JP4280392B2 - 一缶多水路型給湯機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、給湯流路と追い焚き流路などの他の受熱流路とが1つの熱交換器を経由する一缶多水路型給湯機に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の一缶二水路型給湯機は、浴槽内の湯を循環させるための追い焚き流路と給湯流路とがフィンを共通にする1つの熱交換器を通っており、これら2つの流路内の水を1つのバーナで加熱するようになっている。
【0003】
また、熱交換器を加熱するためのバーナとして、給湯単独使用時に所定の最大号数が得られる能力のものを用いていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このような一缶二水路型給湯機では、給湯と追い焚きとを同時使用すると、バーナからの熱が給湯流路と追い焚き流路の双方に受熱されるので、同時使用時は、給湯単独使用時に比べて給湯側の最大号数が低下していた。特に、追い焚き流路を流れる水の温度が低い場合には、追い焚き側の吸熱比が高くなり、給湯側の能力が大幅に低下していた。
【0005】
たとえば、図7に示すものでは、給湯単独使用時の出湯能力が16号であっても、風呂温度(追い焚き流路への入水温度)が45℃の場合には給湯側の出湯能力が14.3号に低下している(欄701参照)。また、風呂温度が20℃と低い場合には、風呂側の吸熱比がさらに高くなるため、給湯側の出湯能力は12.5号にまで下がっている(欄702参照)。
【0006】
このように、従来のものでは、単独使用時と同時使用時とで、また同時使用時にはさらに追い焚き側の水温によって給湯能力が変動するので、安定した給湯動作を確保できないという問題があった。
【0007】
本発明は、このような従来の技術が有する問題点に着目してなされたもので、単独使用時と同時使用時とで給湯側の最大号数が変化せずしかも同時使用時の追い焚き側水温にかかわらず安定した給湯能力を得ることのできる一缶多水路型給湯機を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。
[1]給湯流路(20)と他の受熱流路(40)とが1つの熱交換器(11)を経由する一缶多水路型給湯機において、
加熱手段(12)と、加熱制御手段(71)と、水量制御弁(30)と、水量制御手段(72)とを備え、
前記加熱手段(12)は、前記熱交換器(11)を加熱するものであって、前記給湯流路(20)と前記受熱流路(40)の双方に通水のある同時使用時に前記受熱流路(40)側の吸熱量があらかじめ定めた最大値であっても前記給湯流路(20)側で所定の最大号数以上の出湯能力を確保できる加熱能力を備えたものであり、
前記加熱制御手段(71)は、前記給湯流路(20)側の出湯温度が設定温度になるように前記加熱手段(12)による加熱量を制御するものであり、
前記水量制御弁(30)は、前記給湯流路(20)側の単位時間における出湯量の上限を調整するものであり、
前記水量制御手段(72)は、同時使用の開始とともに給湯流路(20)側の最大号数を制限するための給湯流路(20)側の許容流量を算出し、同時使用時に、前記受熱流路(40)側での吸熱量の大小にかかわらず前記給湯流路(20)側の出湯能力が前記所定の最大号数を超えないように、前記給湯流路(20)側の単位時間における出湯量の上限が前記許容流量になるよう前記水量制御弁(30)の開度を制御するものであり、
前記許容流量の算出に、前記給湯流路(20)側にのみ通水のある給湯単独使用時における最大号数の実測値を用い、該給湯単独使用時における最大号数を実測で求めることができなかった場合には、前記実測値に代えてあらかじめ定めた標準値を用いることを特徴とする一缶多水路型給湯機。
【0009】
[2]前記水量制御手段(72)は、設定温度と前記給湯流路(20)側の入水温度との温度差に基づいて前記所定の最大号数に対応する前記給湯流路(20)側の許容流量を求め、前記水量制御弁(30)の開度を制御するものであることを特徴とする[1]に記載の一缶多水路型給湯機。
【0010】
