JP4289589B2 - 溶液製膜方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、連続的に走行する支持体に溶液をダイから流延する溶液製膜方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
偏光板保護フイルムや光学補償フイルムなどは、セルローストリアセテートフイルム(以下、TACフイルムと称する)等から製造されている。TACフイルムは、セルローストリアセテートと添加剤などとを溶剤に溶解し高分子溶液(ドープ)を作製した後に、スリットを有するダイにより、ドープを支持体面に流延し、フイルムを製膜する溶液製膜方法により製造されている。
【0003】
溶液製膜方法により長時間フイルムを製造すると、ダイスリットの両耳端部から流延されている高分子溶液に含まれる溶剤が、蒸発する事によって高分子のカワバリが発生する。なお、「カワバリ」とは、ダイ先端でドープ中の溶剤の蒸発によってドープのゲル化物が付着したものをいう。カワバリが成長すると流延する膜の邪魔をして、流延した塗布膜の耳部が不均一になったり、またカワバリがダイスリット両耳部から離脱したりする。そして、このカワバリが後の工程において搬送ロールに付着して、塗布膜に押し傷を発生させるという問題が生じていた。このカワバリの発生を防止する方法として、ダイのスリット両端部付近に、蒸発した溶剤と空気の混合気体を吹き付けたり、溶質に可溶性の溶剤を流したりする方法が、米国特許第3,112,528号明細書、特開平2−208650号、特開平5−86212号の各公報に記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の各方法では、混合気体や溶剤の量を均一に吹き付けたり、流したりすることの制御が難しく、制御ムラによりダイと支持体間に形成されるリボンの耳端部の振動によってカワバリが発生するため、製膜されたフイルムの面状が悪化するという問題があった。
【0005】
本発明は、カワバリの発生を抑制する溶液製膜方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の溶液製膜方法は、表面層と中間層と裏面層とからなるフイルムを製膜する場合であって、前記表面層と前記裏面層とを形成するそれぞれのドープの固形分濃度が、前記中間層を形成するドープの固形分濃度より低い複数のドープをスリットを有するダイから支持体に流延して製膜する溶液製膜方法において、前記ダイから前記複数のドープを流延する際に、前記表面層または前記裏面層を形成するドープのせん断粘度Aと前記中間層を形成するドープのせん断粘度Bとの比A/Bを、A/B<0.9にしたから、ダイスリット耳端部のカワバリの発生が抑制される。
【0007】
前記複数のドープを前記ダイから流延する際に、前記表面層と前記裏面層との耳端部の厚みの和が、流延リボンの全厚みの5%以上であることが好ましい。なお、前記中間層が複数の層から構成されていても良く、さらに、流延は同時重層または逐次積層のいずれであっても良い。同時重層流延の場合には、前記ダイ入口部に流延幅より小さい幅で前記複数のドープを合流させるフィードブロックを備えるダイや、マニホールドを3つ以上備えるダイが好ましく用いられる。
【0008】
前記流延する際に、前記ダイのスリット両端部側から混合溶剤を流し、この溶剤は、前記ドープを構成する溶質に対して貧溶媒である溶剤を30〜90重量%含んでいるから、リボンが振動することなく、リボン耳端部の安定化をより向上させることができる。
【0009】
本発明には、上記いずれか1つに記載の溶液製膜方法により製膜された乾燥膜厚み20〜200μmのフイルムも含まれる。また、そのフイルムを用いて構成された偏光板フイルム、光学補償フイルムも本発明には含まれる。
【0010】
【発明の実施の形態】
[ポリマー]
本発明に係る高分子溶液(以下、ドープと称する)に用いることができる高分子(ポリマー)としては、ポリアミド類、ポリオレフィン類(例えば、ノルボルネン系ポリマー等)、ポリスチレン類、ポリカーボネート類、ポリスルホン類、ポリアクリル類、ポリメタクリル酸類(例えば、ポリメチルメタクリレート等)、ポリエーテルエーテルケトン類、ポリビニルアルコール類、ポリビニルアセテート類、セルロース誘導体(セルロースの低級脂肪酸エステル等)等があり、セルロースの低級脂肪酸エステル(セルロースアシレート)が特に好ましい。
【0011】
セルロースの低級脂肪酸エステルの低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味する。炭素原子数は、2(セルロースアセテート)、3(セルロースプロピオネート)又は4(セルロースブチレート)であることが好ましい。セルロースアセテートがさらに好ましく、セルローストリアセテート(酢化度:58.0〜62.5%)が特に好ましい。セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートのようなセルロースの混合脂肪酸エステルを用いてもよい。
【0012】
[溶媒]
溶媒としては、無機溶媒よりも有機溶媒のほうが好ましい。有機溶媒としては、塩化炭化水素(例えば、メチレンクロライド等)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等)、エステル類(メチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート、アミルアセテート、ブチルアセテート等)、エーテル類(例えば、ジオキサン、ジオキソラン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル等)、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等)、脂肪族炭化水素(例えば、ヘキサン等)及びアルコール類(例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール等)を用いることができる。
