JP4182139B1 - 歯車加工装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】被削歯車の歯面の端面角部の面取りをするとともに、端面角部の近傍の盛り上がりを抑制する。
【解決手段】歯車加工装置の加工部12は、被削歯車14を軸支するワーク支持部としての軸J1と、該軸J1に設けられた被削歯車14に対してフレージングカッタ18を噛合させるように該フレージングカッタ18を軸支するカッタ支持部としての軸J2とを有する。軸J1は、フレージングカッタ18を被削歯車14に対して0でない軸交差角ψをもって噛合させ、且つフレージングカッタ18の加工歯32a、32bが被削歯車14の歯面28に干渉しない角度に設けられている。
【選択図】図5

Description

本発明は、歯車の端面角部を適切に面取りする歯車加工装置に関する。
近時の自動車は高出力でありながらも静粛性及び耐久性が要求されており、動力伝達(例えば変速機)に用いられる歯車には動力を確実に伝達するとともに騒音を発生しないように一層高精度な歯面が望まれている。
このような高精度の歯車の加工としては、一般的にホブによる粗切削加工、面取り加工、シェービングカッタによる歯面の成形、熱処理による浸炭及び焼入れを行い、さらに精度を向上させるために歯車研削やギアホーニング加工を行う。
このうち、ホブによる粗切削加工が終了した段階では、歯面の端面角部が尖っており、そのままでは熱処理により過度の浸炭がなされ、ガラス状に硬化(脆弱化)する懸念がある。このため、面取り加工を行い、過度の浸炭防止及び歯車強度を向上させている。
面取り加工としては、被削歯車の歯面の端面角部を押しつぶすフレージングカッタが広汎に用いられている。フレージングカッタは、被削歯車に対して軸交差角なく噛合して歯車の角部を押しつぶす。フレージングカッタを用いた加工方法としては、例えば特許文献1及び特許文献2が挙げられる。特許文献1では、被削歯車に対してフレージングカッタを軸交差角0°として噛合させることが開示されている。特許文献2では、被削歯車に対してフレージングカッタを所定の軸交差角をもって噛合させることが開示されている。
特開昭54−15596号公報 特開昭61−284318号公報
前記の通り、高出力、静粛性及び耐久性が要求される高精度な歯車の製作には、一般に粗切削加工、フレージングカッタによる面取り加工、シェービングカッタによる歯面の成形、熱処理、及び歯車研削やギアホーニング加工を行う。
フレージングカッタによる面取り加工では、歯面の端面角部を適切に面取りすることができるが、基本的には押しつぶす加工であることから余肉が横側に押し出されることになり、該余肉による盛り上がりが生じる。
このような盛り上がり部は、後の研削工程で研削して除去することも可能であるが、研削工程の前には熱処理を行っており、盛り上がり部は相当に硬くなっているので、研削工具に与える負荷が大きくしかも研削に時間がかかる。また、研削加工を行うことは生産効率等の観点からコスト高となり、省略できることが望ましい。
仮に、研削工程を省略するとその後のギアホーニング加工で砥石に対する負荷が極めて大きく、好ましくない。熱処理後であって被削歯車の硬度が高くなっており、しかも加工中にギアホーニングの砥石と被削歯車は同じ箇所が当接し、盛り上がり部に当接する箇所のみが極端に摩耗してしまうからである。
前記の特許文献2記載の工具では、被削歯車に対してフレージングカッタを所定の軸交差角をもって噛合させることとしているが、不用意に軸交差角を設けるとフレージングカッタの歯の端部が被削歯車の歯面と干渉してしまう。また、この工具は歯面に切削刃としてのセレーションが設けられており、製作が難しい。
一方、要求精度が比較的低く、熱処理を実施しない歯車についても、フレージングカッタの面取り加工をして発生する盛り上がり部について対策をせずにシェービング等の歯面仕上げを行えば、盛り上がり部が工具に対する負荷となり、工具寿命は必然的に短くなる。これにより、工具交換作業のために工作機械を停止させる回数や、メンテナンス及び点検の回数が増加するとともに、工具費用の増加が懸念される。
