本発明は、ホログラム光学素子、それを用いた光ピックアップ装置およびそれを備えた光学記録媒体駆動装置に関する。
光ディスクドライブ装置等の光学記録媒体駆動装置に用いられる光ピックアップ装置は、レーザ光を用いて光ディスク等の光学記録媒体への情報記録および情報読み出しあるいはサーボ信号検出を行う。
光ディスクドライブ装置等の光学記録媒体駆動装置に用いられる光ピックアップ装置は、レーザ光を用いて光ディスク等の光学記録媒体への情報記録および情報読み出しあるいはサーボ信号検出を行う。
サーボ信号には、光学記録媒体上におけるレーザ光の集光スポットの焦点ずれを示す焦点誤差信号と、光学記録媒体上のトラックからの集光スポットのずれを示すトラッキング誤差信号とがある。
焦点誤差信号の検出には非点収差法が多く用いられている。一方、トラッキング誤差信号の検出については、CD(Compact disc)、CD−ROM(CD-read only memory )等の再生専用光ディスクの場合には3ビーム法が多く用いられている。CD−R(CD-recordable )、CD−RW(CD-rewritable )等の記録可能型光ディスクの場合には、未記録状態でピットが存在しないので、3ビーム法を用いることができず、後述するプッシュプル法または差動プッシュプル法が用いられる。
図20は記録可能型光ディスク用の従来の光ピックアップ装置の概略図である。半導体レーザ素子302はレーザ光(光束)を出射する。半導体レーザ素子302から出射された光束は、3分割用回折格子303により主光束および2つの副光束からなる3本の光束に分割され、コリメータレンズ304により平行光にされる。コリメータレンズ304を透過した3本の光束は、ビームスプリッタ305を透過し、対物レンズ306により光ディスク301の記録媒体面上に主スポットおよびその両側に位置する副スポットとして集光される。
対物レンズ306は、トラッキング動作のために光ディスク301の半径方向に移動可能かつフォーカス動作のために光ディスク301の記録媒体面に垂直な方向に移動可能にアクチュエータ310により支持されている。
光ディスク301からの3本の帰還光束(反射光束)は、対物レンズ306を透過し、ビームスプリッタ305により反射され、集光レンズ307およびシリンドリカルレンズ308を透過し、光検出器309により検出される。このとき、集光レンズ307およびシリンドリカルレンズ308の組み合わせにより3本の帰還光束に焦点誤差検出用の非点収差が与えられる。
図21は図20の光検出器309の一例を示す模式的平面図である。図21(a)は対物レンズ306に対して光ディスク301が近すぎる場合の集光スポットの状態を示し、図21(b)は光ディスク301が対物レンズ306の合焦点(フォーカス)位置にある場合の集光スポットの状態を示し、図21(c)は対物レンズ306に対して光ディスク301が遠すぎる場合の集光スポットの状態を示す。
図21に示すように、光検出器309は、中央部に設けられた4分割光検出部160と、4分割光検出部160の両側に設けられた2分割光検出部161,162とを含む。4分割光検出部160は4つの光検出部A,B,C,Dに分割され、2分割光検出部161は2つの光検出部E1,E2に分割され、2分割光検出部162は2つの光検出部F1,F2に分割されている。4分割光検出部160の中心部には、光ディスク301からの3本の帰還光束のうち主光束が入射し、2分割光検出部161,162の中心部には光ディスク301からの帰還光束のうち副光束がそれぞれ入射する。
光ディスク301と対物レンズ306との間の距離が変化すると、帰還光束の焦点が変わり、光検出器309の4分割光検出部160および2分割光検出部161,162上での集光スポットの形状が図21に示すように変化する。
対物レンズ306に対して光ディスク301が近すぎる場合には、図21(a)に示すように、集光スポットSは光検出部Bの中心と光検出部Dの中心とを結ぶ方向が長軸方向となる楕円形になる。
光ディスク301が対物レンズ306の合焦点位置にある場合には、図21(b)に示すように、集光スポットSは光検出部A,B,C,Dの中心で円形となる。
光ディスク301が対物レンズ306に対して遠すぎる場合には、図21(c)に示すように、集光スポットSは光検出部Aの中心と光検出部Cの中心とを結ぶ方向が長軸方向となる楕円形になる。
したがって、4分割光検出部160の各光検出部A,B,C,Dの出力信号PA,PB,PC,PDを用いて次式の焦点誤差信号FESが得られる。
FES=(PA+PC)−(PB+PD) …(1)
上式の焦点誤差信号FESは、光ディスク301が近すぎる場合に負となり、良好なフォーカス状態の場合に0となり、光ディスク301が遠すぎる場合に正となる。このように、焦点誤差信号FESの符号に基づいて光ディスク301の合焦点位置からのずれの方向を判定することができる。
焦点誤差信号FESはアクチュエータ310にフィードバックされ、光ディスク301に対して垂直な方向に対物レンズ306を移動させることにより光ディスク301上での集光状態が修正される。
半導体レーザ素子302の光軸が傾いた場合には、合焦点状態で光検出器309の集光スポット内に光強度分布の偏りが発生する。上記の4分割光検出部160を用いた非点収差法では、半導体レーザ素子302の光軸の傾きにより集光スポット内に光強度分布の偏りが生じた場合でも、焦点誤差信号FESに誤差が発生しにくい。
図22はプッシュプル法および差動プッシュプル法によるトラッキングサーボの原理を説明するための図である。図22(a),(b),(c)の左側には光ディスク301と対物レンズ306との位置関係を示し、右側には光検出器309上でのファーフィールドパターン(遠視野像)の光強度分布を示す。図22(a),(b),(c)の左側において、主光束を実線で示し、副光束を破線で示す。
CD−R等の記録可能型光ディスク301では、記録媒体面にトラッキング誤差の検出に用いられるプリグルーブ(溝)600が形成されている。プリグルーブ600は、凸状のランド部601および凹状のグルーブ部602からなる。情報の記録はランド部601に行われる。トラッキング誤差信号は、ランド部601に対する主光束のずれを表わしている。
帰還光束のうちの主光束のファーフィールドパターン700は、ランド部601またはグルーブ部602のエッジでの光の回折効果により双峰の強度分布となる。
図22(b)に示すように、光ディスク301上での主光束の集光スポットがランド部601の中央に位置する場合には、主光束のファーフィールドパターン700は対称な双峰の強度分布となる。この場合、4分割光検出部160の2つの光検出部A,Dにおける光強度と他の2つの光検出部B,Cにおける光強度とが等しくなる。
図22(a)に示すように、光ディスク301上での主光束の集光スポットがランド部601に対して相対的に右寄りにずれると、主光束のファーフィールドパターン700は、非対称の双峰の強度分布となる。この場合、4分割光検出部160の2つの光検出部A,Dにおける光強度が他の2つの光検出部B,Cにおける光強度よりも高くなる。
図22(c)に示すように、光ディスク301上での主光束の集光スポットがランド部601に対して相対的に左寄りにずれると、主光束のファーフィールドパターン700は、非対称な双峰の強度分布となる。この場合、4分割光検出部160の2つの光検出部B,Cにおける光強度が他の2つの光検出部A,Dにおける光強度よりも高くなる。
したがって、帰還光の主光束を検出する4分割光検出部160を光検出部A,Dと光検出部B,Cとに分割された2分割光検出部とみなすと、光検出部A,B,C,Dの出力信号PA,PB,PC,PDを用いてプッシュプル法によるトラッキング誤差信号TESを次式のように得ることができる。
TES=(PA+PD)−(PB+PC) …(2)
上式のトラッキング誤差信号TESは、光ディスク301上での主光束による集光スポットがランド部601の中央に位置する場合に0となり、光ディスク301上での主光束による集光スポットがランド部601の中央から右寄りにずれた場合に正となり、光ディスク301上での主光束による集光スポットがランド部601の中央から左寄りにずれた場合に負となる。
しかしながら、光ディスク301が傾斜した場合には、光ディスク301上での主光束による集光スポットがランド部601の中央に位置するにもかかわらず、4分割光検出部160上でのファーフィールドパターン700が非対称な双峰の強度分布となる。
また、対物レンズ306を含めた光学系を一体として駆動しない光ピックアップ装置において、トラッキングサーボのために対物レンズ306のみを移動させた場合にも、光ディスク301上での主光束による集光スポットがランド部601の中央に位置するにもかかわらず、4分割光検出部160上でのファーフィールドパターン700が非対称な双峰の強度分布となる。
