JP4279493B2 - 顕微手術器具の動作方法 - Google Patents

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Description

【0001】
本発明の分野
本発明は広く顕微手術器具の動作方法に関する。更に具体的には、限定しないが本発明は後眼部の眼科手術に使用される顕微手術器具、例えば硝子体切除術のプローブを動作させ、様々な手術目的について前記器具の性能を最適化する方法に関する。
【0002】
関連技術の説明
多くの顕微的手法が、様々な身体の組織の正確な切除及び/又は除法を必要とする。例えば、ある眼科手術の手法は、後眼部を満たす透明なゼリー状の硝子体液の切除及び/又は除去を必要とする。硝子体液、又は硝子体は、網膜にしばしば付着している多くの微細な線維から成る。従って、硝子体の切除及び除去は、網膜上での伸展、脈絡膜からの網膜の分離、網膜の裂傷、又は、最悪の場合である、網膜自身の切除及び除去を避けるために、丁寧に行う必要がある。
【0003】
後眼部の眼科的手術における顕微手術用切除ブローブの使用は周知である。その様な硝子体切除プローブは、典型的には毛様体輪に近接した強膜の切開を介して挿入される。当該手術はまた、他の顕微手術器具、例えば光ファイバー照明器、注入カニューレ、又は吸引プローブを、後眼部の手術の間に挿入し得る。執刀医は顕微鏡で眼を見ながら、前記の手法を行う。
【0004】
常用の硝子体切除プローブは、典型的に中空の外側の切除部材、中空の外側の切除部材内で同軸上に配置され、かつ移動可能に配列された中空の内側の切除部材、及び外側の切除部材からその遠心端付近まで放射状に広がる穴を含む。硝子体液は開いている穴に吸引され、そして内側の部材が作動して当該穴を閉じる。当該穴を閉じるとき、内側及び外側の両方の切除部材上の切除表面が、協力して硝子体を切除し、そして切除された硝子体は続いて内側の切除部材を介して吸引される。米国特許第4,577,629号(Martinez);第5,019,035号(Missirlian et al. );第4,909,249号(Akkas et al.);第5,176,628号(Charles et al.);第5,047,008号(de Jaan et al.);第4,696,298号(Higgins et al.);及び第5,733,297号(Wang)の全てが、様々なタイプの硝子体切除プローブを開示しており、そしてこれらの特許のそれぞれが、引用によってその全体を本明細書に組み入れられる。
【0005】
常用の硝子体切除プローブは、「ギロチンスタイル」プローブ及び回転プローブを含む。ギロチンスタイルプローブは内側の切除部材を有しており、これはその縦軸に沿って往復する。回転プローブは、その縦軸の周りを往復する内側の切除部材を有する。両方のタイプのプローブにおいて、内側の切除部材は様々な方法を用いて作動する。例えば、内側の切除部材は、機械式スプリングに打ち勝つピストン又はダイヤフラムアセンブリに対する空気圧によって、開いた穴の位置から閉じた穴の位置まで移動させ得る。空気圧の除去時に、スプリングは内側の切除部材を、閉じた穴の位置から開いた穴の位置まで戻す。別の例として、内側の切除部材は、空気圧の第一発生源を用いて開いた穴の位置から閉じた穴の位置まで移動し、そして次に空気圧の第二発生源を用いて閉じた穴の位置から開いた穴の位置まで移動し得る。更なる例として、内側の切除部材は、常用の回転電気モーター又はソレノイドを用いて開いた穴の位置と閉じた穴の位置との間を電気機械的に作動され得る。米国特許第4,577,629号は、ギロチンスタイルの、圧縮空気式ピストン/機械式スプリング作動型プローブを提供する。米国特許第4,909,249号及び第5,019,035号は、ギロチンスタイルの、圧縮空気式ダイヤフラム/機械式スプリング作動型プローブを開示している。米国特許第5,176,628号は、回転二重圧縮空気式ドライブプローブを示している。
【0006】
