JP4276771B2 - ヒトにおけるグルクロン酸抱合に関与する酵素の測定方法、そのためのプローブ及びキット - Google Patents
ヒトにおけるグルクロン酸抱合に関与する酵素の測定方法、そのためのプローブ及びキット Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヒトにおけるグルクロン酸抱合に関与する酵素の測定方法及びそのためのプローブ及びキットに関する。
【0002】
【従来の技術】
薬物代謝第II相反応の一種であるグルクロン酸抱合は、グルクロン酸転移酵素(UDP-glucuronosyltransferase,UGT)によって触媒されることはよく知られている。
【0003】
ところで、新薬を開発する上で、該新薬を投与した際のグルクロン酸抱合に関与する酵素の動き(発現量の増減)を把握することは重要である。何故なら、グルクロン酸抱合に関与する酵素の変動が判らないと、該新薬と併用される併用薬剤の効力や副作用の増減或いは併用薬剤や他の摂取物による新薬の効力や副作用の増減が予測できず、該新薬の安全性を確認することができないからである。
【0004】
そこで、上記新薬開発等の分野においては、かかるヒトにおけるグルクロン酸抱合に関与する酵素に関する情報、殊に之等各分子種を区別して測定できる測定技術の開発が、要望されている。かかる技術が開発できれば、例えば、新薬の他剤との相互作用や特殊病態時における影響等が容易に把握でき、該新薬の副作用に関する有用な情報を得ることができ、かくして新薬の安全性を確保することができる。
【0005】
一方、ポリメラーゼチェインリアクション(PCR)は、核酸の増幅法として広く知られており、例えばRT−PCR(Reverse Transcription-PCR)、コンペティティブRT−PCR等が微量のmRNAの検出、定量に威力を発揮している。
【0006】
近年、PCRを利用したリアルタイム定量検出法が確立された(Taq Man PCR (Genome Res., 6(10), 986 (1996)), ABI PRISMTM Sequence Detection System (Applied Biosystems社))。これは、特定の蛍光標識プローブ(TaqMan prove)を用いて核酸を測定する方法である。より詳しくは、例えば5’末端にリポーター色素及び3’末端にクエンチャー色素を付加して蛍光標識したプローブをターゲットDNAにアニールさせた状態で、通常のPCR反応を行なわせると、伸長反応の進行に伴って、DNAポリメラーゼの有する5′−3′エキソヌクレアーゼ活性により、上記プローブが5’末端から加水分解される。その結果、5’末端のリポーター色素が3’末端のクエンチャー色素から離れ、これにより、当初一定の空間的距離を保っていたことによるFRET(Fluoresence Resonance Energy Transfer, 両蛍光色素の共鳴によるリポーター色素のエネルギー順位の低下に基づく蛍光強度の低下現象)効果がなくなり、クエンチャー色素により制御されていたリポーター色素の蛍光強度が増加し、かくして、該蛍光強度の増加を測定することによって、ターゲット核酸をリアルタイムに選択的に定量検出できるのである。この方法によれば、PCR反応後に増幅物を例えばアガロースゲル電気泳動して、泳動パターンを解析する等の複雑な工程が不要となり、短時間で且つ同時に多種のサンプルを定量できる利点がある。
【0007】
しかして、一般に、臨床検査センター等で臨床検査を行う場合には、非常に多数の検体について限られた時間内に検査をする必要があり、検査を効率良く行い得る手法の開発が要望されており、上記リアルタイム検出法は、この要望に合致するものとして期待できる。
【0008】
本発明者らは、上記PCRによるリアルタイム検出法に着目し、これがヒトグルクロン酸抱合に関与する酵素の検出に利用できれば、同じ装置を用いて同時に同一のPCR条件で上記各酵素を区別して測定、検出できるとの着想から、鋭意研究を重ねた。
【0009】
