JP4275832B2 - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は電動パワーステアリング装置に関する。
【０００２】
【従来の技術】
電動パワーステアリング装置は、ステアリング軸に接続されたピニオン軸をラック軸に噛合いさせるとともに、モータの出力軸に連結されたウォームギヤをウォームホイールに噛合いさせ、このウォームホイールをピニオン軸に接続し、モータのトルクをラック軸に伝えることにて操舵アシストする。
【０００３】
そして、従来技術では、特開昭61-33367号公報に記載の如く、ウォームギヤからラック軸に至るトルク伝達経路のギヤ類のバックラッシュによる歯面の衝突、振動を吸収するため、ウォームホイールを回転方向で緩衝部材を介してピニオン軸に接続している。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
然しながら、従来技術では、ウォームホイールはピニオン軸を介してギヤハウジングに支持されるようになっており、ギヤハウジングに直接支持されていない。他方、モータのトルク伝達時には、ウォームギヤがウォームホイールとの噛合部にトルクだけでなくスラスト荷重も及ぼす。スラスト荷重は、ウォームホイールのウォームギヤとの噛合部である周方向の一点に作用するものであり、ウォームホイールを傾けようとする力として作用する。このとき、ウォームホイールは、ギヤハウジングに上述の如くに間接的に支持されるものであるに過ぎないから安定を欠き、スラスト荷重により一定の傾きを生ずることを余儀なくされる。緩衝部材は、ウォームホイールから伝えられるトルク伝達のための弾性変形と、その傾きに起因するねじり変形とを同時に生じ、耐久劣化が早まる。
【０００５】
本発明の課題は、電動パワーステアリング装置において、モータのトルク伝達経路でギヤ衝撃吸収機能を営む緩衝部材の耐久信頼性を向上することにある。
【０００６】
【課題を解決するための手段】
請求項１に記載の本発明は、ステアリング軸に接続されたピニオン軸をギヤハウジングに支持し、このピニオン軸をラック軸に噛合いさせ、モータに駆動される操舵アシストギヤが、回転方向で緩衝部材を介して前記ピニオン軸に接続されてなる電動パワーステアリング装置において、前記操舵アシストギヤをギヤハウジングに保持される軸受にピニオン軸とは独立して回転自在に支持するとともに、前記緩衝部材をピニオン軸に結合したアームの係止部と、操舵アシストギヤに設けた係止部との間に挟持してなるようにしたものである。
【０００７】
請求項２に記載の本発明は、請求項１に記載の本発明において更に、前記操舵アシストギヤを支持する軸受が、ギヤハウジングにおけるピニオン軸の周囲に設けられる環状支持部に保持されるようにしたものである。
請求項３に記載の本発明は、請求項１又は２に記載の本発明において更に、前記操舵アシストギヤが、モータの出力軸に結合されたウォームギヤと噛合うウォームホイールであり、前記軸受が該ウォームホイールの軸方向で該ウォームホイールの該ウォームギヤとの噛合位置に対応する位置に設けられるようにしたものである。
【０００８】
【作用】
請求項１、２の発明によれば下記(1)の作用がある。
(1)操舵アシストギヤはピニオン軸とは独立に支持される。従って、操舵アシストギヤは、ギヤハウジングに直接支持されて安定化すること、及びピニオン軸より回転半径が大径となる部分で支持されて安定化する。このため、モータのトルク伝達時に、操舵アシストギヤに作用するスラスト荷重は、操舵アシストギヤの軸受に支持され、このスラスト荷重による操舵アシストギヤの傾きを抑制でき、結果として、この傾きに起因する緩衝部材のねじり変形を防止し、緩衝部材の耐久信頼性を向上できる。
【０００９】
請求項３の発明によれば、下記(2)〜(4)作用がある。
(2)ウォームホイールはピニオン軸とは独立に支持される。従って、ウォームホイールは、ギヤハウジングに直接支持されて安定化すること、及びピニオン軸より回転半径が大径となる部分で支持されて安定化する。このため、モータのトルク伝達時に、ウォームホイールに作用するスラスト荷重は、ウォームホイールの軸受に支持され、このスラスト荷重によるウォームホイールの傾きを抑制でき、結果として、この傾きに起因する緩衝部材のねじり変形を防止し、緩衝部材の耐久信頼性を向上できる。
