JP4291836B2 - ゴルフクラブヘッド - Google Patents

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Description

本発明は、反発性能を低下させることなく打球時の衝撃吸収性を高め、優れた打球感を発揮しうるゴルフクラブヘッドに関する。
近年、良好な打球感を得るために、例えば図13に示されるように、ヘッド本体bと、その前側に配される板状のフェースプレートcと、該フェースプレートcとヘッド本体bとの間の凹所に圧縮して配された衝撃吸収用の弾性体dとを含むゴルフクラブヘッドaが提案されている(例えば下記特許文献1参照)。前記弾性体dは、後側部d1や外周部d3及びd4がヘッド本体bに、また前側部d2がフェースプレートcの背面にそれぞれ接触する。
特開2004−89434号公報
ところで、上述のクラブヘッドaでは、弾性体dの外周面d3ないしd4がヘッド本体bで保持される。このため、弾性体dを収容するヘッド本体bが比較的大型化し、フェースプレートcのヘッド本体bで支持されていない自由撓み領域Zが小さくなる傾向がある。このようなクラブヘッドaは、打球時におけるフェースプレートcの撓みが小さくなるため、反発性能が低下しやすい。また、弾性体dがヘッド本体bにほぼ拘束された状態で配されるため、その歪が制限され、ひいては振動吸収効果も小さくなると考えられる。
本発明は、以上のような実情に鑑み案出なされたもので、ヘッド本体とフェース部材との間に形成される間隙内に、フェース部材及びヘッド本体のいずれにも接触することなくこれらの間をのびる非拘束部を有した衝撃吸収体を配することを基本として、反発性能を低下させることなく打球時の衝撃吸収性を高め得るゴルフクラブヘッドを提供することを主たる目的としている。
本発明のうち請求項1記載の発明は、ボールを打撃するフェースの少なくとも一部を含む金属材料からなるフェース部材と、前記フェース部材が固着された金属材料からなるヘッド本体とを含むゴルフクラブヘッドであって、前記フェース部材は、前記フェースと反対側の面であるフェース背面を有し、かつ、前記ヘッド本体は、フェース背面の周縁部と接触する受け面と、該受け面からヘッド後方にのびるととともに前記フェース背面と接触することなくヘッド中心側に折り返されて終端することにより前後に貫通した一つの開口部を形成する返し部とを有し、しかも該返し部は、前記フェース背面と向き合うことにより前記フェース背面との間に間隙を形成する対向面を含み、前記間隙には、弾性材料からなる衝撃吸収体が配され、かつ該衝撃吸収体は、トウ側に設けられたトウ側の吸収体と、ヒール側に設けられたヒール側の吸収体とを少なくとも含むとともに、各衝撃吸収体は、前記フェース背面に接触する前側部から前記対向面に接触する後側部にのびており、しかも前記前側部と前記後側部との間にフェース部材及びヘッド本体のいずれにも接触することなく前記間隙内をのびている非拘束部を含むことを特徴とする。
また請求項2記載の発明は、前記対向面は、衝撃吸収体の前記後側部が嵌め込まれる凹部を有する請求項1記載のゴルフクラブヘッドである。また請求項3記載の発明は、前記衝撃吸収体は、前記フェース背面に対して垂直にのびる中心線を有した円柱状、角柱状又は三角柱状をなす請求項1又は2に記載のゴルフクラブヘッドである。また請求項4記載の発明は、前記トウ側の吸収体の体積が、前記ヒール側の吸収体の体積よりも大きい請求項3記載のゴルフクラブヘッドである。さらに、請求項5記載の発明は、前記フェース背面は、前記ヘッド本体の受け面で囲まれる自由撓み領域に、スイートスポットを囲む環状の凹溝が形成されるとともに、前記衝撃吸収体の前記前側部は、該凹溝内で前記フェース背面と接触する請求項1乃至4のいずれかに記載のゴルフクラブヘッドである。さらに、請求項6記載の発明は、前記凹溝の位置におけるフェース部材の厚さt2は、1.6mm以上2.3mm以下である請求項5に記載のゴルフクラブヘッドである。
また請求項7記載の発明は、前記フェース部材は、フェースを構成する前面と、前記フェース背面と、これらの間を継ぐ側端面とを含む板状体で構成され、前記ヘッド本体は、フェース部材の前記側端面に接触しこれを支持する内向き面を含むとともに、トップ部側には、前記内向き面を切り欠くことにより、前記フェース部材の側端面をトップ面でヘッド外面に露出させる切欠き部が設けられる請求項1乃至6のいずれかに記載のゴルフクラブヘッドである。また請求項8記載の発明は、前記対向面は、前記フェース背面と平行にのびる請求項1乃至7のいずれかに記載のゴルフクラブヘッドである。また請求項9記載の発明は、非拘束部の長さは0.3〜4.0mmである請求項1乃至8のいずれかに記載のゴルフクラブヘッドである。さらに、請求項10記載の発明は、前記凹部の深さは、3.0〜10.0mmである請求項2記載のゴルフクラブヘッドである。