【0013】
溶媒は、ポリマーを膨潤させるものを用いることが好ましい。したがって、具体的な溶媒の種類は、使用するポリマーの種類に応じて決定する。例えば、ポリマーがセルローストリアセテート、ポリカーボネート類やポリスチレン類の場合は、アセトンや酢酸メチルが好ましい溶媒として用いられる。また、ノルボルネン系ポリマーの場合は、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、アセトンやメチルエチルケトンが好ましい溶媒として用いられる。ポリメチルメタクリレートの場合は、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアセテート、ブチルアセテートやメタノールが好ましい溶媒として用いられる。さらに、二種類以上の溶媒を併用してもよい。
【0014】
また、人体、環境への影響を考慮した場合、メチレンクロライドなどの塩素を含有した溶媒を用いないことが好ましい。溶液製膜法において、ドープ調製用に酢酸メチル、前述したケトン類及びアルコール類の混合溶媒を用いることが好ましい。特に、ポリマーにセルロースアシレートを選択した場合には、酢酸メチルを主溶媒に用いることが溶解性の点から好ましい。また、酢酸メチルに、ポリマーの溶解性を良好にする目的で、ケトン類やアルコール類を混合することもできる。この場合、各溶媒の成分比は、酢酸メチルが20〜90重量%、ケトン類が5〜60重量%、アルコール類が5〜30重量%であることが好ましい。
【0015】
ドープを構成する溶媒の沸点は、20〜300℃であることが好ましく、30〜200℃であることがより好ましく、40〜100℃であることが最も好ましい。
【0016】
[添加剤]
可塑剤や紫外線吸収剤、劣化防止剤など各種の添加剤をドープに加えてもよい。以下に、それら各添加剤について説明する。
【0017】
(可塑剤)
本発明で用いることのできる可塑剤としては特に限定はないが、リン酸エステル系可塑剤(例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等)、フタル酸エステル系可塑剤(例えば、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート等)、グリコール酸エステル系可塑剤(例えば、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等)を単独あるいは併用して用いることが好ましい。さらに、特開平11−80381号公報、同11−124445号公報、同11−248940号公報に記載されている可塑剤も添加することができる。これら可塑剤は、ドープ中のポリマーに対して0.1〜20重量%を含むように混合することが好ましく、より好ましくは6〜16重量%である。
【0018】
(紫外線吸収剤)
また、ドープには、紫外線吸収剤を添加することもできる。特に、好ましくは一種または二種以上の紫外線吸収剤を含有させることである。本発明に係る溶液製膜方法により製造されたフイルムを、液晶用光学材料に用いる場合には、液晶用紫外線吸収剤は、液晶の劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ、液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。例えば、オキシベンゾフェノン系化合物,ベンゾトリアゾール系化合物,サリチル酸エステル系化合物,ベンゾフェノン系化合物,シアノアクリレート系化合物,ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。特に好ましい紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化合物である。中でも、ベンゾトリアゾール系化合物は、セルロースエステルに対する不要な着色が少ないことから、好ましい。さらには、特開平8−29619号公報に記載されているベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤、あるいは同8−239509号公報に記載されている紫外線吸収剤も添加することができる。その他、公知のいずれの紫外線吸収剤を添加しても良い。紫外線吸収剤は、ドープ中のポリマーに対して0.001〜5重量%を含むように混合することが望ましい。例えば、特開平8−29619号公報に記載されているベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤、あるいは同8−239509号公報に記載されている紫外線吸収剤も添加することができる。
【0019】
