JP4282790B2 - ポリエチレン系樹脂組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエチレン系樹脂組成物に関するものである。更に詳しくは、本発明は、MFR、密度、FRの値が特定の範囲内にあり、MFR、MT、Mw/Mn、FRの値が特定の関係式を満足するエチレン・α−オレフィン共重合体と高圧ラジカル法によって製造された特定の低密度ポリエチレンとからなる、ポリエチレン系樹脂組成物に関するものである。
本発明のポリエチレン系樹脂組成物は、成形時の押出特性及び安定性に優れ、フィルム成形すると、透明性、光沢、強度に優れているフィルムを得ることができる。
【0002】
【従来の技術】
従来から、エチレンとα−オレフィンとの共重合体をインフレーションフィルム成形して得られるフィルムは、引張強度及び衝撃強度等の機械的特性が優れているために、袋用途を中心にして様々な用途に大量に使用されている。
しかし、エチレン・α−オレフィン共重合体のみをインフレーションフィルム成形すると、成形安定性が不十分であったり、押出負荷が大きいために低温成形ができなかったり、或いは、成形できたとしても成形フィルムの表面が荒れて透明性が悪化すると言った問題があり、更には、適正条件で成形できたとしても、得られたフィルムは多くの用途で透明性が十分でないと言う問題点があった。
−方、メタロセン触媒を用いて製造されたポリエチレンが特開平6−306121号公報に提案されている。
しかし、このメタロセン触媒を用いて製造されたポリエチレンは、成形時の押出特性及び安定性に優れているものの、成形フィルムの透明性は未だ十分に満足できるものまでに至っていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従って、エチレン・α−オレフィン共重合体の持つ優れた機械的特性を損なうことなく、成形時の安定性と押出特性に優れ、十分な透明性を持つフィルムが得られるポリエチレン系樹脂組成物の開発が待たれていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記問題点を解決すべく、種々検討を行った結果なされたものである。
すなわち、本発明のポリエチレン系樹脂組成物は、下記特性(A)〜(D)を有するエチレンと炭素数3〜14のα−オレフィンとの共重合体60〜98重量%と、下記特性(E)〜(F)を有する高圧ラジカル法によって製造された低密度ポリエチレン40〜2重量%とからなることを特徴とするものである。
特性(A): メルトフローレート(MFR)が0.05〜15g/10分であること、
特性(B): 密度が0.860〜0.960g/cm3 であること、
特性(C): フローレシオ(FR)がMw/Mn+4.3≦FR≦Mw/Mn+10を満足すること、
特性(D): 以下に示すKの値が、0.15≦K≦4.5を満足すること、
K=MT−(0.196Mw/Mn−0.197+(0.0942Mw/Mn+0.664)e(−MFR+0.025Mw/Mn+0.445)/(−0.0417Mw/Mn+0.382)+(0.464Mw/Mn−0.128)e(−MFR+0.025Mw/Mn+0.445)/(0.05Mw/Mn+0.93))−0.095(0.935FR−0.9Mw/Mn)/(logMFR+0.39)
特性(E): MFRが0.1〜10g/10分であること、
特性(F): 密度が0.915〜0.935g/cm3 であること、
(ただし、MFRは190℃、2.16kg荷重での測定値であり、FRは190℃における10kg荷重でのMFR測定値であるI10と、190℃における2.16kg荷重でのMFR測定値であるI2.16との比(I10/I2.16)であって、MTは190℃、引張速度4m/分で測定した溶融張力(g)、Mwは重量平均分子量、Mnは数平均分子量を表す。また、eは自然対数の底を表す。)
【0005】
【発明の実施の形態】
[I] ポリエチレン系樹脂組成物
(1) 構成成分
(A) エチレン・α−オレフィン共重合体
(a) 原材料
本発明において用いられるエチレン・α−オレフィン共重合体としては、エチレンと炭素数3〜14のα−オレフィンとを遷移金属含有触媒の存在下に共重合体して得られるランダム共重合体である。