また請求項11記載の発明は、アイアン型である請求項1乃至10のいずれかに記載のゴルフクラブヘッドである。また請求項12記載の発明は、ヘッドを、そのライ角α及びロフト角βに保持して水平面に置いた基準状態での正面視において、各衝撃吸収体は、スイートスポットよりも低所に設けられる請求項1乃至11のいずれかに記載のゴルフクラブヘッドである。さらに、請求項13記載の発明は、前記衝撃吸収体は、1ヘッド当たり、3個以上10個以下で設けられている請求項1乃至12のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。
また請求項5記載の発明は、前記フェース背面は、前記ヘッド本体の受け面で囲まれる自由撓み領域に、スイートスポットを囲む環状の凹溝が形成されるとともに、前記衝撃吸収体の前記前側部は、該凹溝内で前記フェース背面と接触する請求項1乃至4のいずれかに記載のゴルフクラブヘッドである。
本発明では、ヘッド本体の返し部の対向面とフェース背面との間に形成される間隙に、弾性材料からなる衝撃吸収体が配される。該衝撃吸収体は、フェース背面と接触する前側部から対向面と接触する後側部にのびる。従って、打球時のフェース部材及び/又はヘッド本体の振動は、衝撃吸収体に伝えられ熱に変換されて吸収される。また、衝撃吸収体は、前側部と後側部との間にフェース部材及びヘッド本体のいずれにも接触することなく空所内をのびる非拘束部を有する。このような非拘束部は、制約を受けることなく自由に振動しうるので、大きな振動減衰効果を発揮できる。さらに、ヘッド本体の返し部は、受け面からヘッド後方にのびかつ前記フェース背面と接触することなくヘッド中心側に折り返されるため、打球時におけるフェース部材の撓みを損ねることがない。よって、反発性能の低下が防止される。
以下、本発明の実施の一形態を図面に基づき説明する。
図1は本発明の一実施形態としてアイアン型ゴルフクラブヘッドの基準状態の正面図、図2はその背面図、図3は図1のA−A拡大端面図、図4は図3のソール側部分の拡大図をそれぞれ示す。なお前記基準状態とは、クラブヘッド1を、そのライ角α及びロフト角β(リアルロフト角)に保持して水平面HPに置いた状態とする。
本実施形態のアイアン型ゴルフクラブヘッド(以下、単に「ヘッド」又は「クラブヘッド」ということがある。)1は、ボールを打撃する面であるフェースFと、このフェースFの上縁に連なりかつヘッド上面をなすトップ面2と、前記フェースFの下縁に連なりかつヘッド底面をなすソール面3と、該ソール面3と前記トップ面2との間をトウ側で継ぐトウ面4と、前記フェースFのヒール側に設けられたネック部5と、該ネック部5に連なりかつシャフト(図示省略)が装着されるシャフト差込孔6aを有するホーゼル部6と、ヘッド背面をなすバックフェース7とを含む。なおヘッド1のライ角αは、このシャフト差込孔6aの軸中心線CLを用い得る。
また、クラブヘッド1は、前記フェースFの少なくとも一部を含む金属材料からなるフェース部材8と、該フェース部材8が接合される金属材料からなるヘッド本体9とを含んで構成される。
前記フェース部材8の金属材料としては、例えばチタン、チタン合金、アルミニウム合金又はSUS450(マレージング銅)等の高強度かつ反発性に優れた金属材料が望ましい。本実施形態のフェース部材8は、チタン合金が採用される。
図5には、本実施形態のフェース部材8を背面側から見た斜視図を示す。該フェース部材8は、フェースFの主要部を構成する前面8aと、その反対側の面であるフェース背面8bと、フェース背面8bと前面8aとの間を継ぐ側端面8cとを含む板状体で構成される。
前記前面8aは、溝等のインパクトエリアマーキングmを除いて実質的な単一の平面で形成される。また、側端面8cは、トップ面2でヘッド外面に露出するトップ側端面22と、ソール面3に沿ってのびるソール側端面23と、該ソール側端面23とトップ側端面22との間をトウ面4に沿ってのびるトウ側端面24と、前記ソール側端面23とトップ側端面22との間をヒール側でほぼ垂直にのびるヒール側端面25とを含む。これにより、フェース部材8は、基準状態の正面視(図1)において、ヒール側からトウ側に向かって高さが漸増する如く形成される。また、本実施形態では、前記トップ側端面22は、段差を介してトウ側端面23と接続されたものが示される。
