JP4277313B2 - 便器洗浄装置 - Google Patents

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Description

本発明は、便器洗浄装置に関し、特に、マイクロ波などの電波を利用したドップラーセンサを搭載し洗浄水の制御などを可能とした便器洗浄装置に関する。
水洗便器は、使用者のボタン操作等による手動洗浄、あるいは、便器の前に人が立ったことを検出し便器の使用が終了した時点で自動的に上水又は中水を流す自動洗浄により清浄度が維持される。自動洗浄を実現するには、使用者の存在や水流の状態を検知するためのセンサが必要とされる。これに対して、本発明者らは、電波などを利用したドップラーセンサを用いた便器洗浄装置を開発した(例えば、特許文献1)。
電波を利用したドップラーセンサを用いることにより、便器の外観をすっきりとさせ、使用者の存在のみならず便器の使用状態あるいは洗浄状態までも高い感度で検知することが可能となる。
さらに、特許文献1に開示した便器洗浄システムにおいては、ドップラーセンサを利用して尿の放出時間を検出し、このデータに基づいて銀イオンを含有した洗浄水による洗浄が実施可能とされている。
特開2003−184153号公報
水洗便器には、ボール部で受けた排泄物が排水路へと排出される経路に、トラップ部が設けられており、ここに水が溜められている。この溜水のことを「封水」と呼び、この封水によって、排水路から室内へ、汚ガスや害虫が侵入する事を防いでいる。しかしながら、この封水は他の便器等からの排水によって排水管内の気圧が変動することによって、その水位が変動する。
本発明者がさらに独自の検討を進めた結果、電波を利用したドップラーセンサは検出感度が高いために、水洗便器のトラップ部の「封水」の揺れまでも検出することが判明した。ところが、封水の揺れの周波数は、人体検知の際に対象となる周波数帯域に近いため、これらを判別することが困難である。つまり、封水の揺れによって人体検知信号が誤って出力されてしまうという問題が生ずることがある。この問題を避けるために、ドップラーセンサを封水とは異なる方向に向けると、尿の検出が困難になるという問題が生ずる。
本発明はかかる課題の認識に基づいてなされたものであり、その目的は、人体検知と尿の検知を両立させ、且つ人体検知の際に、封水の揺れによる誤動作を防止した便器洗浄装置を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明の一態様によれば、排水部に封水が形成される便器に洗浄水を供給する便器洗浄装置であって、前記封水の揺れを実質的に検出しない第1の方向に指向した電波を放出してドップラー効果を検出する第1の検出動作と、前記封水の揺れを実質的に検出可能な第2の方向に指向した電波を放出してドップラー効果を検出する第2の検出動作と、を実行可能な検出手段と、前記第1及び第2の検出動作の少なくともいずれかの検出結果に基づいて前記洗浄水の供給を制御する制御手段と、を備え、前記検出手段は、第1のアンテナと、第2のアンテナと、前記第1及び第2のアンテナからそれぞれ放出される電波の位相差を可変とする移相器と、を有し、前記移相器により前記電波の位相差を切り替えることによって前記第1の検出動作と前記第2の検出動作とを選択的に実行可能としたことを特徴とする便器洗浄装置が提供される。
第1の検出動作においては、封水の揺れを検出することなく、それに近似した周波数成分を有するドップラー信号を形成する非検知体の動作を検出でき、また第2の検出動作においては、封水の揺れを検出することが可能であり、さらにそれとは異なる周波数成分を有するドップラー信号を形成する非検知体の動作を検出できる。
ここで、前記検出手段は、第1のアンテナと、第2のアンテナと、前記第1及び第2のアンテナからそれぞれ放出される電波の位相差を可変とする移相器と、を有し、前記移相器により前記電波の位相差を切り替えることによって前記第1の検出動作と前記第2の検出動作とを選択的に実行可能としたものである。ひとつのセンサによって第1の検出動作と第2の検出動作とを実行可能であり、コンパクトなシステムを構築できる。
また、本発明の他の一態様によれば、便器に洗浄水を供給する便器洗浄装置であって、第1のアンテナと、第2のアンテナと、前記第1及び第2のアンテナからそれぞれ放出される電波の位相差を可変とする移相器と、を有し、前記移相器により前記電波の位相差を切り替えることによって、第1の方向に指向した電波を放出してドップラー効果を検出する第1の検出動作と、前記第1の方向とは異なる第2の方向に指向した電波を放出してドップラー効果を検出する第2の検出動作と、を選択的に実行可能な検出手段と、前記検出手段の検出結果に基づいて前記洗浄水の供給を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする便器洗浄装置が提供される。
異なる2つの方向に指向させてドップラー効果を検出可能とした検出手段を用いることにより、非検知体の動作速度や周囲の外乱などを排除した検出が可能なシステムをコンパクトに構築できる。
ここで、前記移相器は、前記第1のアンテナに接続された線路長と、前記第2のアンテナに接続された線路長と、の少なくともいずれかを可変としたものとすれば線路長を切り替えることにより、第1及び第2の検出動作を確実且つ容易に実行できる。
また、前記第1の検出動作においては人体を検出し、前記第2の検出動作においては尿流を検出するものとすれば、人体の検出に際して、封水の揺れなどの外乱の影響を受けることがなく、また、尿流も高い感度で検出できる。
また、第1の周波数帯域の信号を通過させ第1の増幅率により増幅する第1のフィルタ・増幅手段と、前記第1の周波数帯域よりも下限が高い第2の周波数帯域の信号を通過させ第2の増幅率により増幅する第2のフィルタ・増幅手段と、をさらに備え、前記第1の検出動作により得られた検出結果を前記第1のフィルタ・増幅手段を介して判定し、前記第2の検出動作により得られた検出結果を前記第1のフィルタ・増幅手段と前記第2のフィルタ・増幅手段とを介して判定するものとすれば、第1の検出動作においては、動作速度が比較的遅い非検知体の動作を確実に検出でき、第2の動作においては、動作速度が比較的速い非検知体の動作を確実に検出できる。
また、前記便器は、小用便器であり、前記検出手段は、前記小用便器本体の上部に設けられ、前記第1の方向は、前記小用便器の前方に向けた方向であり、前記第2の方向は、略鉛直下方であるものとすれば、第1の検出動作により人体を高い確度で検出でき、第2の検出動作により尿量を高い感度で検出できる。
また、前記制御手段は、前記第2の検出動作により得られた検出結果に基づいて、前記洗浄水の総流量を変化させるものとすれば、便器に対する尿負荷量に応じて洗浄水を最適化でき、節水効果を維持しつつ便器を常に清浄な状態に維持できる。
