JP4282339B2 - 歯車の加工方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は歯車の加工方法に関し、特に歯切りされた歯車にショットピーニングを施す歯車の加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、円筒歯車は、搬送時および積み替え時等の衝撃より互いに歯車同士がぶつかり合って発生する歯面の打痕を防止し、かつ歯先の欠損を防ぐと共に歯車の噛み合いを滑らかにする目的で、図5(a)に要部を示し、かつ同図(b)にB部拡大を示すように、歯車21の歯面22と外周面23とによって形成される歯先エッジ部24の部分に、外周面23に対して45〜55°程度の面取り部25を形成する面取りが施される。さらに、例えば高い強度が要求される自動車の動力伝達系に組み込まれる歯車21は、表面硬化による強度向上を目的としたショットピーニングが施される。
【0003】
しかし、面取りされた歯車21にショットピーニングを施すと、外周側から投射されたショットピーニング粒が面取り部25に衝突し、その投射衝撃によって図6に示すように、面取り部25と歯面22とによって形成される稜線26の部分が面取り部25側から歯面22側に押し出されるように塑性変形してバリ27が発生する。このバリ27が歯車噛み合い時に異音等の発生要因となる。
【0004】
このため、後工程においてバリ27の除去を目的とした研削仕上げ加工等の仕上げ加工が必要になり、加工工数の増大を招くことになる。
【0005】
この対策として、歯元部に丸みを有するアール面取り用の刃部が形成されたセミトッピング付きホブにより歯切りを行い、この歯切りと同時に図7に要部を示すように歯面22と外周面23によって形成される歯先エッジ部分にアール面取りを施して、歯先エッジ部分にアール面取り部28を形成することにより稜線部分をなくし、しかる後のショットピーニングに伴うバリの発生を回避する歯車の加工方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0006】
【特許文献1】
特許第2528519号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記特許文献1に記載の歯車の加工方法によると、アール面取り用の刃部が形成されたセミトッピング付きホブにより歯切りと同時に歯先エッジ部分にアール面取り部28を形成して稜線部分をなくすことにより、しかる後のショットピーニングに伴うバリの発生が抑制できる。
【0008】
しかし、ホブにアール面取り用の刃部を有することから、ホブの製造コストおよびメンテナンスコストの増大を招き、歯車の加工コストの増大が懸念される。
【0009】
また、一般に歯切りされた歯車は、例えば図7に仮想線で示すようにショットピーニングに先立って歯面22をシェービングカッタにより平滑に削り取り、歯形やピッチを修正するシェービングが施される。
【0010】
そのシェービングによって平滑に削り取られた歯面22とアール面取り部28とによって稜線29が形成される。この歯面22とアール面取り部28によって形成される稜線29部分の角度によっては、ショットピーニングにより稜線29の部分にバリが発生することが懸念される。さらに、シェービングによる切削量tのバラツキにより稜線29の部分における歯面22とアール面取り部28の角度が変化し、歯車噛み合い時、特に互いの歯が接触する噛み合い開始および互いの歯が離れる噛み合い終了の際に騒音の発生を誘発する要因となり、所期のシェービング効果が達成できないことが懸念される。
【0011】
したがって、かかる点に鑑みなされた本発明の目的は、ショットピーニングに伴うバリの発生が防止でき、かつ歯車の加工コストの低減が期待できる歯車の加工方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する請求項1に記載の歯車の加工方法の発明は、歯車の歯面と外周面によって形成される歯先エッジ部に、上記歯面に第1稜線を介して連続する第1面取り部と、該第1面取り部に第2稜線を介して連続すると共に第3稜線を介して上記外周面に連続する第2面取り部とを面取りした後に、ショットピーニングを施すことを特徴とする。
【0013】
請求項1の発明によると、歯面と外周面によって形成される歯先エッジ部に、歯面に第1稜線を介して連続する第1面取り部と、この第1面取り部に第2稜線を介して連続すると共に第3稜線を介して外周面に連続する第2面取り部とを面取りすることによって、歯面と第1面取り部によって形成される第1稜線部分の角度が比較的大きな鈍角に形成される。すなわち、歯面と第1面取り部が比較的滑らかに連続形成されてショットピーニングに伴って第1稜線部分に発生するバリが防止できる。
【0014】
さらに、外周面に第3稜線を介して連続する第2面取り部を形成することによって、歯車の搬送時および積み替え時等の衝撃より歯車同士がぶつかり合って発生する歯面の打痕や、歯先の欠損を防止することができる。
【0015】
請求項2に記載の歯車の加工方法の発明は、歯車の歯面と外周面によって形成される歯先エッジ部に、上記歯面に第1稜線を介して連続する第1面取り部と、該第1面取り部に第2稜線を介して連続すると共に第3稜線を介して上記外周面に連続する第2面取り部とを面取りした後に、上記歯面にシェービングを施し、かつショットピーニングを施すことを特徴とする。
