JP4283286B2 - 立坑集中排気換気方式道路トンネルの換気制御方法 - Google Patents

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本発明は、坑内排気口を備えた立坑集中排気換気方式道路トンネルの換気制御方法で、詳しくは、立坑集中排気換気方式道路トンネルの坑内汚染物質(煤煙、一酸化炭素)の分布状態を実態に近く把握して、効率よく換気制御するための道路トンネル換気制御方法に関する。
走行車両によってトンネル坑内で発生する汚染物質(煤煙、一酸化炭素)の坑内濃度を所定の濃度以下に維持するため、汚染物質の坑内拡散状態を把握して各種の換気機で坑内換気が行われている。この換気制御においては、トンネル坑内の風向風速の動きを把握することが行われている。トンネル坑内の風向風速は、主に走行車両による交通換気風圧や、外気(自然風速)による坑内流動風向風速、ジェットファンや排風機などの換気機の動作による機械換気風圧に左右される。
例えば、図3に示すような、車両進入進出の坑口2のみが風が出入りする開口部である1チューブ構造のジェットファン(JF)縦流換気方式道路トンネル1aの場合、トンネル延長(トンネル長)全体で坑内風向風速が総じて一律とみなして、汚染物質の坑内拡散状態を予測して坑内のジェットファン3を適宜に駆動させることで換気制御している。また、図4に示すような、坑内排気口4に立坑5を連接した立坑集中排気換気方式道路トンネル1bの場合も、トンネル延長全体で坑内風向風速が総じて一律とみなして、立坑5に配備された排風機6を適宜に駆動させて換気制御している。図4の道路トンネル1bの具体的構造例を図5に示す。道路トンネル1bの坑内排気口4に横坑5’と立坑5が連接される。立坑5の上部に換気所10が設置される。換気所10は、ダンパー7と排風機6、排気ダクト8を装備し、山頂部などの高所に設置される。
このような換気制御方法においては、換気対象の道路トンネル内への車両の通行量、平均速度、車両の種類等の交通の計測データ、トンネル坑内の煤煙濃度、一酸化炭素濃度等の汚染状態の計測データ、坑内の風向風速等のトンネル換気に関連した各種の計測データにより、走行車両分布の演算をもとに、風圧方程式による坑内風向風速と、拡散方程式による汚染物質濃度分布を演算処理で求めてトンネル換気を行う、後述する数式による方法が公知である(例えば、特許文献1参照)。
・機械換気風量から対面通行トンネル坑内の風向風速Vrは、次の[数1]〜[数6]式の演算で決定する。
・一方通行の場合の交通換気圧力ΔPtは、
・対面通行の場合は、走行台数をもとに上式で演算したものを順風方向を加算、逆風方向を減算する。自然風による換気圧力ΔPnは、
・自然風Vnが逆風の場合は[数3]の式の演算値を減算し、順風の場合は加算する。車道内抵抗圧力ΔPrは、
・換気機がジェットファンの場合の換気機昇圧力ΔPkは、
・換気機が排風機の場合の換気機昇圧力ΔPkは、
[数5]と[数6]の式のなかの吹出しあるいは吸い込み風量Qjが、機械換気風圧を演算するための換気風量である。
特許第3092498号
図3に示すような1チューブ構造の道路トンネル1aの場合は、坑内風向風速はトンネル延長全体一律のもの(値)として扱うことができ、前述の拡散方程式による汚染物質濃度分布の演算精度は実態に近い精度の高いものになる。ところが、図4に示すような立坑排気換気方式道路トンネル1bの場合、排風機6が駆動して排気が行われている状況下で坑内排気口4の両側の上り坑口側領域Saと下り坑口側領域Sbの坑内風向風速が異なったものとなる。そのため、排風機6を適宜に駆動させたときの前述の拡散方程式による汚染物質濃度分布の演算精度は、実態に近いものとなり難い。また、前述の拡散方程式による汚染物質濃度分布の演算精度は、両側領域Sa、Sbの風向風速の演算精度に左右され、また、交通換気風圧の発生源となる走行車両分布の演算精度に左右されるため、できるだけ実態に近いトンネルへの進入状態を如何に作成(演算)するかが精度向上のための課題となる。さらに、排風機動作時にはその動作風量による坑内排気口4から上り坑口側領域Saと下り坑口側領域Sbの坑内風向風速を如何に正確に作成(演算)するかが精度向上のための課題となる。
本発明は、斯かる実情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、立坑集中排気換気方式道路トンネルの坑内の風向風速を実態により近く認識して、より効率的な換気制御が行えるようにする制御方法を提供することにある。
