JP4278856B2 - プラズマディスプレイパネル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、マトリクス表示方式のプラズマディスプレイパネルに関する。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
近年、大型でかつ薄型のカラー画面表示装置として、マトリクス表示方式のプラズマディスプレイパネル(以下、PDPという)が注目を集めている。
このようなマトリクス表示方式のディスプレイパネルとしては、AC型のPDPが知られている。
【0003】
このAC型のPDPは、前面基板の内面にそれぞれ一表示ラインを構成するように形成された複数の行電極対と、前面基板と放電空間を介して対向する背面基板の内面に形成されて行電極対と直交する方向に配列された複数の列電極とを備えており、行電極対と列電極との各交差点において、互いにマトリクス状に配列された放電セルが形成される構造になっている。
【0004】
そして、これらの行電極対と列電極が放電空間に対して誘電体層によって被覆され、また、背面基盤の内面の列電極上に蛍光体層が形成されている。
【0005】
このようなPDPにおいて中間調を表示させるための方法として、従来、1フィールドの表示期間をNビットの表示データの各ビット桁の重み付けに対応した回数だけ発光するN個のサブフィールドに分割する、いわゆる、サブフイールド法が知られている。
【0006】
このサブフイールド法において、各サブフィールドは、図24に示されるように、それぞれ、一斉リセット期間Rcとアドレス期間Wc,維持放電期間Icによって構成されている。
【0007】
先ず、一斉リセット期間Rcでは、互いに対をなす行電極X1-nとY1-n間にリセットパルスRPx,RPyが一斉に印加されることによって、全ての放電セルにおいて一斉に放電が行われ、これによって、一旦、各放電セル内に所定量の壁電荷が形成される。
【0008】
次のアドレス期間Wcでは、行電極対の一方の行電極Y1-nに、順次、走査パルスSPが印加されるとともに、列電極D1-mに、各表示ライン毎に表示データに対応した表示データパルスDP1-nが印加されて、選択放電(選択消去放電)が生起される。
【0009】
このとき、各放電セルは、表示データに対応して、消去放電が発生されずに壁電荷が形成されたままの発光セルと、消去放電が発生して壁電荷が消滅した非発光セルとに分けられる。
【0010】
次の維持発光期間Icでは、互いに対をなす行電極X1-nとY1-n間に維持パルスIPx,IPyが各サブフィールドの重み付けに対応した数だけ印加され、これによって、壁電荷が残留したままの発光セルのみが、印加される維持パルスIPx,IPyの数に対応した数だけ維持放電を繰り返す。
【0011】
そして、前面基板と背面基板の間の放電空間内には、キセノンXeを5体積パーセントだけ含むNe−Xeガスが封入されており、維持放電によってキセノンXeから波長147nmの真空紫外線が放射される。
【0012】
PDPにおける画像表示は、この真空紫外線により背面基板上に形成された蛍光体層が励起されて可視光が発生されることにより行われる。
【0013】
ここで、上記のようなPDPは、サブフイールド法の一斉リセット期間Rcにおけるリセット放電によって全ての放電セルの放電空間内にプライミング粒子(荷電粒子)が形成されるが、このプライミング粒子は時間の経過とともに減少してゆくために、一斉リセットが動作された後、次の選択動作が行われる(走査パルスSPが印加される)までの時間間隔が長くなってしまう表示ライン(例えば、最終走査ラインとなるn行目の表示ライン)ほどプライミング粒子が少なくなってしまう。
【0014】
このため、このようなプライミング粒子が少ない放電セルにおいては、放電遅れ時間が増大したり、また、放電遅れ時間のばらつきが増大したりするために、アドレス期間Wcにおける選択放電動作が不安定になって誤放電が生じ易くなり、このために、ディスプレイに形成される画像の品質が悪化するという問題がある。
【0015】
また、この問題の解決のために走査パルスSPのパルス幅を広くした場合には、階調不足などの問題が生じる虞がある。
【0016】
この発明は、上記のような従来のプラズマディスプレイパネルにおける問題点を解決するために為されたものである。
すなわち、この発明は、誤放電を防止して表示画像の品質を向上させることができるプラズマディスプレイパネルを提供することを目的としている。
【0017】
【課題を解決するための手段】
第1の発明によるプラズマディスプレイパネルは、上記目的を達成するために、前面基板の背面側に、行方向に延び列方向に並設されてそれぞれ表示ラインを形成する複数の行電極対とこの行電極対を被覆する誘電体層とこの誘電体層を被覆する保護誘電体層が設けられ、背面基板の前面基板と放電空間を介して対向する側に、列方向に延び行方向に並設されて行電極対と交差する位置においてそれぞれ放電空間に単位発光領域を構成する複数の列電極が設けられたプラズマディスプレイパネルにおいて、列方向または行方向に隣接する単位発光領域の間に放電空間に接するプライミング粒子生成手段が配置され、プライミング粒子生成手段が、0.1msec以上の残光特性を有する紫外域発光材料によって形成されていることを特徴としている。
【0018】
この第1の発明によれば、プライミング粒子生成手段が設けられることにより、一斉リセット期間の次に続くアドレス期間におけるプライミング粒子量が十分に確保され、これによって、誤放電の発生が防止されて表示画像の品質の向上を図ることができる。また、前記プライミング粒子生成手段が、0.1msec以上の残光特性を有する紫外域発光材料によって形成されていることを特徴としており、これによって、一斉リセット期間の次に続くアドレス期間の間プライミング粒子の発生が継続されるので、誤放電の発生防止と表示画像の品質の向上が十分に図られる。
【0019】
第2の発明によるプラズマディスプレイパネルは、上記目的を達成するために、第1の発明の構成に加えて、前記プライミング粒子生成手段が、1.0msec以上の残光特性を有する紫外域発光材料によって形成されている。
【0020】
第3の発明によるプラズマディスプレイパネルは、上記目的を達成するために、第1の発明の構成に加えて、前記プライミング粒子生成手段が、前記保護誘電体層を形成する誘電体よりも仕事関数が低い材料を含んでいることを特徴としており、これによって、プライミング粒子生成手段が励起されて放射される紫外光が、保護誘電体層とともにプライミング粒子生成手段に含有されている保護誘電体層を形成する誘電体よりも仕事関数が低い材料を励起してプライミング粒子を放出させるので、アドレス期間におけるプライミング粒子量がさらに十分に確保される。
【0021】
第4の発明によるプラズマディスプレイパネルは、上記目的を達成するために、第1の発明の構成に加えて、前記前面基板と前記背面基板との間に配置されて列方向に延びる縦壁部と行方向に延びる横壁部によって前記放電空間を前記単位発光領域毎に行方向と列方向に区画する隔壁を備え、列方向において互いに隣接する前記単位発光領域の間の横壁部が行方向と平行な隙間によって分離されており、前記隙間内と列方向に隣接する単位発光領域の放電空間内とが連通部によって互いに連通されており、前記隙間内にプライミング粒子生成手段が配置されていることを特徴としている。