しかるに、現在知られている化学物質を代謝するヒトにおけるグルクロン酸抱合に関与する酵素は、前述したとおり約15種にも及び、それぞれのmRNAの配列は知られているものの、之等をターゲット遺伝子として、互いに重複する配列部分を有さず、しかも同一PCR条件で充分に増幅し得、更に、該ターゲット遺伝子の特定位置にハイブリダイズし得る各プライマー対としてのオリゴヌクレオチドの検索自体困難であると考えられた。また、かかるプライマー対に挟まれた特定領域に、同一PCR条件下に之等のプライマーよりも早くハイブリダイズし得、しかもヒトにおけるグルクロン酸抱合に関与する各酵素に対して特異的なプローブの構築もまた、同様に困難であると考えられた。特に、ヌクレオチド配列が既知の2つの核酸のハイブリダイズのし易さは、融点(Tm)の計算によりある程度推定することはできるものの、この推定によって選択したプライマーとプローブとの組合せが、必ずしもDNA測定において好結果をもたらすわけではないことが知られていることより、現在知られている全てのヒトにおけるグルクロン酸抱合に関与する酵素について、之等を同時に区別して測定可能な、上記PCRによるリアルタイム検出用の各プライマー対とプローブとの組合せの選択には、熟練者の試行錯誤による多大な実験等が必要となると予想された。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ヒトにおけるグルクロン酸抱合に関与する酵素のPCRによる測定法、特にリアルタイム検出法の確立と、そのためのプローブ及びプライマー対を提供することにある。
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべくヒトにおけるグルクロン酸抱合に関与する酵素について多大な実験、研究を繰返し行った結果、12種類の各酵素に対する目的のプライマー対及びプローブの組合せを提供することに成功し、ここに下記要旨の本発明を完成するに至った。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、ヒトにおけるグルクロン酸抱合に関与する酵素の測定に用いられるプローブであって、下記(1)〜(12)の各領域のそれぞれにハイブリダイズするオリゴヌクレオチドから選ばれることを特徴とするプローブ;特にリポーター色素とクエンチャー色素とが結合している該プローブ;塩基配列の長さが20〜40である該プローブ;配列番号1〜配列番号12に示される配列のいずれかを含む該プローブ並びに配列番号1〜配列番号12に示される配列のいずれかである該プローブが提供される。
(1)UGT1遺伝子の560〜587の領域
(2)UGT1A7遺伝子の290〜317の領域
(3)UGT1A9遺伝子の231〜260の領域
(4)UGT1A10遺伝子の303〜341の領域
(5)UGT2A1遺伝子の182〜210の領域
(6)UGT2B7遺伝子の76〜47の領域
(7)UGT2B10遺伝子の83〜57の領域
(8)UGT2B11遺伝子の201〜234の領域
(9)UGT2B15遺伝子の63〜89の領域
(10)UGT2B17遺伝子の72〜97の領域
(11)DDOST遺伝子の318〜343の領域
(12)UGT8遺伝子の209〜237の領域
【0013】
また、本発明によれば、ヒトにおけるグルクロン酸抱合に関与する酵素をコードする遺伝子の下記各領域にそれぞれハイブリダイズするオリゴヌクレオチドからなるフォワードプライマーとリバースプライマーとのプライマー対、及び上記両プライマーに挟まれた下記領域にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドからなるプローブの組合せから選ばれる、下記(1)〜(12)の、ヒトにおけるグルクロン酸抱合に関与する酵素の測定キット;特にプローブが更にリポーター色素とクエンチャー色素とを結合させたものである上記測定キットが提供される。
(1)プライマー対;UGT1遺伝子の531-553領域及び639-619領域、プローブ;560-587領域
(2)プライマー対;UGT1A7遺伝子の265-286領域及び518-498領域、プローブ;290-317領域
