JP4291049B2 - 差圧・圧力発信器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、石油化学・化学工業・電力・ガス・食品・鉄鋼等の種々のプラントに用いられる差圧・圧力発信器に関し、特にプロセス流体の差圧と静圧(圧力)の両方を測定する差圧・圧力発信器に関する。
【0002】
【従来の技術】
差圧・圧力発信器は、高圧側および低圧側の受圧ダイアフラムに加えられる各測定圧力を、圧力伝達媒体としての封入液によって圧力センサに導き、その差圧を検出し電気信号に変換して出力するように構成されており、例えば石油精製プラントにおける高温反応塔等の被測定流体を貯蔵する密閉タンク内の上下二位置の差圧を検出することにより液面高さを測定したり、あるいは絞りを有する管路内の前記絞りより上流側と下流側との圧力差を測定することにより、管路内を流れる流体の流量を算出するときなどに用いられている(例えば、特許文献1,2,3,4参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平7−198519号公報(2頁〜3頁、図1)
【特許文献2】
特開平4−320939号公報(2頁〜3頁、図1、図3)
【特許文献3】
特公平3−74782号公報(1頁〜3頁、図1、図2)
【特許文献4】
特開平6−82326号公報(2頁〜3頁、図8)
【0004】
この種の差圧・圧力発信器は、高圧側または低圧側の圧力が過大に高くなり差圧異常が発生したとき、すなわち圧力センサに耐圧(通常の差圧測定範囲)を超える差圧が加わったときに圧力センサが破損するのを防止するために、過大圧保護機構を備えたものが一般的である。
【0005】
過大圧保護機構は、ボディ本体の各側面に設けた高圧側および低圧側の受圧ダイアフラムと、ボディ本体内の内室を仕切るように設けたセンターダイアフラムとで構成され、高圧側または低圧側の受圧ダイアフラムに過大な圧力が加わり差圧異常が発生したとき、過大圧側の受圧ダイアフラムを着底させることによりそれ以上大きな圧力が圧力センサに伝わらないようにしている。すなわち、高圧側に過大圧が加わったときには、高圧側の受圧ダイアフラムがボディ本体の側面に着底し、高圧側の封入液のそれ以上の移動を阻止する。同様に、低圧側に過大圧が加わったときには、低圧側の受圧ダイアフラムがボディ本体の側面に着底して低圧側の封入液の移動を阻止する。したがって、いずれの場合も圧力の伝達が阻止され、圧力センサを過大圧力から保護する。なお、通常の差圧測定時においては、高圧側、低圧側の受圧ダイアフラムがボデイ本体の側面に着底することはない。
【0006】
また、プロセス流体を監視するために差圧だけではなく静圧(圧力)もデータとして測定する必要がある場合は、圧力発信器によって静圧を大気圧または真空圧を基準圧として測定している(例えば、特許文献5参照)。この場合、差圧測定用の発信器と圧力測定用の発信器をそれぞれ一台ずつ設置すると、発信器の台数が増加するため好ましくない。このため、一台で差圧と静圧(圧力)の両方を同時に測定し得るようにした複合型の差圧発信器も提案されている(例えば、特許文献6参照)。なお、出願人は本明細書に記載した先行技術文献情報で特定される先行技術文献以外には、本発明に密接に関連する先行技術文献を出願時までに発見することができなかった。
【0007】
【特許文献5】
特開2002−357500号公報
【特許文献6】
特開昭63−8524号公報
【0008】
上記した特開昭63−8524号公報に記載された差圧発信器を図3に基づいて概略説明すると、この差圧発信器1は、内部に封入液3が封入された封入回路4a〜4dと内室5を有するボディ本体2の両側面12a,12bに差圧測定用の高圧側、低圧側受圧ダイアフラム6,7をそれぞれ設け、内部中央に前記内室5を仕切るようにセンターダイアフラム8を設け、外周に差圧測定用圧力センサ9と静圧測定用圧力センサ10を取付け、前記両受圧ダイアフラム6,7およびセンターダイアフラム8によって過大圧保護機構11を構成している。
【0009】