【0022】
この第4の発明によるプラズマディスプレイパネルは、列方向に延びる縦壁部と行方向に延びる横壁部を有する隔壁によって、前面基板と背面基板の間の放電空間が単位発光領域毎に区画される。
【0023】
そして、互いに隣接する行に沿って並ぶ単位発光領域の間の横壁部が行方向と平行な隙間によって分離され、この分離された横壁間の隙間内が連通部によって列方向に隣接する単位発光領域の放電空間内にそれぞれ連通されているとともに、この隙間内にプライミング粒子生成手段が配置されていて、このプライミング粒子生成手段が連通部を介して単位発光領域の放電空間内に接している。
【0024】
従って、この第4の発明によれば、列方向において互いに隣接する単位発光領域の間が隔壁の横壁部によって閉じられている場合でも、単位発光領域において発生する放電にともなう横壁間の隙間内における放電によって生じたプライミング粒子が、連通部を介して、列方向において隣接している単位発光領域内に拡散して放電を誘発し、これによって、列方向において隣接する単位発光領域間におけるプライミング効果が確保される。
【0025】
そしてさらに、リセット操作時のリセット放電が行われる際に、放電空間内に封入された放電ガスに含まれるキセノンから放射される真空紫外線が、横壁間の隙間内に形成されたプライミング粒子生成層を励起し、このプライミング粒子生成層から放射される紫外光または可視光によって保護誘電体層を励起して、プライミング粒子を放出させるので、アドレス期間におけるプライミング粒子量が十分に確保され、これによって、誤放電の発生が防止されて表示画像の品質の向上を図ることができる。
【0026】
第5の発明によるプラズマディスプレイパネルは、第4の発明の構成に加えて、前記隔壁の横壁部および隙間に対向する誘電体層の部分に、横壁部側に張り出すように形成された嵩上げ部が設けられていることを特徴としており、これによって、列方向に隣接する単位発光領域間における誤放電が防止される。
【0027】
第6の発明によるプラズマディスプレイパネルは、上記目的を達成するために、第5の発明の構成に加えて、前記嵩上げ部に前記連通部が形成されていることを特徴としており、この連通部を介して横壁間の隙間内に形成されたプライミング粒子生成層が単位発光領域内の放電空間に接して、リセット放電の際に放射される真空紫外線によって励起される。
【0028】
第7の発明によるプラズマディスプレイパネルは、上記目的を達成するために、第4の発明の構成に加えて、前記連通部が、隔壁の横壁部に形成されていることを特徴としており、この連通部を介して横壁間の隙間内に形成されたプライミング粒子生成層が単位発光領域内の放電空間に接して、リセット放電の際に放射される真空紫外線によって励起される。
【0029】
第8の発明によるプラズマディスプレイパネルは、上記目的を達成するために、第1の発明の構成に加えて、前記誘電体層の前記隙間に対向する部分に光吸収層が設けられていることを特徴としており、これによって、非表示ラインにおける外光の反射が防止されてコントラストの向上が図られるとともに、隙間内において列電極と行電極間にプライミングのための放電が発生しても、その光が画像のコントラストに悪影響を与える虞はない。
【0030】
第9の発明によるプラズマディスプレイパネルは、上記目的を達成するために、第4の発明の構成に加えて、前記隔壁の横壁部の前記前面基板側が部分的に縦壁部の高さよりも高くなっていて、この横壁部の縦壁部の高さよりも高くなっている部分の間に溝が形成されて前記連通部が構成されることを特徴としており、この溝によって、横壁間の隙間内の空間が単位発光領域の放電空間内に連通される。
【0031】
第10の発明によるプラズマディスプレイパネルは、上記目的を達成するために、第9の発明の構成に加えて、前記横壁部の縦壁部の高さよりも高くなっている部分の少なくとも前記溝に接する部分にプライミング粒子生成手段が配置されていることを特徴としており、これによって、リセット操作時のリセット放電が行われる際に、横壁部の縦壁部の高さよりも高くなっている部分に配置されたプライミング粒子生成手段が、放電ガスに含まれるキセノンから放射される真空紫外線によって励起され、このプライミング粒子生成手段から放射される紫外光または可視光によって保護誘電体層が励起されて、プライミング粒子が放出される。
【0034】
第11の発明によるプラズマディスプレイパネルは、上記目的を達成するために、第1の発明の構成に加えて、列方向に隣接する単位発光領域の境界部分と対向する前記誘電体層の部分に放電空間内に張り出すように形成された嵩上げ部が設けられて、この嵩上げ部の放電空間に接する部分にプライミング粒子生成手段が配置されていることを特徴としており、この嵩上げ部によって、列方向において隣接する単位発光領域間で誤放電が発生するのが防止されるとともに、この嵩上げ部に配置されたプライミング粒子生成手段が、リセット操作時のリセット放電の際に放電ガスに含まれるキセノンから放射される真空紫外線によって励起され、このプライミング粒子生成手段から放射される紫外光または可視光によって保護誘電体層が励起されて、プライミング粒子が放出される。
【0035】
第12の発明によるプラズマディスプレイパネルは、上記目的を達成するために、第11の発明の構成に加えて、前記プライミング粒子生成手段に対向する誘電体層の部分に、光吸収層が設けられていることを特徴としており、これによって、非表示ラインにおける外光の反射が防止されてコントラストの向上が図られる。
【0036】
第13の発明によるプラズマディスプレイパネルは、上記目的を達成するために、第1の発明の構成に加えて、前記前面基板と前記背面基板との間に配置されて少なくとも行方向に隣接する単位発光領域の間を区画する隔壁を備え、この隔壁の前面基板と対向する背面基板側に、放電空間に面するプライミング粒子生成手段が配置されていることを特徴としており、この隔壁によって、行方向において隣接する単位発光領域間で誤放電が発生するのが防止されるとともに、この隔壁に配置されたプライミング粒子生成手段が、リセット操作時のリセット放電の際に放電ガスに含まれるキセノンから放射される真空紫外線によって励起され、このプライミング粒子生成手段から放射される紫外光または可視光によって保護誘電体層が励起されて、プライミング粒子が放出される。
【0039】
第14の発明によるプラズマディスプレイパネルは、上記目的を達成するために、第4の発明の構成に加えて、前記隔壁の横壁部の前記前面基板側が部分的に縦壁部の高さよりも高くなっていて、この横壁部の縦壁部の高さよりも高くなっている部分の間に溝が形成され、この溝内にプライミング粒子生成手段が配置されていることを特徴としており、この溝内に配置されたプライミング粒子生成手段によって生成されるプライミング粒子により、アドレス期間におけるプライミング粒子量が十分に確保される。
【0042】
