JP4283954B2 - 高温高圧用恒電気抵抗合金およびその製造法ならびにセンサ - Google Patents
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【産業上の利用分野】
本発明は、質量比にて、Agおよび残部Pdを主成分とし、副成分としてMn、
Ta、W、Co、Re、Os、Ru、Rh、Mo、Nb、In,V、Ge、Ti、
Zr、Hf、Cr、Tl、Be、Ga、Al、Si、Sn、Sb、Bi、Zn、C
d、希土類元素、C、B、Pと少量の不純物とからなり、引張強さが大きく、0〜
600℃における電気抵抗の小さい温度係数を有する高温高圧用恒電気抵抗合金に
関するものである。
【0002】
さらに詳しくは、本発明は上記恒電気抵抗合金の線材または板材を200〜1200℃の大気中、真空中または非酸化性雰囲気中において2秒以上100時間以下加熱することにより、0〜600℃における電気抵抗の小さい温度係数と大きな引張強さを有する高温高圧用恒電気抵抗合金およびその製造法ならびに該合金を使用した渦電流式変位センサを提供するにある。
【0003】
【従来の技術】
近年、エレクトロニクス関連機器における部品、例えば渦電流式センサ等では、その小型化、高性能化さらには耐環境性の向上のために、これらの部品に使用される熱的安定性に優れた電気抵抗合金材料の開発が強く要望されている。また、それらのデバイスを特殊環境下、特に高温で安定に動作させるために、高温における熱的安定性に優れた電気抵抗合金材料の開発が強く要望されている。
【0004】
高温で高圧の環境において使用される恒電気抵抗合金に求められる必要条件としては、比電気抵抗が適当な値を有すること、比電気抵抗の温度係数が小さいこと、必要とする引張強さを有すること等が重要であり、その他電気抵抗の経時変化が少ないこと、ろう付け性に優れていること、加工しやすいこと、化学的に安定であること、絶縁体とのなじみ性に優れていること等も重要である。
【0005】
従来電気抵抗が小さい材料としては、銀、銅および金等の純金属が考えられるが、いずれも電気抵抗の温度係数が4000×10−6/℃以上の大きな値を有するため、本発明の目的とするセンサデバイスへの応用化は難しい。電気抵抗の温度係数は、一般にTCR(単位:ppm/℃または10−6/℃)で示され、温度TaとTb(Ta<Tbとする)との間におけるその値は次の式で表される。
【0006】
【数1】
【0007】
ここで、paおよびpb、ならびにRaおよびRbはそれぞれTaおよびTbの温度における比電気抵抗値ならびに電気抵抗値を示す。
ところで、これら銀、銅および金にNi、Mn、CoあるいはCr等を少量添加することによって電気特性がかなり改善されることが知られている。その他、Cu−Ni−Au系合金等がある。これらの材料はいずれも電気抵抗の温度係数が負値あるいは100x10−6/℃以下の極めて小さい値を有することから、電気抵抗材料への実用化に際して合金の優れた特性を十分に発揮し得る。しかし、これらの材料は多くの欠点を有する。例えば、素材が硬く可撓性が劣ること、化学的安定性にかけること、あるいは熱エージングによる電気抵抗の経時変化が生ずること等があった。また、これらは高温での特性が悪く、高い温度で使用するセンサ等に応用することは不可能であった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
近年、高温で高圧の流体を取り扱う回転機、例えば火力発電機および地熱発電機における蒸気タービンのロータ等の挙動解析を渦電流式センサによって行うが、高温・高圧の環境の使用に耐え得る恒電気抵抗材料が存在しないのが現状である。