(3)プライマー対;UGT1A9遺伝子の174-192領域及び352-327領域、プローブ;231-260領域
(4)プライマー対;UGT1A10遺伝子の216-242領域及び455-430領域、プローブ;303-341領域
(5)プライマー対;UGT2A1遺伝子の159-180領域及び315-293領域、プローブ;182-210領域
(6)プライマー対;UGT2B7遺伝子の14-42領域及び98-80領域、プローブ;76-47領域
(7)プライマー対;UGT2B10遺伝子の10-36領域及び106-87領域、プローブ;83-57領域
(8)プライマー対;UGT2B11遺伝子の17-43領域及び302-279領域、プローブ;201-234領域
(9)プライマー対;UGT2B15遺伝子の32-60領域及び299-271領域、プローブ;63-89領域
(10)プライマー対;UGT2B17遺伝子の40-66領域及び201-177領域、プローブ;72-97領域
(11)プライマー対;DDOST遺伝子の294-314領域及び447-427領域、プローブ;318-343領域
(12)プライマー対;UGT8遺伝子の177-197領域及び358-338領域、プローブ;209-237領域
【0014】
上記キットを構成するプライマー対とプローブとの組合せ(セット)の好ましいものとしては、下記(1)〜(12)から選ばれる各配列番号で示される配列を含むもの、より好ましくは各配列番号で示される配列のものを挙げることができる。(1)プライマー対;配列番号13及び14、プローブ;配列番号1
(2)プライマー対;配列番号15及び16、プローブ;配列番号2
(3)プライマー対;配列番号17及び18、プローブ;配列番号3
(4)プライマー対;配列番号19及び20、プローブ;配列番号4
(5)プライマー対;配列番号21及び22、プローブ;配列番号5
(6)プライマー対;配列番号23及び24、プローブ;配列番号6
(7)プライマー対;配列番号25及び26、プローブ;配列番号7
(8)プライマー対;配列番号27及び28、プローブ;配列番号8
(9)プライマー対;配列番号29及び30、プローブ;配列番号9
(10)プライマー対;配列番号31及び32、プローブ;配列番号10
(11)プライマー対;配列番号33及び34、プローブ;配列番号11
(12)プライマー対;配列番号35及び36、プローブ;配列番号12
【0015】
また、上記各セットはそれぞれ以下のグルクロン酸抱合に関与する酵素の測定用であることができる。
(1)のセット;UGT1測定用
(2)のセット;UGT1A7測定用
(3)のセット;UGT1A9測定用
(4)のセット;UGT1A10測定用
(5)のセット;UGT2A1測定用
(6)のセット;UGT2B7測定用
(7)のセット;UGT2B10測定用
(8)のセット;UGT2B11測定用
(9)のセット;UGT2B15測定用
(10)のセット;UGT2B17測定用
(11)のセット;DDOST測定用
(12)のセット;UGT8測定用
本発明によれば、更にヒトにおけるグルクロン酸抱合に関与する酵素の遺伝子を含む検体について、上記いずれかに記載の測定キットを用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR、RT−PCRを含む)を行い、用いたプローブの加水分解の有無を測定することを特徴とするヒトにおけるグルクロン酸抱合に関与する酵素の測定方法、特に上記加水分解の有無が、励起光照射による蛍光の発色の有無によりなされる上記測定方法が提供される。
【0016】
より詳しくは、フォーワードプライマー及びリバースプライマーのプライマー対並びにレポーター色素とクエンチャー色素を有し上記両プライマーに挟まれた領域内で鋳型核酸とハイブリダイズするプローブを用いて、5′−3′エキソヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼによりポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行うことによって、ヒトにおけるグルクロン酸抱合に関与する酵素の遺伝子を測定するリアルタイム検出方法が提供される。