[3]前記給湯流路(20)側にのみ通水のある給湯単独使用時における前記加熱手段(12)の最大加熱量を同時使用時の最大加熱量よりも少ない値の単独使用時最大加熱量に制限し、給湯単独使用時における給湯流路(20)側の最大号数と同時使用時における給湯流路(20)側の最大号数とを等しくしたことを特徴とする[1]または[2]に記載の一缶多水路型給湯機。
【0011】
[4]前記給湯流路(20)側の入水温度を検知する入水温度センサ(24)と、前記給湯流路(20)側の出湯温度を検知する出湯温度センサ(29)と、前記給湯流路(20)側の単位時間当たりの出湯量を検知する流量センサ(25)と、最大号数実測手段(74)とを設け、
前記最大号数実測手段(74)は、給湯単独使用時でかつ前記加熱手段(12)による加熱量が前記単独使用時最大加熱量になっている状態の下で前記入水温度センサ(24)の検知した入水温度と出湯温度センサ(29)の検知した出湯温度との温度差と前記流量センサ(25)の検知する出湯量とに基づいて給湯単独使用時における実測の最大号数を求めるものであり、
前記水量制御手段(72)は、前記実測の最大号数と前記入水温度センサ(24)の検知する入水温度と設定温度とに基づいて前記許容流量を求めるとともに、前記流量センサ(25)の検知する出湯量が前記許容流量を超えないように前記水量制御弁(30)の開度を制御するものであることを特徴とする[3]に記載の一缶多水路型給湯機。
【0012】
[5]前記最大号数実測手段(74)は、前記実測の最大号数を複数回求め、これらに基づいて実測の最大号数としての最適値を導出し、
前記水量制御手段(72)は、前記許容流量を求める際に前記実測の最大号数の最適値を用いることを特徴とする[4]に記載の一缶多水路型給湯機。
【0013】
前記本発明は次のように作用する。
加熱手段(12)は、給湯流路(20)と風呂追い焚き流路など他の受熱流路(40)の双方が通る熱交換器(11)を加熱するバーナ等である。加熱手段(12)は、給湯流路(20)と受熱流路(40)の双方に通水のある同時使用時に、受熱流路(40)側の吸熱量があらかじめ定めた最大値であっても給湯流路(20)側で所定の最大号数以上の出湯能力を確保できる加熱能力を備えたものである。
【0014】
たとえば、受熱流路(40)が、風呂の追い焚き流路の場合、同時使用時には、循環ポンプにより浴槽水が一定の流量で受熱流路(40)を通じて循環するが、給湯側の出湯能力として16号を確保したい場合には、浴槽からの入水温度が20℃程度と低い場合でも、同時使用時に16号の給湯号数が確保できる能力のバーナを用意する。
【0015】
加熱制御手段(71)は、給湯流路(20)側の出湯温度が設定温度になるように加熱手段(12)による加熱量を制御する。給湯流路(20)には、単位時間における給湯側の出湯量の上限を調整するための水量制御弁(30)が設けてあり、水量制御手段(72)は、同時使用時に、受熱流路(40)側での吸熱量の大小にかかわらず給湯流路(20)側の出湯能力が最大号数を超えないように水量制御弁(30)の開度を制御する。
【0016】
すなわち、加熱制御手段(71)は、出湯温度が設定温度になるように加熱量を調整するので、受熱流路(40)側の入水温度が高くて受熱流路(40)側の吸熱比が小さい場合に水量制御弁(30)を絞って給湯側の出湯量上限を規制すれば、自動的に加熱量が低下して給湯側の能力が予定した最大号数を超えてしまうことを防止することができる。
【0017】
より具体的には、水量制御手段(72)は、同時使用の開始とともに設定温度と給湯流路(20)の入側に設けた入水温度センサ(24)が検知する入水温度との温度差に基づいて、最大号数に対応する給湯流路(20)側の許容流量を求め、給湯流路(20)側の単位時間における出湯量の上限がこの許容流量になるように水量制御弁(30)の開度を制御する。なお、流量=号数×25÷(設定温度−入水温度)の関係があるので、最大号数と、設定温度と入水温度とをこの式に代入することで許容流量が算出される。この許容流量の算出に用いる最大号数は、給湯単独使用時における最大号数の実測値であり、該給湯単独使用時における最大号数を実測で求めることができなかった場合には、その実測値に代えてあらかじめ定めた標準値を用いる。