これらの場合、見かけ上、トラッキング誤差が発生する。この見かけ上のトラッキング誤差はトラッキング誤差オフセットと呼ばれる。
そこで、このような光ディスク301の傾斜時または対物レンズ306の移動時に発生するトラッキング誤差オフセットを低減するために、差動プッシュプル法が用いられる。差動プッシュプル法によるトラッキングサーボにおいては、4分割光検出部160の両側の2分割光検出部161,162が用いられる。
図22に示すように、図20の3分割用回折格子303により得られた副光束による集光スポットがランド部601の両側のグルーブ部602に形成される。それにより、帰還光束のうちの副光束のファーフィールドパターン701,702は、ランド部601またはグルーブ部602のエッジでの光の回折効果によりそれぞれ2分割光検出部161,162上での双峰の強度分布となる。
図22(a)に示すように、光ディスク301が左寄りにずれた場合には、2分割検出部161の光検出部E2での強度が光検出部E1での光強度よりも高くなり、2分割光検出部162の光検出部F2での光強度が光検出部F1での光強度よりも高くなる。
図22(c)に示すように、光ディスク301が右寄りにずれた場合には、2分割光検出部161の光検出部E1での光強度が光検出部E2での光強度よりも高くなり、2分割光検出部162の光検出部F1での光強度が光検出部F2での光強度よりも高くなる。
このように、副光束によるファーフィールドパターン701,702の光強度分布の非対称性が主光束によるファーフィールドパターン700の光強度分布の非対称性とは逆になる。したがって、光検出部A,B,C,Dの出力信号PA,PB,PC,PDおよび光検出部E1,E2,F1,F2の出力信号PE1,PE2,PF1,PF2を用いて差動プッシュプル法によるトラッキング誤差信号TESを次式により得ることができる。
TES=(PA+PD)−(PB+PC)
−k{(PE1+PF1)−(PE2+PF2)} …(3)
ここで、kは係数であり、初期的にトラッキング誤差オフセットが0となるように設定される。このように、差動プッシュプル法によれば、トラッキング誤差オフセットを補償することができる。
近年、記録可能型光ディスク用の光ピックアップ装置においても、従来の再生専用の光ピックアップ装置と同様に、ホログラム光学素子を用いて小型化を図る試みがなされている。
図23は特開平3−76035号公報に開示された透過型ホログラム光学素子を有する光ピックアップ装置の概略図である。
図23において、光ディスク501の半径方向(ラジアル方向)をX方向とし、光ディスク501のトラック方向をY方向とし、光ディスク501のディスク面に垂直な方向をZ方向とする。
図23の光ピックアップ装置はホログラムユニット520および集光レンズ511により構成される。
ステム502上に放熱ブロック504が配置され、放熱ブロック504の側面にサブマウント505が取り付けられ、サブマウント505上に半導体レーザ素子506が取り付けられている。放熱ブロック504の上面には光検出器507が配置されている。放熱ブロック504を取り囲むようにキャップ503が設けられている。キャップ503の上面の開口部には、ホログラム光学素子508が配置されている。ホログラム光学素子508の下面には3分割用回折格子509が設けられ、ホログラム光学素子508の上面にはホログラム面510が形成されている。
半導体レーザ素子506はレーザ光(光束)をZ方向に出射する。半導体レーザ素子506から出射された光束は、3分割用回折格子509によりほぼY方向およびZ方向を含む面内で0次回折光束(主光束)、+1次回折光束(副光束)および−1次光束(副光束)の3本の光束に分割され、ホログラム面510を透過する。
ホログラム面510を透過した3本の光束は、集光レンズ511により光ディスク501上に主スポットおよびその両側に位置する副スポットとして集光される。この集光レンズ511は、アクチュエータ512によりトラッキング動作のためにX方向に移動可能かつフォーカス動作のためにZ方向に移動可能に支持されている。
光ディスク501からの3本の帰還光束(反射光束)は、ホログラム面510によりほぼX方向およびZ方向を含む面内で回折され、光検出器507により検出される。ホログラム面510は、図24に示すように、非対称なパターンを有し、光ディスク501からの3本の帰還光束にそれぞれ非点収差を与える。
なお、従来技術として、下記の特許文献がある。
特開平7−57295号公報
特開平5−120705号公報 上記特許文献1は、 回折手段として用いるホログラム素子(321,322)が、回折される光ビームを所定の角度に回転させることにより、回折角が変わる光ビームがフォトダイオードの所定方向で動く。そして、ホログラム素子を通過するビームの波長変化により光スポットの形成される位置が変わる場合にも、回折される光ビームによる光スポットを受容できる形状のフォトダイオード(A1,A2,B1,B2)を用いる。周囲温度の変化にも拘らず、オフセットが入っていない焦点エラー及びトラッキングエラーを検出しうる光記録媒体から情報を読み出す光ヘッドを提供するというものである。
また、上記特許文献2は、被照射面からの反射光を集束させる直線状のフリンジパターンを有する第1及び第2の焦点距離を持った第1及び第2のフレネルゾーンプレートを交互に一体的に形成した光学手段により、被照射面からの反射光を非点光線束にし、集束形状の変化を光検出器により検出し、照射光の焦点誤差を検出する。作製時間が短く、容易であり、しかも廉価に作製可能な光ヘッドの誤差検出装置を提供するというものである。
ホログラム光学素子508を用いた図23の光ピックアップ装置においても、図21および図22を用いて説明した動作を同様に実現することができる。この場合、光検出器507は、図21の光検出器309と同様に、4分割光検出部160および2つの2分割光検出部161,162を有する。
このように、ホログラム光学素子508を用いると、半導体レーザ素子506および光検出器507をチップの状態で用いて光学系をユニット化することができる。それにより、光ピックアップ装置を小型化することが可能となる。
しかしながら、半導体レーザ素子506では、周囲温度に依存して発振波長の変動が生じる。この発振波長の変動によりホログラム面510での帰還光束の回折角度が変化する。
図25は図23の光ピックアップ装置における半導体レーザ素子506の発振波長の変動による光検出器507上での集光スポットの移動を示す模式的平面図である。
調整時には、図25(b)に示すように、主光束の集光スポットSは4分割光検出部160の中心部に位置する。周囲温度が低くなって半導体レーザ素子506の発振波長が短くなると、図25(a)に示すように、4分割光検出部160上の集光スポットSが回折方向と逆の方向(−X方向)に移動する。逆に、周囲温度が高くなって半導体レーザ素子506の発振波長が長くなると、図25(c)に示すように、4分割光検出部160上の集光スポットSが回折方向と同じ方向(+X方向)に移動する。その結果、焦点誤差信号FESのレベルが低下し、フォーカス状態の検出精度が低下する。
本発明の目的は、光源の波長変動により帰還光束の回折角度が変化した場合でも光学記録媒体でのフォーカス状態を正確に検出することができる光ピックアップ装置およびそれを用いた光学記録媒体駆動装置を提供することである。
課題を解決するための手段および発明の効果
第1の発明に係る光ピックアップ装置は、光束を出射する光源と、前記光源から出射された光束に基づく帰還光束を回折する第1の回折素子と、前記第1の回折素子により回折された帰還光束を検出する第1の光検出器とを備え、前記第1の回折素子は、互いに交差する第1および第2の分割線で分割された4つの領域のうち一方の対角位置の2つの領域を第1および第2の領域として有し、他方の対角位置の2つの領域が第3の分割線でさらに等分割されることにより得られる第3、第4、第5および第6の領域を有し、前記第1の回折素子の前記第1および第2の領域は、それぞれにより回折された帰還光束に非点収差を与え、前記第1の光検出器は、前記第1の回折素子により回折された帰還光束の集光スポットが前記光源の波長変動により移動する方向にほぼ平行な第1の区分線と前記第1の区分線に直交する第2の区分線とで区分された4つの光検出部を有し、前記第1の回折素子の前記第1および第2の領域で回折された帰還光束は、前記第1の光検出器の前記第1および第2の区分線の交点を中心として前記第1の区分線上の互いに反対側の離れた位置にそれぞれ集光スポットを形成し、前記第1の回折素子の前記第3、第4、第5および第6の領域で回折された帰還光束は、前記第1の光検出器の4つの光検出部のそれぞれまたは前記第1の区分線上に集光スポットを形成する。
ここで、「4つの光検出部のそれぞれまたは第1の区分線上」とは、4つの光検出部内のほぼ中央、4つの光検出部内の第1の区分線付近および第1の区分線上を含む。