好ましい紫外線防止剤として、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール,ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N´−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイトなどが挙げられる。特に、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が最も好ましい。また例えば、N,N´−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジンなどのヒドラジン系化合物の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイトなどのリン系加工安定剤を併用してもよい。これらの化合物の添加量は、ドープ中のポリマーに対して0.001〜5重量%含まれていることが好ましい。
【0020】
(微粒子粉体)
ドープには、フイルムの易滑性や高湿度下での耐接着性の改良のために微粒子粉体であるマット剤を含有させることが好ましい。マット剤の表面の突起物の平均高さが0.005〜10μmが好ましく、より好ましくは0.01〜5μmである。また、その突起物は表面に多数ある程良いが、必要以上に多いとへイズとなり問題である。使用されるマット剤としては、無機化合物、有機化合物ともに使用可能である。無機化合物としては、硫酸バリウム、マンガンコロイド、二酸化チタン、硫酸ストロンチウムバリウム、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化錫、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン、硫酸カルシウムなどの無機物の微粉末があるが、さらに例えば湿式法やケイ酸のゲル化より得られる合成シリカ等の二酸化ケイ素やチタンスラッグと硫酸により生成する二酸化チタン(ルチル型やアナタース型)等が挙げられる。また、粒径の比較的大きい、例えば20μm以上の無機物から粉砕した後、分級(振動ろ過、風力分級など)することによっても得られる。有機化合物としては、ポリテトラフルオロエチレン、セルロースアセテート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリプピルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチレンカーボネート、アクリルスチレン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、メラミン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、或いはポリ弗化エチレン系樹脂、澱粉等の有機高分子化合物の粉砕分級物もあげられる。あるいは又懸濁重合法で合成した高分子化合物、スプレードライ法あるいは分散法等により球型にした高分子化合物、または無機化合物を用いることができる。また、微粒子粉体は、あまり多量に添加するとフイルムの柔軟性が損なわれるなどの弊害も生じるため、ドープ中のポリマーに対して0.001〜5重量%含有していることが好ましい。
【0021】
(離型剤)
ドープには、離型操作を容易にするための離型剤を添加することもできる。離型剤には、高融点のワックス類、高級脂肪酸およびその塩やエステル類、シリコーン油、ポリビニルアルコール、低分子量ポリエチレン、植物性タンパク質誘導体などが挙げられるが、これらに限定されない。離型剤の添加量は、フイルムの表面の光沢や平滑性に影響を及ぼすため、ドープ中のポリマーに対して0.002〜2重量%含有していることが好ましい。
【0022】
(フッ素系界面活性剤)
ドープには、フッ素系界面活性剤を添加することもできる。フッ素系界面活性剤は、フルオロカーボン鎖を疎水基とする界面活性剤であり、表面張力を著しく低下させるため有機溶媒中での塗布剤や、帯電防止剤として用いられる。フッ素系界面活性剤としては、C8 17CH2 CH2 O−(CH2 CH2 O)10−OSO3 Na、C8 17SO2 N(C3 7 )(CH2 CH2 O)16−H、C8 17SO2 N(C3 7 )CH2 COOK、C7 15COONH4 、C8 17SO2 N(C3 7 )(CH2 CH2 O)4 −(CH2 4 −SO3 Na、C8 17SO2 N(C3 7 )(CH2 3 −N+ (CH3 3 ・I- 、C8 17SO2 N(C3 7 )CH2 CH2 CH2 + (CH3 2 −CH2 COO- 、C8 17CH2 CH2 O(CH2 CH2 O)16−H、C8 17CH2 CH2 O(CH2 3 −N+ (CH3 3 ・I- 、H(CF2 8 −CH2 CH2 OCOCH2 CH(SO3 )COOCH2 CH2 CH2 CH2 −(CF2 8 −H、H(CF2 6 CH2 CH2 O(CH2 CH2 O)16−H、H(CF2 8 CH2 CH2 O(CH2 3 −N+ (CH3 3 ・I- 、H(CF2 8 CH2 CH2 OCOCH2 CH(SO3 )COOCH2 CH2 CH2 CH2 8 17、C9 17−C6 4 −SO2 N(C3 7 )(CH2 CH2 O)16−H、C9 17−C6 4 −CSO2 N(C3 7 )(CH2 3 −N+ (CH3 3 ・I- などが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。フッ素系界面活性剤の添加量は、ドープ中のポリマーに対して0.001〜2重量%含有していることが好ましい。
【0023】
また、ドープには、必要に応じてさらに種々の添加剤を溶液の調整前から調整後のいずれかの段階で添加してもよい。カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属塩などの熱安定剤、帯電防止剤、難燃剤、滑剤、油剤が挙げられるが、これらに限定される訳ではない。