本発明は、トンネル坑口近くに設置した走行車両識別装置の計測データに基づいて道路トンネルへ進入する車両配列を、トンネル坑内を坑内排気口を境に区分けした複数の領域毎に認識し、この複数の領域それぞれ個別に、認識走行車両からの汚染物質発生量と交通換気風圧を演算することを特徴とする。
ここで、立坑集中排気換気方式道路トンネルにおける坑内排気口は、単一あるいは複数を備える。単一の坑内排気口を備える道路トンネルにおいては、トンネル坑内が単一の坑内排気口を境に2つの領域に二分され、この両側の各領域でそれぞれ個別に坑内風向風速を演算して、各領域個別に認識走行車両からの汚染物質発生量と交通換気風圧を演算する。複数の坑内排気口を備える道路トンネルにおいては、トンネル坑内がトンネル坑口とこの坑口に最も近い1つの坑内排気口の間の領域と、隣接する2つの坑内排気口の間の領域に区分けされ、各々の領域で個別に坑内風向風速を演算し、汚染物質発生量と交通換気風圧を演算する。
また、本発明は、坑内排気口における排風機の動作時において、排風機の動作風量から、機械換気風圧補正係数(風圧ゲイン)および風圧効果の時間遅れ時定数(風圧フィルタ)に基づいて坑内排気口からの排出実効風量を求め、この排出実効風量から坑内排気口の風圧効果開口面積をトンネル断面積として機械換気風圧を演算して、複数の領域それぞれ個別に坑内風向風速を演算することを特徴とする。
ここでの排風機の動作風量は、この機械設備から計測データとして入力される値であり、この動作風量から定数の風圧ゲイン、風圧フィルタを用いることで坑内排気口からの排出実効風量を求める。この排出実効風量から坑内排気口の風圧効果開口面積をトンネル断面積として機械換気風圧を演算することで、より実態に近い機械換気風圧が演算でき、トンネル坑内の複数の領域それぞれ個別に坑内風向風速をより実態に近い値で演算することができる。
本発明によれば、トンネル坑内を坑内排気口を境に区分けした複数の各領域で個別に坑内風向風速を演算し、汚染物質発生量と交通換気風圧を演算するので、トンネル延長の全体に亘り実態に近い汚染物質分布の変化が時々刻々と認識することができ、坑内排気口の排気動作有無のいずれにおいても効率の良い換気制御を行うことができる。
以下、本発明の実施の形態を図1、図2を参照して説明する。
図1の立坑集中排気換気方式道路トンネル1bでは、坑内排気口4から上り坑口側領域Saと下り坑口側領域Sbの坑内風向風速は異なったものとなる。そこで、次の(1)の方法によって各領域Sa、Sbでの交通量データを演算して個別に走行車両からの汚染物質発生量と交通換気風圧を認識する。次に、後述の(2)の方法によって機械換気風圧を、排風機動作風量の計測データをもとに認識することによって、正確な汚染物質濃度分布状態を把握する。
(1)走行車両配列・分布の作成方法
図1に示すように、走行車両識別装置20を道路トンネル1bの坑口2の近くに設置して、例えば1分間周期の交通量の計測データを得る。走行車両識別装置20は、例えば特許第3590614号に開示されているものを適用する。道路トンネル1bの換気制御には、例えば1分間周期の計測データ、大型車台数、小型車台数、および平均車速を使用する。この1分間交通量データは、その1分間に走行車両識別装置20の設置地点を通過した車両のものなので、その計測時点で走行車両識別装置20の設置位置から1分間走行距離の間の乱数処理による任意の位置(座標)に個々の車両が湧き出たような存在で初期化し、以後トンネルに進入してトンネルを出るまで、例えば5秒毎に移動する全車両の存在を認識することにより、各領域Sa、Sbでそれぞれ個別に走行車両分布を作成し、トンネル内風向風速および汚染物質濃度分布演算を行い、トンネル内実態に近い煤煙(およびCO濃度)流動分布の変化状態をリアルタイムで把握する。従って、走行車両識別装置20の設置位置は、トンネル入口の手前の1分間走行距離以上離れた地点となることが望ましい。
また、現実には、それぞれの道路状況や設備設置諸条件や費用面等の都合により、トンネル入口に近い位置や、或いはトンネル出口を出た地点に設置される場合があるので、その1分間交通量のそれまでの計測データをもとに、例えばn分後の交通量を予測する。その予測交通量は、その計測時点からn分間走行距離分手前を走行している車両データであり、この交通量を換気制御演算に使用する。このようなトンネル内交通量予測は、例えば特許第3033482号に開示されている事象変化予測方法により、予測度良く行うことができる。
