JP4285865B2 - 電子写真方法および電子写真装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真方法における感光体の表面劣化を防止する方法に関し、感光体の表面劣化を防止する電子写真装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子写真用感光体としては、導電性支持体状にセレン(Se)ないしセレン合金を主体とする光導電層を設けたもの、酸化亜鉛、硫酸カドミウムなどの無機光導電材料をバインダー中に分散させたもの、ポリ−N−ビニルカルバゾールとトリニトロフルオレノンあるいはアゾ顔料などの有機光導電材料を用いたもの及び非晶質シリコンを用いたもの等が一般に知られている。
【0003】
ここにいう「電子写真方式」とは一般に光導電性の感光体をまず暗所で、例えばコロナ放電によって帯電させ、次いで像露光し、露光部のみの電荷を選択的に散逸せしめて静電潜像を得、この潜像部を染料、顔料などの着色剤と高分子物質などの結合剤とから構成される検電微粒子(トナー)で現像し可視化して画像を形成するようにした画像形成法の一つである。
【0004】
このような電子写真法において感光体に要求される基本的な特性としては、(1)暗所で適当な電位に帯電できること;(2)暗所において電荷の散逸が少ないこと;(3)光照射によって速やかに電荷を散逸せしめうること;などが挙げられる。
【0005】
近年、電子写真複写機の高速化、大型化が進むなか、感光体に対して上記特性以外に長期繰り返し使用に際しても高画質を保つことのできる信頼性が強く要求されるようになっている。
【0006】
現在、感光体の寿命を損なっている主な原因としては大きく分けて2つ考えられており、一つは、現像プロセス、クリーニングプロセス、コピー紙などから受ける機械的なストレスによって引き起こされる摩耗、もう一つは帯電、転写、分離過程等で受けるコロナ放電によって引き起こされる化学的な損傷である。
【0007】
前者の摩耗を防ぐ方法としては、a−Si感光体のように非常に硬度が高い感光層を設ける方法、あるいは感光体表面に保護層を設ける技術が知られている。この保護層に関しては具体的には感光層の表面に有機フィルムを設ける方法(特公昭38−015446号公報記載)、無機酸化物層を設ける方法(特公昭43−014517号公報記載)、接着層を設けた後絶縁層を積層する方法(特公昭43−027591号公報記載)、或いはプラズマCVD法、光CVD法等によってa−Si層、a−Si:N:H層、a−Si:O:H層等を積層する方法(特開昭57−179859号公報、特開昭59−058437号公報記載)などが開示されている。
【0008】
さらにこれらの保護層に要求される電気特性[保護層が電子写真的に高抵抗(1014Ω・cm以上)なものであると、残留電位の増大や繰返し使用時の蓄積等が問題になる。]や光透過性(保護層が感光層の感度を有する波長領域に光の吸収を持つと実質的に感光体としての感度が低下する。)といった課題を解決する技術として、保護層樹脂の組成により抵抗を適正化する方法(特公昭52−024414号公報記載)、保護層を光導電層とする方法(特公昭48−038427号公報、特公昭43−016198号公報、特公昭49−010258号公報、米国特許第2901348号明細書記載)、保護層中に色素やルイス酸に代表される移動剤を添加する方法(特公昭44−000834号公報、特開昭53−133444号公報記載)、或いは金属や金属酸化物微粒子の添加により保護層の抵抗を制御する方法(特開昭53−003338号公報記載)さらに、特開昭57−030546号公報に提案されているように平均粒径0.3μm以下の金属酸化物微粒子を抵抗制御剤として保護層中に分散させることにより可視光に対し実質的に透明にする方法などが知られている。
上述のような方法により、機械的なストレスに対する耐久性に関しては非常に良好なものが得られるようになってきている。
【0009】