【0024】
[ドープの調製]
ドープの調整について、ポリマーにセルローストリアセテートを用いた場合を例示して説明する。しかしながら、本発明の溶液製膜方法に用いられるドープを構成するポリマーは、セルローストリアセテートに限定される訳ではない。
【0025】
本発明のフイルムは、図2(a)に示すように少なくとも3層(表面層18a、中間層18b、裏面層18c)から構成される流延リボン18により製膜される。それぞれの層を形成するドープを調製する必要がある。本発明においては、表面層18aと裏面層18cを形成するドープ(以下の説明において、それぞれ表面層用ドープ、裏面層用ドープと称する)の固形分濃度は、中間層18bを形成するドープ(以下の説明において、中間層用ドープ)の固形分濃度より低いものを用いることが、ダイ先端部のカワバリの発生を抑制するために必要である。本発明において、固形分とは、前述したポリマーと各種の添加剤とを意味している。中間層用ドープの固形分濃度は、15〜30重量%が好ましく、より好ましくは、18〜27重量%である。また、表面層用ドープと裏面層用ドープの固形分濃度は、10〜25重量%が好ましく、より好ましくは、13〜22重量%である。また、表面層用ドープと裏面層用ドープの構成成分が、同じものを用いても良い。なお、図2(a)では、中間層が1層から形成されている流延リボン18を図示したが、本発明はこの形態に限定されず、中間層が2層以上の複数の層から形成されていても良い。
【0026】
(膨潤工程)
始めに、前記セルローストリアセテート粒子と溶媒とを混合し、セルローストリアセテート粒子を溶媒により膨潤させる膨潤工程を行う。膨潤工程の温度は、−10〜55℃であることが好ましい。通常は室温で実施する。セルローストリアセテートと溶媒との比率は、製膜して得られる積層構造のフイルムの層に応じて決定する。
【0027】
中間層用ドープのセルローストリアセテートは、13〜27重量%であることが好ましく、16〜25重量%であることがさらに好ましく、19〜23重量%であることが最も好ましい。また、表面層用ドープと裏面層用ドープのセルローストリアセテートは、9〜23重量%であることが好ましく、12〜21重量%であることがさらに好ましく、15〜19重量%であることが最も好ましい。溶媒とセルローストリアセテートとの混合物は、セルローストリアセテートが充分に膨潤するまで攪拌することが好ましい。また、膨潤工程において、溶媒とセルローストリアセテート以外の成分、例えば、可塑剤、劣化防止剤、染料や紫外線吸収剤を添加してもよい。
【0028】
(加熱工程)
次に、上記ドープを130℃以上に加熱する加熱工程を行う。加熱温度は、130℃以上、望ましくは160℃以上、最も望ましくは180℃以上である。しかしながら、250℃を超えると、ドープ中のセルローストリアセテートの分解が生じるため、フイルムの品質が損なわれ、好ましくはない。この場合において、加熱速度は、1℃/分以上であることが好ましく、2℃/分以上であることがより好ましく、4℃/分以上であることがさらに好ましく、8℃/分以上であることが最も好ましい。加熱速度は、速いほど好ましいが、10000℃/秒が理論的な上限であり、1000℃/秒が技術的な上限であり、そして100℃/秒が実用的な上限である。なお、加熱速度とは、加熱を開始する時の温度と最終的な加熱温度との差を、加熱開始時から最終的な加熱温度に達するまでの時間で割った値である。加熱方法は、オートクレーブ方式、多管式熱交換器、スクリュー押し出し機、スタチックミキサーなどのいずれの方法であっても良い。
【0029】
また、加熱時間は、20秒以上4時間以下が好ましい。加熱時間が20秒に満たない場合、加熱溶解したドープに不溶解物が残存して高品質なフイルムを作製することができない。また、この不溶解物をろ過により取り除く場合でも、ろ過寿命が極端に短くなることにより不利である。加熱時間の始期は、目的温度に達したときから測定するものとし、終期は、目的温度から冷却を開始したときとする。なお、装置の冷却は、自然冷却であっても良いし、強制的な冷却であっても良い。
【0030】
(加圧工程)
上記加熱工程において、溶液が沸騰しないように調整された圧力下で、溶媒の大気圧における沸点以上の温度までドープを加熱することが好ましい。加圧することによって、ドープの発泡を防止して、均一なドープを得ることができる。加圧する圧力は、加熱温度と溶媒の沸点との関係で最も好ましい圧力を選択することができる。
【0031】
(冷却工程)
ドープの加熱する前に、−100〜−10℃に冷却する冷却工程を行うことも、光学的性質が良好なフイルムを得るために有効である。常温で容易に溶解し得ない系と、不溶解物の多くなる系では、冷却または加熱あるいは両者を組み合わせて用いると、良好なドープを調製できる。冷却することにより、セルローストリアセテート中に溶媒を急速かつ有効に浸透せしめることができ溶解が促進される。有効な温度条件は−100〜−10℃である。冷却工程においては、冷却時の結露による水分混入を避けるため、密閉容器を用いることが望ましい。また、冷却時に減圧すると、冷却時間を短縮することができる。減圧を実施するためには、耐圧性容器を用いることが望ましい。また、この冷却工程は、上記加熱工程の後に実施することも本発明において有効である。なお、溶解が不充分である場合は、冷却工程から加熱工程までを繰り返して実施してもよい。溶解が充分であるかどうかは、目視により溶液の外観を観察して判断できる。
【0032】