ボディ本体2の各側面12a,12bの中央には凹部13a,13bがそれぞれ形成されている。これらの凹部13a,13bは、高圧側、低圧側受圧ダイアフラム6,7によってそれぞれ密閉されることにより、高圧側ダイアフラム室14と低圧側ダイアフラム室15とを形成している。
【0010】
前記内室5はセンターダイアフラム8によって2つの室、すなわち高圧側、低圧側センターダイアフラム室5a,5bに仕切られている。そして、これらの高圧側、低圧側センターダイアフラム室5a,5bと前記高圧側、低圧側ダイアフラム室14,15は、前記封入回路4a,4bを介してそれぞれ連通しており、内部には封入液3が封入されている。
【0011】
前記差圧測定用圧力センサ9は、ケース17内に導圧路18a,18bを仕切るように組み込まれた半導体ダイアフラム(センサチップ)19を有している。導圧路18a,18bは、前記封入回路4c,4dを介して前記高圧側、低圧側センターダイアフラム室5a,5bにそれぞれ連通している。
【0012】
前記静圧測定用圧力センサ10は、同じくケース21内に導圧路22aと大気圧導入孔22bを仕切るように組み込まれた半導体ダイアフラム(センサチップ)24を有している。導圧路22aは、差圧測定用圧力センサ9の導圧路18aおよび封入回路4cを介して前記高圧側センターダイアフラム室5aに連通している。大気圧導入孔22bはケース21の外部に開放されており、大気圧P0 が基準圧として前記半導体ダイアフラム24の裏面側に加えられている。
【0013】
このような構造からなる差圧発信器1において、高圧側、低圧側受圧ダイアフラム6,7にプロセス流体25の高圧HPと低圧LPとがそれぞれ加わると、これらの受圧ダイアフラム6,7はその圧力に応じてそれぞれ変位し、その変位分だけダイアフラム室14,15、封入回路4a,4bおよびセンターダイアフラム室5a,5b内にそれぞれ封入されている封入液3が移動して前記圧力(HP,LP)をセンターダイアフラム8に伝達する。このため、センターダイアフラム8は、その圧力差(HP−LP)に応じて変位し、前記圧力(HP,LP)をセンターダイアフラム室5a,5b、封入回路4c,4d、導圧路18a,18b内の封入液3を介して差圧測定用圧力センサ9の半導体ダイアフラム19の両面に伝達する。これにより、半導体ダイアフラム19も前記圧力差(HP−LP)に応じて歪み、この歪み量を圧力センサ9が差圧として検出し、これを電気信号に変換して演算処理することにより、被測定流体25の流量等が測定される。
【0014】
一方、前記静圧測定用圧力センサ10の半導体ダイアフラム24の一方の面には、高圧側受圧ダイアフラム6に加えられる高圧HPが高圧側ダイアフラム室14,封入回路4a、センターダイアフラム室5a、封入回路4cおよび導圧路18a,22a内の封入液3を介して加えられ、他方の面には大気圧P0 が大気圧導入孔22bを通って加えられている。したがって、半導体ダイアフラム24は圧力HPに応じて歪み、この歪み量を静圧測定用圧力センサ10が圧力HP(静圧)として測定し、この静圧測定により静圧変動による差圧発信器1のゼロ点変化を補償すると同時に静圧測定値に基づいて差圧(HP−LP)を補正することにより正確な差圧を算出するようにしている。
【0015】
高圧側受圧ダイアフラム6に過大な圧力が加わり差圧測定用圧力センサ9の耐圧以上の差圧(例えば、150kPa)が発生すると、高圧側受圧ダイアフラム6は高圧側ダイアフラム室14の底面に着底して封入回路4aを閉塞する。このため、封入回路4aおよびセンターダイアフラム室5a内の封入液3の移動がなくなり、センターダイアフラム8がそれ以上変位しなくなる。言い換えれば圧力のそれ以上の伝達がなくなる。したがって、過大圧が差圧測定用圧力センサ9の半導体ダイアフラム19に加わるようなことがなく、過大圧による半導体ダイアフラム19の破損を防止することができる。
【0016】
同様に、低圧側受圧ダイアフラム7に過大な圧力が加わったときは、低圧側受圧ダイアフラム7が高圧側に変位して低圧側ダイアフラム室15の底面に着底し封入回路4bを閉塞する。このため、封入回路4bおよびセンターダイアフラム室5b内の封入液3の移動がなくなり、圧力をセンターダイアフラム8にそれ以上伝達しなくなる。したがって、このときも過大圧が差圧測定用圧力センサ9の半導体ダイアフラム19に加わるようなことがなく、過大圧による半導体ダイアフラム19の破損を防止することができる。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