【0018】
このように、同時使用時に受熱流路(40)側の吸熱量があらかじめ定めた最大値であっても給湯流路(20)側で所定の最大号数以上の出湯能力を確保できる能力の加熱装置を用意しかつ出湯温度が設定温度になるように加熱量を制御し、かかる状態の下で、同時使用時における受熱流路(40)側の吸熱量が小さい場合に、給湯号数が所定の最大号数に収まるように給湯側の出湯量の上限を水量制御弁(30)で制限するので、受熱流路(40)側の吸熱量の大小にかかわらず給湯側の出湯能力を予め定めた最大号数以下に安定させることができる。
【0019】
また給湯流路(20)側にのみ通水のある給湯単独使用時における加熱手段(12)の最大加熱量を、同時使用時の最大加熱量よりも少ない値の単独使用時最大加熱量に制限し、給湯単独使用時における給湯流路(20)側の最大号数と同時使用時における給湯流路(20)側の最大号数とを等しい値に設定する。これにより給湯単独使用時と同時使用時のいずれにおいても、さらには同時使用時の受熱流路(40)側の吸熱量にかかわらず、給湯側の最大号数を一定値で安定させることができる。
【0020】
最大号数実測手段(74)は、給湯単独使用時でかつ加熱手段(12)による加熱量が単独使用時最大加熱量になっている状態の下で入水温度センサ(24)の検知した入水温度と出湯温度センサ(29)の検知した出湯温度との温度差と流量センサ(25)の検知する出湯量とに基づいて給湯単独使用時における実測の最大号数を求める。また水量制御手段(72)は、この実測の最大号数と入水温度センサ(24)の検知する入水温度と設定温度とに基づいて許容流量を求め、これにしたがって水量制御弁(30)の開度を制御する。
【0021】
温度センサや流量センサ(25)には、個体差に基づく誤差があるとともに、加熱手段(12)がバーナの場合には、使用するガス種によっても加熱量が変化する。したがって、入水温度センサ(24)の検知する温度と設定温度とに基づいて許容流量を算出し、これと流量センサ(25)の検知する流量とが等しくなるように水量制御弁(30)の開度を制御すると、同時使用時における給湯側の実際の最大号数が、予定している最大号数と相違したり、給湯単独使用時と同時使用時とで給湯側の最大号数が相違したりする場合が生じる。
【0022】
そこで、温度センサなどを用いて給湯単独使用時における最大号数を実測し、同時使用時には、この実測の最大号数と実際に入水温度センサ(24)を用いて計測した入水温度を用いて許容流量を算出し、流量センサ(25)の検知する値がこの許容流量を超えないように水量制御弁(30)の開度を制御すれば、最大号数の計測時と給湯側の流量を制御する時とで同じセンサ類を用いることになるので、各センサの誤差を打ち消すことができ、給湯単独使用時と同時使用時とで給湯側の最大号数を一致させることができる。
【0023】
さらに実測の最大号数を複数回求め、これらに基づいて実測の最大号数としての最適値を導出し、これに基づいて給湯側の出湯量上限を制御するものでは、より的確に給湯側の最大号数を制御することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づき本発明の一実施の形態を説明する。
各図は本発明の一実施の形態を示している。
図1に示すように、本実施の形態にかかる一缶二水路型給湯機10は、給水を加熱するための給湯流路20と、浴槽60内の湯を追い焚きするための追い焚き流路40の双方が通る、いわゆる一缶二水路型の熱交換器11と、当該熱交換器11を加熱するためのバーナ12とを備えている。当該バーナ12には、燃焼ガスの供給路であるガス供給管13が接続されており、ガス供給管13の途中には、燃焼ガスの供給量を調整するためのガス量調整弁14(比例弁)が取り付けてある。
【0025】
給湯流路20は、熱交換器11のフィンプレートから受熱する配管部分である給湯系受熱管21と、給湯系受熱管21の入口部に通じ、給水の流れ込み側となる給水管22と、給湯系受熱管21の出口部から延びる給湯管23とから構成されている。給水管22には、流入する給水の温度(入水温度)を検知するための入水サーミスタ24と、通水量を検知するための流量センサ25が設けてある。
【0026】