【0017】
本発明に係わるヒトにおける第II相反応に関与する酵素のリアルタイム検出方法は、同一PCR乃至RT−PCR反応条件下にリアルタイムで簡便且つ迅速に、各種酵素を分別定量できるものであり、その確立は、臨床分野、医薬品分野において非常に有益である。例えば、本発明方法によって、医薬品開発における動態試験において重要な位置を占める薬物代謝のグルクロン酸抱合に関与する酵素のヒト試料中でのmRNAの発現を容易に定量することができる。これによって、医薬品等の化学物質に曝露された場合のグルクロン酸抱合に関与する各酵素の変化を知ることができる。
【0018】
また、手術で摘出した組織やバイオプシーにより摘出した組織中のグルクロン酸抱合に関与する酵素のmRNA発現を見る上で、迅速且つ多種の試料を処理でき、また、僅かな組織片から抽出した全RNAで検出可能である。
【0019】
更に、特定のグルクロン酸抱合に関与する酵素においては、肝臓、腎臓等での酵素誘導などによる発現量の変化が血液中(血液に含まれる核を有する細胞)の値の変化と相関する可能性が考えられるが、この血液中の発現量は小さく、測定には多くの血液を必要とする。しかし、本発明者の設計したプライマーとプローブを用いれば少ないサンプルで測定が可能である機器での測定が可能であり、血液中の発現量を測定することに有用である。また、特定のグルクロン酸抱合に関与する酵素においては、肝臓、腎臓等での酵素誘導などによる発現量の変化が唾液中など分泌液中に含まれる核を有する細胞の値の変化と相関する可能性が考えられるが、この唾液中など分泌液中に含まれる核を有する細胞中の発現量は小さく、測定には多くの唾液などの分泌液を必要とする。しかし、本発明者の設計したプライマーとプローブを用いれば少ないサンプルで測定が可能である機器での測定が可能であり、唾液中などの発現量を測定することに有用である。
【0020】
以下、本発明方法に利用するプローブ及びプライマー対につき詳述すれば、之等各プローブ及びプライマーは、上述した通り、グルクロン酸抱合に関与する酵素の遺伝子の特定領域にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドから選択される。
【0021】
ここで「ハイブリダイズする」とは、後述するPCR(RT−PCR)の条件でハイブリダイズすることをいう。
【0022】
本発明に係わるプローブ及びプライマーに共通する要件としては、増幅生成物が50〜400塩基対の長さであること、プライマーとプローブができる限り近接していること、配列に含まれるG(グアニン)及びC(シトシン)の割合がなるべく50%前後であること、G(グアニン)が4つ以上連続していないことを挙げることができる。また、その他の本発明プローブにみられる要件としてはTm値が70℃前後であることを挙げることができ、同様にプライマーにはTm値が60℃前後であることを挙げることができる。
【0023】
グルクロン酸抱合に関与する各酵素のmRNA配列は公知であり、それぞれジーンバンク(GenBank)に以下の登録番号で登録されている。
(1)UGT1遺伝子;NM_001072
(2)UGT1A7遺伝子;U89507
(3)UGT1A9遺伝子;AF056188
(4)UGT1A10遺伝子;U89508
(5)UGT2A1遺伝子;NM_006798
(6)UGT2B7遺伝子;NM_001074
(7)UGT2B10遺伝子;NM_001075
(8)UGT2B11遺伝子;NM_001073
(9)UGT2B15遺伝子;NM_001076
(10)UGT2B17遺伝子;NM_001077
(11)DDOST遺伝子;NM_005216
(12)UGT8遺伝子;NM_003360
【0024】
本明細書において、各酵素の特定領域の表示は、いずれも上記各登録番号で登録された遺伝子の配列に従うものである。
【0025】
之等各プライマー及びプローブ用のオリゴヌクレオチドのヌクレオチド数は、少なくとも15個、通常15〜50個、好ましくは20〜40個の範囲にあるのがよい。之等プライマー及びプローブのヌクレオチド数が上記よりあまりに多くなりすぎると、1本鎖DNAにハイブリダイズしにくくなり、逆にあまりに小さすぎると、ハイブリダイゼーションの特異性が低下する。