光源の波長変動により帰還光束の回折角度が変化すると、第1の光検出器上で集光スポットが第1の区分線にほぼ平行に移動するが、第1の回折素子の第1および第2の領域からの帰還光束による集光スポットは、第1および第2の区分線の交点から互いに離れた第1の区分線上に形成されるので、第1の区分線に沿って移動しても第2の区分線を越えない。
そのため、集光スポットの移動による各光検出部の出力信号の変化が防止される。したがって、光源の波長変動時にも光学記録媒体でのフォーカス状態を正確に検出することができる。また、合焦点時における4つの光検出部の出力が均等になるので、調整が容易である。
第1の回折素子の第3、第4、第5および第6の領域は、第1の光検出器の4つの光検出部の出力の演算により光学記録媒体上のフォーカス状態の検出が可能となるようにフォーカス状態に対応した空間変動をそれぞれ各光束に与えてもよい。
この場合、第1の回折素子の第1および第2の領域で回折された帰還光束にフォーカス状態に対応した空間変動が与えられて第1の光検出器の第1の区分線の両側の光検出部で受光され、かつ第3、第4、第5および第6の領域で回折された帰還光束にフォーカス状態に対応した空間変動が与えられて第1の光検出器の4つの光検出部でそれぞれ受光される。
それにより、第1の光検出器の一方の対角位置の2つの光検出部の出力信号と他方の対角位置の2つの光検出部の出力信号とを比較することにより、光学記録媒体でのフォーカス状態を検出することができる。
第1の回折素子の第3、第4、第5および第6の領域で回折された帰還光束は第1の光検出器の4つの光検出部のそれぞれのほぼ中央にそれぞれ集光スポットを形成するものであってもよい。
光源の波長変動により帰還光束の回折角度が変化すると、第1の光検出器上で集光スポットが第1の区分線にほぼ平行に移動するが、第1の回折素子の第3、第4、第5および第6の領域からの帰還光束による集光スポットは、移動前に第1の光検出器の4つの光検出部のそれぞれのほぼ中央に形成されるので、第1の区分線にほぼ平行に移動しても第2の区分線を越えない。
そのため、集光スポットの移動による各光検出部の出力信号の変化がさらに防止される。したがって、光源の波長変動時にも光学記録媒体でのフォーカス状態をより正確に検出することができる。また、合焦点時における4つの光検出部の出力が均等になるので、調整が容易である。
また、フォーカス状態に対応した空間変動は、非点収差であってもよい。この場合には、光学記録媒体においてのフォーカス状態が合焦点状態から外れると、第1の光検出器上における集光スポットの形状が偏平に変化し、第1の光検出器の各光検出部の出力信号が変化する。したがって、第1の光検出器の一方の対角位置の2つの光検出部の出力信号の合計と他方の対角位置の2つの光検出部の出力信号の合計とを比較することにより、光学記録媒体におけるフォーカス状態を検出することができる。
第1の回折素子の第1、第2、第3、第4、第5および第6の領域は当該第1の回折素子の第1、第2および第3の分割線の交点を共通の原点として形成され、第1の回折素子の第1および第2の領域は、第1の光検出器の第1および第2の区分線の交点から互いに離れた第1の区分線上の2点を基準にそれぞれ設定された格子パターンを有し、第1の回折素子の第3、第4、第5および第6の領域は、第1および第2の領域で回折された帰還光束が形成する集光スポットが第1の光検出器の4つの光検出部のそれぞれのほぼ中央を基準にそれぞれ設定された格子パターンを有してもよい。
特に、第1の回折素子の第1および第2の領域は第1の回折素子により回折された帰還光束の集光スポットが光源の波長変動により移動する方向にほぼ垂直な方向に沿って配置されてもよい。
光源と第1の回折素子との光路中に設けられ、光源から出射された光束を主光束と第1および第2の副光束とに分割する第2の回折素子と、第1の光検出器の第1の区分線にほぼ平行な区分線により2分割された2つの光検出部を有する第2の光検出器と、第1の光検出器の第1の区分線にほぼ平行な区分線により2分割された2つの光検出部を有する第3の光検出器とをさらに備え、第1の回折素子は、主光束に基づく光学記録媒体からの第1の帰還光束を回折して第1の光検出器に導き、第1および第2の副光束に基づく光学記録媒体からの第2および第3の帰還光束を回折してそれぞれ第2および第3の光検出器に導き、第1の回折素子の第1および第2の領域で回折された第1の帰還光束は、第1の光検出器の第1および第2の区分線の交点を中心として第1の区分線上の互いに反対側の離れた位置にそれぞれ集光スポットを形成し、第1の回折素子の第3、第4、第5および第6の領域で回折された第1の帰還光束は、第1の光検出器の4つの光検出部のそれぞれのほぼ中央に集光スポットを形成し、第1の回折素子の第1および第2の領域で回折された第2の帰還光束は、第2の光検出器の区分線上に集光スポットを形成し、第1の回折素子の第3、第4、第5および第6の領域で回折された第2の帰還光束は、第2の光検出器の2つの光検出部内に集光スポットを形成し、第1の回折素子の第1および第2の領域で回折された第3の帰還光束は、第3の光検出器の区分線上に集光スポットを形成し、第1の回折素子の第3、第4、第5および第6の領域で回折された第3の帰還光束は、第3の光検出器の2つの光検出部内に集光スポットを形成してもよい。
この場合、第1の回折素子の第1および第2の領域で回折された第1の帰還光束による集光スポットが、第1の光検出器の第1および第2の区分線の交点を中心として第1の区分線上の互いに反対側の離れた位置にそれぞれ形成され、第1の回折素子の第3、第4、第5および第6の領域で回折された第1の帰還光束による集光スポットが、第1の光検出器の4つの光検出部のそれぞれのほぼ中央に形成される。また、第1の回折素子の第1および第2の領域で回折された第2および第3の帰還光束による集光スポットが、それぞれ第2および第3の光検出器の区分線上に形成され、第1の回折素子の第3、第4、第5および第6の領域で回折された第2および第3の帰還光束による集光スポットが、それぞれ第2および第3の光検出器の2つの光検出部内に形成される。
光源の波長変動により第1の帰還光束の回折角度が変化すると、第1の光検出器上で第1の帰還光束による集光スポットがそれぞれ第1の区分線とほぼ平行に移動するが、第1の回折素子の第1および第2の領域からの第1の帰還光束による集光スポットは、移動前に第1および第2の区分線の交点から互いに離れた第1の区分線上に形成されるので、第1の区分線に沿って移動しても第2の区分線を越えない。第1の回折素子の第3、第4、第5および第6の領域からの第1の帰還光束による集光スポットは、移動前に集光スポットが4つの光検出部のそれぞれのほぼ中央に形成されるので、第1の区分線にほぼ平行に移動しても第2の区分線を越えない。
また、第1の回折素子の第1および第2の領域からの第2の帰還光束による集光スポットは、第2の光検出器の区分線に沿って移動し、第1の回折素子の第3、第4、第5および第6の領域からの第2の帰還光束による集光スポットは、第2の光検出器の2つの光検出部内で区分線にほぼ平行に移動する。
さらに、第1の回折素子の第1および第2の領域からの第3の帰還光束による集光スポットは、第3の光検出器の区分線に沿って移動し、第1の回折素子の第3、第4、第5および第6の領域からの第3の帰還光束による集光スポットは、第3の光検出器の2つの光検出部内で区分線にほぼ平行に移動する。
そのため、集光スポットの移動による各光検出部の出力信号の変化が防止される。したがって、光源の波長変動時にも光学記録媒体でのフォーカス状態およびトラッキング状態を正確に検出することができる。
一方、第1の回折素子の第3、第4、第5および第6の領域で回折された帰還光束は、第1の光検出器の第2の区分線を中心として互いに反対側に離間した第1の区分線上または第1の区分線付近の4つの光検出部のそれぞれに集光スポットを形成するものであってもよい。
光源の波長変動により帰還光束の回折角度が変化すると、第1の光検出器上で集光スポットが第1の区分線にほぼ平行に移動するが、第1の回折素子の第3、第4、第5および第6の領域からの帰還光束による集光スポットは、移動前に第1および第2の区分線の交点から互いに離れた第1の区分線上または第1の区分線付近に形成されるので、第1の区分線にほぼ平行に移動しても第2の区分線を越えない。
そのため、集光スポットの移動による各光検出部の出力信号の変化がさらに防止される。したがって、光源の波長変動時にも光学記録媒体でのフォーカス状態をより正確に検出することができる。また、合焦点時における4つの光検出部の出力が均等になるので、調整が容易である。
第1の回折素子の前記第3、第4、第5および第6の領域において、前記フォーカス状態に対応した空間変動は、フーコー法に基づく前記第1の光検出器の4つの光検出部上での集光スポットの変化であってもよい。