第15の発明によるプラズマディスプレイパネルは、上記目的を達成するために、第1の発明の構成に加えて、前記放電空間に封入される放電ガスが、キセノンガスを10パーセント以上含む混合希ガスからなることを特徴としている。
【0043】
この第15の発明によるプラズマディスプレイパネルによれば、プライミング粒子生成手段を設けることによりキセノンガスの分圧の上昇によって選択放電の遅れ時間が長くなるのを抑制しながら、そのキセノンガスの分圧を10パーセント以上に設定することによって、キセノンから放射される真空紫外線量の増加による発光効率の増大を図ることが出来る。
【0044】
第16の発明によるプラズマディスプレイパネルは、上記目的を達成するために、第1の発明の構成に加えて、前記プライミング粒子生成手段が、仕事関数が4.2eV以下の材料を含むことを特徴としている。
【0045】
この第16の発明によるプラズマディスプレイパネルによれば、プライミング粒子生成手段を設けることによるプライミング効果が一層発揮され、リセット放電からの休止時間の経過にともなう選択放電の遅れや放電確率の悪化が防止される。
【0046】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の最も好適と思われる実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明を行う。
【0047】
図1ないし6は、この発明によるプラズマディスプレイパネル(以下、PDPという)の実施形態の第1の例を示すものであって、図1はこの第1の例におけるPDPを模式的に表す平面図であり、図2は図1のV1−V1線における断面図、図3は図1のV2−V2線における断面図、図4は図1のW1−W1線における断面図、図5は図1のW2−W2線における断面図、図6は図1のW3−W3線における断面図である。
【0048】
この図1ないし6に示されるPDPは、表示面である前面ガラス基板10の背面に、複数の行電極対(X,Y)が、前面ガラス基板10の行方向(図1の左右方向)に延びるように平行に配列されている。
【0049】
行電極Xは、T字形状に形成されたITO等の透明導電膜からなる透明電極Xaと、前面ガラス基板10の行方向に延びて透明電極Xaの狭小の基端部に接続された金属膜からなるバス電極Xbによって構成されている。
【0050】
行電極Yも同様に、T字形状に形成されたITO等の透明導電膜からなる透明電極Yaと、前面ガラス基板10の行方向に延びて透明電極Yaの狭小の基端部に接続された金属膜からなるバス電極Ybによって構成されている。
【0051】
この行電極XとYは、前面ガラス基板10の列方向(図1の上下方向)に交互に配列されており、バス電極XbとYbに沿って並列されたそれぞれの透明電極XaとYaが、互いに対となる相手の行電極側に延びて、透明電極XaとYaの幅広部の頂辺が、それぞれ所要の幅の放電ギャップgを介して互いに対向されている。
【0052】
バス電極Xb,Ybは、それぞれ表示面側の黒色導電層Xb’,Yb’と背面側の主導電層Xb”,Yb”の二層構造に形成されている。
【0053】
前面ガラス基板10の背面には、列方向において隣接する行電極対(X,Y)のそれぞれの互いに背中合わせになったバス電極XbとYbの間に、このバス電極Xb,Ybに沿って行方向に延びる黒色の光吸収層(遮光層)17Aが形成されており、さらに、後述する隔壁18の縦壁18aに対向する部分に、光吸収層(遮光層)17Bが形成されている。
【0054】
さらに、前面ガラス基板10の背面には、行電極対(X,Y)を被覆するように誘電体層11が形成されており、この誘電体層11の背面には、互いに隣接する行電極対(X,Y)の隣り合うバス電極XbおよびYbと対向する位置及び隣り合うバス電極Xbとバス電極Ybの間の領域と対向する位置に、誘電体層11の背面側に突出する嵩上げ誘電体層11Aが、バス電極Xb,Ybと平行に延びるように形成されている。
【0055】
そして、この誘電体層11と嵩上げ誘電体層11Aの背面側には、MgOからなる保護層12が形成されている。
【0056】
一方、前面ガラス基板10と平行に配置された背面ガラス基板13の表示側の面上には、列電極Dが、各行電極対(X,Y)の互いに対となった透明電極XaおよびYaに対向する位置において行電極対(X,Y)と直交する方向(列方向)に延びるように、互いに所定の間隔を開けて平行に配列されている。
【0057】
背面ガラス基板13の表示側の面上には、さらに、列電極Dを被覆する白色の誘電体層14が形成され、この誘電体層14上に、隔壁18が形成されている。
【0058】
この隔壁18は、互いに平行に配列された各列電極Dの間の位置において列方向に延びる縦壁18aと、嵩上げ誘電体層11Aに対向する位置において行方向に延びる横壁18bとによって梯子状に形成されており、この梯子状の隔壁18によって、前面ガラス基板10と背面ガラス基板13の間の放電空間Sが、各行電極対(X,Y)において対となった透明電極XaとYaに対向する部分毎に区画されて、それぞれ方形の放電セルCが形成されている。
【0059】
この放電空間Sを区画する隔壁18の横壁18bは、表示ライン間の光吸収層17Aと重なる位置に設けられた隙間SLによって列方向に分離されている。
【0060】
すなわち、隔壁18は、表示ライン(行)L方向に沿って梯子状に形成され、列方向において表示ラインLに沿って延びる隙間SLを介して互いに平行になるように配置されている。
【0061】
そして、この表示ラインL間に設けられた隙間SLによって分割された横壁18bの各部分18b’の幅は、それぞれ縦壁18aの幅と略同一になるように隙間SLの幅が設定されている。
【0062】
放電空間Sに面する隔壁18の縦壁18aおよび横壁18bの側面と誘電体層14の表面には、これらの五つの面を全て覆うように蛍光体層16が形成されており、この蛍光体層16の色は、各放電セルC毎にR,G,Bの色が行方向に順に並ぶように設定されている(図4参照)。
【0063】
そして、放電セルC内には、キセノンガスを10パーセント以上含む混合希ガスからなる放電ガスが封入されている。
【0064】
嵩上げ誘電体層11Aは、この嵩上げ誘電体層11Aを被覆している保護層12が隔壁18の横壁18b’の表示側の面に当接される(図5参照)ことによって、列方向において隣接する放電セルCの間をそれぞれ閉じているが、この嵩上げ誘電体層11Aには、図1において隔壁18の縦壁18aと同列に並ぶ位置に、列方向に延びて両端部が嵩上げ誘電体層11Aの上下の壁面に開口されるとともに背面側が解放された溝11Aa(図5および6参照)が形成されていて、この溝11Aaを介して各放電セルCが、列方向に並設された隔壁18の横壁18b’間の隙間SLにそれぞれ連通されている。
【0065】
また、隔壁18の縦壁18aの表示側の面は保護層12に当接されておらず(図4参照)、その間に隙間rが形成されていて、行方向において隣接する放電セルCがこの隙間rを介して互いに連通されている。
【0066】
隔壁18の横壁18b’間に形成された隙間SL内には、その内壁面を覆うように、プライミング粒子生成層(プライミング粒子生成手段)19が形成されている。
【0067】