ところが、機械的な耐久性が向上しても、複写機の中で長期的に繰返し使用された場合、高湿下或いは急激な湿度上昇の環境下でコピー画像が流れる、いわゆる「画像ボケ」と呼ばれる現象が発生するという問題があることが明らかになっている。
この問題はa−Si系の感光体で特に激しく、上述のような保護層を設けた感光体でも発生してしまうものである。
この現象の原因はいまだ明確になっていないが、感光体が繰返しコロナ放電にさらされるとコロナ放電により発生するオゾンや各種イオンにより感光層表面あるいは保護層樹脂が酸化劣化を受け、SiO2等の親水性物質に変化したり、構造が切断されたり、ラジカルが形成されるようになる。一方、コロナ放出によるオゾンや各種イオンはまた、空気中の水分、炭酸ガス等の不純物と反応し、窒素化合物、カルボキシル基、アルデヒド基等を含む親水性の化合物を形成する。これらは感光層表面あるいは保護層表面の劣化部分に強く化学的に吸着するので、高湿下や急激に湿度が上昇するような場合には感光体表面に水分が多量に吸着されて表面の2次元方向の抵抗が低下し、画像流れを発生すると考えられている。
【0010】
一方、有機感光体においては、有機材料で構成されているが故に、材料自身の劣化を免れることができない。このような材料の劣化機構について多くは判っていないが、光照射によるもの、電子の通過によるもの、反応性ガス(NOx、SOx、O3等)によるものなどが考えられている。これにより感度、帯電能に変化をきたし、地肌汚れ、画像濃度低下等が表われる。
【0011】
以上の問題点を解決するため、特開平2−176690号公報、特開平3−1709741号公報には、感光体表面に酸化防止剤を供給する電子写真方法が開示されている。
しかしながら、これらの方法を用いても上述した各問題、とりわけ画像形成の環境が高湿度のときや、繰返し使用により感光体の帯電能が低下した場合の解決には至らず、より一層の改善が望まれていた。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術の問題点に鑑み、本発明は、複写プロセス中で繰返し使用しても、コロナ放電によるオゾンや各種イオンによって感光体表面が劣化されることなく長期間良好な耐環境性、画像品質を維持することができる電子写真方法および電子写真装置を提供しようとするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、感光体表面への外部からの添加剤およびその供給方法に着目し、上記課題を解決すべく鋭意検討を行ない、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明によれば、複写環境の湿度の上昇を、あるいは感光体の帯電電位低下を検知して、感光体の最表面に適宜エイコ酸またはベヘン酸からなる長鎖アルキルカルボン酸を供給、保持させて、コロナ放電による酸化雰囲気から感光体表面を守り、親水性物質の形成及び吸着を防ぐことによって画像品質の低下をまねくことなく長期間安定した画像が得られるものである。
【0014】
したがって、本発明は、(1)「湿度センサにより、複写環境の湿度の上昇を検知して、電子写真感光体と接する弾性ローラまたはブラシ状構造部材からなる接触部材を介して、該電子写真感光体表面にエイコ酸またはベヘン酸からなる長鎖アルキルカルボン酸を断続的に接触ないし供給することを特徴とする電子写真方法。」、
(2)「電子写真感光体の表面電位測定手段により、該電子写真感光体の表面電位低下を検知して、該電子写真感光体表面と接する弾性ローラまたはブラシ状構造部材からなる接触部材を介して、該電子写真感光体表面にエイコ酸またはベヘン酸からなる長鎖アルキルカルボン酸を断続的に接触ないし供給することを特徴とする電子写真方法。」を提供する。
【0015】