フェース部材8の厚さt1は、特に限定されないが、該厚さt1が小さすぎると、強度が不足して耐久性が悪化する傾向があり、逆に大きすぎてもフェース部材8の剛性が過度に高められ、反発性能が悪化する傾向がある。このような観点より、前記厚さt1は、好ましくは2.0mm以上、より好ましくは2.2mm以上が望ましく、また上限については、好ましくは3.5mm以下、より好ましくは3.3mm以下が望ましい。なおクラブヘッド1の反発性を向上させるために、本実施形態のフェース部材8の厚さt1は実質的に一定に形成されているが、各部で変化させることができるのは言うまでもない。
前記ヘッド本体9は、図6に示されるように、トップ面2に沿ってのびかつ本実施形態ではそのヘッド後方部分を形成するトップ部枠9aと、ソール面3に沿ってのびかつ該ソール面3の実質的全域を形成するソール部枠9bと、前記トップ部枠9aと前記ソール部枠9bとを継ぐとともにトウ面4の実質的な全域を形成するトウ側枠9cと、前記ネック部5と、前記ホーゼル部6とを含んで構成される。
該ヘッド本体9を形成する金属材料としては、例えばSUS630、SUS255、SUS450等のステンレス鋼、その他、フェース部材8よりも比重が大きいものが好ましい。本実施形態のヘッド本体9には、フェース部材8の金属材料よりも比重が大きいステンレス鋼が用いられる。これにより、フェース部材8の周辺部により多くの重量が配分され、慣性モーメントやスイートエリアの大きいヘッド1が提供される。なお、本実施形態のヘッド本体9は、鋳造品からなり、各部が一体に形成されている。これによって、生産性を高め得る。
また、図4、図6及び図1からフェース部材8を取り外した正面図である図7に示されるように、ヘッド本体9には、フェース部材8の側端面8cに接触しこれを支持する内向き面11と、フェース背面8bの周縁部8beに接触する受け面12と、前記受け面12からヘッド後方にのびるととともにフェース背面8bと接触することなくヘッド中心側に折り返された返し部14とを有する。なお、図5には、理解しやすいように、受け面12にて支えられる領域がハッチングにて示されている。
前記内向き面11は、ソール部枠9bに設けられかつフェース部材8のソール側端面23を支持するソール内向き面11aと、トウ側枠9cに設けられかつフェース部材8のトウ側端面24を支持するトウ内向き面11bと、前記ネック部5に設けられかつフェース部材8のヒール側端面25を支持するヒール内向き面11cとを含む。各内向き面11は、フェース部材8の厚さt1と実質的に同じ幅で形成される。
他方、トップ部枠9aは、このような内向き面11が設けられておらずその部分を切り欠いた切り欠き部分16を含む。これにより、フェース部材8のトップ側端面22の少なくとも一部は、この切り欠き部分16からトップ面2に露出される(即ち、ヘッド外面に露出しうる。)。これにより、ヘッド上部が比重の小さいフェース部材8で構成されるため、ヘッド重心Gをより低い位置に設けるのに役立つ点で好ましい。
本実施形態の受け面12は、トウ側枠9c、ソール部枠9b、トウ側枠9c及びネック部5に環状で連続して設けられる。これにより、フェース背面8bの周縁部8beは、受け面12により、環状に連続して支持される。なお、理解しやすいように、フェース背面の周縁部8beをハッチングにて示す。また、受け面12は、フェースFからヘッド後方に実質的にフェース部材8の厚さt1で凹んだ位置に設けられ、かつ、前記フェース背面8bと実質的に平行な平面で形成されている。
このように、内向き面11と受け面12とを含むにより、ヘッド本体9は、フェース部材8の側端面8cとフェース背面8bとがなすコーナ部分を保持しうる結果、フェース部材8をより確実にヘッド本体9に接合するのに役立つ。また、切欠き部分16をトップ部枠9aに含ませたときには、前記効果を維持しつつ、ヘッド1をより一層低重心するのに役立つ。なお、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、例えば内向き面11は、環状に連続して形成されても良く、或いはこれとは逆に内向き面11を省略し受け面12だけでフェース部材8を支えても良いのは言うまでもない。
