JP4280814B2 - 肝がん診断マーカー、肝がんの検出方法、肝がんの診断方法、肝がん分析用定量キット、肝がん細胞スクリーニングキット、肝がん分析方法 - Google Patents

肝がん診断マーカー、肝がんの検出方法、肝がんの診断方法、肝がん分析用定量キット、肝がん細胞スクリーニングキット、肝がん分析方法 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、がん細胞に特異的に過剰発現するタンパク質及び該タンパク質をコードする遺伝子に関する。更に、これらを用いたがんの処置方法、検出方法、予後診断方法等の用途に関する。
【0002】
【従来の技術】
がんは遺伝子が変異することにより発症する病気である。遺伝子が変異することにより、がん化した細胞は正常細胞とは異なった性質を獲得し、無制限に増殖を繰り返し、転移腫瘍を形成するようになってしまう。
【0003】
従来このような性質を有するがんに対する診断・治療方法として切除、放射線、抗がん剤あるいは免疫療法等が行われてきたが、最近では遺伝子診断・治療等の遺伝子工学的手法を用いて遺伝子・タンパク質レベルでがんの作用機序を解明し、より精度良いがんの診断・治療をしようと様々な研究がなされている。
【0004】
例えば、がん化した細胞は特有のタンパク質を発現することが多い。このため、がん化した細胞に特異的に発現するタンパク質及びその遺伝子をマーカーとして、血液検査や免疫学的な検査等から腫瘍組織の存在の有無を検査することが可能である。
【0005】
このような検査に用いられているマーカーとしては、CEA、SCC、AFP、CA19−9などが、種々同定され、がんのスクリーニングに利用されている。
【0006】
ところで、がんの中でも肝臓がんは死亡率の高いがんの一つであり、依然増加傾向にある。肝臓がんは多くの場合、肝炎ウィルスに感染することにより慢性肝炎及び肝硬変となった肝臓において発生している。このような肝臓がんの発生を減少し、進行を抑制するためには、抗ウィルス治療及び抗腫瘍治療のみならず肝がんの発生及び進展の分子機構の解明も重要である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、肝臓がんにおいては現在までに様々な遺伝子の変異が報告されているが、肝臓がんの発がん及びがんの進行に関する分子機構の詳細を解明するまでには至らず、根本的な治療法は未だ確立されていない。
【0008】
本発明は上記事情を鑑みてなされたものであり、肝臓がんを始めとする様々ながんの発がん及びがんの進行に関与するタンパク質及びそれをコードする遺伝子、更にそれらのがんへの用途を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は以下の手段を提供することを目的とする。
【0010】
(1)配列番号2のアミノ酸配列又は配列番号2のアミノ酸配列のうち1又は数個のアミノ酸が付加、欠失若しくは置換されているアミノ酸配列を含み、かつがん細胞で過剰発現を示すタンパク質、(2)β−カテニン変異により過剰発現が誘導されることを特徴とする(1)に記載のタンパク質、(3)Gタンパク質共役型受容体であり、C末端にSH2及びSH3ドメインを有することを特徴とする(1)に記載のタンパク質、(4)Wntシグナル伝達系の活性化により転写が亢進されることを特徴とする(1)に記載のタンパク質、(5)配列番号1の塩基配列又は配列番号1の塩基配列のうち1又は数個の塩基が付加、欠失若しくは置換されている塩基配列からなり、配列番号2のアミノ酸配列又は配列番号2のアミノ酸配列のうち1又は数個のアミノ酸が付加、欠失若しくは置換されているアミノ酸配列を含み、かつがん細胞に対して過剰発現を示すタンパク質をコードする遺伝子、(6)配列番号2のアミノ酸配列又は配列番号2のアミノ酸配列のうち1又は数個のアミノ酸が付加、欠失若しくは置換されているアミノ酸配列を含み、かつがん細胞に対して過剰発現を示すタンパク質を具備することを特徴とするがん診断マーカー、(7)被検体内から採取した組織を用いたがんの検出方法であって、配列番号2のアミノ酸配列又は配列番号2のアミノ酸配列のうち1又は数個のアミノ酸が付加、欠失若しくは置換されているアミノ酸配列を含み、かつがん細胞に対して過剰発現を示すタンパク質を具備する診断マーカーによりがんの検出を行うことを特徴とするがんの検出方法、(8)被検体内から採取された細胞・組織を用いるがんの診断方法であって、前記細胞・組織中に配列番号2のアミノ酸配列若しくは配列番号2のアミノ酸配列のうち1又は数個のアミノ酸が付加、欠失若しくは置換されているアミノ酸配列を含み、かつがん細胞に対して過剰発現を示すタンパク質をスクリーニングし、該タンパク質の発現の有無に基づき診断することを特徴とするがんの診断方法、(9)被検体のがん細胞組織に発現した配列番号2のアミノ酸配列又は配列番号2のアミノ酸配列のうち1又は数個のアミノ酸が付加、欠失若しくは置換されているアミノ酸配列を含み、かつがん細胞に対して過剰発現を示すタンパク質を標的として、該タンパク質に特異的に結合する化合物を用いることを特徴とするがんの処置方法、(10)がん処置後の予後診断方法であって、被検体内からがん処置部の組織を取り出し、分子中に配列番号2のアミノ酸配列若しくは配列番号2の1