給湯管23には、熱交換器11で加熱された後の湯の温度(出湯温度)を検知するための出湯サーミスタ29が配置されている。また給湯管23には、出湯量を調整するための水量制御弁30を設けてある。
【0027】
他の受熱流路としての追い焚き流路40は、熱交換器11のフィンプレートから受熱する配管部分である追い焚き系受熱管41と、追い焚き系受熱管41の一端部(追い焚き循環時における入口側)と浴槽60との間を接続する追い焚き戻り管42と、追い焚き系受熱管41の他端部と浴槽60との間を接続する追い焚き往き管43とから構成されている。追い焚き戻り管42の途中には、浴槽60内の湯を追い焚き系受熱管41に向けて送る循環ポンプ44と、循環する水の温度を検出する風呂サーミスタ45と、循環ポンプ44を回した際に追い焚き戻り管42内を水が流れるか否かを検知する流水スイッチ46とが設けられている。
【0028】
追い焚き戻り管42のうち循環ポンプ44よりも追い焚き系受熱管41側の所定箇所と給湯管23のうち出湯サーミスタ29よりも下流側の所定箇所との間には、給湯管23内の水を追い焚き流路40に送り込むための連絡路50が接続されている。この連絡路50の途中には、給湯管23からの水を追い焚き戻り管42に流すか否かを切り替えるための切替弁51が設けてある。切替弁51を開くことにより、給湯流路20側で加熱された湯を浴槽60へ注ぎ込むことが可能になっている。
【0029】
一缶二水路型給湯機10は、給湯動作、注湯動作、追い焚き動作など各種の動作を制御するための制御部70を備えている。制御部70には、出湯温度の設定や、風呂の追い焚き指示等を受け付けるためのリモコン80が接続されている。このリモコン80は浴室等に設置されるものである。制御部70には、ガス量調整弁14、入水サーミスタ24、流量センサ25、出湯サーミスタ29、循環ポンプ44、切替弁51等の各種の制御部品やセンサ類が電気的に接続されている。
【0030】
制御部70は、加熱制御手段71と、水量制御手段72と、使用状態判別手段73、最大号数実測手段74の各機能を果たすものである。このうち、使用状態判別手段73は、器具の運転状態が、給湯側だけを単独で使用する給湯単独使用の状態にあるのか、追い焚きのみを単独で使用する追い焚き単独使用の状態にあるか、給湯と追い焚きとを同時に使用する同時使用の状態にあるかを判別する回路部分である。
【0031】
使用状態判別手段73は、リモコン80からの追い焚き指示の有無や流水スイッチ46のオンオフ状態および内部の動作フラグ等を基にして追い焚きが動作中か否かを判別する。また流量センサ25のオンオフに基づいて給湯側を使用しているか否かを判別するようになっている。
【0032】
加熱制御手段71は、バーナ12による加熱量を制御する回路部分であり、具体的にはガス量調整弁14の開度を調整するものである。加熱制御手段71は、同時使用時には、予め定めた同時使用時最大加熱量を上限に、バーナ12による加熱量(インプット)を、給湯側の出湯温度が設定温度になるように制御する。また給湯単独使用時には、バーナ12による加熱量の上限を同時使用時最大加熱量よりも少ない給湯単独使用時最大加熱量に制限し、この範囲内でバーナ12による加熱量(インプット)を、給湯側の出湯温度が設定温度になるように制御するようになっている。
【0033】
なおバーナ12は、給湯流路20と追い焚き流路40の双方に通水のある同時使用時に、追い焚き流路40側の吸熱量があらかじめ定めた最大値であっても給湯流路20側で所定の最大号数以上の出湯能力を確保できる加熱能力を備えたものを用いている。ここでは、循環ポンプ44を駆動することで追い焚き流路40の中を一定の流量で20℃の浴槽水が循環している状態で同時使用した際に、給湯側で16号を確保できる加熱能力を備えたバーナ12を用いている。
【0034】
同時使用時最大加熱量は、上述のような動作条件(風呂温度が20℃)で同時使用した際に給湯側の出湯能力が16号になる値に設定してある。また給湯単独使用時最大加熱量は、給湯単独使用時における給湯側の出湯能力が16号になる値に予め設定してある。
【0035】
