特開平2−263369号公報には、データヘッドを支持する個々のデータヘッドアームにデータヘッドアームを機械的に独立に変形させる微小変位発生素子を組み込むことにより、アクセス時間を低減させ、スループットの向上を図るようにした磁気ディスク装置のデータヘッドアームおよびヘッド位置決め装置が記載されている。このデータヘッドアームおよびヘッド位置決め装置は次のように構成されている。ヘッドアクチュエータは、1個のシーク及びトラッキング専用のサーボヘッドを備えたサーボアームと、複数個のデータヘッドおよび微小変位発生素子としての圧電素子を備えたデータアームと、サーボアームならびに複数のデータアームを一体に可動するキャリッジと、キャリッジを可動するVCM(ボイスコイルモータ)とから成り立っている。そして一定時間ごとに、またはデ−タヘッドがオフトラックを発生していたときに、微小変位発生素子を組み込んだ各データヘッドアームを機械的にそれぞれ独立に変形させて、熱を含む低周波の振動成分のオフトラックを修正するように動作させる。
特開平4−330679号公報には、ヘッド位置決め用の微動アクチュエータを振動検出手段として用いることにより、加速度センサなどを設けることなく、振動によるヘッド位置誤差を高精度に補正するようにした磁気ディスク装置が記載されている。この磁気ディスク装置は次のように構成されている。粗動アクチュエータによって大まかな位置決めを行った後、微動アクチュエータによって目的のトラックに対向するように位置決めを行う。続いて、微動アクチュエータを一定変位量に保持し、微動アクチュエータからの振動情報を検出する。この場合、微動アクチュエータを構成するピエゾ素子からの信号をアンプで増幅・合成し、ADコンバ−タでAD変換してコントローラに供給する。コントローラは、振動情報をアクチュエータにフィードバックし、その変位を打消すように駆動する。
特開平5−11854号公報には、光ディスク装置のトラッキング制御系などに使用される2段アクチュエータ制御装置の安定性を改善するようにした2段アクチュエータ制御装置が記載されている。この2段アクチュエータ制御装置は次のように構成されている。可動範囲が小さく高周波で駆動可能な第1のアクチュエータと、第1のアクチュエータの駆動回路と、可動範囲が大きく低周波で駆動可能な第2のアクチュエータと、第2のアクチュエータの駆動回路と、2つのアクチュエータの動作帯域を分離するローパスフィルタと、第1のアクチュエータの第2のアクチュエータとの相対的な位置を検出する位置検出器と、位置信号を微分する微分器とで構成され、微分器の出力が第1のアクチュエ−タ駆動回路の入力にフィードバックされる。
特開平6−203401号公報には、有限光学系の光ヘッドによって情報の記録および再生を行う光ディスク装置において、信頼性の向上および消費電力の低減を図るようにした光ディスク装置およびそのトラッキング制御方法が記載されている。この光ディスク装置は、ファインアクチュエータを含む微動駆動系と、コースアクチュエータを含む粗動駆動系と、粗動駆動系の動作を制限するためのスイッチとを具備する。そして、記録時にはスイッチをオンにして微動駆動系および粗動駆動系による2段サーボ方式のトラッキング制御を行い、再生時はスイッチをオフにして微動駆動系のみによるトラッキング制御を行う。
従来、圧電素子(ピエゾ素子)等の微少変位発生素子を組み込んだ2段アクチュエータ駆動装置で用いられる位置決め制御装置は、例えば特開平2−263369号公報に示されるように、微動アクチュエータと粗動アクチュエータとにより高周波成分も含めたオフトラック補正を行ない高精度な位置決めを行なうことを目的として用いられている。
また、光ディスク装置のトラッキング制御系などに使用される2段アクチュエータ制御装置は、たとえば特開平5−11854号公報に示されるように、位置誤差信号をフィードバックして粗動アクチュエータを主に低周波数成分で駆動し、可動範囲の小さい微動アクチュエータを高周波数成分で駆動することによりヘッド位置決めを行なっている。
図9は従来のヘッド位置決め2段アクチュエータ制御装置の一例を示すブロック構成図である。従来のヘッド位置決め2段アクチュエータ制御装置は、従来の2段アクチュエータ制御部1bと、各前置アナログ回路部8,9と、2段アクチュエータ機構部2とから構成されている。従来の2段アクチュエータ制御部1bは、粗動アクチュエータ制御部43と微動アクチュエータ制御部44とからなる2段サーボ制御部27で構成されている。2段アクチュエータ機構部2は、粗動アクチュエータ機構部3と、微動アクチュエータ機構部4と、第1の加算部5と、第2の加算部6と、ランナウトモデル発生部7とから構成されている。