該α−オレフィンとしては、炭素数3〜14、好ましくは4〜10のα−オレフィンであり、具体的には、例えば、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、或いは、これらの混合物であり、これに加えて、少量の他のα−オレフィン或いはポリエン等が共重合されていても良い。ここで他のα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ドデセン等を挙げることができる。また、上記ポリエンとしては、ブタジエン、イソプレン、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン等を挙げることができる。
α−オレフィンの含有量は、エチレン・α−オレフィン共重合体が後述の特性(A)〜(D)を満足する限り限定されるものではないが、一般に0.01〜37重量%、好ましくは0.5〜23重量%、特に好ましくは2.0〜13重量%である。
【0006】
(b) 特 性
本発明において用いられるエチレン・α−オレフィン共重合体は、下記の特性(A)〜特性(D)を供えていることが必須である。
特性(A)
本発明において用いられるエチレン・α−オレフィン共重合体は、190℃、2.16kg荷重でのMFRが0.05〜15g/10分、好ましくは0.3〜10g/10分であることが重要である。
MFRが上記範囲未満では、成形時の押出し負荷が高くなって加工性が低下するので好ましくない。一方、上記範囲を超過するとフィルムとしての強度が低下するばかりでなく、成形安定性も低下するので好ましくない。
【0007】
特性(B)
本発明において用いられるエチレン・α−オレフィン共重合体は、密度が0.860〜0.960g/cm3 、好ましくは0.890〜0.940g/cm3 であることが重要である。
密度が上記範囲未満では、フィルムの腰が不足し加工適性が低下するし、口開き性も低下するので好ましくない。一方、密度が上記範囲を超過すると絶対的な透明性が不十分となる。
【0008】
特性(C)
本発明において用いられるエチレン・α−オレフィン共重合体は、FRとMw/Mnが、Mw/Mn+4.3≦FR≦Mw/Mn+10の関係を満足すること、好ましくはMw/Mn+5.5≦FR≦Mw/Mn+7.2の関係を満足することが重要である。
FRとMw/Mnの関係が上記範囲を外れると成形時の流れ性と安定性、及び、成形したフィルム透明性が不足する。
【0009】
特性(D)
本発明において用いられるエチレン・α−オレフィン共重合体は、その溶融張力(MT)、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)と、MFRとは次の関係を満たすものが使用される。
すなわち、
K=MT−(0.196Mw/Mn−0.197+(0.0942Mw/Mn+0.664)e(−MFR+0.025Mw/Mn+0.445)/(−0. 0417Mw/Mn+0.382)+(0.464Mw/Mn−0.128)e(−MFR+0.025Mw/Mn+0.445)/(0.05Mw/Mn+0.93))−0.095(0.935FR−0.9Mw/Mn)/(logMFR+0.39)
で表されるKの値が、0.15≦K≦4.5の関係を満足するものでなければならない。
より優れた透明性を得るためには、0.2≦K≦4の関係を満たすことが望ましい。
Kの値が上記範囲未満の場合は透明性の改良効果が不十分である。一方、Kの値が、上記範囲を超過する場合も透明性の改良効果が不十分である。
【0010】
(c) エチレン・α−オレフィン共重合体の製造
[触 媒]
上記エチレン・α−オレフィン共重合体を得るための製造方法については、限定されるものではないが、好ましくは下記の[A]成分〜[C]成分からなる触媒成分が好適に使用される。
[A]成分:メタロセン系遷移金属化合物
[B]成分:有機アルミニウムオキシ化合物
[C]成分:担体、及び必要に応じて、
[D]成分:有機アルミニウム化合物
【0011】
[A]成分:メタロセン系遷移金属化合物
上記エチレン・α−オレフィン共重合体の製造用触媒に用いられる[A]成分のメタロセン系遷移金属化合物としては、置換されていても良いシクロペンタジエニル系配位子或いは置換基が結合して縮合環を形成していても良いシクロペンタジエニル環含有配位子の中から選ばれた各々同一であっても異なっていても良い2個の配位子が、炭化水素基、シリレン基又は置換シリレン基を介して結合した形を有する長周期表の3.4.5.6族遷移金属の有機金属化合物である。このシクロペンタジエニル系配位子或いはシクロペンタジエニル環含有配位子としては、インデニル基、置換インデニル基、シクロペンタジエニル基、置換ペンタジエニル基、フルオレニル基、置換フルオレニル基が好ましく、特にインデニル基が好ましい。