この場合には、光学記録媒体においてフォーカス状態が合焦点状態から外れると、第1の光検出器上における第1の回折素子の第1および第2の領域からの帰還光束による集光スポットの形状が扁平に変化し、第1の光検出器の各光検出部の出力信号が変化する。また、第1の光検出器上における第1の回折素子の第3、第4、第5および第6の領域からの帰還光束における集光スポットの形状が、フーコー法に基づき変化し、第1の光検出器の各光検出部の出力信号が変化する。したがって、第1の光検出器の一方の対角位置の2つの光検出部の出力信号の合計と他方の対角位置の2つの光検出部の出力信号の合計とを比較することにより、光学記録媒体におけるフォーカス状態を検出することができる。
第1の回折素子の第1、第2、第3、第4、第5および第6の領域は当該第1の回折素子の第1、第2および第3の分割線の交点を共通の原点として形成され、第1の回折素子の第1および第2の領域は、第1の光検出器の第1および第2の区分線の交点から互いに離れた第1の区分線上の2点を基準にそれぞれ設定された格子パターンを有し、第1の回折素子の第3、第4、第5および第6の領域は、第1および第2の領域で回折された帰還光束が形成する集光スポットが第1の光検出器の第2の区分線を中心として互いに反対側に離間した第1の区分線上または第1の区分線付近の4つの光検出部にそれぞれ設定された格子パターンを有してもよい。
特に、第1の回折素子の第1および第2の領域は第1の回折素子により回折された帰還光束の集光スポットが光源の波長変動により移動する方向にほぼ垂直な方向に沿って配置されてもよい。
光源と第1の回折素子との光路中に設けられ、光源から出射された光束を主光束と第1および第2の副光束とに分割する第2の回折素子と、第1の光検出器の第1の区分線にほぼ平行な区分線により2分割された2つの光検出部を有する第2の光検出器と、第1の光検出器の第1の区分線にほぼ平行な区分線により2分割された2つの光検出部を有する第3の光検出器とをさらに備え、第1の回折素子は、主光束に基づく光学記録媒体からの第1の帰還光束を回折して第1の光検出器に導き、第1および第2の副光束に基づく光学記録媒体からの第2および第3の帰還光束を回折してそれぞれ第2および第3の光検出器に導き、第1の回折素子の第1および第2の領域で回折された第1の帰還光束は、第1の光検出器の第1および第2の区分線の交点を中心として第1の区分線上の互いに反対側の離れた位置にそれぞれ集光スポットを形成し、第1の回折素子の第3、第4、第5および第6の領域で回折された第1の帰還光束は、第1の光検出器の第2の区分線を中心として互いに離間した第1の区分線上または第1の区分線付近の4つの光検出部のそれぞれに集光スポットを形成し、第1の回折素子の第1および第2の領域で回折された第2の帰還光束は、第2の光検出器の区分線上に集光スポットを形成し、第1の回折素子の第3、第4、第5および第6の領域で回折された第2の帰還光束は、第2の光検出器の2つの光検出部内に集光スポットを形成し、第1の回折素子の第1および第2の領域で回折された第3の帰還光束は、第3の光検出器の区分線上に集光スポットを形成し、第1の回折素子の第3、第4、第5および第6の領域で回折された第3の帰還光束は、第3の光検出器の2つの光検出部内に集光スポットを形成してもよい。
この場合、第1の回折素子の第1および第2の領域で回折された第1の帰還光束による集光スポットが、第1の光検出器の第1および第2の区分線の交点を中心として第1の区分線上の互いに反対側の離れた位置にそれぞれ形成され、第1の回折素子の第3、第4、第5および第6の領域で回折された第1の帰還光束による集光スポットが、第1の光検出器の第1の区分線上または第1の区分線付近の4つの光検出部のそれぞれに形成される。また、第1の回折素子の第1および第2の領域で回折された第2および第3の帰還光束による集光スポットが、それぞれ第2および第3の光検出器の区分線上に形成され、第1の回折素子の第3、第4、第5および第6の領域で回折された第2および第3の帰還光束による集光スポットが、それぞれ第2および第3の光検出器の2つの光検出部内に形成される。
光源の波長変動により第1の帰還光束の回折角度が変化すると、第1の光検出器上で第1の帰還光束による集光スポットがそれぞれ第1の区分線とほぼ平行に移動する。この場合、第1の回折素子の第1および第2の領域からの第1の帰還光束による集光スポットは、移動前に第1および第2の区分線の交点から互いに離れた第1の区分線上に形成されるので、第1の区分線に沿って移動しても第2の区分線を越えない。第1の回折素子の第3、第4、第5および第6の領域からの第1の帰還光束による集光スポットは、移動前に前記第1および第2の領域で回折された帰還光束が形成する集光スポットが第1の光検出器の第1の区分線上または第1の区分線付近の4つの光検出部のそれぞれに形成されるので、第1の区分線にほぼ平行に移動しても第2の区分線を越えない。
また、第1の回折素子の第1および第2の領域からの第2の帰還光束による集光スポットは、第2の光検出器の区分線に沿って移動し、第1の回折素子の第3、第4、第5および第6の領域からの第2の帰還光束による集光スポットは、第2の光検出器の2つの光検出部内で区分線にほぼ平行に移動する。
さらに、第1の回折素子の第1および第2の領域からの第3の帰還光束による集光スポットは、第3の光検出器の区分線に沿って移動し、第1の回折素子の第3、第4、第5および第6の領域からの第3の帰還光束による集光スポットは、第3の光検出器の2つの光検出部内で区分線にほぼ平行に移動する。
そのため、集光スポットの移動による各光検出部の出力信号の変化が防止される。したがって、光源の波長変動時にも光学記録媒体でのフォーカス状態およびトラッキング状態を正確に検出することができるこの場合、第1の回折素子の第1および第2の領域に入射する帰還光束の面積が第3、第4、第5および第6の領域に入射する帰還光束の面積よりも大きくなる。それにより、第1の光検出器の第1の区分線上に形成される集光スポットの光強度が第1の光検出器の4つの光検出部のそれぞれに形成される集光スポットの光強度よりも高くなる。
したがって、光源の波長変動により第1の光検出器上での集光スポットが第1の区分線に沿って移動した場合に、第1の光検出器の各光検出部の出力信号の変化が小さくなる。この結果、光源の波長変動時にも光学記録媒体でのフォーカス状態をさらに正確に検出することができる。
非点収差は、第1の光検出器の第1および第2の区分線に対してほぼ45度の方向に与えられてもよい。この場合、光学記録媒体でのフォーカス状態が合焦点状態から外れると、第1の光検出器上での集光スポットの形状が第1および第2の区分線に対してほぼ45度の角度をなす長軸を有する楕円形状となる。
第1の回折素子の第1および第2の分割線は第1の光検出器の第1および第2の区分線に対してほぼ45度の角度をなし、第1の回折素子の第3の分割線は第1の光検出器の第1の区分線にほぼ平行であってもよい。
光源は楕円形状の遠視野像を有する光束を出射し、帰還光束は第1の回折素子に楕円形状の光スポットを形成し、楕円形状の光スポットの短軸が第1の回折素子の第3の分割線にほぼ平行に延びかつ長軸が第1の回折素子の第1および第2の領域に延びるように光源と第1の回折素子との位置関係が設定されてもよい。
第2の発明に係る光学記録媒体駆動装置は、光学記録媒体を回転させる回転駆動部と、光学記録媒体に光束を照射する第1の発明に係る光ピックアップ装置と、光ピックアップ装置を光学記録媒体の半径方向に移動させるピックアップ駆動部と、光ピックアップ装置の光検出器からの出力信号を処理する信号処理部とを備えたものである。
本発明に係る光学記録媒体駆動装置においては、第1の発明に係る光ピックアップ装置を用いているので、光源の波長変動時にも光学記録媒体でのフォーカス状態を正確に検出することができる。
本発明に係るホログラム光学素子を光ピックアップ装置において回折素子として用いた場合、集光スポットの移動による各光検出部の出力信号の変化が防止される。したがって、光源の波長変動時にも光学記録媒体でのフォーカス状態を正確に検出することができる。
(1)第1の実施の形態
図1は本発明の第1の実施の形態における光ピックアップ装置の概略図である。図1の光ピックアップ装置100は、非点収差法によるフォーカスサーボおよび差動プッシュプル法によるトラッキングサーボを行う。
図1において、CD−R等の反射型光ディスク1の半径方向(ラジアル方向)をX方向とし、光ディスク1のトラック方向をY方向とし、光ディスク1のディスク面に垂直な方向をZ方向とする。
光ピックアップ装置100は、投受光ユニット10および集光レンズ5を備える。投受光ユニット10は、半導体レーザ素子2、透過型の3分割用回折格子3、透過型ホログラム光学素子および光検出器6からなる。