又は数個のアミノ酸が付加、欠失若しくは置換されたアミノ酸配列を含み、かつがん細胞に対して過剰発現を示すタンパク質をスクリーニングし、該タンパク質の発現の有無に基づいて診断することを特徴とするがんの予後診断方法、(11)がんの処置方法であって、配列番号1の塩基配列又はその相補的配列並びにそれらの配列の一部若しくは全部からなる遺伝子を含む複数の遺伝子及びその遺伝子産物を直接若しくは間接的な標的として、該遺伝子又は該遺伝子産物に特異的に結合する抑制化合物を投与することを特徴とするがんの処置方法、(12)配列番号3から配列番号8の塩基配列の少なくとも2つからなり、配列番号1の塩基配列又は配列番号1の塩基配列のうち1又は数個の塩基が付加、欠失若しくは置換されている塩基配列及びその相補的配列を含み、かつがん細胞に対して過剰発現を示す遺伝子並びにタンパク質の合成、増幅及び検出に用いられるポリヌクレオチド、(13)配列番号3から配列番号8のポリヌクレオチド全部又は一部を具備し、配列番号2のアミノ酸配列又は配列番号2のアミノ酸配列のうち1又は数個のアミノ酸が付加、欠失若しくは置換されているアミノ酸配列を含み、かつがん細胞で過剰発現を示すタンパク質を定量することを特徴とするタンパク質の定量キット、(14)配列番号1の塩基配列又はその相補的配列並びにそれらの配列の一部若しくは全部からなる遺伝子を含む複数の遺伝子断片を具備することを特徴とするがん細胞スクリーニングキット。
【0011】
本発明者らは、(肝臓)がんの発生と進行について研究するために、様々ながん患者の組織を採取・分析したところ、がん細胞において高頻度に過剰発現する遺伝子を見いだした。このようながん細胞では、ほとんど全例でβ−カテニンの変異が生じていた。次いでこのcDNAを単離してクローニングし、その配列を解析した。
【0012】
得られた塩基配列をBLASTを用いてホモロジーサーチを行ったところ、アクセッションナンバーNM_003667の遺伝子配列と100%の相同性を有する部位があることが判明した。また、Unigene Databaseに登録されているGpr49であることも判明した。
【0013】
しかしながら、該タンパク質とがんとの関連性を見出したという見解はいまだかつてなく、本発明者らががんにおける発現と相関性を見出したことにより初めて本発明を完成するに至ったものである。
【0014】
近年、β−カテニンが、カドヘリンによる細胞接着及びWntシグナル伝達系異常に深く関与することが多くの研究から明らかになっている。細胞接着はがん細胞の転移に、Wntシグナル伝達系は細胞増殖に関わる機能である。このβ−カテニンが変異を起こすことによりこれらの機能が低下若しくは異常となり、細胞ががん化する原因の一つと考えられている。
【0015】
以上のことから、本発明のタンパク質を、例えばがん特異的なマーカーとしてがん診断や処置に用いることにより、現在以上に精度の良い診断、処置若しくは予測を行うことが可能となる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0017】
まず、本発明のタンパク質について説明する。
【0018】
本発明のタンパク質は、配列番号2のアミノ酸配列又は配列番号2のアミノ酸配列のうち1又は数個のアミノ酸が付加、欠失若しくは置換されているアミノ酸配列を含み、かつがん細胞に対して過剰発現を示すタンパク質である。
【0019】
また、本発明のタンパク質は、がん細胞でβ−カテニンが変異を起こすことにより過剰発現が誘導されることを特徴とする。
【0020】
また、本発明のタンパク質はGタンパク質共役型受容体であり、C末端にSH2及びSH3ドメインを有することを特徴とする。
【0021】
本発明のタンパク質はGタンパク共役型7回膜貫通レセプターであり、甲状腺刺激ホルモンレセプター(TSHR)、ろ胞刺激ホルモンレセプター(FSHR)及び黄体形成ホルモンレセプター(LHR)等が含まれる糖タンパクホルモンレセプターサブファミリーに属している。
【0022】
SH2、SH3ドメインはどちらもシグナル伝達に関与する機能ドメインである。SH2はリン酸化チロシンを認識し、SH3はプロリンリッチ配列を認識する。すなわち、本発明のタンパク質は、増殖、分化等様々な機能に関する複数のシグナル伝達に作用すると考えられる。
【0023】
また、本発明はβ−カテニンの変異によりWntシグナル伝達系が活性化され、それにより転写が亢進されることを特徴とする。Wntシグナル伝達系は細胞の増殖に関わる伝達系であり、該系が異常を起こすことにより細胞ががん化することが知られているが、この伝達系の中で、β−カテニンが重要な働きを担っていることが示されている。β−カテニンが変異を起こすことによりWntシグナル伝達系が活性化されたのと同様の状況となり、本発明のタンパク質をはじめとする下流の遺伝子の転写が亢進すると考えられる。
【0024】
このことから、本発明のタンパク質はWntシグナル伝達系の異変及びβ−カテニン変異を検知するためのマーカーとして有用であるといえる。
【0025】
本発明のタンパク質は、従来公知の方法によりヒト臓器や細胞株等から単離、クローニングして用いることができる。
【0026】
また、ペプチドとして用いる場合には、本発明の配列番号2のアミノ酸配列に従って、化学的に合成することも可能である。