【0012】
この様なメタロセン系遷移金属化合物としては、具体的には、ジルコニウムを例に取れば、
エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、
エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジブロミド、
エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジメチル、
エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジフェニル、
エチレンビス(インデニル)ジルコニウム(メチル)(モノクロリド)、
イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレンビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレンビス(ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレンビス(トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジフェニルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、
等を挙げることができる。
また、チタニウム化合物、ハフニウム化合物等の他の第3,4,5,6族金属化合物についても、上記と同様の化合物を挙げることができる。更に、これらの化合物の混合物を用いても良い。
【0013】
[B]成分:有機アルミニウムオキシ化合物
上記エチレン・α−オレフィン共重合体の製造用触媒に用いられる[B]成分の有機アルミニウムオキシ化合物としては、従来公知のベンゼン可溶性のアルミノキサンであっても良く、また、特開平2−276807号公報に開示されている様なベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であっても良い。
上記のようなアルミノキサンは、例えば、下記(i)〜(iii)のような方法によって製造することができる。
(i) 吸着水を含有する化合物或いは結晶水を含有する塩類であり、例えば、塩化マグネシウム水和物、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物、硫酸ニッケル水和物、塩化第一セリウム水和物等の炭化水素媒体懸濁液に、トリアルキルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物を添加して反応させる方法。
(ii) ベンゼン、トルエン、エチルエーテル、テトラヒドロフラン等の媒体中で、トリアルキルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物に直接水や氷や水蒸気を作用させる方法。
(iii) デカン、ベンゼン、トルエン等の媒体中でトリアルキルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物に、ジメチル錫オキシド、ジブチル錫オキシド等の有機錫化合物を反応させる方法。
【0014】
なお、この様なアルミノキサンは、少量の有機金属成分を含有しても良い。また、回収された上記のアルミノキサンの溶液から溶媒或いは未反応有機アルミニウム化合物を蒸留して除去した後、溶媒に再溶解しても良い。
アルミノキサンを製造する際に用いられる有機アルミニウム化合物としては、具体的には、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム等のトリシクロアルキルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド等のジアルキルアルミニウムハライド、ジエチルアルミニウムハイドライド等のジアルキルアルミニウムハイドライド、ジメチルアルミニウムメトキシド等のジアルキルアルミニウムアルコキシド、ジエチルアルミニウムフェノキシド等のジアルキルアルミニウムアリーロキシド等を挙げることができる。これらの有機アルミニウム化合物は単独で、或いは、組み合わせて用いることができる。
【0015】
[C]成分:担体
上記エチレン・α−オレフィン共重合体の製造用触媒に用いられる[C]成分の担体としては、無機或いは有機の化合物であって、粒径が10〜300μm、好ましくは20〜200μmの顆粒状ないしは微粒子状の固体が使用される。