本発明の溶液製膜方法において、ダイからドープを流延する際に表面層用ドープのせん断粘度A、中間層用ドープのせん断粘度B、裏面層用ドープのせん断粘度A’が、A/B<0.9、A’/B<0.9の関係を有していることがダイのスリット先端部にカワバリの発生を抑制するために必要である。せん断速度が、1〜3000(1/sec)、製膜温度が30〜40℃の場合、表面層用ドープのせん断粘度A、裏面層用ドープのせん断粘度A’は、30〜50Pa・ sの範囲であり、かつ中間層用ドープのせん断粘度Bが、10〜150Pa・ sの範囲であることが好ましい。また、中間層が複数の層から形成されている場合には、それぞれの中間層用ドープのせん断粘度の平均値を前記中間層用ドープのせん断粘度Bとみなし、A/B<0.9、A’/B<0.9の関係式を満たすことが、ダイのスリット先端部にカワバリの発生を抑制するために必要である。
【0033】
[溶液製膜方法]
図1はセルローストリアセテートの溶液製膜ラインの一実施形態を示している。セルローストリアセテートと溶媒とが、ドープ供給装置11のミキシングタンク1内に注入される。ミキシングタンク1内は、撹拌翼2で撹拌され、タンク1内のドープ3が均一になる。この際に、ドープ3に添加剤などを混合することも可能である。また、前述したようにあらかじめドープ3が調製され、そのドープ中に添加剤などを混合しておいても良い。ドープ3は、ポンプ4によりろ過機5に送られて不純物が除去される。このドープ3は、一定流量で流延ダイ15に送られ、図2(a)に示す表面層18aを形成する表面層用ドープ3として用いられる。また、同様の構成のドープ供給装置12,13からも一定量のドープが流延ダイ15に送られ、それぞれ中間層用ドープ6、裏面層用ドープ7として用いられる。
【0034】
図3には、図1に示した溶液製膜ラインを構成する流延ダイ15の要部断面図を示す。また、図4には、表面層用ドープ3と中間層用ドープ6と裏面層用ドープ7とを合流させるフィードブロック30を示す。図4に示すようにフィードブロックにより合流したドープ8は、流延ダイ15のマニホールド16を経た後に、ダイ先端から支持体17上に流延リボン18として流延され、乾燥されてフイルムになる。支持体17上の多層流延樹脂膜は、剥ぎ取りローラ20によりフイルム19として剥ぎ取られ、テンタ延伸機21に送られる。テンタ延伸機21によりフイルム19は、搬送されながら延伸及び乾燥される。テンタ延伸機21を出たフイルム19は、乾燥ゾーン22に送られて多数のローラ23で搬送されながら乾燥されたのち、冷却ゾーン24を通過して常温まで冷却されて巻き取り機25で巻き取られる。巻き取られる前に、フイルム19にナーリングが付与されたり、耳切りが行なわれたりすることが好ましい。なお、本発明の溶液製膜方法は、図示した方法に限定されない。
【0035】
流延リボン18の側断面図を図2(a)に示す。図では、裏面層18cと中間層18bと表面層18aとから構成された、3層の積層構造のものを示したが、前述したように中間層18bは、複数の層から形成されていても良い。また、図2(b)には、流延リボン18の耳端部の拡大断面図を示す。図2(b)に示すように流延リボン18の厚みDが、20〜200μmになるようにドープを流延ダイ15から支持体17上に流延することが、本発明において好ましい。
【0036】
図2(b)に示すように裏面層18c及び表面層18aは、流延リボン18の耳端部において、中央側に回り込むように製膜される。これは、裏面層用ドープ7と表面層用ドープ3とは中間層用ドープ6と比較して、ドープ中の固形分濃度が低くドープが調製されているためである。本発明において、表面層18aの耳端部厚みS1と裏面層18cの耳端部厚みS2が、流延リボン18の全厚みDとの関係において、
(S1+S2)/D×100>5(%)
であることが、流延ダイ15のスリット先端部にカワバリの発生を抑制するために好ましい。
【0037】
図5には、他の実施形態の流延ダイ40について、その概略断面図を示す。図5に示す流延ダイ40は、複数(図5では、3個)のマニホールドが設けられているマルチマニホールドである。マニホールド41,42,43に、それぞれ裏面層用ドープ7,中間層用ドープ6,表面層用ドープ3が注入されて、流延ダイ40内部でそれぞれのドープ3,6,7を合流させた後に、流延リボン44を支持体45上に流延してフイルムを形成する。
【0038】
図6には、逐次流延による溶液製膜方法を示す。本方法では、3個の流延ダイ50,51,52が支持体53上に配置されている。各流延ダイ50,51,52からは、裏面層用ドープ7,中間層用ドープ6,表面層用ドープ3が流延リボン54,55,56として流延され、フイルムが形成される。図から明らかなように、支持体53の上流側に配置された流延ダイ50から流延された裏面層用ドープ7の上に、中間層用ドープ6と表面層用ドープ3が逐次積層されて、3層からなるフイルムが形成される。本発明において、逐次流延による製膜は図示した3個の流延ダイを用いた実施形態に限定されず、4個以上の流延ダイを支持体上に配置したものでも良い。
【0039】
図7は、給液ノズル60が取り付けられた流延ダイ61を示す。流延ダイ61からドープを流延する際に、セルローストリアセテートに対して貧溶媒であるメタノール,n−ブタノールなどを30〜90重量%含み、セルローストリアセテートの良溶媒であるメチレンクロライド,酢酸メチルと混合された混合溶剤62をポンプ63により送液して、流延ダイ61のスリット両端部側から流すことにより、流延リボン(図示しない)が振動することなく、リボン耳端部の安定化をより向上させることができる。混合溶剤を流延ダイ61のスリット先端に流すことで、表面層用ドープ3と裏面層用ドープ7の固形分濃度がさらに低くなり、耳端部にカワバリの発生を抑制する効果が向上する。なお、本実施形態では、ポリマーにセルローストリアセテートを用いた場合を説明しているので、貧溶媒には、メタノール,n−ブタノールが用いられている。しかしながら、混合溶剤62を構成する貧溶媒は、ドープを構成するポリマーの物性に応じて、各種の有機溶媒を用いることができる。また、貧溶媒と混合するポリマーの良溶媒も、各種の有機溶媒を、ポリマーの物性に応じて選択することができる。
