JP4281357B2 - モータ制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ブラシレスDCモータを周波数制御するモータ制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ブラシレスDCモータを回転数制御するモータ制御装置として、従来より120゜通電制御方式と、正弦波180゜通電制御方式がある。
【0003】
120゜通電方式においては、誘起電圧のゼロクロス信号を直接検出する方式があり、それを検出するために、インバータ相電圧と基準電圧との比較を行って得られるものである。このゼロクロス信号に基づいて、転流信号を変化させている。このゼロクロス信号は、モータ1回転中に12回発生し、機械角30゜、すなわち電気角60゜毎に発生する(例えば特許文献1参照)。
【0004】
180゜通電方式においては、モータ巻線の中性点電位と、3相のインバータ出力電圧に対して3相Y結線した抵抗の中性点電位との差分電圧を増幅し、それを積分回路に入力し、その積分回路の出力信号と、その出力信号をフィルタ回路により処理し直流カットしたローパス信号との比較により、誘起電圧に対応する位置検知信号を得ているものがある。この位置検知信号は、モータ1回転中に12回発生し、機械角30゜、すなわち電気角60゜毎に発生する。この方式においては、積分回路を通すため、位相補正制御が必要である(例えば特許文献2、3参照)。
【0005】
【特許文献1】
特許第2642357号公報
【特許文献2】
特開平7−245982号公報
【特許文献3】
特開平7−337079号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来の課題を説明する。
【0007】
図5は従来のモータ制御装置の制御ブロック図である。この120゜通電方式は、誘起電圧部分のゼロクロスの比較を行っているため、モータ負荷急変・電源電圧急変の状態がおきると、誘起電圧のゼロクロス信号がインバータ出力電圧領域内に隠れてしまい、検出できなくなることがある。このような状態になると、まず脱調現象が発生し、インバータシステムが停止してしまう。また、120゜通電では、1相当たり誘起電圧が電気角60゜連続して確認できるのであるが、モータ運転時の音・振動を軽減しようとして、通電角を150゜程度に設定して運転させようとすると、1相当たり誘起電圧が電気角30゜分しか連続確認できず、通常運転時においても脱調する危険性が増加し、また乱調等の不安定現象も発生し易くなる傾向があった。また、本構成では、180゜通電に近い運転はまず不可能であるという課題を有していた。図6(a)は120゜通電制御の相電流波形と誘起電圧波形との関係図である。通常運転時には誘起電圧10に対して相電流20の位置に設定し、最高回転数を増加させる場合には相電流21の位置まで進角させる。しかし、相電流21の位置より進角させることは困難であるため、最高回転数も低くなり、限定された速度範囲しか運転できない課題がある。
【0008】
図6(b)は180゜通電制御の相電流波形と誘起電圧波形との関係図である。
180゜通電方式は、積分回路を通すため、誘起電圧のゼロクロス位置を絶対値での的確な把握ができず、また、運転状態によってはゼロクロス位置と位置検知信号の位相差が大きく変化するため、位相補正等の複雑な制御が必要となり、その位相補正調整が困難であったり、制御演算が複雑になる。また、モータに中性点出力端子が必要、誘起電圧波形の3次高調波成分を利用しているため正弦波着磁マグネットを使用したモータでは使用不可能という課題を有していた。
【0009】
また、電流フィードバック方式によるセンサレス正弦波180゜通電駆動制御では、モータの磁極位置をモータ電流とモータ電気的定数とにより推定演算するため演算誤差が大きくなり、モータ電流の進角制御の限界点が早く、最高回転数も位置センサ付制御に対しどうしても遠く及ばない課題があった。180゜通電制御の場合にも、通常運転時には誘起電圧10に対して相電流22の位置に設定し、最高回転数を増加させる場合には相電流23の方向へ進角させる。
【0010】