上記した通り、従来の差圧発信器1は、高圧側受圧ダイアフラム6または低圧側受圧ダイアフラム7に過大な圧力が加わり差圧異常が発生したときに過大圧保護機構11が動作して封入液3の移動を停止させることにより、差圧測定用圧力センサ9の半導体ダイアフラム19に耐圧以上の差圧が加わらないようにしている。しかしながら、従来は高圧側受圧ダイアフラム6を差圧測定と静圧測定との両方に共用させているため、通常の測定時においては差圧と静圧を同時に測定することはできるが、過大圧の発生により過大圧保護機構11が働くと高圧側受圧ダイアフラム6が着底して封入液3による圧力の伝達を完全に阻止させるため、差圧だけでなく静圧までもが測定することができなくなるという問題があった。
【0018】
本発明は上記した従来の問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、差圧異常の発生により過大圧保護機構が働き差圧が測定できなくなった場合でも、静圧を通常通り測定することができるようにした差圧・圧力発信器を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明は、封入液が封入された封入回路と内室を有するボディ本体と、前記ボディ本体の両側面にそれぞれ設けられた高圧側、低圧側受圧ダイアフラムと、前記ボディ本体の前記内室を仕切って設けられ前記高圧側、低圧側受圧ダイアフラムとともに過大圧保護機構を構成するセンターダイアフラムと、前記高圧側、低圧側受圧ダイアフラムに加わる圧力の差圧を測定する差圧測定用圧力センサと、静圧測定用受圧ダイアフラムを有し、このダイアフラムの裏面と前記高圧側、低圧側受圧ダイアフラムのうちのいずれか一方との間に形成された静圧測定用ダイアフラム室と、前記静圧測定用受圧ダイアフラムに加わる圧力を測定する静圧測定用圧力センサとを備え、前記静圧測定用受圧ダイアフラムが着底するまでの最大変位量を前記高圧側、低圧側受圧ダイアフラムが着底するまでの最大変位量よりも大きくしたものである。
【0020】
本発明においては、差圧測定用と静圧測定用の受圧ダイアフラムを別個に設けているので、過大圧の発生により過大圧保護機構が働いて差圧測定ができなくなった場合でも、静圧測定用受圧ダイアフラムが着底せず正常に動作し続ける限りにおいて、静圧測定用受圧ダイアフラムに加わる圧力(静圧)を静圧測定用圧力センサによって正しく測定することができる。
また、過大圧の発生により過大圧側の差圧測定用受圧ダイアフラムが着底しても、静圧測定用受圧ダイアフラムは着底せず正常に動作し続ける。したがって、静圧測定用受圧ダイアフラムに加わる圧力(静圧)を静圧測定用圧力センサによって正しく測定することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明に係る差圧・圧力発信器の一実施の形態を示す断面図である。なお、従来技術の欄で示した構成部材と同一のものについては同一符号をもって示し、その説明を適宜省略する。同図において、全体を符号30で示す差圧・圧力発信器は、厚さ方向に一体的に接合された2つのボディ本体、すなわち差圧測定用ボディ本体2、静圧測定用ボディ本体31と、これらのボディ本体2,31にそれぞれ設けられた差圧測定用センサ9および静圧測定用センサ10とを備えている。
【0024】
前記差圧測定用ボディ本体2は、SUS316等によって円板状に形成した2つのボディ2A,2Bを電子ビーム溶接等によって前記センターダイアフラム8を挟んで一体的に接合することにより、図3に示した従来のボディ本体2と同様な構造に形成されている。このため、ボディ本体2の内部には、6つの封入回路4a〜4fと内室5が形成されており、この内室5を前記センターダイアフラム8によって2つの高圧、低圧側センターダイアフラム室5a,5bに仕切っている。
【0025】