【0027】
本発明のタンパク質は、従来公知の組換えDNA技術を用いて、後述する本発明に係る遺伝子を適当なベクターに組み込み、該ベクターを適当な形質転換体に導入することにより、形質転換体にタンパク質を産生させることも可能である。
【0028】
更に、本発明のタンパク質はがんに強発現するという特性を有するため、後述するようにがんの診断、処置に有効に用いることができる。
【0029】
本発明の遺伝子は本発明のタンパク質をコードする遺伝子であって、配列番号1の塩基配列又は配列番号1の塩基配列のうち1又は数個の塩基が付加、欠失若しくは置換されている塩基配列及びその相補的配列からなり、該配列は本発明のタンパク質の塩基配列cDNA全長を示す。同じく本発明のタンパク質の塩基配列(配列番号1の塩基配列)を示す図1〜図7において、小文字部分はアクセッションナンバーAF0620006と同一配列部分、大文字は本発明者らが同定した配列部分を表す。
【0030】
本発明の遺伝子は、例えば本発明に係るcDNAまたはその一部配列をプローブとして既存のゲノムライブラリーから単離することができる
本発明に係る遺伝子は、例えばその塩基配列に基づいて合成したオリゴヌクレオチドプローブを用いて、ヒト細胞から作成したヒトcDNAライブラリをスクリーニングすることにより、得ることができる。あるいはこのオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCR法を用いて合成することも可能である。
【0031】
一般に遺伝子は個体差による多型が認められるので、1または複数個の塩基の付加、欠失または置換されているものも当然この発明に含まれる。そして、これらの変更によって生じる1又は複数個のアミノ酸の付加、欠失又は置換されているアミノ酸からなるタンパク質も、配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質の活性を有する限り、本発明に含まれるものである。
【0032】
また、本発明の遺伝子又はそれらと相補的な配列の全て又は一部断片は、がんの遺伝子診断用プローブとして用いることができる。更にこれら断片を複数含むキットを作成し、がんの検出、診断に用いることもできる。
【0033】
例えば、配列番号3〜8の塩基配列は本発明のタンパク質のプライマーとして用いることができる。これらのうち配列番号3及び4はフォワードプライマーとして、配列番号5及び6はリバースプライマーとしてPCR法に用いて本発明のタンパク質の定量を行うことができる。また配列番号7及び8は本発明に係るマウスホモログのプライマーとして該ホモログにおける本発明のタンパク質の定量を行うことができる。
【0034】
次に本発明のタンパク質及び遺伝子の用途を説明する。
【0035】
本発明のがん診断マーカーは配列番号2のアミノ酸配列又は配列番号2のアミノ酸配列のうち1又は数個のアミノ酸が付加、欠失若しくは置換されているアミノ酸配列を含み、かつがん細胞に対して過剰発現を示すタンパク質を具備している。上述したように、このマーカーをプローブとして用いて遺伝子診断を行うだけでなく、診断対象となる組織から、従来公知の方法を用いてタンパク質を分離して、スクリーニングにより本発明のタンパク質の発現の有無を測定し、その発現レベルからがんを検出、診断することも可能である。
【0036】
例えば本発明のタンパク質はがん細胞特有に細胞膜上に過剰発現するので、該タンパク質を標的として、これに特異的に結合する化合物を用いて治療を行うことが可能であり、これによりがん細胞に対して効率よく治療を行うことが可能となる。
【0037】
ここで言う、本発明のタンパク質に特異的に結合する化合物としては、該タンパク質の抗体、アンタゴニスト、アゴニストがあげられる。
【0038】
本発明に係る抗体は、従来公知の方法により作製されたハイブリドーマを用いて、本発明のタンパク質を抗原とするモノクローナル抗体として得ることができる。
【0039】
また、本発明に係るアンタゴニスト並びにアゴニストは、DNA、タンパクまたは非タンパク質であっても良い。
【0040】
また、ミサイル療法だけでなく、本発明のタンパク質を直接の標的として、本発明の遺伝子の一部を置換、付加若しくは欠失させることにより改変し、該タンパク質の機能を阻害することによりがん治療を行うことも可能である。
【0041】
また、本発明のタンパク質をスクリーニングし、該タンパク質の発現の有無に基づいて診断することにより、がんの検出、診断のみならず、手術によりがん組織を除去した後の再発診断(予後診断)を行うことができる。
【0042】
また、がん細胞の診断では、本発明の遺伝子を含む複数の遺伝子断片を具備したスクリーニングキットを用いて検査組織内の遺伝子をスクリーニングすることにより診断を行うことも可能である。
【0043】
このように、本発明のタンパク質、遺伝子並びにこれらを用いたがん治療への用途によれば、より精度の高いがん治療を行うことが可能となる。
【0044】
【実施例】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものでないことは言うまでもない。
【0045】
<材料調整>