本発明は、上記課題を解決すべきなされたものであり、その目的とするところは、機械的電磁ピックアップセンサの必要としない誘起電圧フィードバック制御の新方式により、位置センサ付正弦波180゜通電と同等レベルの高速性能を実現し、さらには安価かつ信頼性の高いモータ制御装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために、スイッチング素子を含み前記スイッチング素子の開閉により直流電圧をPWM信号に基づき交流電圧に変換し3相ブラシレスDCモータに供給する直流交流変換手段と、前記ブラシレスDCモータの誘起電圧を検出する誘起電圧検出手段と、前記誘起電圧検出手段から電気角60°毎に出力される全ての磁極位置情報に基づいて第1の電圧波形を出力する第1の電圧制御手段と、前記第1の電圧波形を前記PWM信号に変換するPWM制御手段とを有するモータ制御装置において、前記磁極位置情報を電気角1周期に(6−n)個(mと定義、m≧1)選択して磁極位置選択情報を出力する誘起電圧選択手段と、前記磁極位置選択情報に基づいて第2の電圧波形を創出して前記PWM制御手段に出力する第2の電圧制御手段とを有し、前記第2の電圧制御手段は選択されない各々n個の時間領域では前記第2の電圧波形を出力することを特徴とするものである。
【0012】
また、上記nは、m≧0を満たす自然数である。
【0013】
また、電気角1周期毎または1周期以上の周期でmを変化させるものである。
【0014】
また、上記誘起電圧選択手段は、1相分の磁極位置情報を選択するものである。
【0015】
また、上記選択されないn個の時間領域においては正弦波状の第2の電圧波形を出力するものである。
【0016】
また、上記選択されないn個の時間領域においては台形波状もしくは円弧状の第2の電圧波形を出力するものである。
【0017】
また、上記PWM制御手段は、上記ブラシレスDCモータの低速〜中速回転時には上記第1の電圧波形を選択し、高速回転時には第2の電圧波形を選択するものである。
【0018】
また、上記PWM制御手段は、モータ制御装置の運転可能最小回転数をfmin
とすれば、回転数(fmin×6/m)以上で第2の電圧波形を選択するものである。
【0019】
また、上記第2の電圧制御手段は前記磁極位置選択情報の各々m個の時間領域における電圧位相よりも選択されない各々n個の時間領域の電圧位相を所定値進角させた第2の電圧波形を出力するものである。
【0020】
また、上記誘起電圧選択手段は、上記3相ブラシレスDCモータの電気角周期に換算して電気角(磁石極数/2)周期毎に磁極位置情報を1回選択するものである。
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0021】
(実施の形態1)
図1は本発明の第1の実施の形態におけるモータ制御装置の制御ブロック図である。本実施の形態におけるモータ制御装置は、3相ブラシレスDCモータ7を回転数制御するモータ制御装置を示している。この図において、モータ制御装置は、直流電圧8を交流電圧に変換し、3相ブラシレスDCモータ(以下、BLMと略)7に出力する直流交流変換手段6と、BLM7の誘起電圧を検出する誘起電圧検出手段1と、誘起電圧検出手段1から電気角60°毎に出力される全ての磁極位置情報に基づいて第1の電圧波形を出力する第1の電圧制御手段3と、第1の電圧波形をPWM信号に変換するPWM制御手段5と、磁極位置情報を電気角1周期に(6−n)個(mと定義、m≧1)選択して磁極位置選択情報を出力する誘起電圧選択手段2と、磁極位置選択情報に基づいて第2の電圧波形を創出してPWM制御手段5に出力する第2の電圧制御手段4とを有し、第2の電圧制御手段4は磁極位置選択情報の各々m個の時間領域における電圧位相よりも選択されない各々n個の時間領域の電圧位相を所定値進角させた第2の電圧波形を出力する。
【0022】
PWM制御手段5は、BLM7を回転数制御するための印加電圧・周波数・位相を制御するPWM信号を出力する。直流交流変換手段6は、高速に開閉する6つのスイッチング素子から成り立っている。
【0023】
まず、図1において誘起電圧検出手段1と第1の電圧制御手段3、PWM制御手段5の役割について順次説明する。この部分は、図5従来のモータ制御装置の制御ブロック図の働きと同様である。
【0024】