基台7上にブロック8が設けられ、ブロック8の側面にヒートシンク9が取り付けられている。半導体レーザ素子2はヒートシンク9の表面端に取り付けられている。3分割用回折格子3は光学ガラスまたは光学樹脂等からなり、ホルダ71内にスペーサ72を介して配設されている。また、透過型ホログラム光学素子4は、ホルダ71の上面の開口部に配置されている。
半導体レーザ素子2はレーザ光(光束)をZ方向に出射する。3分割用回折格子3は、半導体レーザ素子2から出射された光束をほぼY方向およびZ方向を含む面内で0次回折光(主光束)、+1次回折光束(副光束)および−1次回折光束(副光束)からなる3本の光束に分割し、透過型ホログラム光学素子4を透過させる。なお、図中、上記3本の光束は1本の光束として表される。
集光レンズ5は、アクチュエータ73により、トラッキングサーボのために光ディスク1の半径方向(X方向)に移動可能に支持され、かつフォーカスサーボのために上下方向(Z方向)に移動可能に支持されている。この集光レンズ5は、透過型ホログラム光学素子4を0次で回折透過した主光束および2本の副光束を光ディスク1に上にそれぞれ主スポットM0およびその両側に位置する副スポットS1,S2として集光させる。
透過型ホログラム光学素子4は、6分割ホログラム面40を有し、光ディスク1からの3本の帰還光束(反射光束)をそれぞれ6分割するとともに、ほぼX方向およびZ方向を含む面内で一次回折させて光検出器6に入射させる。このとき、透過型ホログラム光学素子4は、光ディスク1からの3本の帰還光束に非点収差をそれぞれ与える。
本実施の形態では、光ディスク1が光学記録媒体に相当し、半導体レーザ素子2が光源に相当し、透過型ホログラム光学素子4が第1の回折素子に相当し、3分割用回折格子3が第2の回折素子に相当する。また、4分割光検出部60が第1の光検出器に相当し、2分割光検出部61が第2の光検出器に相当し、2分割光検出部62が第3の光検出器に相当する。
図2は第1の実施の形態に用いられる透過型ホログラム光学素子4および光検出器6の模式的平面図である。
透過型ホログラム光学素子4の6分割ホログラム面40は、仮想の分割線4L,4M,4Nにより6つの領域Ha,Hb,Hc,Hd,He,Hfに分割されている。分割線4L,4Mは互いに直交し、光ディスク1の半径方向(X方向)に対してほぼ45度の角度をなしている。また、分割線4Nは光ディスク1の半径方向(X方向)に平行となっている。それにより、対向する2つの領域Ha,Hdは等面積を有する。また、対向する4つの領域Hb,Hc,He,Hfは等面積を有する。
光検出器6は、非点収差法を用いたフォーカスサーボを行うために中心部に設けられた4分割光検出部60と、差動プッシュプル法によるトラッキングサーボを行うために4分割光検出部60の両側に設けられた2分割光検出部61,62とを含む。
4分割光検出部60は、互いに直交する区分線LX,LYで等面積の4つの光検出部A,B,C,Dに分割されている。区分線LXは光ディスク1の半径方向(X方向)にほぼ平行に配置され、区分線LYは光ディスク1のトラック方向(Y方向)にほぼ平行に配置されている。
2分割光検出部61は、区分線LEで等面積の2つの光検出部E1,E2に分割されている。区分線LEは光ディスク1の半径方向(X方向)にほぼ平行に配置されている。
2分割光検出部62は、区分線LFで等面積の2つの光検出部F1,F2に分割されている。区分線LFは、光ディスク1の半径方向(X方向)にほぼ平行に配置されている。
図3および図4は第1の実施の形態における透過型ホログラム光学素子4の6分割ホログラム面40のホログラムパターンの設計方法を示す模式図である。ここでは、透過型ホログラム光学素子4に入射した光束が分割線4Lを対称軸として反転した形状で、光検出器6上にスポットを形成する非点収差の場合について示す。透過型ホログラム光学素子4の2つの領域Ha,Hdのホログラムパターンは、図3(a)および図4(d)にそれぞれ示すように、4分割光検出部60の区分線LX上の点C1,C4を基準としてそれぞれ設計されている。点C1,C4は中心点C0から所定の距離だけ離れた位置にある。
領域Haの設計については、図3(a)に示すように、4分割光検出部60の区分線LX上の点C1を中心とする集光スポットSAを形成するホログラムパターンHAのうち4分割光検出部60上の集光スポットSaに対応する領域Haのみを作成することにより行われる。領域Hdの設計については、図4(d)に示すように、4分割光検出部60の区分線LX上の点C4を中心とする集光スポットSDを形成するホログラムパターンHDのうち4分割光検出部60上の集光スポットSdに対応する部分のみを作成することにより行われる。
また、透過型ホログラム光学素子4の4つの領域Hb,Hc,He,Hfのホログラムパターンは、図3(b),(c)および図4(e),(f)にそれぞれ示すように、4分割光検出部60の光検出部A,D,C,Bのほぼ中心の点C2,C3,C5,C6を基準としてそれぞれ設計されている。
領域Hbの設計については、図3(b)に示すように、光検出部A上で点C2を中心とする集光スポットSBを形成するホログラムパターンHBのうち光検出部B上の集光スポットSbに対応する部分のみを作成することにより行われる。
領域Hcの設計については、図3(c)に示すように、光検出部D上で点C3を中心とする集光スポットSCを形成するホログラムパターンHCのうち光検出部C上の集光スポットScに対応する部分のみを作成することにより行われる。
領域Heの設計については、図4(e)に示すように、光検出部C上で点C5を中心とする集光スポットSEを形成するホログラムパターンHEのうち光検出部D上の集光スポットSeに対応する部分のみを作成することにより行われる。
領域Hfの設計については、図4(f)に示すように、光検出部B上で点C6を中心とする集光スポットSFを形成するホログラムパターンHFのうち光検出部A上の集光スポットSfに対応する部分のみを作成することにより行われる。
6つの領域Ha,Hb,Hc,Hd,He,Hfのホログラムパターンの作成上の原点は、共通に分割線4L,4M,4Nの交点(円の中心)である。
図2に示すように、6分割ホログラム面40の領域Ha,Hdで回折された主光束は、4分割光検出部60の区分線LX上の点C1,C4を基準として互いに反対の位置にそれぞれ集光スポットSa,Sdとして集光される。一方、6分割ホログラム面40の領域Hb,Hc,He,Hfで回折された主光束は、4分割光検出部60の光検出部A,D,C,Bのほぼ中央にそれぞれ集光スポットSb,Sc,Se,Sfとして集光される。
6分割ホログラム面40の領域Ha,Hdで回折された一方の副光束は、2分割光検出部61の区分線LE上に集光スポットQa,Qdとしてそれぞれ集光される。6分割ホログラム面40の領域Hb,Hcで回折された一方の副光束は、光検出部E2上に集光スポットQb,Qcとして集光され、領域He,Hfで回折された一方の副光束は、光検出部E1上に集光スポットQe,Qfとして集光される。
6分割ホログラム面40の領域Ha,Hdで回折された他方の副光束は、2分割光検出部62の区分線LF上に集光スポットRa,Rdとしてそれぞれ集光される。6分割ホログラム面40の領域Hb,Hcで回折された一方の副光束は、光検出部F2上に集光スポットRb,Rcとして集光され、領域He,Hfで回折された一方の副光束は、光検出部F1上に集光スポットRe,Rfとして集光される。
このように、集光スポットが6分割され、X方向に沿って配置された2つの集光スポットSa,Sdが互いに逆方向にずれた位置に配置される。なお、点C1,C4は、半導体レーザ素子2の発振波長の変動により集光スポットSa,Sdが区分線LYを越えないように中心点C0から離れた位置に設定される。
図5は第1の実施の形態における光検出器上での主光束および副光束の集光状態を示す模式的平面図である。
光ディスク1が集光レンズ5から離れてフォーカスエラー状態になった場合には、図5(a)に示すように、集光スポットSaが区分線LX上の点C1から光検出部B内に延びた形状となり、集光スポットSdが区分線LX上の点C4から光検出部D内に延びた形状となり、集光スポットSb,Sc,Se,Sfがそれぞれ光検出部A,D,C,B内で延びた形状となる。
また、光ディスク1で主光束がフォーカスした場合(合焦点時)には、図5(b)に示すように、集光スポットSaが区分線LX上の点C1を中心として光検出部A,Bにまたがった1/4円となり、集光スポットSdが区分線LX上の点C4を中心として光検出部C,Dにまたがった1/4円となり、集光スポットSb,Sc,Se,Sfが光検出部A,D,C,B内で1/8円となる。
さらに、光ディスク1が集光レンズ5に接近してフォーカスエラー状態になった場合には、図5(c)に示すように、集光スポットSaが区分線LX上の点C1から光検出部A内に延びた形状となり、集光スポットSdが区分線LX上の点C2から光検出部C内に延びた形状となり、集光スポットSb,Sc,Se,Sfが光検出部A,D,C,B内で延びた形状となる。