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、歯面の端面角部を適切に面取りするとともに、端面角部の近傍の盛り上がりの発生を抑制することのできる歯車加工装置を提供することを目的とする。
本発明に係る歯車加工装置は、以下の特徴を有する。
第1の特徴:被削歯車を軸支するワーク支持部と、前記ワーク支持部に設けられた前記被削歯車に対してフレージングカッタを噛合させるように該フレージングカッタを軸支するカッタ支持部とを有し、前記カッタ支持部は、前記フレージングカッタを前記被削歯車に対して軸交差角ψ(ψ≠0)をもって噛合させ、且つ前記フレージングカッタの歯が前記被削歯車の歯面に干渉しない角度に設けられていることを特徴とする。
このように、フレージングカッタは軸交差角ψをもって被削歯車に噛合することから、被削歯車の端面角部に対して押し潰して面取りするだけでなく、押し潰しによる余肉の盛り上がりの発生を抑制することができる。また、フレージングカッタの歯を被削歯車の歯面に干渉しないようにして適切な面取り加工を行うことができる。
第2の特徴:前記軸交差角ψは、
Figure 0004182139
で表され、BOGは歯車振れ角であり、SBGは噛み合い円上円弧歯厚であり、DBCはフレージングカッタの歯車噛合円径であり、l2はラップ量であり、SKCはフレージングカッタの加工歯の歯先幅であり、Zgは被削歯車の歯数であることを特徴とする。これにより、フレージングカッタの歯の被削歯車に対する干渉をより確実に防止できる。
第3の特徴:前記フレージングカッタの歯面は、切削刃としての角部がないインボリュート面であることを特徴とする。これにより、該フレージングカッタの製作が容易である。
第4の特徴:前記軸交差角ψは、5°〜8°であると、歯の強度及び加工効果がそれぞれ好適である。
本発明に係る歯車加工装置によれば、フレージングカッタは軸交差角をもって被削歯車に噛合することから、被削歯車の端面角部に対して押し潰して面取りするだけでなく、押し潰しによる余肉の盛り上がりの発生を抑制することができる。
以下、本発明に係る歯車加工装置について実施の形態を挙げ、添付の図1〜図18を参照しながら説明する。本実施の形態に係る歯車加工装置は、ホブによる粗歯切りの工程を終了した被削歯車の端面角部に対して、少なくとも面取り加工を行うものである。本実施の形態に係る歯車加工装置について、特に、被削歯車に対して噛合して加工を行う加工部12について説明する。
図1に示すように、加工部12は、被削歯車14を軸支するワーク支持部としての軸J1と、フレージングカッタ18と、該フレージングカッタ18を軸支するカッタ支持部としての軸J2とを有する。軸J2は図示しない駆動源により回転可能である。軸J1は、被削歯車14がフレージングカッタ18に噛合することにより連れ回りする。
軸J2は、軸J1に設けられた被削歯車14に対してフレージングカッタ18を噛合させるように該フレージングカッタ18を軸支している。軸J2は、フレージングカッタ18を被削歯車14に対して0でない軸交差角ψをもって噛合させ、且つフレージングカッタ18の加工歯32a、32bが被削歯車14の歯26の歯面28に干渉しない角度に設けられている(図5参照)。軸交差角ψは、被削歯車14の軸J1とフレージングカッタ18の軸J2とのなす角度である(図5参照)。
図2に示すように、被削歯車14は、例えばはすば歯車であり、粗歯切りした状態では、左右の端面角部30、31に尖鋭部33(図7A参照)がある。加工部12ではこの尖鋭部33を面取りする。加工部12で加工をする被削歯車14ははすば歯車に限られず、平歯車等であってもよい。被削歯車14は、例えば、車両用変速機の歯車である。加工部12により加工をした歯車は高精度であり、静粛性及び耐久性に優れ、車両用変速機に好適である。
図3に示すように、フレージングカッタ18は、厚み方向の一方に面取り用の加工歯32aの一群を備える第1ピース34aが設けられ、他方に面取り加工歯32bの一群を備える第2ピース34bが設けられている。第1ピース34a及び第2ピース34bは、ボス36に対して固定された構造であり、いわゆるスリーピース型である。第1ピース34aと第2ピース34bとは、それぞれ円弧孔38を用いてボス36に対する角度を調整可能である。
