JP4291013B2 - 真空バルブ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、真空バルブに関するものである。更に詳述すると、電機機器に使用される真空バルブにおいて、絶縁筒の内表面(内周面)または外表面(外周面)または内外表面(内周面及び外周面)に、半導電性釉薬による半導電層を形成することにより、真空中及びガス中の沿面絶縁性能を向上させた真空バルブに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
真空遮断器は、その優れた電流遮断性能により中電圧以下の開閉装置に広く適用されている。近年、145kV級の真空遮断器の開発も報告されており、より一層の高電圧化が進んでいる。
【0003】
高電圧化にともない、真空遮断器において最も重要な構成機器である真空バルブの絶縁設計が重要になる。真空バルブの極間(可動電極と固定電極との間)の絶縁を保持する絶縁筒にはセラミック絶縁筒が多用されている。ところが、雷インパルス電圧などの定格電圧以上の過電圧が真空バルブの両端に印可された場合には、セラミック絶縁筒の内表面(内周面)及び外表面(外周面)において、微小な放電などにより帯電が形成される場合がある。このようにして生じた絶縁筒表面の帯電は、局所的な電界集中をもたらし絶縁性能劣化の一因となると考えられている。
【0004】
そこで、真空バルブの絶縁筒ならびに真空容器内における絶縁性構成部材の帯電防止方法として、絶縁筒の内表面や外表面、さらには真空容器内の絶縁性構成部材の表面に、半導電層を形成する方法(第1の従来技術)が提案されている。
【0005】
第1の従来技術を示す特開昭55−141023号公報では、低原子、高融点、高沸点でかつ比較的硬度が高いベリリウム(Be)、ホウ素(B)、グラファイト(C)などの薄層(厚さ約数オングストローム〜数百オングストローム)からなる半導電層を、絶縁性構成部材(絶縁筒を含む)の表面に形成している。半導電層は帯電されないので、半導電層と金属部材の間の放電が生じ難くなり絶縁性構成部材の絶縁耐力が向上するとしている。
【0006】
一方、絶縁性構成物(具体的には磁器碍子)の表面に半導電層を設ける方法(第2の従来技術)として、半導電性の釉薬層をセラミック表面に形成する方法が提案されている。
【0007】
第2の従来技術は、NGKレビュー第58号に記載された記事「全面導電釉がいしの適用設計とフィールド実績」に開示されている。この第2の従来技術では、ベースとなる酸化錫、酸化アンチモンに第3成分として酸化ニオブを添加した半導電性釉薬を磁器碍子の表面に適用することにより、長期的に安定した釉薬を得ることができ、局部電界集中の緩和ができる。また、釉薬層の厚さをコントロールすることにより分担電圧を均一化することができる。これらの効果により、優れた汚損耐電圧特性及び耐コロナ防止特性を有することが報告されている。
【0008】
【特許文献1】
特開昭55−141023号公報
【非特許文献1】
NGKレビュー、第58号、平成11年12月、P.15〜P.28、「全面導電釉がいしの適用設計とフィールド実績」、日本ガイシ株式会社発行
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、第1の従来技術では、絶縁筒に半導電層の金属の薄層を形成するために、真空中で蒸着をする必要があり、前処理、真空引き、蒸着などの製造工程が増えるという問題点があった。また、厚さ分布のコントロールが難しい、長期的な安定性について不明な点がある、という課題があった。
【0010】
また、第2の従来技術では、湿潤汚損条件下、海塩汚損条件下などにおける表面漏れ電流の制御による汚損耐電圧特性及び耐コロナ防止特性の向上を目的としている。そのため、通常では清浄なタンク内に設置される真空バルブの絶縁筒沿面における帯電の抑制については全く想定されていない。
【0011】
本発明の目的は、製造工程を大幅に増やすことなく、長期的に安定し、かつ表面抵抗分布のコントロールの可能な半導電層を、半導電性釉薬を用いることにより真空バルブの絶縁筒の内表面,または外表面、または内外表面に形成し、絶縁筒表面の帯電を抑制または電界分布の改善をすることで、耐電圧性能に優れ信頼性の高い真空バルブを提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成する本発明の構成は、金属リングとこの金属リングの両端に接合した絶縁筒を含む筒材と、
