号公報(第4−5頁 図2)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記特許文献1に開示された風冷強化装置は、複数の吹き口部材による湾曲方向が一方向のみなので、一つの曲率半径で曲げ成形された単曲の湾曲ガラス板の場合には対応できるが、複数の曲率半径で曲げ成形された複曲の湾曲ガラス板には対応できないという欠点があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みて成されたもので、複曲の湾曲ガラス板に対応できるガラス板の風冷強化装置およびその方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記目的を達成するために、曲げ成形された高温のガラス板の上面に冷却エアを吹き付けるための上部吹き口ユニットと、前記ガラス板の下面に冷却エアを吹き付けるための下部吹き口ユニットとを備えたガラス板の風冷強化装置において、前記上部吹き口ユニットおよび下部吹き口ユニットは、それぞれマトリクス状に配設された複数の吹き口部材と、該複数の吹き口部材のうち隣接するもの同士を前記マトリクスの行および列方向に連結する複数の四節回転連鎖とを備え、前記四節回転連鎖が、略I字状の共有リンクと、該共有リンクの上下端部と隣接する吹き口部材の上下部とにそれぞれピンを介して回動自在に連結された上下一対のリンクとを有し、同一の共有リンクに連結された一対の上方のリンクはギヤ連結されるとともに、隣接する共有リンクに連結された上方のリンクとギヤ連結され、同一の共有リンクに連結された一対の下方のリンクはギヤ連結されるとともに、隣接する共有リンクに連結された下方のリンクとギヤ連結されたリンク機構であることを特徴とするガラス板の風冷強化装置を提供する。
【0009】
本発明は、前記目的を達成するために、曲げ成形された高温のガラス板の上面に冷却エアを吹き付けるための上部吹き口ユニットと、前記ガラス板の下面に冷却エアを吹き付けるための下部吹き口ユニットとを備えたガラス板の風冷強化方法において、前記上部吹き口ユニットおよび下部吹き口ユニットを、それぞれマトリクス状に配設された複数の吹き口部材と、該複数の吹き口部材のうち隣接するもの同士を行および列方向に連結する複数の四節回転連鎖とで構成し、前記四節回転連鎖が、略I字状の共有リンクと、該共有リンクの上下端部と隣接する吹き口部材の上下部とにそれぞれピンを介して回動自在に連結された上下一対のリンクとを有し、同一の共有リンクに連結された一対の上方のリンクはギヤ連結されるとともに、隣接する共有リンクに連結された上方のリンクとギヤ連結され、同一の共有リンクに連結された一対の下方のリンクはギヤ連結されるとともに、隣接する共有リンクに連結された下方のリンクとギヤ連結されたリンク機構であり、冷却されるガラス板の形状に対応させて、前記上部吹き口ユニットおよび/または前記下部吹き口ユニットを構成する吹き口部材の配置を可変し、前記上部吹き口ユニットと前記下部吹き口ユニットとの間に加熱されたガラス板を搬入し、前記吹き口部材から冷却エアを前記ガラス板に吹き付けることで前記ガラス板を風冷強化することを特徴とするガラス板の風冷強化方法を提供する。
【0010】
本発明によれば、マトリクス状に配置された複数の吹き口部材は、四節回転連鎖によって行および列方向にその位置が変更される。これにより、冷却されるガラス板の形状に対応させて、上部吹き口ユニットおよび/または下部吹き口ユニットのそれぞれの複数の吹き口部材の位置を可変することにより、全吹き口部材によって形成される吹き口面は、マトリクスの行方向に形成される第1の曲率半径と、マトリクスの列方向に形成される第2の曲率半径とを組み合わせた曲率面になる。また、四節回転連鎖の動作角度を四節回転連鎖毎に変えることにより、多数の曲率半径をもった面に吹き口面を形成できる。したがって、本発明によれば、複数の曲率半径で曲げ成形された複曲の湾曲ガラス板に対応できる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に従って本発明に係るガラス板の風冷強化装置およびその方法の好ましい実施の形態について詳説する。
【0012】