上述した常用の硝子体切除プローブを用いて、内側の切除部材は常に、完全に開いた穴の位置から完全に閉じた穴の位置まで作動し、そして完全に開いた穴の位置まで戻る。ある常用のギロチンスタイルの、圧縮空気式/機械式作動型プローブは、それぞれの切除サイクルにおいて前記部分をその完全に開いた穴の位置まで戻させない切除速度で動作することが物理的に可能であると信じられている。しかしながら、その様なプローブを動作させる手術系は、この動作形式を実現させなかった。これは、眼科手術の業界が完全に開いた穴が、その穴内での硝子体への液体の流れ及びその封入を最大化し、そして硝子体の切除及び除去を促進するのに必須であると歴史的に信じていたためである。
【0007】
多くの常用のプローブが、様々な手術目的での使用のために、比較的大きな、完全に開いた穴のサイズ(例えば0.020インチ(0.508mm)〜0.030インチ(0.762mm))を有する大きさにある。比較的遅い切除速度(例えば、最大800切除(cut)/分)での動作時に、それらのプローブは1回の切除サイクルにおいて、例えば中心(core)硝子体切除において大量の硝子体を除去し、そして物理的に大きな硝子体組織、例えばトラクションバンド(traction band)を切除するのに使用され得る。更に、これらのプローブは、更に繊細な操作、例えば可動組織の取り扱い(例えば網膜の分離部分又は網膜の裂傷に近接している硝子体の除去)、硝子体の基部(base)の解剖、及び膜の除去、を実施するのにも使用される。しかしながら、これらのプローブの大きな部分サイズ、大きな切除ストローク、及び比較的遅い切除速度の複合効果は、時に不所望な硝子体及び網膜組織の乱れ並びに眼の中での眼圧のピーク変動に対する大きなピークを生み出す。これらの限定は共に執刀医にとっての困難をもたらし、そして患者に対して有害なことがある。
【0008】
特殊な硝子体切除プローブが開発されてきた。例えば、比較的小さな、完全に閉じた穴のサイズ(例えば、0.010インチ(0.254mm)を有するプローブは、網膜付近での更に繊細な手術目的を実行するために使用されている。その様な特殊プローブの例には、Fort Worth, Texas のAlon Laboratories, Inc. から入手可能なMicroport(商標)プローブがある。しかしながら、これらのプローブは中心硝子体切除にはあまり有効ではなく、そしてその結果、執刀医はしばしば患者の眼の中で複数の硝子体切除プローブを使用し、そしてこれを繰り返し挿入することを強いられ、このことは手術を複雑にし、そして患者への損傷を増大させる。別の例として、米国特許第4,909,249号及び第5,019,035号は、手動で調節可能な穴のサイズを有するプローブを開示している。しかしながら、穴のサイズの繰り返しの手動調節は時間を浪費し、そして厄介である。比較的速い切除速度は、St.Louisの Storz Instrument Company(「Lightning」プローブ)及びLaguna Hills, CaliforniaのScieran Technologies, Inc.(「vit Commander 」プローブ)によって開発されてきた。しかしながら、これらのプローブは流速において幾分制限されており、その結果、それらは中心硝子体切除についてあまり有効ではない。
【0009】
従って、上述の制限に苦労しない、硝子切除術の基本的観点、中心硝子体切除、可動組織の取り扱い、硝子体の基部の解剖、及び膜の除去、の全てを実施する方法を改良する必要が存在している。後文でより詳細に例示する様に、この方法は、広範な手術目的を達成するための手順の間に必要とされる様な切除速度、穴の開きの負荷サイクル、及び穴の開いたサイズ又は口径を自動制御し得る。改良方法は、硝子体切除プローブ以外の顕微手術器具の操作にも必要とされる。理想として、当該改良方法は患者にとって安全で、執刀医が使用するのに容易で、かつ経済的に実施可能であるだろう。
【0010】
本発明の要約
本発明の1つの観点は、顕微手術器具を動作させるための方法を含んで成る。当該顕微器具は組織を受け取るための穴及び部材を含む。組織の流れは真空発生源によって前記穴に誘導され、そして前記部材は多くのサイクル速度に及ぶ、前記穴を開き、そして閉じるサイクル様式で作動する。前記部材の負荷サイクルは、前記穴への組織の流れを変えるサイクル速度で変化する。
【0011】
前記顕微器具は、硝子体切除プローブ、吸引プローブ又は他の切除プローブを含んで成ることがある。硝子体切除プローブの態様において、本発明は広範な硝子体切除術の目的を有効に実行する様に、所定の切除速度のためにプローブ内への流速及びプローブの口径を調節する能力をもたらす。