また、本発明によれば、(3)「少なくとも電子写真感光体を有する電子写真装置において、さらに複写環境の湿度を検知する湿度センサ、及び該感光体表面に接触し得る弾性ローラまたはブラシ状構造部材からなる接触部材とを具備し、しかも該接触部材は、該湿度センサが複写環境の湿度の上昇を検知すると該感光体表面に断続的に接触し、そのことにより該接触部材を介してエイコ酸またはベヘン酸からなる長鎖アルキルカルボン酸を該感光体表面に接触ないし供給を行なうものであることを特徴とする電子写真装置。」、
(4)「少なくとも電子写真感光体を有する電子写真装置において、さらに該感光体の表面電位測定手段、及び該感光体表面に接触し得る弾性ローラまたはブラシ状構造部材からなる接触部材とを具備し、しかも該接触部材は、該表面電位測定手段が該感光体表面の電位低下を検知すると該感光体表面に断続的に接触し、そのことにより該接触部材を介してエイコ酸またはベヘン酸からなる長鎖アルキルカルボン酸を該感光体表面に接触ないし供給を行なうものであることを特徴とする電子写真装置。」が提供される。
【0016】
すなわち、請求項1においては、湿度センサにより複写環境の湿度の上昇を検知して感光体表面に劣化防止剤を供給する電子写真方法を提供しようとするものである。請求項2においては、表面電位測定手段により電子写真感光体の表面電位の低下を検知して感光体表面に劣化防止剤を供給する電子写真方法を提供しようとするものである。しかも請求項1又は2では、劣化防止剤の供給部材を規定し、効率的な該材料の供給方法を提供しようとするものである。さらに、請求項3においては、湿度センサを具備し、該湿度センサにより複写環境の湿度の上昇を検知して感光体表面に劣化防止剤を供給する電子写真装置を提供しようとするものである。また、請求項4においては、表面電位測定手段を具備し、該表面電位測定手段により電子写真感光体の表面電位の低下を検知して感光体表面に劣化防止剤を供給する電子写真装置を提供しようとするものである。しかも請求項3又は4では、効率的な劣化防止剤の供給部材を配備した電子写真装置を提供しようとするものである。
【0017】
本発明を説明するに際し、まず、本発明に使用できる長鎖アルキルカルボン酸を示す。長鎖アルキルカルボン酸としては、炭素数8以上のもの、具体的には、2−エチルヘキサン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸(エイコ酸)、ベヘン酸等が挙げられ好適に用いられ、本発明では、特にエイコ酸、ベヘン酸が用いられる。
【0018】
上記長鎖アルキルカルボン酸は、種類に応じて、適量を添加することができ、1種又は2種以上を混合して用いることができる。
さらに、本発明においては、長鎖アルキルカルボン酸を酸化防止剤あるいは紫外線吸収剤などの他の機能性材料とともに混合して配合し、感光体上に供給する方法もまた効果的であり、有効である。
【0019】
本発明において、長鎖アルキルカルボン酸を有効に感光体表面に供給する接触部材を備えた装置の一例を図面によって説明する。
図1に示すように、感光体(2)の周囲に、接触部材としての弾性ローラ(1)、除電ランプ(3)、帯電チャージャ(4)、イレーサ(5)、画像露光部(6)、現像ユニット(7)、転写前チャージャ(8)、レジストローラ(9)、転写紙(10)、転写チャージャ(11)、分離チャージャ(12)、分離爪(13)、クリーニング前チャージャ(14)、ファーブラシ(15)、クリーニングブレード(16)等を備えたものである。図中、温度センサは感光体(2)に接して配置する必要がないので図示を省略しているが、感光体(2)の表面電位測定手段を用いる場合には画像露光部(6)の前またはイレーサ(5)の前に配置することができる。
【0020】
図2ないし図3は感光体との接触部材がブラシ状構造部材(ブラシ構造体)である場合の説明図である。
図2に示す装置は、感光体の表面に供給する物質を成形したもの(18)をブラシ構造体(17)を介して感光体(2)に供給するようにした装置で(19)はバイアスローラである。
【0021】
図3に示す装置は、ブラシ構造体を用いた装置の他の例であって、感光体に供給する物質を成形したもの(18)をスプリングによってブラシ構造体(17)に押しつけているものである。
【0022】