【0040】
なお、本発明の溶液製膜方法は、図示した形態に限定されない。例えば、流延リボンを均一に支持体上に流延するために、流延ダイに減圧チャンバが設けられていても良い。
【0041】
[製品]
前述した溶液製膜方法で製膜されたフイルムは、偏光板フイルムとして用いることができる。また、フイルム上に光学補償シートを貼付した光学補償フイルムとして用いることもできる。
【0042】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様は、これに限定されない。また、溶液製膜方法については、実施例1で詳細に説明し、実施例2〜4および比較例1,2については、実施例1と同じ条件については説明を省略している。始めに、ドープの調製を説明し、次にフイルムの評価方法を説明し、その後に各実施例及び比較例を説明する。その後に、各実験条件と評価結果について表1にまとめて示す。
【0043】
[ドープの調製]
(中間層用ドープ)
中間層用ドープは、下記に示す化合物を前述したドープ調製法により調製した。
セルローストリアセテート 100重量部
トリフェニルホスフェート 7.8重量部
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9重量部
メチレンクロライド(第1溶剤) 300重量部
メタノール(第2溶剤) 65重量部
紫外線吸収剤 1.0重量部
なお、セルローストリアセテートには、酢化度60.9%のものを使用した。セルローストリアセテートは、全てのドープの調製において、同一の酢化度のものを使用した。得られたドープ(以下の説明において、ドープ1と称する)の固形分濃度は、23.4重量%であり、ポリマー(セルローストリアセテート)に対する添加剤の混合比は、13重量%である。
【0044】
(表面および裏面層用ドープ)
表面および裏面層用ドープは、下記に示す化合物を前述したドープ調製法により調製した。
セルローストリアセテート 87重量部
トリフェニルホスフェート 6.8重量部
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.4重量部
メチレンクロライド(第1溶剤) 300重量部
メタノール(第2溶剤) 65重量部
紫外線吸収剤 0.9重量部
得られたドープ(以下の説明において、ドープ2と称する)の固形分濃度は、21.0重量%であり、ポリマーに対する添加剤の混合比は、13重量%である。
【0045】
また、表面または裏面層用ドープとして、成分比を変えたドープを下記に示す化合物により前述したドープ調製法により調製した。
セルローストリアセテート 77重量部
トリフェニルホスフェート 6.0重量部
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.0重量部
メチレンクロライド(第1溶剤) 300重量部
メタノール(第2溶剤) 65重量部
紫外線吸収剤 0.9重量部
得られたドープ(以下の説明において、ドープ3と称する)の固形分濃度19.0重量%であり、ポリマーに対する添加剤の混合比は、13重量%である。
【0046】
[溶剤を流す条件]
図7に示すように流延ダイのスリット先端部に流す混合溶剤は、セルローストリアセテートに対して貧溶媒である溶媒にはメタノールを用い、良溶媒にはメチレンクロライドを用いた。これら溶媒をメチレンクロライド/メタノール=50/50の組成比で混合し、送液量0.2ml/minで流した。各実験において、混合溶剤を流した実験については、表1中に○とし、流さなかった実験は×とした。
【0047】
[評価]
(耳端部のカワバリの発生頻度の評価)
下記の基準に基づいて、各実験結果を表1中に記載した。
数日でカワバリが発生した....×
1ヶ月以上でカワバリが発生した....△
3ヶ月以上でカワバリが発生した....○
6ヶ月以上経過後もカワバリは発生しなかった....◎
【0048】
(フイルム面状評価)
フイルム表面の面状を目視評価し、以下の3段階に分類評価した。各実験結果を表1中に記載した。
品質限度より悪いレベル....×
品質限度レベル....△
品質限度より良いレベル....○
【0049】
[実施例1]
実施例1では、表面および裏面層用ドープはドープ2を用い、中間層用ドープにはドープ1を用いた。製膜は、図1に示すフイルム製膜ラインにより行った。流延ダイには、図3及び4に示すフィードブロック方式のものを用いた。その流延ダイから乾燥後のフイルム平均膜厚が60μm、耳端部の表面及び裏面層厚み/フイルム全厚み(表1中では(S1+S2)/Dと示す。なお、形態については図2(b)を参照。)が0.05、表面層用ドープせん断粘度/中間層用ドープせん断粘度(表1中では、A/Bと示す)が0.72になるように、上記3層のドープを流延し、3層の積層構造のフイルムを製膜した。この際の製膜速度は、65m/minとした。
【0050】
[実施例2]
実施例2では、耳端部の表面及び裏面層厚み/フイルム全厚みが0.30になる条件以外は、実施例1と同じ条件で製膜してフイルムを得た。
【0051】
[実施例3]