【0012】
好ましい態様の詳細な説明
本発明の好ましい態様及びそれらの利点は、図面の図1〜12を参照することによって最もよく理解され、同様の数字が、複数の図面の同様の、かつ対応する部分に使用される。
【0013】
最初に図1及び2を参照すると、顕微器具10の遠心端が概略的に例示されている。顕微器具10は、好ましくはギロチンスタイルの硝子体切除プローブであり、そして管状の外側の切除部材12及び外側の切除部材12内で移動可能に配置された管状の内側の切除部材14を含む。外側の切除部材12は穴16及び切緑18を有する。穴16は、好ましくはプローブ10の縦軸に沿って約0.020インチ(0.508mm)の長さを有する。内部の切除部材14は切縁20を有する。
【0014】
プローブ10の操作の間、内側の切除部材14は、プローブ10の縦軸に沿って、図1に示す様な位置Aから図2に示す様な位置Bまで動き、そして次に1回の切除サイクルで位置Aまで戻る。位置Aは穴16の完全に開いた位置に相当し、そして位置Bは穴16の完全に閉じた位置に相当する。位置Aにおいて、硝子体液又は他の組織が、矢印22によって表される真空誘導型の液体の流れによって、穴16に、かつ内側の切除部材14内に吸引される。位置Bにおいて、穴16及び内側の切除部材14内の硝子体は、切縁18及び20によって切除又は切断され、そして真空誘導型の液体の流れ22によって吸引される。切縁18及び20は、好ましくは硝子体の切除を保証するために、締まりばめにおいて形成される。更に、位置A及びBは、内側の切除部材14の、特異的なプローブ10における作動の変化を説明するために、穴16の端の多少外側に形式的に配置される。
【0015】
図3〜5を参照すると、顕微器具30の遠心端が概略的に例示されている。器具30は、好ましくは回転式硝子体切除プローブであり、そして管状の外側の切除部材32及び、外側の切除部材32内で移動可能に配置されている管状の内側の切除部材34を含む。外側の切除部材32は穴36及び切縁38を有する。穴36は、好ましくはプローブ30の縦軸に沿って約0.020インチ(0.508mm)の長さを有する。内側の切除部材34は切縁41を有する開口部40を有する。
【0016】
プローブ30の動作の間、内側の切除部材34はプローブ30の縦軸に関して、図4に示す様な位置Aから図5に示す様な位置Bまで回転し、そして1回の切除サイクルで位置Aまで戻る。位置Aは穴36の完全に開いた位置に相当し、そして位置Bは穴36の完全に閉じた位置に相当する。位置Aにおいて硝子体液又は他の組織は、矢印42によって表される真空誘導型の液体の流れによって、穴36、開口部40、及び内側の切除部材34に吸引される。位置Bにおいて、内側の切除部材34内の硝子体は、切縁38及び41によって切除又は切断され、そして真空誘導型の流れ42によって吸引される。切縁38及び41は、好ましくは硝子体の切除を保証するために、締まりばめにおいて形成される。更に、位置Bは、内側の切除部材34の、特異的なプローブにおける作動の変化を説明するために、外側の切除部材32の切除面の縁38を多少過ぎたところに形式的に配置される。
【0017】
プローブ10の内側の切除部材14は、好ましくは機械式スプリングに打ち勝つピストン又はダイヤフラムアセンブリに対する空気圧の適用によって、開いた穴の位置から閉じた穴の位置まで移動する。空気圧の除去時に、スプリングは内側の切除部材14を、閉じた穴の位置から開いた穴の位置まで戻す。プローブ20の内側の切除部材34は、好ましくは空気圧の第一発生源を用いて、開いた穴の位置から閉じた穴の位置まで移動し、そして次に空気圧の第二発生源を用いて、閉じた穴の位置から開いた穴の位置まで移動する。空気圧の第一発生源はパルス型であり、そして空気圧の第二発生源はパルス型又は一定型でもよい。あるいは、内側の切除部材14及び34は、常用のソニアモーター又はソレノイドを用いて電気機械的に作動し得る。これらの作動方法のうちのあるものの実施は、上述した米国特許第4,577,629号;第4,909,249号;第5,019,035号;及び第5,176,628号に更に完全に記載されている。例示目的のために、かつ限定目的ではなく、本発明はギロチンスタイルの、圧縮空気式/機械式スプリング作動型硝子体切除プローブ10に関して下文に記載される。
【0018】