図4及び図5に示すように、加工歯32aと加工歯32bは、被削歯車14の厚みに応じて離間しており、フレージングカッタ18及び被削歯車14は噛合しながら回転し、フレージングカッタ部40aの加工歯32aが端面角部30に対して押圧して尖鋭部33を押しつぶして面取りする。フレージングカッタ部40bの加工歯32bは他方の端面角部31に対して押圧して尖鋭部33を押しつぶして面取りする。
図5は、被削歯車14の歯26と、フレージングカッタ18の加工歯32a、32bとの相対的な位置関係を示すものであり、被削歯車14とフレージングカッタ18をそれぞれ周面に沿って展開した模式図である。図5から明らかなように、被削歯車14とフレージングカッタ18とは軸交差角ψを有し、斜めに交わる。
一方、図6に示すように、従来技術に係る噛み合わせでは、軸交差角ψは存在していない。
次に、フレージングカッタ18の加工歯32aが端面角部31に対して押圧して尖鋭部33を押しつぶす作用について説明する。
被削歯車14は図5の右方向、つまり矢印A1の方向に回転し、フレージングカッタ18は角度ψだけ斜め方向、つまり矢印A2の方向に回転する。
図7Aに示すように、フレージングカッタ18の加工歯32aは、歯26の端面角部30の略頂部の箇所P1に最初に当接する。この時点の噛み合い初期では、加工歯32aは、歯26を基準とすると右斜めに傾斜しており、中心線Cよりも手前側が箇所P1に当接する。この時点では、端面角部30には尖鋭部33が存在する。図7A〜図7Cでは、理解を容易にするため、加工歯32aの歯面に中心線Cを付記している。この時点の噛み合いは、図5では矢印B1で示す噛み合いに相当する。
図7Bに示すように、噛み合いの中期では、フレージングカッタ18の加工歯32aは、歯26の略中間高さの箇所P2に当接している。噛み合い中期では、加工歯32aは、歯26に対して略平行であり、中心線Cが箇所P2に当接する。この時点では、箇所P2よりも上部は面取りがなされており尖鋭部33が面取りされているが、箇所P2よりも下側には尖鋭部33が残存している。この時点の噛み合いは、図5では矢印B2で示す噛み合いに相当する。
図7Cに示すように、噛み合いの終期では、フレージングカッタ18の加工歯32aは、歯26の略底部の箇所P3に当接する。噛み合い終期では、加工歯32aは、歯26を基準とすると左斜めに傾斜しており、中心線Cよりも奥が箇所P3に当接する。この時点では、端面角部30は全長にわたって面取りがなされており尖鋭部33がなくなっている。この時点の噛み合いは、図5では矢印B3で示す噛み合いに相当する。
図8に示すように、面取りがなされた端面角部30には細長い平面部が形成され、尖鋭部33がなくなっている。ここで、加工歯32aの移動した軌跡は、矢印D1で示すように、斜めに向かう方向であり、横移動成分が含まれている。
端面角部30におけるフレージングカッタの歯面の移動軌跡をさらに詳細に図9A及び図9Bに示す。図9Aは、軸交差角ψが5°の場合であり、図9Bは、軸交差角ψが8°の場合である。符号Zは、被削歯車14とフレージングカッタ18との噛み合い円を示す。図9A及び図9Bから了解されるように、移動軌跡には横方向成分が相当に含まれており、該成分は軸交差角ψが5°の場合よりも8°の場合の方が大きい。このような横方向成分が大きいほど通常切削性がよい。
これに対して、従来技術に係る噛み合わせ(図6参照)では軸交差角ψが存在しない(つまり、ψ=0)であることから、加工歯32aの移動した軌跡は図8の矢印Eで示すように、横移動成分が含まれていない。
すなわち、本実施の形態に係る歯車加工装置の加工部12によれば、フレージングカッタ18は軸交差角ψをもって被削歯車14に噛合することから、被削歯車14の端面角部30に対して押し潰して尖鋭部33を面取りするだけでなく、横移動成分の含まれる面同士の摺動が発生する。これにより、歯面28のうち面取り部に隣接する箇所82(図8及び図10参照)における余肉の盛り上がりの発生を防止し、又は抑制することができる。
また、フレージングカッタ18の加工歯32aの歯面は、端面角部30に対して押圧及び摺動することを目的としている。したがって、フレージングカッタ18の歯面は、角部のないインボリュート面であり製作が容易である。