この筒材の両端を閉止する金属製のフランジと、
前記筒材と前記フランジにより形成される真空容器内にて接離する固定電極及び可動電極と、
前記真空容器内において、前記金属リングの内周側に配置された中間シールドと、前記フランジの一方に取り付けられた第1のフランジ側シールドと、前記フランジの他方に取り付けられた第2のフランジ側シールドと、
を備えた真空バルブにおいて、
前記絶縁筒の少なくとも内表面に、半導電性釉薬を塗布することにより半導電層を形成し、しかも、この半導電層を前記フランジ及び前記金属リングに電気的に接続させ、
更に、前記絶縁筒の沿面上の電界分担を平均化するため、前記半導電層の厚さは、軸方向に関して前記中間シールドの両側の先端部分、第1のフランジ側シールドのうち前記中間シールド側に位置する先端部分、第2のフランジ側シールドのうち前記中間シールド側に位置する先端部分に対応する箇所の厚さを厚くし、他の箇所を薄くしていることを特徴とする。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0017】
<第1の実施の形態>
図1は本発明の第1の実施の形態にかかる真空バルブ1を示す。この真空バルブ1の真空容器2は、筒材3の固定側を金属製の固定側フランジ4で閉止し、筒材3の可動側を金属製の可動側フランジ5で閉止して形成されている。
【0018】
この実施例では、筒材3は、中央の中間リング(金属リング)6の両端に、円筒状のセラミックでなる絶縁筒7,8を接合し、絶縁筒7の端部に接続リング(金属リング)9を接合し、絶縁筒8の端部に接続リング(金属リング)10を接合して構成されている。そして、接続リング9と固定側フランジ4とが接続され、接続リング10と可動側フランジ5とが接続されている。
【0019】
固定リード11は、固定側フランジ4を気密に貫通しつつ固定側フランジ4により固定支持されている。この固定リード11の先端(真空容器2内に位置する先端)には、固定電極12が取り付けられている。
【0020】
可動リード13は、遊嵌状態で可動側フランジ5を貫通しており、その先端(真空容器2内に位置する先端)には、可動電極14が取り付けられている。可動リード13は、図示しない外部操作機器によって軸方向に移動されるようになっており、可動リード13の軸方向移動によって固定電極12と可動電極14とが接離して電流の投入・遮断が行われる。
【0021】
可動側フランジ5と可動リード13との間にはベローズ15を介在させており、ベローズ15の一端は可動側フランジ5に気密に接続され、他端は可動リード13に気密に接続されている。このため、真空容器2の内部の真空状態を維持しつつ、可動リード13の軸方向移動を可能にすることができる。
【0022】
中間リング6の内表面には中間シールド16が取り付けられており、固定側フランジ4の内表面にはフランジ側シールド17が取り付けられており、可動側フランジ5の内表面にはフランジ側シールド18が取り付けられている。
【0023】
絶縁筒7の内表面(内周面)及び外表面(外周面)には、半導電性層21が形成されており、絶縁筒8の内表面(内周面)及び外表面(外周面)には、半導電層22が形成されている。半導電層21,22は、半導電性釉薬を絶縁筒7,8の表面に塗布することにより形成されている。
【0024】
しかも、半導電層21は、中間リング6及び接続リング9に電気的に接続されている。また、半導電層22は、中間リング6及び接続リング10に電気的に接続されている。したがって、固定側フランジ4,接続リング9,半導電層21,中間リング6,半導電層8,接続リング10及び可動側リング5が電気的に接続されている。
【0025】
なお半導電層21,22を形成する半導電性釉薬としては、例えば酸化錫−酸化アンチモン系釉薬などを使用することができる。
この場合、半導電層21,22の表面抵抗が、数MΩ〜数百MΩ程度となるようにしている。
また、半導電層21,22の厚さを、0.1〜1.0mm程度となるようにしている。
【0026】
なお、半導電層21,22は、1回の塗布で形成したり、塗布を2回繰り返して形成したり、塗布した後に表面を削って厚さ調整をしたりする。