すなわち、高温用の電気抵抗材料としては、耐酸化性の良好なPt−Rh合金等が用いられるが、その電気抵抗の温度係数は1000x10−6/℃以上と大きく、またPd−Ag系合金は電気抵抗の温度係数が非常に小さいが、特に引張強さが小さいので断線するため、実用に供することができないという問題がある。
【0009】
【問題点を解決する手段】
そこで本発明は、室温から高温に至るまで電気抵抗の温度係数が小さく、且つ高温においても引張強さの大きい、従来にない優れた特性を有する恒電気抵抗合金に関するものであり、関連産業界の要請に応えるべく、鋭意研究されたものである。その結果、0〜600℃の温度において優れた電気特性を有し、引張強さの大きな新規な電気抵抗合金を発見し、また該合金の独創的な製造技術を開発し、さらに該合金からなる線材もしくは板材などを使用した高性能な渦電流式センサの開発に成功した。
【0010】
以下に、本発明合金の製造法について具体的に説明する。質量比にて、Ag37〜47%および残部Pdを主成分とし、副成分としてMn、Ta、WおよびCoをそれぞれ7%以下、Re、Os、RuおよびRhをそれぞれ5%以下、Mo、Nb、In,V、Ge、Ti、Zr、Hf、CrおよびTlをそれぞれ3%以下、Be、Ga、Al、Si、SnおよびSbをそれぞれ2%以下、Bi、Zn、Cd、希土類元素をそれぞれ1%以下、C、BおよびPをそれぞれ0.5%以下の1種あるいは2種以上の合計0.001〜10%と不可避的不純物とからなる組成の原料を大気中、好ましくは真空中あるいは非酸化性ガス(アルゴン、窒素、水素、ヘリウムなど)などの雰囲気中において、適当な溶解炉(高周波誘導溶解炉、電気炉、タンマン炉、アーク溶解炉など)によって溶解した後、溶融した該合金を適当な材質、形状および大きさの鋳型(金型、耐熱性坩堝など)で鋳造するか、あるいは連続凝固法(ゾーンメルト法、タンマン−ブリッジマン法、高温鋳型法、引き上げ法、吸い上げ法、浮遊帯域溶解法など)によって、所望の形状、例えばインゴット、スラブあるいは丸棒等の素材となす。ついで必要ならば、該素材を大気中、好ましくは非酸化性ガスなどの雰囲気中あるいは真空中において500〜1200℃の温度で適当な時間加熱後室温まで適当な速度で冷却する。その後該素材を、必要ならば鍛造または熱間圧延などの熱間加工を施し、さらにスウェージング機、圧延機あるいは冷間線引機等により、また必要ならば加工の中間で500〜1200℃の温度で軟化焼鈍を施しながら、冷間加工、好ましくは加工率25%以上の冷間加工を施して箔、あるいは細線、例えば線径10〜100μmあるいはリボン等の線材となす。最後に、該線材あるいは箔を、例えば耐熱性の細いパイプを有する適当な長さの加熱帯と冷却帯から構成された電気炉により大気中、好ましくは真空中あるいは非酸化性雰囲気中において200〜1200℃の温度で2秒以上100時間以下加熱焼鈍するか、あるいは適度な速度、例えば0.5〜10m/分の速度で連続熱処理を施すことにより、引張強さが大きく、0〜600℃における電気抵抗の温度係数が100x10−6/℃〜−100x10−6/℃を有する合金が得られる。
【0011】
本発明の特徴とするところは以下の点にある。第1発明は、質量比にて、Ag37〜47%および残部Pdを主成分とし、副成分としてMn、Ta、WおよびCoをそれぞれ7%以下、Re、Os、RuおよびRhをそれぞれ5%以下、Mo、Nb、In,V、Ge、Ti、Zr、Hf、CrおよびTlをそれぞれ3%以下、Be、Ga、Al、Si、SnおよびSbをそれぞれ2%以下、Bi、Zn、Cd、希土類元素をそれぞれ1%以下、C、BおよびPをそれぞれ0.5%以下の1種あるいは2種以上の合計0.001〜10%と不可避的不純物とからなり、引張強さが大きく、0〜600℃における電気抵抗の温度係数が100x10−6/℃〜−100x10−6/℃を有することを特徴とする高温高圧用恒電気抵抗合金に関するものである。