本発明によれば、人体検知と尿の検知を両立させ、且つ人体検知の際に、封水の揺れによる誤動作を防止した便器洗浄装置を提供することができる。
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態にかかる便器洗浄装置の要部構成を表す模式図である。すなわち、本実施形態の便器洗浄装置は、例えば男子小用水洗便器600に取り付けることができる。
本実施形態の便器洗浄装置は、第1のドップラーセンサ10A、第2のドップラーセンサ10B、制御部100を有する。これらドップラーセンサ10A、10Bは、便器600のボウル面の上側に設けられ、それぞれ矢印A及びBにより例示した如く、異なる方向に電波を送信して対象物の動作を検知可能とされている。ドップラーセンサ10A、10Bが送受信する電波は、便器600を構成する陶器を透過する。このため、これらドップラーセンサ10A、10Bは、便器600の外側に露出させる必要がなく、便器600の内部に収容できるため、外観を非常にすっきりと保つことができる。また、例えばセンサ面をガムで遮蔽するなどの「いたずら」も防止できる。
これらドップラーセンサ10A、10Bの動作は制御部100により制御される。また、制御部100から出力される制御信号によって、給水路500に設けられたバルブ550が開閉される。バルブ550としては、例えば、ラッチング・ソレノイド・バルブなどを用いることができる。バルブ550の開動作により便器600に流された洗浄水は、排水路700に排水される。そして、便器600の排水口には、排水路700からの臭気を有する気流を遮断するための封水650が形成されている。
図2及び図3は、本実施形態の便器洗浄装置の動作を例示する模式図である。
すなわち、待機状態においては、図2に表したように、第1のドップラーセンサ10Aが矢印Aの方向、すなわち便器600の前方に電波を送信して使用者の接近を検知可能としている。使用者900が便器600に接近すると、ドップラーセンサ10Aにより検知され、その検出信号が制御部100に送信される。
ここで、便器600の排水口に形成されている封水650は、例えば、便器600が配置されている部屋のドアの開閉による圧力の変化や、排水路700における圧力の変動などによってその表面が揺れることがある。
これに対して、本実施形態においては、第1のドップラーセンサ10Aは、矢印Aの方向、すなわち便器600の前方に向けて検出用の電波を送信するので、封水650の揺れを検出することはない。つまり、封水650の揺れにより人体検知信号を誤って出力することを防止できる。
第1のドップラーセンサ10Aが使用者900の接近を検知すると、その検出信号が制御部100に出力される。すると、制御部100は、図3に表したように、第2のドップラーセンサ10Bによる検出を開始する。第2のドップラーセンサ10Bから放出される電波は、矢印Bの方向、すなわち便器600の内部において略鉛直下方に向けて送信される。従って、尿流や洗浄水の速度ベクトルのうちで、この電波の伝搬方向に対して平行なベクトル成分をドップラー効果によって検出できる。
このようにして尿流を検出することにより、洗浄水を流す最適なタイミングを決定できる。すなわち、尿流が終了した時点から所定の時間差で洗浄水を流すことができる。
また、尿流の速度と継続時間を検出することにより、特許文献1に開示されているように、便器600への尿負荷量を判定できる。この判定結果に基づき、例えば、バルブ550の開閉時間を調節して洗浄水の量を最適化できる。すなわち、尿の量が多い場合には、洗浄水の水量を増加させ、尿の量が少ない場合には洗浄水の量を減少させることにより、洗浄水の消費量を最小に抑えつつ、便器600を常に清浄な状態に維持できる。
また、例えば、尿負荷量の判定結果に基づき、図示しない銀イオン水生成装置などの殺菌システムの動作を制御することにより、消費電力や銀電極などの無駄な消費を防ぎつつ便器600を清浄な状態に維持できる。
またさらに、第2のドップラーセンサ10Bにより洗浄水の流れをモニタすることにより、洗浄水の流量制御が可能となる。つまり、第2のドップラーセンサ10によって洗浄水の流速を測定し、この流速から流量を判定できる。そして、所定の流量が流れた時点でバルブ550を閉じることができる。このようにすれば、例えば、給水路500における給水圧力が変動したような場合でも、常に最適な量の洗浄水を流すことができる。
またあるいは、バルブ550の故障などにより洗浄水が流れ放しになったような場合にも、第2のドップラーセンサ10Bによりこれを検出してアラームを出すことも可能となる。
なお、ドップラーセンサ10A、10Bは、一定の時間間隔で交互に切り替えるようにしてもよい。例えば、0.1秒乃至数秒の間隔でドップラーセンサ10Aと10Bとを交互に切り替えてモニタしてもよい。
また、いずれの場合にも、ドップラーセンサ10A、10Bを切り替える瞬間のあるいはその直後の信号は無視するとよい。すなわち、センサを切り替えるとパルス的なノイズなどが検出される場合がある。これをマスクすると、誤検出を抑制できる。
一方、センサの切り替え状態、すなわち、いずれのセンサが用いられているかを表示しあるいは信号出力するようにすると、動作状態を簡単に確認でき、システムのメンテナンスや検査の際に便利である。
さらにまた、電源投入時には、便器前方を指向するようにセンサを切り替えると多くの場合に誤動作などが生じにくくなる。
図4は、本実施形態において用いることができるドップラーセンサ10A、10Bの構成を例示する模式図である。
すなわち、ドップラーセンサ10A、10Bは、発振部12と、ローパスフィルタ(LPF)14と、アンテナ16と、ミキサ18と、を有する。
発振部12は、例えば、10.525GHz(ギガヘルツ)の交番信号を出力する。ローパスフィルタ(LPF)14は、発振部12及びアンテナ16からの信号のうちの不要な高周波数成分を遮断する。不要な高周波数成分は、本来送信すべき10.525GHzの2倍、3倍・・・の周波数において発生しやすい。アンテナ16は、発振部12から出力された交番信号に応じたマイクロ波などの電波を送信し、この電波の反射波を受信する。ミキサ18は、アンテナ16が受信した受信信号と、発振部12からの送信信号との差、を演算し出力する。
例えば、アンテナ16から電波TWが送信され、使用者や尿流などの被検知体Sが電波TWの伝搬方向に対して速度Vで接近し、被検知体Sにより反射された電波RWをアンテナ16により受信する場合について説明する。
この場合には、反射された電波RWは、ドップラー効果によって周波数がシフトする。送信電波TWの周波数をFt、受信電波RWの周波数をFr、光速をCとすると、ミキサ18において得られる差分信号(ドップラー信号)ΔFは、次式により表される。