【0026】
プライマー及びプローブの特定のヌクレオチド配列の好ましい具体的配列の例は、前述したとおり、各分子種に応じてそれぞれ、配列番号1〜28(プローブの場合)並びに配列番号29〜84(プライマーの場合)に示されるとおりである。
【0027】
尚、例えば20ヌクレオチドからなるプライマー又はプローブは、鋳型鎖との間に少数のミスマッチが存在してもハイブリダイズし、PCRのプライマーとして又は検出用プローブとして機能し得ることが知られている。従って本発明プライマー及びプローブもまた、上記の特定のヌクレオチド配列を有するものに限定されず、これをその一部として含むものや、この配列中の例えば2個以下のヌクレオチドの置換、欠失及び/又は付加による修飾のなされた配列を包含することができる。
【0028】
上記本発明プローブ及びプライマーとしての各オリゴヌクレオチドは、常法に従い、自動合成機、例えばDNAシンセサイザー(パーキンエルマー社)等を用いて容易に合成することができ、得られるオリゴヌクレオチドは更に必要に応じて、市販の精製用カートリッジ等を用いて精製することもできる。
【0029】
本発明のリアルタイム検出用プローブは、その一端、例えば5′−末端にレポーター色素を結合しており、そして他端、例えば3′−末端にクエンチャー色素を結合している。レポーター色素は、例えば励起光の照射によって蛍光を発する物質であり、クエンチャーは、該レポーター色素に距離的に接近して存在する場合レポーター色素に作用してその蛍光の発生を消去する作用を有するものであることができる。該レポーター色素の例としては、例えば6−カルボキシ−フルオレッセイン(FAM)、テトラクロロ−6−カルボキシフルオレッセイン(TET)、2,7−ジメトキシ−4,5−ジクロロ−6−カルボキシフルオレッセイン(JOE)、ヘキソクロロ−6−カルボキシフルオレッセイン(HEX)等が挙げられる。クエンチャー色素の例としては、例えば6−カルボキシ−テトラメチル−ローダミン(TAMRA)等が挙げられる。
【0030】
本発明プローブは、前記特定配列のプローブ用オリゴヌクレオチドにレポーター色素及びクエンチャー色素を結合させることにより調製できる。例えばプローブの5′側は、通常数個のメチレン鎖をリンカーとし、末端のリン酸基にFAM分子をリン酸エステルの形で結合させることができる。また、3′側には、下記に示す構造単位を介してアミド結合によりTAMRA分子を結合させ得る。
【0031】
【化1】
【0032】
以下、本発明プライマー対及びプローブを利用したPCRによるリアルタイム検出法につき詳述する。
【0033】
本発明方法は、前述した本発明プライマー対及びプローブを利用することを必須として、他は公知のPCR法(例えば、Science, 230, 1350 (1985)参照)、RT−PCR(Genome Res., 6(10), 986 (1996)参照)等、特にリアルタイム検出法(例えばTaqMan PCR, ABI PRISMTM 7700 SEQUENCE DETECTION SYSTEM, Applied Biosystems, Ver1, June 1996参照)に従い実施することができる。
【0034】
該方法は、特に本発明が対象とするグルクロン酸抱合に関与する各酵素の発現量の測定方法として、mRNAを測定する場合に有用である。この場合、特定酵素を発現している生体組織を採取し、常法に従って全RNAを抽出し、次にそれに対して相補性のcDNAを常法に従って合成した後、本発明プライマー対とプローブとを用いて、PCRを行えばよい。また、常法に従って全RNAを抽出後、本発明プライマーとプローブとを用いて、直接RT−PCRを行なうこともできる。
【0035】
PCR反応、RT−PCR反応は、基本的には公知の方法に従うことができる。それらの反応条件も公知の方法に準じて適宜決定することができ、特に異なるものではない。具体的には、後記実施例に示す条件を好ましく採用できる。
【0036】