このプライミング粒子生成層19は、例えば、0、1msec以上の残光特性を有する紫外域発光材料または可視域発光材料によって形成されている。
【0068】
そして、この紫外域発光材料または可視域発光材料によって形成されたプライミング粒子生成層19には、保護層12を形成する誘電体(MgO)と2次電子放出係数が同じかそれよりも2次電子放出係数が高い(仕事関数が低い)材料(高γ材料)、すなわち、仕事関数が4.2V以下の材料を含有させるようにしても良い。
【0069】
この仕事関数が低く絶縁性を有する材料としては、アルカリ金属の酸化物(例えば、Cs2O:仕事関数2.3eV)やアルカリ土類金属の酸化物(例えば、CaO,SrO,BaO),弗化物(例えば、CaF2,MgF2),結晶欠陥や不純物などによって結晶内に不純物順位を導入して2次電子放出係数を高めた材料(例えば、MgOxのようにMg:Oの組成比を1:1から変えて結晶欠陥を導入したもの),TiO2,Y2O3などが挙げられる。
【0070】
また、放電によって放電ガスに含まれるキセノンから放射される波長147nmの真空紫外線によって励起されることにより0.1msec以上、好ましくは1.0msec以上(すなわち、アドレス期間Wcの時間長以上)の紫外線を放射し続けるような残光特性を有する紫外域発光材料としては、BaSi2O5:Pb2+(発光波長:350nm)やSrB4O7F:Eu2+(発光波長:360nm),(Ba,Mg,Zn)3Si2O7:Pb2+(発光波長:295nm),YF3:Gd,Prなどが挙げられる。
【0071】
また、放電によって放電ガスに含まれるキセノンから放射される波長147nmの真空紫外線によって励起されることにより0.1msec以上、好ましくは1.0msec以上の残光特性を有する可視域発光材料としては、赤色(Y,Gd)BO3:Euや緑色Zn2SiO4:Mnの蛍光体材料などが挙げられる。
【0072】
上記のPDPは、行電極対(X,Y)がそれぞれマトリクス表示画面の1表示ライン(行)Lを構成している。
【0073】
このPDPにおける画像の形成は、従来のPDPと同様に、先ず、全放電セルにおいて列電極Dと行電極XまたはYの間でリセット放電を行い、全放電セルCの誘電体層11の表面上に壁電荷を形成する。
【0074】
次に、アドレス操作により、各放電セルCにおいて行電極対(X,Y)と列電極Dとの間で選択的に対向放電が行われ、全表示ラインLに点灯セル(誘電体層11の壁電荷が消去されなかった放電セルC)と消灯セル(誘電体層11の壁電荷が消去された放電セルC)とが、表示する画像に対応して、パネル上に分布される。
【0075】
このアドレス操作の後、全表示ラインLにおいて一斉に、行電極対(X,Y)に対して交互に放電維持パルスが印加され、この放電維持パルスが印加される毎に、各点灯セルにおいて互いに対向する透明電極XaとYaとの間で面放電が発生される。
【0076】
以上のようにして、点灯セルにおける面放電により紫外線が発生され、放電空間S内のR,G,Bの各蛍光体層16がそれぞれ励起されて発光することにより、表示する画像が形成される。
【0077】
上記PDPは、隔壁18の縦壁18aの表示側の面と誘電体層11を被覆する保護層12との間に形成された隙間rによって、各放電セルCへの放電ガスの封入や放電セルCからの放電ガスの排気が行われ、さらに、行方向において隣接する放電セルC間において連鎖的に放電を生じさせるプライミング効果が確保される。
【0078】
そして、列方向において互いに隣接する放電セルCの間は、嵩上げ誘電体層11Aによって閉塞されていることによって、画像形成のための放電が列方向に隣接する他の放電セルCに広がって誤放電が生じるのが防止されるが、各放電セルCは、この嵩上げ誘電体層11Aに形成されている溝11Aaによってそれぞれ横壁18bに形成された隙間SL内に連通されており、この溝11Aaを介して隙間SLから列方向に並んでいる放電セルCにプライミング粒子(種火)が導入されることによって、列方向における上記の行方向におけるようなプライミング効果が確保される。
【0079】
すなわち、列電極Dと行電極XまたはY間に、リセット操作時のリセット放電(全放電セルCに一旦壁電荷を形成させるための放電)と、アドレス操作時の選択放電(リセット放電によって形成された壁電荷を表示画像データに応じて選択的に消去する放電)を発生させるための駆動パルス(図21のリセット操作時に列電極Dと行電極XまたはYに印加されるリセットパルスRPx,RPy、および、アドレス操作時に行電極X,Yの一方に印加される走査パルスSP,列電極Dに印加される表示データパルスDP1−n)が印加される際に、嵩上げ誘電体層11Aが形成されている部分では列電極Dと行電極X,Y間の放電距離が短くなっていて放電が生じ易くなっていることにより、隙間SL内において列電極Dと行電極X,Yとの間に放電が発生する。
【0080】
そして、この隙間SL内における放電によって生じたプライミング粒子(種火)が溝11Aaを介して列方向に隣接している放電セルC内に拡散することにより、隣接する放電セルC間で放電を誘発させるプライミング効果を発生させる。
【0081】
さらに、リセット放電の際に放電ガスに含まれるキセノンから放射される波長147nmの真空紫外線が、溝11Aaを介して隙間SL内に導かれて、この隙間SL内に形成された紫外域発光材料または可視域発光材料によるプライミング粒子生成層19を励起して、このプライミング粒子生成層19から紫外光または可視光を放射させ、そして、この紫外光または可視光が保護層(MgO層)12を励起して、プライミング粒子を放出させる。
【0082】
また、このプライミング粒子生成層19を形成する紫外域発光材料または可視域発光材料に誘電体(MgO)と同程度かそれよりも仕事関数が低い材料(仕事関数が4.2V以下の材料)が含有される場合、リセット放電の際に放電ガスに10パーセント以上含まれるキセノンから放射される波長147nmの真空紫外線が、溝11Aaを介して隙間SL内に導かれて、プライミング粒子生成層19を励起することにより紫外光または可視光を放射させ、そして、この紫外光または可視光が、プライミング粒子生成層19に含有されている高γ材料と保護層(MgO層)12を励起して、プライミング粒子を放出させる。
【0083】
以上のようにして、隙間SL内のプライミング粒子生成層19を形成する紫外域発光材料または可視域発光材料の残光特性によって、少なくとも0.1msec以上の間、紫外光または可視光が放射し続けられるため、一斉リセット期間Rcの次に続くアドレス期間Wc(図24参照)におけるプライミング粒子量が十分に確保される。
【0084】
さらに、この第1の例において、放電ガスとして、キセノンガスを10パーセント以上含む混合希ガスが用いられ、このキセノンガスの分圧を高められることによって、キセノンから放射される真空紫外線量の増加により発光効率が増大されるとともに、紫外域発光材料を含有したプライミング粒子生成層20b2’が設けられることにより、キセノンガスの分圧が高くなるのにともなって放電電圧が高くなって選択放電の遅れ時間が長くなるのが抑制される。
【0085】