図4に示す装置は、感光体に供給する物質が粉末(20)である場合で、この粉末(20)が粉末交換用カートリッジ(22)に収容され、粉末供給ローラ(21)によって、ブラシ構造体(17)に供給され、さらに、感光体(2)に供給されるようになっている。
【0023】
弾性ブレードおよび弾性ローラの構造材料としては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン酢酸ビニル共重合体、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、エピクロルヒドリンゴム、ニトリルゴム、ニトリル・イソプレンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、多硫化ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等のゴム材料及びその発泡体、及び各種合成樹脂の発泡体等が用いられる。
【0024】
ブラシを構成する材料としては、レーヨン、アセテート、ナイロン、ポリエステル、アクリル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ふっ素系、綿、羊毛等の繊維あるいはガラス、金属等を繊維状に加工したものが用いられる。繊維の太さとしては5〜15[デニール/フィラメント]のものが一般的に使用される。
また、ブラシの密度としては1万〜10万[本/inch2]、ブラシの毛足長さは1〜10mmが適当である。
【0025】
更に、ブラシ繊維は導電性処理を施されていてもよい。
ブラシ構造体を構成するには、支持体状にブラシ繊維を直接固定する方法、あるいは、ブラシ繊維の織物(パイル)を支持体状に接着等の手段で固定する等の方法がある。
ブラシの毛先は、ブラシ繊維が切断された状態であっても、ループ状態になっていてもかまわない。
【0026】
長鎖アルキルカルボン酸を弾性ブレードまたは弾性ローラ(弾性ブレードは参考例)から感光体表面へ供給する手段としては、上記ブレードやローラの構成材料の成分として含有させるか、あるいは、ブレードやローラを多孔質材料で作製し、それに長鎖アルキルカルボン酸の溶液を含浸させて用いればよい。
【0027】
弾性ローラの場合は、上記手段の他に弾性ローラの表面に長鎖アルキルカルボン酸の溶液を塗布した後、感光体表面に運ぶ、いわゆるキャリアとして用いる方法もある。
長鎖アルキルカルボン酸をブラシ構造体を用いて感光体表面へ供給する手段としては、ブラシ構造体に長鎖アルキルカルボン酸単独あるいは他の物質との混合物から成る粉体を供給して用いる(図4参照)。あるいは、図2および図3に示すようにブラシ構造体を長鎖アルキルカルボン酸単独あるいは他物質との混合物から成る成形体に接触させて用いる等の方法が挙げられる。
【0028】
これらの弾性ブレード、弾性ローラまたはブラシ構造部材(弾性ブレードは参考例)を感光体表面に接触させるための複写プロセスにおける配置は、感光体上のトナー像を乱さない位置またはタイミングになればどこに配置されてもよい。
すなわち、ブレード(参考例)の場合は通常のクリーニングブレードと同様に用いたり、または、クリーニングブレードとは別の位置で感光体と接触させてもよい。
【0029】
また、この弾性ブレード、弾性ローラまたはブラシ構造部材(弾性ブレードは参考例)は複写サイクルの中で、必要なときに適時接触させることができる。さらに、弾性ローラを感光体表面に接触させる際、ローラ表面の線速と感光体表面の線速は同じであってもよいし、接触効率を向上させるためには、線速差を設けたり、リバース方向に回転させてもかまわない。
【0030】
感光体に接触する部材という観点に立脚すると、現像剤も接触部材の一つとして挙げることができる。確かに、現像剤の一部に長鎖アルキルカルボン酸ないしはその金属塩を添加した場合が最も効果の持続性が大きいが、長鎖アルキルカルボン酸ないしはその金属塩を入れ過ぎると、トナーの帯電特性や経時変動をはじめとする現像剤の諸特性を害するという問題があり、最善の接触部材に特定することはできない。