水量制御手段72は、水量制御弁30の開度を制御する機能を果たすものである。給湯単独使用時には、給湯単独使用時最大加熱量でバーナ12を燃焼させても出湯温度が設定温度に到達しないときだけ、水量制御弁30を必要量絞り、これ以外は全開の状態に制御するようになっている。同時使用時には、給湯側の能力が所定の最大号数を超えないように出湯量を制限するようになっている。この場合の具体的な動作については後で説明する。
【0036】
最大号数実測手段74は、給湯単独使用時における給湯側の実際の最大号数を入水サーミスタ24および出湯サーミスタ29の検知する水温および流量センサ25の検知する流量とから算出する機能を果たす部分である。なお制御部70は、実際には、CPU(中央処理装置)とROM(リード・オンリ・メモリ)とRAM(ランダム・アクセス・メモリ)とを主要部とする回路によって構成されている。
【0037】
次に作用を説明する。
図2は、同時使用時に給湯側の出湯量上限を制限しない場合における、風呂温度と給湯号数等との関係の一例を示したものである。バーナ12は、同時使用時に追い焚き流路40の入側における水温(風呂温度)が20℃の場合でも、給湯側で16号の能力が出るように設定されているので、風呂温度が20℃のときちょうど給湯号数が16号になっている(最下欄201参照)。
【0038】
ところが、風呂温度が高くなると、追い焚き流路40側の吸熱比が低下し、給湯流路20側の吸熱比が高まるので、たとえば風呂温度が45℃の場合には給湯号数が18.3号にまで上昇してしまう(欄202参照)。しかし、給湯号数は、流量×(出湯温度−入水温度)÷25で与えられるので、給湯号数を16号以下に制限するためには、給湯側の許容流量を16号×25÷(設定温度−入水温度)に制限すればよい。
【0039】
すなわち、バーナ12の加熱量は、出湯温度が設定温度になるように制御されるので、出湯流量を制限すれば、自動的に加熱量も低下し、結果的に給湯側の最大号数が目的とする号数に規制される。
【0040】
図3は、このような制御を行った結果の一例を示している。給湯側の最大号数が16号になるように水量制御弁30の開度を調整して出湯流量を制御した結果、風呂温度が20℃であっても(最下欄301参照)、45℃あっても(欄302参照)、常に、給湯側の最大号数が16号に安定している。
【0041】
上述のように給湯側の最大号数を16号に制限する場合に、許容流量を求める式に、最大号数として「16」をそのまま代入すると、入水サーミスタ24、出湯サーミスタ29、流量センサ25の測定誤差やガス種の違いにより、実際の号数が16号にならない場合が生じる。
【0042】
たとえば、入水サーミスタ24が−0.5℃の誤差を持ち、出湯サーミスタ29が+0.5℃の誤差を持ち、流量センサ25が0.5リットル/分の誤差を持っていた場合には図4に示す例のように、器具の有するセンサで検出した結果に基づいて得た実測値が16号になっても(欄401参照)、実際には14.82号の能力しか出ていないことがあり得る(欄402参照)。さらに、ガス質による影響も考えられる。すなわち発熱量が11000カロリーの13Aと9300カロリーの12Aの場合を例にとると、13Aで16号になるように設定したものを、12Aで使用すると、13.6号の能力しか出ないことになる。
【0043】
そこで、本実施の形態にかかる一缶二水路型給湯機10では、給湯単独使用時における給湯側の最大号数を実測し、その値を許容流量の演算に用いるようになっている。以下、本実施の形態にかかる一缶二水路型給湯機10の具体的な動作について説明する。
【0044】
図5は、給湯単独使用時における最大号数の実測値を求める際の動作を示している。給湯単独使用の状態に入ると、バーナ12の加熱量が給湯単独使用時最大加熱量で燃焼する状態になるのを待つ。そして給湯単独使用時最大加熱量での燃焼状態に入ると(ステップS501;Y)、その状態で出湯温度と出湯流量が安定するのをさらに待つ(ステップS502、S503)。
【0045】
給湯単独使用時最大加熱量で燃焼しかつ出湯温度と出湯量が安定した状態で(ステップS502;Y、S503;Y)入水サーミスタ24の検知している入水温度と、出湯サーミスタ29の検知している出湯温度と、流量センサ25の検知している流量の各値を取り込む(ステップS504)。そして取り込んだこれらの値を以下に示す(1)式に代入して最大号数を求める(ステップS505)。