なお、上記においては、放電セルC内の放電空間と隙間SL内の放電空間を連通する溝が嵩上げ誘電体層11Aに形成されている例が示されているが、これに限らず、溝を隔壁の横壁部に設けて、放電セルC内の放電空間と隙間SL内の放電空間を連通するようにしても良い。
【0086】
また、上記例においては、非表示ラインであるバス電極XbとYbに挟まれた領域に黒色または暗褐色の光吸収層17Aが設けられており、さらに、バス電極XbとYbの表示面側がそれぞれ黒色導電層Xb’,Yb’によって構成されていることによって、非表示ラインにおける外光の反射が防止されてコントラストの向上が図られるとともに、隙間SL内において列電極Dと行電極X,Y間にプライミングのための放電が発生しても、その光が画像のコントラストに悪影響を与える虞はない。
【0087】
また、上記例においては、放電空間Sを区画する隔壁18の横壁18bが表示ラインL間に設けられた隙間SLによって列方向に分離され、この分離された横壁18b’の幅が、それぞれ縦壁18aの幅と略同一になるように設定されることによって、隔壁18の焼成時の収縮によるばらつきが少なくなり、これによって、前面ガラス基板10や背面ガラス基板13の反りおよび隔壁18の破損などによる放電セル形状の変形が生じる虞がなくなる。
【0088】
次に、この発明の実施形態における第2の例を、図7ないし12に基づいて説明する。
【0089】
図7ないし9はこの第2の例のPDPにおける隔壁構造を示しており、図7はこの例における隔壁の正面図であり、図8(a)は図7のII−II線における側断面図,図8(b)は図8のIII−III線における側断面図、図9は図7のIV−IV線における平断面図、図10はこの例におけるPDPを模式的に表す平面図であり、図11は図10のV3−V3線における断面図、図12は図10のV4−V4線における断面図である。
【0090】
この例における隔壁20は、等間隔にかつ互いに平行に配列された縦方向に延びる複数の縦壁20aと、この各縦壁20aの上端部間および下端部間にそれぞれ水平方向に掛け渡された一対の横壁20bとによって、いわゆる梯子状に成形されている。
【0091】
そして、この隔壁20の各横壁20bは、その縦壁20aの上端部または下端部に対向する部分(縦壁20aと横壁20bの連結部分20b1)の幅aが縦壁20aの幅と同じになるように成形され、縦壁20aの上端部または下端部間にそれぞれ位置する部分(縦壁20a間の架橋部分20b2)の上下方向の幅bが、連結部分20b1の幅aよりも大きくなるように成形されている。
【0092】
なお、図8および9中、14は、背面ガラス基板上に形成される誘電体層である。
【0093】
この隔壁20は、誘電体層5上に形成された所要の厚さのガラス材料層が所定のパターンを有するマスクを介したサンドブラスト処理によって切削された後、このパターニングされたガラス材料層が焼成されることによって形成される。
【0094】
このとき、各横壁20bは、その形状が連結部分20b1の幅aよりも架橋部分20b2の幅bの方が大きくなるように成形されているので、この架橋部分20b2によって横壁20bが縦壁20aの焼成の際に収縮することによって生じる引張力に対して耐久性を備えることになり、これによって、誘電体層5によって支持されている側と反対側の端部が縦壁20aの焼成時の収縮による引張力によって引っ張られて内側に傾くのが、防止される。
【0095】
また、横壁20bの連結部分20b1の幅aが縦壁20aの幅と同じ大きさになるように成形されていることにより、焼成時の収縮によって縦壁20aに発生する引張内部応力が緩和されるので、縦壁20aが切断してしまうのが防止される。
【0096】
さらに、この横壁20bにおける連結部分20b1の幅aと架橋部分20b2の幅bとの大きさの違いによって、それぞれの部分の厚さ方向における収縮に違いが生じ、図9に示されるように、横壁20bの連結部分20b1の厚さが幅が大きい架橋部分20b2の厚さよりも小さくなって、連結部分20b1上に架橋部分20b2によって挟まれた溝20b3がそれぞれ形成される。
【0097】
このとき、架橋部分20b2の前面側(図8および9の上方側)に、図1ないし6の例と同様の、例えば、0、1msec以上の残光特性を有する紫外域発光材料または可視域発光材料によるプライミング粒子生成層20b2’が形成されることによって、この架橋部分20b2の連結部分20b1の前面よりも前方側(図8および9の上方側)に突出する部分がプライミング粒子生成層20b2’によって構成される。
【0098】
このプライミング粒子生成層20b2’には、後述する保護層12を形成する誘電体(MgO)と2次電子放出係数が同じかそれよりも高い2次電子放出係数を有する(仕事関数が低い)材料(高γ材料)、すなわち、仕事関数が4.2V以下の材料を含有させるようにしても良い。
【0099】
この仕事関数が低く絶縁性を有する材料の例としては、第1の例において前述したようなものが挙げられる。 この隔壁20の横壁20b上に形成される溝20b3およびプライミング粒子生成層20b2’によって、以下に述べるように、PDPの列方向に配列された放電セル間において放電を誘発させるプライミング効果が確保される。
【0100】
すなわち、図10ないし12に示されるように、上記隔壁20は、図1ないし6のPDPと同様に、誘電体層14上に、それぞれ行方向に延びる隙間SL’によって互いに所定の間隔を開けた状態で列方向に複数配列されており、この梯子状の各隔壁20によって、前面ガラス基板10と背面ガラス基板13の間の放電空間Sが、各行電極対(X,Y)において対となった透明電極XaとYaに対向する部分毎に放電セルCが区画されている。
【0101】
なお、この図10ないし12のPDPの他の部分の構成は、図1ないし6のPDPと同様であり、同一の符号が付されている。
【0102】
このPDPは、図11から分かるように、隔壁20の横壁20bは、その厚さの厚い架橋部分20b2の表示側の面(図11において上側の面)が嵩上げ誘電体層11Aを被覆している保護層12に当接されていて、放電セルCと隙間SL’との間を塞いでいるが、連結部分20b1の厚さが架橋部分20b2よりも薄いことによって、図12から分かるように、この連結部分20b1の表示側の面(図12において上側の面)は嵩上げ誘電体層11Aを被覆している保護層12には当接されておらず、この連結部分20b1の表示側の面上に形成された溝20b3を介して、放電セルCが、それぞれ隣接する隙間SL’に連通されている。
【0103】
そして、この構成によって、列電極Dと行電極XまたはY間に、リセット操作時のリセット放電と、アドレス操作時の選択放電を発生させるための駆動パルス(リセット操作時に列電極Dと行電極XまたはYに印加されるリセットパルス、および、アドレス操作時に行電極X,Yの一方に印加される走査パルス,列電極Dに印加される表示データパルス)が印加される際に、嵩上げ誘電体層11Aが形成されている部分では列電極Dと行電極X,Y間の放電距離が短くなっていて放電が生じ易くなっていることにより、隙間SL’内において列電極Dと行電極X,Yとの間に放電が発生し、この隙間SL’内における放電によって生じたプライミング粒子(種火)が溝20b3を介して列方向に隣接している放電セルC内に拡散されることにより、隣接する放電セルC間において放電を誘発させるプライミング効果が発生される。