このうち無機化合物としては、多孔質酸化物が好ましく、具体的には、SiO2 、Al2 3 、MgO、ZrO2 、TiO2 、B2 3 、CaO、ZnO、BaO、ThO2 等又はこれらの混合物、例えば、SiO2 −MgO、SiO2 −Al2 3 、SiO2 −TiO2 、SiO2 −V2 5 、SiO2 −Cr2 3 、SiO2 −TiO2 −MgO等を例示することができる。これらの中で、SiO2 及びAl2 3 からなる群から選ばれた少なくとも1種の成分を主成分とするものが好ましい。
該担体は、必要に応じて100〜1,000℃、好ましくは150〜700℃で焼成して用いられる。更に、上記触媒に用いることのできる担体としては、粒径が10〜300μmの範囲にある有機化合物の顆粒状ないしは微粒子状の固体を挙げることができる。
これら有機化合物としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等の炭素数2〜14のα−オレフィンを主成分として生成される(共)重合体或いはビニルシクロヘキサン、スチレンを主成分として生成される重合体若しくは共重合体を例示することができる。
【0016】
[D]成分:有機アルミニウム化合物
上記エチレン・α−オレフィン共重合体の製造用触媒に用いられる[D]成分の有機アルミニウム化合物としては、一般式
AlRj 3-j
(式中、Rは炭素数1〜20の炭化水素残基、Xは水素、ハロゲン又はアルコキシ基、jは0<j≦3の数を表す)
で表わされるトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム又はジエチルアルミニウムモノクロライド、ジエチルアルミニウムメトキシド等のハロゲン若しくはアルコキシ含有アルキルアルミニウムである。
また、この他に、メチルアルモキサン等のアルミノキサン等も使用することができる。これらの中でも、特にトリアルキルアルミニウムを用いることが好ましい。
【0017】
触媒の調製
本発明では、[A]成分、[B]成分、[C]成分及び必要に応じて、[D]成分にエチレンを接触させて予備的に重合させて触媒とする。
これら[A]成分、[B]成分、[C]成分の接触方法としては、特に限定されないが、以下のような接触順序で接触させることができる。
▲1▼.[A]成分と[B]成分を接触させる。
▲2▼.[A]成分と[B]成分を接触させた後に[C]成分を添加する。
▲3▼.[A]成分と[C]成分を接触させた後に[B]成分を添加する。
▲4▼.[B]成分と[C]成分を接触させた後に[A]成分を添加する。
その他に三成分を同時に接触しても良い。
接触は窒素等の不活性ガス中、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン等の不活性炭化水素溶媒中で行っても良い。接触温度は−20℃〜溶媒の沸点の間で行い、特に室温から溶媒の沸点の間で行うのが好ましい。
【0018】
触媒各成分の使用量は、一般的に[C]成分1g当たり[A]成分が0.000005〜0.0005mmol、好ましくは0.0001〜0.0002mmolである。
また、[A]成分中の遷移金属と[B]成分中のアルミニウムの原子比が1:10〜500、好ましくは20〜200である。
エチレンによる予備的な重合は、不活性溶媒中、上記各成分の接触下にエチレンを供し、固体触媒成分1g当たり0.01〜1,000g、好ましくは0.1〜100gの重合体が生成する様に行うことが望ましい。予備重合温度は−50〜100℃、好ましくは0〜100℃であり、予備重合時間は0.1〜100時間、好ましくは0.1〜20時間である。
この様にして得られた固体触媒成分は、洗浄せずにそのまま重合反応に用いても良く、また洗浄した後に用いても良い。更に、不活性炭化水素等の溶媒中で行われた場合はスラリーのまま使用しても良いし、溶媒を留去乾燥して粉末状にしてから使用しても良い。
【0019】
[重 合]
オレフィンの重合反応は、上記方法により得られたエチレンで予備的重合された固体触媒成分を用いて行われるが、必要に応じて有機アルミニウム化合物を用いる。この際、用いられる有機アルミニウム化合物としては、前記[D]成分の有機アルミニウム化合物成分と同様な化合物を挙げることができる。
この際に用いられる有機アルミニウム化合物の量は、触媒成分[A]中の遷移金属対有機アルミニウム化合物中のアルミニウムのモル比が1:0〜10,000、好ましくは1:0.1〜5,000になるように選ばれる。
【0020】