実施例3では、表面および裏面層用ドープはドープ3を用い、中間層用ドープにはドープ1を用いた。また、耳端部の表面及び裏面層厚み/フイルム全厚みが0.30、表面層用ドープせん断粘度/中間層用ドープせん断粘度を0.52とした以外は、実施例1と同じ条件で製膜してフイルムを得た。
【0052】
[実施例4]
実施例4では、実施例3の製膜条件に、さらに前述した流延ダイのスリット先端部に混合溶剤を流しながら、製膜を行いフイルムを得た。
【0053】
[比較例1]
比較例1では、ドープ1のみを用いて単層製膜を行った。単層製膜であるため、耳端部の表面及び裏面層厚み/フイルム全厚みは0、表面層用ドープせん断粘度/中間層用ドープせん断粘度は1になる。その他の製膜条件は、実施例1と同じ条件で製膜してフイルムを得た。
【0054】
[比較例2]
比較例2では、比較例1の製膜条件に、さらに前述した流延ダイのスリット先端部に混合溶剤を流しながら、製膜を行いフイルムを得た。
【0055】
【表1】
Figure 0004289589
【0056】
表1から表面層及び裏面層用ドープの固形分濃度がより低いドープ3を用いた実施例3及び4が、より良好な結果が得られたことが分かる。また、製膜する際に、流延ダイのスリット先端部に混合溶剤を流すことで、さらに良い結果が得られることが分かる。
【0057】
さらに、ドープを調製する溶媒の主溶媒に酢酸メチルを用いた実験を実施例5〜8と比較例3、4として行った。実験の評価方法及び流延ダイのスリット先端部に混合溶剤を流す条件は、先に示した方法と同一にして実験を行った。また、実験条件及び評価結果については、後に表2にまとめて示す。
【0058】
[ドープの調製]
(中間層用ドープ)
中間層用ドープは、下記に示す化合物を前述したドープ調製法により調製した。
セルローストリアセテート 100重量部
トリフェニルホスフェート 7.8重量部
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9重量部
酢酸メチル(第1溶剤) 260重量部
混合溶剤(第2溶剤) 110重量部
紫外線吸収剤 0.9重量部
なお、第2溶剤である混合溶剤には、アセトン:エタノール:メタノール:n−ブタノール=2:1:1:1(重量比)に調製されているものを用いた。また、得られたドープ(以下の説明において、ドープ4と称する)の固形分濃度は、23.4重量%であり、ポリマー(セルローストリアセテート)に対する添加剤の混合比は、13重量%である。
【0059】
(表面および裏面層用ドープ)
表面および裏面層用ドープは、下記に示す化合物を前述したドープ調製法により調製した。
セルローストリアセテート 87重量部
トリフェニルホスフェート 6.8重量部
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.4重量部
酢酸メチル(第1溶剤) 265.3重量部
混合溶剤(第2溶剤) 113.6重量部
紫外線吸収剤 0.9重量部
なお、混合溶剤は、前述した中間層用ドープに用いたものと同じ成分比である。また、得られたドープ(以下の説明において、ドープ5と称する)の固形分濃度は、20.6重量%であり、ポリマーに対する添加剤の混合比は、13重量%である。
【0060】
表面または裏面層用ドープとして、成分比を変えて下記に示す化合物を前述したドープ調製法により調製した。
セルローストリアセテート 77重量部
トリフェニルホスフェート 6.0重量部
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.0重量部
酢酸メチル(第1溶剤) 266.5重量部
混合溶剤(第2溶剤) 114.3重量部
紫外線吸収剤 0.9重量部
なお、混合溶剤の成分比は、前述したものと同じである。また、得られたドープ(以下の説明において、ドープ6と称する)の固形分濃度は、18.6重量%であり、ポリマーに対する添加剤の混合比は、13重量%である。
【0061】
[実施例5]
実施例5では、表面および裏面層用ドープはドープ5を用い、中間層用ドープにはドープ4を用いた。製膜は、耳端部の表面及び裏面層厚み/フイルム全厚みが0.05、表面層用ドープせん断粘度/中間層用ドープせん断粘度が0.68になるようにした他は、実施例1と同じ条件で製膜して、フイルムを得た。
【0062】
[実施例6]
実施例6では、耳端部の表面及び裏面層厚み/フイルム全厚みが0.25になる条件以外は、実施例5と同じ条件で製膜してフイルムを得た。
【0063】
[実施例7]
実施例3では、表面および裏面層用ドープはドープ6を用い、中間層用ドープにはドープ4を用いた。また、耳端部の表面及び裏面層厚み/フイルム全厚みを0.25、表面層用ドープせん断粘度/中間層用ドープせん断粘度を0.47とした以外は、実施例5と同じ条件で製膜してフイルムを得た。
【0064】
[実施例8]
実施例8では、実施例7の製膜条件に、さらに前述した流延ダイのスリット先端部に混合溶剤を流しながら、製膜を行いフイルムを得た。
【0065】
[比較例3]
比較例3では、ドープ4のみを用いて単層製膜を行った。単層製膜であるため、耳端部の表面及び裏面層厚み/フイルム全厚みは0、表面層用ドープせん断粘度/中間層用ドープせん断粘度は1になる。その他の製膜条件は、実施例5と同じ条件で製膜してフイルムを得た。
【0066】
[比較例4]
比較例4では、比較例3の製膜条件に、さらに前述した流延ダイのスリット先端部に混合溶剤を流しながら、製膜を行いフイルムを得た。
【0067】
【表2】
Figure 0004289589
【0068】