前記受け面12の幅W1は、特に限定はされないが、小さすぎるとフェース背面8bと十分な接合面積が確保されず、ひいては接合部の耐久性が悪化するおそれがあり、逆に大きすぎるとフェース部材8の反発性能を低下させるおそれがある。このような観点より、前記幅W1は、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1.0mm以上が望ましく、上限については好ましくは5.0mm以下、より好ましくは3.0mm以下、さらに好ましくは2.0mm以下が望ましい。
また、本実施形態のヘッド本体9は、トップ部枠9a、トウ側枠9c、ソール部枠9b及びネック部5で囲まれかつ前後に貫通した一つの開口部Oが形成され、この開口部Oの周りに、前記返し部14が設けられている。
図7に示されるように、本実施形態の返し部14は、トップ部枠9aに設けられたトップ側の返し部14aと、トウ側枠9cに設けられたトウ側の返し部14cと、前記ソール部枠9bに設けられたソール側の返し部14bとを含み、これらは連続して形成されている。
各返し部14は、図4及び図6に示されるように、例えば断面略逆L字状で形成されており、本実施形態では受け面12の内周縁12iからフェース背面8bと離れる向き(ヘッド後方)にのびる内周面17と、該内周面17からヘッド中心側に立ち上がるとともにフェース背面8bと向き合う対向面18とを含み、フェース背面8bと接触することなく設けられる。これにより、フェース部材8のフェース背面8bは、ヘッド本体9とは前記受け面12だけと接触する一方、該周縁部8beで囲まれるヘッド本体9と接触しない自由撓み領域8bcが形成される。なお、前記「ヘッド中心側」とは、図3に示されるように、ヘッド重心GとスイートスポットSSとを結ぶ垂線N(又はその延長線)に向かう方向とする。
また、前記ソール側の返し部14bは、前記対向面18の内周縁18iからさらにヘッド後方にのびる第2の内周面19と、この第2の内周面19の後縁からヘッド中心側に立ち上がる第2の対向面20とを含む。これにより、ソール部側においては、ステップ状の間隙13が形成される。
また、返し部14とフェース背面8bとの間には、間隙13が設けられる。該間隙13は、フェース部材8の後方に、フェース部材8がヘッド後方に自由に撓み得る空間を提供する。従って、ヘッド1の反発性能を高めるのに役立つ。また、前記対向面18は、フェース背面8bとほぼ平行にのびており、これにより、フェース背面8bとの間にアンダーカット状の前記間隙13が形成される。
前記間隙13には、弾性材料からなる衝撃吸収体15が配される。該衝撃吸収体15は、フェース背面8bに接触する前側部15aと、前記対向面18に接触する後側部15bと、これらの間をのびるとともにフェース部材8及びヘッド本体9のいずれにも接触することなく前記間隙13内をのびている非拘束部15cとを含む。
このように、フェース部材8及びヘッド本体9にともに接触している衝撃吸収体15は、打球時のフェース部材8及び/又はヘッド本体9の振動を、熱に変換して吸収し、プレーヤの手に伝えられる衝撃を緩和して打球感を向上させ得る。また、両端支持された衝撃吸収体15の非拘束部15cは、例えばヘッド本体9から何ら制約を受けることなく自由に振動できるため、従来に比し、打球時により大きく振動して効果的に振動吸収(エネルギーロス)効果を発揮できる。しかも、先に述べた通り、ヘッド本体9の返し部14は、フェース背面8bと接触することなくヘッド中心側に折り返されるため、打球時におけるフェース部材8の撓みを損ねることがない。従って、ヘッド1の反発性能の低下を防止しうる。
ここで、非拘束部15cの長さA(この長さAは、フェース背面8bと対向面18との間の間隙13の厚さに等しい。)は、特に限定されるものではないが、小さ過ぎると、非拘束部15cが十分に振動できないおそれがある他、打球時に変形したフェース部材8のフェース背面8bが対向面18に接触しやすくなる。このような観点より、非拘束部15cの長さAは、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは0.5mm以上、さらに好ましくは0.7mm以上が望ましい。逆に、非拘束部15cの長さAが大きすぎると、例えば衝撃吸収体15が大型化して耐久性が低下したり、返し部14が小型化して十分な重量をフェース部材8の周囲に配分することが難しくなるおそれがある。このような観点より、非拘束部15cの長さAは、好ましくは4.0mm以下、より好ましくは3.5mm以下、さらに好ましくは3.0mm以下が望ましい。