図1において、誘起電圧検出手段1は、BLM7の誘起電圧を降下させ、そのゼロクロス信号を検出し、そのゼロクロス信号を磁極位置情報として第1の電圧制御手段3に出力する。第1の電圧制御手段3はその磁極位置情報に基づいて、BLM7を駆動させるための電圧波形を演算しそれを第1の電圧波形としてPWM制御手段5に出力する。第1の電圧波形に基づきPWM制御手段5はPWM信号を直流交流変換手段6に出力する。
【0025】
このように構成されたモータ制御装置では、BLM7の回転数は、直流交流変換手段6から出力される交流電圧の周波数と位相(以下、『インバータ周波数』と称す)を変化させることにより制御される。
【0026】
120゜通電制御の場合、PWM制御手段5は、直流交流変換手段6のスイッチング素子を開閉する6通りのPWM信号を出力し、その6通りのPWM信号によりスイッチング素子が開閉されることにより、直流交流変換手段6から出力されるインバータ周波数が制御される。
【0027】
6通りのPWM信号について説明する。6通りのPWM信号とは、直流交流変換手段6のスイッチング素子を駆動するためのパルス信号である。PWM信号は、インバータ電気角1周期において6つの基本的なパターンPTN1〜PTN6を有し、PWM信号1周期の逆数がインバータ周波数となる。
【0028】
実際、BLM7の回転数を変更させるべき手法は、PWM制御手段5が直流交流変換手段6のインバータ周波数を変化させながら、BLM7を回転数制御する。
【0029】
直流交流変換手段6は、6個のスイッチング素子を有し、U相、V相、W相に対して、それぞれ上アームにスイッチング素子1個、下アームにスイッチング素子1個具備している。
【0030】
PTN1では、U相上アームスイッチング素子と、V相下アームスイッチング素子が通電される。
【0031】
PTN2では、U相上アームスイッチング素子と、W相下アームスイッチング素子が通電される。
【0032】
PTN3では、V相上アームスイッチング素子と、W相下アームスイッチング素子が通電される。
【0033】
PTN4では、V相上アームスイッチング素子と、U相下アームスイッチング素子が通電される。
【0034】
PTN5では、W相上アームスイッチング素子と、U相下アームスイッチング素子が通電される。
【0035】
PTN6では、W相上アームスイッチング素子と、V相下アームスイッチング素子が通電される。
【0036】
PWM信号の転流切換は、第1の電圧制御手段3の第1の電圧波形出力に基づいて行われる。
【0037】
誘起電圧検出手段1の詳細動作を図3の誘起電圧検出手段の動作説明図を用いて説明する。BLM7の誘起電圧ゼロクロス信号は、電気角1周期中に6回発生する。図3は1相当たりの誘起電圧ゼロクロス信号を記載している。図3(a)は相電流波形と誘起電圧波形との関係図であり、誘起電圧10と相電流9とその正ゼロクロス信号11と逆ゼロクロス信号12を示している。正ゼロクロス信号11は電気角0゜、逆ゼロクロス信号12は電気角180゜で発生する。誘起電圧検出手段1が実際に観測できる誘起電圧は図3(b)の誘起電圧10a・10bのようになっており、誘起電圧10の電圧波形にPWM電圧成分が重畳された波形となる。直流電圧VDCの半分である(=VDC/2)と誘起電圧10a(10b)の交点、さらに直流交流変換手段6の上アーム素子と下アーム素子がそれぞれ1つずつ点弧していると正ゼロクロス信号11(逆ゼロクロス信号12)を検出できる。
【0038】
図中の正ゼロクロス信号11および逆ゼロクロス信号12を検出して、磁極位置情報を第1の電圧制御手段3に出力する。そのゼロクロス信号に基づいて第1の電圧制御手段3は相電流9とほぼ相似形の第1の電圧波形を演算し、PWM制御手段5ではその第1の電圧波形の情報に基づいて、各電気角に対応したPWM信号のベースPTNを創出する。電気角X1〜X2、X3〜X4は電流カット区間である。
【0039】
また、第1の電圧制御手段3は120゜〜180゜通電波形の第1の電圧波形を創出できる。ただし、誘起電圧を観測するためには、その通電角を180゜未満にする必要がある。モータ制御装置の制御安定性を考慮すると、実際には150゜以下の通電角設定が好ましい。
【0040】