表2から、ドープを調製する溶媒に酢酸メチルを用いても、メチレンクロライドを用いた場合と同様の結果が得られたことが分かる。メチレンクロライドは、環境に影響を与える物質であるが、本発明の溶液製膜方法は、環境への影響が少ない酢酸メチルを用いて製膜を行うことが可能である。
【0069】
【発明の効果】
本発明の溶液製膜方法によれば、表面層と中間層と裏面層とからなるフイルムを製膜する場合であって、前記表面層と前記裏面層とを形成するそれぞれのドープの固形分濃度が、前記中間層を形成するドープの固形分濃度より低い複数のドープをスリットを有するダイから支持体に流延して製膜する溶液製膜方法において、前記ダイから前記複数のドープを流延する際に、前記表面層または前記裏面層を形成するドープのせん断粘度Aと前記中間層を形成するドープのせん断粘度Bとの比A/Bを、A/B<0.9にしたから、前記スリット先端のカワバリの発生を抑制することができる。
【0070】
また、前記複数のドープを前記ダイから流延する際に、前記表面層と前記裏面層との耳端部の厚みの和が、流延リボンの全厚みの5%以上にすることで、製膜されたフイルムの品質が良好なものになる。
【0071】
さらに、前記流延する際に、前記ダイのスリット両端部側から混合溶剤を流し、この混合溶剤は、前記ドープを構成する溶質に対して貧溶媒である溶剤を30〜90重量%含んでいるから、カワバリの発生をさらに抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る溶液製膜方法を実施するためのフイルム製膜ラインを示した図である。
【図2】本発明に係る流延リボンの断面図である。
【図3】図1に示したフイルム製膜ラインの要部断面図である。
【図4】フィードブロックを説明するための概略断面図である。
【図5】本発明に係るフイルム製膜ラインの他の実施形態の要部断面図である。
【図6】本発明に係るフイルム製膜ラインの逐次積層法による実施形態の要部断面図である。
【図7】給液ノズルが取り付けられた流延ダイを説明するための概略断面図である。
【符号の説明】
3 表面層用ドープ
6 中間層用ドープ
7 裏面層用ドープ
11,12,13 ドープ供給装置
15,40,50,51,52,61 流延ダイ
18,44 流延リボン
18a 表面層
18b 中間層
18c 裏面層
19 フイルム
30 フィードブロック
41,42,43 マニホールド
60 給液ノズル
62 溶剤タンク
63 ポンプ
A 表面層用ドープのせん断粘度
A’ 裏面層用ドープのせん断粘度
B 中間層用ドープのせん断粘度
D 流延リボン厚み
S1 表面層厚み
S2 裏面層厚み

Claims (8)

  1. 表面層と中間層と裏面層とからなるフイルムを製膜する場合であって、前記表面層と前記裏面層とを形成するそれぞれのドープの固形分濃度が、前記中間層を形成するドープの固形分濃度より低い複数のドープを、スリットを有するダイから流延リボンとして支持体に流延して製膜する溶液製膜方法において、
    前記ダイから前記複数のドープを同時に流延する際に、前記表面層または前記裏面層を形成するドープのせん断粘度Aと前記中間層を形成するドープのせん断粘度Bとの比A/Bを、A/B<0.9とし、
    前記表面層と前記裏面層との耳端部の厚みの和が前記流延リボンの全厚みの5%以上30%以下であることを特徴とする溶液製膜方法。
  2. 前記流延リボンの前記耳端部では、前記表面層と前記裏面層とを形成するそれぞれのドープが前記流延リボンの厚さ方向中央部に向かって回り込み、前記表面層及び前記裏面層の厚さが、前記流延リボンの幅方向中央部から前記耳端部に向かうに従い次第に増大するように、前記複数のドープを同時重層流延することを特徴とする請求項1記載の溶液製膜方法。
  3. 前記流延する際に、前記ダイのスリット両端部側から混合溶剤を流し、この混合溶剤は、前記ドープを構成する溶質に対して貧溶媒である溶剤を30〜90重量%含んでいることを特徴とする請求項1または2記載の溶液製膜方法。
  4. 前記複数のドープのせん断速度が1〜3000(1/秒)、製膜温度が30〜40(℃)であり、前記表面層を形成するドープ及び前記裏面層を形成するドープのせん断粘度は30〜50(Pa・s)、前記中間層を形成するドープのせん断粘度は10〜150(Pa・s)であることを特徴とする請求項1ないし3のうちいずれか1項記載の溶液製膜方法。
  5. 前記中間層を形成するドープの固形分濃度が15〜30重量%であり、
    前記表面層を形成するドープ及び前記裏面層を形成するドープの固形分濃度が10〜25重量%であり、
    前記中間層を形成するドープのポリマー濃度が13〜27重量%であり、
    前記表面層を形成するドープ及び前記裏面層を形成するドープのポリマー濃度が9〜23重量%であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の溶液製膜方法。
  6. 前記流延リボンの厚みが20〜200μmであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の溶液製膜方法。
  7. 前記ダイ入口部に流延幅より小さい幅で前記複数のドープを合流させるフィードブロックを備えるダイによって同時重層流延することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の溶液製膜方法。
  8. マニホールドを3つ以上備えるダイによって同時重層流延することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の溶液製膜方法。
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