【0027】
上記構成となっている真空バルブ1では、設置現場の状況により、固定側フランジ4(固定電極12)側がアース電位となり可動側フランジ5(可動電極14側)が高電位となったり、逆に、固定側フランジ4(固定電極12)側が高電位となり可動側フランジ5(可動電極14側)がアース電位となったりする。
【0028】
第1の実施の形態に係る真空バルブ1では、半導電層21,22の表面は帯電されないので(または帯電が抑制されるので)、金属製のシールド16,17,18と半導電層21,22との間で放電が生じ難くなり、真空バルブ1の絶縁性能が向上する。
【0029】
更に詳述すると、微小な放電などにより帯電を形成しようとする電荷が発生し、この電荷が絶縁筒7,8の表面に接すると、半導電層21,22が無い場合には電荷が蓄積する。しかし、本実施の形態のように半導電層21,22がある場合には、微小放電などに起因して発生した電荷は、漏れ電流として半導電層内21,22を流れ、中間リング6や接続リング9,10を通ってフランジ4,5に伝わる。このとき、フランジ4,5の一方がアース電位となっているので、電荷(漏れ電流)はアース電位に流れてしまい電荷の蓄積が抑制される。これにより、帯電による電荷の変歪や、電界が強調されることにより生じる絶縁性能の低下または不安定化を抑制することができ、絶縁性能の高い真空バルブ1とすることができる。
【0030】
また、第1の実施の形態に係る真空バルブ1では、半導電層21,22は半導電性釉薬を塗布して形成している。このため、金属の薄層を形成する場合に必要であった、蒸着のための前処理、真空引き、蒸着などの製造工程を必要としない。
【0031】
また、従来のセラミック絶縁筒の表面には、通常では汚損防止のために絶縁性釉薬が塗布されており、本実施の形態のように半導電性釉薬を採用した場合も製造工程が大幅に増えることはないので安価である。さらに、半導電性釉薬は屋外懸垂碍子に適用され、その長期劣化特性が明らかにされているため、長期的な絶縁信頼性が高い真空バルブ1とすることができる。
【0032】
<第2の実施の形態>
図1に示す第1の実施の形態では、半導電層21,22の厚さを均一にすることを前提としている。しかし、図2(a)に一部のみを示す第2の実施の形態に係る真空バルブ1Aでは、半導電層21,22の厚さを任意に分布させたことを特徴とする。例えば、半導電層がない場合に絶縁筒7,8の沿面上の電界が集中する箇所において半導電層21,22の厚さを厚くして抵抗値を下げ、同時に、半導電層がない場合に絶縁筒7,8の沿面上の電界が集中していない箇所において半導電層21,22の厚みを薄くして抵抗値を上げるようにしている。このようにすることにより、絶縁筒7,8の沿面上の電位分担が平均化され電界集中部の電界が緩和されることにより、真空バルブ1Aの耐電圧性能が向上する。
【0033】
なお、絶縁筒7,8の沿面上の電界が集中する箇所は、軸方向に関して、シールド16,17,18の先端部分に対応する箇所である。また、シールドを備えていない場合には、軸方向に関して、絶縁筒の両端部に対応する箇所である。
【0034】
他の部分の構成は、図1に示す第1の実施の形態と同様である。したがって、第2の実施の形態に係る真空バルブ1Aは、第1の実施の形態に係る真空バルブ1と同様に、帯電抑制の効果を有している。
【0035】
第2の実施の形態では、帯電抑制の効果に加え、電界分布のコントロールができる。以下に具体例を用いてその効果を示す。
【0036】
図2(a)は、第2の実施の形態に係る真空バルブ1Aの一部を示す断面図である。
【0037】
図2(b)は、半導電層がない場合及び半導電層の厚みが均一である場合における、筒材3の沿面電界強度を示す。図2(b)から、中間シールド16及びフランジ側シールド17,18の先端に近い箇所で電界が集中していることがわかる。
【0038】
ここで、図2(c)に示すように、半導電層21,22の厚みを、電界強度分布に比例するように分布させると、絶縁筒7,8に形成した半導電層21,22の表面抵抗値は図2(d)のようになる。
【0039】
ここで電位は相対的な抵抗値が高いほど電圧を多く分担することを利用して、電圧分担すなわち電界分布を平均化させることができ、図2(e)に示す電界分布図のように電界分布を平坦にすることができる。