なお、詳細な説明は省略するが、被削歯車14における反対側の端面角部31についても、フレージングカッタ18の加工歯32bにより適切に尖鋭部33が面取りされるとともに、面取り部に隣接する箇所82(図10参照)における余肉の盛り上がりの発生を防止し、又は抑制することができる。この場合、加工歯32bの移動する軌跡は、図10の矢印D2で示すように、斜めに向かう方向であり、横移動成分が含まれており、端面角部30に対する加工と同様の作用が得られる。この移動の軌跡の詳細は、図9A及び図9Bに示す場合の各矢印の逆向きとなる。
ところで、従来技術に係る噛み合わせでは、一般に軸交差角ψは存在していない(図6参照)。この理由としては、前記の面取り部に隣接する箇所82(図8参照)に生ずる余肉の盛り上がりが見過ごされ、又はその解決手段として軸交差角ψを設けることが有効であることが想到されなかったことによる。
前記の特許文献2記載の装置では、軸交差角ψが設けられているが、セレーションにより端面角部30及び31の面取りをすることは実際上は容易ではない。 また、軸交差角ψを設けることは、フレージングカッタ18の加工歯32a及び32bが被削歯車14の歯26の歯面28に干渉することがあり(図6の仮想線参照)、その設定が困難であることも一因であると考えられる。
本発明者は、この軸交差角ψの適切な設定として、次の(2)式を見出した。
Figure 0004182139
ここで、上段式の左辺は被削歯車14のフレージングカッタ18に対する干渉量であり、この上段式の左辺の示す値だけ加工歯32a、32bを薄く設定すれば干渉を回避することができる。右辺は加工歯32a、32bの歯先幅の余弦成分を示す。
また、(2)式において、図11に示すように、l1は面取り幅であり、l2はラップ量であり、BOGは歯車振れ角であり、SBGは噛み合い円上円弧歯厚である。DBGは、歯車噛み合い円上振れ角である。
図12に示すように、DBGは被削歯車14の歯車噛合円径であり、DKGは被削歯車14の歯先円径であり、DBCはフレージングカッタ18の歯車噛合円径であり、DKCはフレージングカッタ18の歯先円径である。Zgは被削歯車14の歯数であり、αは余裕代である。SKCはフレージングカッタ18の加工歯32a、32bの歯先幅である。
上記の(2)式を整理すると、次の(1)式が得られる。
Figure 0004182139
すなわち、前記軸交差角ψを(1)式で表される値にすることにより、フレージングカッタ18の加工歯32a、32bの被削歯車14に対する干渉をより確実に防止できる。
次に、このように構成される歯車加工装置の加工部12による加工の実験結果について説明する。
図13は、軸交差角ψを従来技術のように、ψ=0として面取り加工をした端面角部30(右歯面)の拡大図である。該図13から了解されるように、面取り部の近傍の箇所(図8の箇所82参照)には余肉による盛り上がり部80が認められる。盛り上がり部の高さをH1とし、幅をH2とする。ψ=0について所定数の加工を行った右歯面及び左歯面に対する結果を表1及び表2における「ψ=0°」の欄に示す。計測にはコントレーサ等を用いた。
Figure 0004182139
Figure 0004182139
図14は、軸交差角ψを、ψ=5°として面取り加工をした端面角部30(右歯面)の拡大図である。該図14から了解されるように、盛り上がり部80の発生は相当に抑制されている。ψ=5°について所定数の加工を行った右歯面及び左歯面に対する結果を表1及び表2における「ψ=5°」の欄に示す。
図15は、軸交差角ψを、ψ=8°として面取り加工をした端面角部30(右歯面)の拡大図である。該図15から了解されるように、盛り上がり部80はほとんどなくなっている。ψ=8°について所定数の加工を行った右歯面及び左歯面に対する結果を表1及び表2における「ψ=8°」の欄に示す。なお、表1及び表2においてマイナス値は0と示した。
図16は、軸交差角ψを、ψ=5°として2000個の被削歯車14の面取り加工を行い、2000個目の被削歯車14の端面角部30(右歯面)の拡大図である。該図14と図16とを比較して了解されるように、盛り上がり部80は初期と2000個目でほとんど変化がない。また、2000個の加工を行った後、フレージングカッタ18の加工歯32a及び加工歯32bの形状を精密に測定したところ、初回加工時と比較して摩耗は認められなかった。