【0012】
第2発明は、質量比にて、Ag37〜47%および残部Pdを主成分とし、副成分としてMn、Ta、WおよびCoをそれぞれ7%以下、Re、Os、RuおよびRhをそれぞれ5%以下、Mo、Nb、In,V、Ge、Ti、Zr、Hf、CrおよびTlをそれぞれ3%以下、Be、Ga、Al、Si、SnおよびSbをそれぞれ2%以下、Bi、Zn、Cd、希土類元素をそれぞれ1%以下、C、BおよびPをそれぞれ0.5%以下の1種あるいは2種以上の合計0.001〜10%と不可避的不純物とからなる組成の原料を、大気中、真空中あるいは非酸化性雰囲気中で溶解し、この鋳塊を700℃以上の温度で鍛造により所望の形状となし、ついでこれを加工率25%以上の冷間加工により箔、あるいは細線あるいはリボン等の線材に成形し、さらに200〜1200℃の大気中、真空中あるいは非酸化性雰囲気中において2秒以上100時間以下加熱することにより、引張強さが大きく、0〜600℃における電気抵抗の温度係数が100x10−6/℃〜−100x10−6/℃を有することを特徴とする高温高圧用恒電気抵抗合金の製造法に関するものである。
【0013】
第3発明は、質量比にて、Ag37〜47%および残部Pdを主成分とし、副成分としてMn、Ta、WおよびCoをそれぞれ7%以下、Re、Os、RuおよびRhをそれぞれ5%以下、Mo、Nb、In,V、Ge、Ti、Zr、Hf、CrおよびTlをそれぞれ3%以下、Be、Ga、Al、Si、SnおよびSbをそれぞれ2%以下、Bi、Zn、Cd、希土類元素をそれぞれ1%以下、C、BおよびPをそれぞれ0.5%以下の1種あるいは2種以上の合計0.001〜10%と不可避的不純物とからなる組成の原料を大気中、真空中あるいは非酸化性雰囲気中において溶解した後、連続凝固法によって所望の形状の素材とし、ついで該素材を、熱間加工および加工率25%以上の冷間加工を施して箔、あるいは細線あるいはリボン等の線材に成形し、さらに該線材を、耐熱性の細いパイプを有する適当な長さの加熱帯と冷却帯から構成された電気炉により、大気中、真空中あるいは非酸化性雰囲気中において200〜1200℃の温度で2秒以上100時間以下加熱するかあるいは0.5〜10m/分の速度で連続熱処理を施すことにより、引張強さが大きく、0〜600℃における電気抵抗の温度係数が100x10−6/℃〜−100x10−6/℃を有することを特徴とする高温高圧用恒電気抵抗合金の製造法に関するものである。
【0014】
第4発明は、質量比にて、Ag37〜47%および残部Pdを主成分とし、副成分としてMn、Ta、WおよびCoをそれぞれ7%以下、Re、Os、RuおよびRhをそれぞれ5%以下、Mo、Nb、In,V、Ge、Ti、Zr、Hf、CrおよびTlをそれぞれ3%以下、Be、Ga、Al、Si、SnおよびSbをそれぞれ2%以下、Bi、Zn、Cd、希土類元素をそれぞれ1%以下、C、BおよびPをそれぞれ0.5%以下の1種あるいは2種以上の合計0.001〜10%と不可避的不純物とからなり、引張強さが大きく、0〜600℃における電気抵抗の温度係数が100x10−6/℃〜−100x10−6/℃を有する高温高圧用恒電気抵抗合金からなることを特徴とする渦電流式センサに関するものである。
【0015】
【作用】
近年、0〜600℃の高温・高圧の環境下で使用される渦電流式センサなどに用いることができる恒電気抵抗材料が強く要望されているが、銅や金などの通常の金属導電材料は電気抵抗の温度係数が大きく、温度に対して電気抵抗が大きく変化するので、また機械的強度が弱いので使用することができない。