図1は、実施の形態のガラス板の風冷強化装置を含むガラス板成形装置10の構造を示す斜視図である。また、図1に示すガラス板成形装置10は、自動車用サイドガラスの成形装置である。
【0013】
ガラス板成形装置10のガラス板搬送方向上流側には、加熱炉12が設けられている。この加熱炉12にはローラコンベア14が配設されており、成形加工されるガラス板16は、ローラコンベア14によって加熱炉12内を図1上矢印A方向に搬送され、加熱炉12の出口において軟化点近く(650〜700℃程度)まで加熱される。
【0014】
加熱されたガラス板16は、ローラコンベア14によってガラス板成形装置10まで搬送される。ここでガラス板16は、枠状でガラス板16の輪郭形状に沿って形成されたプレスリング18に下面の周縁が支持される。プレスリング18に支持されたガラス板16は、図1の矢印Bで示すプレスリング18の上昇移動により上型20に向けて移動される。上型20は、下部に凸部(図示せず)が形成された雄型であり、これによってプレスリング18で上昇されたガラス板16は、上型20の凸部に押し付けられて、凸部に沿った複曲面を有する形状に曲げ成形される。なお、実施の形態では、上型20を固定しプレスリング18を上昇させてガラス板16を曲げ成形したが、これとは逆にプレスリング18を固定し上型20を下降移動させてガラス板16を曲げ成形してもよい。
【0015】
曲げ成形終了したガラス板16は、プレスリング18を水平方向に移動する移動装置22により、プレスリング18に支持された状態で図1の矢印C方向に移動され、風冷強化装置24に搬入される。
【0016】
風冷強化装置24は、ガラス処理ステージSを挟んで上方に上部送風手段26と下方に下部送風手段28とを備えている。上部送風手段26と下部送風手段28とには各々ダクト30(下部送風手段28側のダクトは不図示)が連結され、これらのダクト30には図示しないブロアが連結されている。したがって、ブロアが駆動されると、ブロアによって発生した冷却エアが、ダクト30を介して上部送風手段26と下部送風手段28とに供給される。そして、冷却エアは、上部送風手段26を構成する図2の複数の上部吹き口部材32、32…、および下部送風手段28を構成する複数の下部吹き口部材34、34…から、図1に示すガラス処理ステージSに向けて吹き出される。これにより、プレスリング18に支持されたガラス板16は、その両面が冷却されて風冷強化される。
【0017】
風冷強化されたガラス板16は、プレスリング18から不図示のクエンチリングに受け取られ、クエンチリングの図1の矢印D方向の移動によって検査工程へ搬送される。ここでガラス板16は、クラック等の欠陥が検査され、欠陥の無いものは良品工程へ、そして、欠陥が発見されたものはリサイクル工程へ各々搬送される。
【0018】
風冷強化装置24は、図2、図3に示すように複数の上部吹き口部材32、32…、および図2に示す複数の下部吹き口部材34、34…を備えている。
【0019】
また、図4は下部吹き口部材34、34…の斜視図であり、同図の如く下部吹き口部材34、34…は、矢印A方向(ガラス板16の挿入方向に直交する方向:マトリクスの行方向)に沿って11個並設され、かつ矢印A方向に直交する矢印B方向(ガラス板16の挿入方向:マトリクスの列方向)に沿って5個並設され、全体としてマトリクス状に配設されている。
【0020】
矢印A方向に配設された11個の下部吹き口部材34、34…は、後述する第1の四節回転連鎖によって動作され、矢印A方向に沿った所定の曲率半径に湾曲される。また、矢印B方向に並設された5個の下部吹き口部材34、34…は、後述する第2の四節回転連鎖によって動作され、矢印B方向に沿った所定の曲率半径に湾曲される。なお、矢印B方向に並設された5個の下部吹き口部材34、34…は、蛇腹状の可撓性ダクト(可撓性のシート)35、35…を介してぞれぞれ連結され、第1の四節回転連鎖の動作に連動して同位置に移動される。よって、第1の四節回転連鎖は、図4の如く手前側第1行の下部吹き口部材34、34…のみ設けてもよく、また、この手前側第1行と最後列(第5行)の下部吹き口部材34、34…とに設けてもよい。
【0021】