前記ボディ本体2の高圧側と低圧側の側面12a,12bの中央には、略同径の凹部13a,13bがそれぞれ形成されており、これらの凹部13a,13b内に高圧側受圧ダイアフラム6と低圧側受圧ダイアフラム7が外周縁部を溶接することによってそれぞれ設けられている。凹部13aの高圧側受圧ダイアフラム6によって密閉された内部空間は、高圧側ダイアフラム室14を形成し、内部に封入液3が封入されている。同様に、前記凹部13bの低圧側受圧ダイアフラム7によって密閉された内部空間は、低圧側ダイアフラム室15を形成し、内部に封入液3が封入されている。高圧側ダイアフラム室14と前記高圧側センターダイアフラム室5aとは、封入回路4a,4eによって連通し、低圧側ダイアフラム室15と前記低圧側センターダイアフラム室5bとは、封入回路4b,4fによって連通している。
【0026】
前記ボディ本体2の下面には、一端が前記各封入回路4e,4fにそれぞれ連通する封入液注入口34a,34bがそれぞれ形成されており、これらの注入口34a,34bは封入液3を封入回路4e,4fからセンターダイアフラム室5a,5b、ダイアフラム室14,15、封入回路4a〜4dおよび差圧測定用圧力センサ9に至るまで注入した後、ボール35と止めねじ36とによってそれぞれ液密に封止されている。
【0027】
前記センターダイアフラム8は、前記高圧、低圧側受圧ダイアフラム6,7とともに過大圧保護機構11を構成するもので、外周縁部(固定部)が溶接によってボディ2A,2Bの接合面に挟持されて溶接され、外周縁部より内側部分が受圧部を形成している。この受圧部には、前記受圧ダイアフラム6,7の受圧部と同様に波形の襞が同心円状に形成されている。このため、前記各センターダイアフラム室5a,5bの内壁面にも、センターダイアフラム8と同形の波形襞がそれぞれ同心円状に形成されている。なお、本実施の形態においては、前記受圧ダイアフラム6,7、センターダイアフラム8とボディ本体2に同心円状の波形襞をそれぞれ形成したが、これらの襞は必ずしも必要ではない。
【0028】
前記ボディ本体2の上面には、ネック部を構成する外筒50が設けられており、その内部に前記差圧測定用圧力センサ9が組み込まれている。外筒50は、SUS等の金属によって円筒状に形成されることによりセンサ取付孔51を有し、このセンサ取付孔51に前記差圧測定用圧力センサ9が組み込まれている。
【0029】
前記差圧測定用圧力センサ9は、前記外筒50のセンサ取付孔51に嵌挿されたケース17と、このケース17の内部中央に組み込まれたパイレックス(登録商標)ガラス等のパイプからなる台座56と、台座56の下面側開口部を塞ぐように取付けられたセンサチップ19と、ケース17の下面に設けた凹陥部58に嵌着されセンサチップ19を保護するシールド板59とで構成されている。
【0030】
前記凹陥部58の内部は高圧側センサ室60を形成しており、前記封入回路4cを介して前記高圧側センターダイアフラム室5aに連通している。前記台座56の内部は低圧側センサ室56aを形成しており、前記ケース17内に形成した導圧路63に連通している。また、導圧路63の一端は、前記外筒50の内周面に形成した環状溝64および前記封入回路4dを介して前記低圧側センターダイアフラム室5bに連通している。前記シールド板59には、封入液3の移動を可能にする複数個の小孔が形成されている。
【0031】
前記静圧測定用ボディ本体31は、前記差圧測定用ボディ本体2と略同一の外径で厚さが薄い円板状に形成され、一方の側面70aの中央に凹部71を形成し、この凹部71を静圧測定用受圧ダイアフラム72によって覆うことにより静圧測定用ダイアフラム室73を設け、他方の側面70bの外周部を前記差圧測定用ボディ本体2の高圧側の側面12aに密接し、かつ溶接によって接合している。また、他方の側面70bの中央には、凹部74が形成されており、この凹部74を前記高圧側受圧ダイアフラム6によって覆っている。前記静圧測定用ダイアフラム室73と凹部74は、ボディ本体31内に形成した封入回路75によって互いに連通しており、封入液3が封入されている。封入回路75は、ボディ本体31の下面に形成した封入液注入口76に連通している。封入液注入口76は、封入液3を前記封入回路75、前記静圧測定用ダイアフラム室73、前記凹部74、後述する封入回路80および静圧測定用圧力センサ10に封入した後、ボール81と止めねじ82によって液密に封止される。
