JP4273511B2 - 有撚紡績単糸、パイル布帛およびスライバー加撚法 - Google Patents

有撚紡績単糸、パイル布帛およびスライバー加撚法 Download PDF

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Description

本発明は、紡績糸、特にパイル糸に使用される紡績糸に関するものである。
織編布帛に使用される紡績糸は、短繊維に成る無撚状態のスライバーを加撚(下撚り)して短繊維間を結束して成る有撚紡績単糸を複数本合撚(上撚り)した紡績合撚糸として構成されており、手織りの緞帳や段通のように手織織機を使用する場合は別として、その合撚前の有撚紡績単糸をそのまま織編布帛に使用されることは稀である。
何故なら、短繊維に成る無撚状態のスライバーを加撚(下撚り)しただけの有撚紡績単糸は、その短繊維間の結束が弱く、自動織機や編み機を使用する織編工程ではヤーンガイドや綜絖、筬、ニードル等と擦れ合って毛羽立ち、短繊維が綻び出て糸切れを起こし易く、布帛の織成・編成が困難になるからである。
しかし、下撚りしただけの有撚紡績単糸は、短繊維間の結束が弱いが故に紡績合撚糸に比して嵩高で軟らかく、それ故に織編密度やパイル密度を緻密に設定し易く、特に、嵩高に開毛し易い点ではパイル布帛に好適な面もあり、手織りの緞帳や段通に使用される。
無撚状態のスライバーに極細糸条(ラップ糸)を捲き付けて短繊維間を結束した無撚結束紡績糸は、一種の紡績単糸であるが、極細糸条が捲き付けられていることからして織編工程で糸切れを起こし難く、短繊維間が加撚結束されていないことからして嵩高に開毛し易い等の利点からして、合撚糸としてではなく1本の紡績単糸の状態でパイル糸に好んで使用される(例えば、特許文献1、2、3参照)。
実公平06−16944号公報(実開平04−051814) 実公平03−36554号公報(実開昭63−143592) 実公平01−36949号公報(実開昭62−070189)
しかし、無撚結束紡績糸には欠点もある。即ち、無撚結束紡績糸は、無撚で嵩高に開毛し易いが故に、それに成るパイルは腰・圧縮弾性回復力が弱く、それによってはクッション性に富むパイル布帛は得られず、又、一般の織編布帛に使用するときは、短繊維間を結束している極細糸条が極細であるが故に摩耗・破断し易く、その破断によって結束を解かれた短繊維が解れ出し易く、耐摩耗性に富む織編布帛は得られない。
そこで本発明は、合撚糸としてではなく、無撚結束紡績糸と同様に1本の紡績単糸の状態で織編布帛やパイル布帛に使用することが出来、而も、紡績合撚糸と同様に耐摩耗性に優れた織編布帛やクッション性に富むパイル布帛を、手織りによらず自動織機や編み機を使用して効率的に得ることが出来る有撚紡績単糸を提供することを目的とする。
従来、スライバーを複数条撚り合わせた有撚紡績単糸は知られていない。それは、従来技術において、有撚紡績単糸は、それを複数本撚り合わせて紡績合撚糸とする資材としてつくられ、その合撚前の有撚紡績単糸をそのまま織編布帛に使用することは殆どなく、又、スライバーを複数条撚り合わせても得られる有撚紡績単糸は、その複数条のスライバーに相当する太い1条のスライバーを加撚して得られる有撚紡績単糸と同じものとなるので複数条のスライバーを撚り合わせるべき理由はなく、特に、スライバーの加撚装置である精紡機がドラフトロール(フロントロール)からスピンドルへと1条のスライバーを送り出す構造になっている等の理由によるものと思われる。
しかし、スライバーを複数条撚り合わせるときは、その複数条のスライバーに相当する太い1条のスライバーを加撚するときよりも、強度的に安定した有撚紡績単糸が得られるとの知見を得、本発明を完成するに至った。
本発明に係るパイル布帛は、短繊維に成る無撚状態のスライバー11a・11bを複数条撚り合わせて成る有撚紡績単糸12によってパイル19が構成されており、その撚り合わされた複数条のスライバー11a・11bの間の境目14の続く下撚り方向と複数条の各スライバー11a・11bの短繊維の続く筋目15の方向とが並行になっていることを第1の特徴とする。