検出も、基本的には常法に従って、例えば、アルゴンレーザ光をPCR反応液に照射し、放射される蛍光をCCDカメラを用いて検出することにより行なうことができる。
【0037】
かくして、本発明方法の実施によって、所期のグルクロン酸抱合に関与する各酵素を容易且つ迅速に、しかも各酵素毎に区別して測定、検出することができる。
【0038】
本発明は更に、上記方法の実施のためのキットをも提供する。このキットは上記プライマー対及びプローブを含んでなる。本発明キットには、対照として使用することのできる既知の核酸や、該核酸を測定するためのプライマー対及びプローブを更に含んでいてもよい。
【0039】
本発明方法によれば、グルクロン酸抱合に関与する各酵素の遺伝子をその酵素毎に分別して測定、検出できるため、これによって、グルクロン酸抱合に関与する各酵素の定量が迅速に、精度よく行なうことができる。かくして、新薬の他剤との相互作用や配合禁忌等に関連する基礎データーを効率よく得ることができる。
【0040】
【実施例】
以下、本発明を更に詳しく説明するため試験例を挙げる。
【0041】
【試験例】
リアルタイム検出法による検量線の作成
(1)試験方法
本試験で採用したリアルタイムワンステップRT−PCR法は、96ウエルを用いて、最大96の異なった反応を同時に実施して、一度に最大96の検体を測定できるものである。また、1チューブ内でRT反応とPCR反応とを行なうことができる。
【0042】
本定量の原理は、隣接した2種類の蛍光色素を用いて、一方の色素(リポーター色素)の蛍光波長と他方の色素(クエンチャー色素)の励起光波長との間で、波長領域が重なる場合に生じるFRETを利用したものである。FRETを生じる2種の蛍光色素を両末端に結合させたプローブ(TaqMan probe)がPCRで増幅した特定のUDP−グリコシル転移酵素由来のcDNAにハイブリダイゼーションし、この状態でPCRの伸長反応が始まり、Taq DNAポリメラーゼの有する5’−3’エンドヌクレアーゼ活性によってTaqManプローブが加水分解され、リポーター色素が脱離し、クエンチャー色素との間の物理的距離が生じ、FRETによって抑制されていたリポーター色素の蛍光強度が増加し、この蛍光強度の増加はPCRの増幅産物の増加量に比例するため、これをPCR反応毎に測定することによって、所望の定量が可能となる。
【0043】
本試験では、プローブの5’末端側にはリポーター色素としてFAMを、3’末端側にはクエンチャー色素としてTAMRAを使用した。之等各色素の結合及びこれによるTaqManプローブの作成は、文献記載の方法(Genome Res., 6(10), 986 (1996))に従って行なった。
【0044】
また、各プライマー及びプローブとしてのオリゴヌクレオチドは、自動シンセサイザーとしてABI社製のDNA/RNA合成機を利用して、基質(dNTP)及び規定の試薬を用いて合成した。
【0045】
検体RNAとしては、成人の脳、成人の腎臓、成人の肺、成人の小腸、胎児の肝臓、成人の肝臓プールより精製された全RNAを用いた。尚、之等の全RNAはいずれもクローンテック社(Clontech Laboratories, Inc.)より購入した。
【0046】
成人の脳、成人の腎臓、成人の肺、成人の小腸、胎児の肝臓、成人の肝臓プールより精製された全RNAは、RNaseフリーの水で希釈し、20μg/mLとした。その後、これら6種類を等量ずつ混合し、検量線作成用とした。以後は、50μg/mLのイーストtRNA(Yeast tRNA, GIBCO社製)を用いて、5倍公比で希釈した。測定には5μLを使用した。
【0047】
RT−PCR反応は、300nMフォーワードプライマー、900nMリバースプライマー及び200nM TaqManプローブを含むTaqMan One-Step RT-PCR Master Mix Reagents Kit (PE Applied Biosystems)を用いて、50μL/チューブの系で、ABI PRISMTM7700 Sequence Detection System(PE Applied Biosystems)にて行なった。
