JP4277132B2 - 歯間ブラシ用ワイヤー及び歯間ブラシ製品 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、操作性と耐久性にすぐれ、洗浄用あるいは清掃用などとして用い得る改良された歯間ブラシ軸線用のワイヤーと、該ワイヤーを用いてなる歯間ブラシ製品に関する。
【0002】
【従来技術】
歯間ブラシは、軸線となる金属細線を例えば2つに折り曲げてより合わせ、その間にブラシ毛束を挟持固定するとともに、その基端部には太径の樹脂材料などでなる把持部を設けたものであって、前記金属細線は、狭い歯間への挿通性と曲げ変形・座屈に耐え得る強度、並びに衛生的配慮から、例えば0.2〜0.4mm程度の太さのステンレス鋼ワイヤーが一般に使用されている。
【0003】
ところで、このような細い軸線によって構成した歯間ブラシで、強固に付着した歯垢や歯間に残る残留物などを確実に除去する為には、繰り返してブラッシングされるものの、例えば前記軸線が軟らかく容易に変形したり、破断しやすいものではこのようなブラッシングには適さず、歯間ブラシ製品としての適性を欠くものであり、ワイヤー自体の適否が極めて重要である。また、このブラシ製品は、前記したようにワイヤー同士を強くより加工しブラシ毛を挟持するものであることから、ばね線のように強度を大きくしたものでは、より加工でのスプリングバックによってブラシ毛の保持が困難となることから、逆に軟質特性のものが望まれる。このように歯間ブラシは、これを使用する場合と製造する場合とで相反する関係にあり、調和された特性の金属ワイヤーが求められている。
【0004】
従来、このような用途に用いるワイヤーとしては、例えばSUS304や316材などの一般的な軟質ステンレス鋼線が容易に着想され、実際に使用されてはいるものの、これらワイヤーを歯間に挿通しやすい前記太さにしたものでは、ブラッシングに耐える強度(断線)が確保されず、寿命的に短いという問題がある。この為、例えば特開平7−227315号公報、特開平10−152758号公報、特開平11−346831号公報などが提案されてきた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記各公報はいづれも用いる金属ワイヤーの種類、分量を規定した歯間ブラシに関するものであって、例えば、前者特許ではCoを30〜60%含有したCo合金によるものとし、一方、次公報及び最後者公報では、MnやNを高くすることで強度を大きくしたステンレス鋼線で構成することとしているが、これら従来技術によるワイヤーはいづれも引張強さ900〜1100MPa程度に留まる比較的軟らかいものであり、特に強固なブラッシングの為の歯間ブラシとしては十分とは言い難いものである。
【0006】
また、前者公報による歯間ブラシでは、高価なCoを多量に含有することから材料コストが大きく、しかもその実施例として示されている合金は、いづれも10〜30%程度と多量のNiを含んでいることからNiアレルギーの問題も懸念されるものである。したがって、この線材については、例えば線表面に樹脂被覆などを施してNi溶出が生じないようにしておくことが必要となり、工程や手間の付加、コストアップなどの問題が生じるなど好ましいものとは言い難い。
【0007】
一方、ステンレス鋼である次特許では、その実施例として17〜19%の高Mn,かつ0.65%以上の高Nを添加したものについてのみ例示されているが、このように多量のNやMnを含有するものでは、溶解や熱間圧延に高度の技術が必要となるばかりでなく、伸線加工やより加工において材料割れが生じやすく、加工歩留りが著しく低いという加工上の問題がある。この為、材料コストアップにより製品の普及を妨げるとともに、割れを内存したようなものでは到底ブラシ製品としての安全性を欠くものとなる。
【0008】
また最後者公報のものについても、得られた引張強さや伸びなどの機械的特性は前記各特許のものに比して同等程度のものであり、また成分的にも、約10%程度のNiを含んでいることからNiアレルギーの問題や材料費が高いなどの点において未だ改善の余地が残されている。
【0009】
このように、従来から提案されてきた各金属材料は、歯間ブラシとして十分な強度特性のものではなく、操作性、耐久性などにおいて満足できるものとは言い難い。そこで、本発明者はこれら要件を満足する新たな材料開発に取り組み、ここにその完成を見た。