粗動アクチュエータ機構部3は、データのリードまたはライトを行なうヘッド(図示せず)を任意のトラック間で移動させるための粗動アクチュエータを備えている。この粗動アクチュエータとしては、VCM(Voice Coil Motor)やステッピングモータやリニアモータ等が用いられている。微動アクチュエータ機構部4は、ヘッド(図示せず)を微少移動させるための微少アクチュエータを備えている。この微少アクチュエータとしては、ピエゾ素子やVCMや板バネ等が用いられている。この微動アクチュエータ機構部4は、可動範囲が小さいが高周波信号で駆動可能である。
ランナウトモデル発生部7は、スピンドルの回転や装置振動などに起因する位置決め精度を悪化させる要因をモデル化した信号を位置外乱信号(ランナウト信号)21として発生するものである。
符号16は微動アクチュエータから粗動アクチュエータへの作用力を、符号17は粗動アクチュエータから微動アクチュエータへの作用力を示している。符号18は粗動アクチュエータの変位量信号、符号19は微動アクチュエータの変位量信号である。符号20はヘッド位置信号、符号21は位置外乱信号、符号22はヘッド位置誤差信号である。
第1の加算部5は、粗動アクチュエータ機構部3と微動アクチュエータ機構部4とが駆動された結果、ヘッドが位置する場所を表す出力部であり、制御系ブロック図上では粗動アクチュエータ位置18と微動アクチュエータ位置19との加算点である。第2の加算部6は、ディスク上に書き込まれたサーボ情報をヘッドが読み込んでヘッド位置誤差として出力する出力部であり、制御系ブロック図ではヘッド位置信号20と位置外乱信号(ランナウト信号)21の加算を行なう加算点である。
一方の前置アナログ回路部8は、粗動アクチュエータ機構部3の共振周波数のゲインを下げるノッチフィルタ(NTF)や粗動アクチュエータ機構部3への入力信号を増幅するアンプ(AMP)等を備えて構成されている。他方の前置アナログ回路部9は、微動アクチュエータ機構部4の共振周波数のゲインを下げるノッチフィルタ(NTF)や微動アクチュエータ機構部4への入力信号を増幅するアンプ(AMP)等を備えて構成されている。
2段サーボ制御部27は、粗動アクチュエータ制御部43と微動アクチュエータ制御部44からなる。粗動アクチュエータ制御部43は所定のサンプリング時間で動作するディジタルコントローラである。微動アクチュエータ制御部44は粗動アクチュエータ制御部43と同一あるいは異なるサンプリング時間で動作するディジタルコントローラである。
次に動作を説明する。粗動アクチュエータ機構部3は、粗動アクチュエータ駆動信号14に従いヘッドを移動させる。微動アクチュエータ機構部4は、微動アクチュエータ駆動信号15に従い粗動アクチュエータ機構部3に比べて小さい範囲でヘッドを移動させる。第1の加算部5は、粗動アクチュエータ機構部3と微動アクチュエータ機構部4とが駆動された結果としてヘッドが位置する場所を表すヘッド位置信号20を生成する。第2の加算部6は、ヘッド位置信号20と位置外乱信号(ランナウト信号)21との加算信号でありヘッドが実際に読み取ったサーボ位置であるヘッド位置誤差信号22を生成する。
粗動アクチュエータ制御部43は、ヘッド位置誤差信号22を入力とし粗動アクチュエータ機構部3の駆動信号(粗動アクチュエータ制御信号)33を生成する。微動アクチュエータ制御部44は、ヘッド位置誤差信号22を入力とし微動アクチュエータ機構部3の駆動信号(微動アクチュエータ制御信号)34を生成する。第1の前置アナログ回路部8は、粗動アクチュエータ制御信号33から粗動アクチュエータ駆動信号14を生成する。前置アナログ回路部9は微動アクチュエータ制御信号34から粗動アクチュエータ駆動信号14を生成する。2段サーボ制御部27は、粗動アクチュエータ制御部43と微動アクチュエータ制御部44とから構成され、2段アクチュエータによるヘッド位置決め制御系を安定化する。
特開平2−263369号公報
特開平4−330679号公報
特開平5−11854号公報
特開平6−203401号公報
従来のヘッド位置決め2段アクチュエータ制御装置は、次に示す第1〜第3の問題点を有する。第1の問題点は、2段アクチュエータ機構の場合、消費電力が1段アクチュエータ機構の場合と比べて大きくなることである。その理由は、微動位置決めのためのアクチュエータが付加されているためである。
第2の問題点は、制御器設計モデルで用いた微動アクチュエータ入出力特性の理論値で制御を行なう場合と比べて位置決め精度が悪化することである。その理由は、ヒステリシス特性や装置量産時のばらつきや使用環境や経年変化などによって微動アクチュエータ機構部の入出力特性が変化するためである。
第3の問題点は、微動アクチュエータ機構部の入出力特性のみを装置組立て後に測定することが難しいことである。その理由は、2段アクチュエータ機構を用いてヘッド位置決めを行なう2段サーボ制御系は2入力1出力の制御対象であるため、複数の入力信号が加わる状況で観測された信号が粗動アクチュエータ機構部と微動アクチュエータ機構部とによりどれくらいの影響が与えられたのか計算するために複雑な手段が必要となるためである。