図4では下部吹き口部材34、34…のみ示したが、図2、図3に示した上部吹き口部材32、32…においても、下部吹き口部材34、34…の構造と基本的には同一である。すなわち、上部吹き口部材32、32…においても、矢印A方向に沿って複数個並設され、かつ矢印B方向に沿って複数個並設され、全体として行と列とからなるマトリクス状に配設されている。また、矢印A方向に配設された複数個の上部吹き口部材32、32…は、第1の四節回転連鎖によって動作され、矢印A方向に沿った所定の曲率半径に湾曲される。また、矢印B方向に並設された複数個の上部吹き口部材32、32…は、第2の四節回転連鎖によって動作され、矢印B方向に沿った所定の曲率半径に湾曲される。
【0022】
図2、図3の如く上部吹き口部材32、32…は矩形状の箱体であり、各々の上部には、フレキシブルチューブ36、36…が連結され、このフレキシブルチューブ36がプレナムを介して図1のダクト30に連結されている。したがって、ダクト30に供給された冷却エアは、フレキシブルチューブ36、 36…を介して複数の上部吹き口部材32、32…に導入される。そして、上部吹き口部材32、32…の下部に上部吹き口部材32の長手方向に沿って所定の間隔で取り付けられた突状ブロック37、37…のエア噴射ノズルから下方に向けて冷却エアが噴射される。
【0023】
ところで、図2、図3に示す矢印A方向に並設された隣接する上部吹き口部材32、32…は、第1の四節回転連鎖である第1リンク機構40によって移動自在に連結されている。
【0024】
第1リンク機構40は、略I字形状の共有リンク42、共有リンク42と上部吹き口部材32とを連結して斜めに配される下方のリンク46と上方のリンク48、および各リンク42、46、48を連結する支点部材であるピン52、54、56、58から構成される。すなわち、第1リンク機構40は、共有リンク42、共有リンク42の下端部にピン56を介して回動自在に連結されるとともに上部吹き口部材32の下部にピン52を介して回動自在に連結されたリンク46、および、共有リンク42の上端部にピン58を介して回動自在に連結されるとともに上部吹き口部材32の上部にピン54を介して回動自在に連結されたリンク48から構成されている。
【0025】
図3の如く、リンク46の円弧状両端部には、ギア部47、47が形成されている。そして、リンク46は、同一の共有リンク42に連結されたリンク46とその上端部でかつ同一平面上でギア連結され、また、隣接した共有リンク42に連結されたリンク46とその下端部でかつ同一平面上でギア連結されている。したがって、一方のリンク46が所定角度θだけ回動すると、他方のリンク46もこれに従い角度θだけ回動する構成となっている。
【0026】
リンク48も同様に、リンク48の円弧状両端部には、ギア部49、49が形成されている。そして、リンク48は、同一の共有リンク42に連結されたリンク48とその上端部でかつ同一平面上でギア連結され、また、隣接した共有リンク42に連結されたリンク48とその下端部でかつ同一平面上でギア連結されている。したがって、一方のリンク48が所定角度θだけ回動すると、他方のリンク48もこれに従い角度θだけ回動する構成となっている。
【0027】
第1リンク機構40、40…によって連結された上部吹き口部材32、32…は、図5に示すように、その左右両端部に配置された上部吹き口部材32、32がアーム68、68を介して不図示の揺動装置に支持される。また、左右両端部に配置された上部吹き口部材32、32に対して内側に配置された上部吹き口部材32、32も同様にアーム69、69を介して不図示の揺動装置に支持されている。
【0028】
これらのアーム68、69は、前記揺動装置によって上下左右に所定量動作される。このようにアーム68、69が動作されると、上部吹き口部材32、32…は、第1リンク機構40の連動作用によって、図示しない所定の揺動支点を中心に揺動される。
【0029】
具体的にはアーム69、69が互いに近づく方向に揺動されると、アーム69、69の間にある第1リンク機構40のリンク46とリンク48の水平とのなす角度が大きくなり、この角度変化は隣接する第1リンク機構40、40…間で伝達されるので、各々の突状ブロック37、37…のエア噴射ノズルを結ぶ曲線C1の曲率半径R1が大きくなる。また、アーム68、68が互いに離れる方向に揺動されると、リンク46とリンク48の水平とのなす角度が小さくなり、この角度変化は隣接する第1リンク機構40、40…間で伝達されるので、前記突状ブロック37、37…のエア噴射ノズルを結ぶ曲線C1´の曲率半径R1´が小さくなる。したがって、アーム69、69の揺動量を制御すれば、曲率半径R1を任意の曲率半径に変更できるので、曲率半径R1をガラス板16の曲面形状に応じて変更できる。