前記衝撃吸収体15は、衝撃を吸収しうる弾性材料であれば特に限定はされないが、例えばNBRやIRを架橋剤により加硫している加硫ゴム、スチレン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー等のソフトセグメントとハードセグメントとからなる熱可塑性エラストマー又はナイロン等の熱可塑性エラストマー等が望ましい。とりわけ、2種以上のポリマーを混合又は化学結合させることにより得られたポリマーアロイが好適である。
前記ポリマーアロイは、一方のポリマーが他方のポリマー中に適当に分散して、巨視的には均一相を呈している多成分系高分子である。微視的には均一な場合もあるが、一方のポリマー相が他方のポリマー相に分散して不均一な構造を形成する場合もある。このような状態になった高分子多成分系は成分ポリマーの単なる平均的性質に加えて、新たな物性が生じるので樹脂やゴム等の改質に広く利用されている。このようなポリマーアロイとしては、例えば三菱化学(株)から商品名「ラバロン」(例えば、「ラバロンSJ4400N」、「ラバロンSJ5400N」、「ラバロンSJ6400N」、「ラバロンSJ7400N」、「ラバロンSJ8400N」、「ラバロンSJ9400N」、「ラバロンSR04」等)で市販されているスチレン系熱可塑性エラストマーが好適である。
また衝撃吸収体15の硬度は、特に限定されないが、大きすぎると、十分な衝撃吸収能力を発揮できない傾向があり、逆に小さすぎても耐久性が悪化する傾向がある。このような観点より前記衝撃吸収体15の硬度(JIS−A硬度)は、好ましくは40゜以上、より好ましくは50゜以上が望ましく、上限については90゜以下、より好ましくは80゜以下が望ましい。
衝撃吸収体15の形状等は特に限定されないが、好ましくは、本実施形態のようにフェース背面8bに対して垂直にのびる中心線15CLを有した柱状、例えば円柱状、角柱状又は三角柱状などが望ましく、とりわけ円柱状が望ましい。このような円柱状の衝撃吸収体15は、断面が円形をなすため、非拘束部15cの種々の半径方向の振動に対して何ら異方性がない。よって、バランス良く多方向の振動を吸収しうる。
衝撃吸収体15は、種々の態様で前記間隙13に配することができる。例えば前側部15a及び後側部15bをそれぞれフェース背面8b及び対向面18に接着剤等を用いて固着することもできるが、本実施形態のクラブヘッド1では、ヘッド本体9の対向面18に、衝撃吸収体15の後側部15bが嵌め込まれる凹部21が設けられる。これにより、衝撃吸収体15のヘッド本体9への位置決め及び取付がより確実となり、生産性や耐久性が向上する。また、凹部21を設けることにより、ヘッド本体9と衝撃吸収体15との接触面積を増加させることもでき、例えば凹部21からヘッド本体9に生じる低周波数の振動を効果的に吸収するのに役立つ。
前記凹部21の深さBは、特に限定されないが、小さすぎると、凹部21を利用したヘッド本体9との接触面積の増大効果や位置決め効果を十分に得ることができないおそれがある。このような観点より、凹部21の深さBは、好ましくは3.0mm以上、より好ましくは4.0mm以上、さらに好ましくは5.0mm以上が望ましい。他方、前記深さBが大きすぎると、比重が大きい返し部14の体積が低下し、フェース部材8の周辺に多くの重量を配分できないおそれがある。このような観点より、凹部21の深さBは、好ましくは10.0mm以下、より好ましくは9.0mm以下、さらに好ましくは8.0mm以下が望ましい。
また、アイアン型のクラブヘッド1は、芝生上に直接置かれたゴルフボールを打球する機会が多い。このため、フェースFのソール側の領域で打球される傾向がある。従って、衝撃吸収体15は、本実施形態のように、少なくともソール面3側、より好ましくはソール部枠9bに配されるのが望ましい。
また、ヘッド1のソール側の振動は、そのトウ・ヒール方向に亘って生じる。このため、衝撃吸収体15は、トウ側に設けられたトウ側の吸収体15Tと、ヒール側に設けられたヒール側の吸収体15Hとを少なくとも含むこととする。このように衝撃吸収体15をトウ・ヒール方向に分けて配することにより、より広い範囲で衝撃を吸収し、打球感をさらに向上させ得る。ここで、トウ側の衝撃吸収体15Tは、図1に示されるように、スイートスポットSSを通るフェースFと直角な垂直面VPよりもトウ側に設けられた衝撃吸収体とする。また、ヒール側の衝撃吸収体15Hは、前記垂直面VPよりもヒール側に設けられた衝撃吸収体とする。