【００１０】
(3)ウォームホイールの軸受は、ウォームホイールとウォームギヤの噛合い位置に設けられた。従って、ウォームギヤからウォームホイールに作用するラジアル荷重がウォームホイールに及ぼすモーメントを小さくでき、ウォームホイールの傾きを抑制できる。従って、ウォームホイールのウォームギヤとの噛合いの安定を確保でき、且つ緩衝部材のねじり変形をより防止できる。
【００１１】
(4)ウォームホイールをギヤハウジングに直接強固に支持できるから、スラスト荷重の大きいウォーム減速装置を採用でき、容易に高減速比を得ることができる。
【００１２】
【発明の実施の形態】
図１は電動パワーステアリング装置を示す模式図、図２は電動パワーステアリング装置を示す縦断面図、図３は図２のIII-III 線に沿う断面図、図４は図２のIV-IV 線に沿う断面図、図５は変形例を示す分解斜視図である。
【００１３】
電動パワーステアリング装置１０は、図１〜図３に示す如く、ステアリングホイールが接続されるステアリング軸１２を、ギヤボックス１１の内部でピニオン軸１３に接続するとともに、このピニオン軸１３をラック軸１４に噛合いさせ、ラック軸１４の中間部に連結ボルト１５Ａ、１５Ｂを介して左右のタイロッド１６Ａ、１６Ｂを連結し、運転者によるステアリングホイールの操舵力をギヤボックス１１に固定のモータ１７によりアシストするものである。
【００１４】
ギヤボックス１１は、図２に示す如く、第１〜第３のギヤハウジング１１Ａ〜１１Ｃからなり、ステアリング軸１２とピニオン軸１３を軸受２１、軸受２２、２３で支持するとともに、ステアリング軸１２とピニオン軸１３をそれらの内部でトーションバー２４により連結している。
【００１５】
ギヤボックス１１は、トルクセンサ３０を構成する２個の検出コイル３１、３２をステアリング軸１２、ピニオン軸１３に係合している円筒状のコア３３を囲むように、第１ハウジング１１Ａに設けている。コア３３は、ピニオン軸１３のガイドピン３４に係合する縦溝３５を備えて軸方向にのみ移動可能とされるとともに、ステアリング軸１２のスライダピン３６に係合するスパイラル溝３７を備える。これにより、ステアリングホイールに加えた操舵トルクがステアリング軸１２に付与され、トーションバー２４の弾性ねじり変形により、ステアリング軸１２とピニオン軸１３の間に回転方向の相対変位を生ずると、ステアリング軸１２とピニオン軸１３の回転方向の変位がコア３３を軸方向に変位させるものとなり、このコア３３の変位による検出コイル３１、３２の周辺の磁気的変化に起因する検出コイル３１、３２のインダクタンスが変化する。即ち、コア３３がステアリング軸１２側へ移動すると、コア３３が近づく方の検出コイル３１のインダクタンスが増加し、コア３３が遠ざかる方の検出コイル３２のインダクタンスが減少し、このインダクタンスの変化により操舵トルクを検出できる。
【００１６】
ギヤボックス１１は、ピニオン軸１３の反トルクセンサ３０側の端部のピニオン歯１３Ａに、ラック軸１４のラック歯１４Ａを噛合いさせている。このとき、第３ギヤハウジング１１Ｃにはキャップ１１Ｄが固定され、キャップ１１Ｄにスプリング３８を介してバックアップされるラックガイド３９がラック軸１４を背面支持している。
【００１７】
ギヤボックス１１は、図３に示す如く、モータ１７を第３ギヤハウジング１１Ｃに支持するとともに、モータ１７の出力軸にクラッチ１８を介して結合されるウォームギヤ４１を、軸受４２、４３により第３ギヤハウジング１１Ｃに両端支持している。そして、ギヤボックス１１は、ウォームギヤ４１に噛合う操舵アシストギヤとしてのウォームホイール４４を、軸受５０により後述する如くに第３ギヤハウジング１１Ｃに支持している。ウォームホイール４４は、ボス４４Ａとリム４４Ｂからなり、リム４４Ｂに歯４４Ｃを備え、ボス４４Ａをインサート金具により構成して強度を確保し、リム４４Ｂを樹脂により構成してウォームギヤ４１との噛合い音の静粛を図っている。
【００１８】