ΔF=Ft−Fr=2×Ft×V/C

このように、ドップラー信号ΔFを検出することにより、被検知体Sすなわち使用者900や尿流の速度Vを測定できる。
図5は、制御部100の構成を例示する模式図である。
制御部100は、第1フィルタ・増幅器110、第2フィルタ・増幅器120、CPU(Central Processing Unit)130、バルブ駆動回路140を有する。
CPU130は、第1及び第2のドップラーセンサ10A、10Bの動作を制御し、またこれらからの出力に基づいて、バルブ駆動回路140の動作を制御する。
第1のドップラーセンサ10Aからの出力は、第1フィルタ・増幅器110において、フィルタリングされ増幅される。第1フィルタ・増幅器110においては、例えば、10〜100Hzの周波数のみを通過させ、またその信号を25倍程度増幅する。第2のドップラーセンサ10Bからの出力は、第2フィルタ・増幅器120において、フィルタリングされ増幅される。第2フィルタ・増幅器120においては、例えば、100〜200Hzの周波数のみを通過させ、またその信号を1000倍程度増幅する。
使用者の接近を検知する第1のドップラーセンサ10Aからの出力は、第1フィルタ・増幅器110を介してCPU130に入力され、判定される。例えば、送信電波TWの周波数として、10.525GHzを用いた場合、使用者の接近速度を毎秒0.14メータとすると、ドップラー信号ΔFの周波数は約10Hzである。CPU130においては、例えば40Hzを上限するローパスフィルタリング処理などを実施し、使用者の接近を判定できる。またこの際に、便器600の封水650も使用者の接近速度に近似した速度で揺れれることがあるが、第1のドップラーセンサ10Aは、便器600の前方空間をモニタしているので、封水650の揺れを誤検出することはない。
一方、尿流を検知する第2のドップラーセンサ10Bからの出力は、第2フィルタ・増幅器120によってフィルタリングされ増幅される。第2フィルタ・増幅器120においては、例えば、100〜200Hzの周波数のみを通過させ、その信号を1000倍程度増幅する。尿流は電波に対する散乱断面積が比較的小さいために、第1フィルタ・増幅器110に比べて、信号をより増幅し、また、低周波信号を除外してS/N比を上げる必要がある。
すなわち、第2のドップラーセンサ10Bは、使用者900の動作や封水650の揺れも検出する場合がある。これに対して、第2フィルタ・増幅器120によりこれらの動きに対応した低周波成分を除去する。
なお、尿流の速度は、毎秒1.4メータ乃至2.4メータ程度である。送信電波TWの周波数として、10.525GHzを用いた場合に、これらに対応するドップラー信号ΔFの周波数は、それぞれ100Hz、180Hzである。
CPU130は、第2フィルタ・増幅器120からの出力に基づいて尿流の速度や継続時間を判定する。そして、この判定結果に基づいて、最適なタイミングで最適な量の洗浄水が流れるようにバルブ駆動回路140の動作を制御する。
以上説明したように、本実施形態によれば、互いに異なる方向をモニタする2つのドップラーセンサを用いることにより、封水の揺れなどによる誤動作を防ぎつつ、使用者の接近と尿流や洗浄水の流れをそれぞれ検知できる。
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態として、指向方向を可変としたドップラーセンサを用いた便器洗浄装置について説明する。
図6は、本実施形態にかかる便器洗浄装置の要部を表す模式図である。図6以降の図面については、その以前の図面に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
本実施形態においては、便器600のボウル面の上側に設けられ、指向方向すなわち電波の送信方向を矢印A及び矢印Bの如く切替可能としたドップラーセンサ10Cが備えられる。
図7は、本実施形態において用いられるドップラーセンサ10Cの要部構成を表す模式図である。
このドップラーセンサ10Cは、第1及び第2のアンテナ16A、16Bを有し、これらアンテナとLPF14との間には、移相器15が設けられている。移相器15は、それぞれのアンテナについて、異なる線路長を有する伝送線路を切替可能としている。すなわち、アンテナ16Aについては、切替手段15Aによって、伝送線路A1、A2のいずれかが接続される。伝送線路A2は、伝送線路A1よりも線路長が長く、伝搬波の位相を遅延させることができる。同様に、アンテナ16Bについては、切替手段15Bによって、伝送線路B1、B2のいずれかが接続される。ここでも伝送線路B2は、伝送線路B1よりも線路長が長く、伝搬波の位相を遅延させることができる。
図8は、ドップラーセンサ10Cの断面構造を表す模式図である。
また、図9(a)は、アンテナ面から眺めた平面図であり、図9(b)は、その正面図である。
ドップラーセンサ10Cは、シールドケース20と基板22とにより封止されている。基板22の上には、発振部12、LPF14、移相器15、ミキサ18などが実装されている。また基板22の裏面側には、グラウンド層24を介して、アンテナ面となる基板26が積層されている。これら基板には、スルーホール28A、28Bが設けられ、これらを介して信号ライン30とアンテナ16A、16Bとがそれぞれ接続されている。
図9に表したように、アンテナ16A、16Bは、それぞれ一対の導電パターンとして基板26の表面に形成されている。
図10は、移相器15による電波の放射方向を説明するための模式図である。
すなわち、アンテナ16Aとアンテナ16Bとに同位相で給電した場合、電波のメインビームは、図10(a)に表したように、アンテナ面26Aに対して垂直方向に放射される。この場合、図7に表した移相器15において、伝送線路A1とB1を介してアンテナ16A、16Bにそれぞれ給電すればよい。
次に、アンテナ16Aに対する給電の位相をアンテナ16Bに対する給電の位相よりも遅延させると、図10(b)に表したように、メインビームはアンテナ16Aの方向に傾斜する。つまり、アンテナ16Bから放射させる電波がアンテナ16Aから放射される電波よりも早く進む。このためには、例えば、図7に表した移相器15において、伝送線路A2とB1とを選択すればよい。
逆に、アンテナ16Bに対する給電の位相をアンテナ16Aに対する給電の位相よりも遅延させると、図10(c)に表したように、メインビームはアンテナ16Bの方向に傾斜する。つまり、アンテナ16Aから放射させる電波がアンテナ16Bから放射される電波よりも早く進む。このためには、例えば、図7に表した移相器15において、伝送線路A1とB2とを選択すればよい。
具体例を挙げると、アンテナ16A、16Bの中心間距離Wを14.3ミリメータとし、メインビームをアンテナ面26Aの垂直方向から30°傾斜させる場合には、アンテナ16Bから放射される電波が空気中で、距離L=(14.3×cos30°)ミリメータだけ早く進めばよい。このためには、アンテナ16A、16Bからそれぞれ放射された電波が空気中で、次式により表される位相差をもてばよい。

