JP4280359B2 - スクロール型流体機械 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧縮機及び膨張機等のスクロール型流体機械に関し、特に潤滑油が圧縮又は膨張された流体に混入することを防止するスクロール型流体機械に関する。
【0002】
なお、本書において、「圧縮」と「膨張」とを「容積変化」と総称することがある。
【0003】
【従来の技術】
特開平9−310685号公報に記載された従来のスクロール型圧縮機について説明する。
【0004】
図4において、スクロール型圧縮機のハウジング10は、大径の有底円筒体から成るリアハウジング10aと、リアハウジング10aの開放端に固定された、大径円筒部10b1及び小径円筒部10b2から成るフロントハウジング10bとを備えている。リアハウジング10aとフロントハウジング10bとは、同心状に配設されている。
【0005】
ハウジング10の中心軸線X上に配設されたシャフト11が、フロントハウジング10bの小径円筒部10b2を通って、ハウジング10内に延びている。シャフト11は、フロントハウジング10bの小径円筒部10b2に包囲された小径部11aと、フロントハウジング10bの大径円筒部10b1に包囲された大径部11bとを備えている。大径部11bの端面には、軸線Xに平行に延びる駆動ピン12が、軸線Xから偏心して固定されている。シャフト11は、大径部11bがボールベアリング13を介してフロントハウジング10bの大径円筒部10b1により回転自在に支承され、小径部11aがボールベアリング14を介してフロントハウジング10bの小径円筒部10b2により回転自在に支承されている。
【0006】
フロントハウジング10bの小径円筒部10b2の径方向外方に電磁クラッチ15が配設されている。電磁クラッチ15は、フロントハウジング10bの小径円筒部10b2に回転自在に外嵌すると共に、図示しないVベルトを介して図示しない外部駆動源に接続されたプーリ15aと、フロントハウジング10bの小径円筒部10b2に固定された励磁コイル15bと、シャフト11の小径部11aの端部に固定された回転伝達板15cとを備えている。電磁クラッチ15を介して、図示ない外部駆動源によりシャフト11が回転駆動される。
【0007】
リアハウジング10a内には、固定スクロール16が配設されている。固定スクロール16は、軸線Xと同心に配設されてリアハウジング10aに嵌合する円板状の端板16aと、端板16aの一方の面に形成されたうず巻き体16bと、端板16aの他方の面に形成された脚16cとを備えている。端板16aの中心部には吐出穴16a1が形成されている。固定スクロール16は、脚16cがリアハウジング10aの底部10a1に当接した状態で、ボルト17により、リアハウジング10aに固定されている。固定スクロールの端板16aにより、リアハウジング10aの内部空間は吸入室18と吐出室19とに仕切られている。
【0008】
リアハウジング10a内には、固定スクロール16に隣接して公転部材としての可動スクロール20が配設されている。可動スクロール20は、円板状の端板20aと、端板20aの一方の面に形成されたうず巻き体20bと、端板20aの他方の面に形成された環状のボス20cとを備えている。端板20aの中心軸線は、軸線Xから偏心している。可動スクロール20のうず巻き体20bは、固定スクロール16のうず巻き体16bとかみ合っている。
【0009】
ボス20cには、端板20aと同心に配設された厚肉円板状のブッシュ21が、ニードルベアリング22を介して回転自在に内嵌している。ブッシュ21には、軸線Xに平行に延びる偏心貫通穴21aが形成され、また、径方向に延びるバランスウエイト23が固定されている。貫通穴21aは、シャフト11の大径部11bに固定された駆動ピン12を、摺動可能に収容している。
【0010】
フロントハウジング10bの大径円筒部10b1の端部に固定された固定レース24と、可動スクロール20の端板20aに固定された可動レース25と、周方向に互いに間隔を隔てて固定レース24と可動レース25との間に介在する複数のボール26とにより、可動スクロール20の自転を防止するためのボールカップリング、即ち、自転防止機構が構成されている。
【0011】
上述したボールカップリングを備えたスクロール型圧縮機の作動について説明する。図示しない外部駆動源により、電磁クラッチ15を介して、シャフト11が回転駆動される。シャフト11が回転すると、ブッシュ21が軸線Xの回りを公転し、可動スクロール20が軸線Xの回りを公転する。可動スクロール20の公転により、互いにかみ合う可動スクロール20のうず巻き体20bと固定スクロール16のうず巻き体16bとの間に形成される空間、すなわち圧縮室29が、その容積を減少させつつ、うず巻きの中心方向へ移動する。この結果、外部流体回路からハウジング10に形成された図示しない吸入ポートを通って吸入室18に流入した流体が、両うず巻きの外周端部から圧縮室29内に取り込まれ、圧縮室29内で圧縮され、固定スクロール16に形成された吐出穴16a1を通って、吐出室19に流出する。吐出室19に流入した圧縮流体は、リアハウジング10aに形成された図示しない吐出ポートを通って、外部流体回路へ流出する。
【0012】