このように、集光スポットSb,Sc,Se,Sfは、図16に示した従来のホログラム面510を用いた場合と全く同様に変化し、集光スポットSaは、見かけ上、光検出部A,B間を移動するように変化し、光スポットSdは、見かけ上、光検出部C,D間を移動するように変化する。
したがって、4分割光検出部60の各光検出部A,B,C,Dの出力信号PA,PB,PC,PDを用いて次式により焦点誤差信号FESを得ることができる。
FES=(PA+PC)−(PB+PD) …(1)
上式の焦点誤差信号FESは、光ディスク1が近すぎる場合に正となり、良好なフォーカス状態の場合に0となり、光ディスク1が遠すぎる場合に負となる。このように、焦点誤差信号FESの符号に基づいて光ディスク1の合焦点位置からのずれの方向を判定することができる。
焦点誤差信号FESはアクチュエータ73にフィードバックされ、光ディスク1に対して垂直な方向に集光レンズ5を移動させることにより、光ディスク1上での集光状態を修正することができる。
この場合、6分割ホログラム面40の領域Ha,Hdからの主光束による集光スポットSa,Sdが焦点誤差信号FESに大きく寄与する。
また、光検出部A,B,C,Dの出力信号PA,PB,PC,PDおよび光検出部E1,E2,F1,F2の出力信号PE1,PE2,PF1,PF2を用いて差動プッシュプル法によるトラッキング誤差信号TESを次式により得ることができる。
TES=(PA+PD)−(PB+PC)
−k{(PE1+PF1)−(PE2+PF2)} …(3)
ここで、kは係数であり、初期的にトラッキング誤差オフセットが0となるように設定される。このように、差動プッシュプル法によれば、トラッキング誤差オフセットを補償することができる。
図6(a)は周囲温度が高くなって発振波長が長くなった場合の集光スポットを示し、図6(b)は調整時の集光スポットを示し、図6(c)は周囲温度が低くなって発振波長が短くなった場合の集光スポットを示す。
調整時には、図6(b)に示すように、集光スポットSa,Sdはそれぞれ光検出部A,B間の中央部および光検出部C,D間の中央部に位置し、集光スポットSb,Sc,Se,Sfはそれぞれ光検出部A,D,C,Bの中央部に位置する。
周囲温度に依存して半導体レーザ素子2の発振波長が変動すると、透過型ホログラム光学素子4での帰還光の回折角度が変化する。それにより、4分割光検出部60上で集光スポットSa,Sb,Sc,Sd,Se,Sfは区分線LXに平
行にX方向に移動する。
周囲温度が高くなって半導体レーザ素子2の発振波長が長くなると、図6(a)に示すように、集光スポットSa,Sb,Sc,Sd,Se,Sfは4分割光
検出部60の左辺に近づくように移動する。
また、周囲温度が低くなって半導体レーザ素子2の発振波長が短くなると、図6(c)に示すように、集光スポットSa,Sb,Sc,Sd,Se,Sfは4分割光検出部60の右辺に近づくように移動する。
このとき、集光スポットSaは区分線LXに沿って光検出部A,Bの範囲内で移動し、集光スポットSdは区分線LXに沿って光検出部C,Dの範囲内で移動するので、出力信号PA,PB,PC,PDに影響を与えない。また、集光スポットSb,Sc,Se,Sfはそれぞれ光検出部A,D,C,B内で移動するので、出力信号PA,PD,PC,PBに影響を与えない。
(2)第2の実施の形態
次に、本発明の第2の実施の形態における光ピックアップ装置について説明する。第2の実施の形態の光ピックアップ装置の全体の構成は図1と同様である。
図7は第2の実施の形態の光ピックアップ装置に用いられる透過型ホログラム光学素子4および光検出器6の平面図である。光検出器6の構造は図2の光検出器6と同じである。
図7の透過型ホログラム光学素子4が図2の透過型ホログラム光学素子4と異なる点は、透過型ホログラム光学素子4の2つの領域Ha,Hdのみにそれぞれ同じ方向に非点収差が発生するようにホログラムパターンを作成し、残りの4つの領域Hb2,Hc2,He2,Hf2には非点収差を発生させずに光検出器6上に焦点を結ぶようなホログラムパターンを作成した6分割ホログラム面41を用いることである。
図8および図9は第2の実施の形態における透過型ホログラム素子4の6分割ホログラム面41の設計方法を示す図である。ここでは、透過型ホログラム光学素子4に入射した光束が分割線4Lを対称軸として反転した形状で光検出器6上にスポットを形成する非点収差の場合について説明する。透過型ホログラム光学素子4の2つの領域Ha,Hdのホログラムパターンの設計方法は、図8(a)および図9(d)に示すように、図3(a)および図4(d)の2つの領域Ha,Hdの設計方法と同じである。
また、透過型ホログラム光学素子4の4つの領域Hb2,Hc2,He2,Hf2のホログラムパターンは、図8(b),(c)および図9(e),(f)にそれぞれ示すように、4分割光検出部60の光検出部A,D,C,Bにおいて図8(a)の区分線LX上の点C1またはC4に近接したC2,C3,C5,C6を基準としてそれぞれ設計されている。
領域Hb2の設計については、図8(b)に示すように、光検出部A上で点C2に点として焦点を結ぶホログラムパターンHB2のうち1/8の部分のみを作成することにより行われる。
領域Hc2の設計については、図8(c)に示すように、光検出部D上で点C3に点として焦点を結ぶホログラムパターンHC2のうち1/8の部分のみを作成することにより行われる。
領域He2の設計については、図9(e)に示すように、光検出部C上で点C5に点として焦点を結ぶホログラムパターンHE2のうち1/8の部分のみを作成することにより行われる。
領域Hf2の設計については、図9(f)に示すように、光検出部B上で点C6に点として焦点を結ぶホログラムパターンHF2のうち1/8の部分のみを作成することにより行われる。
6つの領域Ha,Hb2,Hc2,Hd,He2,Hf2のホログラムパターンの作成上の原点は、共通に分割線4L,4M,4Nの交点(円の中心)である。
図7に示すように、6分割ホログラム面41の領域Ha,Hdで回折された主光束は、4分割光検出部60の区分線LX上の点C1,C4を基準として互いに反対の位置にそれぞれ集光スポットSa,Sdとして集光される。一方、6分割ホログラム面41の領域Hb2,Hc2,He2,Hf2で回折された主光束は、4分割光検出部60の区分線LX付近にそれぞれ集光スポットSb,Sc,Se,Sfとして集光される。
6分割ホログラム面41の領域Ha,Hdで回折された一方の副光束は、2分割光検出部61の区分線LE上に集光スポットQa,Qdとしてそれぞれ集光される。また、6分割ホログラム面41の領域Hb2,Hc2で回折された一方の副光束は、光検出部E2上に集光スポットQb,Qcとして集光され、領域He2,Hf2で回折された一方の副光束は、光検出部E1上に集光スポットQe,Qfとして集光される。
6分割ホログラム面41の領域Ha,Hdで回折された他方の副光束は、2分割光検出部62の区分線LF上に集光スポットRa,Rdとしてそれぞれ集光される。6分割ホログラム面41の領域Hb2,Hc2で回折された一方の副光束は、光検出部F2上に集光スポットRb,Rcとして集光され、領域He2,Hf2で回折された一方の副光束は、光検出部F1上に集光スポットRe,Rfとして集光される。
このように、集光スポットが6分割され、X方向に沿って配置された2つの集光スポットSa,Sdが互いに逆方向にずれた位置に配置される。なお、点C1,C4は、半導体レーザ素子2の発振波長の変動により集光スポットSa,Sdが区分線LYを越えないように中心点C0から離れた位置に形成される。
図10は第2の実施の形態における光検出器上での主光束および副光束の集光状態を示す模式的平面図である。
光ディスク1が集光レンズ5に接近してフォーカスエラー状態になった場合には、図10(c)に示すように、集光スポットSaが区分線LX上の点C1から光検出部A内に延びた形状となり、集光スポットSdが区分線LX上の点C4から光検出部C内に延びた形状となり、集光スポットSb,Sc,Se,Sfのそれぞれが拡大し、スポット形状は6分割ホログラム面41の領域Hb2,Hc2,He2,Hf2と相似形状となる。
また、光ディスク1で主光束がフォーカスした場合(合焦点時)には、図10(b)に示すように、集光スポットSaが区分線LX上の点C1を中心として光検出部A,Bにまたがった1/4円となり、集光スポットSdが区分線LX上の点C4を中心として光検出部C,Dにまたがった1/4円となり、集光スポットSb,Sc,Se,Sfが光検出部A,D,C,B内において点として焦点を結ぶ。