最大号数=流量×(出湯温度−入水温度)÷25 ……(1)式
ここで、流量の単位は、リットル/分である。
【0046】
こうして求めた給湯単独使用時における実測の最大号数を内部の不揮発性メモリに保存し(ステップS506)、さらにこれまでに複数回にわたって求めた実測の最大号数を平均化して、実測値としての最適値を求める(ステップS507)。なお、最大号数の実測は、給湯単独使用に入るごとに行ってもよいし、1回の給湯単独使用中に、複数回測定するようにしてもよい。
【0047】
図6は、同時使用時における水量制御弁の制御の流れを示している。同時使用がはじまると、まず、給湯側の最大号数を、給湯単独使用時と同じ値に制限するための許容流量を算出する(ステップS601)。具体的には、以下に示す(2)式を演算することで許容流量を求める。
許容流量=A×25÷(設定温度−入水温度) ……(2)式
ここで、Aには、図5の処理で求めた実測の最大号数の最適値を使用する。また入水温度は、入水サーミスタ24の検知する温度である。
【0048】
こうして求めた許容流量と流量センサ25の検知している現在の流量とを比較し(ステップS602)、現在の流量が許容流量を上回るときには(ステップS602;Y)、流量センサ25の検知する流量が先に求めた許容流量になるように水量制御弁30を絞る(ステップS603)。
【0049】
バーナ12での加熱量は、給湯側の出湯温度が、設定温度になるように制御されるので、水量制御弁30を許容流量に絞ることで、結果的に給湯側の最大号数が、(2)式に代入したAの値、すなわち、実測で求めた最大号数の最適値に、通常の場合は、落ち着くことになる。
【0050】
ただし、許容流量になるように水量制御弁30を絞っても、何らかの原因で出湯温度が設定温度未満の場合には(ステップS604;Y)、バーナ12による加熱量が同時使用時最大加熱量に到達しているか否かを確認し(ステップS605)、すでに最大加熱量に達しているときは(ステップS605;Y)、さらに少しだけ水量制御弁30を絞り、制御の先頭(ステップS601)に戻る。なお加熱量が同時使用時最大加熱量に達していない場合には(ステップS605;N)、加熱制御手段71による制御が働いて出湯温度が設定温度に近づくように加熱量が増えるので、水量制御弁30をさらに絞ることは行わない。
【0051】
上述のステップS606のように、何らかの原因で許容流量よりもさらに水量制御弁30を絞る必要が生じた場合には、(2)式の計算と実際の動作とが一致していないことになるので、その分を以後の計算で補正するようになっている。たとえば、ステップS606で毎分200ミリリットルに相当するだけ水量制御弁30をさらに絞ることで出湯温度が設定温度になった場合には、(2)式の右辺から補正項として200ミリリットルが減算される。
【0052】
現在の流量が許容流量を超えていない場合には(ステップS602;N)、現在の給湯号数が最大号数に達していないことになる。このとき水量制御弁30の開度が小さいために現在の水量が許容流量未満になっている可能性があるので、水量制御弁30が全開か否かを調べ、全開でない場合には(ステップS607;N)、水量制御弁30を少し開いて(ステップS608)制御の先頭に戻る。なお図6の処理は、同時使用が継続している間、繰り返し実行される。
【0053】
このように、入水サーミスタ24、出湯サーミスタ29、流量センサ25を用いて単独使用時に実測した最大号数の最適値を同時使用時の許容流量の計算に用いるとともに、当該許容流量を求める際の計算式に代入する入水温度を、実測の最大号数を求める際に使用したものと同じ入水サーミスタ24で検知し、かつ最大号数を求める際に使用したものと同じ流量センサ25を用いて、同時使用時の出湯流量が許容流量になったか否かを比較判定するので、入水サーミスタ24、出湯サーミスタ29、流量センサ25の計測誤差が打ち消される。これにより、給湯単独使用時の最大号数と同時使用時の給湯側最大号数とをほぼ一致させることができる。また実測の最大号数を用いるのでガス質にかかわらず、給湯単独使用時と同時使用時の給湯側最大号数がほぼ一致することになる。
【0054】