軸受５０は、ウォームホイール４４のボス４４Ａの内周に外輪５０Ｂを装着されて止め輪５１により保持されるとともに、第３ギヤハウジング１１Ｃの環状支持部５２に内輪５０Ａを装着されて止め輪（又はナット）５３により保持され、結果として、ウォームホイール４４をピニオン軸１３とは独立して回転自在にギヤボックス１１に支持する。そして、軸受５０は、ウォームホイール４４の軸方向で、ウォームホイール４４のウォームギヤ４１との噛合位置（歯４４Ｃの位置）の対応する位置（軸方向同一位置）に設けられている。尚、ウォームホイール４４は、ボス４４Ａに軸受５０の外輪５０Ｂを保持した状態で、軸受５０の内輪５０Ａを第３ギヤハウジング１１Ｃの環状支持部５２に装着し、止め輪５３をボス４４Ａの開口から環状支持部５２に係着することにより、ギヤボックス１１に組込まれる。
【００１９】
ウォームホイール４４は、回転方向で緩衝部材６０を介してピニオン軸１３に接続されている。緩衝部材６０は、ゴム等の弾性体からなり、図４に示す如く、環状部６１の内側周方向複数位置に緩衝部６２を備える。緩衝部６２は、Ｕ字状をなし、その両端部を環状部６１の内周に結合してある。これにより、緩衝部材６０は、ピニオン軸１３にキー６３を介して結合したアーム６４の外周に設けた放射状係止部６５を相隣る緩衝部６２、６２の間に隙間なく挿入するとともに、ウォームホイール４４のボス４４Ａの上面に設けた突状係止部６６を緩衝部６２の中空部（Ｕ字で囲まれる内部）に隙間なく挿入することにより、該緩衝部材６０をそれらの係止部６５、６６の間に回転方向で隙間なく挟持される。
【００２０】
即ち、電動パワーステアリング装置１０にあっては、車速センサ（不図示）や上述のトルクセンサ３０の検出結果を得たコントロールユニット（不図示）により、所定のアシスト力マップから、モータ１７の駆動電流を決定し、車速と操舵トルクに応じた適切な操舵アシスト力となるモータ１７のトルクをピニオン軸１３に付与する。尚、モータ１７とウォームギヤ４１との間に設けられるクラッチ１８は、アシスト不要時（高速時）に操舵アシスト力を遮断する。
【００２１】
本実施形態によれば、以下の作用がある。
▲１▼ウォームホイール４４はピニオン軸１３とは独立に支持される。従って、ウォームホイール４４は、第３ギヤハウジング１１Ｃに直接支持されて安定化すること、及びピニオン軸１３より回転半径が大径となる部分で支持されて安定化する。このため、モータ１７のトルク伝達時に、ウォームホイール４４に作用するスラスト荷重は、ウォームホイール４４の軸受５０に支持され、このスラスト荷重によるウォームホイール４４の傾きを抑制でき、結果として、この傾きに起因する緩衝部材６０のねじり変形を防止し、緩衝部材６０の耐久信頼性を向上できる。
【００２２】
▲２▼ウォームホイール４４の軸受５０は、ウォームホイール４４とウォームギヤ４１の噛合い位置に設けられた。従って、ウォームギヤ４１からウォームホイール４４に作用するラジアル荷重がウォームホイール４４に及ぼすモーメントを小さくでき、ウォームホイール４４の傾きを抑制できる。従って、ウォームホイール４４のウォームギヤ４１との噛合いの安定を確保でき、且つ緩衝部材６０のねじり変形をより防止できる。
【００２３】
▲３▼ウォームホイール４４を第３ギヤハウジング１１Ｃに直接強固に支持できるから、スラスト荷重の大きいウォーム減速装置を採用でき、容易に高減速比を得ることができる。
【００２４】
▲４▼ピニオン軸１３の軸受２３、ウォームホイール４４の軸受５０を同一の第３ギヤハウジング１１Ｃに設けているから、ピニオン軸１３とウォームホイール４４の同軸組付精度を簡易に高精度化できる。
【００２５】
▲５▼ウォームギヤ４１の軸受４２、４３、ウォームホイール４４の軸受５０を同一の第３ギヤハウジング１１Ｃに設けているから、ウォームギヤ４１とウォームホイール４４の軸間距離精度を簡易に高精度化し、両者の噛合い精度を簡易に高精度化できる。
【００２６】
図５は図４の緩衝部材６０の変形例に係る緩衝部材７０である。緩衝部材７０は、ゴム等の弾性体からなり、環状部７１の内側周方向複数位置に、角棒状緩衝部７２を片持ちレバー状に結合したものである。緩衝部材７０は、ピニオン軸１３に結合されるアーム７３の外周の放射状係止部７４と、ウォームホイール４４のボス４４Ａの上面に設けた突状係止部７５を、緩衝部材７０の相隣る緩衝部７２、７２が形成する各凹部に隙間なく交互に挿入することにより、該緩衝部材７０をそれらの係止部７４、７５の間に回転方向で隙間なく挟持される。