【0010】
【課題を解決する為の手段】
すなわち本発明は、質量で、C:0.08〜0.15%,Si≦1.0%,Mn≦2.0%,Ni:4.5〜7.0%,Cr:15.5〜17.5%,Mo:0.05〜0.5%,N:0.05〜0.30%を含有するとともに2C+Nを0.3〜0.6%に調整し、残部Fe及び不可避不純物からなるオーステナイト系ステンレス鋼線でなり、かつ該線の引張り試験における破断伸び40〜60%、引張強さ1200MPa以上の特性を備えることを特徴とする歯間ブラシ用ワイヤーである。
【0011】
また、請求項2発明では、前記ステンレス鋼線は、前記引張試験における0.2%耐力に位置するポイントAと最大応力を示すポイントBとを結ぶ直線Xの傾きが50〜300N/mm2の範囲内にしたものである。
【0012】
さらに請求項3の発明は、前記いづれかに記載のブラシ用ワイヤー同士をより合わせて、該ワイヤー間にブラシ毛を挟持固定し構成したことを特徴とする歯間ブラシ製品である。
【0013】
【発明の実施の形態】
このように、本願請求項1の発明によれば、オーステナイト系ステンレス鋼としての基本組成であるNiを低く抑えながらも、高強度特性とする為にCを高めるとともに、侵入型元素で結晶粒を微細化できるNを添加し、さらに2C+Nを0.3〜0.6%に調整することによって、40〜60%の大きな伸びを有しながらも、引張強さ1200MPa以上の高強度特性を有するものとしている。
【0014】
そして、このような強度特性とすることにより、ワイヤー同士のより合わせ加工ではスプリングバックを抑えてブラシ毛の保持を確実にし、一方、こうしてなるブラシ製品を使用する場合には、前記より加工での加工硬化によって高強度で弾性を高め曲がり変形を防ぐとともに、操作性や耐久性を高めた歯間ブラシの提供を可能にする。なお本発明では、前記引張試験はJISG2241「金属材料引張試験方法」によるものとする。
【0015】
また本発明では、高強度を得る為に侵入型元素であるC及びNを高めることとしているが、この場合、CはCrと結合してCr炭化物を発生させ、またNも窒化物を発生させることから、これら元素を固溶させて安定化させ、かつ前記Niアレルギーの発生を抑える観点から、特にNiを4.5〜7%と低くすることで解決することを特徴の一つとしている。
【0016】
すなわち、図2はオーステナイト系ステンレス鋼におけるC及びNの固溶度と熱処理温度との関係を示すものであって、この結果によれば、Niが少ないもの程より多くのCやNを固溶できることを示しており、したがって高強度なワイヤーの提供が可能となる。また同じNi量のステンレス鋼であっても、より低い温度での熱処理が可能であることから、過度の加熱によって強度を下げるというようなことがないことからも有効である。
【0017】
なお、本発明で2C+Nの値を前記0.3〜0.6%に設定する理由は、前記したように高強度特性を得るためには結晶粒を微細化してより多く含有させ、軟質状態で引張強さ1200MPa以上の強度を持たせる為には0.3%以上にしておくことが好ましく、一方、その量が0.6%を越える程多く含有させると完全な固溶状態が得られにくくなって、前記炭化物や窒化物の発生を齎せることとなり、より好ましくは0.33〜0.5%とする。
【0018】
また、前記ブラシ用ワイヤーは、前記所定組成としたステンレス鋼線を最終仕上げ線径にまで冷間加工によって細径化し、例えば1000〜1150℃程度の固溶化熱処理を施すことで得られるが、さらに該熱処理後、例えば1〜5%程度の軽度スキンパス加工を行なって剛性を高めることもできる。この場合、前記冷間伸線加工をダイヤモンドダイスでの湿式伸線加工で行ったものでは、得られる線材の表面粗さ(Ra)を例えば1μm以下の光輝平滑表面とすることができ、曲げや捻り加工での切欠き破断などの発生を抑え得る利点がある。
【0019】
こうして得られた歯間ブラシ用のワイヤーは、前記した高い伸びとともに引張強さ1200以上(好ましくは1300〜1500MPa)のすぐれた特性を備えるものとなり、したがって、ブラシ製品に加工する場合には高い伸び特性によってより加工時でのスプリングバックを抑え、また、これを使用する場合には、前記より加工によってさらに加工硬化され大きな弾性を持たせることができ、相反する前記両状態において有効なものとなる。
【0020】