1998年7月から1999年6月までに国立がんセンター病院で切除手術を行った患者(平均年齢62.6歳、20〜76歳)から、38例の肝細胞がん(HCC)及びそれらに対応する非がん肝臓組織を採取し、分析に用いた。
【0046】
正常肝臓は肝臓に転移が見られた大腸がん患者から採取した。組織はすぐに凍結保存処理を行い使用するまで保存した。
【0047】
HCC、非がん組織及び正常肝臓組織の判定は組織学的に行った。臨床病理的特徴は図16の表に示す通りである。組織病理学的グレードとHCCの肉眼型によるタイプ分類は、肝がん取り扱い規約(第三版)に基づいて分類した。血管への浸潤は門脈内への腫瘍の浸潤と肝臓内転移の両方を含めて定義された。多中心性HCCの場合には、最大結節を以下の分析に用いた。ヒトHCC細胞株PLC/PRF/5及びHepG2はATCCから入手した。KYN−1,KYN−2及びKIM−1は久留米大学の神代正道氏により提供されたものを用いた。その他HCC細胞株Li7,Li21,Li24,tPH5T及びそれに対応する非腫瘍性肝細胞株tPH5CH、及びマウス肝細胞MHTは本発明者らにより樹立された。tPH5T,tPH5CH及びMHTはSV40ラージT抗原により不死化された。
【0048】
上記のようにして全ての細胞株は、10%ウシ胎児血清、100U/mlペニシリン及び100μg/mlストレプトマイシンを添加したRPMI−1640培地で培養した。
【0049】
<RNA調整>
Acid Guanidinium thiocyanate‐phenol‐chloroform法(AGPC法)を用いてトータルRNAを調整した。
【0050】
上述した38例の組織切片それぞれ0.1〜0.2gに、4Mグアニジンチオシアネート、25mMクエン酸ナトリウム(pH7.0)、0.5%N−ラウロイルサルコシンナトリウム及び0.1M 2‐メルカプトエタノールの混合液0.5mlを加え、ホモジナイザーで均一にし、このホモジネートを1.5mlのエッペンドルフチューブに移した。
【0051】
これに、1)2M酢酸ナトリウム(pH4.0)50μl、2)フェノール0.5ml、3)クロロホルム/イソアミルアルコール(49/1)100μlを順次加え、そのたびに2〜3回混合し、最後に10秒間激しく混ぜた後15分間氷冷した。
【0052】
次いで、10000×gで20分間遠心後、水層を別のチューブに移した。水層にイソプロパノール0.5mlを加え、−20℃で1時間以上置いた。
【0053】
次いで遠心によりRNAを沈殿させた。更に沈殿物を80%エタノールで洗い、乾燥後、オートクレーブをかけた蒸留水に溶解し、トータルRNAを得た。
【0054】
<mRNA differential display PCR(mRNA DD−PCR)>
このようにして得られたトータルRNAに、複数のサンプル間で遺伝子発現の違いを網羅的に解析する方法の一つであるmRNA DD−PCR法を行った。
【0055】
0.5mlチューブにRNA2.5μg、アンカープライマー50pmolを加え、DEPC処理水で全量を10μlにして、70℃に加温したサーマルサイクラーで10分間程度加温する。加温後チューブを急冷して軽く遠心した。チューブに2×RTミックス(DEPC処理水2×Nμl、10×PCRバッファー2×Nμl、25mM MgCl2 2×Nμl、0.1M DTT 2×Nμl、10mM dNTP 1×Nμl、Super Script II 1×Nμl)を10μl加えて混合した。25℃に冷却したサーマルサイクラーにチューブをセットし、25℃で10分、42℃で50分、70℃で15分反応させた。その後、チューブを軽く遠心し、TE80μlを加えてよく混合してcDNA溶液とした。
【0056】
このようにして得られたcDNA溶液2.0×Nμl、dHO13.0×Nμl、10×GeneTaqバッファー2.0×Nμl、2.5mMdNTP1.6×Nμl、アンカープライマー0.2×Nμlを混合したPCRミックスを調整した。
【0057】
各ウェル又はチューブに任意プライマーを1μlずつ分注した。PCRミックスにそれぞれ0.1×NμlのGeneTaqと通常のTaqポリメラーゼを加えて混合した。その後、各ウェル(チューブ)に19.0μlずつPCRミックスを加えていった。プレートをサーマルサイクラーにセットして、以下の通りに反応させた。
(94℃×3分+40℃×5分+72℃×5分)×1サイクル
(95℃×15秒+40℃×2分+72℃×1分)×20〜25サイクル
72℃×5分
上記のようにして得られた反応産物5μlをポリアクリルアミド電気泳動にかけ、得られたバンドから、興味ある発現量の差を示すバンドを切りだした。
【0058】
このようにして得られたゲル片の半分を0.5mlチューブに移し、50〜100μlの系で、以下の条件でPCRを行い、バンドを再増幅した。
94℃×3分×1サイクル
(95℃×15秒+40℃×2分+72℃×1分)×1〜20サイクル
72℃×5分
上記PCR反応物5μl程度をHA−Yellow(Takara)含有アガロースゲルで電気泳動し、目的とするバンドを切り出し、更に、同様のPCR条件で再増幅後、HA−Red(Takara)含有アガロースゲルで電気泳動し、クローニングを行った。
【0059】
<ノザンブロット解析>