【００２７】
以上、本発明の実施の形態を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【００２８】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、電動パワーステアリング装置において、モータのトルク伝達経路でギヤ衝撃吸収機能を営む緩衝部材の耐久信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】 図１は電動パワーステアリング装置を示す模式図である。
【図２】 図２は電動パワーステアリング装置を示す縦断面図である。
【図３】 図３は図２のIII-III線に沿う断面図である。
【図４】 図４は図２のIV-IV線に沿う断面図である。
【図５】 図５は変形例を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
１０ 電動パワーステアリング装置
１１ ギヤハウジング
１２ ステアリング軸
１３ ピニオン軸
１４ ラック軸
１７ モータ
４１ ウォームギヤ
４４ ウォームホイール（操舵アシストギヤ）
５０ 軸受
５２ 環状支持部
６０、７０ 緩衝部材
６４、７３ アーム
６５、６６、７４、７５ 係止部
【発明の属する技術分野】
本発明は電動パワーステアリング装置に関する。
【０００２】
【従来の技術】
電動パワーステアリング装置は、ステアリング軸に接続されたピニオン軸をラック軸に噛合いさせるとともに、モータの出力軸に連結されたウォームギヤをウォームホイールに噛合いさせ、このウォームホイールをピニオン軸に接続し、モータのトルクをラック軸に伝えることにて操舵アシストする。
【０００３】
そして、従来技術では、特開昭61-33367号公報に記載の如く、ウォームギヤからラック軸に至るトルク伝達経路のギヤ類のバックラッシュによる歯面の衝突、振動を吸収するため、ウォームホイールを回転方向で緩衝部材を介してピニオン軸に接続している。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
然しながら、従来技術では、ウォームホイールはピニオン軸を介してギヤハウジングに支持されるようになっており、ギヤハウジングに直接支持されていない。他方、モータのトルク伝達時には、ウォームギヤがウォームホイールとの噛合部にトルクだけでなくスラスト荷重も及ぼす。スラスト荷重は、ウォームホイールのウォームギヤとの噛合部である周方向の一点に作用するものであり、ウォームホイールを傾けようとする力として作用する。このとき、ウォームホイールは、ギヤハウジングに上述の如くに間接的に支持されるものであるに過ぎないから安定を欠き、スラスト荷重により一定の傾きを生ずることを余儀なくされる。緩衝部材は、ウォームホイールから伝えられるトルク伝達のための弾性変形と、その傾きに起因するねじり変形とを同時に生じ、耐久劣化が早まる。
【０００５】
本発明の課題は、電動パワーステアリング装置において、モータのトルク伝達経路でギヤ衝撃吸収機能を営む緩衝部材の耐久信頼性を向上することにある。
【０００６】
【課題を解決するための手段】
請求項１に記載の本発明は、ステアリング軸に接続されたピニオン軸をギヤハウジングに支持し、このピニオン軸をラック軸に噛合いさせ、モータに駆動される操舵アシストギヤが、回転方向で緩衝部材を介して前記ピニオン軸に接続されてなる電動パワーステアリング装置において、前記操舵アシストギヤをギヤハウジングに保持される軸受にピニオン軸とは独立して回転自在に支持するとともに、前記緩衝部材をピニオン軸に結合したアームの係止部と、操舵アシストギヤに設けた係止部との間に挟持してなるようにしたものである。
【０００７】
請求項２に記載の本発明は、請求項１に記載の本発明において更に、前記操舵アシストギヤを支持する軸受が、ギヤハウジングにおけるピニオン軸の周囲に設けられる環状支持部に保持されるようにしたものである。