【0031】
以上述べてきた部材により、電子写真装置の作動時に常に長鎖アルキルカルボン酸を感光体表面に供給すると、画像濃度低下や地汚れ等の弊害を生じてしまう。
しかるに、必要なときに必要な量だけ長鎖アルキルカルボン酸を感光体表面に供給できれば、かかる弊害を生ぜず、効果的かつ経済的である。
ここに言う必要なときとは、上述してきた内容から明らかなように(1)画像形成の環境が高湿度のとき;と、(2)感光体の帯電能が低下したとき;のことである。
【0032】
先ず、高湿度の場合は、湿度センサを有して成る電子写真装置において該装置内の相対湿度が98%以上、好ましくは95%以上の場合、上述してきたように適時接触部材によって長鎖アルキルカルボン酸を感光体表面に供給することができる。なお、湿度センサは、公知のものが使用できる。従来用いられている感湿素子としては、ポリアクリル酸系材料やポリスチレンスルフォン酸系材料のような高分子電解質のイオン電導度が湿度変化に応じて変化することを利用したものや、MgCr2O4−TiO2系やZnCr2O4−LiZnVO4系の多孔質セラミック表面のプロトン電導が湿度に応じて変化することを利用したものがあり、実用上扱いが容易な107Ω以下の範囲で交流抵抗値が変化するものが使用されている。一般にはかかる材質に外部電界を印加し、湿度による抵抗の変化を電気的に検出することができる。かかる方法以外にも湿度検出手段は広く公知の方法があり、使用することが可能であるが、電気信号として湿度を検知する方法は電子写真法において制御系に組み込まれることを考えると有効かつ効果的である。
【0033】
また後者においては、感光体の帯電能が予め設定した値の90%以下、好ましくは95%以下に低下した場合に前記と同じように適時接触部材によって長鎖アルキルカルボン酸を感光体表面に供給することができる。なお、感光体の表面電位測定手段としては、表面電位計や静電荷を有する感光体表面に接する磁気刷毛に誘導される電圧を測定する方法(特公昭54−32573号公報記載)や、原稿台に設けた基準像を複写工程にて露光、現像してトナー濃度制御画像を形成し、光電変換素子でその反射光を受光する測定方法(特開昭54−61938号公報記載)をはじめとする公知の方法が用いられる。
【0034】
【実施例】
次に実施例によって本発明を詳しく説明するが、本発明は実施例により限定されるものではない。
実施例中に記載の部は重量部である。
[実施例1]…参考例
(シリコーンゴム処方)
末端ビニル基含有ポリジメチルシロキサン 100部
(重合度約7000)
ポリメチルハイドロジエンシロキサン 0.6部
[(C6H5)3P]4Pt 0.003部
シリカ(アエロジル200、日本アエロジル) 50部
ラウリン酸アルミニウム 10部
【0035】
上記処方で良く混練したシリコーンゴムコンパウンドを5mmφ 500mmのステンレス製芯金上に射出成形し、120℃で1hr硬化させた後、外径18mmφの形状に研削加工して硬度40度(JISA)の実施例1の弾性ローラを作製した。
市販の複写機(普通紙リコピーFT7050(株)リコー)を改造し、このようにして作製した弾性ローラを図1のようにクリーニングブレードの後に、このローラが感光体と接触するように配置した。
更に感光体としてはAs2Se3感光層上にSnO2を抵抗制御剤として分散含有させたポリウレタン樹脂の保護層が形成されているものを用いた。
この複写機に市販の湿度センサを取り付けて、クリーニングブレードの後に配置したローラをソレノイドコイルにて相対湿度が90%以上のときローラが感光体に接し、90%以下のときにはローラが感光体より離れるようにした。
【0036】
30℃において湿度が70%と95%の間を往復するサイクルモードの環境下で弾性ローラがある場合とない場合(比較例1)とで繰返し画像採取を行なった。評価は5本/mmの画像力チャートがコピー上で良好に解像しているかを特性値として行なった。
【0037】