このように、歯車加工装置では、盛り上がり部80の発生を防止し、又は相当に抑制することができ、しかも数多くの加工を行っても製品精度は安定し、フレージングカッタ18の摩耗もなく、十分な耐久性が確認された。
次に、このように構成される歯車加工装置における加工部12の軸交差角ψの値について行った解析結果について説明する。
図17に示すように、軸交差角ψを大きく設定すると加工歯32aは被削歯車14の歯26に干渉するので、後面端部に加工歯32aと略平行になる逃げ面300を設けることが行われている。このような逃げ面300を設けることによって、軸交差角ψを大きくすることができ、効率的な加工が可能になる。図17では、被削歯車14の歯26の干渉を考慮し、カッタ刃先幅Sに対して、干渉量S1及び隙間S2を考慮してカッタ残り幅S3を確保した加工歯32aの形状を示している。
ところで、カッタ残り幅S3は強度上の観点から0.4mm以上は確保することが好ましい。隙間S2は誤差等を考慮して0.5mm程度に設定することが好ましい。標準的条件下における軸交差角ψ、干渉量S1、カッタ刃先幅S、カッタ残り幅S3の関係を解析及び計算した結果を表3に示す。ここで、隙間S2は0.5mmとしている。
Figure 0004182139
表3から明らかなように、軸交差角ψが8°であるときには、カッタ残り幅S3が0.42mmであって強度が確保される。軸交差角ψが9°であるときには、カッタ残り幅S3が0.38mmとなって強度が不足するおそれがある。つまり、強度の観点からは、軸交差角ψがψ≦8°であることが望ましい。
軸交差角ψが4°であるときには、カッタ残り幅S3が0.54mmであって十分な強度を有すると考えられるが、加工効率が低下する。被削歯車14における面取り部の盛り上がりの発生を抑制させるためには、端面角部30におけるフレージングカッタ18の加工歯32aの移動軌跡が横向きであるほど効果が高いと考えられている。
図18Aのシミュレーション結果に示すように、軸交差角ψがψ=4°であるときには、歯面32aの移動軌跡は、場所により相当に急な傾斜であり、横成分が少なく、盛り上がり部発生を抑制する効果が低い。
図18Bのシミュレーション結果に示すように、軸交差角ψがψ=5°であるときには、歯面32aの移動軌跡は、ある程度緩やかとなり、横成分がある程度存在し、盛り上がり部発生を抑制する効果がある。
図18Cのシミュレーション結果に示すように、軸交差角ψがψ=6°であるときには、歯面32aの移動軌跡は、かなり緩やかとなり、横成分が多く存在し、盛り上がり部発生を抑制する効果が高い。つまり、盛り上がり部発生を抑制する効果を得るためには、軸交差角ψがψ≧5°であることが望ましい。
結果として、加工歯32aの強度及び加工効果をそれぞれ満足するためには、軸交差角ψは、5°〜8°の範囲であるとよい。
上述したように、本実施の形態に係る歯車加工装置の加工部12によれば、フレージングカッタ18は軸交差角ψをもって被削歯車14に噛合することから、被削歯車14の端面角部30、31に対して押し潰して尖鋭部33を面取りするだけでなく、押し潰しによる余肉の盛り上がりの発生を抑制することができる。また、フレージングカッタ18の加工歯32a、32bを被削歯車14の歯面28に干渉しないようにして適切な面取り加工を行うことができる。
フレージングカッタ18を用いた面取り加工により盛り上がり部80の発生を防止できることから、シェービング加工や歯研加工を省略しても、ギアホーニング加工を行えばさらに高精度な歯車が得られる。この場合、被削歯車14には盛り上がり部80が実質的に存在しないことから、後工程の歯車加工(例えば、シェービング加工、歯研加工、ギアホーニング加工)の工具に対する影響を相当に抑制することができる。
本実施の形態に係る歯車加工装置の加工部12により得られる歯車は、熱処理を行うことによって硬度が高くなり、高出力、静粛性及び耐久性が要求される高精度な車両用変速機に好適である。