【0030】
また、アーム68、68が揺動されると、アーム68、69の間にある第1リンク機構40のリンク46とリンク48の水平とのなす角度が大きくなったり小さくなったりするので、アーム68、69の間にある突状ブロック37、37…のエア噴射ノズルを結ぶ曲線C2の曲率半径R2が大きくなったり小さくなったりする。したがって、アーム68、68の揺動量を制御すれば、曲率半径R2を任意の曲率半径に変更できるので、曲率半径R2をガラス板16の曲面形状に応じて変更できる。これにより、矢印A方向に並設される上部吹き口部材32、32…は、R1、R2の所望の曲率半径に湾曲される。
【0031】
図2の如く、下部吹き口部材34、34…下部には、フレキシブルチューブ84が連結され、これらのフレキシブルチューブ84はプレナム28aに連結されている。したがって、プレナム28aに連結されたダクト(不図示)に供給された冷却エアは、フレキシブルチューブ84を介して下部吹き口部材34、34…に導入される。そして、下部吹き口部材34、34…の上部に下部吹き口部材34の長手方向に所定の間隔で取り付けられた突状ブロック85、85…(図4参照)のエア噴射ノズルから上方に向けて冷却エアが噴射される。
【0032】
また、矢印A方向に配設された下部吹き口部材34、34…には、図2に示すように、四節回転連鎖である第1リンク機構140が左右両側に配設されており、第1リンク機構140によって、矢印A方向に隣接する下部吹き口部材34、34…同士が移動自在に連結されている。
【0033】
第1リンク機構140は、第1リンク機構40と略同一の構成、機能を有するものであり、ガラス板16を挟んで第1リンク機構40と上下対称形状に配される。すなわち、第1リンク機構140は、第1リンク機構40を上下で逆転して配されたものである。
【0034】
第1リンク機構140は、略I字形状の共有リンク142、共有リンク142と下部吹き口部材34とを連結して斜めに配される下方のリンク146と上方のリンク148、および各リンク142、146、148を連結する支点部材であるピン152、154、156、158とで構成される。すなわち、第1リンク機構140は、共有リンク142、共有リンク142の下端部にピン156を介して回動自在に連結されるとともに下部吹き口部材34の下部にピン152を介して回動自在に連結されたリンク146、および、共有リンク142の上端部にピン158を介して回動自在に連結されるとともに下部吹き口部材34の上部にピン154を介して回動自在に連結されたリンク148とから構成される。
【0035】
このリンク146、148も、図3に示したリンク46、48と同様に、その円弧状両端部にはギア部が形成され、隣接するリンク146、146、およびリンク148、148がリンク46、48と同様に噛合されている。
【0036】
第1リンク機構140、140…によって連結された下部吹き口部材34、34…は、図5に示すように、その左右両端部に配置された下部吹き口部材34、34がアーム168、168を介して不図示の揺動装置に支持される。また、左右両端部に配置された下部吹き口部材34、34に対して内側に配置された下部吹き口部材34、34も同様にアーム169、169を介して不図示の揺動装置に支持されている。
【0037】
これらのアーム168、169は、前記揺動装置によって上下左右に所定量動作される。このようにアーム168、169が動作されると、下部吹き口部材34、34…は、第1リンク機構140の連動作用によって、図示しない所定の揺動支点を中心に揺動される。
【0038】
具体的にはアーム169、169が互いに近づく方向に揺動されると、アーム169、169の間にある第1リンク機構140のリンク146とリンク148の水平とのなす角度が大きくなり、この角度変化は隣接する第1リンク機構140、140…間で伝達されるので、各々の突状ブロック85、85…のエア噴射ノズルを結ぶ曲線C3の曲率半径R3が大きくなる。また、アーム168、168が互いに離れる方向に揺動されると、リンク146とリンク148の水平とのなす角度が小さくなり、この角度変化は隣接する第1リンク機構140、140…間で伝達されるので、前記突状ブロック85、85…のエア噴射ノズルを結ぶ曲線C3´の曲率半径R3´が小さくなる。したがって、アーム169、169の揺動量を制御すれば、曲率半径R3を任意の曲率半径に変更できるので、曲率半径R3をガラス板16の曲面形状に応じて変更できる。