【0016】
そこで本発明者らは、かかる関連産業の緊急な要請に応えるべく、Pd−Ag系合金について検討した結果、量産における製造上の取り扱いが容易で、かつ加工性および成形性に優れたPd−Ag系合金の改良を試みた。
すなわち、本発明者らはPd−Ag系合金の恒電気抵抗特性は、伝導電子の格子振動による散乱と、結晶の短範囲規則性とがバランスした状態では、電子の散乱が一定となり、電気抵抗の変化を少なくすることによって得られるが、600℃以上の温度ではこれら両因子のバランスが崩れるため、電子の散乱が多くなり恒電気抵抗特性が失われるものと考えられる。
また、センサコイルの断線は、加工した材料を高温度で長時間加熱することによって再結晶化し、さらに加熱温度の上昇および加熱時間の増加とともに結晶粒が粗大成長化するが、センサコイル材が昇温と冷却の繰り返しによる熱膨張と収縮によって、この結晶粒界に強い応力が加わり、粒界破壊を生じることによると考えられる。他方、センサコイルに長期間の振動などの外部応力が働くことによって断線することも考えられる。これらのセンサコイルの断線に対しては、センサコイル材の機械的強度(引張強さ)を高めるのが有効である。
さらに、高温まで使用可能とするためには、耐食耐酸化性も重要であるが、Pd−Ag系合金は良好である。
【0017】
本発明者らは、これらの特性を満足する恒電気抵抗合金の研究を鋭意進めた結果、Pd−Ag系合金の恒電気抵抗特性を保持しながら、引張強さを高める効果のある元素、Mn、Ta、W、Co、Re、Os、Ru、Rh、Mo、Nb、In,V、Ge、Ti、Zr、Hf、Cr、Tl、Be、Ga、Al、Si、Sn、Sb、Bi、Zn、Cd、希土類元素、C、B、P等をPd−Ag系に添加した合金において、優れた高温高圧用恒電気抵抗合金を実現することができたのである。
【0018】
【実施例】
本発明の実施例について説明する。
実施例1 試料番号10(組成:Pd−42%Ag−5%W)の合金の製造と評価
純度99.9%以上のPd、AgおよびWの総重量300gからなる原料をアルミナ坩堝に入れ、真空中で高周波誘導電気炉によって溶解した後、よく攪拌して均質な溶融合金とした。ついで、これを直径12mm、高さ200mmの孔をもつ金型に注入し、得られた丸棒状のインゴットをスウェージング機および冷間線引機により、直径0.5mmの細線となした。最後にその線材を真空中あるいは水素、アルゴンの雰囲気中にて種々熱処理を施して試料とした。種々の測定から得られたこの試料の20℃における引張強さσt、比電気抵抗ρおよび0〜600℃における電気抵抗の温度係数TCRを表1に示す。
【0019】
【表1】
【0020】
実施例2 試料番号32(組成:Pd−40%Ag−3.5%Ru)の合金の製造と評価
純度99.9%以上のPd、AgおよびRuの総重量10gからなる原料を高純度アルミナ坩堝に入れ、酸化を防ぐために高純度アルゴンガスを吹き付けながらタンマン炉によって溶解した後、よく攪拌して均質な溶融合金とした。ついで、これを内径3.5mmの石英管中に素早く吸い上げ丸棒とした。得られた丸棒状のインゴットをスウェージング機および冷間線引機により、直径0.5mmの細線に加工した。この細線から適当な長さ切り取り、冷間加工のままかあるいは水素、アルゴンまたは大気の雰囲気中もしくは真空中にて200〜1200℃の種々の温度で2秒〜100時間の種々の時間で加熱後室温まで種々な速度で冷却する熱処理を行い引張強さおよび電気抵抗測定用試料とした。またこれとは別に線径0.5mmの細線をさらに精密冷間圧延機により厚さ0.28mmおよび0.22mmの2種類のリボン状薄板を作製し、上記熱処理条件の中から特性の優れたものを選択し、その条件で熱処理を施した。