図6は、本発明の使用にとって好ましい顕微手術システム50の電子式及び圧縮空気式サブアセンブリのある部分のブロック図を示す。例えば、システム50はFort Worth, Texas のAlcon Laboratories, Inc.によって販売されているAccurus(商標)手術システムであってよく、又は別の常用の眼科顕微手術システムでもよい。システム50は、好ましくは多数のマイクロコントローラー54に電子的に接続されたホストマイクロコンピューターを含む。マイクロコンピューター52は、好ましくはIntel(商標)486(商標)マイクロプロセッサーを含んで成り、そしてマイクロコントローラー54は、好ましくはIntel(商標)80C196(商標)マイクロプロセッサーを含んで成る。もちろん、等しい又はより優れた性能を有する常用のマイクロプロセッサーも、所望によりマイクロコンピューター52及びマイクロコントローラー54に利用され得る。マイクロコントローラー54aはシステム50の圧縮空気/液体モジュールと電子的に接続され、そしてそれを制御する。圧縮空気/液体モジュール56は、好ましくは空気圧の発生源58及び真空の発生源60を含み、これらは共に常用のPVCチューブ62及び64を介してプローブ10又はプローブ30と液体でつながれている。圧縮空気/液体モジュール56はまた、好ましくはその複数の構成要素間に適当な電気接続機器を含む。プローブ10及び30は共にシステム50を用いて使用され得るが、このシステム50の説明の残りは、それぞれの説明についてプローブ10のみを引用する。
【0019】
空気圧の発生源58は圧縮空気駆動の圧力を、好ましくは約57psi の圧力でプローブ10に供給する。ソレノイドバルブ66は、空気圧発生源58とプローブ10との間のチューブ62間に配置される。ソレノイドバルブ66は、好ましくは約2〜約3ミリ秒の応答時間を有する。システム50は更に、好ましくは可変コントローラー68を含む。可変コントローラー68は、マイクロコンピューター52及びマイクロコンピューター54aを介してソレノイドバルブ66と電子的に接続されており、そしてこれを制御する。後文で更に詳細に説明する様に、可変コントローラー68は好ましくは、プローブ10の内側の切除部材14を、様々な切除速度でその開いた穴の位置からその閉じた穴の位置まで駆動させる循還型の空気圧を供給する様に、開いた位置に閉じた位置とにソレノイドバルブ66を往復させる可変電気シグナルを提供する。図6には示していないが、圧縮空気/液体モジュール56も、プローブ30の内側の切除部材34を、その閉じた穴の位置からその開いた穴の位置まで駆動させるマイクロコントローラー54aによって制御される第二空気圧発生源及びソレノイドバルブを含み得る。可変コントローラー68は、好ましくは執刀医によって実施可能な常用の足踏みスイッチ又は足踏みペダルである。例えば、可変コントローラー68は上述したAccurus(商標)手術システムの一部として販売されている足踏みペダルであってもよい。あるいは、可変コントローラー68は、所望により常用の手持ち式スイッチ又は「タッチスクリーン」コントローラーであってもよい。
【0020】
図7は、3つの例示的な硝子体切除プローブについての切除速度に対する流速を示す。プロファイル80は、本発明の好ましい方法に従い作動する、圧縮空気式/機械式スプリング作動型プローブ10についての好ましい流れのプロファイルを示す。プロファイル82は、圧縮空気式/機械式スプリング作動型プローブ10についての従来の流れのプロファイルを示す。プロファイル84は、Microport(商標)プローブについての従来の流れのプロファイルを示す。図7に示す様に、流れのプロファイル80は、好ましくは実質的に線形である。
【0021】
150mmHg(19998.3Pa)真空の一定吸引で、流れのプロファイル84は、全ての切除速度でプロファイル82のものの約40%である。プロファイル84のプローブは、繊細な網膜の作業を実施する場合に、眼科手術業界によって望まれる1〜2cc(ml)/分の流速を達成するが、この同一のプローブは、中心硝子体切除術を実施する場合に必要とされるものよりも速い、8〜10cc(ml)/分の流速を達成できない
【0022】