また本発明では、前記引張試験におけるワイヤーの0.2%耐力に位置するポイントAと、最大応力を示すポイントBとを結ぶ直線Xの傾きについて前記所定範囲にすることとしているが、その理由は、前記より加工での加工硬化によってさらにその弾性を高めたものとすることによって、座屈に耐え得る特性にすることを意図しており、その算出は、図3に示すような応力歪線図より、その傾きとして求めることができる。
【0021】
すなわち、図3の線図によれば、試験開始当初は応力と歪が直線的に変化する弾性域を示し、次にその変化状態が異った塑性域を経て、やがて破断に至ることとなる。その場合、前記弾性域内ではこれを除荷してもほぼ完全に元の状態に戻ることができるが、それを過ぎた塑性域では永久歪が生じて、荷重除荷しても残留歪が生じたものとなる。一般的に、このような境界点(O)の歪量は1〜2%程度の所に生じるものと言われており、降伏点や耐力等の算定ポイントとして示される。
【0022】
また歯間ブラシ製品は、前記ワイヤー同士を強くより合わせて構成するものであって、より加工では実質的に塑性域内での加工となり、したがって、ワイヤーはより加工によって加工硬化を起こして弾性を高めるが、伸びが大きいことからスプリングバックは少ないものである。したがって、これをブラシ製品として使用する場合には弾性に優れた高強度のものとなり、こうした面より、より好ましくは該ワイヤーの0.2%耐力(σ0.2)を比較的低く抑えながらも塑性域内での応力上昇率を高めたものとするのがよく、このことから、前記両関係を満足させることができる。
【0023】
すなわち、図3の応力歪線図によれば、前記引張強さ(σ)に対する耐力(σ0.2)の比率(耐力比(σ/σ0.2×100))を35〜55%と低く抑えながらも、塑性域内での応力上昇率が大きくなっていることが伺えるる。なお本形態のワイヤーでは、この応力上昇率が、前記50〜300N/mm2範囲内のものとしている。
【0024】
また前記したように、本発明では破断伸びを40〜60%、引張強さ120,000MPa以上としているが、伸びが40%未満のものでは、歯間ブラシとしてより強く捻り加工する場合にスプリングバックが大きくなって、ブラシ毛の挟持が困難であり、一方、60%を越える程大きくしても、より加工での加工歩留りへの効果が期待できず、また熱処理条件や成分などを調整してもこれを越える程高い特性にすることができず、限界がある。より好ましくは45〜50%とし、また引張強さについても、捻り合わせ線の状態で大きな弾性を持たせ、歯間ブラシとして操作性を向上させるものとする必要から、より好ましくは120,000〜150,000MPaとするのがよい。また、前記弾性域内でのヤング率についても、例えば160,000〜190,000MPaとするのがよく、このヤング率は、前記引張試験の弾性域内での線の傾きより求めることができる。
【0025】
また、本発明では前記伸び特性とともに、前記引張試験において予歪5%を負荷した後に除荷した時の形状回復率が8〜25%(好ましくは8〜15%範囲)となるように調整したものとすることも好ましい。
【0026】
この形状回復率は、前記図3の応力歪線図において、予歪量5%(τ0)の負荷を加え、この歪量に達した時にこれを除荷して、その時の回復量(τ1)との比率(A)={τ1/τ0×100}%で以って示されるものであり、回復率が大きいもの程、曲がりにくいものであること、すなわち高弾性であることを意味している。
【0027】
次に、本発明において用いるステンレス鋼線の各組成を前記範囲にする理由について説明する。
【0028】
C≦0.08〜0.15%
Cは、侵入型元素であって、ステンレス鋼線として強度を高めるのに有効な元素であるが、一方、Crと結合しやすく炭化物を生成させて、耐食性を低下させることとなる。この為、高強度のワイヤーとする為に少なくとも0.08%以上の添加とするが、前記炭化物の発生を抑える必要から、0.15%以下とした。より好ましくは、0.09〜0.12%とする。
【0029】
Si≦1.0%
Siは鋼溶製時に脱酸剤として用いられているが、多量に含有すると伸線加工などでの加工性が阻害されることから、その上限を1.0%とした。
【0030】
Mn:2.0%以下
Mnは、Niとともにオーステナイトを生成させ、また線材の靭性を高める為のNをより多く固溶させることで有効であるが、一方、熱間加工性への影響もあることから2.0%以下、より好ましくは1.0%以下とする。