通電角>120゜とする場合には、120゜通電制御で説明した6通りのPWM信号に加えて、3相正弦波駆動用PWM信号を追加する。基本的には、3相のうちどれか1相でも電流OFFとなる区間では、120゜通電制御用のPWM信号を使用する。3相すべてに相電流が流れている区間では、3相正弦波駆動用PWM信号を使用する。このPWM信号については、3相正弦波PWM制御としてすでに公知技術であるので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0041】
なお、第1の電圧波形は相電流9とほぼ相似系であるが、実際その位相差は相電流9に対して多少進んでいる。本文の説明では簡単化のため、その位相差をゼロとして説明することにする。すなわち、相電流9=第1の電圧波形と定義する。
【0042】
図7は、BLM7の等価回路図である。R1は巻線一次抵抗、Lu・Lv・Lwは各相のインダクタンス、Eu・Ev・Ewは各相の界磁誘起電圧である。ここで、界磁誘起電圧とは、BLM7が回転したときに、マグネット(界磁)のみによる発生する誘起電圧を意味している。図4は3相ブラシレスDCモータの界磁誘起電圧波形関係図である。図中のU1はEuの正ゼロクロス位置を、U2は逆ゼロクロス位置を表している。同様に他相も表記しており、ゼロクロス位置の間隔は理想的には60゜毎、電気角1周期につき6回発生することになる。
【0043】
BLM7の真の磁極位置は、誘起電圧のゼロクロス信号からは、電機子反作用の影響により直接確定することはできず、両者には位相差が生ずる。また、この位相差は、運転負荷に依存するため、真の磁極位置を誘起電圧ゼロクロス信号から特定するのは困難である。しかし、真の磁極位置は特定できなくとも、誘起電圧ゼロクロス信号のみによりBLM7を回転数制御することは十分可能であり、むしろ誘起電圧により制御するほうが望ましい場合もある。本発明では、両者の位相差はゼロであるものとして説明する。
【0044】
すなわち、真の磁極位置=誘起電圧ゼロクロス位置である。図3(a)の誘起電圧10がU相に対応したものであるならば、
ゼロクロスU1=正ゼロクロス信号11
ゼロクロスU2=逆ゼロクロス信号12
である。ただし、
Eu≠誘起電圧10
である。上式は両者の電圧波形振幅が異なることを意味する。
【0045】
次に、誘起電圧選択手段2と第2の電圧制御手段4の動作を説明する。この部分は本発明による新しい制御機構である。誘起電圧選択手段2は、誘起電圧検出手段1の出力である磁極位置情報を選択するものである。その選択動作としては、
電気角1周期中に、n個間引く((6−n)個(mと定義)選択する)
である。ここでn,mは、
n≧0 かつ m≧1 ;n+m=6
を満たす自然数である。なお、上記変数は一定値である必要はなく、1周期毎もしくは、それ以上の周期で変化させてもよい。もしくは、1周期未満の周期でも変化させてもよい。この選択した磁極位置情報を磁極位置選択情報として第2の電圧制御手段4に出力する。
【0046】
第2の電圧制御手段4では、磁極位置選択情報にもとづいて第2の電圧波形を創出する。その第2の電圧波形にもとづいてPWM制御手段5はPWM信号を演算するのは第1の電圧波形からPWM信号を創出する方式と同等である。なお、モータ制御装置の運転状態に応じて、PWM制御手段5は第1の電圧波形もしくは第2の電圧波形を選択するようになっている。第2の電圧波形を図2を参照して説明する。
【0047】
第2図は本実施形態の相電流波形と誘起電圧波形との関係図である。
【0048】
図2(a)(b)は、n=4(m=2)と設定し、かつゼロクロスU1とゼロクロスU2を選択した場合である。なお、ゼロクロスV1とゼロクロスV2、ゼロクロスW1とゼロクロスW2の組合せでもよい。正ゼロクロス信号11と逆ゼロクロス信号12は180゜毎に磁極位置選択情報として入力されるので、これに基づいて第2の電圧波形を相電流9aのようにつくることができる。正ゼロクロス信号11・逆ゼロクロス信号12の検出のために、X1〜X2、X3〜X4の区間は電流をゼロにしている。ここで、
−30゜≦X1≦0゜、0゜≦X2≦30゜、150゜≦X3≦180゜、
180゜≦X4≦210゜、330゜≦X5≦360゜
を満たす実数である。
【0049】