この発明の目的は、データのリード動作またはライト動作時以外の消費電力を低減させることが可能な2段アクチュエータ制御装置を提供することにある。さらに、この発明の他の目的は、2段アクチュエータの位置決め精度を向上させるために、微動アクチュエータのゲインやヒステリシス特性などの入出力特性を簡単に同定することが可能な2段アクチュエータ制御装置を提供することにある。
まず、本発明の前提となる参考技術について説明する。
参考技術1に係る2段アクチュエータ制御装置は、データのリード動作時またはライト動作時に2段アクチュエータ機構部に加える制御信号とは異なる信号を生成する手段を備えてなる。
参考技術1に係る2段アクチュエータ制御装置は、データのリード動作時またはライト動作時に加える制御信号とは異なる信号を生成することにより、微動アクチュエータの入出力特性を推定することができ、さらに、推定したパラメータに応じて微動アクチュエータ制御信号を補正することでヘッド位置決め精度を改善することができる。
参考技術2に係る2段アクチュエータ制御装置は、参考技術1に係る2段アクチュエータ制御装置において、2段アクチュエータ制御部に微動アクチュエータ入出力特性推定部を備えてなる。
参考技術2に係る2段アクチュエータ制御装置は、2段アクチュエータ制御部が微動アクチュエータ入出力特性推定部を備え、推定した微動アクチュエータ入出力特性に応じて微動アクチュエータ駆動信号を変化させることによって、装置量産や経年変化に伴う微動アクチュエータ入出力特性ばらつきに応じて微動アクチュエータ制御信号を補正することができる。
参考技術3に係る2段アクチュエータ制御装置は、参考技術1に係る2段アクチュエータ制御装置において、2段アクチュエータ制御部が、2段アクチュエータ機構部をあたかも粗動アクチュエータ機構部のみで構成される1段アクチュエータかのように制御する粗動1段サーボ制御部と、微動アクチュエータをヘッド位置誤差とは独立に駆動する微動アクチュエータ駆動信号発生部と、微動アクチュエータ制御信号とヘッド位置誤差とから微動アクチュエータ入出力特性を推定する微動アクチュエータ入出力特性推定部と、推定した微動アクチュエータの入出力特性に応じてゲインを変化する可変ゲイン部とを備えてなる。
参考技術3に係る2段アクチュエータ制御装置は、2段アクチュエータ制御部が、2段アクチュエータ部をあたかも粗動アクチュエータ機構部のみで構成される1段アクチュエータかのように制御し、微動アクチュエータをヘッド位置誤差とは独立に駆動し、微動アクチュエータ制御信号とヘッド位置誤差信号とから微動アクチュエータ入出力特性を計算することにより、微動アクチュエータ機構部の動作のみを分離して微動アクチュエータ入出力特性を推定することができる。
参考技術4に係る2段アクチュエータ制御装置は、参考技術3に係る2段アクチュエータ制御装置において、微動アクチュエータ入出力推定部が、粗動1段サーボ系のエラー圧縮率ゲインを用いてヘッド位置誤差信号から推定された微動アクチュエータ変位量と微動アクチュエータ駆動信号とから微動アクチュエータ入出力特性を推定する構成としてなる。
参考技術4に係る2段アクチュエータ制御装置は、粗動1段サーボ系のエラー圧縮率ゲインを用いてヘッド位置誤差から微動アクチュエータ変位量を推定し、微動アクチュエータ駆動信号と推定した微動アクチュエータ変位量とから微動アクチュエータ入出力特性を推定することにより、微動アクチュエータ変位量を推定した上で微動アクチュエータ制御信号に加えた入力を基に微動アクチュエータ入出力特性を推定することができる。
参考技術5に係る2段アクチュエータ制御装置は、参考技術3に係る2段アクチュエータ制御装置において、微動アクチュエータ入出力推定部が、次に示す式1により微動アクチュエータ駆動信号を生成し、次に示す式2により微動アクチュエータゲインを推定する構成としてなる。
参考技術5に係る2段アクチュエータ制御装置は、式1により微動アクチュエータ駆動信号を生成し、式2により微動アクチュエータゲインを推定することにより、ヘッド位置決めとは独立に加えられた特定周波数の正弦波による微動アクチュエータ駆動信号から微動アクチュエータゲインを推定することができる。
参考技術6に係る2段アクチュエータ制御装置は、参考技術3に係る2段アクチュエータ制御装置において、微動アクチュエータ入出力推定部が、次に示す式1により微動アクチュエータ駆動信号を生成し、次に示す式3および式4によって微動アクチュエータのヒステリシス特性を推定する構成としてなる。
参考技術6に係る2段アクチュエータ制御装置は、式1により微動アクチュエータ駆動信号を生成し、式3および式4によって微動アクチュエータのヒステリシス特性を推定することにより、微動アクチュエータ機構部のヒステリシス特性を推定することができる。