本発明に係るパイル布帛の第2の特徴は、上記第1の特徴に加えて、無撚状態のスライバー11a・11bを複数条撚り合わせて成る有撚紡績単糸12に解撚トルクが発生しておらず、その撚り合わされた複数条のスライバー11a・11bを撚りの状態が安定している点にある。
本発明に係るパイル布帛の第3の特徴は、上記第1と第2の何れかの特徴に加えて、パイル19を構成している有撚紡績単糸の数が複数本であり、それら複数本の有撚紡績単糸12a・12b・12c・12d………が引き揃えられた状態でパイル19を形成している点にある。
本発明に係るパイル布帛の第4の特徴は、上記第1と第2と第3の何れかの特徴に加えて、引き揃えられてパイル19を構成している複数本のパイル糸12a・12b・12c・12d………のそれぞれが形成するパイル片16a・16b・16c・16d………の根元が、扁平糸のように一列に並んでいる点にある。
本発明に係る有撚紡績単糸は、解撚トルクが発生せず、短繊維に成る無撚状態のスライバー11を加撚(下撚り)しただけの単糸であるが故に嵩高に開毛し易く、加撚(下撚り)されているが故に、手織りではなく自動織機や編み機による織編工程においても伸び難く、糸切れを起こさず、耐摩耗性に富む織編布帛を効率的に得ることが可能となり、それをパイル糸に使用してパイル19の腰が強く、有撚紡績単糸の解撚トルクが作用しないのでパイル19の立ち(起立性)がよく、クッション性に富むパイル布帛を得ることが可能となる。
本発明に係る有撚紡績単糸12を複数本引き揃えてパイル糸12a・12b・12c・12d………とするときは、それら複数本のパイル糸12a・12b・12c・12d………のそれぞれが形成するパイル片16a・16b・16c・16d………の根元は、経糸17a・17b・17cの間に打ち込まれて並行に挟持されて隣り合う緯糸18a・18bの間に挟まれ、扁平糸のように緯糸18の長さ方向に一列に並ぶ。
このため、複数個のパイル片16a・16b・16c・16d………の根元を挟持して隣り合う緯糸18aと緯糸18bの間の寸法(パイル経密度)は、複数本のパイル糸12a・12b・12c・12d………の合計繊度(太さ)ではなく、個々のパイル糸12
の繊度(太さ)に相応したものとなる。
即ち、下撚りの施された複数本の有撚紡績単糸(12a・12b・12c・12d………)に下撚りを施して合撚した紡績合撚糸をパイル糸に使用するときは、パイル片(16)の根元を挟持して隣り合う緯糸(18a)と緯糸(18b)の間の寸法(パイル経密度)は、複数本の有撚紡績単糸の合計繊度(太さ)に相応したものとなるが、本発明においては、図2に図示するように、そのパイル片16の根元を挟持して隣り合う緯糸18aと緯糸18bの間の寸法(パイル密度)は、1本の有撚紡績単糸の繊度(太さ)に相応するものとなる。
加えて、紡績合撚糸では合撚(上撚り)された有撚紡績単糸間の撚山があるが、本発明に係る有撚紡績単糸12では、その紡績合撚糸の見られる撚山がなく、紡績合撚糸に比して滑り易く、パイル糸として織編み込むとき経糸17や緯糸18から受ける抵抗が少なく織編み込み易く、この点でもパイル密度が緻密化される。
織編工程において、パイル糸の織編み込まれる量(仕掛り量)は経糸17や緯糸18の織編み込まれる量(仕掛り量)に比して甚だ多くなる。そのように織編み込まれる量を多くするため、織編工程においてパイル糸に加えられるテンションは、経糸17に加えられるテンションに比して弱くなる。そのようにテンションの弱い状態にあるパイル糸は、経糸間17・17や緯糸間18・18に、皺立った状態で折り畳まれるように無理に押し込まれることになる。そして、その皺立った状態にあるパイル糸の糸足(布帛の単位長さにおける糸条の実長)は、緊張した状態にあるパイル糸の糸足よりも長くなる。従って、パイル糸が皺立った状態で折り畳まれるように経糸間17・17や緯糸間18・18に無理に織編み込まれるときは、パイル糸のロス分が多くなる。しかし、本発明に係る有撚紡績単糸では、紡績合撚糸の見られる撚山がなく、紡績合撚糸に比して滑り易く、パイル糸として織編み込むとき経糸17や緯糸18から受ける抵抗が少なくなるので、皺立った状態で折り畳まれるように経糸間17・17や緯糸間18・18に無理に織編み込まれて生じるロス分が軽減する。