【0039】
また、アーム168、168が揺動されると、アーム168、169の間にある第1リンク機構140のリンク146とリンク148の水平とのなす角度が大きくなったり小さくなったりするので、アーム168、169の間にある突状ブロック85、85…のエア噴射ノズルを結ぶ曲線C4の曲率半径R4が大きくなったり小さくなったりする。したがって、アーム168、168の揺動量を制御すれば、曲率半径R4を任意の曲率半径に変更できるので、曲率半径R4をガラス板16の曲面形状に応じて変更できる。これにより、矢印A方向に並設される下部吹き口部材34、34…は、R3、R4の所望の曲率半径に湾曲される。
【0040】
以上の如く、矢印A方向に配設された上部吹き口部材32、32…および下部吹き口部材34、34は、第1リンク機構40、140の作用によって所望の曲率半径に湾曲される。
【0041】
次に、図4において矢印B方向に配設された吹き口部材の連結構造について説明する。この連結構造は、上部吹き口部材32においても下部吹き口部材34においても同一構造であるため、ここでは下部吹き口部材34の連結構造を説明し、上部吹き口部材32の連結構造についてはその説明を省略する。
【0042】
矢印B方向にそれぞれ配設された5個の下部吹き口部材34、34…は、図6〜図8に示す第2の四節回転連鎖である第2リンク機構240によって連結されている。また、図4の左側から5列目の下部吹き口部材列であって、第1リンク機構140に連結されている先頭の下部吹き口部材34に、図7、図8に示す駆動装置270が連結されている。
【0043】
第2リンク機構240は、鉛直方向に配置された長尺状の共有リンク242、共有リンク242と下部吹き口部材34とを矢印B方向に連結して斜めに配される下方のリンク246と上方のリンク248、および各リンク242、246、248を連結する支点部材であるピン252、254、256、258とで構成される。すなわち、第2リンク機構240は、共有リンク242、共有リンク242の下端部にピン256を介して回動自在に連結されるとともに下部吹き口部材34の下部にピン252を介して回動自在に連結されたリンク246、および、共有リンク242の上端部にピン258を介して回動自在に連結されるとともに下部吹き口部材34の上部にピン254を介して回動自在に連結されたリンク248とから構成される。
【0044】
リンク246の端部は円弧形状に形成され、さらにリンク246の両端部にはギア部247が形成されている。そして、共有リンク242に連結される左右のリンク246、246の端部同士は同一平面上で噛合されている。したがって、一方のリンク246が所定角度θだけ回動すると、他方のリンク246もこれに従い角度θだけ回動する。
【0045】
リンク248の端部は円弧形状に形成され、さらにリンク248の両端部にはギア部249が形成されている。そして、共有リンク242に連結される左右のリンク248、248の端部同士は同一平面上で噛合されている。したがって、一方のリンク248が所定角度θだけ回動すると、他方のリンク248もこれに従い角度θだけ回動する。なお、第2リンク機構240は、矢印B方向に配設された1列の下部吹き口部材34、34…に対して、図6の如く両側に一対配設されている。
【0046】
図7、図8の如く右端側に配設された第2リンク機構240のリンク246には、駆動装置270を構成するリンク260の左端ギヤ部261がギヤ連結されている。このリンク260は、ピン262を介して右端側の下部吹き口部材34、すなわち、図4の第1リンク機構140に連結された下部吹き口部材34に回動自在に支持されている。また、図7に示すリンク260は、その右端ギヤ部261が、スライダ264に固定されたギア266に噛合されるとともに、ギア266の軸心の位置で一方の端部がピン止めされて、そのピンを中心として回動可能な二点鎖線で示す小さなリンクの他端のピン268に回動自在に連結されている。したがって、スライダ264が矢印B方向に往復移動されると、リンク260が前記ピン止めのピンを支点としてギア266の周りを移動することにより、リンク260がピン268を支点として揺動される。