参考技術7に係る2段アクチュエータ制御装置は、データの読み書きを行なうヘッドを移動させるアクチュエータ機構がヘッドのトラック間移動を行なう粗動アクチュエータ機構部とヘッドの微小移動を行なう微動アクチュエータ機構部とからなる2段アクチュエータ機構部と、前記粗動アクチュエータ機構部に対する前置アナログ回路部と、前記微動アクチュエータ機構部に対する前置アナログ回路部と、粗動アクチュエータ機構部および微動アクチュエータ機構部を制御する信号を生成する2段アクチュエータ制御部とを備える情報記録機器の2段アクチュエータ制御装置において、前記2段アクチュエータ制御部は、データのリード動作あるいはライト動作を行なわない場合、あるいは、上位系からの命令があった場合に、前記2段アクチュエータ制御部を省電力動作させることを特徴とするものである。
参考技術8に係る2段アクチュエータ制御装置は、参考技術1に係る2段アクチュエータ制御装置において、2段アクチュエータ制御部が、データのリードまたはライトを行なわない場合、ならびに、上位系からの命令があった場合に、2段アクチュエータ機構部を省電力動作させる構成としてなる。
参考技術8に係る2段アクチュエータ制御装置は、データのリード動作またはライト動作を行なわない場合、ならびに、上位系からの命令があった場合に、2段アクチュエータ部を省電力動作させることにより、2段アクチュエータ制御装置の消費電力を減らすことができる。
次に、本発明について説明する。
請求項1に係る2段アクチュエータ制御装置は、参考技術7又は8に係る2段アクチュエータ制御装置において、2段アクチュエータ制御部が、2段アクチュエータ機構部を用いてデータのリード動作やライト動作を可能にする2段サーボ制御部と、2段アクチュエータ機構部をあたかも粗動アクチュエータからなる1段アクチュエータかのように制御する粗動1段サーボ制御部と、2段サーボ制御部と1段サーボ制御部とを切り替える1段/2段サーボ切替部と、微動アクチュエータ入出力特性の推定結果を保持した微動アクチュエータ入出力特性推定部と、微動アクチュエータ入出力特性推定部に保持された微動アクチュエータ入出力特性に応じて前記微動アクチュエータの制御信号のゲインを可変する可変ゲイン部と、を具備して構成される。そして、2段アクチュエータ制御部は、データのリード動作あるいはライト動作を行なわない場合、あるいは、上位系からの命令があった場合に、1段/2段サーボ切替部によって粗動1段サーボ制御部に切り替えることにより、粗動アクチュエータ機構部のみによってヘッド位置決めを行う。
請求項1に係る2段アクチュエータ制御装置は、2段アクチュエータ制御部が、データのリード動作やライト動作を可能にする2段サーボ制御部と、2段アクチュエータ機構部をあたかも粗動アクチュエータからなる1段アクチュエータかのように制御する粗動1段サーボ制御部とを切替えることにより、省電力動作時には、2段アクチュエータ部は粗動アクチュエータ機構部のみによりヘッド位置決めを行い、ヘッド位置誤差信号とは独立に生成される省電力駆動信号により微動アクチュエータを駆動することにより、2段アクチュエータ制御装置の消費電力を減らすことができる。
請求項2に係る2段アクチュエータ制御装置は、請求項1に係る2段アクチュエータ制御装置において、2段アクチュエータ制御部は、データのリード動作あるいはライト動作を行なわない場合、あるいは、上位系からの命令があった場合に、微動アクチュエータ機構部への通電を停止する、構成としてなる。
請求項2に係る2段アクチュエータ制御装置は、データのリード動作またはライト動作を行なわない場合、ならびに、上位系からの命令があった場合に、微動アクチュエータ省電力駆動動作信号発生部が0を出力することにより、2段アクチュエータ制御装置の消費電力を減らすことができる。
以上説明したように、参考技術7に係る2段アクチュエータ制御装置は、データのリード動作またはライト動作を行なわない場合、ならびに、上位系からの命令があった場合に、2段アクチュエータ部を省電力動作させる構成としたので、2段アクチュエータ制御装置の消費電力を減らすことができる。
参考技術8に係る2段アクチュエータ制御装置は、データのリード動作またはライト動作を行なわない場合、ならびに、上位系からの命令があった場合に、2段アクチュエータ部を省電力動作させる構成としたので、2段アクチュエータ制御装置の消費電力を減らすことができる。これに加え、データのリード動作時またはライト動作時に加える制御信号とは異なる信号を生成する構成としたので、微動アクチュエータの入出力特性を推定することができ、さらに、推定したパラメータに応じて微動アクチュエータ制御信号を補正することでヘッド位置決め精度を改善することができる。
請求項1に係る2段アクチュエータ制御装置は、2段アクチュエータ制御部データのリード動作やライト動作を可能にする2段サーボ制御部と、2段アクチュエータ機構部をあたかも粗動アクチュエータからなる1段アクチュエータかのように制御する粗動1段サーボ制御部とを切替えることにより、省電力動作時には、2段アクチュエータ部は粗動アクチュエータ機構部のみによりヘッド位置決めを行い、ヘッド位置誤差信号とは独立に生成される省電力駆動信号により微動アクチュエータを駆動する構成としたので、2段アクチュエータ制御装置の消費電力を減らすことができる。