上述の通り調整した各例のトータルRNA15μgを用い、1.0%アガロースホルムアルデヒド変性ゲル電気泳動を行った。その後、キャピラリーブロッティング法によりHybond−N+膜(アマシャム)へ転写、固定した。膜へ固定後、プレハイブリダイゼーションを行い、Gpr49のDNAプローブとグリセルアルデヒドリン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)とをハイブリダイゼーションした。ハイブリダイゼーション後に、膜を0.1×SSC/0.1%SDS溶液を用いて65℃、30分間、2回洗浄した。その後、−80℃でオートラジオグラフィーを行い、デンシトメーターで反応の定量を行った。
【0060】
以上の通りにして得られたクローンの中からクローン141を得た。その結果を図9に示す。図9はクローン141及びGAPDHcDNA(コントロール)のノザンブロットである。また、図10はクローン141のmRNAの発現レベルをリアルタイムRT−PCRで定量し、GAPDHで標準化したグラフである。縦軸は本発明のタンパク質のGAPDHに対する発現比を示し、横軸は各細胞株1:PLC/PRF/5、2:KYN−2、3:Li7、4:KIM−1、5:HepG2、6:Li21、7:Li24、8:tPH5TH、9:tPH5CH、10:KYN−1を示す。
【0061】
<Gpr49のクローニング>
上述のようにして得られたクローン141の解析だけではBLASTからも充分な情報を得られないため、更にcDNAライブラリを用いてスクリーニング・クローニングを行った。
【0062】
・cDNAライブラリ作製
PLC/PRF/5細胞株由来mRNAをエタノール沈殿する。該沈殿物を70%エタノールで洗浄した後、15μlの5mM Tris−HCl(pH7.5)に溶解する。次いで65℃、5分間保温した後、37℃に移す。その後、以下の組成の溶液を加える。
10×逆転写酵素緩衝液 3.0μl
2mM dATP,dGTP,dTTP 3.0μl
20mM[α−32P]dCTP 3.0μl
1.2μg/μlベクタープライマー 3.0μl
15ユニット/μl RTase 3.0μl
O 2.3μl
この溶液を加えた後、37℃、30分間保温する。その後TCA沈殿を確認後、残りの溶液に以下の組成の液を加え攪拌する。
0.25M EDTA 3.0μl
10%SDS 1.5μl
次いで、35μlフェノール/クロロホルムを加え、良く攪拌した後1分間遠心する。その上清に35μlフェノール/クロロホルムを加え、良く攪拌した後1分間遠心する。上清に35μlの4M酢酸アンモニウム及び140μlエタノールを加え、ドライアイス・エタノール混合液あるいはドライアイス上に15分間放置する。次いで、チューブを室温に1〜2分間放置し、その間沈殿したヌクレオチドの濁りが消えたら、軽く攪拌し、15分間遠心する。次いでエタノールを取り除いた後、沈殿物に35μlのTEを加え、攪拌した後35μlの4M酢酸アンモニウムと140μlのエタノールを加え、エタノール沈殿を行う。エタノールを除いた後再びエタノール沈殿を行う。このようにして得られた沈殿物を70%エタノールで洗浄する。
【0063】
上記沈殿物に以下の組成の溶液を加え、攪拌した後37℃で5分間保温する。
O 12μl
10×TdT緩衝液 2μl
0.15μg/μlポリA 2μl
1mM DTT 2μl
2mM [α−32P]dCTP 0.6μl
次いで10%CTAに浸したミリポアフィルター(0.45μm TypeHA)上に、上述の通り作製したサンプル0.5μlを抜き取ってスポットし、素早く吸引する。これを3mlの1N HCl、0.1mMピロリン酸ナトリウム液で2回洗浄する。30ユニットのTdTを加え、37℃、5分間保温した後氷上に放置する。TCA沈殿のチェックを行った後、以下の溶液を加えて攪拌する。
0.25M EDTA 2μl
10%SDS 1μl
次いで20μlのフェノール/クロロホルムを加え、攪拌後遠心する。この上清に20μlの4M酢酸アンモニウムと80μlのエタノールを加え、上述のエタノール沈殿と同様の処理を行い、沈殿物を70%エタノールで洗浄する。
【0064】
上述のようにして得られた沈殿物に25μlの水と3μlのHindIII緩衝液を加えて攪拌する。次いで14ユニットのHindIIIを加え、37℃、1時間保温する。その後サンプルを1μl抜き取り、1%アガロースゲル電気泳動を行いHindIII切断のチェックを行う。
【0065】
残りのサンプルに、3.0μlの0.25M EDTA、1.5μlの10%SDSを加えた後、35μlのフェノール/クロロホルムを加え攪拌、遠心する。遠心により生じた上清に再度フェノール/クロロホルムを加え、攪拌、遠心して上清を取る。この上清に35μlの4M酢酸アンモニウムと140μlのエタノールを加えてエタノール沈殿を行う。更に上清に35μlのTEを加えて溶解し、再度エタノール沈殿を行う。生じた沈殿物を70%エタノールで洗浄し、該沈殿物を10μlのTEに良く溶かした後、10μlのエタノールを加えて−20℃で保存する。
【0066】
上記のようにして得られたサンプル1.0μlに、0.15pmol/μl dG−linkerを0.5μl(0.08pmol)、5×ハイブリダイゼーション緩衝液2,0μl、HO6.5μlを加え、攪拌する。その後65℃で5分間保温する。次いでサンプルを入れたチューブを43℃のインキュベータに移し、30分間保温する。更に18.0μlの5×リガーゼ緩衝液、HO70.7μl、10mM βNAD1.0μlを加え、氷上で10分間冷却する。0.6μgの大腸菌DNAリガーゼ(TAKARA)を加え、緩やかに攪拌してから12℃でオーバーナイトで反応させる。次に以下の溶液、酵素を加える。