【0104】
さらに、リセット放電の際に、放電ガスに10パーセント以上含まれるキセノンから放射される波長147nmの真空紫外線が、架橋部分20b2に形成されたプライミング粒子生成層20b2’を励起して、このプライミング粒子生成層20b2’から紫外光または可視光を放射させ、そして、この紫外光または可視光が保護層(MgO層)12を励起して、2次電子〈プライミング粒子)を放出させる。
【0105】
また、このプライミング粒子生成層20b2’を形成する紫外域発光材料または可視域発光材料に誘電体(MgO)よりも仕事関数が低い材料(仕事関数が4.2V以下の材料)が含有される場合、リセット放電の際に放電ガスに含まれるキセノンから放射される波長147nmの真空紫外線が、溝20b3を介して隙間SL’内に導かれて、プライミング粒子生成層20b2’を励起することにより紫外光または可視光を放射させ、そして、この紫外光または可視光が、プライミング粒子生成層20b2’に含有されている高γ材料と保護層(MgO層)12を励起して、2次電子(プライミング粒子)を放出させる。
【0106】
以上のようにして、プライミング粒子生成層20b2’を形成する紫外域発光材料または可視域発光材料の残光特性によって、少なくとも0.1msec以上の間、紫外光または可視光が放射し続けられるため、一斉リセット期間Rcの次に続くアドレス期間Wc(図23参照)におけるプライミング粒子量が十分に確保される。
【0107】
図21および22は、この第2の例において、プライミング粒子生成層20b2’に、残光特性を有するUV蛍光体(Ba,Mg,Zn)3Si2O7:Pb2+(発光波長:295nm)に仕事関数が低い材料(MgO)が10〜20重量パーセント含まれた紫外域発光材料を含有させた場合のプライミング効果を示すグラフである。
【0108】
図21は、一斉リセット放電から選択放電までの放電休止時間と放電遅れ時間の関係を、同じくプライミング粒子生成層20b2’を形成した場合と形成しなかった場合とで比較したデータを示している。
【0109】
この図21において、グラフαは、プライミング粒子生成層20b2’が形成されている場合を示しており、グラフβは、プライミング粒子生成層20b2’が形成されていない場合を示している。
【0110】
ここで、先にも述べたように、アドレス期間にはライン順次でデータの読み込みを行うために、最初に走査パルスによる走査が行われる表示ラインLと比較して最後に走査が行われる表示ラインLは、一斉リセット放電からの時間が経過していて放電遅れ時間が発生するために、走査パルスのパルス幅が約2μsec,走査ライン数が約400本とすると、アドレス期間において全表示ラインを走査してデータの読み込みを行うのに約1msecの時間が必要となる。
【0111】
これは、一斉リセット放電からの時間の経過とともにプライミンク粒子の量が減少してゆき、放電し難くなるために、放電確率が悪化するとともに、走査パルスおよびデータパルスの印加から放電が生じるまでの放電遅れ時間が増大するためである。
【0112】
図21において、このようなプライミンク粒子量の減少にともなう放電確率の悪化と放電遅れ時間の増大が、プライミング粒子生成層20b2’が設けられている場合のグラフαを、プライミング粒子生成層20b2’が設けられていない場合のグラフβと比較すると、格段に改善されていることが分かる。
【0113】
図22は、走査パルスの幅とその電圧値(スキャン電圧)を、プライミング粒子生成層20b2’を形成した場合と形成しなかった場合とで比較したデータを示している。
【0114】
この図22において、グラフα1は、プライミング粒子生成層20b2’が形成されている場合の放電開始電圧(直前に放電がなくプライミング粒子が生成されていないときの電圧)Vfを示しており、グラフα2は、放電維持最小電圧(直前に放電がありプライミング粒子が生成されているときの電圧)Vsmを示している。
【0115】
また、グラフβ1は、プライミング粒子生成層20b2’が形成されていない場合の放電開始電圧Vfを示しており、グラフβ2は、放電維持最小電圧Vsmを示している。
【0116】
この図22から、プライミング粒子生成層20b2’が設けられることによって、走査パルスの幅を小さくしても、プライミング粒子生成層20b2’を設けない場合において走査パルスの幅を大きくしたのとほぼ同じアドレスマージン(放電開始電圧Vfと放電維持最小電圧Vsmとの差)ΔVが得られることが分かる。
【0117】
なお、このアドレスマージンが大きいほど、誤放電がなくなって高速アドレス化が可能になり、また、表示品質が向上する。
【0118】
なお、上記においては、放電ガスとして、キセノンガスを10パーセント以上含む混合希ガスが用いられ、このキセノンガスの分圧を高められることによって、キセノンから放射される真空紫外線量が増加して発光効率が増大するが、キセノンガスの分圧が高くなるに従って放電電圧が高くなり、放電遅れ時間も長くなるため、紫外域発光材料を含有したプライミング粒子生成層20b2’が設けられることにより、キセノンガスを10パーセント以上含む放電ガスを用いるのにともなって放電遅れ時間が長くなるのが抑制される。
【0119】
この第2の例では、非表示ラインであるバス電極XbとYbに挟まれた領域に黒色または暗褐色の遮光層17Aが設けられており、さらに、バス電極XbとYbの表示面側がそれぞれ黒色導電層Xb’,Yb’によって構成されていることによって、外光の反射が防止されるので、コントラストの向上が図られるとともに、隙間SL’内において列電極Dと行電極X,Y間にプライミングのための放電が発生しても、その光が画像のコントラストに悪影響を与える虞はない。
【0120】
なお、上記PDPにおいては、図12から分かるように、縦壁20aが誘電体層11の嵩上げ誘電体層11Aが形成されていない部分に対向されていて保護層12とは当接されていないために、その間に形成される隙間rによって行方向において隣接する放電セルC間が互いに連通されているので、この隙間rを介してプライミング粒子が行方向に拡散することによって、行方向におけるプライミング効果が確保される。
【0121】
また、この第2の例では、架橋部分(縦壁よりも高くなっている横壁の部分)20b2の前面側にプライミング粒子生成層が配置されている例が示されているが、架橋部分20b2によって挟まれた溝20b3内にプライミング粒子生成層が配置されるようにしても良い。
【0122】
図13および14は、上記PDPの隔壁構造の他の例を示す正面図である。
【0123】
この図13において、隔壁30は、そのPDPの各行毎に放電セルを区画する各壁部分30Aが、縦壁30Aaと水平方向に掛け渡された一対の横壁30Abとによって上記例の隔壁20と同様にそれぞれ梯子状に成形されており、この壁部分30Aが、所要の幅の隙間SL1を挟んで列方向に平行に配列されることによって構成されている。
【0124】