【0016】
請求項2の発明は、請求項1の歯車の加工方法に加え、ショットピーニングに先だって歯面にシェービングを施すものであっては、シェービングによって歯面が平滑に切削されても歯面と第1面取り部によって形成される第1稜線部分の角度が一定あるいは略一定に維持されることから、請求項1の効果に加えシェービングの効果が確保できる。
【0017】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2の歯車加工方法において、上記第1稜線部分おける上記歯面の接線と第1面取り部とのなす角度が10〜25°であり、上記第2稜線部分における上記第1面取り部の接線と第2面取り部とのなす角度が10〜30°であることを特徴とする。
【0018】
請求項3の発明は、請求項1または2の第1面取り部および第2面取り部を具体的に限定するものであって、第1稜線部分おける歯面の接線と第1面取り部とのなす角度が10〜25°であって、第2稜線部分における第1面取り部の接線と第2面取り部とのなす角度が10〜30°において、歯面と第1面取り部によって形成される第1稜線部分の角度および第1面取り部と第2面取り部によって形成される第2稜線部分の角度が共に比較的大きな鈍角に形成されて比較的滑らかに連続形成され、ショットピーニングによる第1稜線および第2稜線の部分に発生するバリの発生が防止でき、有効的に請求項1の方法を実施することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による歯車の加工方法の実施の形態を図を参照して説明する。
【0020】
図1は本実施の形態における歯車の加工方法の工程図、図2は、本加工方法の歯切り工程で歯切りされた円筒歯車の要部を示す説明図であり、図3は図2のA部拡大図である。
【0021】
図2および図3に示す歯車1のインボリュート曲線で形成された歯面2と外周面3によって形成される歯先エッジ部に、第1稜線6を介して歯面2と連続する断面直線状の第1面取り部4と、この第1面取り部4に第2稜線7を介して連続すると共に第3稜線8を介して外周面3に連続する断面直線状の第2面取り部5が形成されている。また、第1稜線6の部分おける歯面2の接線aと第1面取り部4とのなす角度αが10〜25°であり、第2稜線7の部分における第1面取り部4の接線bと第2面取り部5とのなす角度βが10〜30°に設定される。
【0022】
すなわち、歯面2の接線aと第1面取り部4によって形成される角度αが10〜25°に設定されて歯面2と第1面取り部4によって形成される第1稜線6の部分の角度γが155〜170°と比較的大きな鈍角に形成されて歯面2と第1面取り部4が比較的滑らかに連続形成されると共に、第1面取り部4の接線bと第2面取り部5によって形成される角度βが10〜30°に設定され、第1面取り部4と第2面取り部5によって形成される第2稜線7の部分における角度δが150〜180°と比較的大きな鈍角に形成されて第1面取り部4と第2面取り部5が比較的滑らかに連続形成される。
【0023】
また、歯面2と外周面3の間を、第1稜線6、第2稜線7、第3稜線8を介して連続する第1面取り部4および第2面取り部5によって連続形成することによって、第2面取り部5と外周面3によって形成される第3稜線8の部分の角度εも比較的大きな鈍角に形成されて第2面取り部5と外周面3が比較的滑らかに連続形成される。
【0024】
この歯車1を歯切りする歯切り工程S1は、例えば図4にセミトッピング付きホブ10の歯形を示すように、歯車歯切り用切り刃11の左右の切り刃面12、13と歯底面14を結ぶ歯元部に直線状で連続する第1面取り用の刃部15および第2面取り用の刃部16を有するセミトッピング付きホブ10により、歯面2の歯切りと同時に第1面取り部4および第2面取り部5の面取りをすることによって、容易に加工することができる。
【0025】
このセミトッピング付きホブ10は、直線状で連続する第1面取り用の刃部15および第2面取り用の刃部16によって面取り用刃部を形成することから、特許文献1に示されるようなアール面取り用の刃部が形成されたセミトッピング付きホブに比べ、製造およびメンテナンスが容易で、製造コストおよびメンテナンスコストの低減が期待できる。
【0026】
また、この歯切りは、歯車用ホブ、ピニオンカッタおよびラックカッタ等によって歯面2を歯切りした後、第1面取り部4および第2面取り部5を面取りすることによっても実現できる。
【0027】
このように歯切りされた歯車1は、シェービング工程S2において、その歯面2をシェービングカッタによって平滑に削り取り、歯形やピッチを修正するシェービングを施す。このシェービング工程S2によって、例えば図3に仮想線で示すように歯面2が削り取られるが、歯面2に第1稜線6を介して連続する第1面取り部4が断面直線状であることから、シェービングによる切削量tにバラツキがあっても、そのシェービングによって切削加工された歯面2と第1面取り部4の角度αは常に一定あるいは略一定に維持される。
【0028】
シェービングが施された歯車1は、次のショットピーニング工程S3において、外周側からショットピーニング粒を投射して、そのショットピーニング粒の激突による表面の塑性変形による加工硬化、すなわち表面硬化によって表面の強度を向上させるショットピーニングを施す。