上記のようなオレフィン重合用固体触媒を用いてエチレンと共重合できるα−オレフィンとしては、炭素数3〜14、好ましくは4〜10のα−オレフィンであり、具体的には、例えば、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、或いは、これらの混合物であり、これに加えて、少量の他のα−オレフィン或いはポリエン等が共重合されていても良い。ここで他のα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ドデセン等を挙げることができる。また、上記ポリエンとしては、ブタジエン、イソプレン、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン等を挙げることができる。
また、重合は単独重合の他、通常公知のランダム共重合やブロック共重合にも好適に適用することができる。
重合反応は、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、シクロヘキサン等の不活性炭化水素や液化α−オレフィン等の溶媒の存在下或いは不存在下に行われる。温度は−50〜250℃であり、圧力は特に制限されないが、好ましくは常圧〜約2,000kg・f/cm2 の範囲である。また、重合系内に分子量調節剤として水素を存在させても良い。
【0021】
(B) 高圧ラジカル法低密度ポリエチレン
(a) 原材料
本発明において用いられる高圧ラジカル法によって製造された低密度ポリエチレンとしては、エチレン単独、又は、エチレンを主成分とするα−オレフィン、有機酸エステル、有機酸等の重合性単量体との含有ガスを重合又は共重合することにより得られた低密度ポリエチレン系樹脂である。
上記α−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ヘキセン,4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン等を挙げることができる。
また、上記有機酸エステルとしては、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の有機酸エステル等を挙げることができる。また、上記有機酸としては、酢酸、アクリル酸、ビニル酢酸等を挙げることができる。
これら重合性単量体の含有量は、本発明の目的を著しく損なわない範囲で用いられ、一般に30重量%以下、好ましくは25重量%以下、特に好ましくは22重量%以下である。
【0022】
(b) 特 性
本発明において用いられる高圧ラジカル法によって製造された低密度ポリエチレンは、下記の特性(E)〜特性(F)を供えていることが必須である。
特性(E)
本発明において用いられる高圧ラジカル法によって製造された低密度ポリエチレンは、MFRが0.1〜10g/10分、好ましくは0.15〜8g/10分であることが重要である。
上記低密度ポリエチレンのMFRが上記範囲未満では、かえって透明性、光沢が悪化することがある。一方、上記範囲を超過すると十分な透明性、光沢、成形安定性が得られない。
特性(F)
本発明において用いられる高圧ラジカル法によって製造された低密度ポリエチレンは、密度が0.915〜0.935g/cm3 、好ましくは0.918〜0.932g/cm3 であることが重要である。
上記低密度ポリエチレンの密度が上記範囲未満であると腰が不十分となる。一方、上記範囲を超過すると、透明性、光沢、強度が不十分となる。
【0023】
(c) 高圧ラジカル法によって製造された低密度ポリエチレンの製造
本発明において用いられる高圧ラジカル法によって製造された低密度ポリエチレンは、エチレン単独、又は、エチレンを主成分とする含有ガスを、500kg/cm2 以上、好ましくは1,500〜4,000kg/cm2 の高圧力下、150〜380℃、好ましくは200〜350℃の温度下に、酸素又は空気或いは有機過酸化物をラジカル開始剤として用いて重合させて得られる低密度ポリエチレンである。
高圧ラジカル法によって製造された低密度ポリエチレンを使用せずに、チーグラー触媒を用いて製造した通常の低密度ポリエチレンを使用する場合は、成形品の透明性が不十分となる問題が生じる。
【0024】
(C) その他の配合成分(任意成分)
本発明のポリエチレン系樹脂組成物には、本発明の効果を著しく阻害しない限り、エチレン単独重合による高密度ポリエチレン等の上記以外のポリエチレン樹脂を加えて使用しても良いし、ポリプロピレン樹脂等のポリエチレン系樹脂以外の樹脂を加えて使用しても良い。