また、実施例1(参考例)においてブレードの後に配置したローラを常時作動させて、常に長鎖アルキルカルボン酸ないしはその金属塩が感光体表面に供給されるようにし(比較例2)、全く同様な評価を行なった。
【0038】
結果を表1に示す。これより、弾性ローラがない場合は1万サイクルのコピー後に解像力の低下を生じたが、湿度変化に対応して適時ローラを作動させること(実施例1…参考例)で、5万サイクルのコピー後でも画像流れは生じず、安定した画像が得られることが判った。また、常時長鎖アルキルカルボン酸金属塩が感光体表面に供給されるようにすると、画像に地汚れを生じた。
【0039】
【表1】
注)実施例1は参考例である。
◎ 非常に良好に解像している
○ 良好に解像している
△ やや解像が劣る
× 全く解像しない
【0040】
[実施例2]…参考例
実施例1(参考例)で用いたアルキルカルボン酸金属塩の代わりにステアリン酸亜鉛を用いた以外は、実施例1(参考例)と同様にして画像評価を行なった。
【0041】
[実施例3]…参考例
実施例1(参考例)で用いたアルキルカルボン酸金属塩の代わりにパルミチン酸カルシウムを用いた以外は、実施例1(参考例)と同様にして画像評価を行なった。
【0042】
[実施例4]
実施例1(参考例)で用いたアルキルカルボン酸金属塩の代わりにエイコ酸を用いた以外は、実施例1(参考例)と同様にして画像評価を行なった。
【0043】
実施例2〜4(実施例2及び3は参考例)の評価結果を表2に示す。
【0044】
【表2】
注)実施例2及び3は参考例である。
◎ 非常に良好に解像している
○ 良好に解像している
△ やや解像が劣る
【0045】
[実施例5]…参考例
第2図に示した構造の装置を使う電子写真方法において、ブラシ状構造体としてブラシ繊維に導電性アクリル繊維(太さ6[デニール/フィラメント]、密度5[万本/inch2]、毛足5[mm])を使用したもの(外径25mm)を使用した。
また、感光体表面供給物質成形体として、下記組成の粉末
2−エチルヘキサン酸カルシウム 60部
2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン(紫外線吸収剤) 10部
をステンレス芯金上にローラ状に加圧成形したものを用いた。
感光体には、電荷発生層と電荷輸送層を順次積層して成る有機感光体を用いた。評価は画像上の黒ベタ部の画像濃度をマクベス濃度計で測定した。
【0046】
感光体表面供給物質成形体がある場合とない場合(比較例3)とで繰返し画像採取を5万枚まで行なった。
この複写機に表面電位計を着装して画像露光前の感光体の表面電位が測定できるようにした。そして連続コピーによるその表面電位が初期の値95%に低下したときに、感光体表面供給物質が供給され、95%以上に回復した場合にはその供給が停止するように設定した。
【0047】
また、実施例5(参考例)において、常にアルキルカルボン酸金属塩が感光体表面に供給されるようにした。(比較例4)
【0048】
評価は20℃、60%の環境下で行ない、その結果を下の表3に示す。実施例5(参考例)の場合は3万サイクルの後でも画像濃度の低下をきたさず安定した画像が得られた。
【0049】
【表3】
注)実施例5は参考例である。
【0050】
[実施例6]…参考例
実施例5(参考例)で用いたアルキルカルボン酸金属塩の代わりにデカン酸鉄(III)を用いた以外は、実施例5(参考例)と同様にして画像評価を行なった。
【0051】
[実施例7]…参考例
実施例5(参考例)で用いたアルキルカルボン酸金属塩の代わりにオクタン酸鉛を用いた以外は、実施例5(参考例)と同様にして画像評価を行なった。
【0052】
[実施例8]
実施例5(参考例)で用いたアルキルカルボン酸金属塩の代わりにベヘン酸を用いた以外は、実施例5(参考例)と同様にして画像評価を行なった。
【0053】
実施例6〜8(実施例6及び7は参考例)の評価結果を表4に示す。
【0054】
【表4】
注)実施例6及び7は参考例である。