Figure 0004277313
ここで、λ0は、真空中での電波の波長であり、光速をc、周波数をfとすると、次式の関係が成立する。

λ0=c/f

光速cを3×10mm/秒、周波数fを10.525GHzとすると、波長λ0は次式の如くである。

λ0=3×10/10.525×10
≒28.5mm

従って、(1)式に代入すると、電波の位相差は、次式により表される。

Figure 0004277313
この電波の位相差を生じさせるためには、伝送線路において次式により表される位相差を設ければよい。

Figure 0004277313
ここで、λgは、伝送線路における伝搬波の波長であり、伝搬波の真空中の波長λ と、伝送線路が形成されている基板(アンテナ基板26)の比誘電率εrとを用いて次式により表される。

λg=λ/(εr)1/2 (3)

(3)式を(2)式に代入すれば、伝送線路において必要とされる線路長差が得られる。例えば、アンテナ基板26の材料として、比誘電率εrが4.8のガラスエポキシ基板を用いた場合には、線路長差は次式の如くである。

Figure 0004277313
つまり、伝送線路A1とB2、あるいは伝送線路A2とB1との間で、5.7ミリメータの線路長差があれば、図10(b)あるいは(c)の如く、電波のメインビームをアンテナ面26Aの垂線に対して約30°傾斜させることができる。
以上説明したように、本実施形態においては、移相器15において伝送線路を適宜切り替えることにより、アンテナから放出させるメインビームの方向を変えることができる。
図11及び図12は、本実施形態の便器洗浄装置の動作を例示する模式図である。
すなわち、通常待機モードにおいては、ドップラーセンサ10Cの移相器15を切り替えることにより、図11に矢印Aで表したように便器600の前方に向けてビームを放射し、使用者900の接近を検知する。この時、ドップラーセンサ10Cは便器600の封水650の揺れを誤検出することはない。
使用者900を検知したら、ドップラーセンサ10Cの移相器15を切り替えて、図12に矢印Bで表したように、電波を便器600の内部において略鉛直下方に向けて放射する。このようにすれば、尿流や洗浄水の水流を高い感度で検出できる。
図13は、本実施形態の便器洗浄装置の制御部100の構成を例示する模式図である。
図5に関して前述したものと同様に、制御部100は、第1フィルタ・増幅器110、第2フィルタ・増幅器120、CPU(Central Processing Unit)130、バルブ駆動回路140を有する。
本実施形態においては、ドップラーセンサ10Cからの出力は、第1フィルタ・増幅器110と第2フィルタ・増幅器120に直列的に入力される。第1フィルタ・増幅器110においては、例えば、10〜200Hzの周波数のみを通過させ、またその信号を25倍程度増幅する。第2フィルタ・増幅器120においては、例えば、100〜200Hzの周波数のみを通過させ、さらにその信号を40倍程度増幅する。
第1フィルタ・増幅器110の出力は、人体検知用出力112として、CPU130に入力される。また、第2フィルタ・増幅器120の出力は、水流検知用出力122としてCPU130に入力される。
図11に表したように待機モードにおいては、CPU130は、ドップラーセンサ10Cの移相器15を制御して矢印Aの方向の方向に電波を放出させる。そして、第1フィルタ・増幅器110からの出力112をモニタすることにより、使用者900の動作に対応した周波数帯の信号の変化を検出する。
使用者900を検知すると、CPU130はドップラーセンサ10Cの移相器15を切り替えて、図12の矢印Bの方向に電波を放出させる。そして、第2フィルタ・増幅器120からの出力122をモニタすることにより、尿流や洗浄水の水流に対応する周波数帯の信号の変化を検出する。そして、この判定結果に基づいて、最適なタイミングで最適な量の洗浄水が流れるようにバルブ駆動回路140の動作を制御する。
図14は、本発明者が実施した実験の結果を例示するグラフ図及びタイミングチャートである。
すなわち、同図(a)は本実施形態の便器洗浄装置において第1フィルタ・増幅器110の出力112の出力波形を表し、同図(b)は、第2フィルタ・増幅器120の出力122の出力波形を表す。
使用者900が接近するとその動作に対応して低い周波数の信号変動が生ずる。図14(a)に表したように、第1フィルタ・増幅器110の出力においては、使用者900の動きに対応する低い周波数のドップラー信号が期間T1において全体的に表れている。使用者900からの反射波の強度は比較的高いため、ドップラー信号の振幅も大きい。
また、図14(c)に表したように、センサの指向方向を前方(図11の矢印Aの方向)に設定している間は、便器の封水650の揺れなどを検出することがなく、使用者を検知するまでは信号の振幅は非常に小さい。
図14(d)に表したようなタイミングで使用者900の接近を検知したら、図14(c)に表したように、センサの指向方向を前方から下方に切り替えることができる。
センサが下方(図12の矢印Bの方向)を指向すると、使用者の動きや封水650の揺れなどに加えて、尿流を検知できる。図14(a)を見ると、使用者の動きや封水650の揺れに対応する低い周波数の振幅の大きな信号に重畳して、期間T2において周波数が高く振幅が小さい信号が表れている。これが、尿流による高い周波数成分のドップラー信号である。尿流からの反射波の強度はあまり高くないため、尿流による高い周波数成分の信号は、第1フィルタ・増幅器110の出力においては明瞭でないが、図14(b)に表したように、第2フィルタ・増幅器120の出力においてはフィルタリングと増幅によって明瞭に表れている。使用者が立ち去った後に洗浄水を流すと、やはり高い周波数成分のドップラー信号が生じている。
このように、ドップラーセンサ10Cの指向方向を適宜切替え、第1フィルタ・増幅器110と第2フィルタ・増幅器120の出力を適宜モニタすることにより、使用者の接近、尿流の速度や継続時間、使用者の退去、をそれぞれ高い感度で検出できる。使用者の動きの検知と尿流の検知は、例えば、図14(d)及び(e)に表したようなタイミングで生ずる。これに対して、例えば、図14(f)に表したようなタイミングで給水路のバルブ550を開いて洗浄水を流すことができる。
そして、センサの指向方向を前方に設定することにより、封水650の揺れなどによる誤検知を防ぐことができる。
以上、本発明の第1及び第2の実施の形態について説明した。
以下、実施例を参照しつつ、これら実施の形態についてさらに詳細に説明する。
(第1の実施例)
まず、本発明の第1の実施例として、図1あるいは図6に表したように小用便器600に搭載した本発明の便器洗浄装置の動作の具体例を説明する。
図15乃至図17及び図19は、本発明の実施例の便器洗浄装置の動作を例示するフローチャートである。