【0047】
スライダ264は、矢印B方向に配設された送りねじ装置の送りねじ272に螺合されるとともに、不図示のガイドに沿って矢印B方向に移動自在に支持されている。送りねじ272のプーリ274には、モータ276の出力軸278に設けられたプーリ280にベルト282を介して連結されている。したがって、モータ276が正転/逆転駆動されると送りねじ272が回転されて、スライダ264が矢印B方向に沿って往復移動される。
【0048】
具体的に図7の位置にあるスライダ264が左方向に移動され、図8の位置に位置すると、その移動過程において、リンク260がピン268を支点にギア266の周りを時計周り方向に回動し、水平とのなす角度が大きくなる。このリンク260の角度変化は、第2リンク機構240、240…間で伝達されるので、矢印B方向に並ぶ突状ブロック85、85…のエア噴射ノズルを結ぶ曲線C5の曲率半径R5が小さくなる。また、図8の位置にあるスライダ264が右方向に移動され、図7の位置に位置すると、その移動過程において、リンク260がピン268を支点にギア266の周りを反時計周り方向に回動し、水平とのなす角度が小さくなる。このリンク260の角度変化は、第2リンク機構240、240…間で伝達されるので、矢印B方向に並ぶ突状ブロック85、85…のエア噴射ノズルを結ぶ曲線C5の曲率半径R5が大きくなる。したがって、スライダ264の移動量を制御すれば、矢印B方向の曲率半径R5を任意の曲率半径に変更できるので、曲率半径R5をガラス板16の曲面形状に応じて変更できる。
【0049】
以上説明したように、本実施の形態の下部吹き口部材34、34…によれば、分割された全ての下部吹き口部材34、34のうち、矢印A方向に配設された複数の下部吹き口部材34、34を第1リンク機構140によって動作させ、矢印A方向において所望の第1の曲率半径に湾曲させる。そして、分割された全ての下部吹き口部材34、34のうち、矢印B方向に配設された複数の下部吹き口部材34、34を第2リンク機構240によって動作させ、矢印B方向において所望の第2の曲率半径に湾曲させる。
【0050】
これにより、全ての下部吹き口部材34、34…によって形成される吹き口面は、第1リンク機構140によって形成される第1の曲率半径と、第2リンク機構240によって形成される第2の曲率半径とを組み合わせた曲面となるので、吹き口面を多数の曲率半径をもった面に形成できる。また、上部吹き口部材32、32…においても同様である。したがって、実施の形態の風冷強化装置24は、複数の曲率半径で曲げ成形された複曲の湾曲ガラス板の冷却に対応できる。
【0051】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係るガラス板の風冷強化装置およびその方法によれば、マトリクス状に配置された複数の吹き口部材を、四節回転連鎖によって行および列方向にその位置を変更可能とした。これにより、冷却されるガラス板の形状に対応させて、上部吹き口ユニットおよび/または下部吹き口ユニットのそれぞれの複数の吹き口部材の位置を可変することにより、全吹き口部材によって形成される吹き口面は、マトリクスの行方向に形成される第1の曲率半径と、マトリクスの列方向に形成される第2の曲率半径とを組み合わせた曲率面になる。また、四節回転連鎖の動作角度を四節回転連鎖毎に変えることにより、多数の曲率半径をもった面に吹き口面を形成できる。したがって、本発明によれば、複数の曲率半径で曲げ成形された複曲の湾曲ガラス板に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態に係るガラス板の風冷強化装置が適用されたガラス板成形装置の構造図
【図2】実施の形態に係るガラス板の風冷強化装置の第1リンク機構の構造図
【図3】風冷強化装置の第1リンク機構の要部拡大構造図
【図4】風冷強化装置の下部吹き口部材の配列構成を示した斜視図
【図5】風冷強化装置のリンク機構を駆動する駆動装置の構造図