【0055】
【発明の効果】
以上、詳細且つ具体的な説明から明らかなように、本発明によれば感光体表面が劣化されることがないので、不安定な環境下においても長期間にわたって、安定した高画像品質を維持することができる。すなわち、請求項1においては、湿度センサにより複写環境の湿度の上昇を検知して感光体表面に劣化防止剤を供給する電子写真方法の提供により、必要に応じて適宜該剤の供給が過不足なく行なわれる。請求項2においては、電子写真感光体の表面電位の低下を検知して感光体表面に劣化防止剤を供給する電子写真方法の提供により、必要に応じて適宜該剤の供給が過不足なく行なわれる。しかも請求項1又は2では、劣化防止剤の供給部材を規定し、効率的な該剤の供給が可能となる。請求項3においては、具備した湿度センサにより複写環境の湿度の上昇を検知して感光体表面に劣化防止剤を供給する電子写真装置の提供により、必要に応じて適宜該剤の供給が過不足なく行なわれる。請求項4においては、表面電位測定手段により電子写真感光体の表面電位の低下を検知して感光体表面に劣化防止剤を供給する電子写真装置の提供により、必要に応じて適宜該剤の供給が過不足なく行なわれる。しかも請求項3又は4では、効率的な劣化防止剤の供給部材を配備した電子写真装置により該剤の効率的な供給が達成できるという極めて優れた効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の装置の一例の説明図である。
【図2】本発明の装置の他の一例の説明図である。
【図3】本発明の装置の更に他の一例の説明図である。
【図4】本発明の装置の更に他の一例の説明図である。
【符号の説明】
1 弾性ローラ
2 感光体
3 除電ランプ
4 帯電チャージャ
5 イレーサ
6 画像露光部
7 現像ユニット
8 転写前チャージャ
9 レジストローラ
10 転写紙
11 転写チャージャ
12 分離チャージャ
13 分離爪
14 クリーニング前チャージャ
15 ファーブラシ
16 クリーニングブレード
17 ブラシ構造体
18 感光体の表面に供給する物質を成形したもの
19 バイアスローラ
20 粉末
21 粉末供給ローラ
22 粉末交換用カートリッジ
Claims (4)
- 湿度センサにより、複写環境の湿度の上昇を検知して、電子写真感光体と接する弾性ローラまたはブラシ状構造部材からなる接触部材を介して、該電子写真感光体表面にエイコ酸またはベヘン酸からなる長鎖アルキルカルボン酸を断続的に接触ないし供給することを特徴とする電子写真方法。
- 電子写真感光体の表面電位測定手段により、該電子写真感光体の表面電位低下を検知して、該電子写真感光体表面と接する弾性ローラまたはブラシ状構造部材からなる接触部材を介して、該電子写真感光体表面にエイコ酸またはベヘン酸からなる長鎖アルキルカルボン酸を断続的に接触ないし供給することを特徴とする電子写真方法。
- 少なくとも電子写真感光体を有する電子写真装置において、さらに複写環境の湿度を検知する湿度センサ、及び該感光体表面に接触し得る弾性ローラまたはブラシ状構造部材からなる接触部材とを具備し、しかも該接触部材は、該湿度センサが複写環境の湿度の上昇を検知すると該感光体表面に断続的に接触し、そのことにより該接触部材を介してエイコ酸またはベヘン酸からなる長鎖アルキルカルボン酸を該感光体表面に接触ないし供給を行なうものであることを特徴とする電子写真装置。
- 少なくとも電子写真感光体を有する電子写真装置において、さらに該感光体の表面電位測定手段、及び該感光体表面に接触し得る弾性ローラまたはブラシ状構造部材からなる接触部材とを具備し、しかも該接触部材は、該表面電位測定手段が該感光体表面の電位低下を検知すると該感光体表面に断続的に接触し、そのことにより該接触部材を介してエイコ酸またはベヘン酸からなる長鎖アルキルカルボン酸を該感光体表面に接触ないし供給を行なうものであることを特徴とする電子写真装置。
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