すなわち、図15は、本実施例の便器洗浄装置の動作のメインフローを表す。
まず、ステップS100において、ドップラーセンサの指向方向を前方に設定する。すなわち、第1実施形態の場合には、図2に関して前述したようにセンサ10Aを用いて検知を開始する。一方、第2実施形態の場合には、図13に関して前述したように、移相器15により、矢印Aの方向にビームを指向させて検知を開始する。こうすることにより、便器の封水650の揺れなどを誤って検出することがなくなり、誤動作を防ぐことができる。
次に、ステップS200において、使用者の検出処理を開始する。
図16は、使用者の検出処理の内容を表すフローチャートである。
まず、ステップS202において、第1フィルタ・増幅器110の出力が所定の電圧V1とV2との間にあるか否かを判断する。第1フィルタ・増幅器においてはDC(直流)成分をカットしているので、その出力は基準電位を中心として上下に振れる。図14に関して前述したように、使用者を検知するとこの振れが大きくなる。
例えば、5ボルトの電源を用いて基準電位を2.5ボルトとし、V1=1.5ボルト、V2=3.5ボルトと設定する。すると、使用者を検知した場合には、この範囲を十分に超えるが、使用者が便器600から50センチメータも離れると、信号の振幅範囲は高々2.2ボルトから2.8ボルトの範囲内に収まる。
そこで、以下、オフディレイタイマとオンディレイタイマとを用いて、所定範囲を超える信号を検知してから0.3秒間連続的に所定範囲内になることなく、1秒が経過した時に、使用者を検出するルーチンについて説明する。
まず、ステップS202において出力VがV1とV2により規定される範囲を超えない場合(ステップS202:yes)は、ステップS204においてオフディレイタイマをスタートさせ、あるいは計測を継続させる。
次に、ステップS206において、オフディレイタイマが0.3秒を経過したか否かを判定する。経過していない場合(ステップS206:no)は、ステップS202に戻り第1フィルタ・増幅器110の出力を判定する。経過している場合(ステップS206:yes)は、ステップS208に進み、オンディレイタイマをリセットする。
一方、ステップS202において、出力VがV1とV2の範囲を超えた場合(ステップS202:no)は、ステップS210においてオフディレイタイマをリセットする。
そして、ステップS212において、オンディレイタイマをスタートさせ、またはその計測を継続させる。
次に、ステップS214において、オンディレイタイマが1秒経過したか否かを判定する。
1秒経過してない場合(ステップS214:no)は、ステップS202に戻り、出力を判定する。
1秒経過した場合(ステップS214:yes)は、ステップS216において使用者を検出したと判断し、使用者検出処理ルーチンを終了する。
再び図15に表したメインルーチンに戻って説明を続けると、ステップS300において使用者が検出されたか否かを判定する。使用者が検出されていない場合(ステップS300:no)は、ステップS200に戻り、再び使用者検出ルーチンを実行する。
一方、使用者を検出した場合(ステップS300:yes)は、ステップS400に進み、センサの指向方向を下方に変更する。すなわち、第1実施形態の場合には、図3に関して前述したようにセンサ10Bを用いて検知を開始する。一方、第2実施形態の場合には、図14に関して前述したように、移相器15により、矢印Bの方向にビームを指向させて検知を開始する。こうすることにより、散乱断面積があまり大きくない尿流を高い感度で検出できる。
センサの指向方向を変更した後に、ステップS500において、尿流検出処理を実行する。
図17は、尿流検出ルーチンを表すフローチャートである。すなわち、このフローチャートは、尿流を一旦検出した後に、3秒間検出しない状態が持続したら、尿流は終了したと判定して洗浄水を流す具体例である。
まず、ステップS502において、第2フィルタ・増幅器120の出力Vが所定の電圧V3とV4との間にあるか否かを判定する。第2フィルタ・増幅器120の出力は図14(b)に例示したように、尿流によって明瞭なドップラー信号を示すので、基準電圧V3、V4を適宜設定すれば、尿流の信号を明瞭に区別できる。
ステップS502において、出力VがV3とV4との間にある場合(ステップS502:yes)は、再びステップS502を繰り返す。
一方、ステップS502において、出力VがV3とV4との範囲を超えた場合(ステップS502:yes)は、ステップS504に進みタイマをスタートさせる。
そして、ステップS506に進み、第2フィルタ・増幅器120の出力Vが所定の範囲内にある状態で3秒間経過したか否かを判定する。つまり、尿流を検出しない状態が3秒間継続したか否かを判定する。
3秒間継続しない場合(ステップS506:no)には、尿流はまだ終了していないと判断して、もう一度ステップS506に戻り判定を開始する。
一方、3秒間継続した場合(ステップS506:yes)には、尿流は終了したと判断してステップS508に進み、タイマを停止する。
そして、ステップS510においてタイマの計測時間に応じた時間だけ給水路のバルブ550を開けて洗浄水を流して、検出処理ルーチンを終了する。
以上説明したルーチンによれば、尿流を検出した後に、3秒間検出しない状態が継続したら尿流は終了したと判断する。これは、使用者による尿流が断続的に生ずる場合が多いことを考慮したためである。
また、尿流の継続時間をタイマで計測し、その計測時間に応じた時間だけバルブ550を開けることにより、尿負荷量に応じた適量の洗浄水を流すことができる。
図18は、タイマの計測時間とバルブ550を開ける時間との関係を例示するグラフ図である。
すなわち、タイマの計測時間が非常に短い場合(T1未満)は、誤検出などの可能性が高いのでバルブ550を開けない。そして、タイマの計測時間が所定の範囲(T1からT2)においては、バルブ550を開ける時間は一定とする。また、タイマの計測時間が大きい場合(T2以上)には、計測時間に応じてバルブ550の開時間も長くする。このようにすれば、誤動作などに対する節水効果も維持しつつ、尿負荷量に応じた量の洗浄水を流すことができる。
再び、図15のメインフローに戻って説明を続けると、このようにして尿流検出処理(ステップS500)が終了したら、ステップS600において、尿流が終了した否かを判定する。これは例えば、図17に例示したステップS506を実施することにより判定可能である。
尿流が終了してない場合(ステップS600:no)は、ステップS500に進み、再び尿流検出処理ルーチンを実行する。
一方、尿流が終了している場合(ステップS600:yes)は、ステップS700に進み、センサの指向方向を前方に変更する。すなわち、第1実施形態の場合には、図2に関して前述したようにセンサ10Aを用いて検知を開始する。一方、第2実施形態の場合には、図13に関して前述したように、移相器15により、矢印Aの方向にビームを指向させて検知を開始する。こうすることにより、便器の封水650の揺れなどを誤って検出することがなくなり、誤動作を防ぐことができる。