また、アイアン型のクラブヘッド1において、フェースFのスイートスポットSSよりもトウ側で打球した場合、ヒール側で打球した場合に比べるとシャフト軸周りにヘッドを回転させるより大きなモーメントが生じる。このモーメントの一部は、シャフトを介してプレーヤの手指に伝えられ、不快な振動を与えることになる。このため、本実施形態のトウ側の吸収体15Tは、ヒール側の吸収体15Hよりも大きな体積で構成される。これは、例えば、本実施形態のように、トウ側に、より多くの吸収体15T1〜15T3を配することで好ましく実現される。
複数個の衝撃吸収体15をクラブヘッド1に分散して配置することは、振動吸収効果をより高める点で好ましい。このような観点より、1ヘッド当たり、衝撃吸収体15は、2個以上、より好ましくは3個以上、さらに好ましくは4個以上設けられるのが望ましい。他方、衝撃吸収体15の配設個数が多くなると、コストの上昇や生産性の悪化を招くおそれがある。このような観点より、衝撃吸収体15は、1ヘッド当たり、好ましくは10個以下、より好ましくは7個以下、さらに好ましくは5個以下で設けられるのが望ましい。また、各衝撃吸収体15の体積を実質的に同一とした場合、前記トウ側の衝撃吸収体15Tの個数と、ヒール側の衝撃吸収体15Hの個数との差は、好ましくは1〜3個とするのが良い。
衝撃吸収体15の体積は、特に限定されないが、小さすぎると振動吸収効果が低下する傾向があり、逆に大きすぎると、比重の小さい衝撃吸収体に多くのヘッド体積が消費され、ヘッドの慣性モーメントが小さくなるおそれがある。このような観点より、衝撃吸収体15の体積は、好ましくは350mm3 以上、より好ましくは370mm3 以上、さらに好ましくは400mm3 以上が望ましく、また上限に関しては、好ましくは700mm3 以下、より好ましくは680mm3 以下、さらに好ましくは650mm3 以下が望ましい。ここで、「衝撃吸収体の体積」は、本実施形態のようにクラブヘッド1に複数個の衝撃吸収体15が設けられている場合、全ての衝撃吸収体15の体積の合計値とする。
また、打球時に最も良く振動するフェース部材8の振動を効率良く吸収させるために、衝撃吸収体15の前側部15aと、フェース背面8bとの接触面積は、好ましくは40mm2 以上、より好ましくは50mm2 以上、さらに好ましくは60mm2 以上が望ましい。他方、前記接触面積が過度に大きくなると、打球時におけるフェース部材8の自由な撓みを損ねるおそれがあるので、好ましくは120mm2 以下、より好ましくは110mm2 以下、さらに好ましくは100mm2 以下が望ましい。ここで、「衝撃吸収体とフェース背面との接触面積」は、本実施形態のようにクラブヘッド1に複数個の衝撃吸収体15が設けられている場合、各衝撃吸収体15とフェース背面との接触面積の合計値とする。
本実施形態のクラブヘッドは、種々の方法で製造することができる。例えば、衝撃吸収体15に軸方向の圧縮力が作用するように、治具やプレス等を用いてフェース部材8とヘッド本体9とを互いに密着させて仮組みし、その状態でフェース部材8とヘッド本体9とを本固着することにより、クラブヘッド1が製造される。なお、衝撃吸収体15は、例えば、自由状態において、凹部21よりも小径とし、かつ、間隙13の厚さと凹部21の深さとの和よりも長く形成される。そして、衝撃吸収体15は、前記圧縮により、フェース背面8bと高い接触圧力で接触するとともに、凹部21内部で圧縮変形し、その内周面に密着させるのが望ましい。これによって、生産性を向上させつつ高い振動吸収作用を発揮できる。なお、前記の本固着には、慣例に従って種々の方法が採用され、例えばかしめ、接着剤、ネジ止め、圧入、ロウ付け又は溶接等の一ないし複数の方法を組み合わせて接合できる。
上記実施形態では、ヘッド本体9の対向面18に衝撃吸収体15の後側部15bが嵌め込まれる凹部21が形成されたものを示したが、このような凹部21に代えて、又はこのような凹部21とともに、例えばフェース背面8bに、衝撃吸収体15の前側部15aが嵌め込まれる凹部(図示省略)を有するフェース部材8を用いることができる。しかし、このような実施形態は、ボールを直接打球するフェース部材8側に衝撃吸収体15を嵌め込むための凹部が形成されるため、その強度を低下させるおそれがある。従って、凹部21がヘッド本体9側にのみ設けられる実施形態が特に望ましい。
図8及び図9には、本発明の他の実施形態のフェース部材8の背面側から見た斜視図及びそれを用いたクラブヘッドの断面図が示される。この実施形態のフェース部材8は、フェース背面8bの自由撓み領域8bcに、スイートスポットSS(図9に示す)を囲むようにのびる環状の凹溝8Gが形成されるとともに、衝撃吸収体15の前側部15aは、該凹溝8G内で前記フェース背面8bと接触する。