図7は、プロファイル82及び84のそれぞれについての約2.5:1の0cpm (切除/分):最大cpm の流れの比を示している。対照的に、プロファイル80の流速は50:1以上である。プローブ10を介して流れを調節するために本発明の方法を用いることによって、更に完全には種々の切除速度、穴の開きの負荷サイクル、及び穴の口径の適用によって、流れのプロファイル80はプロファイル82と84を組み合わせたものよりも上回っている。その様な向上した範囲の流れは、異なる手術目的のための、患者の眼への多数のプローブの挿入についての必要性を大きく低下させ、又は排除し、手術の複雑さを低下させ、そして患者に対する関連した外傷を減少させる。
【0023】
流れのプロファイル80におけるプローブ10の向上した性能は、当該プローブの穴の開きの負荷サイクルを切除速度と一緒に動的に変化させることによって達成される。速い切除速度でのその様な負荷サイクルの変化も、穴16の「開いた」サイズ又は口径の変化を助長する。本発明の重要な発見の1つは、切除及び除去の標的とされる硝子体又は他の組織のサイズに従い、穴16の開いたサイズを変化させることが好ましいということである。例えば、図8は常用とされる、完全に開いた位置Aから完全に閉じた穴の位置Bまで作動し、そして一回の切除サイクルで位置Aまで戻るプローブ10の内側の切除部材14を示す。この操作形式において、穴16の口径は一定である。比較的小さい硝子体組織86の断片と完全に開いた穴16との断面積の差異により、真空発生源60は、常に効果的に組織86を吸引することはない。しかしながら、図9に示す様に、プローブ10の内側の切除部材14は、本発明の好ましい方法に従い、穴16の開いた位置A′から完全に閉じた穴の位置Bまで作動し、そして位置A′まで戻る。この操作形式において、穴16の口径は、硝子体組織86のサイズに従い、例えば位置A′まで変更され得る。硝子体組織86と開いた穴16の類似の断面積は、真空発生源60からのより高い効果的な真空圧及び穴16への組織86の効果的な吸引を可能にする。本発明の好ましい方法に従い切除速度と一緒に動的に変更する負荷サイクル及び/又は開いた穴のサイズの考え、並びにそれらから生じる利益は、今回図10,11、及び12と関連して更に詳細に考察される。
【0024】
図10は、空気圧発生源58とチューブ62を介してプローブ10の内側の切除部材14が作動する様に、ソレノイドバルブ66に対してマイクロコントローラー54aによって供給される例示的な電気シグナルを示す。バルブ66の閉じた位置は好ましくは0ボルトの値を指定され、そしてバルブ66の開いた位置は好ましくは5ボルトの値を指定される。所定の切除速度について、プローブ10はバルブ66が開く時間+バルブ66が開いた状態にある時間+バルブ66を閉じる時間+バルブ66が、バルブ66を開くシグナルが発生するまで閉じた状態にある時間、で表される期間τを有するだろう。τは切除速度に反比例する。例えば、800cpm の切除速度で、τは75ミリ秒(ms)/切除である。この書類の目的のために、開いた位置でバルブ66を維持する電気シグナルの期間は、パルス幅PWとして定義される。この文書で使用する場合、穴の開きの負荷サイクル、又は負荷サイクルは、τ(PW/τ)に対するPWの比として定義される。
【0025】
図11に示す様に、τは図10の電気シグナルに応じて圧縮空気/液体モジュール56によって生じる各圧縮空気パルス間の時間も表す。圧縮空気シグナルはバルブ66で電気シグナルから約9ms遅れる(バルブ66の開口における約2msの遅れ及びPVCチューブ62を伝う約7msの伝達の遅れ)。例示的な圧縮空気式/機械式スプリング作動型プローブである、Fort Worth, Texas のAlcon Laboratories, Inc.から入手可能なAccurus(商標)プローブは、約21psi の圧力Pcで完全に閉じた位置Bにあり、そして約4psi の圧力Poで完全に開いた位置にある。この例示的なプローブは、約34psi の最大圧力Pmax 及び約3psi の最小圧力Pmin を有する圧力パルスを持つ圧縮空気/液体モジュール56によって駆動する。Pc,Po,Pmax 及びPmin は異なるプローブについて変更され得る。
【0026】
上述の様に、プローブ10の切除速度又はバルブ66での電気シグナルのサイクリング速度は1/τに等しい。従って、切除速度の増大は期間τの減少をもたらす。PWが一定に保たれる場合、このτの減少は負荷サイクルの増大をもたらし、これは図11の圧縮空気波形のDC又はバイアスレベルを上向きに変えさせる。PWから独立して、切除速度の増大はPmax とPmin との間のピーク間の圧縮空気の振幅の低下をもたらす。