また、本発明の効果を著しく阻害しない範囲内で各種添加剤、例えば、酸化防止剤、中和剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤、耐候性改良剤、核剤、結露防止剤、分子量調整剤、着色剤、衝撃改良剤、充填剤、難燃剤、接着性向上剤及び印刷性向上剤等を配合することができる。
【0025】
(2) 配合割合
本発明のポリエチレン系樹脂組成物中に配合されるエチレン・α−オレフィン共重合体と高圧ラジカル法によって製造された低密度ポリエチレンとの配合割合は、エチレン・α−オレフィン共重合体60〜98重量%に対し、高圧ラジカル法によって製造された低密度ポリエチレン40〜2重量%であり、好ましくはエチレン・α−オレフィン共重合体70〜95重量%に対し、高圧ラジカル法によって製造された低密度ポリエチレン30〜5重量%であり、特に好ましくはエチレン・α−オレフィン共重合体75〜93重量%に対し、高圧ラジカル法によって製造された低密度ポリエチレン25〜7重量%である。
エチレン・α−オレフィン共重合体の配合割合が上記範囲未満であると、成形フィルムの強度が不足する。一方、上記範囲を超過すると、成形時の安定性が不十分であるか、成形フィルムの透明性や光沢が不足するという問題が生じる。
【0026】
(3) 混練・造粒
上記エチレン・α−オレフィン共重合体及び高圧ラジカル法によって製造された低密度ポリエチレン、必要により配合されるその他の配合剤を、上記配合割合で配合し、溶融混練、或いは、ドライブレンドすることにより本発明のポリエチレン系樹脂組成物を得ることができる。
上記溶融混練は、一般に一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ロールミキサー、ブラベンダープラストグラフ、ニーダー等の通常の混練機を用いて、通常170〜250℃の温度で溶融・混練し、好適には、更に造粒することによって、本発明のポリエチレン系樹脂組成物を得ることができる。
この場合、各成分の分散を良好にすることができる溶融・混練・造粒方法を選択することが好ましく、通常は一軸押出機或いは二軸押出機を用いて溶融・混練・造粒が行われる。
【0027】
[II] 成 形
このようにして得られた本発明のポリエチレン系樹脂組成物は、インフレーションフィルム成形、Tダイフイルム成形に適し、成形時の安定性に優れ、それを用いて成形したフィルムは透明性、光沢、強度に優れ、また、これらの品質バランスにも優れているので、規格袋、重袋、ラップフィルム、砂糖袋、食品包装用等の各種包装用フィルム、輸液バッグ、バッグインボックス、農業用資材等に好適である。
また、本発明のポリエチレン系樹脂組成物は、インフレーションフィルム成形、Tダイフイルム成形等による通常のフィルム成形の用途に限らず、押出成形、中空成形、射出成形等によって様々な容器、パイプ、チューブ、等に加工することもできる。
更に、他のフィルムに押出被覆、或いは共押出成形することにより各種複合フィルムとすることもでき、鋼管被覆、電線被覆或いは発泡成形等の用途に使用することもできる。
【0028】
【実施例】
[I] 評価方法
以下の実施例及び比較例において用いた測定方法及び測定条件は、以下の通りである。
(1) MFR
JIS K6760に準拠し、190℃、2.16kg荷重の条件下で測定した。
(2) 密 度
JIS K6760に準拠して測定した。
(3) F R
JIS K6760に準拠し、190℃、10kg荷重の条件下で測定したMFRであるI10kgと、190℃、2.16kg荷重の条件下で測定したMFRであるI2.16kgとの比、I10kg/I2.16kgを計算し、FRとした。
【0029】
(4) M T
(株)東洋精機製作所製キャピログラフを使用し、ノズル径2.095mmφ、ノズル長8.00mm、流入角180°、設定温度190℃で、ピストン押出速度10.0mm/分、引取速度4.0m/分の条件下で測定した。
(5) Mw/Mn
Mw/Mnは、武内著、丸善発行の「ゲルパーミエイションクロマトグラフィー」に準拠して値を求めた。
すなわち、分子量既知の標準ポリスチレン(東ソー社製単分散ポリスチレン)を使用し、ユニバーサル法により、数平均分子量Mn及び重量平均分子量(Mw)に換算し、Mw/Mnの値を求めた。
測定はウォーターズ社製ISOC−ALC/GPCを用い、カラムは昭和電工社製AD80M/Sを3本使用し、試料はo−ジクロロベンゼンに溶解して0.2重量%溶液として200μlを使用し、140℃、流速1ml/分の条件下で実施した。
【0030】
(6) ヘーズ