2mM dATP,dGTP,dCTP,dTTP 2.0μl
10mM βNAD 0.5μl
E.coliDNAリガーゼ 0.6μl(TAKARA60ユニット/μl)
E.coliDNAポリメラーゼ 0.5μl(TAKARA6ユニット/μl)
RNaseH 0.2μl(TAKARA60ユニット/μl)
その後緩やかに攪拌し、12℃で1時間反応させ、チューブを室温(約22℃)に移し、1時間反応させる。次いで0.5μlを抜き取り、50μlのTEで薄め、大腸菌(DH5)コンピテントセルにトランスフェクトさせ、cDNAライブラリのサイズを測定する。
コンピテントセルを氷水中に置いた15mlのプラスチックチューブに200μlずつ分注する。上記サンプルを分注したコンピテントセルに対して3〜5μlずつ分注し、氷上に30分間放置する。42℃で30秒間保温した後、氷水中に1〜2分間置く。更に各チューブに0.8mlのSOCを加え、1時間37℃で振盪する。次いで1lのLB(50μg/mlのアンピシリン入り)に上記サンプルを全て加える。攪拌後、100、30、10、2μl抜き取り、47℃に保温してあったトップアガーを3mlずつ加えてLプレート(アンピシリン入り)に撒く。残りは37℃で一晩振盪培養する。Lプレートも37℃で一晩培養する。振盪培養したLBを93mlとり、7mlのDMSOと混合する。
【0067】
・スクリーニング
上記のようにして得られたcDNAライブラリを用いて、常法によりスクリーニングを行った。常法によりレプリカフィルターを作成し、プレハイブリダイゼーションに続いてハイブリダイゼーションを行った後、陽性反応を示すクローンを選択し、単離した。
【0068】
・プレーティング
0.5mlのプレーティングバクテリアと2〜3×10pfuのファージを入れて混合し、更に0.7%トップアガロースを7ml加えた後、150mmLBプレートへ撒き、全体に広げる。アガロースが固まったら、プレートを逆さにして37℃のインキュベータで、プラークがconfluentになる直前までインキュベートする。その後、プレートを4℃に1時間以上置いて冷却する。
【0069】
次いで上記プレートにニトロセルロース膜を載せ、プラークを転写する。
【0070】
転写した膜を0.2M NaOH/1.5M NaClがしみ込んだ濾紙上に載せアルカリ処理を行い、その後0.4M Tris−HCl(pH7.6)/2×SSCのしみ込んだ濾紙上にのせ、中性に戻す。膜を乾燥させた後、80℃で1.5〜2時間又は42℃で一晩加熱し、DNAをフィルターに固定する。
【0071】
このようにして得られたレプリカフィルターを用いて、従来公知の方法によりプレハイブリダイゼーション、ハイブリダイゼーションを行う。これにより陽性反応を示したプラークを採取し、クロロホルムの入った懸濁培地に入れ、100mmプレート当り500プラーク以下程度の密度になるように、3〜6枚プレーティングする。
【0072】
上述のプレーティング方法と同様にしてレプリカフィルター作製、プレハイブリダイゼーション、ハイブリダイゼーションを行い、陽性反応を示したプラークを再び選出する。再び同様の手順を繰り返して陽性反応を示したプラークのみを選出し、単一クローンのみとなるまで上記手順を繰り返し、所望のクローンを選出した。
【0073】
このようにして2324−bpのクローンを得、その配列をBLASTで解析した。該クローンの5´末端側の846−bp配列がBLASTのアクセッションナンバーNM_003667のオーファンGタンパク共役型レセプターと100%の相同性を有し、また、ユニジーンデータベースにGpr49として登録されている遺伝子であることが分かった。
【0074】
上記のようにして得られた本発明のタンパク質(Gpr49)の塩基配列を図1〜図7に示す。小文字部分はNM_003667と相同性100%を有する部分を、大文字は本実験で発明者らが同定した部分を示す。
<リアルタイム定量RT−PCR>
次にSYBRグリーンPCRコア試薬キット(Perkin−Elmer Applied Biosystems)を用い、従来の方法に従いRT−PCRによる本発明のタンパク質のRNAの発現解析を行った。
【0075】
各組織サンプルと細胞株のcDNAを、オリゴdtプライマーとAMV逆転写酵素XL(TaKaRa)を用いて従来通りにDNアーゼ処理したトータルRNAから調整した。プライマー発現ソフト(Perkin−Elmer)を用いて、以下のGpr49用プライマーを作成した。
GSP1(フォワード):5´−CTCGTGGCCCCCTACTTC−3´
GSP2(フォワード):5´−gaggatctggtgagcctgagaa−3´
GSP3(リバース):5´−cataagtgatgctggagctggtaa―3´
GSP4(リバース):5´−TCATGGTCCTTAATGTTACTGAACC‐3´
また、GPR49のマウスホモログであるFEX用のプライマーとして、以下のプライマーを作成した。
GSP5(フォワード):5´−GAGTCAACCCAAGCCTTAGTATCC‐3´