【0027】
内側の切除部材14の動きはプローブ10を駆動させるために適用される圧力と直接関連している。この考えと、既に説明されている、圧縮空気シグナルに対するPW及び切除速度の効果とを組み合わせて、一定に維持されるPWによる切除速度の増大は、振幅の減少及び穴の閉鎖方向への変化(すなわち、図2の線B方向)が共に起こる、内側の切除メンバー14の動きの正味の効果を有する。
【0028】
図11はまた、プローブ10の作動の変化、並びに他のシステムの構成要素、例えばバルブ66、PVCチューブ62、及び圧力発生源58における軽微な許容範囲を提供する、Pcの域を超えるPmax の過剰な圧縮空気の伝動を示す。これらの変化及び許容範囲を減少させることによって、Pmax の確立における過剰な時間及び圧力の多くが排除される。換言すると、Pmax がPcに設定される場合、内側の切除部材14の切縁20は、外側の切除部材12の切縁18の少し先まで作動し、そしてそれ以上にはならない。Poに戻るためのプローブ10の圧縮空気駆動の時間も減少し、それによって期間τの更なる減少、そして、その結果として切除速度の更なる増大を可能にする。
【0029】
図12は、圧縮空気式/機械式スプリング作動型プローブ10について測定した場合の圧縮空気波形の集合を示す。波形90は、プローブ10で常用に適用されている圧縮空気駆動を表し、そして波形92,94、及び96は、本発明の好ましい方法に従い適用される圧縮空気駆動の例を表す。完全な穴の閉鎖の場合の、Pc=21psi 及び完全な穴の開口の場合の、Po=4psi の圧力レベルを示す。常用の波形50についてのバルブ66での電気シグナルを一番上に示す。圧縮空気波形90の場合の電気シグナル90に由来する9msの遅れも示す。
【0030】
波形90はプローブ10の場合の常用の800cpm の圧縮空気駆動を表す。この場合、内側の切除部材14は、Pmax =34psi の場合、穴16のそれぞれの端を通過して運動し、そしてPmin =3psi は完全な振幅を提供する。対照的に、波形92,94、及び96は切縁18にまで及ぶが、完全に開いた穴16をもたらさない内側の切除部材の運動をもたらす。更に具体的には、波形92は各切除サイクルにおいて75%開いた穴16をもたらし、波形94は各切除サイクルにおいて50%開いた穴16をもたらし、そして波形96は各切除サイクルにおいて25%開いた穴16をもたらす。これらの波形に関して、各切除速度は所望の範囲の内側の切除部材14の振幅で確立され、そして次にパルス幅PWは、内側の切除部材14が切縁18の少し先まで運動する場合、Pcと実質的に等しいPmax を確立する必要に応じて増大し、又は減少する。このパルス幅PWの調整も負荷サイクル(PW/τ)を変化させる。
【0031】
図7の流れのプロファイル80を再び参照すると、パルス幅PWは好ましくは遅い切除速度(例えば800cmp 以下)より速い切除速度(例えば800cpm 以上)でより小さい。より速い切除速度でのより小さいパルス幅PWは、常用の範囲を超える切除速度での、穴16を通過する十分な流れでプローブ10を操作することを可能にする。より速い切除速度でのより小さいパルス幅PWは更に、PWが一定に保たれる場合に、より小さくされた負荷サイクルをもたらす。パルス幅PW又は負荷サイクルを変化させることによって、穴16を通過する流速は、任意な所望の量に変化され得る。
【0032】
より遅い切除速度で、内側の切除部材14は、好ましくは穴16の完全に開いた位置から穴16の完全に閉じた位置まで動き、そして各切除サイクルにおいて完全に開いた位置まで戻る。ある限界の切除速度の後、穴16の開いた穴のサイズは好ましくは切除速度の増大につれて縮小し始める。上述の様にパルス幅又は負荷サイクルを変化させることによって、任意な所望の程度の穴の開口サイズ又は穴の口径が確立され得る。穴16の開いた穴のサイズが縮小し始める限界の切除速度は、異なるプローブについて変化し得る。
【0033】