これにより、全体の筒材3の電界強度が低減され絶縁性能が向上する。
【0040】
また、従来の方法で、第2の実施の形態と同様に電界分布を改善しようとすると、真空バルブ内・外部にシールド電極などを設ける必要があり部品点数が増え装置が大型化するという問題があった。
しかし、第2の実施の形態では、絶縁筒7,8の表面に半導電層21,22を形成し、その厚さを調整するだけなので、装置の大型化や部品点数を増加させることなく電界分布を改善することができる。
【0041】
なお、上記実施の形態では、絶縁筒7,8の内表面及び外表面に半導電層21,22を形成したが、絶縁筒7,8の内表面及び外表面の少なくとも一方の面に半導電層21,22を形成するようにしても良い。
また、筒材の全体がセラミック製絶縁筒だけで構成されている真空バルブにも、本発明を適用することができることは言うまでもない。
【0042】
【発明の効果】
以上、実施の形態と共に具体的に説明したように本発明によれば、少なくとも絶縁筒を有する筒材または絶縁筒と金属リングとを接合してなる筒材と、この筒材の両端を閉止するフランジと、筒材とフランジにより形成される真空容器内にて接離する固定電極及び可動電極を備えた真空バルブにおいて、
絶縁筒の内表面及び外表面の少なくとも一方の面に、半導電性釉薬による半導電層を形成し、しかも、この半導電層をフランジに電気的に接続させていること、または、この半導電層をフランジ及び金属リングに電気的に接続させている構成にした。
このため、微小放電などにより発生した電荷は、絶縁筒に帯電することなくアース電位部位にまで流れる。よって絶縁筒表面での帯電を抑制して電界分布の改善をすることができ、耐電圧性に優れた信頼性の高い真空バルブを提供することができる。
【0043】
また本発明では、半導電層の厚さは、半導電層が無い場合に絶縁筒沿面上の電界が集中する箇所において厚く、半導電層が無い場合に絶縁筒沿面上の電界が集中していない箇所において薄くしている構成とした。
このため、絶縁筒沿面上の電位分担が平均化され電界集中部の電界が緩和されることにより、真空バルブの耐電圧性能が向上する。
【0044】
また本発明では、半導電層は、半導電性釉薬を塗布することにより形成しているため、製造コストや製造手順を増やすことなく半導電層を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る真空バルブを示す断面図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係る真空バルブを示す一部断面図及び特性説明図である。
【符号の説明】
1,1A 真空バルブ
2 真空容器
3 筒材
4 固定側フランジ
5 可動側フランジ
6 中間リング
7 絶縁筒
8 絶縁筒
9 接続リング
10 接続リング
11 固定リード
12 固定電極
13 可動リード
14 可動電極
15 ベローズ
16 中間シールド
17 フランジ側シールド
18 フランジ側シールド
21 半導電層
22 半導電層
Claims (1)
- 金属リングとこの金属リングの両端に接合した絶縁筒を含む筒材と、
この筒材の両端を閉止する金属製のフランジと、
前記筒材と前記フランジにより形成される真空容器内にて接離する固定電極及び可動電極と、
前記真空容器内において、前記金属リングの内周側に配置された中間シールドと、前記フランジの一方に取り付けられた第1のフランジ側シールドと、前記フランジの他方に取り付けられた第2のフランジ側シールドと、
を備えた真空バルブにおいて、
前記絶縁筒の少なくとも内表面に、半導電性釉薬を塗布することにより半導電層を形成し、しかも、この半導電層を前記フランジ及び前記金属リングに電気的に接続させ、
更に、前記絶縁筒の沿面上の電界分担を平均化するため、前記半導電層の厚さは、軸方向に関して前記中間シールドの両側の先端部分、第1のフランジ側シールドのうち前記中間シールド側に位置する先端部分、第2のフランジ側シールドのうち前記中間シールド側に位置する先端部分に対応する箇所の厚さを厚くし、他の箇所を薄くしていることを特徴とする真空バルブ。
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