このような実施形態のクラブヘッド1は、図5に示した態様に比べて、フェース部材8の外周側の剛性が低下するため、打球時により撓みやすくなる。従って、ヘッド1の反発性能を向上させ得る。また、フェース部材8は、剛性の小さい凹溝8G付近で大きく振動しやすいため、この凹溝8Gに衝撃吸収体15を直接接触させることにより、効果的な振動吸収効果を期待できる。
ここで、凹溝8Gの位置におけるフェース部材8の厚さt2は、適宜定めうるが、該厚さt2が小さすぎると、フェース部材8の耐久性を悪化させる傾向があり、逆に大きすぎると、反発性能の向上効果が低下するおそれがある。このような観点より、前記厚さt2は、好ましくは1.6mm以上、より好ましくは1.8mm以上とするのが望ましく、上限については、好ましくは2.5mm以下、より好ましくは2.3mm以下が望ましい。なお、自由撓み領域8bcの厚さt1は、前記実施形態のフェース部材8の厚さt1と同じ値が採用できる。
同様の観点より、凹溝8Gの溝幅GWについては、好ましくは2.5mm以上、より好ましくは4.0mm以上が望ましく、同上限については好ましくは15.0mm以下、より好ましくは10.0mm以下が望ましい。
以上、本発明の実施形態について、アイアン型ゴルフクラブヘッドを例示したが、本発明は、フェース部材8とヘッド本体9との間に間隙13を有するクラブヘッドであれば、アイアン型のみならず、ウッド型やパター型、ユーティリティー型など種々のタイプのヘッドに適用できる。
表1に基づき、ロフト角24゜の本発明のアイアン型ゴルフクラブヘッド(実施例)が試作された。各ヘッドは、SUS630をロストワックス精密鋳造法により成形された鋳造品からなるヘッド本体と、Ti−6Al−4Vのプレス成形品とを接着剤を併用してかしめにより固着することにより形成された。衝撃吸収体には、三菱化学(株)製の商品名「ラバロンSR04」をインジェクション成形して円柱状に形成された弾性体(ポリマーアロイ)が用いられた。各ヘッドには、4つの吸収体が用いられているが、いずれも同一断面形状とした。
また、比較例1として、図10に示されるような衝撃吸収体のないヘッド、比較例2として、図11に示されるように、衝撃吸収体を有するが非拘束部を持たないヘッド、さらに比較例3として、図12に示されるように、衝撃吸収体がフェース部材に接触していないヘッドについてもテストが行われた。
テスト方法は、次の通りである。
<打球感>
先ず、供試ヘッドに、SRIスポーツ社製の繊維強化樹脂シャフトMP−200(フレックスR)を装着してクラブ長38インチのアイアン型ゴルフクラブが試作された。次に、ハンディキャップ10〜20の10名のアベレージゴルファが、天然芝上に置かれたゴルフボールを各テストクラブで5球ずつ打撃した。そして、打球時に手に伝わる衝撃力が、各評価者のフィーリングにより10点法で評価された。結果は、衝撃力が小さく打球感が最高に良いものを10点とする相対評価とし、10名の平均値が示される。数値が大きいほど良好である。
<ペンデュラムテスト>
2003年2月24日にUSGAから発行された「Notice To Manufacturers 」に添付された「Technical Description of the Pendulum Test」に定義されているUSGAのペンデュラムテストに基づき、各テストヘッドの "Characteristic Time (CT)" (CT値とも呼ばれる)が測定された。このCT値は、インパクト時の効率を示す数値(単位:μs)であって、大きいほど反発性能に優れていることを示す。
テストの結果などを表1に示す。
Figure 0004291836
テストの結果、実施例のヘッドは、いずれも良好な打球感及び反発性能を有していることが確認できた。
本発明の一実施形態を示す基準状態のアイアン型ゴルフクラブヘッドの正面図である。 その背面図である。 図1のA−A断面図である。 図3の部分拡大図である。 フェース部材を背面側から見た斜視図である。 ヘッド本体の斜視図である。 ヘッド本体の正面図である。 他の実施形態を示すフェース部材の斜視図である。 他の実施形態のクラブヘッドの断面図である。 比較例1のクラブヘッドの断面図である。 比較例2のクラブヘッドの断面図である。 比較例3のクラブヘッドの断面図である。 従来のゴルフクラブヘッドの断面図である。
符号の説明