流れのプロファイル80上でのそれぞれの漸進的切除速度について、切除速度及び当該切除速度に対応するパルス幅PW(又は負荷サイクルPW/τ)は、好ましくは可変コントローラー68上の位置と関連している。この関係は、好ましくはマイクロコンピューター52又はマイクロコントローラー54aに固有のソフトウェア及び/又はハードウェアによって作り上げられる。
【0034】
可変コントローラー68は、好ましくは通常垂直な面における動きの範囲を有する常用の足踏みペダルである。最大値の切除速度(並びにそれによる最小値の流速及び最小口径の穴16)は、好ましくは足踏みペダル68の最上位に割り当てられる。切除速度の低下する値は、足踏みペダル68上の徐々に押し下げられる位置に割り当てられる。最小値の切除速度(並びにそれによる最大値の流速及び完全に開いた口径の穴16)は、好ましくは足踏みペダル68の完全に押し下げられた位置に割り当てられる。従って、執刀医が足踏みペダル68を押し下げる前に、プローブ10は最大の切除速度、最小の穴の口径、及び最小の流速状態で動作する。この動作状態は網膜付近での繊細な動作の実施、例えば可動組織の取り扱い、硝子体基部の解剖、又は膜の除去に特に有用である。執刀医が足踏みペダル68を押し下げると、最小の切除速度、完全に開いた穴の口径、及び最大の流速が達成されるまで、図7の流れのプロファイル80に従い、切除速度は低下し、そして流速は増大する。このより遅い切除速度の動作状態は、中心硝子体切除術又は大きな硝子体組織、例えばトラクションバンドの除去に特に有用である。あるいは、執刀医が足踏みペダル68を押し下げる前に、プローブ10が最小の切除速度、完全に開いた穴の口径、最大の流速状態で動作する様な、対照的な手法に従うことがある。執刀医が足踏みペダル68を押し下げると、最大の切除速度、最小の穴の口径、及び最小の流速が達成されるまで、図7の流れのプロファイル80に従い、切除速度は増大し、そして流速は低下する。
【0035】
穴の開きの負荷サイクル及び/又は穴の口径を動的に変化させる方法を、圧縮空気式/機械式作動型プローブ10を参照して上述してきたが、当業者にとって、それが二重の圧縮空気式作動型プローブ30に同様に適用可能であることは自明だろう。更に、負荷サイクル及び/又は穴の口径も、常用のリニア電気モーター、ソレノイド、又は他の電気機器装置を用いて作動するプローブのための流速及び切除速度の範囲に及ぶ様に変化し得ると信じられている。
【0036】
上文から、本発明が、執刀医及び患者の両方に対しての十分な利益を提供する硝子体切除術の基本的な観点の全てを実施する改良方法を提供すると理解され得る。本発明は例によって本明細書に例示され、そして種々の修飾が当業者によって行われ得る。例えば、穴の開きの負荷サイクル及び/又は穴の口径を、切除速度と一緒に動的に変化させる方法を、硝子体切除プローブの動作と関連して上述したが、当該方法は顕微手術用吸引プローブ、又は類似の方法で体内組織を切除し、そして除去するのに使用される顕微手術プローブの動作に対して同様に適用可能である。もちろん、吸引プローブにおいて、内側の切除部材はシーリング(Sealing)部材と交換されることもあり、そしてサイクル速度が切除速度に取って代わるだろう。別の例として、本発明の好ましい流れのプロファイルは実質的に線形であるが、本発明の方法は非線形の流れのプロファイルに対して同様に適用可能である。別の例として、本発明の好ましい流れのプロファイルは150mmHg真空の例示的な吸引を用いて例示されるが、本発明の方法は異なる吸引レベルの流れのプロファイルに対して同様に適用可能である。更なる例として、プローブ10に関連して上述した様に、切除速度、負荷サイクル、及びパルス幅を調整することによるもの以外の別の技術も流速を制御するのに使用され得る。
【0037】
本発明の動作及び構築が前述の記載から明らかであると考えられる。上文に示し、又は記載した方法は好ましいものとして特徴づけたが、種々の変化及び修飾が、特許請求の範囲において定義される様な本発明の精神及び範囲から逸脱することなくその中で行われ得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、完全に開いた穴の位置において示される本発明の方法の使用に好ましい第一硝子体切除プローブの側面の断面図である。
【図2】 図2は、閉じた穴の位置において示される図1のプローブの側面の断面図である。
【図3】 図3は、完全に開いた穴の位置において示される本発明の方法の使用に好ましい第二硝子体切除プローブの側面の部分断面図である。