一方、要求精度が比較的高くなく、熱処理を実施しない歯車についても、加工部12による面取り加工では盛り上がり部がほとんど発生しないため、次に行うシェービング等の歯面仕上げにおいて、工具に対する負荷が小さく、工具寿命を延ばすことができる。これにより、工具交換作業のために工作機械を停止させる回数や、メンテナンス及び点検の回数を低減するとともに、工具費用を抑制することができる。
また、比較的要求精度が高くない歯車で、熱処理を実施し、その後に歯面仕上げを行わない場合であっても、フレージングカッタによる加工が有効であることはもちろんである。
本発明に係る歯車加工装置は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
本実施の形態に係る歯車加工装置の加工部の略式斜視図である。 被削歯車の斜視図である。 フレージングカッタの斜視図である。 フレージングカッタと被削歯車との噛み合い部の拡大斜視図である。 被削歯車とフレージングカッタをそれぞれ周面に沿って展開した模式図である。 従来技術に係る噛み合わせ状態で、被削歯車とフレージングカッタをそれぞれ周面に沿って展開した模式図である。 図7Aは、噛み合い初期の噛み合い部の略式斜視図であり、図7Bは、噛み合い中期の噛み合い部の略式斜視図であり、図7Cは、噛み合い終期の噛み合い部の略式斜視図である。 加工後の右歯面の略式斜視図である。 図9Aは、軸交差角が5°の場合の端面角部におけるフレージングカッタの歯面の移動軌跡を示す図であり、図9Bは、軸交差角が8°の場合の端面角部におけるフレージングカッタの歯面の移動軌跡を示す図である。 加工後の左歯面の略式斜視図である。 被削歯車とフレージングカッタをそれぞれ周面に沿って一部を拡大して展開した模式図である。 フレージングカッタと被削歯車との噛み合い部の拡大側面図である。 軸交差角を0°として加工をした被削歯車の端面角部の拡大図である。 軸交差角を5°として加工をした被削歯車の端面角部の拡大図である。 軸交差角を8°として加工をした被削歯車の端面角部の拡大図である。 軸交差角を5°として、2000回の加工をした際の2000個目の被削歯車の端面角部の拡大図である。 フレージングカッタにおける歯と、軸交差角、カッタ歯先幅、干渉量、隙間及びカッタ残り幅の関係を示す模式図である。 図18Aは、軸交差角が4°の場合の端面角部におけるフレージングカッタの歯面の移動軌跡を示す図であり、図18Bは、軸交差角が5°の場合の端面角部におけるフレージングカッタの歯面の移動軌跡を示す図であり、図18Cは、軸交差角が6°の場合の端面角部におけるフレージングカッタの歯面の移動軌跡を示す図である。
符号の説明
12…加工部(歯車加工装置) 14…被削歯車
18…フレージングカッタ 26…歯
28…歯面 30、31…端面角部
32a、32b…加工歯 80…盛り上がり部
J1、J2…軸 ψ…軸交差角

Claims (4)

  1. 被削歯車を軸支するワーク支持部と、
    前記ワーク支持部に設けられた前記被削歯車に対してフレージングカッタを噛合させるように該フレージングカッタを軸支するカッタ支持部と、
    を有し、
    前記カッタ支持部は、前記フレージングカッタを前記被削歯車に対して0でない軸交差角ψをもって噛合させ、且つ前記フレージングカッタの歯が前記被削歯車の歯面に干渉しない角度に設けられていることを特徴とする歯車加工装置。
  2. 請求項1記載の歯車加工装置において、
    前記軸交差角ψは、
    Figure 0004182139
    で表され、BOGは歯車振れ角であり、SBGは噛み合い円上円弧歯厚であり、DBCはフレージングカッタの歯車噛合円径であり、l2はラップ量であり、SKCはフレージングカッタの加工歯の歯先幅であり、Zgは被削歯車の歯数であることを特徴とする歯車加工装置。
  3. 請求項1又は2記載の歯車加工装置において、
    前記フレージングカッタの歯面は、切削刃としての角部がないインボリュート面であることを特徴とする歯車加工装置。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の歯車加工装置において、
    前記軸交差角ψは、5°〜8°であることを特徴とする歯車加工装置。
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