さらに、光ディスク1が集光レンズ5から離れてフォーカスエラー状態になった場合には、図10(a)に示すように、集光スポットSaが区分線LX上の点C1から光検出部B内に延びた形状となり、集光スポットSdが区分線LX上の点C4から光検出部D内に延びた形状となり、集光スポットSb,Sc,Se,Sfが拡大し、スポット形状は6分割ホログラム面41の領域Hb2,Hc2,He2,Hf2の形状と相似形状となる。この場合の集光スポットSb,Sc,Se,Sfは、それぞれ光ディスク1が集光レンズ5に接近してフォーカスエラー状態になった場合の図10(c)の集光スポットSb,Sc,Se,Sfと点対称に形成される。
このように集光スポットSb,Sc,Se,Sfが変形するのは、フーコー法の原理に基づいているためである。
本実施の形態では、第1の実施の形態における非点収差法および次に説明するフーコー法による焦点誤差検出を行う。図11はフーコー法の原理を説明するため模式図である。
図11(a)において、レンズ900により光束901が収束され、焦点902を結ぶ。ここで、図11(b)に示すように、光束901内の半分の領域に遮蔽板903を配置する。この場合、光束901の半分が遮蔽板903により遮蔽される。光束の一部が物体により遮蔽されることを「けられ」と呼ぶ。この「けられ」により、光束901のうち半分の光のみが焦点902を結ぶ。
焦点902に2分割光検出器905を配置する。ここで、図11(d)に示すように、2分割光検出器905の2分割光検出部910A,910B間の区分線911上に集光スポット920が形成されるように、2分割光検出器905を位置調整する。
2分割光検出器905が焦点902に位置する場合には、集光スポット910は、小さな点状となる。2分割光検出器905が焦点902よりもレンズ900に近い位置にある場合には、図11(e)に示すように、2分割光検出器905の光検出部910B上に半円形状の集光スポット920bが形成される。
2分割光検出器905が焦点902よりもレンズ900に対して遠い位置にある場合には、図11(c)に示すように、2分割光検出器905の光検出部910A上に半円形状の集光スポット920aが形成される。
このように、2分割光検出器905が焦点902に対してレンズ900から近い側に位置する場合と、2分割光検出器905が焦点902に対してレンズ900から遠い側に位置する場合とで、2分割光検出器905の光検出部910A,910B上に形成される集光スポット920a,920bが点対称になる。したがって、光検出部910A,910Bの出力信号fa,fbを用いて次式により焦点誤差信号FESを求めることができる。
FES=fa−fb …(4)
この焦点誤差信号FESの正負の符号により2分割光検出器905が焦点902よりレンズに近い側に位置するか遠い側に位置するかを検出することができる。
このように、光束の「けられ」による集光スポットの変化に基づいて焦点誤差を検出する方法をフーコー法またはナイフエッジ法と呼ぶ。
図12は本実施の形態において集光スポットSbがフーコー法に従った変形をする原理を説明した図である。
図12(b)の合焦状態においては、6分割ホログラム面41の領域Hb2からの光束が4分割光検出部60上の点C2に焦点を結ぶが、光ディスク1がそれより接近すると6分割ホログラム面41の領域Hb2からの光束の焦点が4分割光検出部60の面の後方になるので、図12(a)のように6分割ホログラム面41の領域Hb2の相似形状の集光スポットSbが点C2を頂点として4分割光検出部60上に形成される。
また、光ディスク1が合焦状態より遠くなると、6分割ホログラム面41の領域Hb2からの光束の焦点が4分割光検出部60よりも手前になる。焦点よりも遠い位置においては、点C2を基準として集光スポットの形状が反転するため、図12(c)のように6分割ホログラム面41の領域Hb2の相似形状の集光スポットSbが4分割光検出部60上で点C2について光ディスク1が近い場合の図12(a)の集光スポットSbと点対称になる位置に形成される。したがって、光ディスク1が遠い場合には、4分割光検出部60における光検出部Aの出力信号PAのレベルが低下し、光検出部Bの出力信号PBが上昇する。集光スポットSc,SeおよびSfの変形についても同様である。
本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に、式(1)による焦点誤差信号FESの符号に基づいて光ディスク1の合焦点位置からのずれの方向を判定し、光ディスク1上における集光状態を修正することができる。この場合、6分割ホログラム面41の領域Ha,Hdからの主光束による集光スポットSa,Sdだけでなく、6分割ホログラム面41上の領域Hb2,Hc2,He2,Hf2からの主光束による集光スポットSb,Sc,Se,Sfも焦点誤差信号FESに大きく寄与する。
このように、焦点がずれたときは、ほとんどの集光スポットの光量が焦点誤差信号FESに寄与するため、感度の高い焦点誤差の検出が可能となる。
また、本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に、式(3)によるトラッキング誤差信号TESをもとに、差動プッシュプル法により、トラッキング誤差オフセットを補償することができる。
ここで、点C2,C3,C5,C6を光検出器6の区分線LX上に設定すると、フーコー法による効果はより顕著になるが、区分線LX上は不感帯であり、合焦状態におけるトータルの光量が減るため再生信号HFSの振幅が小さくなるという欠点がある。そのため、区分線LXになるべく近い位置に点C2,C6または点C3,C5を設定している。
図13は半導体レーザ素子2の発振波長の変動による光検出器6上での集光スポットの移動を示す模式的平面図である。図13(a)は周囲温度が高くなって発振波長が長くなった場合の集光スポットを示し、図13(b)は調整時の集光スポットを示し、図13(c)は周囲温度が低くなって発振波長が短くなった場合の集光スポットを示す。
本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に、周囲温度に依存して半導体レーザ素子2の発振波長が変動した場合、集光スポットSaは区分線LXに沿って光検出部A,Bの範囲内で移動し、集光スポットSdは区分線LXに沿って光検出部C,Dの範囲内で移動するので、出力信号PA,PB,PC,PDに影響を与えない。また、集光スポットSb,Sc,Se,Sfはそれぞれ光検出部A,D,C,B内で移動するので、出力信号PA,PD,PC,PBに影響を与えない。
(3)第3の実施の形態
図1の半導体レーザ素子2から出射されるレーザ光の遠視野像(ビーム断面強度分布)スポットと6分割ホログラム面40または41との光学的位置関係を以下のように設定することにより、焦点誤差信号FESの精度を向上することができる。
図14は図1の光ピックアップ装置100における半導体レーザ素子2の上面図である。
図14に示すように、半導体レーザ素子2は、主としてクラッド層21、活性層22およびクラッド層23を含む。通常、半導体レーザ素子2の活性層22から出射されるレーザ光の垂直方向(活性層22に垂直な方向)の広がり角は水平方向(活性層22に平行な方向)の広がり角よりも大きい。したがって、レーザ光の遠視野像20は長軸が活性層22に垂直となる楕円形状になる。
本実施の形態の光ピックアップ装置100においては、半導体レーザ素子2の活性層22がY方向に垂直となるようにヒートシンク9の側面に取り付けられている。したがって、レーザ光の遠視野像20はY方向に平行な長軸およびX方向に平行な短軸を有する楕円形状となる。
図15は光ディスク1上の集光スポット、6分割ホログラム面40上の光スポットおよび光検出器上の集光スポットの関係を示す模式的平面図である。
図15(a)に示すように、光ディスク1にはランド部601およびグルーブ部602からなるプリグルーブ600が形成されている。光ディスク1のランド部601に主光束による主スポットM0が形成され、そのランド部601の両側のグルーブ部602に副光束による副スポットS1,S2が形成される。
図15(b)に示すように、6分割ホログラム面40に形成される帰還光束の光スポットSPは、領域Ha,Hdに延びる長軸および分割線4Nに沿って延びる短軸を有する楕円形状となる。これにより、領域Ha,Hdに入射する帰還光束の光量が領域Hb,Hc,He,Hfに入射する帰還光束の光量よりも大きくなる。
したがって、図15(c)に示すように、4分割光検出部60上に形成される集光スポットSa,Sdの光強度が集光スポットSb,Sc,Se,Sfの光強度よりも大きくなる。このように、焦点誤差信号FESに大きく寄与する集光スポットSa,Sdの光量が高くなるので、十分な焦点誤差信号FESのレベルを得ることができる。