つぎに、これら厚さの異なるリボン状薄板を重ねてトロイダル状に20〜50回巻いた後、再結晶化温度よりやや高い700℃で1時間加熱してくせ付けを施した。その後厚さ0.22mmのリボン状コイルを抜き取り、残ったもう一方の厚さ0.28mmのトロイダル状センサコイルをポリイミド樹脂中に浸漬して、乾燥固着した後、さらにセンサコイル表面の樹脂を研削して平滑となし、セラミック製ケース内に装填し、ついで電極に同軸ケーブルをハンダ付けして渦電流式センサを作製した。種々の測定から得られたこの試料の20℃における引張強さσt、比電気抵抗ρおよび0〜600℃における電気抵抗の温度係数TCRを表2に示す。センサにした場合にも測定用試料と同じ特性が得られ、本発明合金が0〜600℃の高温高圧環境下で使用される渦電流式センサに用いることができることが判明した。
【0021】
【表2】
【0022】
実施例3 試料番号63(組成:Pd−44%Ag−2%Hf)の合金の製造と評価
純度99.9%以上のPd、AgおよびHfの総重量20gからなる原料をアルミナ坩堝に入れ、その坩堝ごと透明石英管中に真空封入し、タンマン−ブリッジマン法により連続凝固させ丸棒の素材となした。この丸棒を真空中において500〜1200℃の温度で適当な時間加熱後室温まで適当な速度で冷却した。ついで、その丸棒をスウェージング機および冷間線引機により加工し、直径0.5mmの細線となした。最後にその線材を水素、アルゴンまたは真空中にて種々熱処理を施して試料とした。得られた試料は金属光沢があり、種々の測定から得られたこの試料の20℃における引張強さσt、比電気抵抗ρおよび0〜600℃における抵抗温度係数TCRを表3に示す。
【0023】
【表3】
【0024】
表4および表5には、本発明の代表的な合金について、実施例1の製造法を用いて作製した試料を、850℃の真空中で1時間加熱した後、300℃/hrの速度で室温まで冷却して、測定した20℃における引張強さσt、比電気抵抗ρおよび0〜600℃における抵抗温度係数TCRである。但し、試料番号13および20は参考例である。
【0025】
【表4】
【0026】
【表5】
【0027】
また、第1図〜第4図には、Pd−42%Ag合金に本発明の副成分のMn、Ta、W、Fe、Co、Ni、Re、Os、Ru、Rh、Mo、Nb、In,V、Ge、Ti、Zr、Hf、Cr、Tl、Be、Ga、Al、Si、Sn、Sb、Bi、Zn、Cd、Y、Ce、C、B、P等の各元素を添加した合金について、20℃における引張強さσtおよび電気抵抗の温度係数TCRと添加元素の添加量との関係を示した。なお、これらの図中,Fe,Niの添加は参考例である。
【0028】
上記のように、本発明合金は加工が容易で、線材あるいは板材などの所望の形状にすることができ、各実施例、各表および各図に見られるように、引張強さが大きく、0〜600℃における電気抵抗の温度係数が小さいので、高温で高圧の環境中で使用される各種機器のセンサ材として好適である。
【0029】
つぎに、本発明における数値の限定理由について説明する。本発明合金の組成を、質量比にてAg37〜47%および残部Pdを主成分とし、副成分としてMn、Ta、WおよびCoをそれぞれ7%以下、Re、Os、RuおよびRhをそれぞれ5%以下、Mo、Nb、In,V、Ge、Ti、Zr、Hf、CrおよびTlをそれぞれ3%以下、Be、Ga、Al、Si、SnおよびSbをそれぞれ2%以下、Bi、Zn、Cd、希土類元素をそれぞれ1%以下、C、BおよびPをそれぞれ0.5%以下の1種あるいは2種以上の合計0.001〜10%と限定した理由は、これらの組成範囲内では加工が容易で、引張強さが大きく、0〜600℃における電気抵抗の温度係数が100x10−6/℃〜−100x10−6/℃であるが、これらの組成範囲外においては0〜600℃における電気抵抗の温度係数が100x10−6/℃〜−100x10−6/℃を越えて大きくなり、また加工が困難となって本発明の目的に外れることによる。