請求項2に係る2段アクチュエータ制御装置は、データのリード動作またはライト動作を行なわない場合、ならびに、上位系からの命令があった場合に、微動アクチュエータ省電力駆動動作信号発生部が0を出力する構成としたので、2段アクチュエータ制御装置の消費電力を減らすことができる。
以上のようにこの発明に係る2段アクチュエータ制御装置は、次の3つの効果を奏する。第1の効果は、2段アクチュエータ制御装置の消費電力を減らすことである。その理由は、データのリードあるいはライトを行なわない場合、あるいは、上位系からの命令がある場合、2段アクチュエータ機構部をあたかも1段アクチュエータ構造のようにヘッド位置を制御することにより、微動アクチュエータ駆動信号として省電力駆動信号を用いてヘッド位置決めを行なうためである。
第2の効果は、2段サーボ制御部によるヘッド位置決め精度が改善されることである。その理由は、微動アクチュエータゲインの理論値を基に設計した2段サーボ制御部の微動アクチュエータ駆動信号に装置ばらつきやヒステリシスなど微動アクチュエータ入出力特性に応じた補正を加えることによりヘッド位置誤差が小さくなるためである。
第3の効果は、微動アクチュエータ入出力特性を装置組立て後に簡単に推定することができることである。その理由は、粗動アクチュエータのみによるヘッド位置決めを行なった上でヘッド位置決めと独立に微動アクチュエータ駆動信号を生成することにより、微動アクチュエータ制御信号とヘッド位置誤差信号から推定した微動アクチュエータ変位量とから微動アクチュエータ入出力特性を推定するためである。
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
まず、本実施形態の前提となる参考例について説明する。図1は2段アクチュエータ制御装置の一参考例を示すブロック構成図である。図1は微動アクチュエータ入出力特性推定時の2段アクチュエータ制御装置の概略ブロック構成を示している。図1に示す2段アクチュエータ制御装置は、2段アクチュエータ制御部1と、2段アクチュエータ機構部2と、粗動アクチュエータ用の前置アナログ回路部8と、微少アクチュエータ用の前置アナログ回路部9とからなる。
2段アクチュエータ機構部2は、図示しないヘッドをトラックに追従させる粗動アクチュエータ機構部3と、図示しないヘッドを微小移動させる微動アクチュエータ機構部4と、図示しないディスクの振動等によってディスク面上に書き込まれたサーボ位置がずれる要因をモデル化した位置外乱信号(ランナウト信号)21を発生させるランナウト発生部7と、第1の加算部5と、第2の加算部6とから構成している。
粗動アクチュエータ機構部3は、VCM(Voice Coil Motor)やステッピングモータなどを用いて構成している。微動アクチュエータ機構部4は、ピエゾ素子やVCMなどを用いて構成している。ランナウト発生部7は、スピンドルモータの回転に起因して生じる媒体振動やサスペンション振動などを外乱発生要因としてモデル化した位置外乱信号(ランナウト信号)21を発生させるためのものである。このランナウト発生部7は、ディスクの回転数に同期する周期的関数と機構部の振動や観測ノイズを表す白色雑音関数とに基づいて位置外乱信号(ランナウト信号)21を発生させる。
ここで、粗動アクチュエータ機構部3は、粗動アクチュエータ駆動信号14により発生した力と微動アクチュエータからの作用力16とによって駆動され粗動アクチュエータ変位量18を出力する。微動アクチュエータ機構部4は、微動アクチュエータ駆動信号15により発生した力と粗動アクチュエータからの作用力17とによって駆動され微動アクチュエータ変位量19を出力する。加算部5は粗動アクチュエータ変位量18と微動アクチュエータ変位量19とより決まるヘッド位置20を出力する。ランナウト発生部7は、粗動アクチュエータ駆動信号14と微動アクチュエータ駆動信号15とをそれぞれ0として入力したときにヘッドが観測するサーボ情報のずれ量である位置外乱信号(ランナウト信号)21を生成する。加算部6は、ヘッド位置20と位置外乱信号21とより決まるヘッド位置誤差信号22を出力する。
2段アクチュエータ制御部1は、粗動アクチュエータ機構部3のみを駆動してヘッドを位置決めをする粗動1段サーボ制御部10と、微動アクチュエータ機構部4の入出力特性に応じてゲインを変化することのできる可変ゲイン部11と、微動アクチュエータ機構部4をヘッド位置誤差信号22からのフィードバックを行なわずこれとは独立に微動アクチュエータゲイン推定用加振信号25を生成する微動アクチュエータ駆動信号発生部12と、微動アクチュエータ制御信号24とヘッド位置誤差信号22とに基づいて微動アクチュエータ入出力特性を推定する微動アクチュエータ入出力特性推定部13とからなる。