【0031】
Ni:4.5〜7.0%
Niはオーステナイトの生成元素としてその安定化の為に有効であり、またその添加によって耐食性や伸線加工性の向上を図ることができるが、一方ではNiアレルギーの問題や、前記したC,Nを固溶させることの必要性からより低くすることが望まれ、こうしたことから4.5%以上7.0%以下、より好ましくは5〜6%とする。
【0032】
Cr:15.5〜17.5%
Crもまたステンレス鋼におけるN固溶量の増加、並びに耐食性や強度向上などにおいて欠くことのできない元素であるが、一方ではフェライト生成元素ともなり得るものである。この為、口腔内での使用に耐える耐食性をもたせる為には少なくとも15.5%以上の含有が有効であるが、17.5%を越える程多くしたものでは、シグマ相を発生させて脆化が生じ易いものとなり、より好ましくは16.0〜17.0%とする。
【0033】
N:0.05〜0.30%
Nは前記したように侵入型の元素であって、結晶粒を微細にして高強度特性をもたらし、またオーステナイト相を安定にして耐食性を高めることから有効であり、少なくとも0.05%の添加が必要である。しかし、0.3%を越える程多くを含有させたものでは、前記Ni量に抑制しただけでは通常の製造プロセスにおける窒化物を完全に固溶させることができず、こうした点より、0.05〜0.30%、好ましくは0.15〜0.2%とする。
【0034】
また本発明では、その他元素として例えばMo:0.05〜0.5%及びCu:0.3〜1.0%を添加し、耐食性やステンレス鋼基地を強化して剛性を大きくすることも有効である。しかし、これら元素を多量に添加すると高温での粒界脆化を促進し、熱間加工性が阻害され、高温割れを起こし易くなり、また、H量についても、水素脆性を抑えるよう4PPM以下にしておくことも好ましい。その為の方法として、例えばロッドあるいは素線状態での熱処理として、水素を含まないAr雰囲気中などで加熱処理し、脱水素するのが容易である。この場合の処理温度としては、固溶化熱処理程度の温度で行なわれる。
【0035】
本発明の前記ステンレス鋼線は、このような組成を含むとともに、前記C,N,Niを各々所定範囲に調整し、残部不可避不純物とFeによって構成される。
【0036】
一方、こうして構成してなる線材は、前記従来技術の中で説明し、また図1の歯間ブラシ製品1として示すように、2つに折り曲げた直線状の前記線材2間に、多数のブラシ毛3を挟み込んでより合わせた棒状ブラシとし、さらにその他端側には、手で扱い易い形態・太さに成形された樹脂製の把持部4に一体化されている。
【0037】
該ブラシ製品は、歯間への挿通を容易にする必要からブラシ毛3は、それに適する長さに切断されたものが用いられ、ブラシ全体に亙って同一長さのもの、あるいは、ブラシの先端側に向かってその長さを短くしたテーパー型や太鼓型などとして用い得る。
【0038】
また、ブラシ毛と前記線材間でのより合わせて挟持する場合、両者の接触部を接着剤などで接合し、ブラシ毛の抜け落ちを防止するよう強固に固着させたものでもよい。
【0039】
以下、実施例により本発明をさらに詳述する。
【0040】
【実施例】
表1に示す組成のステンレス鋼線をダイヤモンドダイスによる湿式冷間伸線加工によって0.25mmに細径化するとともに、1050℃×1〜10secの光輝熱処理を施してブラシ用ワイヤーを得た。得られた線の表面粗さ(Ra)はいづれも0.7μm以下の光輝な平滑表面のものであり、表面欠陥等は何ら見られなかった。
【0041】
【表1】
【0042】
この中で、試料1〜5は本発明に係る実施例品であり、他方、試料6〜10は比較の為に用いた従来の比較例品である。試料6はCoを多量に含む前記公報に基づくNAS604PH材であり、試料7はMnとNiを高め、さらNを添加したNAS106N材、また試料8は、Niを大きく削減してMnで置換し、かつ0.7%と多量のNを添加した18Mn,N材、試料9は従来から一般的に用いられていたSUS304材、試料10はMoを含有することで耐食性を高めたSUS316Lで構成したものである。
【0043】
こうして細径化したワイヤーの伸線加工性と、その機械的特性を表2にまとめて示す。なお、引張り試験は前記説明した引張り試験方法により、標点距離100mm、試験速度30mm/分で行なったものであり、また耐食性は塩水噴霧試験と、厚生省昭和60年薬審294号によるNi溶出試験、変色試験で評価し、各々◎は優、○は良、△は適、×は不適であることを示す。