【図4】 図4は、線4−4に沿っての図3のプローブの断面図である。
【図5】 図5は、閉じた穴の位置において示される、線4−4に沿っての図3のプローブの断面図である。
【図6】 図6は、本発明の使用にとって好ましい顕微手術システムのある位置のブロック図である。
【図7】 図7は、図1のプローブについての常用の流れのプロファイル及びMicroport(商標)プローブについての常用の流れのプロファイルと比較した、本発明の好ましい態様に従う図1のプローブについての流れのプロファイルを示す。
【図8】 図8は、本発明の好ましい方法に従い切除され、そして吸引され得る組織のサイズで、開いた穴のサイズを変化させる能力を例示する図1のプローブの平面図である。
【図9】 図9は、本発明の好ましい方法に従い切除され、そして吸引され得る組織のサイズで、開いた穴のサイズを変化させる能力を例示する図1のプローブの平面図である。
【図10】 図10は、図1のプローブの常用の動作のための圧縮空気波形を作製する、例示的な電気シグナルの図である。
【図11】 図11は、図1のプローブの常用の動作のための例示的な圧縮空気波形である。
【図12】 図12は、本発明の好ましい方法に従う図1のプローブの動作のための圧縮空気波形の集合を示す。

Claims (7)

  1. 組織を受け取る穴(16,36)及び切除部材(14,34)を含んで成る顕微手術器具(10,30)であって、
    真空発生源と接続するように構成されており、且つ足踏みペダル(68)を用いて制御可能であり;更に
    前記真空源を用いて前記穴への前記組織の流れを誘導するための手段、
    前記足踏みペダルの動きに応じて種々の切除速度に及ぶサイクルで前記穴が開き、そして閉じるように前記部材を作動させる手段、を含んで成り;
    前記切除速度は、前記足踏みペダルが全く押し下げられていない位置に近い場合に最高値であり、そして前記切除速度は、前記足踏みペダルが完全に押し下げられた位置に近い場合に最小値であり、更に、下向き方向に前記足踏みペダルを動かすことで、前記切除速度が減少し、前記穴の開いたサイズが増大し、そして上向き方向に前記足踏みペダルを動かすことで、前記切除速度が増大し、前記穴の開いたサイズが縮小し、前記切除速度の変化が前記穴の負荷サイクルの変化をもたらす、顕微手術器具。
  2. 前記部材を作動させるための前記手段が、開いた穴の位置から閉じた穴の位置まで前記部材(14,34)を動かすための圧縮空気発生源(58)、及び前記の閉じた穴の位置から前記の開いた穴の位置まで前記部材を動かすためのスプリング、を用いて、前記器具の縦軸に沿って、前記部材を往復させることで実行される、請求項1に記載の器具。
  3. 前記部材を作動させる手段が、開いた穴の位置から閉じた穴の位置まで前記部材(14,34)を動かすための第一圧縮空気発生源、及び前記の閉じた穴の位置から前記の開いた穴の位置まで動かすための第二圧縮空気発生源を用いて、前記器具の縦軸の周囲に前記部材を往復させることで実行される、請求項1に記載の器具。
  4. バルブ(66)を更に含み、そして前記部材を作動させる手段が、バルブ、前記バルブを開き、そして閉じる電気シグナル、及びパルス型圧縮空気波形を作り出すために前記バルブと接続された圧縮空気発生源、を用い;そして
    前記部材を作動させる手段が、所定の切除速度のために、前記パルス型圧縮空気波形の最大圧力が、前記部材に前記穴(16,36)を閉めさせる前記圧縮空気波形の圧力と実質的に等しくなる様に、前記電気シグナルのパルス幅を変化させるよう構成されている、請求項1に記載の器具。
  5. 前記部材を作動させる手段が、切除速度を増大させながら前記パルス幅を減少させ、そして/あるいは切除速度を減少させながら前記パルス幅を増大させるよう構成されている、請求項に記載の器具。
  6. 前記顕微手術器具が硝子体切除プローブ(10)であり、前記部材が内側の切除部材(14)である、請求項1に記載の器具。
  7. 前記部材を作動させる手段が、リニア電気モーター又はソレノイドを用いて、前記プローブの縦軸に沿って前記部材(14,34)を往復させるよう構成されている、請求項1に記載の器具。
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