粗動1段サーボ制御部10は、リードラグフィルタやPID制御器や外乱オブザーバや状態オブザーバなどのディジタルコントローラにより構成している。微動アクチュエータ駆動信号発生部12は、周期関数や三角波や矩形波やランダム信号などの時間関数を備え、これらの時間関数の組み合わせによって微動アクチュエータ駆動入力(微動アクチュエータゲイン推定用加振信号25)を生成する構成としている。微動アクチュエータゲイン推定部13は、粗動1段サーボ系における特定周波数のエラー圧縮率(感度関数)ゲインを観測する手段と、ヘッド位置誤差信号22を平均化する手段と、微動アクチュエータゲインを推定する手段と、ヒステリシス特性を推定する手段とにより構成している。
ここで、粗動1段サーボ制御部10は、ヘッド位置誤差信号22に基づいて粗動アクチュエータ機構部3を駆動しヘッドを目標位置に位置決めする粗動アクチュエータ制御信号23を生成する。
可変ゲイン部11は、微動アクチュエータ入出力特性推定用加振信号25から微動アクチュエータ制御信号24を生成する。
微動アクチュエータ駆動信号発生部12は、粗動アクチュエータ機構部3のみで位置決めをしている状態で上位系(図示せず)からの命令に応じて微動アクチュエータ機構部4を駆動しヘッド位置をずらす微動アクチュエータ入出力特性推定用加振信号25を生成する。
微動アクチュエータ入出力特性推定部13は、加えられた微動アクチュエータ制御信号24とヘッド位置誤差信号22とから微動アクチュエータの入出力特性を推定し、可変ゲイン部11のゲインを再設定するための微動アクチュエータゲイン設定信号26を生成して出力する。
粗動アクチュエータ用の前置アナログ回路8は、粗動アクチュエータ機構部3の共振周波数のゲインを下げるノッチフィルタ(NTF)や入力信号を増幅するアンプ(AMP)などから構成している。ここで、前置アナログ回路部8は、粗動アクチュエータ制御信号23を入力して粗動アクチュエータ駆動信号14を出力する。
微動アクチュエータ用の前置アナログ回路9は、微動アクチュエータ機構部4の共振周波数のゲインを下げるノッチフィルタ(NTF)や入力信号を増幅するアンプ(AMP)などから構成している。ここで、前置アナログ回路部9は、微動アクチュエータ制御信号24を入力して微動アクチュエータ駆動信号15を出力する。
次に、図1に示した参考例の動作を説明する。通常、2段アクチュエータによるヘッド位置決め動作時には、図9に示したブロック構成によりヘッド位置決めが行なわれる。この発明に係る2段アクチュエータ制御装置では、上位系によって微動アクチュエータ入出力特性推定コマンドが発行されると、データのリードまたはライト動作を行なわずに、2段アクチュエータ制御装置は図1に示した構成に切り替わり微動アクチュエータ入出力特性推定を行なう。
図2は参考例における微動アクチュエータ入出力特性推定時の動作を示すフローチャートである。まず、粗動1段サーボ系に特定周波数の正弦波を入力するなどしてエラー圧縮率ゲインを推定する(ステップS1)。粗動1段サーボ系のエラー圧縮率ゲイン計測後、微動アクチュエータ加振信号を入力する(ステップS2)。粗動1段サーボ系の特定周波数のエラー圧縮率ゲインと各サンプリング時間毎に観測した微動アクチュエータ加振信号やヘッド位置誤差信号とを基に、微動アクチュエータ入出力特性の推定計算を行なう(ステップS3)。
次に、図3に示す2段アクチュエータ機構部の構造を示す説明図を参照して、2段アクチュエータ機構部2の動作を説明する。粗動アクチュエータ53は、VCM(図示せず)に流れる電流に応じて、粗動アクチュエータ53を粗動アクチュエータ可動方向55に駆動する。微動アクチュエータ54は、ピエゾ素子(図示せず)に印加した電圧に応じて、微動アクチュエータ54を微動アクチュエータ可動方向56に駆動する。ヘッド57は、粗動アクチュエータ53と微動アクチュエータ54とにより位置決めされる。ディスク58は、スピンドルモータ(図示せず)によって回転される。目標シリンダ59は、回転するディスクの偏芯や振動によって変動する。ヘッド位置誤差信号22は、2段アクチュエータによって位置決めされたヘッド57と変動する目標シリンダ59との差として出力される。
図1に示した粗動アクチュエータ機構部3は図3の粗動アクチュエータ53に対応し、図1に示した微動アクチュエータ機構部4は図3の微動アクチュエータ54に対応する。また、図1に示したランナウト発生部7は、スピンドル回転同期成分や媒体振動によるディスク58の振動やキャリッジ振動やヘッドの観測ノイズなどの位置決め精度を悪化させる要因をモデル化した位置外乱信号(ランアウト信号)21を発生するものである。
図1に示した粗動アクチュエータ用の前置アナログ回路部8は、粗動アクチュエータ53の低域から2次分の主共振を抑制するためのノッチフィルタ(NTF)と、D/A変換されたVCM制御信号を増幅するアンプ(AMP)とから構成する。微動アクチュエータ用の前置アナログ回路部9は、微動アクチュエータ54の低域から2次分の主共振を抑制するための(NTF)ノッチフィルタと、D/A変換されたピエゾ制御信号を増幅するアンプ(AMP)とから構成する。