図2(b)は図2(a)に対して、X3およびX5を小さく設定(進角設定)した場合の電流波形である。相電流9bは見かけ上、誘起電圧10に対して進角することになり、BLM7の回転数を向上できる。
【0050】
図2(c)〜(h)は、n=5(m=1)かつ磁極位置選択情報としてゼロクロスU1を選択した場合である。図2(c)ではゼロクロスU2の磁極位置選択情報がないので、
X3=X4=180゜
としたものである。X1〜X2、X5〜360゜を除く電気角領域においては、磁極位置選択情報がないため、どのような第2の電圧波形を出力してもよく、任意波形を創出できる。ゼロクロスU1が電気角360゜毎に検出されるのでこれに基づいて第2の電圧波形を創出できる。図2(c)は磁極位置選択情報のない時間領域において、その相電流9cを正弦波状としたものである。このようにすれば、部分正弦波駆動が可能となり、120゜通電や150゜広角通電に比べて低振動・低騒音運転を実現できる。
【0051】
図2(d)は、
X2≦X3=X4≦180゜、180゜≦X5≦360゜
としたもので、相電流9dは誘起電圧10に対してさらに進角するため、より高速性能を向上できる。本図では相電流9d1はゼロであるが、この部分にも電流をながしたものが図2(e)の相電流9eである。電気角X5’まで電流を流すので、さらに高速性能を向上できる。なお、
X5≦X5’≦360゜
を満たす。
【0052】
図2(f)は、
X5=X3+180゜=X1+360゜、0゜≦X2≦30゜
と設定したもので、制御パラメータが少なくなるので制御演算が簡単になり、第2の電圧制御手段4としては、簡単な演算で構成できる。
【0053】
図2(g)および(h)は、図2(d)をベースに相電流9gは台形波状、相電流9hは円弧状になるように第2の電圧制御手段4の第2の電圧波形出力を調整したものである。このような電流波形でモータを駆動すれば、よりBLM7への印加電圧が増加するため、一層最高回転数を上昇させることができる。
【0054】
図2(i)は、
n=5(m=1) ;電気角0〜360
n=6(m=0) ;電気角360〜720゜
ゼロクロスU1を選択
と電気角1周期毎に変化させたものである。
【0055】
相電流9iは電気角2周期にわたり任意の波形を実現することができる。特に、正弦波状とした場合にはより低振動・低騒音運転を図ることができる。また、台形波状・円弧状とした場合には、さらに最高回転速度向上を実現できる。なお、上記nおよびmの設定は一例であり、モータ制御装置の運転状態により電気角2周期以上にわたり、
n=6(m=0)
でもよい。また、突発的偶発的外乱もしくは必然的外乱作用によりBLM7の回転速度が急変した場合でも、n(もしくはm)をリアルタイムに制御(電気角1周期以内にnを数回変化)すれば、モータ制御装置の制御安定性・応答性を十分に確保しつつnを大きくとることができるため、第2の電圧制御手段4出力である第2の電圧波形の波形自由度を向上できるため、任意の相電流波形をBLM7に供給できる。
【0056】
上記説明では、磁極位置選択情報として1相分のゼロクロス信号(U1、U2など)に基づく記述であるが、もちろん2相〜3相にわたりどのゼロクロス信号を選択してもよく、全相においてそのゼロクロス信号を適宜選択・非選択可能である。
【0057】
PWM制御手段5をBLM7の低速〜中速回転時には第1の電圧波形を選択し、高速回転時には第2の電圧波形を選択するようにすれば、低中速時には磁極位置情報をすべて利用するので安定性が向上し、また駆動効率のよい120゜通電制御〜150゜通電制御を活用できる。高速域では、正弦波電流や台形波・円弧状電流による進角制御を利用できるので高速性能が向上する。
【0058】
さらに、PWM制御手段5において、モータ制御装置の運転可能最小回転数をfminとすれば、回転数(fmin×6/m)以下で第1の電圧波形を、それ以上で第2の電圧波形を選択するように設定すれば、単位時間当たりのゼロクロス信号取得回数を所定値以上に確保できるため、電圧波形切換後でも制御系応答速度を十分に確保でき、制御切換をスムーズに行うことができる。
【0059】