なお、同時使用を開始する前に、給湯単独使用時における最大号数を実測で求めることができなかった場合には、あらかじめ定めた標準値を(2)式のAに代入して許容流量を求めることになる。たとえば、設計値としての16号をAに代入する等である。
【0055】
このように、給湯単独使用と同時使用のいずれであるか、さらには同時使用時における追い焚き流路40側の吸熱比(風呂側の水温)にかかわらず給湯側の最大号数を一定値に維持することができるので、給湯号数の大きな機種用に開発したバーナをこの機種よりも給湯号数の小さい機種に流用することができる。これにより部品の共通化が可能になり、結果的に器具の製造原価を下げることができる。
【0056】
以上説明した実施の形態では、一缶二水路型の給湯と追い焚きの例を示したが、これに限定されず、給湯と他の流路、たとえば、暖房でもかまわない。したがって、給湯と追い焚きと暖房の各流路を共通の熱交換器で加熱する一缶多水路型給湯機でも本願は有効である。なお、バーナへ供給する燃料はガス以外に石油等であってもかまわない。また、石油等ではガンタイプバーナのようなバーナレスタイプなどでもよい。
【0057】
また給水管22と給湯管23の間に熱交換器11を迂回するバイパス通路を備えたものであっても、バイパスされた分を含めた出湯量を(1)式、(2)式の流量として用いれば、これらの式をそのまま適用して本発明の効果を得ることができる。なお流量センサ25がバーナ12を経由する水量だけを検知する箇所に配置されている場合には、検知された流量とバイパス比とに基づいてミキシング後の出湯量を求め、これを(1)式、(2)式の流量として用いればよい。
【0058】
【発明の効果】
本発明にかかる一缶多水路型給湯機によれば、同時使用時に受熱流路側の吸熱量があらかじめ定めた最大値であっても給湯流路側で所定の最大号数以上の出湯能力を確保できる能力の加熱手段を用意し、かつ出湯温度が設定温度になるように加熱量を制御し、かかる状態の下で、同時使用時における受熱流路側の吸熱量が小さい場合に、給湯号数が所定の最大号数に収まるように給湯側の出湯量の上限を水量制御弁で制限するようにしたので、受熱流路側の吸熱量の大小にかかわらず給湯側の出湯能力を予め定めた最大号数以下に安定させることができる。
【0059】
また給湯流路側にのみ通水のある給湯単独使用時における加熱手段の最大加熱量を、同時使用時の最大加熱量よりも少ない値の単独使用時最大加熱量に制限し、給湯単独使用時における給湯流路側の最大号数と同時使用時における給湯流路側の最大号数とを等しい値に設定したものでは、同時使用時の受熱流路側の吸熱量にかかわらず給湯側の最大号数を給湯単独使用時と同じ値に安定させることができる。
【0060】
入水温度センサ、流量センサなどを用いて給湯単独使用時における実際の最大号数を測定し、同時使用時には、この実測の最大号数と入水温度センサを用いて計測した入水温度を用いて許容流量を算出し、流量センサの検知する値がこの許容流量を超えないように水量制御弁の開度を制御するものでは、最大号数の計測時と給湯側の流量を制御する時とで同じセンサを用いることになるので、各センサの誤差等を打ち消すことができ、給湯単独使用時と同時使用時とで給湯の最大号数を一致させることができる。
【0061】
さらに実測の最大号数を複数回求め、これらに基づいて実測の最大号数としての最適値を導出し、これに基づいて給湯側の出湯量上限を制御するものでは、より的確に給湯側の最大号数を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る一缶二水路型給湯機の構成を示すブロック図である。
【図2】同時使用時に給湯側の出湯量上限を制限しない場合における風呂温度と給湯号数等との関係の一例を示す説明図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る一缶二水路型給湯機が同時使用時に給湯側の出湯量上限を制限した場合における風呂温度と給湯号数等との関係の一例を示す説明図である。