請求項３に記載の本発明は、請求項１又は２に記載の本発明において更に、前記操舵アシストギヤが、モータの出力軸に結合されたウォームギヤと噛合うウォームホイールであり、前記軸受が該ウォームホイールの軸方向で該ウォームホイールの該ウォームギヤとの噛合位置に対応する位置に設けられるようにしたものである。
【０００８】
【作用】
請求項１、２の発明によれば下記(1)の作用がある。
(1)操舵アシストギヤはピニオン軸とは独立に支持される。従って、操舵アシストギヤは、ギヤハウジングに直接支持されて安定化すること、及びピニオン軸より回転半径が大径となる部分で支持されて安定化する。このため、モータのトルク伝達時に、操舵アシストギヤに作用するスラスト荷重は、操舵アシストギヤの軸受に支持され、このスラスト荷重による操舵アシストギヤの傾きを抑制でき、結果として、この傾きに起因する緩衝部材のねじり変形を防止し、緩衝部材の耐久信頼性を向上できる。
【０００９】
請求項３の発明によれば、下記(2)〜(4)作用がある。
(2)ウォームホイールはピニオン軸とは独立に支持される。従って、ウォームホイールは、ギヤハウジングに直接支持されて安定化すること、及びピニオン軸より回転半径が大径となる部分で支持されて安定化する。このため、モータのトルク伝達時に、ウォームホイールに作用するスラスト荷重は、ウォームホイールの軸受に支持され、このスラスト荷重によるウォームホイールの傾きを抑制でき、結果として、この傾きに起因する緩衝部材のねじり変形を防止し、緩衝部材の耐久信頼性を向上できる。
【００１０】
(3)ウォームホイールの軸受は、ウォームホイールとウォームギヤの噛合い位置に設けられた。従って、ウォームギヤからウォームホイールに作用するラジアル荷重がウォームホイールに及ぼすモーメントを小さくでき、ウォームホイールの傾きを抑制できる。従って、ウォームホイールのウォームギヤとの噛合いの安定を確保でき、且つ緩衝部材のねじり変形をより防止できる。
【００１１】
(4)ウォームホイールをギヤハウジングに直接強固に支持できるから、スラスト荷重の大きいウォーム減速装置を採用でき、容易に高減速比を得ることができる。
【００１２】
【発明の実施の形態】
図１は電動パワーステアリング装置を示す模式図、図２は電動パワーステアリング装置を示す縦断面図、図３は図２のIII-III 線に沿う断面図、図４は図２のIV-IV 線に沿う断面図、図５は変形例を示す分解斜視図である。
【００１３】
電動パワーステアリング装置１０は、図１〜図３に示す如く、ステアリングホイールが接続されるステアリング軸１２を、ギヤボックス１１の内部でピニオン軸１３に接続するとともに、このピニオン軸１３をラック軸１４に噛合いさせ、ラック軸１４の中間部に連結ボルト１５Ａ、１５Ｂを介して左右のタイロッド１６Ａ、１６Ｂを連結し、運転者によるステアリングホイールの操舵力をギヤボックス１１に固定のモータ１７によりアシストするものである。
【００１４】
ギヤボックス１１は、図２に示す如く、第１〜第３のギヤハウジング１１Ａ〜１１Ｃからなり、ステアリング軸１２とピニオン軸１３を軸受２１、軸受２２、２３で支持するとともに、ステアリング軸１２とピニオン軸１３をそれらの内部でトーションバー２４により連結している。
【００１５】
ギヤボックス１１は、トルクセンサ３０を構成する２個の検出コイル３１、３２をステアリング軸１２、ピニオン軸１３に係合している円筒状のコア３３を囲むように、第１ハウジング１１Ａに設けている。コア３３は、ピニオン軸１３のガイドピン３４に係合する縦溝３５を備えて軸方向にのみ移動可能とされるとともに、ステアリング軸１２のスライダピン３６に係合するスパイラル溝３７を備える。これにより、ステアリングホイールに加えた操舵トルクがステアリング軸１２に付与され、トーションバー２４の弾性ねじり変形により、ステアリング軸１２とピニオン軸１３の間に回転方向の相対変位を生ずると、ステアリング軸１２とピニオン軸１３の回転方向の変位がコア３３を軸方向に変位させるものとなり、このコア３３の変位による検出コイル３１、３２の周辺の磁気的変化に起因する検出コイル３１、３２のインダクタンスが変化する。即ち、コア３３がステアリング軸１２側へ移動すると、コア３３が近づく方の検出コイル３１のインダクタンスが増加し、コア３３が遠ざかる方の検出コイル３２のインダクタンスが減少し、このインダクタンスの変化により操舵トルクを検出できる。