かくして、本発明によると、従来手織段通によらずしては得られなかったパイル密度の緻密なパイル布帛を、モケット織機やウイルトン織機等の自動力織機を使用して効率的に、そして、パイル糸の仕掛りロス分も軽減されて経済的に得ることが出来、特に、ウイルトン織機によるときは、高級手織段通の如き美観と品質を備え、従来技術からは想像し得ない”ウイルトン段通”との名に相応しいウイルトンカーペットを得ることが出来る。
短繊維に成る無撚状態の複数条のスライバー11a・11bを撚り合わせて有撚紡績単糸12を形成するスライバー加撚工程において、図1に図示するように、複数条のスライバー11a・11bが撚り合わされる合撚点Rに複数条のスライバー11a・11bの各軸芯P・Qを合わせ、その合撚点Rを中心に複数条のスライバー11a・11bを放射状に配置し、その合撚点Rにおいて複数条のスライバーの軸芯P・Qを所要の交叉角度θをもって交叉させて撚り合わせると、複数条のスライバー11a・11bが有撚紡績単糸の軸芯方向(O−O)に交互に現われ、撚周期(2L)が複数条のスライバーによって短い周期2M・2Nに分割され、スライバーを構成する短繊維の紡績単糸の軸芯O−Oに対する捩れ角度γが大きくなり、又、スライバー間の接触面13において各スライバーの短繊維が交叉して擦れ合ってズレ移動し難くなる。このため、本発明によると、有撚紡績単糸を強撚した場合と同様に、引張強度が強く、摩耗し難く、下撚りの施された有撚紡績単糸を複数本合撚(上撚り)した紡績合撚糸と同程度に織編工程において糸切れを起こし難く、強度的に安定しており、而も、合撚(上撚り)時に有撚紡績単糸の下撚りによる解撚トルクを必要とする紡績合撚糸の場合と異なり、解撚トルクが発生する程度に有撚紡績単糸を強撚する必要がないので解撚トルクが発生せず、撚りの状態が安定した有撚紡績単糸が得られ、それをパイル糸に使用するときは解撚トルクによってパイルがランダム方向に傾くことがなく、パイルの立ちのよいパイル布帛が得られ、そのためには有撚紡績単糸の撚り数を100〜200回/m、概して150回/m前後にするとよい。
本発明に係る有撚紡績単糸12と、紡績合撚糸として撚り合わされる前の在来の有撚紡績単糸とは、本発明に係る有撚紡績単糸12が複数条のスライバー11a・11bを加撚して成るのに対し、在来の有撚紡績単糸は1条のスライバーを加撚して成る点、即ち、加撚するスライバーの数において相違する。しかし両者は、短繊維の長さ方向が有撚紡績単糸の長さ方向(軸芯O−O)に交叉し、短繊維が有撚紡績単糸の長さ方向に交叉した筋目(15)となって有撚紡績単糸の周側面に現われ、有撚紡績単糸の周側面に撚山が現われない点において共通し、又、解撚すると無撚のスライバーの状態になる点において共通する。
従って、本発明において、”有撚紡績単糸”とは、解撚によって無撚のスライバーの状態になる糸条を意味する。
本発明に係る有撚紡績単糸12は、2条のスライバー11a・11bを撚り合わせたものであるから、特に、その2条のスライバー11a・11bの色彩が異なるときは、感覚的には一種の紡績合撚糸であるかの如き印象を与える。
しかし、紡績合撚糸は、短繊維に成る無撚状態のスライバーを加撚(下撚り)して成る有撚紡績単糸を複数本合撚して構成されているので、それを解撚すれば複数本の有撚紡績単糸に分かれるだけで、無撚状態のスライバーにはならない。
これに対し、本発明に係る有撚紡績単糸12は、無撚状態のスライバー(11a・11b)を撚り合わせたものであるから、それを解撚すれば、1条のスライバーを加撚して成る在来の有撚紡績単糸を解撚した場合と同様に、元の無撚のスライバーの状態になる。