【0029】
このショットピーニングにあたり、歯面2と第1面取り部4によって形成される第1稜線6の部分の角度γが比較的大きな鈍角に形成されて歯面2と第1面取り部4が比較的滑らかに連続形成されることから、第1稜線6の部分に発生するバリが防止できる。同様に第1面取り部4と第2面取り部5によって形成される第2稜線7の部分の角度δが比較的大きな鈍角に形成されて第1面取り部4と第2面取り部5が比較的滑らかに連続形成されることから第2稜線7の部分に発生するバリが防止できる。
【0030】
さらに、第2面取り部5と外周面3によって形成される第3稜線8の部分の角度εも比較的大きな鈍角に形成されて第2面取り部5と外周面3が比較的滑らかに連続形成され、第3稜線8の部分においてもバリの発生が防止できる。
【0031】
したがって、歯面2と第1面取り部4によって形成される第1稜線6、第1面取り部4と第2面取り部5によって形成される第2稜線7および第2面取り部5と外周面3によって形成される第3稜線8のすべての稜線部分においてバリの発生が防止でき、バリに起因する歯車噛み合い時に発生する異音等が回避できる。また、後工程においてバリの除去を目的とした研削仕上げ加工等の仕上げ加工を省略することができ、歯車の製造コストの低減が期待できる。
【0032】
また、歯面2に第1稜線6を介して連続する第1面取り部4が断面直線状であり、シェービングによる切削量tにバラツキがあっても、その切削加工された歯面2と第1面取り部4の角度αが一定あるいは略一定に維持されることから、歯面と面取り部の角度変化に起因して発生する歯車噛み合い時、特に互いの歯が接触する噛み合い開始および互いの歯が離れる噛み合い終了の際に発生する騒音を有効的に抑制することができ、所期のシェービングの加工効果が確保できる。
【0033】
また、外周面3に第3稜線8を介して連続する第2面取り部5を形成することによって、多数の歯車1を搬送および積み替え時等の衝撃より互いに歯車1同士がぶつかり合って発生する歯面2の打痕や歯先の欠損を有効的に防止することができる。
【0034】
【発明の効果】
以上説明した歯車の加工方法の発明によると、歯面と外周面によって形成される歯先エッジ部に、歯面に第1稜線を介して連続する第1面取り部と、この第1面取り部に第2稜線を介して連続すると共に第3稜線を介して外周面に連続する第2面取り部とを面取りすることによって、歯面と第1面取り部によって形成される第1稜線部分の角度が比較的大きな鈍角に形成される。すなわち、歯面と第1面取り部が比較的滑らかに連続形成されて後工程のショットピーニングによる第1稜線部分に発生するバリが防止できる。また、後工程においてバリの除去を目的とした研削仕上げ加工等の仕上げ加工を省略することができ、歯車の製造コストの低減が期待できる。
【0035】
また、ショットピーニングに先だって歯面にシェービングを施すものであっても、シェービングによって歯面が平滑に加工されても歯面と第1面取り部によって形成される第1稜線部分の角度が一定あるいは略一定に維持されて、所期のシェービングの効果が確保できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の歯車の加工方法における実施の形態の工程図である。
【図2】歯切りされた歯車の要部説明図である。
【図3】図2のA部拡大図である。
【図4】本実施の形態において使用されるセミトッピング付きホブの説明図である。
【図5】従来の歯車の要部を示す説明図であり、(a)は要部説明図、(b)はB部拡大図である。
【図6】従来の歯車におけるバリの発生状況を示す説明図である。
【図7】従来の歯切りされた歯車の説明図である。
【符号の説明】
1 歯車
2 歯面
3 外周面
4 第1面取り部
5 第2面取り部
6 第1稜線
7 第2稜線
8 第3稜線
10 セミトッピング付きホブ
11 歯車歯切り用切り刃
12、13 切り刃面
15 第1面取り用の刃部
16 第2面取り用の刃部
a 歯面の接線
b 第1面取り部の接線
α 歯面の接線と第1面取り部との角度
β 第1面取り部の接線と第2面取り部との角度
S1 歯切り工程
S2 シェービング工程
S3 ショットピーニング工程

Claims (3)

  1. 歯車の歯面と外周面によって形成される歯先エッジ部に、上記歯面に第1稜線を介して連続する第1面取り部と、該第1面取り部に第2稜線を介して連続すると共に第3稜線を介して上記外周面に連続する第2面取り部とを面取りした後に、ショットピーニングを施すことを特徴とする歯車の加工方法。
  2. 歯車の歯面と外周面によって形成される歯先エッジ部に、上記歯面に第1稜線を介して連続する第1面取り部と、該第1面取り部に第2稜線を介して連続すると共に第3稜線を介して上記外周面に連続する第2面取り部とを面取りした後に、上記歯面にシェービングを施し、かつショットピーニングを施すことを特徴とする歯車の加工方法。
  3. 上記第1稜線部分おける上記歯面の接線と第1面取り部とのなす角度が10〜25°であり、上記第2稜線部分における上記第1面取り部の接線と第2面取り部とのなす角度が10〜30°であることを特徴とする請求項1または2に記載の歯車の加工方法。
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