【００１６】
ギヤボックス１１は、ピニオン軸１３の反トルクセンサ３０側の端部のピニオン歯１３Ａに、ラック軸１４のラック歯１４Ａを噛合いさせている。このとき、第３ギヤハウジング１１Ｃにはキャップ１１Ｄが固定され、キャップ１１Ｄにスプリング３８を介してバックアップされるラックガイド３９がラック軸１４を背面支持している。
【００１７】
ギヤボックス１１は、図３に示す如く、モータ１７を第３ギヤハウジング１１Ｃに支持するとともに、モータ１７の出力軸にクラッチ１８を介して結合されるウォームギヤ４１を、軸受４２、４３により第３ギヤハウジング１１Ｃに両端支持している。そして、ギヤボックス１１は、ウォームギヤ４１に噛合う操舵アシストギヤとしてのウォームホイール４４を、軸受５０により後述する如くに第３ギヤハウジング１１Ｃに支持している。ウォームホイール４４は、ボス４４Ａとリム４４Ｂからなり、リム４４Ｂに歯４４Ｃを備え、ボス４４Ａをインサート金具により構成して強度を確保し、リム４４Ｂを樹脂により構成してウォームギヤ４１との噛合い音の静粛を図っている。
【００１８】
軸受５０は、ウォームホイール４４のボス４４Ａの内周に外輪５０Ｂを装着されて止め輪５１により保持されるとともに、第３ギヤハウジング１１Ｃの環状支持部５２に内輪５０Ａを装着されて止め輪（又はナット）５３により保持され、結果として、ウォームホイール４４をピニオン軸１３とは独立して回転自在にギヤボックス１１に支持する。そして、軸受５０は、ウォームホイール４４の軸方向で、ウォームホイール４４のウォームギヤ４１との噛合位置（歯４４Ｃの位置）の対応する位置（軸方向同一位置）に設けられている。尚、ウォームホイール４４は、ボス４４Ａに軸受５０の外輪５０Ｂを保持した状態で、軸受５０の内輪５０Ａを第３ギヤハウジング１１Ｃの環状支持部５２に装着し、止め輪５３をボス４４Ａの開口から環状支持部５２に係着することにより、ギヤボックス１１に組込まれる。
【００１９】
ウォームホイール４４は、回転方向で緩衝部材６０を介してピニオン軸１３に接続されている。緩衝部材６０は、ゴム等の弾性体からなり、図４に示す如く、環状部６１の内側周方向複数位置に緩衝部６２を備える。緩衝部６２は、Ｕ字状をなし、その両端部を環状部６１の内周に結合してある。これにより、緩衝部材６０は、ピニオン軸１３にキー６３を介して結合したアーム６４の外周に設けた放射状係止部６５を相隣る緩衝部６２、６２の間に隙間なく挿入するとともに、ウォームホイール４４のボス４４Ａの上面に設けた突状係止部６６を緩衝部６２の中空部（Ｕ字で囲まれる内部）に隙間なく挿入することにより、該緩衝部材６０をそれらの係止部６５、６６の間に回転方向で隙間なく挟持される。
【００２０】
即ち、電動パワーステアリング装置１０にあっては、車速センサ（不図示）や上述のトルクセンサ３０の検出結果を得たコントロールユニット（不図示）により、所定のアシスト力マップから、モータ１７の駆動電流を決定し、車速と操舵トルクに応じた適切な操舵アシスト力となるモータ１７のトルクをピニオン軸１３に付与する。尚、モータ１７とウォームギヤ４１との間に設けられるクラッチ１８は、アシスト不要時（高速時）に操舵アシスト力を遮断する。
【００２１】
本実施形態によれば、以下の作用がある。
▲１▼ウォームホイール４４はピニオン軸１３とは独立に支持される。従って、ウォームホイール４４は、第３ギヤハウジング１１Ｃに直接支持されて安定化すること、及びピニオン軸１３より回転半径が大径となる部分で支持されて安定化する。このため、モータ１７のトルク伝達時に、ウォームホイール４４に作用するスラスト荷重は、ウォームホイール４４の軸受５０に支持され、このスラスト荷重によるウォームホイール４４の傾きを抑制でき、結果として、この傾きに起因する緩衝部材６０のねじり変形を防止し、緩衝部材６０の耐久信頼性を向上できる。
【００２２】