流体を圧縮する際に可動スクロール20に加わる軸線X方向の反力と、径方向の可動スクロール自転阻止力とは、可動レース25、ボール26、固定レース24を介してフロントハウジング10bに伝達される。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来のスクロール型圧縮機では、ハウジング10内におけるボールベアリング13、ニードルベアリング22、固定レース24、可動レース25及び複数のボール26等が配設された駆動室と、可動スクロール20のうず巻き体20bと固定スクロール16のうず巻き体16bと間に形成される圧縮室29とは、空間的に完全には遮断されていない。したがって、駆動室に存在する潤滑油が、圧縮室29へ流入して圧縮された流体に混入する。これは、特に被圧縮(膨張機においては、「被膨張」)流体に潤滑油が混入することを嫌い、清浄な流体を扱う必要のある用途において重要な課題となる。
【0014】
そこで、本発明は、前記従来のスクロール型圧縮機の欠点を改良し、潤滑油が圧縮又は膨張された流体に混入することを防止できるスクロール型流体機械を提供しようとするものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記課題を解決するため、次の手段を採用する。
【0016】
1.ハウジングと、前記ハウジングに収容される固定スクロールと、前記ハウジングに収容され、かつ、前記固定スクロールにかみ合う可動スクロールと、前記ハウジングに収容され、かつ、前記可動スクロールを公転させる駆動機構とから構成され、前記可動スクロールの端板に第2の端板が対向して配設され、前記ハウジングに固定された仕切り板が前記端板と前記第2の端板との間に配置されることによって、前記駆動機構が収容される前記ハウジングの駆動室と、前記固定スクロールと前記可動スクロールとがかみ合うことにより形成される容積変化室とは、空間的に遮断されているスクロール型流体機械。
【0017】
2.前記仕切り板と前記可動スクロールの前記端板又は前記第2の端板との間に、シール部材が配設される前記1記載のスクロール型流体機械。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明のスクロール型流体機械の第1実施の形態例並びに第2実施の形態例及び第2実施の形態例の2つの設計変更例のスクロール型圧縮機について説明する。
【0022】
まず、第1実施の形態例のスクロール型圧縮機について図1を参照して説明する。スクロール型圧縮機のハウジング10は、大径の有底円筒体から成るリアハウジング10aと、リアハウジング10aの開放端に固定された、略段付円錐部10b1及び小径円筒部10b2から成るフロントハウジング10bとを備えている。リアハウジング10aとフロントハウジング10bとは、同心状に配設されている。
【0023】
ハウジング10の中心軸線X上に配設されたシャフト11が、フロントハウジング10bの小径円筒部10b2を通って、ハウジング10内に延びている。シャフト11は、フロントハウジング10bの小径円筒部10b2に包囲された小径部11aと、フロントハウジング10bの略段付円錐部10b1に包囲された大径部11bとを備えている。大径部11bの端面には、軸線Xに平行に延びる駆動ピン12が、軸線Xから偏心して固定されている。シャフト11は、大径部11bがボールベアリング13を介してフロントハウジング10bの略段付円錐部10b1により回転自在に支承され、小径部11aがボールベアリング14を介してフロントハウジング10bの小径円筒部10b2により回転自在に支承されている。シャフト11は、従来の技術と同様に、外部駆動源により回転駆動される。
【0024】
リアハウジング10aの円板状の底板10a1の内側には、固定スクロール10a2が形成され、固定スクロール10a2はうず巻き体10a3を備えている。リアハウジング10aの円筒板10a5には、流体の吸入穴10a6が開けられ、底板10a1の中心部には、流体の吐出穴10a4が開けられている。
【0025】
リアハウジング10a内には、固定スクロール10a2に隣接して公転部材としての可動スクロール20が配設されている。可動スクロール20は、円板状の端板20aと、端板20aの一方の面に形成されたうず巻き体20bと、端板20aの他方の面に形成された環状のボス20cとを備えている。端板20aの中心軸線は、軸線Xから偏心している。可動スクロール20のうず巻き体20bは、固定スクロール10a2のうず巻き体10a3とかみ合っている。
【0026】
ボス20cには、端板20aと同心に配設された駆動ピン12が、ニードルベアリング22を介して回転自在に内嵌している。駆動ピン12には、径方向に延びるバランスウエイト23が固定されている。
【0027】
フロントハウジング10bの略段付円錐部10b1の内面段部10b3に固定された固定レース24と、可動スクロール20の端板20aに固定された可動レース25と、周方向に互いに間隔を隔てて固定レース24と可動レース25との間に介在する複数のボール26とにより、可動スクロール20の自転を防止するためのボールカップリング、即ち、自転阻止機構が構成されている。
【0028】
第1実施の形態例のスクロール型圧縮機の要点について説明すると、可動スクロール20の端板20aの背面には、環状溝20dが形成され、環状溝20d内にOリング等のシール部材27が装着されている。端板20aの背面と、フロントハウジング10bの略段付円錐部10b1の内面とに包囲されることによって、駆動室28が閉鎖した空間として形成される。駆動室28は、圧縮室29に対して空間的に遮断されている。シール部材27を略段付円錐部10b1の内面側に設けることもできる。