以上のように道路トンネル1bの各領域Sa、Sbで個別に進入する車両配列を決定し、各領域Sa、Sbでそれぞれ個別に風向風速Vrを前述した[数1]〜[数6]の式で求める。各領域Sa、Sbでそれぞれ風向風速Vra、Vrbを求めることで、各領域Sa、Sbで時間変化する走行車両分布をもとに汚染物質濃度の分布状態を求める。この汚染物質濃度分布に基づくことで、道路トンネル1bの高精度な坑内換気制御ができる。
(2)機械換気風量から坑内風向風速の作成方法
坑内排気口4の排風機6が動作するとき、図1の道路トンネル1bの場合、立坑5や図4に示す横坑5’からなる風洞路で動風圧損失が生じ、機械換気風圧を演算するための排出実効風量としてのトンネル坑内排気口4での換気風量は、図4に示す換気所10での排風機動作風量より減衰したものとなる。また、排風機起動時などの風量変動遅れと坑内排気口への風量効果の時間遅れが生じる。そこで、個々の風洞路での動風圧損失特性に応じて設定する機械換気風圧補正係数Gと、風圧効果の時間遅れ時定数Tを用いて、機械換気動作計測風量から演算換気風量Qjを、次の[数7]の式の演算で決定する。
ここで、風量Qjは、トンネル延長軸方向の風圧として生じるものとなるので、[数6]の風圧演算式のΔPkの風圧効果開口面積Ajは、各領域Sa、Sb個々のトンネル断面積とする。
図1と同様な道路トンネルにおいて、一方の坑口近くに走行車両識別装置センサ箱(上り線路側に2個と下り線路側に2個)を設置して、本発明方法で換気制御の実証実験した。坑内排風口の位置を境に、その両側の両トンネル坑口までの坑内風向風速が異なった動きとなることから、結果的に図2の実証実験装置のモニター画面で示すように、各領域Sa、Sbのそれぞれ個別に交通換気風圧に基づく坑内風向風速Vra、Vrbから存在車両による発生汚染物質の拡散演算までを行い、各領域Sa、Sbそれぞれの汚染濃度分布実態を把握する。つまり、道路トンネルを連続した二本のチューブで構成されたようなものの扱いにする。
図2におけるVI1VI2は煤煙濃度計測器の位置を示す。図2のモニター画面では、坑内排気口を境にした一方の領域Saの風向が排気口向きで風速もあり、この領域Saでの汚染物質濃度が低い。また、他方の領域Sbの風向が反排気口向き風速が微弱であり、この領域Sbの汚染物質濃度が高い。このような汚染物質濃度分布に基づけば、効率的な換気制御が行える。以上の実証実験制御の結果、汚染物質濃度分布の演算精度を向上させることが容易であると確認できた。
なお、本発明の立坑集中排気換気方式道路トンネルの換気制御方法は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
本発明方法を説明するための立坑集中排気換気方式道路トンネルの概要を示す断面図である。 図1の道路トンネルの本発明換気制御方法による実証実験装置のモニター画面である。 ジェットファン縦流換気方式道路トンネルの概要を示す断面図である。 立坑集中排気換気方式道路トンネルの概要を示す断面図である。 図4の道路トンネルの具体的な斜視図である。
符号の説明
1b 立坑集中排気換気方式道路トンネル
2 トンネル坑口
4 坑内排気口
6 排風機
20 走行車両識別装置
Sa、Sb 坑内の領域

Claims (2)

  1. トンネル坑口近くに設置した走行車両識別装置の計測データに基づいて、立坑を連接した坑内排気口を備えた立坑集中排気換気方式道路トンネルへ進入する車両配列を、トンネル坑内を坑内排気口を境に区分けした複数の領域毎に認識し、この複数の領域それぞれ個別に、認識走行車両からの汚染物質発生量と交通換気風圧を演算することを特徴とする立坑集中排気換気方式道路トンネルの換気制御方法。
  2. 前記坑内排気口における排風機動作風量として、機械換気風圧補正係数および風圧効果の時間遅れ時定数に基づいて前記坑内排気口からの排出実効風量を求め、この排出実効風量から前記坑内排気口の風圧効果開口面積をトンネル断面積として機械換気風圧を演算して、前記複数の領域それぞれ個別に坑内風向風速を演算することを特徴とする請求項1に記載の立坑集中排気換気方式道路トンネルの換気制御方法。
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