1 アイアン型ゴルフクラブヘッド
8 フェース部材
8a 前面
8b フェース背面
8c 側端面
8G 凹溝
9 ヘッド本体
13 間隙
14 返し部
15 衝撃吸収体
15a 前側部
15b 後側部
15c 非拘束部
15T トウ側の衝撃吸収体
15H ヒール側の衝撃吸収体
18 対向面
21 凹部
F フェース

Claims (13)

  1. ボールを打撃するフェースの少なくとも一部を含む金属材料からなるフェース部材と、前記フェース部材が固着された金属材料からなるヘッド本体とを含むゴルフクラブヘッドであって、
    前記フェース部材は、前記フェースと反対側の面であるフェース背面を有し、かつ、
    前記ヘッド本体は、フェース背面の周縁部と接触する受け面と、該受け面からヘッド後方にのびるととともに前記フェース背面と接触することなくヘッド中心側に折り返されて終端することにより前後に貫通した一つの開口部を形成する返し部とを有し、
    しかも該返し部は、前記フェース背面と向き合うことにより前記フェース背面との間に間隙を形成する対向面を含み、
    前記間隙には、弾性材料からなる衝撃吸収体が配され、かつ
    該衝撃吸収体は、トウ側に設けられたトウ側の吸収体と、ヒール側に設けられたヒール側の吸収体とを少なくとも含むとともに、
    衝撃吸収体は、前記フェース背面に接触する前側部から前記対向面に接触する後側部にのびており、しかも
    前記前側部と前記後側部との間にフェース部材及びヘッド本体のいずれにも接触することなく前記間隙内をのびている非拘束部を含むことを特徴とするゴルフクラブヘッド。
  2. 前記対向面は、衝撃吸収体の前記後側部が嵌め込まれる凹部を有する請求項1記載のゴルフクラブヘッド。
  3. 前記衝撃吸収体は、前記フェース背面に対して垂直にのびる中心線を有した円柱状、角柱状又は三角柱状をなす請求項1又は2に記載のゴルフクラブヘッド。
  4. 前記トウ側の吸収体の体積が、前記ヒール側の吸収体の体積よりも大きい請求項3記載のゴルフクラブヘッド。
  5. 前記フェース背面は、前記ヘッド本体の受け面で囲まれる自由撓み領域に、スイートスポットを囲む環状の凹溝が形成されるとともに、
    前記衝撃吸収体の前記前側部は、該凹溝内で前記フェース背面と接触する請求項1乃至4のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。
  6. 前記凹溝の位置におけるフェース部材の厚さt2は、1.6mm以上2.3mm以下である請求項5に記載のゴルフクラブヘッド。
  7. 前記フェース部材は、フェースを構成する前面と、前記フェース背面と、これらの間を継ぐ側端面とを含む板状体で構成され、
    前記ヘッド本体は、フェース部材の前記側端面に接触しこれを支持する内向き面を含むとともに、トップ部側には、前記内向き面を切り欠くことにより、前記フェース部材の側端面をトップ面でヘッド外面に露出させる切欠き部が設けられる請求項1乃至6のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。
  8. 前記対向面は、前記フェース背面と平行にのびる請求項1乃至7のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。
  9. 非拘束部の長さは0.3〜4.0mmである請求項1乃至8のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド
  10. 前記凹部の深さは、3.0〜10.0mmである請求項2記載のゴルフクラブヘッド。
  11. アイアン型である請求項1乃至10のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。
  12. ヘッドを、そのライ角α及びロフト角βに保持して水平面に置いた基準状態での正面視において、各衝撃吸収体は、スイートスポットよりも低所に設けられる請求項1乃至11のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。
  13. 前記衝撃吸収体は、1ヘッド当たり、3個以上10個以下で設けられている請求項1乃至12のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。
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