GSP6(リバース)5´−CATGGGACAAATGCAACTGAAG‐3´
上述のようにして得られたプライマーの中から、GSP2、3、5及び6をリアルタイム定量RT−PCRに用いた。
また、RNA量の標準化のため、コントロールとしてGAPDHの発現を定量した。
【0076】
また、無対tテストにより、HCC及び対照となる非がん肝臓組織における本発明のタンパク質の発現レベルの差異を分析した。また、χ2検定及びフィッシャーの直接確立検定を用いてGpr49発現と臨床病理学的パラメーターとの関連を、StatView(Ver.5.0)(Abacus Concepts, Berkeley, CA, USA)を用いて分析した。P値が0.05以下を有意と判定した。
【0077】
これらの結果を図11に示す。図11は各サンプルにおける本発明のタンパク質のRNAの発現量を示すグラフである。グラフの左側が肝細胞における本発明のタンパク質のRNAの発現量を示し、右側が非がん肝臓組織若しくは正常肝臓組織で発現する量を示す。このグラフからも分かるように、本発明のタンパク質のRNAは多くのがん組織で発現しているが、正常組織ではほとんど発現しなかった。
【0078】
さらに、HCCにおける本発明のタンパク質のRNAの過剰発現について検討するため、腫瘍と非がん肝臓における発現レベル比(T/N比)を計算した。T/N比が3を超えた場合に過剰発現と判定した。この結果を図12の表及び図16の表に示す。図に示すように、がん化組織ではT/N>3となる例が38例中18例(47%)に達し、これらは全て過剰発現と分類した。
【0079】
<β−カテニンとの相関関係>
・PCR及びβ−カテニン配列解析
本発明のタンパク質のRNAが非常に過剰発現しているPRF/PLC/5及びHepG2では、β−カテニンが細胞質及び核に蓄積していることが示されたため、β−カテニンの変異と関係している可能性があると考えられた。そこで、本発明のタンパク質とβ−カテニンの変異との相関関係を調べるため、以下の実験を行った。
【0080】
グリコーゲンシンターゼキナーゼ−3β(GSK‐3β)のリン酸化に関与すると考えられる4つの部位を含んでいるβ−カテニンのエキソン3を、上記調整例で得た各サンプルのcDNAを用いてPCRで増幅した。
【0081】
PCRには、β−カテニンのエキソン2フォワードプライマー(5´−CCAGCGTGGACAATGGCTA‐3´)及びβ−カテニンエキソン4リバースプライマー(5´−TGAGCTCGAGTCATTGCATAC‐3´)を用いた。
【0082】
PCR産物を2%アガロースゲル電気泳動により確認後、両方向から、PCRで用いたプライマーを用いてシーケンス解析を行った。
・β−カテニン変異株の作成及びレトロウイルス感染
コード領域全てを含む野生型β−カテニンcDNAをPCRで増幅し、pBluescript(Stratagene)にサブクローンした。GSK−3βリン酸化サイトに相当するThr−41及びSer−45がアラニンに変化しているβ−カテニン変異株をQuickChange Site−DirectedMutagenesis Kit(Stratagene)を用いて作成した。引き続き、野生型β−カテニン及びβ−カテニン変異株をレトロウイルス発現ベクターpLNCX2(Clontech)にサブクローンした組換えレトロウイルスを、上記野生型及び変異型β−カテニンを組み込んだpLNCX2とpCL−Ecoを293個の細胞に、FuGENE6トランスフェクション試薬(Boehringer Mannheim, Indianapolis,IN)を用いてコトランスフェクトして生成した。トランスフェクションして24時間後、293個の細胞の上清を回収し、滅菌0.45−マイクロフィルターにより濾過し、8μg/mlのポリブレンを加えたMHT細胞上に、レトロウィルス含有上清として移して感染させた。
【0083】
感染後24時間、該感染培地を10%FCS(ウシ胎児血清)を加えた1640培地に置き換えた。感染後48時間、細胞をジェネチシン500μg/mlを含む培地に分割した。その後、耐性クローンからトータルRNAを抽出し、リアルタイム定量RT−PCRにより解析した。
【0084】
上記結果を図11及び図13〜図15に示す。図11の例ではβ−カテニンのエキソン3が体細胞性変異を起こしている例には*印を付している(38例中16例:42%)。例33及び40では二つの変異型が見出された。また、例8ではエキソン3をPCRで増幅したところ、バンドが二つに分離した(データ省略)。このバンドを分析すると、51−bpの欠失が見出された。
図13及び図14はミスセンス変異及びアミノ酸置換を示す電気泳動図である。ほとんどの場合、セリン又はスレオニンをコードする残基33、37、41若しくは45でアミノ酸置換が起こっているかこれらの隣接残基に生じていた。また、β−カテニン変異は本発明のタンパク質の過剰発現を起こしている肝細胞がんでは頻繁に見られた(18例中14例:78%)。その一方、本発明のタンパク質の過剰発現が見られない例でのβ−カテニン変異は20例中2例(10%)に過ぎなかった。また、図15はマウス肝細胞における本発明のタンパク質の発現に対するβ−カテニンの影響を示すグラフである。変異β−カテニンを導入されたマウス肝細胞における本発明のタンパク質の発現レベルは他の野生型β−カテニンあるいはMOCKpLNCX2を導入した肝細胞と比べておよそ4倍にも達することがわかった。