▲２▼ウォームホイール４４の軸受５０は、ウォームホイール４４とウォームギヤ４１の噛合い位置に設けられた。従って、ウォームギヤ４１からウォームホイール４４に作用するラジアル荷重がウォームホイール４４に及ぼすモーメントを小さくでき、ウォームホイール４４の傾きを抑制できる。従って、ウォームホイール４４のウォームギヤ４１との噛合いの安定を確保でき、且つ緩衝部材６０のねじり変形をより防止できる。
【００２３】
▲３▼ウォームホイール４４を第３ギヤハウジング１１Ｃに直接強固に支持できるから、スラスト荷重の大きいウォーム減速装置を採用でき、容易に高減速比を得ることができる。
【００２４】
▲４▼ピニオン軸１３の軸受２３、ウォームホイール４４の軸受５０を同一の第３ギヤハウジング１１Ｃに設けているから、ピニオン軸１３とウォームホイール４４の同軸組付精度を簡易に高精度化できる。
【００２５】
▲５▼ウォームギヤ４１の軸受４２、４３、ウォームホイール４４の軸受５０を同一の第３ギヤハウジング１１Ｃに設けているから、ウォームギヤ４１とウォームホイール４４の軸間距離精度を簡易に高精度化し、両者の噛合い精度を簡易に高精度化できる。
【００２６】
図５は図４の緩衝部材６０の変形例に係る緩衝部材７０である。緩衝部材７０は、ゴム等の弾性体からなり、環状部７１の内側周方向複数位置に、角棒状緩衝部７２を片持ちレバー状に結合したものである。緩衝部材７０は、ピニオン軸１３に結合されるアーム７３の外周の放射状係止部７４と、ウォームホイール４４のボス４４Ａの上面に設けた突状係止部７５を、緩衝部材７０の相隣る緩衝部７２、７２が形成する各凹部に隙間なく交互に挿入することにより、該緩衝部材７０をそれらの係止部７４、７５の間に回転方向で隙間なく挟持される。
【００２７】
以上、本発明の実施の形態を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【００２８】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、電動パワーステアリング装置において、モータのトルク伝達経路でギヤ衝撃吸収機能を営む緩衝部材の耐久信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】 図１は電動パワーステアリング装置を示す模式図である。
【図２】 図２は電動パワーステアリング装置を示す縦断面図である。
【図３】 図３は図２のIII-III線に沿う断面図である。
【図４】 図４は図２のIV-IV線に沿う断面図である。
【図５】 図５は変形例を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
１０ 電動パワーステアリング装置
１１ ギヤハウジング
１２ ステアリング軸
１３ ピニオン軸
１４ ラック軸
１７ モータ
４１ ウォームギヤ
４４ ウォームホイール（操舵アシストギヤ）
５０ 軸受
５２ 環状支持部
６０、７０ 緩衝部材
６４、７３ アーム
６５、６６、７４、７５ 係止部
Claims (3)
- ステアリング軸に接続されたピニオン軸をギヤハウジングに支持し、このピニオン軸をラック軸に噛合いさせ、
モータに駆動される操舵アシストギヤが、回転方向で緩衝部材を介して前記ピニオン軸に接続されてなる電動パワーステアリング装置において、
前記操舵アシストギヤをギヤハウジングに保持される軸受にピニオン軸とは独立して回転自在に支持するとともに、
前記緩衝部材をピニオン軸に結合したアームの係止部と、操舵アシストギヤに設けた係止部との間に挟持してなることを特徴とする電動パワーステアリング装置。 - 前記操舵アシストギヤを支持する軸受が、ギヤハウジングにおけるピニオン軸の周囲に設けられる環状支持部に保持される請求項１に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記操舵アシストギヤが、モータの出力軸に結合されたウォームギヤと噛合うウォームホイールであり、前記軸受が該ウォームホイールの軸方向で該ウォームホイールの該ウォームギヤとの噛合位置に対応する位置に設けられる請求項１又は２に記載の電動パワーステアリング装置。
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