【0044】
【表2】
【0045】
この中で、実施例とした試料1〜5は伸線加工性において問題なく、また伸び43〜50%と引張強さ1350MPaという高い特性を備えるものであった。これに対し、試料6では伸線加工性に劣り40%加工毎に熱処理が必要となり、試料7の線材では伸線加工では問題ないものの、引張強さと伸びがやや低く、また試料8では、伸線加工性に劣り歩留りが低いという欠点があった。一方、一般的ステンレス鋼である試料9,10の線材では、伸線加工性には問題なく歩留りも高いものであったが、機械的特性に劣り歯間ブラシとして不十分であることが確認された。
【0046】
また、本発明の線材によるワイヤーでは、形状回復率が10〜15%とSUS304などに比して大きいものとなっており、また、耐食性においてもNi溶出量及び変色試験とも満足でき、また、塩水噴霧試験での発銹もほとんど認められなかった。
【0047】
次に、ブラシ製品についての試験結果について説明する。試験は、より加工する場合のスプリングバックの発生程度と、耐座屈性について行なったものであり、スプリングバックは2本の線材同士をより加工した後にこれを開放した時のも戻り角度の大小で求め、一方、耐座屈性についてはより合わせしたより線をスパン200mmにセットした線の一端を1.8rpmで捻り、破断するまでの捻り回数を求めたものであり、またスプリングバッグについては、2本の線材を撚り合わせた後、開放してその時の戻り角度で求め、さらに座屈強度については、撚られた長さ2cmの線をU字状に曲げていき、その荷重の大小で評価した。
【0048】
その結果、本発明の線材によるブラシ製品は、いづれの試験においても満足できるものであり、長寿命で操作性に優れることが確認された。また本発明では、線材の成分としてC+Nを所定範囲にして、C,Nを各々調整添加するとともに、Niを低減することで強化と結晶粒の微細化、並びにNiアレルギーへの対応を図るものとしている。なお、結晶粒の大きさについては、本試験ではJISG0551に規定されている「オーステナイト結晶粒度試験方法」により示しており、いづれも10番以上(断面積1mm2あたり8000ケ以上の粒度)の微細オーステナイト組織を有するものであった。
これによって、靭性を高めることとなり好ましいものである。
【0049】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明による歯間ブラシ用ワイヤー並びにこのワイヤーでなるブラシ製品は、ステンレス鋼の中でもNi,及びC,Nを調整することによって、伸線加工性に優れるとともに、大きな伸び特性と強度を具える特性とし、歯間ブラシ製品として、挿通性と操作性を高めて、座屈や耐久性の問題を解決するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】歯間ブラシ製品の一形態を示す平面図。
【図2】オーステナイト系ステンレス鋼におけるNi量とC,Nの固溶状態を示す関係図。
【図3】ブラシ用ワイヤーの引張試験結果を示す線図。
【符号の説明】
1:歯間ブラシ製品
2:ステンレス鋼線材
3:ブラシ毛
4:把持部
Claims (3)
- 質量で、C:0.08〜0.15%,Si≦1.0%,Mn≦2.0%,Ni:4.5〜7.0%,Cr:15.5〜17.5%,Mo:0.05〜0.5%,N:0.05〜0.30%を含有するとともに2C+Nを0.3〜0.6%に調整し、残部Fe及び不可避不純物からなるオーステナイト系ステンレス鋼線でなり、かつ該線の引張り試験における破断伸び40〜60%、引張強さ1200MPa以上の特性を備えることを特徴とする歯間ブラシ用ワイヤー。
- 前記ステンレス鋼線は、前記引張試験における0.2%耐力に位置するポイントAと最大応力を示すポイントBとを結ぶ直線Xの傾きが50〜300N/mm2の範囲内である請求項1に記載の歯間ブラシ用ワイヤー。
- 前記請求項1または2に記載の前記ブラシ用ワイヤー同士をより合わせて、該ワイヤー間にブラシ毛を挟持固定し構成したことを特徴とする歯間ブラシ製品。
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