【0029】
シャフト11が回転すると、駆動ピン12が軸線Xの回りを公転し、可動スクロール20が軸線Xの回りを公転する。可動スクロール20の公転により、互いにかみ合う可動スクロール20のうず巻き体20bと固定スクロール10a2のうず巻き体10a3との間に形成された圧縮室29が、その容積を減少させつつ、うず巻きの中心方向へ移動する。この結果、外部流体回路からリアハウジング10aに形成された吸入ポート(図示せず)を通って、円筒板10a5の流入穴10a6より流入した流体が、両うず巻きの外周端部から圧縮室29内に取り込まれて圧縮される。圧縮された流体は、底板10a1の吐出穴10a4より吐出され、リアハウジング10aに形成された吐出ポート(図示せず)を通って外部流体回路へ流出する。この際、駆動室28が圧縮室29に対して空間的に遮断されているから、駆動室28内に存在する潤滑油は、圧縮室29へ流入しないので、圧縮された流体に混入しない。
【0030】
次に、本発明の第2実施の形態例のスクロール型圧縮機について図2(a)を参照して説明する。第2実施の形態例については、第1実施の形態例と対比して相違する点の構造のみを説明する。
【0031】
可動スクロール20の端板20aから環状のボス20cの部分が分割され、ボス20cと可動レース25とが一体に形成される。一体に形成された部材を、以下「駆動板30」という。駆動板30は、数本のボルト31によって端板20aに固定される。端板20aと駆動板30との間には、環状の仕切り板32が介在している。仕切り板32の周縁部は、リアハウジング10aとフロントハウジング10bとに挾持されている。シール部材27は、端板20aに設けられているが、仕切り板32又は駆動板30に設けることもできる。なお、駆動室28に潤滑油の流入穴10b4と流出穴10b5とが設けられているが、駆動室28内で潤滑油を保持する方式を採用することもできる。
【0032】
また、本発明の第2実施の形態例の第1設計変更例について図2(b)を参照して説明する。本第1設計変更例では、可動スクロール部材20の端板20aとは別個に、第2の端板20eを設ける。第2の端板20eは、ボス20cに嵌合されて端板20aに対向する。端板20aと第2の端板20eとの間に、環状の仕切り板32が介在している。
【0033】
続いて、本発明の第2実施の形態例の第2設計変更例について図3を参照して説明する。本設計変更例は、第2実施の形態例において、仕切り板32の穴部32aの径が、駆動板30に連結される端板20aの柱部20eの公転運動に支障がないようなサイズに形成されている。そして、仕切り板32の穴部32aの周囲が、シール部材27によってシールされる。
【0034】
なお、本書では、駆動板も第2の端板と呼称する。
【0035】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、潤滑油が圧縮又は膨張された流体に混入することを防止し、しかも、コンパクトで低廉なコストのスクロール型流体機械を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施の形態例のスクロール型圧縮機の要部の断面図である。
【図2】(a)は、本発明の第2実施の形態例のスクロール型圧縮機の要部の断面図、(b)は同第2実施の形態例の第1設計変更例のスクロール型圧縮機の要部の断面図である。
【図3】本発明の第2実施の形態例の第2設計変更例のスクロール型圧縮機の要部の断面図である。
【図4】従来のスクロール型圧縮機の断面図である。
【符号の説明】
10 ハウジング
10a リアハウジング
10a1 底板
10a2 固定スクロール
10a3 うず巻き体
10a4 吐出穴
10a5 円筒板
10a6 吸入穴
10b フロントハウジング
10b1 略段付円錐部
10b2 小径円筒部
10b3 内面段部
10b4 流入穴
10b5 流出穴
11 シャフト
11a 小径部
11b 大径部
12 駆動ピン
13 ボールベアリング
14 ボールベアリング
20 可動スクロール
20a 端板
20b うず巻き体
20c ボス
20d 環状溝
20e 第2の端板
22 ニードルベアリング
23 バランスウエイト
24 固定レース
25 可動レース
26 ボール
27 シール部材
28 駆動室
29 圧縮室
30 駆動板
31 ボルト
32 仕切り板
32a 穴部

Claims (2)

  1. ハウジングと、前記ハウジングに収容される固定スクロールと、前記ハウジングに収容され、かつ、前記固定スクロールにかみ合う可動スクロールと、前記ハウジングに収容され、かつ、前記可動スクロールを公転させる駆動機構とから構成され、前記可動スクロールの端板に第2の端板が対向して配設され、前記ハウジングに固定された仕切り板が前記端板と前記第2の端板との間に配置されることによって、前記駆動機構が収容される前記ハウジングの駆動室と、前記固定スクロールと前記可動スクロールとがかみ合うことにより形成される容積変化室とは、空間的に遮断されていることを特徴とするスクロール型流体機械。
  2. 前記仕切り板と前記可動スクロールの前記端板又は前記第2の端板との間に、シール部材が配設されることを特徴とする請求項1記載のスクロール型流体機械。
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