【0032】
前記静圧測定用圧力センサ10は、前記ボディ本体31の上面に突設した外筒85に嵌合され溶接された筒状のケース86と、このケース86の内部中央に組み込まれたパイレックスガラス等のパイプからなる台座87と、台座87の下面側開口部を塞ぐように取付けられたセンサチップ24と、ケース86の下面に設けた凹陥部88に嵌着されセンサチップ24を保護するシールド板89とで構成されている。前記センサチップ24は、前記静圧測定用受圧ダイアフラム72に加わる圧力(HP)を測定するものであるため、前記差圧測定用圧力センサ9のセンサチップ19に比べてより大きな耐圧特性を有している点で相違しているが、その他の構成は全く同一である。
【0033】
前記凹陥部88の内部は高圧側センサ室90を形成しており、前記ボディ本体31内に形成した前記封入回路80を介して前記静圧測定用ダイアフラム室73に連通している。前記台座87の内部は真空室92を形成しており、前記ケース86内に形成した排気孔93に連通している。排気孔93は、真空室92内の空気を排気し所定の真空度に達した後封止されている。前記シールド板89には、封入液3の移動を可能にする複数個の小孔が形成されている。なお、図中、符号95で示すものは固定絞りで、各封入回路4a〜4f,75,80にそれぞれ組み込まれている。
【0034】
圧力が加わらない自然な状態において、高圧側受圧ダイアフラム6の最大変位量(高圧側ダイアフラム室14内の液量)をM1 、静圧測定用受圧ダイアフラム72の最大変位量(静圧測定用ダイアフラム室73内の液量)をM2 、低圧側受圧ダイアフラム7の最大変位量(低圧側ダイアフラム室15内の液量)をM3 とすると、M2 はM1 より大きく設定され(M2 >M1 )、M1 とM3 とは等しく設定されている(M1 =M3 )。
【0035】
このような構造からなる差圧・圧力発信器30において、静圧測定用受圧ダイアフラム72と低圧側受圧ダイアフラム7に被測定流体25の高圧HPと低圧LPが加えられる。静圧測定用受圧ダイアフラム72は高圧HPが加わると、静圧測定用ダイアフラム室73内の封入液3を介して前記高圧HPを高圧側受圧ダイアフラム6に伝達する。このため、高圧側受圧ダイアフラム6も高圧HPによって加圧される。さらに、高圧側受圧ダイアフラム6が加圧されると、高圧側ダイアフラム室14、封入回路4a,4eおよび高圧側センターダイアフラム室5a内の封入液3を介して前記高圧HPをセンターダイアフラム8に伝達する。
【0036】
一方、低圧側受圧ダイアフラム7は低圧LPが加わると、この圧力LPは低圧側ダイアフラム室15、封入回路4b,4fおよび低圧側センターダイアフラム室5b内の封入液3を介してセンターダイアフラム8に伝達される。このため、センターダイアフラム8は高圧HPと低圧LPとの圧力差(HP−LP)に応じて撓む。
【0037】
さらに、センターダイアフラム8に加えられる高圧HPと低圧LPは、差圧測定用圧力センサ9のセンサチップ19に加えられる。すなわち、高圧HPは、高圧側センターダイアフラム室5a、封入回路4cおよび高圧側センサ室60内の封入液3を介してセンサチップ19の下面側に加えられる。一方、低圧LPは、低圧側センターダイアフラム室5b、封入回路4d、環状溝64、導圧路63および低圧側センサ室56a内の封入液3を介してセンサチップ19の上面側に加えられる。このため、センサチップ19も前記高圧HPと低圧LPとの圧力差(HP−LP)に応じて歪み、その歪み量を圧力センサ9が検出して電気信号に変換することにより差圧が測定され、演算処理することにより被測定流体25の流量が測定される。
【0038】
また、前記静圧測定用受圧ダイアフラム72に加えられる高圧HPは、静圧測定用ダイアフラム室72、封入回路80および高圧側センサ室90内の封入液3を介して静圧測定用圧力センサ10のセンサチップ24の下面側に伝達される。一方、センサチップ24の上面側は真空室92に臨み真空圧に保持されているため、静圧測定用圧力センサ10は真空圧を基準圧として前記高圧HPを測定する。