主スポットM0がランド部601の中央から光ディスク1の半径方向にずれた場合には、6分割ホログラム面40上での光スポットSPが分割線4Nに沿って移動する。それにより、4分割光検出部60上での集光スポットSb,Scの合計の光量と集光スポットSe,Sfの合計の光量とに差が生じる。また、2分割光検出部61上での集光スポットQb,Qcの合計の光量と集光スポットQe,Qfの合計の光量とに差が生じ、2分割光検出部62上での集光スポットRb,Rcの合計の光量と集光スポットRe,Rfの合計の光量とに差が生じる。
したがって、上式(3)により差動プッシュプル法によるトラッキング誤差信号TESを得ることができる。
この場合、4分割光検出部60上の集光スポットSb,Sc,Se,Sf、2分割光検出部61上の集光スポットQb,Qc,Qe,Qfおよび2分割光検出部62上の集光スポットRb,Rc,Re,Rfはトラッキング誤差信号TESに大きく寄与する。
第1の実施の形態の6分割ホログラム面40によると、トラッキング誤差信号TESに寄与する集光スポットSb,Sc,Se,Sfが光検出部A,D,C,Bの中央部に形成される。また、集光スポットQb,Qcが光検出部E2内に形成され、集光スポットQe,Qfが光検出部E1内に形成され、集光スポットRb,Rcが光検出部F2内に形成され、集光スポットRe,Rfが光検出部F1内に形成される。したがって、トラッキング誤差信号TESが安定となる。その結果、高精度なトラッキングサーボが可能となる。第2の実施の形態における6分割ホログラム面41を用いても同様の結果が得られる。
図16は第1あるいは第2の実施の形態の光ピックアップ装置におけるホログラムユニット10の第1の配置例を示す概略図である。図17は第1あるいは第2の実施の形態の光ピックアップ装置におけるホログラムユニット10の第2の配置例を示す概略図である。
図16の例では、ホログラムユニット10から光ディスク1に対して垂直にレーザ光が出射され、集光レンズ5により光ディスク1の記録媒体面に集光される。図17の例では、ホログラムユニット10から光ディスク1と平行にレーザ光が出射され、反射ミラー75により光ディスク1に対して垂直に反射され、集光レンズ5により光ディスク1の記録媒体面上に集光される。図17の例では、光ピックアップ装置を薄型化することができる。
図18は上記実施の形態の光ピックアップ装置100を用いた光学記録媒体駆動装置200の構成を示すブロック図である。図18の光学記録媒体駆動装置200は光ディスク1から情報を読み取る光ディスクドライブ装置である。
光学記録媒体駆動装置200は、光ピックアップ装置100、モータ11、送りモータ12、回転制御系13、信号処理系14、ピックアップ制御系15、送りモータ制御系16およびドライブコントローラ17を含む。
モータ11は、光ディスク1を所定の速度で回転させる。回転制御系13は、モータ11の回転動作を制御する。送りモータ12は、光ピックアップ装置100を光ディスク1の半径方向に移動させる。送りモータ制御系16は、送りモータ12の動作を制御する。光ピックアップ装置100は、光ディスク1にレーザ光を照射するとともに光ディスク1からの帰還光束を受光する。ピックアップ制御系15は、光ピックアップ装置100の投受光動作を制御する。
信号処理系14は、光ピックアップ装置100の光検出器6からの出力信号を受け、再生信号、焦点誤差信号およびトラッキング誤差信号を算出し、再生信号をドライブコントローラ17に与え、焦点誤差信号およびトラッキング誤差信号をピックアップ制御系15に与える。ドライブコントローラ17は、ドライブインタフェース18を介して与えられる指令に従って回転制御系13、信号処理系14、ピックアップ制御系15および送りモータ制御系16を制御するとともに、ドライブインタフェース18を介して再生信号を出力する。
本実施の形態では、モータ11および回転制御系13が回転駆動部に相当し、送りモータ12および送りモータ制御系16がピックアップ駆動部に相当し、信号処理系14が信号処理部に相当する。
図18の光学記録媒体駆動装置200においては、上記実施の形態の光ピックアップ装置100が用いられているので、レーザ光の波長変動時にも正確な焦点誤差信号が得られる。それにより、フォーカスサーボが高精度に行われ、高品質の再生信号が得られる。
上記実施の形態では、第1の回折素子として透過型ホログラム光学素子4を用いているが、第1の回折素子として反射型のホログラム光学素子等の反射型回折素子を用いてもよい。
上記実施の形態においては、第2の回折素子として透過型の3分割用回折格子3を用いているが、本発明は、第2の回折素子として反射型の3分割用回折格子を用いた光ピックアップ装置にも同様に適用することができる。
また、図17に示したように、光源と光学記録媒体との間にミラー等の反射部材を介在させて光路を屈折させることもできる。
さらに、3分割用回折格子3と透過型ホログラム光学素子4とを一体にした光学素子を用いてもよい。また、トラッキングサーボの方法として上記の差動プッシュプル法以外の方法を用いてもよい。CD−ROM等の再生専用光ディスクにのみ用いるのであれば、3ビーム法を用いてもよい。図19は3ビーム法を用いる場合の光検出器の模式的平面図である。図19に示すように、光検出部63および64を有する光検出器6を用いる。この場合、光検出部EおよびFの出力をそれぞれPEおよびPFとすると、トラッキング誤差信号TESは以下に示す式として得られる。
TES=PE−PF …(5)
また、光検出器6の中央の4分割光検出器60のみを用いて、DPD法(Differential Phase Detection法)を採用することも可能である。この場合、光検出部A,B,CおよびDの出力をPA,PB,PCおよびPDとすると再生信号HFSおよび対角線差信号DDSとしてそれぞれ以下に示す式が得られる。
HFS=PA+PB+PC+PD …(6)
DDS=(PA+PC)−(PB+PD) …(7)
そして、再生信号HFSを基準として対角線差信号DDSの位相を検出すれば、トラッキング誤差信号TESが得られる。
なお、透過型ホログラム光学素子4の開口形状は、以上の実施の形態においては円形開口としたが、正方形の開口形状等、他の形状のものを用いてもよい。
本発明の第1あるいは第2の実施の形態における光ピックアップ装置の概略図である。
第1の実施の形態に用いられる透過型ホログラム光学素子および光検出器の模式的平面図である。
第1の実施の形態における6分割ホログラム面のホログラムパターンの設計方法を示す模式図である。
第1の実施の形態における6分割ホログラム面のホログラムパターンの設計方法を示す模式図である。
第1の実施の形態における光検出器上での集光状態を示す模式的平面図である。
半導体レーザ素子の発振波長の変動による光検出器上での集光スポットの移動を示す模式的平面図である。
第2の実施の形態に用いられる透過型ホログラム光学素子および光検出器の模式的平面図である。
第2の実施の形態における6分割ホログラム面のホログラムパターンの設計方法を示す模式図である。
第2の実施の形態における6分割ホログラム面のホログラムパターンの設計方法を示す模式図である。
第2の実施の形態における光検出器上での集光状態を示す模式的平面図である。
フーコー法の原理を説明するための模式図である。
第2の実施の形態において集光スポットがフーコー法に従った変形をする原理を説明した図である。
半導体レーザ素子の発振波長の変動による光検出器上での集光スポットの移動を示す模式的平面図である。
図1の光ピックアップ装置における半導体レーザ素子の上面図である。
光ディスク上での集光スポット、6分割ホログラム面での光スポットおよび光検出器上での集光スポットの関係を示す模式的平面図である。
図1の光ピックアップ装置におけるホログラムユニットの第1の配置例を示す図である。
図1の光ピックアップ装置におけるホログラムユニットの第2の配置例を示す図である。
図1の光ピックアップ装置を用いた光学記録媒体駆動装置の構成を示すブロック図である。
3ビーム法を用いる場合の光検出器の模式的平面図である。
記録可能型光ディスク用の従来の光ピックアップ装置の概略図である。
図20の光ピックアップ装置における光検出器上での集光状態を示す模式的平面図である。
プッシュプル法および差動プッシュプル法によるトラッキングサーボを説明するための図である。
ホログラム光学素子を用いた従来の光ピックアップ装置の概略図である。
図23の光ピックアップ装置におけるホログラム光学素子のホログラム面の平面図である。
図23の光ピックアップ装置における半導体レーザ素子の発振波長の変動による光検出器上での集光スポットの移動を示す模式的平面図である。
符号の説明
1 光ディスク
2 半導体レーザ素子
3 3分割用回折格子
4 透過型ホログラム光学素子
4L,4M,4N 分割線
5 集光レンズ
6 光検出器
40,41 6分割ホログラム面
60 4分割光検出部
61,62 2分割光検出部
Ha,Hb,Hc,Hd,He,Hf,Hb2,Hc2,He2,Hf2 領域 LX,LY,LE,LF 区分線