しかる後に、ステップS800において、使用者の退去を検出する処理を実行する。 図19は、使用者の退出を検出する処理ルーチンを表すフローチャートである。
すなわち、このフローチャートは、第1フィルタ・増幅器110の出力が所定の範囲内に収まった時点から2秒間連続的にその範囲内にある場合に、使用者が退出したと判定する具体例である。
まず、ステップS802において、第1フィルタ・増幅器110の出力が所定の電圧V1とV2との間にあるか否かを判断する。このステップは、ステップS202などに関して前述した如くであり、例えば、所定の電圧V1は1.5ボルト、電圧V2は3.5ボルトに設定している。
出力Vが所定の範囲内にない場合(ステップS802:no)は、ステップS804においてオフディレイタイマをリセットする。
一方、出力Vが所定の範囲内の場合(ステップS802:yes)は、ステップS806に進み、オフディレイタイマをスタートさせ、または計測を継続させる。
そして、ステップS808において、オフディレイタイマが2秒経過したか否かを判定する。
2秒経過していない場合(ステップS808:no)は、ステップS802に戻り、出力Vを判定する。
一方、2秒経過した場合(ステップS808:yes)は、ステップS810に進み、使用者は退去したと判断する。
以上説明したように、本具体例においては、2秒間連続して所定の出力が得られなかった場合に、使用者が退去したと判断する。この処理ルーチンにおいても、ドップラーセンサは、便器の前方を指向しているので、封水650の揺れなどを誤検出して使用者が退去していないものと誤判断する問題を解消できる。
再び、図15のメインルーチンに戻って説明すると、使用者の退出を検出する処理の後に、ステップS900において使用者の退出を検出したか否かを判定する。そして、使用者の退出の検出がされていない場合(ステップS900:no)には、再びステップS800に戻って使用者の退出を検出する。
一方、使用者の退出を検出した場合(ステップS900:yes)は、ステップS200に戻り、新たな使用者を検出する処理を開始する。
以上説明したように、本実施例によれば、センサの指向方向を適宜変更して、使用者の検出と、尿流の検出を確実に実施し、尿量に応じて最適な洗浄水を最適なタイミングで流すことができる。
(第2の実施例)
次に、本発明の第2の実施例として、第1実施例に「前洗浄」をさらに付加した動作について説明する。
図20は、本実施例の便器洗浄装置の動作を表すフローチャートである。すなわち、このフローチャートは、図15に関して前述したメインルーチンに対応する。
本実施例においては、ステップS300の使用者検出判定処理の後に、ステップS350において「前洗浄」を実施する。前洗浄は、使用に先だって予め便器に少量の洗浄水を流すことにより、便器面を濡らした状態にして汚れを付着しにくくする洗浄工程である。
前洗浄は、例えば、バルブ550を1秒間開けることにより実施できる。洗浄水を流すと、下方に指向させたセンサは、洗浄水の水流によるドップラー信号を検出する。本発明者の実験によれば、尿流よりも洗浄水の水流によるドップラー信号のほうが大きく検出される場合が多い。前洗浄においても、バルブ550を閉栓した後、例えば約4秒間は洗浄水の「垂れ」により尿流の検出が困難となる場合がある。このような待機時間を適宜設けた後に、ステップS400においてセンサの指向方向を下方に変更して尿流の検出を開始することが望ましい。
(第3の実施例)
次に、本発明の第3の実施例として、本発明の便器洗浄装置を大小兼用便器に搭載した具体例について説明する。
図21は、本実施例の便器洗浄装置のドップラーセンサの指向方向を例示する模式図である。
すなわち、大小兼用便器620には、ロータンク622、便座蓋626、便座洗浄装置628などが設けられている。便座洗浄装置628は、温水を噴射して使用者の臀部などを洗浄可能とし、さらに、便座蓋626の開閉を制御するようにしてもよい。
そして、本実施例においては、便座洗浄装置628にドップラーセンサ10A及び10B、あるいは10Cが内蔵されている。ドップラーセンサは、第1実施形態あるいは第2実施形態に関して前述したように、矢印A及びBの方向にそれぞれ指向方向を切替可能とされている。
図22乃至図24は、本実施例の便器洗浄装置の動作を説明するための模式図である。 まず、待機状態においては、図22(a)に表したように、矢印Aの方向に電波を放射して使用者900の接近を検出する。この時、便器620に張られた封水650の揺れを検出することはない。従って、使用者900の接近を高い確度で検出できる。
使用者900を検出すると、例えば、図22(b)に表したように、便座洗浄装置628が便座蓋626を自動的に開くようするとさらに便利である。
使用者900を検出した後は、図23に表したように、センサの指向方向は、矢印Aのまま、あるいは矢印Bの方向に切り替えられる。例えば、便座洗浄装置628に着座センサが設けられている場合には、着座センサが使用者900の着座を検出するまでの間は、センサの指向方向を矢印Aのままに維持することができる。このようにすれば、男子小用の使用態様において、ビームの放出方向と尿流の飛散方向が平行な関係に近づくので、尿流を高い感度で検出できる。
一方、着座センサが設けられていない場合には、センサの指向方向を矢印Bの方向に切り替えて、尿流を検出するようにしてもよい。また、着座センサが設けられている場合には、着座を検出するとセンサの指向方向を矢印Bの方向に切り替える。
図24は、使用者900が着座した状態を表す模式図である。
使用者900が着座した状態においては、センサの指向方向は矢印Bの方向に切り替えることにより、尿流を検出することができる。また、封水650の揺れを検出することによって、使用者900による使用状態を推定することも可能となる。
図25は、使用者900が立ち上がり退出する様子を表す模式図である。
着座センサが設けられている場合には、使用者900が便座から立ち上がる動作を着座センサが検出したら、センサの指向方向を矢印Aの方向に切り替えることができる。また、着座センサが設けられていない場合には、図24の状態で、尿流や封水650の揺れなどを検出しなくなった時に、センサの指向方向を矢印Aの方向に切り替えることができる。
そして、洗浄水を自動的に流すことができる。すなわち、ロータンク622の手動操作ハンドル624による手動操作とは別にて排水弁を操作可能とした自動洗浄ユニットを設けた場合には、使用者900が便座から立ち上がった時に、洗浄水を自動的に流すことが可能である。
そして、図25(a)に表したように、使用者900の退出動作を検出し、使用者900の動きの信号が検出されなくなったら、退出したものと判断できる。なお、この時に洗浄水を流すようにしてもよい。