【0039】
ここで、例えば高圧側に過大圧が発生すると、過大圧保護機構11が動作し、差圧測定用圧力センサ9を過大圧から保護する。すなわち、静圧測定用受圧ダイアフラム72が過大圧を受けて低圧側に変位すると、この過大圧が静圧測定用ダイアフラム室73内の封入液3を介して高圧側受圧ダイアフラム6にも伝達されるため、高圧側受圧ダイアフラム6も低圧側に変位して高圧側ダイアフラム室14の底面に着底し、封入回路4a,4eを閉塞する。したがって、高圧側の封入液3の移動による高圧HPの伝達が完全に阻止されてそれ以上の過大圧が差圧測定用圧力センサ9に加わることがなく、センサチップ19の破損を防止する。
【0040】
同様に、低圧側に過大圧が発生した場合も過大圧保護機構11が動作し、差圧測定用圧力センサ9を過大圧から保護する。すなわち、低圧側に過大圧が発生すると、低圧側受圧ダイアフラム7が高圧側に変位して低圧側ダイアフラム室15の底面に着底し、封入回路4b,4fを閉塞する。したがって、低圧側封入液3の移動による低圧LPの伝達が阻止されてそれ以上の過大圧が差圧測定用圧力センサ9に加わることがなく、センサチップ19の破損を防止する。なお、センターダイアフラム8は剛性が大きく撓み量が少ないため過大圧が発生しても着底することはない。
【0041】
過大圧の発生に伴い過大圧保護機構11が動作して高圧側受圧ダイアフラム6または低圧側受圧ダイアフラム7が着底しても、静圧測定用受圧ダイアフラム72は、最大変位量M2 が高圧、低圧側受圧ダイアフラム6,7の最大変位量M1 ,M3 より大きく設定されていることにより、静圧測定用圧力センサ10の測定範囲以上の過大な圧力が加わるまでは静圧測定用ダイアフラム室73の底面に着底することがなく動作し続ける。そして、この静圧測定用受圧ダイアフラム72に加わる圧力(HP)は、上記した通り静圧測定用ダイアフラム室73、封入回路80および高圧側センサ室90内の封入液3を介して静圧測定用圧力センサ10に伝達される。したがって、過大圧により過大圧保護機構11が動作して差圧を測定することができなくなった場合でも、静圧測定用圧力センサ10は静圧(HP)を正常に測定し続けることができる。
【0042】
図2は本発明の他の実施の形態を示す断面図である。
同図において、全体を符号100で示す差圧・圧力発信器は、円板状のボディ本体2と、ボディ本体2の両側面12a,12bにそれぞれ取付けられた高圧側受圧ダイアフラム6および低圧側受圧ダイアフラム7と、ボディ本体2内の内室5を仕切るように組み込まれたセンターダイアフラム8と、ボディ本体2の外周面に固定された差圧測定用圧力センサ9および静圧測定用圧力センサ10と、ボディ本体2の高圧側の側面12aに前記高圧側受圧ダイアフラム6を覆うように取付けられた静圧測定用受圧ダイアフラム72等で構成されている。
【0043】
前記ボディ本体2の高圧側の側面12aの中央には、径が異なる2つの凹部13a,13cが中心を一致させて2段に形成されており、これらの凹部13a,13c内に前記高圧側受圧ダイアフラム6と静圧測定用受圧ダイアフラム72がそれぞれ外周縁部を溶接することによって設けられている。
【0044】
前記高圧側受圧ダイアフラム6の表面と前記静圧測定用受圧ダイアフラム72の裏面とによって囲まれた密閉空間は、高圧側ダイアフラム室14とは独立した静圧測定用ダイアフラム室73を形成しており、内部には封入液3が封入されている。この封入液3は、静圧測定用受圧ダイアフラム72に加わる高圧HPを高圧側受圧ダイアフラム6と前記静圧測定用圧力センサ10に伝達する。前記静圧測定用ダイアフラム室73および静圧測定用圧力センサ10への封入液3の封入は、前記ボディ本体2内に形成した封入液注入口34cより行われる。
【0045】
前記静圧測定用圧力センサ10は、前記ボディ本体2の上面に固定したブロック状の外筒95に設けた取付孔101内に収納されており、高圧側ダイアフラム室90が前記外筒95内に形成した環状溝102、封入回路103およびボディ本体2内に形成した封入回路4gを介して前記静圧測定用ダイアフラム室73に連通している。なお、その他の構造は図1に示した実施の形態と略同一であるため、同一のものには同一符号をもって示し、その説明を省略する。