JIS K7105に準拠して測定した。
(7) 成形安定性
インフレーションフィルム成形の際に、バブルの状態を肉眼で観察し、成形安定性を次のように2段階評価した。
○:バブルの揺れがほとんど認められない
×:バブルがかなり揺れるか、蛇行し、成形することが難しい。
(8) 成形押出特性
インフレーションフィルム成形の際に、成形押出特性の評価として押出機のダイス部の樹脂圧力を測定した。
【0031】
[II] 実施例及び比較例
次に実施例及び比較例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限り、これら実施例及び比較例の制約を受けるものではない。
なお、以下の触媒合成工程及び重合工程は全て精製窒素雰囲気下で行った。また、使用した溶媒はモレキュラーシーブ−13Xで脱水したものを用いた。
実施例1
(1) 触媒調製
容量10リットルの誘導攪拌装置付き反応機にn−ヘプタン5.0リットル、Witco社製メチルアルモキサン担持SiO2 (Al含量22.3重量%)100gを導入した。
次いで、25℃にて600mlのトルエンに溶解したジメチルシリレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド3.30mmolの溶液とトリ(イソブチル)アルミニウム149mmolとを添加し、系の温度を5分間かけて40℃とした。温度を40℃に保ったままエチレンガスを導入し、1.0時間反応を続けた。この間に生成したポリエチレンは689gであった。
【0032】
(2) エチレン・ヘキセン共重合
上記実施例1の(1)で調製した予備重合触媒を使用してエチレン・ヘキセン気相共重合を行った。
すなわち、エチレンと1−ヘキセンとの混合ガスが循環する連続式気相重合反応器に固体触媒成分として786mg/hr、トリエチルアルミニウム1,327mg/hrを間欠的に供給した。重合反応の条件は80℃、エチレン分圧18kg/cm2 、平均滞留時間4.0時間であった。
生成ポリエチレンの平均重合レートは9.9kg/hrであった。得られたエチレン・ヘキセン共重合体AのMFR、密度、FR、Mw/Mn、MTを測定し、Kの値を計算して、その結果を表1に示した。
【0033】
(3) ペレット化
上記のエチレン・ヘキセン共重合体Aのパウダー90重量%に対して、表2に示す日本ポリケム社から市販されている高圧ラジカル法によって製造された低密度ポリエチレンa「ノバテック−LD LS162N」を10重量%と、酸化防止剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート0.05重量部と、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイトを0.05重量部、中和剤としてステアリン酸カルシウム0.05重量部を加え、これらを容量50リットルのスーパーミキサーを用いて、回転数800rpm/分で5分間混合した後、スクリュー径40mmφ、L/D=26の単軸押出機で200℃、スクリュー回転数50rpmにて溶融混練してペレット化した。
【0034】
(4) フィルム成形
このペレットをスクリュー径40mmφ、L/D=24の押出機を備えたダイ径75mmφ、ダイリップ幅3mmのインフレーションフィルム成形機を用いて、温度180℃、スクリュー回転数50rpm、ブローアップ比2.0、引取速度19m/分、フロストライン高さ190mmの条件下で成形して、幅230mm、厚み30μmのインフレーションフィルムを得た。
成形の際には、成形安定性の評価と押出機ダイス部の樹脂圧力の測定を行い、成形したフィルムについては、ヘーズを測定した。その結果を表3に示す。
【0035】
実施例2
(1) ペレット化
実施例1の(2)で得たエチレン・ヘキセン共重合体Aのパウダー80重量%に対し、高圧ラジカル法低密度ポリエチレンとして表2に示す日本ポリケム社から市販されているb「ノバテック−LD LF440B」を20重量%を用いた以外は、実施例1の(3)と同様にしてペレット化した。
(2) フィルム成形
上記(1)でペレット化したポリエチレン系樹脂組成物を、実施例1の(4)と同様にしてフィルム成形した。
成形の際には、成形安定性の評価と押出機ダイス部の樹脂圧力の測定を行い、成形したフィルムについてはヘーズを測定した。その結果を表3に示す。
【0036】
比較例1
(1) ペレット化
実施例1の(2)で得たエチレン・ヘキセン共重合体Aのパウダー100重量%に対し、高圧ラジカル法低密度ポリエチレンを加えなかった以外は、実施例1の(3)と同様にしてペレット化した。