又、紡績合撚糸では、撚り合わされた複数本の有撚紡績単糸間の境目(14)の続く上撚り方向と複数本の各有撚紡績単糸の短繊維の続く下撚り方向とが異なるので、その複数本の有撚紡績単糸間の境目(14)は、ハッキリした撚山となって現われる。
これに対し、本発明に係る有撚紡績単糸12では、撚り合わされた複数条のスライバー11a・11bの間の境目14の続く下撚り方向と複数条の各スライバー11a・11bの短繊維の続く筋目15の方向とは並行になるので、その複数条のスライバー11a・11bの間の境目14が撚山となってハッキリ現われることはない(図1)。
このように、本発明に係る有撚紡績単糸12と在来の紡績合撚糸とは、某か複数条の糸条を撚り合わさせて成る点において共通し、感覚的には同一であるかの如き印象を与える要素を具備するものの、その撚り合わされた糸条の形態、糸条間の境目(14)の形態、それらの糸条を構成している短繊維の形態(糸条間の境目14と短繊維の筋目15)、解撚後の形態等の相違によって技術的には明確に区別される。
在来の有撚紡績単糸の加撚前のスライバー、即ち、精紡前のスライバー(粗糸)は、それを粗糸として取り扱う過程において短繊維が絡み合ったり、スライバー(粗糸)が破断することがなく、スライバー(粗糸)としての形態が維持されるようにするために、ドラフト(延伸)が可能な限りにおいて僅かな撚が施される。
従って、本発明におけるスライバーの”無撚状態”とは、極く僅かの張力によって破断してスライバーの引張強度が測定し得ず、スライバーの糸条として実用し得ない状態を意味し、短繊維を長さ方向に並行に揃えるカード工程やギル工程を経た直後の完全に無撚の状態だけを意味するのではなく、加撚して有撚紡績単糸とする前にスライバーとしての形態を維持するために必要とされる僅かな撚の施された状態、概して20回/m以下となる撚の施された状態をも意味する。
スライバーを構成する短繊維としては、天然のクリンプを有する羊毛繊維、捲縮加工によってクリンプの施された捲縮化学繊維が使用され、中でも羊毛繊維を使用することが望ましい。有撚紡績単糸として撚り合わせる複数条の各スライバー11a・11bの繊度は略同じにするとよく、それら複数条の各スライバー11a・11bは色彩の異なるものであってもよい。
本発明に係る有撚紡績単糸12は、複数本引き揃えて使用することも出来、複数本撚り合わせて紡績合撚糸として使用することも出来る。本発明に係る有撚紡績単糸12を複数本引き揃えて使用するときは、織編工程で分離して取り扱い難くならない程度に軽く撚り合わせてもよい。
同じ太さの2条のスライバー11a・11bを引き揃えて重ね合わせれば、その引き揃えられた2条のスライバー11a・11bは、それらのスライバー11の2倍の太さのスライバーと同じような恰好になる。
しかし、その2条のスライバー11a・11bを撚り合わせて有撚紡績単糸にすると、それらのスライバー11の2倍の太さの1条のスライバーを加撚した有撚紡績単糸よりも、撚り数が同じであっても、細い2条のスライバー11a・11bを撚り合わせた有撚紡績単糸の引張強度は、太い1条のスライバーを加撚した有撚紡績単糸よりも強くなる。
その第1の理由は、2条のスライバー11a・11bを撚り合わせるときは、その2条のスライバー11a・11bのそれぞれに撚山(M、N)が発生するので、撚り数が同じであっても、太い1条のスライバーを加撚して生じる撚山(L)の数の2倍の撚山(M、N)が発生することになり、2条のスライバー11a・11bを撚り合わせて成る紡績単糸12の撚り数が、太い1条のスライバーを加撚して成る有撚紡績単糸の撚り数に比して実質的に大きく増えることになる。
即ち、スライバー11a・11bを構成している短繊維が、撚り合わせて成る有撚紡績単糸12の軸芯O−Oと成す捩れ角度γが、太い1条のスライバーを加撚して成る有撚紡績単糸における短繊維の成す捩れ角度(γ)よりも大きくなる。このため、2条のスライバー11a・11bの短繊維は、太い1条のスライバーの短繊維に比して有撚紡績単糸12の長さ方向(軸芯O−O)にズレ移動し難くなることによるものと考えられる。