そして、この隔壁30は、列方向において隣接する壁部分30Aが、その縦壁30Aaの上端部または下端部間に位置する部分が互いに連結されることにより一体的に成形されており、これによって、この架橋部分30Ab2の幅b’が、壁部分30Aの横壁30Abの連結部分30Ab1(縦壁30Aaの上端部または下端部に対向する部分)の縦壁30Aaと同じになるように設定された幅aよりも大きくなっている。
【0125】
したがって、この隔壁30は、前記例の隔壁20と同様に、各壁部分30Aの架橋部分30Ab2によって、横壁30Abが縦壁30Aaの焼成の際の収縮によって生じる引張力に対して耐久性を備えるので、横壁30Abが縦壁30Aaの焼成時の収縮による引張力によって引っ張られて変形するのが防止され、また、横壁30Abの連結部分30Ab1の幅aが縦壁30Aaの幅と同じ大きさになるように成形されていることによって、焼成時の収縮によって縦壁30Aaに発生する引張内部応力が緩和されて、これにより縦壁30Aaが切断してしまうのが防止される。
【0126】
さらに、この横壁30Abにおける連結部分30Ab1の幅aと架橋部分30Ab2の幅b’との大きさの違いによって、それぞれの部分の厚さ方向における収縮に違いが生じ、横壁30Abの連結部分30Ab1の厚さが、幅が大きい架橋部分30b2の厚さよりも小さくなって、図14に示されるように、連結部分30Ab1上に架橋部分30Ab2によって挟まれた溝30Ab3がそれぞれ形成されるので、前記例の隔壁20の場合と同様にこの隔壁30がPDPを構成した際に、隙間SL1内における放電によって生じたプライミング粒子(種火)が溝30Ab3を介して列方向に隣接している放電セルC内に拡散されることによって、隣接する放電セルC間において放電を誘発させるプライミング効果が発生される。
【0127】
そして、この隔壁30も、前記例の隔壁20と同様に、架橋部分30Ab2の連結部分30Ab1よりも前方側(図14の上方側)に突出している部分が、紫外域発光材料または可視域発光材料によるプライミング粒子生成層30Ab2によって構成されていることによって、リセット放電の際に放電ガスに含まれるキセノンから放射される波長147nmの真空紫外線が、プライミング粒子生成層30Ab2’を励起することにより紫外光または可視光を放射させ、そして、この紫外光または可視光が保護層(MgO層)を励起し、また、プライミング粒子生成層30Ab2’に高γ材料が含有されている場合にはこの高γ材料も励起して、プライミング粒子を放出させる。
【0128】
以上のようにして、プライミング粒子生成層30Ab2’を形成する紫外域発光材料または可視域発光材料の残光特性によって、少なくとも0.1msec以上の間、紫外光または可視光が放射し続けられるため、一斉リセット期間Rcの次に続くアドレス期間Wc(図23参照)におけるプライミング粒子量が十分に確保される。
【0129】
次に、この発明の実施形態における第3の例を、図15ないし17に基づいて説明する。
【0130】
図15はこの第3の例におけるPDPを模式的に表す平面図であり、図16は図15のV3−V3線における断面図、図17は図15のW4−W4線における断面図である。
【0131】
この図15ないし17に示されるPDPは、上記第1の例の隔壁が縦壁と横壁とによって放電セルの四方を囲んで区画する構成になっていたのに対し、前面ガラス基板40と背面ガラス基板43との間の放電空間S’が、列方向に延びるストライプ状の隔壁45によって区画されるものである。
【0132】
そして、列方向において隣接する行電極対(X1,Y1)の背中合せに位置する行電極X1とY1に対向する誘電体層41の背面側に、嵩上げ誘電体層41Aが形成されている。
【0133】
行電極X1,Y1のバス電極X1b,Y1bは、それぞれ、表示面側の黒色導電層と背面側の主導電層の二層構造に形成されているとともに、前面ガラス基板40の背面に、列方向において隣接する行電極対(X1,Y1)のそれぞれの互いに背中合わせになったバス電極X1bとY1bの間に、このバス電極X1b,Y1bに沿って行方向に延びる黒色の光吸収層(遮光層)47が形成されている。
【0134】
さらに、嵩上げ誘電体層41Aを被覆する保護層42の背面側に、前記各例と同様の紫外域発光材料または可視域発光材料によるプライミング粒子生成層48が形成されている。
【0135】
これによって、画像形成時のリセット放電の際に、放電ガス中のキセノンから放射される真空紫外線によって、保護層42の背面側に形成された紫外域発光層48が励起されて、紫外光または可視光を放射する。
【0136】
そして、この紫外光または可視光が保護層42を励起して、1サブフィールドにおけるアドレス期間の間、プライミング粒子を発光セルの放電空間内に再生成し続けることによって、各発光セルにおけるプライミング粒子量の減少が抑制され、これによって、次のアドレス期間における放電遅れ時間が増大するのが抑制され、さらに、放電遅れ時間にばらつきが生じるのも抑制される。
【0137】
なお、この例におけるPDPは、列方向においては、各放電セルを区画する隔壁が存在しないが、行電極X1,Y1のそれぞれの透明電極X1a,Y1aがバス電極X1b,Y1bから列方向に突出して互いに対向するように形成されているので、列方向において隣接する放電セルC間における放電の干渉が抑制される。
【0138】
次に、この発明の実施形態における第4の例を、図18ないし20に基づいて説明する。
【0139】
図18はこの第4の例におけるPDPを模式的に表す平面図であり、図19は図18のV6−V6線における断面図、図20は図18のW5−W5線における断面図である。
【0140】
この図18ないし20に示されるPDPは、上記第3の例のプライミング粒子生成層48が保護層42上の嵩上げ誘電体層41Aに対向する部分に形成されていたのに対し、プライミング粒子生成層58が、前面ガラス基板40と背面ガラス基板43との間の放電空間S’を区画する列方向に延びるストライプ状の隔壁45の前面側に形成されているものである。
【0141】
他の部分の構成は、上記第3の例のPDPと同様であり、同様の符号が付されている。
【0142】
この例のPDPも、画像形成時のリセット放電の際に、放電ガス中のキセノンから放射される真空紫外線によって、隔壁45上に形成されたプライミング粒子生成層58が励起されて、紫外線を放射する。
【0143】
そして、この紫外線が、1サブフィールドにおけるアドレス期間の間、プライミング粒子を発光セルの放電空間内に再生成し続けることによって、各発光セルにおけるプライミング粒子量の減少が抑制され、これによって、次のアドレス期間における放電遅れ時間が増大するのが抑制され、さらに、放電遅れ時間にばらつきが生じるのも抑制される。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1の例を模式的に表す平面図である。
【図2】図1のV1−V1線における断面図である。
【図3】図1のV2−V2線における断面図である。
【図4】図1のW1−W1線における断面図である。
【図5】図1のW2−W2線における断面図である。
【図6】図1のW3−W3線における断面図である。
【図7】この発明の第2の例における隔壁を示す平面図である。
【図8】図7の横断面図である。