誘起電圧選択手段2において、BLM7の電気角周期に換算して電気角(磁石極数/2)周期毎に磁極位置情報を1回選択した磁極位置選択情報を出力するようにしても良い。これにより、モータ1回転当たりにつき1回誘起電圧ゼロクロス信号を検出することになるので、1回転毎に周期的・規則的な速度変動のある負荷(たとえばロータリコンプレッサ)を駆動した場合でも、定速・定常運転領域においては誘起電圧ゼロクロス信号を検出する瞬間のモータ回転速度はほぼ一定値をとるようになる。
【0060】
この場合、モータ制御装置は速度変動影響をほとんど受けず非常に安定した速度制御系を構築できるようになる。
【0061】
以上、本発明の第1の実施の形態について、3相ブラシレスDCモータを例にあげて説明したが、単相ブラシレスDCモータへの適用についてもその考え方は同一であり、また本発明の主旨・概念を逸脱しない範囲内において適宜、実施例の変更・追加・削除はもちろん可能である。
【0062】
【発明の効果】
本願発明によれば、スイッチング素子を含み前記スイッチング素子の開閉により直流電圧をPWM信号に基づき交流電圧に変換し3相ブラシレスDCモータに供給する直流交流変換手段と、前記ブラシレスDCモータの誘起電圧を検出する誘起電圧検出手段と、前記誘起電圧検出手段から電気角60°毎に出力される全ての磁極位置情報に基づいて第1の電圧波形を出力する第1の電圧制御手段と、前記第1の電圧波形を前記PWM信号に変換するPWM制御手段とを有するモータ制御装置において、前記磁極位置情報を電気角1周期に(6−n)個(mと定義、m≧1)選択して磁極位置選択情報を出力する誘起電圧選択手段と、前記磁極位置選択情報に基づいて第2の電圧波形を創出して前記PWM制御手段に出力する第2の電圧制御手段とを有し、前記第2の電圧制御手段は選択されない各々n個の時間領域では前記第2の電圧波形を出力することを特徴とするもので、これによりブラシレスDCモータの相電流波形を従来より自由自在に設定でき、モータ制御装置の特性・用途に合わせ最適な電流波形設定を実現できる。
【0063】
また、本発明によれば、上記nは、m≧1を満たす自然数である。これにより、より自由度の高い電流進角制御を選択でき、モータ制御装置のモータ特性・負荷特性・電圧特性に最適な制御性能を実現できる。
【0064】
また、本発明によれば、電気角1周期毎または1周期以上の周期でmを変化させるもので、これにより、モータ制御装置の負荷特性が急激に変化した場合にも負荷変化に追従するため、脱調することなく安定な運転を継続することができる。
【0065】
また、本発明によれば、上記誘起電圧選択手段は、1相分の磁極位置情報を選択するもので、これにより、モータ制御装置のモータ電気的特性について相間アンバランスが発生したとしても、他相の影響を受けないためモータ回転数の変動が小さく極めて安定した運転を継続できる。
【0066】
また、本発明によれば、上記選択されないn個の時間領域においては正弦波状の第2の電圧波形を出力するもので、これにより、電流波形を部分正弦波にすることができるため、高速回転時にも音・振動が少なくなり、滑らかな運転が可能である。
【0067】
また、本発明によれば、上記選択されないn個の時間領域においては台形波状もしくは円弧状の第2の電圧波形を出力するものである。これにより、モータ印加電圧が正弦波状電圧に比較して増加するので、より高速化を容易に実現でき高速性能を一層向上できる。
【0068】
また、本発明によれば、上記PWM制御手段は、上記ブラシレスDCモータの低速〜中速回転時には上記第1の電圧波形を選択し、高速回転時には第2の電圧波形を選択するものである。これにより、低中速時には安定性・駆動効率のよい120゜通電制御〜150゜通電制御を選択できるので、モータ制御装置の低入力・低コスト・低発熱を両立できる。
【0069】
また、本発明によれば、上記PWM制御手段は、モータ制御装置の運転可能最小回転数をfminとすれば、回転数(fmin×6/m)以上で第2の電圧波形を選択するものである。これにより、本発明の波形切換後でも制御系応答速度を十分確保でき、制御切換をスムーズに行うことができるため、脱調・乱調・異常振動・異常音のない動作信頼性の非常に高いモータ制御装置を提供できる。
【0070】
また、本発明によれば、上記第2の電圧制御手段は前記磁極位置選択情報の各々m個の時間領域における電圧位相よりも選択されない各々n個の時間領域の電圧位相を所定値進角させた第2の電圧波形を出力するものである。これにより、ブラシレスDCモータの相電流波形を従来より大きく進角させることができ、従来以上の高速回転を実現できる。