【0085】
これらのことから、本発明のタンパク質の過剰発現とβ−カテニン変異とは強い相関性を有することが分かった。
【0086】
また、過剰発現率は、女性・男性でそれぞれ約83%、34%と差が認められた(データ省略)。このことから、本発明のタンパク質が性差により生じるがんの発現差にも関与していると考えられる。
【0087】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のタンパク質及びその遺伝子は肝がん細胞特異的に強発現し、β−カテニンの変異により過剰発現が誘導されるという特性を有する。この特性を利用してがんの診断、治療において、がんの診断マーカー、標的治療、遺伝子診断や遺伝子治療、その他がんの再発診断等様々な用途に有用に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のタンパク質の塩基配列を示す図(1)である。
【図2】本発明のタンパク質の塩基配列を示す図(2)である。
【図3】本発明のタンパク質の塩基配列を示す図(3)である。
【図4】本発明のタンパク質の塩基配列を示す図(4)である。
【図5】本発明のタンパク質の塩基配列を示す図(5)である。
【図6】本発明のタンパク質の塩基配列を示す図(6)である。
【図7】本発明のタンパク質の塩基配列を示す図(7)である。
【図8】プライマーとしてGSP1及びGSP4を用いて増幅したPCR産物の電気泳動画像である。
【図9】肝細胞がん細胞株及び非がん肝細胞株(GAPDH)におけるクローン141及びGAPDHの発現量を示す画像である。
【図10】調整例で調整した各サンプルのGAPDHで標準化したクローン141のmRNAの発現レベルを示すグラフである。
【図11】肝細胞がん組織における本発明のタンパク質のRNA発現状態を示す表である。
【図12】肝臓のがん組織(T)及び非がん肝組織(N)の本発明のタンパク質のmRNAの発現レベル平均を示すグラフである。
【図13】β−カテニン遺伝子のエキソン3の変異分析の図であって、サンプル例24の31番目コドン(TCTからTGT)の変異を示す電気泳動図である。
【図14】Gpr49過剰発現した18例中16例で生じたβ−カテニン変異におけるアミノ置換を示す模式図である。
【図15】MOCK,野生型β−カテニン及び変異β−カテニンをレトロウイルスにより感染させたマウスMHT細胞におけるFEXmRNAの発現レベルを示すグラフである。
【図16】調整例で得られた肝細胞がん38例のGpr49の発現レベルを示す表である。
【配列表】
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Claims (9)

  1. 配列番号2のアミノ酸配列又は配列番号2のアミノ酸配列のうち1又は数個のアミノ酸が付加、欠失若しくは置換されているアミノ酸配列を含み、かつ肝がん細胞に対して過剰発現を示すタンパク質を具備することを特徴とする肝がん診断マーカー。
  2. 被検体内から採取した組織を用いた肝がんの検出方法であって、配列番号2のアミノ酸配列又は配列番号2のアミノ酸配列のうち1又は数個のアミノ酸が付加、欠失若しくは置換されているアミノ酸配列を含み、かつ肝がん細胞に対して過剰発現を示すタンパク質を具備する診断マーカーにより肝がんの検出を行うことを特徴とする肝がんの検出方法。
  3. 被検体内から採取された細胞・組織を用いる肝がんの診断方法であって、
    前記細胞・組織中に配列番号2のアミノ酸配列若しくは配列番号2のアミノ酸配列のうち1又は数個のアミノ酸が付加、欠失若しくは置換されているアミノ酸配列を含み、かつ肝がん細胞に対して過剰発現を示すタンパク質をスクリーニングし、該タンパク質の発現に基づき診断することを特徴とする肝がんの診断方法。
  4. 配列番号3から配列番号8のポリヌクレオチド全部又は一部を具備し、
    配列番号2のアミノ酸配列又は配列番号2のアミノ酸配列のうち1又は数個のアミノ酸が付加、欠失若しくは置換されているアミノ酸配列を含み、かつ肝がん細胞で過剰発現を示すタンパク質を定量することを特徴とする肝がん分析用定量キット。
  5. 配列番号1の塩基配列又はその相補的配列並びにそれらの配列の一部もしくは全部からなる遺伝子を含む複数の遺伝子断片を具備することを特徴とする肝がん細胞スクリーニングキット
  6. 肝細胞における配列番号2のアミノ酸配列又は配列番号2のアミノ酸配列のうち1又は数個のアミノ酸が付加、欠失若しくは置換されているアミノ酸配列を含むタンパク質の発現レベルを分析することを特徴とする肝がん分析方法。
  7. 前記タンパク質は、β−カテニン変異により過剰発現が誘導されることを特徴とする請求項に記載の肝がん分析方法。
  8. 前記タンパク質は、Gタンパク質共役型受容体であり、C末端にSH2及びSH3ドメインを有することを特徴とする請求項に記載の肝がん分析方法。
  9. 前記タンパク質は、Wntシグナル伝達系の活性により転写が亢進されることを特徴とする請求項に記載の肝がん分析方法。
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