粗動1段サーボ制御部(粗動1段サーボ系)10は、例えば、オープンループのゼロクロス周波数が500HzになるようなPID制御器と、2次の状態オブザーバとから構成する。可変ゲイン部11は、微動アクチュエータ入出力特性の設計値(理論値)を初期値として持つ。
微動アクチュエータ駆動信号発生部12は、次に示す式1によって表わされる周期的関数に基づいて、微動アクチュエータゲイン推定用加振信号25を発生する。
微動アクチュエータ入出力特性推定部13は、微動アクチュエータゲイン推定時には、次に示す式2に基づいて微動アクチュエータゲインKpztを演算する。
図1で構成される制御系において、微動アクチュエータ機構部4の動作を粗動1段サーボ系からみた場合、微動アクチュエータ変位量19は粗動アクチュエータ変位量18に対する位置外乱信号21と同様に制御系に対する外乱信号として影響する。微動アクチュエータ駆動信号発生部12が周波数f0の微動アクチュエータゲイン推定用加振信号25を出力したとき、粗動1段サーボ制御部10は周波数f0で変化する微動アクチュエータ変位量19を外乱信号とみなして周波数f0でのエラー圧縮率ゲインg0で圧縮している。それ故、微動アクチュエータ変位量19はヘッド位置誤差信号22に粗動1段サーボ系のエラー圧縮率ゲインg0の逆数を掛けることにより推定することができる(図2のステップS3)。その結果、前置アナログ回路部も含めた微動アクチュエータゲインは、推定した微動アクチュエータ変位量19と微動アクチュエータ駆動入力24とから式2を用いて推定することができる。
また、微動アクチュエータ入出力特性推定部13は、微動アクチュエータヒステリシス特性推定時には、次に示す式3ならびに式4に基づいて微動アクチュエータのヒステリシス特性を推定する。
なお、微動アクチュエータゲイン推定用加振信号25として、式1で示した単一周波数の正弦波信号を用いる以外に、複数の周波数の正弦波を線形和した信号や矩形波信号やインパルス信号などを用いるようにしてもよい。また、微動アクチュエータゲイン推定時には、式2に基づいて特定周波数毎にゲインを計算するようにしてもよい。さらに、微動アクチュエータゲインを複数の周波数についてそれぞれ求め、複数の周波数毎に求めた微動アクチュエータゲインを平均化して微動アクチュエータゲインを求めるようにしてもよい。
図4は粗動1段サーボ系に切り替えた後、時刻0で微動アクチュエータゲイン推定用加振信号25を加えた場合の各信号の時間応答波形を示す信号波形図である。図4(a)は粗動アクチュエータ制御信号23の信号波形45を、図4(b)は微動アクチュエータ制御信号24の信号波形46を、図4(c)はヘッド位置信号20の信号波形47を示している。図4において、横軸は時刻を示し、縦軸は図4(a)ではVCM駆動電流を、図4(b)ではピエゾ素子入力電圧を、それぞれ示している。
時刻0で式1に基づいて出力される周期的信号が生成され、微動アクチュエータ機構部4を微動アクチュエータ制御信号波形46により駆動する。時刻0以降では、粗動アクチュエータ制御信号波形45とヘッド位置誤差信号波形47は微動アクチュエータ制御信号波形46に応じて変化する。
微動アクチュエータ入出力ゲインの真値が式5に示す値である場合、位置外乱信号21が加わる場合でも、図4の波形から、微動アクチュエータゲイン(Kpzt)は式6に示す値として推定値が得られる。
次に、ピエゾ素子にヒステリシスが存在する場合のピエゾ入力から微動アクチュエータ変位量までのヒステリシス特性推定の動作について説明する。サンプル時刻iに応じた微動アクチュエータ変位量19を観測した図4のヘッド位置誤差信号47から前述の式3により推定する。
図5は微動アクチュエータのヒステリシス特性の推定結果を示すグラフである。図5において、横軸は微動アクチュエータ制御信号V_HYS(i)を示し、縦軸は微動アクチュエータ変位量PZT_HYS(i)を示している。ヒステリシス波形48は、微動アクチュエータ機構部4が持つヒステリシス特性である。ヒステリシス推定波形49は、本参考例により推定されたヒステリシス特性の推定値である。その結果、微動アクチュエータ機構部4のヒステリシス波形48はヒステリシス推定波形49として推定される。
次に、この発明に係る2段アクチュエータ制御装置の一実施形態を図6〜図8を参照して説明する。
図6は通常動作と省電力動作とを切り替える機能を備えた2段アクチュエータ制御装置のブロック構成図である。図6に示す2段アクチュエータ制御装置は、2段アクチュエータ制御部1aと、2段アクチュエータ機構部2と、各前置アナログ回路部8,9とからなる。2段アクチュエータ機構部2ならびに各前置アナログ回路部8,9の構成は、図1に示したものと同じである。