【図9】図7の縦断面図である。
【図10】同例を模式的に表す平面図である。
【図11】図10のV3−V3線における断面図である。
【図12】図10のV4−V4線における断面図である。
【図13】同例における隔壁構造の他の例を示す正面図である。
【図14】図13のIIX−IIX線における断面図である。
【図15】この発明の第3の例を模式的に表す平面図である。
【図16】図15のV5−V5線における断面図である。
【図17】図15のW4−W4線における断面図である。
【図18】この発明の第4の例を模式的に表す平面図である。
【図19】図18のV6−V6線における断面図である。
【図20】図18のW5−W5線における断面図である。
【図21】一斉リセット放電から選択放電までの放電休止時間と放電遅れ時間の関係を示すグラフである。
【図22】走査パルス幅とスキャン電圧の関係を示すグラフである。
【図23】プラズマディスプレイパネルにおけるサブフィールド法を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
10,40 …前面ガラス基板(前面基板)
11,41 …誘電体層
11A,41A …嵩上げ誘電体層(嵩上げ部)
11Aa …溝(連通部)
12,42 …保護層(保護誘電体層)
13,43 …背面ガラス基板(背面基板)
14 …誘電体層
16,46 …蛍光体層
17A,17B …光吸収層
18,20 …隔壁
18a,20a …縦壁(縦壁部)
18b,20b …横壁(横壁部)
19 …プライミング粒子生成層
20b1 …連結部分
20b2 …架橋部分
20b3 …溝
20b2’ …プライミング粒子生成層
30 …隔壁
30Aa …縦壁(縦壁部)
30Ab …横壁(横壁部)
30Ab1 …連結部分
30Ab2 …架橋部分
30Ab3 …溝
30Ab2’ …プライミング粒子生成層
40 …前面ガラス基板(前面基板)
41 …誘電体層
41A …嵩上げ誘電体層(嵩上げ部)
42 …保護層(保護誘電体層)
43 …背面ガラス基板(背面基板)
45 …隔壁
46 …蛍光体層
47 …光吸収層
48 …プライミング粒子生成層
58 …プライミング粒子生成層
X,X1 …行電極
Y,Y1 …行電極
Xa,X1a …透明電極
Ya,Y1a …透明電極
Xb …バス電極
Yb …バス電極
Xb’,Yb’ …黒色層
Xb”,Yb” …白色層
D,D’ …列電極
S,S’ …放電空間
SL,SL’,SL1…隙間
C,C’ …放電セル(単位発光領域)
L …表示ライン
g …ギャップ
r …隙間
Claims (16)
- 前面基板の背面側に、行方向に延び列方向に並設されてそれぞれ表示ラインを形成する複数の行電極対とこの行電極対を被覆する誘電体層とこの誘電体層を被覆する保護誘電体層が設けられ、背面基板の前面基板と放電空間を介して対向する側に、列方向に延び行方向に並設されて行電極対と交差する位置においてそれぞれ放電空間に単位発光領域を構成する複数の列電極が設けられたプラズマディスプレイパネルにおいて、 列方向または行方向に隣接する単位発光領域の間に放電空間に接するプライミング粒子生成手段が配置され、
前記プライミング粒子生成手段が、0.1msec以上の残光特性を有する紫外域発光材料によって形成されていることを特徴とするプラズマディスプレイパネル。 - 前記プライミング粒子生成手段が、1.0msec以上の残光特性を有する紫外域発光材料によって形成されている請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
- 前記プライミング粒子生成手段が、前記保護誘電体層を形成する誘電体よりも仕事関数が低い材料を含んでいる請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
- 前記前面基板と前記背面基板との間に配置されて列方向に延びる縦壁部と行方向に延びる横壁部によって前記放電空間を前記単位発光領域毎に行方向と列方向に区画する隔壁を備え、
列方向において互いに隣接する前記単位発光領域の間の横壁部が行方向と平行な隙間によって分離されており、
前記隙間内と列方向に隣接する単位発光領域の放電空間内とが連通部によって互いに連通されており、
前記隙間内にプライミング粒子生成手段が配置されている、
請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。 - 前記隔壁の横壁部および隙間に対向する誘電体層の部分に、横壁部側に張り出すように形成された嵩上げ部が設けられている請求項4に記載のプラズマディスプレイパネル。
- 前記嵩上げ部に前記連通部が形成されている請求項5に記載のプラズマディスプレイパネル。
- 前記連通部が、隔壁の横壁部に形成されている請求項4に記載のプラズマディスプレイパネル。
- 前記誘電体層の前記隙間に対向する部分に光吸収層が設けられている請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
- 前記隔壁の横壁部の前記前面基板側が部分的に縦壁部の高さよりも高くなっていて、この横壁部の縦壁部の高さよりも高くなっている部分の間に溝が形成されて前記連通部が構成される請求項4に記載のプラズマディスプレイパネル。
- 前記横壁部の縦壁部の高さよりも高くなっている部分の少なくとも前記溝に接する部分にプライミング粒子生成手段が配置されている請求項9に記載のプラズマディスプレイパネル。
- 列方向に隣接する単位発光領域の境界部分と対向する前記誘電体層の部分に放電空間内に張り出すように形成された嵩上げ部が設けられて、この嵩上げ部の放電空間に接する部分にプライミング粒子生成手段が配置されている請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
- 前記プライミング粒子生成手段に対向する誘電体層の部分に、光吸収層が設けられている請求項11に記載のプラズマディスプレイパネル。
- 前記前面基板と前記背面基板との間に配置されて少なくとも行方向に隣接する単位発光領域の間を区画する隔壁を備え、この隔壁の前面基板と対向する背面基板側に、放電空間に面するプライミング粒子生成手段が配置されている請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
- 前記隔壁の横壁部の前記前面基板側が部分的に縦壁部の高さよりも高くなっていて、この横壁部の縦壁部の高さよりも高くなっている部分の間に溝が形成され、この溝内にプライミング粒子生成手段が配置されている請求項4に記載のプラズマディスプレイパネル。
- 前記放電空間に封入される放電ガスが、キセノンガスを10パーセント以上含む混合希ガスからなる請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
- 前記プライミング粒子生成手段が、仕事関数が4.2eV以下の材料を含む請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
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