この後、図25(b)に表したように、便座蓋626を自動的に閉じるようにするとさらに便利である。
以上説明したように、本実施例においても、2つのドップラーセンサ10A、10Bを設け、あるいは指向方向が切替可能なドップラーセンサ10Cを設けることにより、待機状態において封水650の揺れなどによる誤検出を解消した便器洗浄装置を提供できる。
(第4の実施例)
次に、本発明の第4の実施例として、本発明の便器洗浄装置を大小兼用便器に搭載した第2の具体例について説明する。
図26は、本実施例の便器洗浄装置のドップラーセンサの指向方向を例示する模式図である。
すなわち、本実施例においては、ドップラーセンサ10A及び10B、あるいは10Cは、便器620の前面下端の付近に配置されている。そして、その指向方向は、矢印Aで表したように便器620の前方と、矢印Bで表したように略鉛直上方と、を切り替え可能とされている。
センサをこのように配置しても、第3実施例に関して前述したものと同様に、使用者の接近と便器の使用状態を高い感度で検出できる。
すなわち、待機状態においては、図27に表したように、センサの指向方向を矢印Aの方向に切り替えることにより、封水650の揺れを誤検出することなく、使用者900の接近を検出できる。
使用者900を検出したら、図28に表したように、センサの指向方向を矢印Bの方向に切り替えることができる。このようにすると、男子小用の使用態様において、ビームの方向と尿流の飛散方向とが略相対するので、高い感度で尿流を検出できる。
また、図29に表したように、使用者900が着座した状態においては、やはりセンサの指向方向を矢印Bの方向に切り替える。このようにすれば、着座した状態での尿流を検出でき、また、封水650の揺れを検出することにより、使用者の使用状態を推定することも可能となる。
(第5の実施例)
次に、本発明の第5の実施例として、複数の小用便器が配置された公共トイレにおける本発明の便器洗浄装置について説明する。
図30は、このような公共トイレを例示する模式図である。
小用便器600A、600B、600Cのそれぞれには、第1実施形態あるいは第2実施形態に関して前述したように、センサ10A及び10B、あるいは10Cが内蔵されている。これらセンサは、待機状態においては、それぞれ、図2あるいは図13に表したように、便器の前方にビームを指向している。
ところが、このように複数の便器が配置された公共トイレの場合、使用者900は隣接する便器の前を通って、目的の便器に到着する。例えば、 使用者900は、図30(a)に表したように便器600Cの前を通過して、図30(b)に表したように便器600Bを選ぶことがある。
このような場合に、便器600Cのセンサが使用者を敏感に検出すると誤動作の原因となる。そこで、このような場合には、使用者900に対する検出感度を低下させるなどの方策が有効である。このためには、例えば、図16に関して前述した使用者検出処理ルーチンのステップS202において、基準電圧V1、V2の範囲を広くすることができる。つまり、ドップラー信号の振幅が大きい場合にのみ検出するようにする。または、ステップS206におけるオフディレイタイマの経過時間の基準値(0.3秒)を長くしてもよい。
これらの方策により、使用者900に対する検出感度を適宜調整することにより、誤検出を防ぐことができる。
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
例えば、センサの形状や構造、制御部の具体的な構成、便器の形状やセンサの配置位置などについては、当業者が適宜設計変更して採用したものも、本発明の要旨を有する限りにおいて本発明の範囲に包含される。
本発明の第1の実施の形態にかかる便器洗浄装置の要部構成を表す模式図である。 第1の実施形態の便器洗浄装置の動作を例示する模式図である。 第1の実施形態の便器洗浄装置の動作を例示する模式図である。 第1実施形態において用いることができるドップラーセンサ10A、10Bの構成を例示する模式図である。 制御部100の構成を例示する模式図である。 本発明の第2実施形態にかかる便器洗浄装置の要部を表す模式図である。 第2実施形態において用いられるドップラーセンサ10Cの要部構成を表す模式図である。 ドップラーセンサ10Cの断面構造を表す模式図である。 (a)は、アンテナ面から眺めた平面図であり、(b)は、その正面図である。 移相器15による電波の放射方向を説明するための模式図である。 第2実施形態の便器洗浄装置の動作を例示する模式図である。 第2実施形態の便器洗浄装置の動作を例示する模式図である。 第2実施形態の便器洗浄装置の制御部100の構成を例示する模式図である。 本発明者が実施した実験の結果を例示するグラフ図及びタイミングチャートである。 本発明の実施例の便器洗浄装置の動作を例示するフローチャートである。 本発明の実施例の便器洗浄装置の動作を例示するフローチャートである。 本発明の実施例の便器洗浄装置の動作を例示するフローチャートである。 タイマの計測時間とバルブ550を開ける時間との関係を例示するグラフ図である。 本発明の実施例の便器洗浄装置の動作を例示するフローチャートである。 本発明の第2実施例の便器洗浄装置の動作を表すフローチャートである。 本発明の第3実施例の便器洗浄装置のドップラーセンサの指向方向を例示する模式図である。 第3実施例の便器洗浄装置の動作を説明するための模式図である。 第3実施例の便器洗浄装置の動作を説明するための模式図である。 第3実施例の便器洗浄装置の動作を説明するための模式図である。 使用者900が立ち上がり退出する様子を表す模式図である。 本発明の第3実施例の便器洗浄装置のドップラーセンサの指向方向を例示する模式図である。 センサの指向方向を矢印Aの方向に切り替えることにより、封水650の揺れを誤検出することなく、使用者900の接近を検出できることを表す模式図である。 センサの指向方向を矢印Bの方向に切り替える様子を表す模式図である。 使用者900が着座した状態を表す模式図である。 公共トイレを例示する模式図である。
符号の説明
10A、10B、10C ドップラーセンサ
12 発振部
15 移相器
15A、15B 切替手段
16、16A、16B アンテナ
18 ミキサ
20 シールドケース
22 基板
24 グラウンド層
26 アンテナ基板
28A、28B スルーホール
30 信号ライン
100 制御部
110 第1フィルタ・増幅器
120 第2のフィルタ・増幅器
140 バルブ駆動回路
500 給水路
550 バルブ
600、600A〜600C 小用便器
620 大小兼用便器
621 便座
622 ロータンク
624 手動操作ハンドル
626 便座蓋
628 便座洗浄装置
650 封水
700 排水路
900 使用者
S 被検知体