事実、太い1条のスライバーを加撚して成る有撚紡績単糸における短繊維の成す捩れ角度(γ)と本発明の有撚紡績単糸における短繊維の成す捩れ角度(γ)を比較したところ、総繊度と撚り数が同じであっても、本発明の有撚紡績単糸における短繊維の成す捩れ角度(γ)は、太い1条のスライバーを加撚して成る有撚紡績単糸における短繊維の成す捩れ角度(γ)よりも40〜50%(1.4〜1.5倍)大きくなっていることが確認された。
第2の理由は、2条のスライバー11a・11bを撚り合わせて成る有撚紡績単糸12では、その撚り合わされた2条のスライバー11a・11bが密着する接触面13において、その一方のスライバー11aの短繊維の有撚紡績単糸12の軸芯O−Oに対して成す交叉方向αと、その他方のスライバー11bの短繊維の有撚紡績単糸12の軸芯O−Oに対して成す交叉方向βとが互いに逆向きになる。
このため、その一方のスライバー11aの短繊維と、その他方のスライバー11bの短繊維とは、その接触面13において交叉して擦れ合うことになり、それら2条のスライバー11a・11bの短繊維は、その接触面13においてズレ移動し難くなる。
しかし、太い1条のスライバーを加撚(下撚り)して成る有撚紡績単糸では、それを構成している全ての短繊維が並行に引き揃えられており、短繊維と短繊維が交叉して擦れ合うことがないために、2条のスライバー11a・11bを撚り合わせた有撚紡績単糸12に比して、紡績単糸の長さ方向にズレ移動し易くなることによるものと考えられる。
このように、本発明に係る有撚紡績単糸12は、撚り数に応じて生じる撚山(L)が撚り合わされる複数条のスライバー11a・11bの本数に応じて分割され、撚り数が実質的に増えており、有撚紡績単糸の内部において短繊維と短繊維が交叉している点において、1条のスライバーを加撚して成る在来の有撚紡績単糸とは異なり、織編工程において糸切れを起さない程度に強度的に安定し、伸び難い点に特徴がある。
そのように強度的に安定した有撚紡績単糸12とするためには、スライバー11a・11bを構成する短繊維の繊度は20dtex以下とし、スライバー11a・11bの総繊度は1000dtex以上、好ましくは2000dtex以上とし、有撚紡績単糸12の撚り数は80回/m以上、好ましくは100回/m以上とする。
精紡工程において2条のスライバー11a・11bを撚り合わせるときは、それら2条のスライバー11a・11bの軸芯P・Qを平行に揃えて撚り合わせるのではなく、撚り合わせて成る有撚紡績単糸12の軸芯O−Oに対して、それら2条のスライバー11a・11bの軸芯P・Qが互いに逆向きになって交叉するように、即ち、それらの軸芯P・Qが所要の角度θをもって交叉するように、それら2条のスライバー11a・11bを給糸しつつ撚り合わせるとよい。そうすると、太さが2条のスライバー11a・11bの各太さの2倍の太い1条のスライバーを加撚(下撚り)して成る有撚紡績単糸よりも強く、織編工程で殆ど伸びず、糸切れを発生することのない有撚紡績単糸12が得られる。
本発明によると、上記の通り、複数条のスライバーの軸芯P・Qを所要の交叉角度θをもって交叉させて撚り合わせると、複数条のスライバー11a・11bが有撚紡績単糸の軸芯方向(O−O)に交互に現われ、撚周期(2L)が複数条のスライバーによって短い周期2M・2Nに分割され、スライバーを構成する短繊維の紡績単糸の軸芯O−Oに対する捩れ角度γが大きくなり、その複数条のスライバー11a・11bを撚り合わせる撚周期(2L)の半分となる短い周期2M・2Nをもって1条の太いスライバーを強撚した強撚紡績単糸と同程度の引張強度のある有撚紡績単糸12が得られる。そのように、強撚紡績単糸と同程度の引張強度のある有撚紡績単糸12を、強撚紡績単糸の撚り数よりも少ない撚り数によって得られるので、スライバー加撚工程における生産効率が向上する。
[実施例]