温度条件は、48℃で30分間、95℃で10分間で保温した後、95℃で15秒間、60℃で1分間のサイクルを50回行い、各サイクルごとに蛍光強度を測定した。
【0048】
(2)試験結果
下記表1に示す各酵素に対して各配列番号に示される配列のプライマー対及びプローブを用いて行なった上記試験の結果(検量線)を表2に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
上記表2より、100000pg全RNA/50μL反応液量から5倍公比で希釈された検量線を作成したところ、UGT1については、32pg全RNA/50μL反応液量まで定量性を有しており、他の酵素についても1.28pgから4000pg全RNAを定量下限とした検量線の相関係数(r)は0.99以上であった。
【0052】
【配列表】
Claims (7)
- 下記(1)〜(12)の、ヒトにおけるグルクロン酸抱合に関与する酵素をコードする遺伝子の下記各領域にそれぞれハイブリダイズするオリゴヌクレオチドからなるフォワードプライマーとリバースプライマーとのプライマー対、及び上記両プライマーに挟まれた下記領域にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドからなるプローブの組合せから選ばれる、リアルタイムRT−PCR法に使用するための、ヒトにおけるグルクロン酸抱合に関与する酵素の測定キット。
(1)プライマー対;UGT1遺伝子の531-553領域に特異的にハイブリダイズする塩基数 23 のオリゴヌクレオチド及び639-619領域に特異的にハイブリダイズする塩基数 21 のオリゴヌクレオチド、プローブ;560-587領域に特異的にハイブリダイズする塩基数 28 のオリゴヌクレオチド
(2)プライマー対;UGT1A7遺伝子の265-286領域に特異的にハイブリダイズする塩基数 22 のオリゴヌクレオチド及び518-498領域に特異的にハイブリダイズする塩基数 21 のオリゴヌクレオチド、プローブ;290-317領域に特異的にハイブリダイズする塩基数 28 のオリゴヌクレオチド
(3)プライマー対;UGT1A9遺伝子の174-192領域に特異的にハイブリダイズする塩基数 19 のオリゴヌクレオチド及び352-327領域に特異的にハイブリダイズする塩基数 26 のオリゴヌクレオチド、プローブ;231-260領域に特異的にハイブリダイズする塩基数 30 のオリゴヌクレオチド
(4)プライマー対;UGT1A10遺伝子の216-242領域に特異的にハイブリダイズする塩基数 27 のオリゴヌクレオチド及び455-430領域に特異的にハイブリダイズする塩基数 26 のオリゴヌクレオチド、プローブ;303-341領域に特異的にハイブリダイズする塩基数 39 のオリゴヌクレオチド
(5)プライマー対;UGT2A1遺伝子の159-180領域に特異的にハイブリダイズする塩基数 22 のオリゴヌクレオチド及び315-293領域に特異的にハイブリダイズする塩基数 23 のオリゴヌクレオチド、プローブ;182-210領域に特異的にハイブリダイズする塩基数 29 のオリゴヌクレオチド
(6)プライマー対;UGT2B7遺伝子の14-42領域に特異的にハイブリダイズする塩基数 29 のオリゴヌクレオチド及び98-80領域に特異的にハイブリダイズする塩基数 19 のオリゴヌクレオチド、プローブ;76-47領域に特異的にハイブリダイズする塩基数 30 のオリゴヌクレオチド
(7)プライマー対;UGT2B10遺伝子の10-36領域に特異的にハイブリダイズする塩基数 27 のオリゴヌクレオチド及び106-87領域に特異的にハイブリダイズする塩基数 20 のオリゴヌクレオチド、プローブ;83-57領域に特異的にハイブリダイズする塩基数 27 のオリゴヌクレオチド
(8)プライマー対;UGT2B11遺伝子の17-43領域に特異的にハイブリダイズする塩基数 27 のオリゴヌクレオチド及び302-279領域に特異的にハイブリダイズする塩基数 24 のオリゴヌクレオチド、プローブ;201-234領域に特異的にハイブリダイズする塩基数 34 のオリゴヌクレオチド