【0037】
(2) フィルム成形
上記(1)でペレット化したポリエチレン系樹脂組成物を実施例1の(4)と同様にしてフィルム成形した。
成形の際には、成形安定性の評価と押出機ダイス部の樹脂圧力の測定を行い、成形したフィルムについてはヘーズを測定した。その結果を表3に示す。
【0038】
比較例2
エチレン・α−オレフィン共重合体としてメタロセン触媒を用いて製造された市販の直鎖状低密度ポリエチレンB「α−オレフィン:1−オクテン、1−オクテン含量2重量%)を用い、これに高圧ラジカル法低密度ポリエチレンとして表2に示すbを10重量%ドライブレンドし、フロストライン高さ140mmとした以外は実施例1の(4)と同様にしてフィルム成形し、成形安定性評価、樹脂圧力測定、フィルムのヘーズ測定を行った。その結果を表3に示す。
また、直鎖状低密度ポリエチレンBのMFR、密度、FR、Mw/Mn、MTを測定し、Kの値を計算して、その結果を表1に示した。
【0039】
比較例3
エチレン・α−オレフィン共重合体として、メタロセン触媒を用いて製造された市販の直鎖状低密度ポリエチレンC(α−オレフィン:1−ヘキセン、1−ヘキセン含量17重量%)を用い、これを引取速度17m/分、フロストライン高さ300mmとした以外は、比較例2と同様にしてフィルム成形し、成形安定性評価、樹脂圧力測定、フィルムのヘーズ測定を行った。その結果を表3に示す。また、直鎖状低密度ポリエチレンCのMFR、密度、FR、Mw/Mn、MTを測定し、Kの値を計算して、その結果を表1に示した。
【0040】
比較例4
高圧ラジカル法低密度ポリエチレンaの代わりに、表1に示す日本ポリケム社から市販されている直鎖状低密度ポリエチレンD「ノバテックLL UF240」を用い、その配合割合を20重量%とし、フロストライン高さ200mmとした以外は実施例1と同様にしてフィルム成形し、成形安定性評価、樹脂圧力測定、フィルムのヘーズ測定を行った。その結果を表3に示す。
【0041】
【表1】
Figure 0004282790
【0042】
【表2】
Figure 0004282790
【0043】
【表3】
Figure 0004282790
【0044】
【発明の効果】
本発明のポリエチレン系樹脂組成物は、それを成形する際の押出特性及び成形安定性に優れており、成形したフィルムは透明性、光沢、強度に優れたものである。

Claims (2)

  1. 下記特性(A)〜(D)を有するエチレンと炭素数3〜14のα−オレフィンとの共重合体60〜98重量%と、下記特性(E)〜(F)を有する高圧ラジカル法によって製造された低密度ポリエチレン40〜2重量%とからなることを特徴とするポリエチレン系樹脂組成物。
    特性(A): メルトフローレート(MFR)が0.05〜15g/10分であること、
    特性(B): 密度が0.860〜0.960g/cm3 であること、
    特性(C): フローレシオ(FR)がMw/Mn+4.3≦FR≦Mw/Mn+10を満足すること、
    特性(D): 以下に示すKの値が、0.15≦K≦4.5を満足すること、
    K=MT−(0.196Mw/Mn−0.197+(0.0942Mw/Mn+0.664)e(−MFR+0.025Mw/Mn+0.445)/(−0.0417Mw/Mn+0.382)+(0.464Mw/Mn−0.128)e(−MFR+0.025Mw/Mn+0.445)/(0.05Mw/Mn+0.93))−0.095(0.935FR−0.9Mw/Mn)/(logMFR+0.39)
    特性(E): MFRが0.1〜10g/10分であること、
    特性(F): 密度が0.915〜0.935g/cm3 であること、
    (ただし、MFRは190℃、2.16kg荷重での測定値であり、FRは190℃における10kg荷重でのMFR測定値であるI10と、190℃における2.16kg荷重でのMFR測定値であるI2.16との比(I10/I2.16)であって、MTは190℃、引張速度4m/分で測定した溶融張力(g)、Mwは重量平均分子量、Mnは数平均分子量を表す。また、eは自然対数の底を表す。)
  2. 上記特性(C)のFRとMw/Mnが、Mw/Mn+5.5≦FR≦Mw/Mn+7.2の関係を満足し、上記特性(D)のKの値が、0.2≦K≦4を満足する、請求項1に記載のポリエチレン系樹脂組成物。
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