Claims (7)

  1. 排水部に封水が形成される便器に洗浄水を供給する便器洗浄装置であって、
    前記封水の揺れを実質的に検出しない第1の方向に指向した電波を放出してドップラー効果を検出する第1の検出動作と、前記封水の揺れを実質的に検出可能な第2の方向に指向した電波を放出してドップラー効果を検出する第2の検出動作と、を実行可能な検出手段と、
    前記第1及び第2の検出動作の少なくともいずれかの検出結果に基づいて前記洗浄水の供給を制御する制御手段と、
    を備え
    前記検出手段は、第1のアンテナと、第2のアンテナと、前記第1及び第2のアンテナからそれぞれ放出される電波の位相差を可変とする移相器と、を有し、
    前記移相器により前記電波の位相差を切り替えることによって前記第1の検出動作と前記第2の検出動作とを選択的に実行可能としたことを特徴とする便器洗浄装置。
  2. 便器に洗浄水を供給する便器洗浄装置であって、
    第1のアンテナと、第2のアンテナと、前記第1及び第2のアンテナからそれぞれ放出される電波の位相差を可変とする移相器と、を有し、前記移相器により前記電波の位相差を切り替えることによって、第1の方向に指向した電波を放出してドップラー効果を検出する第1の検出動作と、前記第1の方向とは異なる第2の方向に指向した電波を放出してドップラー効果を検出する第2の検出動作と、を選択的に実行可能な検出手段と、
    前記検出手段の検出結果に基づいて前記洗浄水の供給を制御する制御手段と、
    を備えたことを特徴とする便器洗浄装置。
  3. 前記移相器は、前記第1のアンテナに接続された線路長と、前記第2のアンテナに接続された線路長と、の少なくともいずれかを可変としたことを特徴とする請求項またはに記載の便器洗浄装置。
  4. 前記第1の検出動作においては人体を検出し、
    前記第2の検出動作においては尿流を検出することを特徴とする請求項1〜のいずれか1つに記載の便器洗浄装置。
  5. 第1の周波数帯域の信号を通過させ第1の増幅率により増幅する第1のフィルタ・増幅手段と、
    前記第1の周波数帯域よりも下限が高い第2の周波数帯域の信号を通過させ第2の増幅率により増幅する第2のフィルタ・増幅手段と、
    をさらに備え、
    前記第1の検出動作により得られた検出結果を前記第1のフィルタ・増幅手段を介して判定し、
    前記第2の検出動作により得られた検出結果を前記第1のフィルタ・増幅手段と前記第2のフィルタ・増幅手段とを介して判定することを特徴とする請求項1〜のいずれか1つに記載の便器洗浄装置。
  6. 前記便器は、小用便器であり、
    前記検出手段は、前記小用便器本体の上部に設けられ、
    前記第1の方向は、前記小用便器の前方に向けた方向であり、
    前記第2の方向は、略鉛直下方であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1つに記載の便器洗浄装置。
  7. 前記制御手段は、前記第2の検出動作により得られた検出結果に基づいて、前記洗浄水の総流量を変化させることを特徴とする請求項1〜のいずれか1つに記載の便器洗浄装置。
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