(9)プライマー対;UGT2B15遺伝子の32-60領域に特異的にハイブリダイズする塩基数 29 のオリゴヌクレオチド及び299-271領域に特異的にハイブリダイズする塩基数 29 のオリゴヌクレオチド、プローブ;63-89領域に特異的にハイブリダイズする塩基数 27 のオリゴヌクレオチド
(10)プライマー対;UGT2B17遺伝子の40-66領域に特異的にハイブリダイズする塩基数 27 のオリゴヌクレオチド及び201-177領域に特異的にハイブリダイズする塩基数 25 のオリゴヌクレオチド、プローブ;72-97領域に特異的にハイブリダイズする塩基数 26 のオリゴヌクレオチド
(11)プライマー対;DDOST遺伝子の294-314領域に特異的にハイブリダイズする塩基数 21 のオリゴヌクレオチド及び447-427領域に特異的にハイブリダイズする塩基数 21 のオ リゴヌクレオチド、プローブ;318-343領域に特異的にハイブリダイズする塩基数 26 のオリゴヌクレオチド
(12)プライマー対;UGT8遺伝子の177-197領域に特異的にハイブリダイズする塩基数 21 のオリゴヌクレオチド及び358-338領域に特異的にハイブリダイズする塩基数 21 のオリゴヌクレオチド、プローブ;209-237領域に特異的にハイブリダイズする塩基数 29 のオリゴヌクレオチド
(但し、前記オリゴヌクレオチドは、48℃で30分間、95℃で10分間保温後、95℃で15秒間、60℃で1分間のサイクルでRT−PCR反応を行ったときに、前記ハイブリダイズする)。 - プローブが、更にリポーター色素とクエンチャー色素とを結合させたものである請求項1に記載の測定キット。
- 下記(1)〜(12)に示されるセットの、各配列番号で示される配列のオリゴヌクレオチドからなるプライマー対とプローブとの組合せから選ばれる、請求項1または2に記載の測定キット。
(1)プライマー対;配列番号13及び14、プローブ;配列番号1
(2)プライマー対;配列番号15及び16、プローブ;配列番号2
(3)プライマー対;配列番号17及び18、プローブ;配列番号3
(4)プライマー対;配列番号19及び20、プローブ;配列番号4
(5)プライマー対;配列番号21及び22、プローブ;配列番号5
(6)プライマー対;配列番号23及び24、プローブ;配列番号6
(7)プライマー対;配列番号25及び26、プローブ;配列番号7
(8)プライマー対;配列番号27及び28、プローブ;配列番号8
(9)プライマー対;配列番号29及び30、プローブ;配列番号9
(10)プライマー対;配列番号31及び32、プローブ;配列番号10
(11)プライマー対;配列番号33及び34、プローブ;配列番号11
(12)プライマー対;配列番号35及び36、プローブ;配列番号12 - 請求項3に記載の測定キットであって、(1)のセットがUGT1の測定用で、(2)のセットがUGT1A7の測定用で、(3)のセットがUGT1A9の測定用で、(4)のセットがUGT1A10の測定用で、(5)のセットがUGT2A1の測定用で、(6)のセットがUGT2B7の測定用で、(7)のセットがUGT2B10の測定用で、(8)のセットがUGT2B11の測定用で、(9)のセットがUGT2B15の測定用で、(10)のセットがUGT2B17の測定用で、(11)のセットがDDOSTの測定用で、(12)のセットがUGT8の測定用である測定キット。
- 請求項3に記載の(1)〜(12)に示されるセットの、各配列番号で示される配列を有するオリゴヌクレオチドからなるプライマー対とプローブとの組合せから選ばれる、請求項3または4に記載の測定キット。
- ヒトにおけるグルクロン酸抱合に関与する酵素を含む検体について、請求項1〜5のいずれかに記載の測定キットを用いてリアルタイムRT−PCR反応を行い、用いたプローブの加水分解の有無を測定することを特徴とするヒトにおけるグルクロン酸抱合に関与する酵素の測定方法。
- 加水分解の有無が、励起光照射による蛍光の発色の有無によりなされる請求項6に記載の測定方法。
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