【図4】実測値の水温や号数と実際の水温や号数との誤差の一例を示す説明図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る一缶二水路型給湯機が単独使用時に給湯側の最大号数を実測する際の動作を示す流れ図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係る一缶二水路型給湯機が同時使用時に水量制御弁の流量を制御する際の動作を示す流れ図である。
【図7】従来から使用されている一缶二水路型の給湯機で給湯と風呂の追い焚きとを同時使用した場合の風呂温度と給湯号数との関係等を示す説明図である。
【符号の説明】
10…一缶二水路型給湯機
11…熱交換器
12…バーナ
14…ガス量調整弁
20…給湯流路
24…入水サーミスタ
25…流量センサ
29…出湯サーミスタ
30…水量制御弁
40…追い焚き流路
44…循環ポンプ
46…流水スイッチ
60…浴槽
70…制御部
71…加熱制御手段
72…水量制御手段
73…使用状態判別手段
74…最大号数実測手段
Claims (5)
- 給湯流路と他の受熱流路とが1つの熱交換器を経由する一缶多水路型給湯機において、
加熱手段と、加熱制御手段と、水量制御弁と、水量制御手段とを備え、
前記加熱手段は、前記熱交換器を加熱するものであって、前記給湯流路と前記受熱流路の双方に通水のある同時使用時に前記受熱流路側の吸熱量があらかじめ定めた最大値であっても前記給湯流路側で所定の最大号数以上の出湯能力を確保できる加熱能力を備えたものであり、
前記加熱制御手段は、前記給湯流路側の出湯温度が設定温度になるように前記加熱手段による加熱量を制御するものであり、
前記水量制御弁は、前記給湯流路側の単位時間における出湯量の上限を調整するものであり、
前記水量制御手段は、同時使用の開始とともに給湯流路側の最大号数を制限するための給湯流路側の許容流量を算出し、同時使用時に、前記受熱流路側での吸熱量の大小にかかわらず前記給湯流路側の出湯能力が前記所定の最大号数を超えないように、前記給湯流路側の単位時間における出湯量の上限が前記許容流量になるよう前記水量制御弁の開度を制御するものであり、
前記許容流量の算出に、前記給湯流路側にのみ通水のある給湯単独使用時における最大号数の実測値を用い、該給湯単独使用時における最大号数を実測で求めることができなかった場合には、前記実測値に代えてあらかじめ定めた標準値を用いることを特徴とする一缶多水路型給湯機。 - 前記水量制御手段は、設定温度と前記給湯流路側の入水温度との温度差に基づいて前記所定の最大号数に対応する前記給湯流路側の許容流量を求め、前記水量制御弁の開度を制御するものであることを特徴とする請求項1に記載の一缶多水路型給湯機。
- 前記給湯流路側にのみ通水のある給湯単独使用時における前記加熱手段の最大加熱量を同時使用時の最大加熱量よりも少ない値の単独使用時最大加熱量に制限し、給湯単独使用時における給湯流路側の最大号数と同時使用時における給湯流路側の最大号数とを等しくしたことを特徴とする請求項1または2に記載の一缶多水路型給湯機。
- 前記給湯流路側の入水温度を検知する入水温度センサと、前記給湯流路側の出湯温度を検知する出湯温度センサと、前記給湯流路側の単位時間当たりの出湯量を検知する流量センサと、最大号数実測手段とを設け、
前記最大号数実測手段は、給湯単独使用時でかつ前記加熱手段による加熱量が前記単独使用時最大加熱量になっている状態の下で前記入水温度センサの検知した入水温度と出湯温度センサの検知した出湯温度との温度差と前記流量センサの検知する出湯量とに基づいて給湯単独使用時における実測の最大号数を求めるものであり、
前記水量制御手段は、前記実測の最大号数と前記入水温度センサの検知する入水温度と設定温度とに基づいて前記許容流量を求めるとともに、前記流量センサの検知する出湯量が前記許容流量を超えないように前記水量制御弁の開度を制御するものであることを特徴とする請求項3に記載の一缶多水路型給湯機。 - 前記最大号数実測手段は、前記実測の最大号数を複数回求め、これらに基づいて実測の最大号数としての最適値を導出し、
前記水量制御手段は、前記許容流量を求める際に前記実測の最大号数の最適値を用いることを特徴とする請求項4に記載の一缶多水路型給湯機。
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