【0030】
すなわち、主成分のAgが37%以下、47%以上では、TCRが100x10−6/℃〜−100x10−6/℃を越えて大きくなり、副成分元素としてのTlが3%以上、Be、Ga、Al、Si、Sb、がそれぞれ2%以上、C、Bがそれぞれ0.5%以上を越えると加工が困難になる。
【0031】
本発明合金作製時の熱処理温度を200℃以上と限定した理由は、200℃以下の温度で熱処理した場合、100時間以上加熱しても加工歪みが充分除去できないので、恒電気抵抗特性を発揮できないからであり、また熱処理温度を1200℃以下と限定した理由は、この1200℃以上に加熱した場合、該合金が溶融もしくは軟化してしまうことによる。さらに、熱処理時間を2秒以上100時間以下と限定した理由は、2秒以下では合金内の原子の移動が起こらないので、100x10−6/℃〜−100x10−6/℃の電気抵抗の温度係数が得られず、本発明の目的から外れ、他方100時間以上加熱しても、主たる特性の更なる向上は得られず、また経済的にも不利であることによる。
【0032】
上記の本発明合金は、バルク状の線材あるいは板材についての恒電気抵抗合金に関して記述したが、これを蒸着法あるいはスパッター法等によって作製した薄膜においても、バルク状合金と同程度の恒電気抵抗特性を得ることができる。また、高温高圧の環境中で使用するセンサ材に好適であることを述べたが、室温あるいは低温における常圧あるいは高圧において使用するセンサ材としても、勿論優れた特性を発揮する。
【0033】
なお、希土類元素はスカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)およびランタン系元素からなるが、その効果は均等であり、いずれも同効成分である。したがって、希土類元素の代わりに、ミッシュメタルを用いても良い。
【0034】
【発明の効果】
本発明合金は、加工が容易で線材あるいは板材等の所望の形状にでき、室温から高温に至るまで電気抵抗の温度係数が小さく、引張強さが大きいので、室温から高温の常圧あるいは高圧の環境中において使用される各種機器のセンサ材として、また該センサ材を使用した渦電流式センサに好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、Pd−42%Ag合金にMn,Ta、W、FeあるいはCoを添加した場合の電気抵抗の温度係数TCRおよび引張強さσtと各元素の添加量との関係を示す特性図である。
【図2】図2は、Pd−42%Ag合金にNi、Re、Os、Ru、Rh、Mo、Nb、In,VあるいはGeを添加した場合の電気抵抗の温度係数TCRおよび引張強さσtと各元素の添加量との関係を示す特性図である。
【図3】図3は、Pd−42%Ag合金にTi、Zr、Hf、Cr、Tl、Be、Ga、Al、SiあるいはSnを添加した場合の電気抵抗の温度係数TCRおよび引張強さσtと各元素の添加量との関係を示す特性図である。
【図4】図4は、Pd−42%Ag合金にSb、Bi、Zn,Cd、Y、Ce、C、BあるいはPを添加した場合の電気抵抗の温度係数TCRおよび引張強さσtと各元素の添加量との関係を示す特性図である。
Claims (4)
- 質量比にて、Ag37〜47%および残部Pdを主成分とし、
副成分としてMn、Ta、WおよびCoをそれぞれ7%以下、Re、Os、R
uおよびRhをそれぞれ5%以下、Mo、Nb、In,V、Ge、Ti、Z
r、Hf、CrおよびTlをそれぞれ3%以下、Be、Ga、Al、Si、S