【図6】風冷強化装置の第2リンク機構の要部拡大透視図
【図7】風冷強化装置の第2リンク機構の要部拡大構造図
【図8】風冷強化装置の第2リンク機構の動作説明図
【符号の説明】
10…ガラス板成形装置、24…風冷強化装置、32…上部吹き口部材、34…下部吹き口部材、40、140…第1リンク機構、240…第2リンク機構

Claims (6)

  1. 曲げ成形された高温のガラス板の上面に冷却エアを吹き付けるための上部吹き口ユニットと、前記ガラス板の下面に冷却エアを吹き付けるための下部吹き口ユニットとを備えたガラス板の風冷強化装置において、
    前記上部吹き口ユニットおよび下部吹き口ユニットは、それぞれマトリクス状に配設された複数の吹き口部材と、該複数の吹き口部材のうち隣接するもの同士を前記マトリクスの行および列方向に連結する複数の四節回転連鎖とを備え、
    前記四節回転連鎖が、略I字状の共有リンクと、該共有リンクの上下端部と隣接する吹き口部材の上下部とにそれぞれピンを介して回動自在に連結された上下一対のリンクとを有し、同一の共有リンクに連結された一対の上方のリンクはギヤ連結されるとともに、隣接する共有リンクに連結された上方のリンクとギヤ連結され、同一の共有リンクに連結された一対の下方のリンクはギヤ連結されるとともに、隣接する共有リンクに連結された下方のリンクとギヤ連結されたリンク機構であることを特徴とするガラス板の風冷強化装置。
  2. 前記リンク機構は、マトリックスの行方向に第1の曲率半径を形成する第1リンク機構と、マトリックスの列方向に第2の曲率半径を形成する第2リンク機構とから構成され、前記複数の吹き口部材によって形成される吹き口面は、第1の曲率半径と第2の曲率半径とを組み合わせた曲率面である請求項1に記載のガラス板の風冷強化装置。
  3. 前記マトリクスの最も外側に位置する2つの行に沿って配設された前記吹き口部材同士を前記第1リンク機構で連結し、
    前記複数の吹き口部材のうち、前記マトリクスの列方向に隣接するもの同士全てを前記第2リンク機構で連結した請求項に記載のガラス板の風冷強化装置。
  4. 前記マトリクスの列方向に隣接する前記複数の吹き口部材同士の連結部分を可撓性のシートで封止することにより、前記列方向に隣接する複数の吹き口部材同士間で冷却エアが流通できるようにした請求項1、2または3に記載のガラス板の風冷強化装置。
  5. 前記上部吹き口ユニットの吹き口部材および前記下部吹き口ユニットの吹き口部材は、それぞれ冷却エアを噴射するための孔を有したノズルを備え、
    前記上部吹き口ユニットの吹き口部材に設けられた前記ノズルと前記下部吹き口ユニットの吹き口部材に設けられた前記ノズルとは、互いに対向して配置されている請求項1、2、3または4に記載のガラス板の風冷強化装置。
  6. 曲げ成形された高温のガラス板の上面に冷却エアを吹き付けるための上部吹き口ユニットと、前記ガラス板の下面に冷却エアを吹き付けるための下部吹き口ユニットとを備えたガラス板の風冷強化方法において、
    前記上部吹き口ユニットおよび下部吹き口ユニットを、それぞれマトリクス状に配設された複数の吹き口部材と、該複数の吹き口部材のうち隣接するもの同士を行および列方向に連結する複数の四節回転連鎖とで構成し、
    前記四節回転連鎖が、略I字状の共有リンクと、該共有リンクの上下端部と隣接する吹き口部材の上下部とにそれぞれピンを介して回動自在に連結された上下一対のリンクとを有し、同一の共有リンクに連結された一対の上方のリンクはギヤ連結されるとともに、隣接する共有リンクに連結された上方のリンクとギヤ連結され、同一の共有リンクに連結された一対の下方のリンクはギヤ連結されるとともに、隣接する共有リンクに連結された下方のリンクとギヤ連結されたリンク機構であり、
    冷却されるガラス板の形状に対応させて、前記上部吹き口ユニットおよび/または前記下部吹き口ユニットを構成する吹き口部材の配置を可変し、
    前記上部吹き口ユニットと前記下部吹き口ユニットとの間に加熱されたガラス板を搬入し、
    前記吹き口部材から冷却エアを前記ガラス板に吹き付けることで前記ガラス板を風冷強化することを特徴とするガラス板の風冷強化方法。
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