2段アクチュエータ制御部1aは、制御部の切替を行なう1段/2段サーボ切替部28と、粗動アクチュエータ機構部3と微動アクチュエータ機構部4とを同時に制御する2段サーボ制御部27と、粗動アクチュエータ機構部3のみによりヘッド位置決めを行なう粗動1段サーボ制御部10aと、データのリードあるいはライト状態で微動アクチュエータ機構部4に加わる信号とは異なる信号を生成する信号発生部29と、粗動アクチュエータ機構部3の制御信号を切り替える切替部30と、微動アクチュエータ機構部4の制御信号を切り替える切替部31と、制御部への入力を切り替える切替部32と、微動アクチュエータ入出力特性推定時の結果が保存されている微動アクチュエータ入出力特性推定部13aと、微動アクチュエータ入出力特性に応じてゲインを可変することができる可変ゲイン部11aとからなる。
粗動1段サーボ制御部10aは、粗動アクチュエータ機構部3の特性に応じて設計したディジタル制御器で構成される。信号発生部29は、上位系(図示せず)からの命令に応じて微動アクチュエータ機構部4を省電力駆動させる時間関数の組み合わせで構成される。
ここで、1段/2段サーボ切替部28は、データのリード動作あるいはライト動作を行なっているかどうかを判断して、あるいは、上位系からの省電力動作の要求に応じて、切替部30乃至32に対し1段サーボか2段サーボかの切替信号40乃至42を生成する。信号発生部29は省電力駆動信号35を生成する。
粗動アクチュエータ信号切替部30は、粗動アクチュエータ切替信号41に応じて粗動1段サーボ時の粗動アクチュエータ制御信号23と2段サーボ時の粗動アクチュエータ制御信号34とを切り替えて粗動アクチュエータ制御信号36を生成する。微動アクチュエータ信号切替部31は、微動アクチュエータ切替信号40に応じて省電力駆動信号35と2段サーボ時の微動アクチュエータ制御信号33とを切り替えて微動アクチュエータ制御信号37を生成する。サーボ制御部入力切替部32は、サーボ制御部入力切替信号42に応じてヘッド位置誤差信号22か0かのいずれかを2段サーボ制御部入力信号38か省電力動作時の1段サーボ制御部入力信号39かのいずれかとして生成する。
粗動アクチュエータ機構部3と微動アクチュエータ機構部4と前置アナログ回路8と前置アナログ回路9と粗動1段サーボ制御部10aとは、前述の参考例と同様の構成とする。微動アクチュエータ入出力特性推定部13aと可変ゲイン部11aとは、前述の参考例で得られた結果を用いる。2段サーボ制御部27は、例えば、2段アクチュエータ動作時のオープンループ制御系のゼロクロス周波数が2kHzになるように、2次のディジタル制御器からなる微動アクチュエータ制御部44(図9)と積分動作を含む2次のディジタル制御器からなる粗動アクチュエータ制御部43(図9)とより構成される。信号発生部29は省電力駆動信号として0を生成する。
次に、本実施形態の動作について説明する。通常、2段アクチュエータによるヘッド位置決め動作時には、図9の構成により粗動アクチュエータと微動アクチュエータの両方を駆動してヘッド位置決めが行われる。
図7は通常動作と省電力動作とを切り替える機能を備えた2段アクチュエータ制御装置の動作を示すフローチャートである。サンプリング時間毎に制御出力を行なうディジタル制御において、ヘッド位置誤差情報を獲得した後、データのリードあるいはライト動作時かどうか、あるいは、上位系の命令で省電力動作を行なう必要があるかどうかの確認をする(ステップS11)。省電力動作を行なわない場合には2段サーボ制御系が選択され、2段サーボ制御器による制御信号生成動作が行われる(ステップS12)。一方、省電力動作を行なう場合には粗動1段サーボ制御器が選択される(ステップS13)。その後、粗動1段サーボ制御器により生成した粗動アクチュエータ制御信号と省電力駆動信号とからなる2段アクチュエータ制御信号を生成する(ステップS14)。
図8は省電力動作切替を行なう2段アクチュエータ制御装置の各信号の時間応答波形である。ヘッド位置誤差信号波形50、粗動アクチュエータ駆動信号波形51、微動アクチュエータ駆動信号波形52は、それぞれ省電力動作切替を行なった場合のヘッド位置誤差信号22、粗動アクチュエータ駆動信号14、微動アクチュエータ駆動信号波形15の時間応答波形である。
時刻0で1段/2段サーボ切替部28により省電力動作に切り替わる。時刻T0で1段/2段サーボ切替部28によりデータのリードモードに切り替わる。ヘッド位置誤差信号50は、2段サーボ制御時にはデータリードあるいはライト可能なオントラック領域内に収まるのに対して、省電力モード時にはオントラック領域範囲を越えて位置決めを行なっている。粗動アクチュエータ駆動信号51は2段サーボ時(時刻0以前と時刻T0以降)と粗動1段サーボ時(時刻0から時刻T0)とで大きな変化はない。微動アクチュエータ駆動信号52は、時刻0以前あるいは時刻T0以降はヘッド位置誤差信号22に応じた粗動アクチュエータ駆動信号が生成され電力を消費するのに対して、時刻0から時刻T0までは0が出力されており微動アクチュエータ機構部の消費電力は0となる。