nおよびSbをそれぞれ2%以下、Bi、Zn、Cd、希土類元素をそれぞれ
1%以下、C、BおよびPをそれぞれ0.5%以下の1種あるいは2種以上の
合計0.001〜10%と不可避的不純物とからなり、引張強さが大きく、0
〜600℃における電気抵抗の温度係数が100x10−6/℃〜−100x
10−6/℃を有することを特徴とする高温高圧用恒電気抵抗合金。 - 質量比にて、Ag37〜47%および残部Pdを主成分とし、
副成分としてMn、Ta、WおよびCoをそれぞれ7%以下、Re、Os、R
uおよびRhをそれぞれ5%以下、Mo、Nb、In,V、Ge、Ti、Z
r、Hf、CrおよびTlをそれぞれ3%以下、Be、Ga、Al、Si、S
nおよびSbをそれぞれ2%以下、Bi、Zn、Cd、希土類元素をそれぞれ
1%以下、C、BおよびPをそれぞれ0.5%以下の1種あるいは2種以上の
合計0.001〜10%と不可避的不純物とからなる組成の原料を、大気中、
真空中あるいは非酸化性雰囲気中で溶解し、この鋳塊を700℃以上の温度で
鍛造により所望の形状となし、ついでこれを加工率25%以上の冷間加工によ
り箔あるいは線材に成形し、さらに200〜1200℃の大気中、真空中ある
いは非酸化性雰囲気中において2秒以上100時間以下加熱するかあるいは
0.5〜10m/分の速度で連続熱処理を施すことにより、引張強さが大き
く、0〜600℃における電気抵抗の温度係数が100x10−6/℃〜−
100x10−6/℃を有することを特徴とする高温高圧用恒電気抵抗合金の
製造法。 - 質量比にて、Ag37〜47%および残部Pdを主成分とし、
副成分としてMn、Ta、WおよびCoをそれぞれ7%以下、Re、Os、R
uおよびRhをそれぞれ5%以下、Mo、Nb、In,V、Ge、Ti、Z
r、Hf、CrおよびTlをそれぞれ3%以下、Be、Ga、Al、Si、S
nおよびSbをそれぞれ2%以下、Bi、Zn、Cd、希土類元素をそれぞれ
1%以下、C、BおよびPをそれぞれ0.5%以下の1種あるいは2種以上の
合計0.001〜10%と不可避的不純物とからなる組成の原料を大気中、真
空中あるいは非酸化性雰囲気中において溶解した後、連続凝固法によって所望
の形状の素材とし、ついで該素材を、熱間加工および加工率25%以上の冷間
加工を施して箔あるいは線材に成形し、さらに該箔あるいは線材を、耐熱性の
細いパイプを有する適当な長さの加熱帯と冷却帯から構成された電気炉によ
り、大気中、真空中あるいは非酸化性雰囲気中において200〜1200℃の
温度で2秒以上100時間以下加熱するかあるいは0.5〜10m/分の速度
で連続熱処理を施すことにより、引張強さが大きく、0〜600℃における電
気抵抗の温度係数が100x10−6/℃〜−100x10−6/℃を有する
ことを特徴とする高温高圧用恒電気抵抗合金の製造法。 - 質量比にて、Ag37〜47%および残部Pdを主成分とし、
副成分としてMn、Ta、WおよびCoをそれぞれ7%以下、Re、Os、R
uおよびRhをそれぞれ5%以下、Mo、Nb、In,V、Ge、Ti、Z
r、Hf、CrおよびTlをそれぞれ3%以下、Be、Ga、Al、Si、S
nおよびSbをそれぞれ2%以下、Bi、Zn、Cd、希土類元素をそれぞれ
1%以下、C、BおよびPをそれぞれ0.5%以下の1種あるいは2種以上の
合計0.001〜10%と不可避的不純物とからなり、引張強さが大きく、0
〜600℃における電気抵抗の温度係数が100x10−6/℃〜−100x
10−6/℃を有する高温高圧用恒電気抵抗合金からなることを特徴とする渦
電流式センサ。
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