羊毛繊維に成る総繊度2222.2dtexの2条のスライバー11a・11bをリング精紡機のフロントロールの離れた部位から別々に分けて引き出し、それら2条のスライバー11a・11bの軸芯P・Qを合撚点Rに向けて60°の交叉角度θをもって交叉させ、155回/mとなる撚り数をもって2条のスライバーをS撚りに撚り合わせて総繊度3846.2dtex(2.6メートル番手)の有撚紡績単糸12とする。
[比較例1]
羊毛繊維に成る総繊度4700dtexの1条のスライバーをリング精紡機のフロントロールから引き出し、155回/mとなる撚り数をもってS撚りに加撚して総繊度3846.2dtex(2.6メートル番手)の有撚紡績単糸とする。
[比較例2]
羊毛繊維に成る総繊度4700dtexの1条のスライバーをリング精紡機のフロントロールから引き出し、220回/mとなる撚り数をもってS撚りに加撚して総繊度3846.2dtex(2.6メートル番手)の有撚紡績単糸とする。
[引張試験]
実施例による有撚紡績単糸と比較例による有撚紡績単糸の引張強度をJIS−L−1095−9.6.1試験規格に従って引張試験機によって測定した結果、表1と図3に示す通り、実施例による有撚紡績単糸の伸び率3.0%時の引張強度は662.2g/本、伸び率5.0%時の引張強度は1225.0g/本、伸び率10.0%時の引張強度は1812.5g/本、破断時の引張強度は1893.7g/本、伸び率は18.5%であり、比較例1による有撚紡績単糸の伸び率3.0%時の引張強度は606.7g/本、伸び率5.0%時の引張強度は1087.3g/本、伸び率10.0%時の引張強度は1592.5g/本、破断時の引張強度は1675.6g/本、伸び率は14.4%であり、比較例2による有撚紡績単糸の伸び率3.0%時の引張強度は661.8g/本、伸び率5.0%時の引張強度は1182.4g/本、伸び率10.0%時の引張強度は1710.5g/本、破断時の引張強度は17898.5g/本、伸び率は16.9%であり、実施例による有撚紡績単糸が、比較例1による有撚紡績単糸に比して引張強度が強く伸び難く、又、強撚した比較例2による有撚紡績単糸に比しても引張強度が強く伸び難いことが確認された。尚、実施例と比較例1・2において用いたスライバーは、それを引っ張ると短繊維が素っぽ抜けて破断し、その引張強度は測定不能であった。
図3において、実施例のデータは「〇印」で、比較例1のデータは「◎印」で、比較例2のデータは「◇印」でそれぞれ示す。
Figure 0004273511
本発明に係る有撚紡績単糸の側面図である。 本発明に係るパイル布帛の一部切截斜視図である。 有撚紡績単糸の引張強度・伸び率関係曲線図である。
符号の説明
11:スライバー
12:有撚紡績単糸
13:接触面
14:境目
15:筋目
16:パイル片
17:経糸
18:緯糸
19:パイル
O,P,Q:軸芯
R:合撚点

Claims (4)

  1. 短繊維に成る無撚状態のスライバー(11a・11b)を複数条撚り合わせて成る有撚紡績単糸(12)によってパイル(19)が構成されており、その撚り合わされた複数条のスライバー(11a・11b)の間の境目(14)の続く下撚り方向と複数条の各スライバー(11a・11b)の短繊維の続く筋目(15)の方向とが並行になっているパイル布帛。
  2. 無撚状態のスライバー(11a・11b)を複数条撚り合わせて成る有撚紡績単糸(12)に解撚トルクが発生しておらず、その撚り合わされた複数条のスライバー(11a・11b)を撚りの状態が安定している前掲請求項1に記載のパイル布帛。
  3. パイル(19)を構成している有撚紡績単糸の数が複数本であり、それら複数本の有撚紡績単糸(12a・12b・12c・12d………)が引き揃えられた状態でパイル(19)を形成している前掲請求項1と2の何れかに記載のパイル布帛。
  4. 引き揃えられてパイル(19)を構成している複数本のパイル糸(12a・12b・12c・12d………)のそれぞれが形成するパイル片(16a・16b・16c・12d………)の根元が、扁平糸のように一列に並んでいる前掲請求項3に記載のパイル布帛。
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