【0046】
このような構造からなる差圧・圧力発信器100においても、上記した実施の形態と同様に過大圧の発生により高圧側受圧ダイアフラム6または低圧側受圧ダイアフラム7が着底して過大圧保護機構11が働き差圧が測定できなくなった場合でも、静圧測定用受圧ダイアフラム72は最大変位量(M2 )が高圧側、低圧側受圧ダイアフラム6,7の最大変位量(M1 ,M3 )より大きく設定されていることにより着底せず、静圧測定用受圧ダイアフラム72に加わる静圧(HP)を静圧測定用圧力センサ10によって測定し続けることができる。
また、図1に示した静圧測定用のボディ本体31を必要としないため、薄形、軽量化することができる。
【0047】
なお、上記した実施の形態はいずれも高圧側の静圧(HP)を測定するようにした例を示したが、本発明はこれに何ら限定されるものではなく低圧側の静圧を測定するようにしてもよい。その場合には静圧測定用受圧ダイアフラム72を有する静圧測定用ダイアフラム室73を低圧側受圧ダイアフラム7を挟んで低圧側ダイアフラム室15の下流側に当該ダイアフラム室15と独立して設け、低圧LPを静圧測定用受圧ダイアフラム72に加えるようにすればよい。
【0048】
また、上記した実施の形態はいずれも真空圧を基準圧として静圧を測定するように構成したが、図3に示した従来装置と同様に大気圧P0 を基準圧として静圧測定を行うようにしてもよい。
【0049】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係る差圧・圧力発信器は、差圧測定用の高圧側、低圧側受圧ダイアフラムに加えて静圧測定用の受圧ダイアフラムを備えているので、過大圧が発生して過大圧保護機構が動作し差圧が測定できなくなった場合でも、静圧測定用受圧ダイアフラムに加わる静圧を静圧測定用圧力センサによって正常に測定することができる。
また、静圧測定用受圧ダイアフラムを有する静圧測定用ダイアフラム室を高圧側の差圧測定用受圧ダイアフラムを挟んで高圧側ダイアフラム室の上流側または低圧側の差圧測定用受圧ダイアフラムを挟んで低圧側ダイアフラム室の下流側に設けるだけでよいので、構造が簡単で安価に製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る差圧・圧力発信器の一実施の形態を示す断面図である。
【図2】 本発明の他の実施の形態を示す断面図である。
【図3】 従来の差圧発信器の概略断面図である。
【符号の説明】
2…ボディ本体、2A,2B…ボディ、3…封入液、4a〜4g,75,80…封入回路、5…内室、6…高圧側受圧ダイアフラム、7…低圧側受圧ダイアフラム、8…センターダイアフラム、9…差圧測定用圧力センサ、10…静圧測定用圧力センサ、11…過大圧保護機構、14,15…高圧側と低圧側のダイアフラム室、30…差圧・圧力発信器、72…静圧測定用受圧ダイアフラム、73…静圧測定用ダイアフラム室。
Claims (1)
- 封入液が封入された封入回路と内室を有するボディ本体と、
前記ボディ本体の両側面にそれぞれ設けられた高圧側、低圧側受圧ダイアフラムと、
前記ボディ本体の前記内室を仕切って設けられ前記高圧側、低圧側受圧ダイアフラムとともに過大圧保護機構を構成するセンターダイアフラムと、
前記高圧側、低圧側受圧ダイアフラムに加わる圧力の差圧を測定する差圧測定用圧力センサと、
静圧測定用受圧ダイアフラムを有し、このダイアフラムの裏面と前記高圧側、低圧側受圧ダイアフラムのうちのいずれか一方との間に形成された静圧測定用ダイアフラム室と、
前記静圧測定用受圧ダイアフラムに加わる圧力を測定する静圧測定用圧力センサとを備え、
前記静圧測定用受圧ダイアフラムが着底するまでの最大変位量を前記高圧側、低圧側受圧ダイアフラムが着底するまでの最大変位量よりも大きくしたことを特徴とする差圧・圧力発信器。
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-
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