【0071】
また、本発明によれば、上記誘起電圧選択手段は、上記3相ブラシレスDCモータの電気角周期に換算して電気角(磁石極数/2)周期毎に磁極位置情報を1回選択するものである。これにより、モータ1回転当たりにつき1回誘起電圧ゼロクロス信号を検出するので、1回転毎に周期的・規則的な速度変動のある負荷(たとえばロータリコンプレッサ)を駆動した場合でも、定速・定常運転領域においては誘起電圧ゼロクロス信号を検出する瞬間のモータ回転速度はほぼ一定値をとるため、速度変動の影響をほとんど受けず非常に安定した速度制御系を構築できる。このため、高速運転領域において進角制御値をさらに大きく設定でき、高速制御性能を飛躍的に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態におけるモータ制御装置の制御ブロック図
【図2】 本発明の実施形態における相電流波形と誘起電圧波形との関係図
【図3】 誘起電圧検出手段の動作説明図
【図4】 3相ブラシレスDCモータの界磁誘起電圧波形関係図
【図5】 従来のモータ制御装置の制御ブロック図
【図6】 従来の相電流波形と誘起電圧波形との関係図
【図7】 3相ブラシレスDCモータの等価回路図
【符号の説明】
1 誘起電圧検出手段
2 誘起電圧選択手段
3 第1の電圧制御手段
4 第2の電圧制御手段
5 PWM制御手段
6 直流交流変換手段
7 ブラシレスDCモータ(BLM)
8 直流電圧
9 相電流
10 誘起電圧
11 正ゼロクロス信号
12 逆ゼロクロス信号
20 相電流
21 相電流
22 相電流
23 相電流
Claims (10)
- スイッチング素子を含み前記スイッチング素子の開閉により直流電圧をPWM信号に基づき交流電圧に変換し3相ブラシレスDCモータに供給する直流交流変換手段と、前記ブラシレスDCモータの誘起電圧を検出する誘起電圧検出手段と、前記誘起電圧検出手段から電気角60°毎に出力される全ての磁極位置情報に基づいて第1の電圧波形を出力する第1の電圧制御手段と、前記第1の電圧波形を前記PWM信号に変換するPWM制御手段とを有するモータ制御装置において、前記磁極位置情報を電気角1周期に(6−n)個(mと定義、m≧1)選択して磁極位置選択情報を出力する誘起電圧選択手段と、前記磁極位置選択情報に基づいて第2の電圧波形を創出して前記PWM制御手段に出力する第2の電圧制御手段とを有し、前記第2の電圧制御手段は選択されない各々n個の時間領域では前記第2の電圧波形を出力することを特徴とするモータ制御装置。
- nは、m≧1を満たす自然数であることを特徴とする請求項1記載のモータ制御装置。
- 電気角1周期毎または1周期以上の周期でmを変化させることを特徴とする請求項1〜2記載のモータ制御装置。
- 誘起電圧選択手段は、1相分の磁極位置情報を選択することを特徴とする請求項1〜3記載のモータ制御装置。
- 選択されないn個の時間領域においては正弦波状の第2の電圧波形を出力することを特徴とする請求項1〜4記載のモータ制御装置。
- 選択されないn個の時間領域においては台形波状もしくは円弧状の第2の電圧波形を出力することを特徴とする請求項1〜4記載のモータ制御装置。
- PWM制御手段は、ブラシレスDCモータの低速〜中速回転時には第1の電圧波形を選択し、高速回転時には第2の電圧波形を選択することを特徴とする請求項1〜6記載のモータ制御装置。
- PWM制御手段は、モータ制御装置の運転可能最小回転数をfminとすれば、回転数(fmin×6/m)以上で第2の電圧波形を選択することを特徴とする請求項7記載のモータ制御装置。
- 第2の電圧制御手段は前記磁極位置選択情報の各々m個の時間領域における電圧位相よりも選択されない各々n個の時間領域の電圧位相を所定値進角させた第2の電圧波形を出力することを特徴とする請求項1〜8記載のモータ制御装置。
- 誘起電圧選択手段は、3相ブラシレスDCモータの電気角周期に換算して電気角(磁石極数/2)周期毎に磁極位置情報を1回選択することを特徴とする請求項4記載のモータ制御装置。
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